JP4081083B2 - アクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法 - Google Patents

アクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、機湿潤ゲルを用いたアクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法に関する。
【0002】
多孔質体を形成している粒子の大きさとその粒子間に形成される空隙の大きさが入射する光の波長よりも小さい場合には、光は界面で散乱されず多孔質体を通過することが知られている。また、マトリックス中に空気が導入されるためマトリックスの組成を変化させずに誘電率や屈折率が低くなることも知られている。このような性質を有する有機多孔質体としては、例えば、レゾルシノールとホルムアルデヒドの重縮合により合成した有機湿潤ゲルを超臨界乾燥することで得られる有機エアロゲル(下記特許文献1)、メラミン−ホルムアルデヒドを用いた有機エアロゲル(下記特許文献2)、同様の方法によって得られるポリイソシアネート系エアロゲル(下記特許文献3)、メタクリル酸メチルとエチレングリコールジメタクリレートの共重合で得られるゲルを超臨界乾燥した多孔質体(下記特許文献4)が知られている。
しかしながら、従来知られている重縮合系の有機多孔質体は、濃赤色などに著しく着色していたり、経時的に透明性が低下するという課題があった。また、メタクリル酸メチルとエチレングリコールジメタクリレートから得られる有機多孔質体は、空孔径が1μm以上で透明性はないという問題があった。
【0003】
湿潤ゲルを超臨界乾燥して多孔質体を得る超臨界乾燥法は、空隙率の高い多孔質体を製造する方法として知られている。しかしながら、この方法によって得られる多孔質体に透明性を付与するためには、乾燥前の湿潤ゲルの微細構造制御が重要となってくる。
【0004】
ビニル系架橋樹脂多孔質体を得るときのビニル系湿潤ゲルの製造方法としては多くの方法が知られており、中でも、多官能モノマーを含むモノマーを有機溶媒中で重合する方法が、最も適用範囲が広く、実用的な方法である(下記非特許文献1)
【特許文献1】
米国特許第4873218号公報
【特許文献2】
米国特許第5086085号公報
【特許文献3】
特表平9−501455号公報
【特許文献4】
米国特許第5252620号公報
【非特許文献1】
長田義仁ら編集、ゲルハンドブック、p56
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のビニル系湿潤ゲルの製造方法では、モノマー濃度や、溶媒の種類、モノマーの反応性比によってゲルの中に架橋が局在化した不均質な構造になる場合がある。この場合、局在化した架橋部分が光の波長程度の大きさで不均質化していると、光がそこで散乱するため、ゲルの透明性が低下する。また、ポリマーの屈折率と溶媒の屈折率が近いときは、局在化した架橋部分がゲル中に存在しても透明になることもあるが、構造が制御されているわけではないので、超臨界乾燥により有機溶媒が空気に置換されると不透明になるという課題があった。
【0006】
よって、本発明の目的は、透明なアクリル系架橋多孔質体の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のアクリル系架橋多孔質体の製造方法は、下記化合物群(X)から選ばれる1種以上の多官能(メタ)アクリレート50〜100質量%および下記化合物群(Y)から選ばれる1種以上の単官能(メタ)アクリレート0〜50質量%からなるモノマー(混合物)0.01〜10質量%、および有機溶媒90〜99.99質量%を含有する溶液中にて前記多官能(メタ)アクリレート(メタ)アクリロイル基の一部をラジカル重合した後、有機溶媒の濃度が20質量%未満とならないように濃縮し、その後、残りの(メタ)アクリロイル基をラジカル重合して得られた有機湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であるアクリル系架橋樹脂多孔質体を得ることを特徴とする。
化合物群(X)は、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、および三官能以上のポリエステル(メタ)アクリレートからなる。
化合物群(Y)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、およびトリシクロデカニル(メタ)アクリレートからなる。
【0008】
本発明よれば、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であり、有機湿潤ゲル中の有機溶媒を、該有機溶媒と屈折率が0.06以上異なる他の溶媒に置換した湿潤ゲルの厚み1mmの時の光線透過率が50%以上である有機湿潤ゲルを得ることができる。
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法によれば、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であるアクリル系架橋樹脂多孔質体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、好ましい実施の形態も含めて、本発明を詳しく説明する。
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体とは、多官能アクリル系モノマーを少なくとも含むモノマーをラジカル重合させて得られるアクリル系架橋樹脂からなる多孔質体である。ここで、多官能アクリル系モノマーとしては、後述の多官能(メタ)アクリレートが用いられる
【0010】
本発明におけるアクリル系架橋樹脂、アクリル系樹脂である
アクリル系樹脂としては、後述の多官能(メタ)アクリレートの単独重合体、もしくは多官能(メタ)アクリレートの二種以上からなる共重合体、もしくは主成分である多官能(メタ)アクリレートと単官能(メタ)アクリレートとからなる共重合体が挙げられる。
【0011】
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体は、その厚みが1mmのときの全光線透過率が50%以上のものである。厚みが1mmのときの全光線透過率が50%未満では、アクリル系架橋樹脂多孔質体の透明性が不十分である。厚みが1mmのときのアクリル系架橋樹脂多孔質体の全光線透過率は、70%以上がさらに好ましい。
【0012】
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体の空隙率は、特に限定されないが、空隙率が高くなるにつれ、屈折率や誘電率が低くなり、断熱性は高くなり、軽量化効果が大きくなる傾向があるため、3%以上が好ましい。
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体の孔径は、100nm以下の範囲であることが好ましく、70nm以下の範囲であることがさらに好ましく、40nm以下の範囲であることが最も好ましい。アクリル系架橋樹脂多孔質体に100nmを超える孔径の孔が存在すると、透明性が低下する傾向がある。ここで、孔径とは、水銀圧入法ポロシメーター(Quantachrome社製、POREEMASTER−60)を用いて、0.14MPa〜406MPaまでモータースピード5で細孔径分布を測定することにより求めることができる。
【0013】
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体は、熱処理によって、空隙率が熱処理前に比べ1%以上低下するものであることが好ましい。空隙率の低下が1%未満では、空隙率の低下による密度上昇効果などの発現が低くなる傾向がある。このようなアクリル系架橋樹脂多孔質体は、熱処理することによって質量の変化を伴わずに空隙率が低下するため、屈折率が高くなる。
ここで、熱処理の温度は50℃〜400℃である。50℃未満では空隙率の変化が起こりにくい傾向がある。400℃を超える場合にはアクリル系樹脂が分解して重量減少が起こる傾向がある。熱処理の温度は、80℃〜250℃がさらに好ましい。また、熱処理の時間は、1秒以上である。1秒未満では空隙率の変化が起こりにくい傾向がある。熱処理時間は、30分以上がさらに好ましい。温度が低いほど長い熱処理時間が必要になる。熱処理方法は特に限定されないが、例えば真空乾燥機を用いて減圧状態で上記の温度範囲で熱処理を行う方法、熱風乾燥機中で上記の温度範囲で熱処理を行う方法、レーザー光を照射する方法などが挙げられる。
【0014】
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体は、熱処理によって、屈折率が熱処理前に比べ0.01以上上昇するものであることが好ましい。
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体は、熱処理後における、厚み1mmの時の全光線透過率が30%以上のものであることが好ましい。熱処理後のアクリル系架橋樹脂多孔質体の厚みが1mmの時の全光線透過率は、50%以上がさらに好ましく、70%以上が最も好ましい。
【0015】
次に、本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法を説明する。
本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体は、多官能(メタ)アクリレート50〜100質量%および単官能(メタ)アクリレート0〜50質量%からなるモノマー(混合物)0.01〜10質量%、および有機溶媒90〜99.99質量%を含有する溶液中にて多官能(メタ)アクリレート(メタ)アクリロイル基の一部をラジカル重合して混合液を得て(1段階目のラジカル重合)、この混合液を有機溶媒の濃度が20質量%未満とならないように濃縮し(濃縮工程)、その後、残りの(メタ)アクリロイル基をラジカル重合して有機湿潤ゲルを得て(2段階目のラジカル重合)、この有根湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって得ることができる。
【0016】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アリレート、三官能以上のポリエステル(メタ)アクリレーが挙げられる。これら多官能(メタ)アクリレートは、単独で、もしくは二種以上を組み合わせて用いる。
【0017】
また、多官能(メタ)アクリレートとともに、モノマー(混合物)全体中0〜50質量%の範囲で単官能(メタ)アクリレートを用いることができる。50質量%を超える場合には、得られる有機湿潤ゲルの透明性が低下する場合がある。
官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート挙げられる。
【0018】
上記に挙げられた単官能(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートに対して、単独で、もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明で用いるモノマー(混合物)の濃度は、モノマー(混合物)および有機溶媒を含有する溶液中の0.01〜10質量%である。モノマー(混合物)の濃度が10質量%を超える場合には、1段階目のラジカル重合によって得られる混合液がゲル化する傾向がある。モノマー(混合物)の濃度が0.01質量%未満では、溶液が希薄すぎてモノマーが反応しなくなる傾向がある。モノマー(混合物)の濃度の下限は、0.1質量%以上が、その上限は8質量%以上がさらに好ましい。
【0020】
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;エチルイソブチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−ブチル、酢酸プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート等のエステル類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いる有機溶媒の濃度は、モノマー(混合物)および有機溶媒を含有する溶液中の90〜99.99質量%である。有機溶媒の濃度が99.99質量%を超える場合には溶液が希薄すぎてモノマーが反応しなくなる傾向がある。有機溶媒の濃度が90質量%未満では、1段階目のラジカル重合によって得られる混合液がゲル化する傾向がある。
【0021】
本発明で用いるラジカル重合開始剤は、特に限定されないが、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクタエート、サクシン酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化物などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
モノマー(混合物)および有機溶媒を含有する溶液を、上述のラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合開始剤の分解温度に適した重合温度に加熱し、多官能(メタ)アクリレート(メタ)アクリロイル基の一部を重合することにより混合液が得られる。ここで、多官能(メタ)アクリレートのラジカル重合は、(メタ)アクリロイル基がすべて消失しないように行われなければならない。すべて消失した場合には、濃縮工程後に行う2段階目のラジカル重合が行われない。
1段階目のラジカル重合後に得られた混合液は、有機溶媒の濃度が20質量%未満とならないように濃縮される必要がある。濃縮後の有機溶媒の濃度が95質量%を超える場合には、得られる有機湿潤ゲルの強度が低くなる傾向がある。濃縮後の有機溶媒の濃度が20質量%未満の場合には、得られる有機湿潤ゲルにクラックがはいりやすくなる傾向がある。濃縮後の混合液中の有機溶媒の濃度の下限は、30質量%以上、さらには50質量%以上が好ましい。また、濃縮後の混合液中の有機溶媒の濃度の上限は、95質量%以下、さらには85質量%が好ましい。
【0023】
本発明において、濃縮した混合液中の残りの(メタ)アクリロイル基をラジカル重合するのに用いられる開始剤は特に限定されず、例えば、上記に示したラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0024】
本発明において得られる有機湿潤ゲルは、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であり、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがもっとも好ましい。有機湿潤ゲルの厚み1mmのときの全光線透過率が50%未満では、超臨界乾燥したとき得られる多孔質体の透明性が低下する。
【0025】
また、有機湿潤ゲル中の有機溶媒を、該有機溶媒と屈折率が0.06以上異なる他の溶媒に置換した湿潤ゲルの厚み1mmの時の光線透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがもっとも好ましい。他の溶媒に置換した湿潤ゲルの厚み1mmの時の光線透過率が50%未満では、超臨界乾燥したとき得られる多孔質体の透明性が低下する。
【0026】
他の溶媒は、置換される有機溶媒と屈折率が0.06以上異なれば特に限定されないが、例えば、上記に示した有機溶媒の他、液化二酸化炭素などの無機系溶媒などが挙げられる。例えば、重合のための有機溶媒にトルエンを用いた場合、トルエンの屈折率は25℃で1.49なので、他の溶媒としては、屈折率1.37のヘキサンや屈折率1.25のパーフルオロヘキサンを用いることができる。そして、本発明においては、有機湿潤ゲル中のトルエンを、ヘキサンやパーフルオロヘキサンに置換しても、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
有機湿潤ゲル中の有機溶媒を他の溶媒に置換する方法は、特に限定されないが、有機湿潤ゲルを他の溶媒中に投入する方法、有機湿潤ゲルの存在する有機溶媒中に他の溶媒を滴下して徐々に置換する方法などが挙げられる。
【0027】
本発明において、有機湿潤ゲルを超臨界乾燥する方法は、特に限定されないが、例えば、有機湿潤ゲルをゆっくり液化二酸化炭素で置換した後、二酸化炭素の臨界点(31.06℃、7.38MPa)以上になるように、昇圧、昇温を行い、その後、圧力のみを下げる方法;有機湿潤ゲルの有機溶媒と二酸化炭素の二成分混合系の臨界点以上まで、昇圧、昇温を行い、有機湿潤ゲルの有機溶媒を二酸化炭素に置換し、その後、圧力のみを下げる方法などが挙げられる。
【0028】
以上説明した本発明のアクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法にあっては、濃縮工程を挟んで2段階のラジカル重合を行っているので、多官能(メタ)アクリレートの架橋部分が局在化することが抑えられ、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上である、透明なアクリル系架橋樹脂多孔質体を得ることができる。
本発明に係るアクリル系架橋樹脂多孔質体は、空孔を有するため低屈折率、低誘電率、断熱性などの性質を示し、空孔率を変えることで組成を変えずに屈折率、誘電率、断熱性を制御することができる。低屈折率であることから、プラスチック光ファイバのクラッド材、反射防止膜、有機EL素子の発光取出し効率向上用シート等の用途に、また、低誘電率であることから半導体素子の層間絶縁膜などの用途に使用することができる。また、熱処理によって空隙率および屈折率を変化させることができるため、屈折率の違いとしてデータを記録させる記録媒体の用途などに使用することができる。また、空孔部分に液晶分子、イオン導電体、2色性色素などの機能性化合物を充填することで機能フィルム(液晶性フィルム、導電フィルムや多色偏光板など)の用途に使用することができる。また、微多孔によるフィルター機能から電光透析膜、電解液保持膜、選択透過膜、ガス分離膜などの用途に使用することができる。
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。実施例中の評価は、以下の方法に従い実施した。
(1)密度:
密度は、エタノール(密度0.816g/cm)、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル(密度1.596g/cm)の混合液を用いて標準比重計を使用して測定した。
(2)屈折率:
屈折率は、インターファコ干渉顕微鏡を使用し、マッチング液としてフタル酸ジエチルとフタル酸ジメチルの混合液を用いて測定した。
(3)透明性:
スガ試験機社製ヘイズメーターを用いて厚み1mmの試片について、その全光線透過率を測定した。
【0030】
(4)空隙率:
空隙率は、樹脂多孔質体のかさ密度d(g/cm)と、非多孔質の樹脂の真密度D(g/cm)とから、下の式により算出した。
空隙率(%)=(D−d)/D×100
ここで、かさ密度dおよび真密度Dは、上記(1)の測定方法で測定した。
非多孔質の樹脂は、次のようにして得た。ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート100質量部に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.1質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1質量部を加え溶解させ、この溶液を減圧にして脱気した後、これをガスケットおよび2枚のガラス板により構成され得られる板状成形物の厚さが3mmになるようにあらかじめ設定されたセル中に注入した。その後、40℃で4時間、50℃で4時間、60℃で5時間、120℃で7時間重合を行い非多孔質体の樹脂を得た。
(5)孔径:
孔径は、Quantachrome社製、POREEMASTER−60(水銀圧入法ポロシメーター)を用いて、0.14MPa〜406MPaまでモータースピード5で測定し、孔半径を得た。この孔半径を2倍して孔径とした。
【0031】
<実施例1>
5リットルのナス型フラスコにジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(以下DTMPTAと略す)45.0g、トルエン2955g、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)2.7gを入れて溶液を調製し、これを55℃の恒温槽中で3時間加熱した。加熱後、溶液の温度が室温まで下がったのを確認した後、35℃に加温しながらエバポレーターでトルエンを留去して混合液90gを得た。混合液のトルエン濃度は50質量%であった。この混合液の一部を採取し、トルエンを完全に留去し、重クロロホルムに溶解し、NMRにて測定したところ、ビニル基がすべて消失しておらず、一部が残っていることが確認できた。
【0032】
混合液11gに2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.0165gを溶解し、これを塩化ビニル製ガスケットにて厚みが1mmに設定されたガラス製セル中に流し込み、50℃で1.5時間加熱して、残りのビニル基を重合して架橋ゲルを得た。得られた架橋ゲルを切り出して、トルエン25mlと共に容量68mlの耐圧容器に入れた。減圧弁で液化二酸化炭素のボンベの二次圧を調節して0.23MPa/minの速度で耐圧容器内に二酸化炭素を導入した。ボンベの一次圧である5.5MPaまで耐圧容器の圧力が達した後、送液ポンプを用いて2.0ml/minの速度で二酸化炭素を導入して、8MPaにした。背圧弁にて圧力が8MPaに保たれるようにして、17時間二酸化炭素を流した。その後、背圧弁を作用させずに40℃までゆっくりと昇温し、温度が安定した後、大気圧までゆっくり圧力を下げて樹脂多孔質体を得た。得られた樹脂多孔質体の性質を表1に示す。また、樹脂多孔質体の孔径は、4〜30nmの範囲であった(細孔径分布のピークが6nm、13nm、21nmの位置にあった)。
この樹脂多孔質体を真空乾燥機にて150℃で16時間熱処理した。熱処理後の樹脂多孔質体の性質を表1に示す。
【0033】
<比較例1>
DTMPTA6g、トルエン6gに2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.028gを溶解し、これを塩化ビニル製ガスケットにて厚みが1mmに設定されたガラス製セル中に流し込み、50℃で1.5時間加熱してDTMPTAを重合して架橋ゲルを得た。得られた架橋ゲルを切り出して、トルエン25mlと共に容量68mlの耐圧容器に入れた。減圧弁で液化二酸化炭素のボンベの二次圧を調節して0.23MPa/minの速度で耐圧容器内に二酸化炭素を導入した。ボンベの一次圧である5.5MPaまで耐圧容器の圧力が達した後、送液ポンプを用いて2.0ml/minの速度で二酸化炭素を導入して、8MPaにした。背圧弁にて圧力が8MPaに保たれるようにして、17時間二酸化炭素を流した。その後、背圧弁を作用させずに40℃までゆっくりと昇温し、温度が安定した後、大気圧までゆつくり圧力を下げて樹脂多孔質体を得た。得られた樹脂多孔質体の性質を表1に示す。また、樹脂多孔質体の孔径は、4〜110nmの範囲であった(細孔径分布のピークが6nm、50nmの位置にあった)。比較例においては、100nmを超える孔径の孔が存在するため、透明性が不良となった。
【0034】
【表1】
Figure 0004081083
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るアクリル系架橋樹脂多孔質体は、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であるものであるので、透明性に優れる。このようなアクリル系架橋樹脂多孔質体は、光ファイバ、反射防止膜、断熱材、層間絶縁膜、記録媒体に好適である。また、本発明の(メタ)アクリロイル基系架橋多孔質体の製造方法は、多官能(メタ)アクリレート50〜100質量%および単官能(メタ)アクリレート0〜50質量%からなるモノマー(混合物)0.01〜10質量%、および有機溶媒90〜99.99質量%を含有する溶液中にて多官能(メタ)アクリレート(メタ)アクリロイル基の一部をラジカル重合した後、有機溶媒の濃度が20質量%未満とならないように濃縮し、その後、残りの(メタ)アクリロイル基をラジカル重合して有機湿潤ゲル得て、この有機湿潤ゲルを超臨界乾燥することによってアクリル系架橋樹脂多孔質体を得る方法であるので、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であるアクリル系架橋樹脂多孔質体を得ることができる。

Claims (1)

  1. 下記化合物群(X)から選ばれる1種以上の多官能(メタ)アクリレート50〜100質量%および下記化合物群(Y)から選ばれる1種以上の単官能(メタ)アクリレート0〜50質量%からなるモノマー(混合物)0.01〜10質量%、および有機溶媒90〜99.99質量%を含有する溶液中にて前記多官能(メタ)アクリレート(メタ)アクリロイル基の一部をラジカル重合した後、有機溶媒の濃度が20質量%未満とならないように濃縮し、その後、残りの(メタ)アクリロイル基をラジカル重合して得られた有機湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって、厚み1mmの時の全光線透過率が50%以上であるアクリル系架橋樹脂多孔質体を得ることを特徴とするアクリル系架橋樹脂多孔質体の製造方法
    化合物群(X)は、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、および三官能以上のポリエステル(メタ)アクリレートからなる。
    化合物群(Y)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、およびトリシクロデカニル(メタ)アクリレートからなる。
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