アクティブマトリクス型LCDの液晶パネルは、対向する電極基板間に液晶が封入された構造を持っている。すなわち、一方の基板には複数のデータラインから成るデータバスの電極(信号電極)と複数のスキャンラインから成るスキャンバスの電極(走査電極)がマトリクス状に交差し、その交差部の全てにTFT等のスイッチング素子が接続されており(この基板を「TFT基板」と称する)、対向基板には電極が一面に形成されている(この基板を「共通(コモン)基板」と称する)。
かかるLCDを駆動する場合、TFT基板と共通基板の間に電圧を印加する。すなわち、TFT基板上の信号電極(データライン)に映像信号に応じたデータ電圧を印加する。スキャンバス中の選択されたスキャンラインにつながるTFTがオンすることにより、対応する各データラインに印加されたデータ電圧と共通基板のコモン電圧との電位差が各画素に書き込まれ、次にそのライン(スキャンライン)が選択されるまで電荷を保持することで情報が保たれる。保持された情報に応じて液晶の電圧が決まるので、光の透過量が制御されて階調表示が可能となる。また、カラー表示を行うには、RGBのカラーフィルタを用いることで光の色分解/色合成を行い、実現している。
LCDを駆動する回路は、各スキャンラインを駆動するスキャンライン・ドライバ及び各データラインを駆動するデータライン・ドライバとコモン電圧回路から構成されている。スキャンライン・ドライバがスキャンラインを選択すると、当該スキャンラインにつながる各画素に、データライン・ドライバから各データラインを通して映像信号に応じたデータ電圧がそれぞれ印加される。LCDでは一般に、同じ画素に同じ極性のデータ電圧を印加し続けるとLCDの寿命に悪影響をきたし液晶の劣化を招くため、これを防ぐために一定の周期(1フレーム周期又は1水平周期)毎に正極性及び負極性の駆動電圧を交互に印加している。これを「交流駆動」という。また、かかる交流駆動を行うと画面のちらつき(フリッカ)が発生するため、これを抑えるためにデータライン毎の極性反転等を行っている。例えば、隣合うデータライン間に正負反対の極性の駆動電圧を印加し、隣接画素間に反対の極性の電圧を印加するといった方法を採用している。かかる駆動方法を「縦ライン反転」駆動と称する。
図13には典型的なデータライン・ドライバの構成が示される。
図示のドライバは、シフトレジスタ部51と、表示用ディジタルデータDnのビット数分の容量をそれぞれ有するデータレジスタ部52及びラッチ部53と、デコーダ部54と、アナログスイッチ群から成るセレクタ部55と、階調電圧作成部56とを備えており、クロックCLKと、データ取り込みの開始を指示するスタート信号STと、出力の切り換えのタイミングを指示するラッチ信号LPとにより制御される。
先ず、シフトレジスタ部51は、表示ライン(1水平周期)毎に供給されるスタート信号STにより動作を開始し、クロックCLKにより歩進してタイミング信号を生成する。データレジスタ部52は、このタイミング信号に応答して表示用ディジタルデータDnを順次取り込む。ラッチ部53は、データレジスタ部52にデータが取り込まれた後、次の1ライン分のデータが到来する前に、データレジスタ部52内のデータをラッチ信号LPに応答して取り込む。次いで、デコーダ部54は、ラッチ部53に保持されたディジタルデータをデコードする。セレクタ部55は、このデコード結果に基づいて、階調電圧作成部56で作成される複数の階調電圧(図示の例では64階調の電圧)の1つを選択出力する。選択出力された階調電圧は、駆動電圧として各チャネル(データラインQ1〜Q192)に送出される。
なお、階調電圧作成部56は、例えば図14に示すように、抵抗アレイ型D/Aコンバータの形態で構成される。図示の例では、基準電源として入力される9本の基準電圧V0〜V8から、64個の抵抗器を用いてV0〜V1の間、V1〜V2の間、………、V7〜V8の間をそれぞれ8等分に分圧することで、V0及びVR01〜VR63の64階調の電圧を作成している。作成された64個の階調電圧は、そのうちの一つが、上述したようにデコーダ部54により制御されるセレクタ部55内のアナログスイッチにより選択される。
図15には液晶パネルに対するデータライン・ドライバの配置形態が示されており、(a)は両側駆動の場合、(b)は片側駆動の場合を示している。なお、100は液晶パネルを模式的に表している。
両側駆動の場合には、液晶パネル100の左右いずれか一方の側にスキャンライン・ドライバが配置され、また、液晶パネル100の上側と下側にそれぞれデータライン・ドライバが配置されている。この場合、各データライン・ドライバは、各々の出力ライン(データライン)が交互に串刺しの形になるように設けられる。かかる配置形態において、上側データライン・ドライバの駆動電圧と下側データライン・ドライバの駆動電圧を互いに反対の極性とすれば、「縦ライン反転」駆動となり、横方向(スキャンラインの方向)に隣合った画素には反対の極性のデータ電圧を印加することができる。これによって、画面のフリッカを抑えることができ、また、フレーム毎に極性を変える交流駆動により液晶の劣化を防ぐことができる。
これに対し、片側駆動の場合には、スキャンライン・ドライバの配置形態は両側駆動の場合と同様であるが、データライン・ドライバについては、液晶パネル100の上下いずれか一方の側にのみ配置されている。この片側駆動では、縦ライン反転駆動を実現するために、各データライン毎に1チャネルずつ表示用データを反転させて供給する必要がある。かかるデータ反転機能は、ドライバの外部にそのための手段を設けてもよいし、或いはドライバ内部にその機能を持たせてもよい。図15(b)の例示は後者の場合を示す。片側駆動の場合、上述した両側駆動の場合に比べて、LCD全体から液晶パネル100の実装領域を除いた部分(いわゆる額縁領域)を小さくできるという利点がある。
片側駆動において、ドライバ内部にデータ反転機能を持たせる場合、ドライバ出力の奇数チャネル及び偶数チャネルからそれぞれ正極性の駆動電圧及び負極性の駆動電圧を出力できるようにドライバを構成する必要がある。これを実現するための構成例が図16に示される。
図16は、従来形のLCDのデータライン・ドライバにおける要部の構成(階調電圧ラインの配列)を示す。
図示のように、外部から入力する基準電圧を偶数本(図示の例ではV0〜V9の10本)とし、中央の電圧を挟んで対称に正側と負側にそれぞれ5本ずつの2グループの基準電圧群とする。隣合う基準電圧間(例えばV5とV6の間)を、4個の抵抗器を用いて4等分に分圧し、4階調(VA01〜VA04)の階調電圧(VR17〜VR20)を作成する。ここに、各グループの基準電圧群間の中央の電圧と各階調電圧の差が表示階調となり、図示の例では、正側と負側にそれぞれ16階調の階調電圧が作成される。正側の階調電圧VR17〜VR32は、そのうちの一つがセレクタ内のアナログスイッチにより選択されて、対応する奇数チャネル(データラインQ1,Q3,……)に送出される。同様に、負側の階調電圧VR01〜VR16は、そのうちの一つがセレクタ内のアナログスイッチにより選択されて、対応する偶数チャネル(データラインQ2,Q4,……)に送出される。
図16の構成からわかるように、抵抗分圧で作成した各階調電圧を伝達する階調電圧ラインは、全チャネル分の回路に亘って配列されている。また、チャネル単位の回路で見た場合、各階調電圧ラインからアナログスイッチで選択された規定の階調電圧は、当該スイッチの箇所から出力パッドまでの配線を経由して出力される。
LCDに関して、これからの技術開発の目的の一つに、その液晶パネルの表示面積の拡大と共に額縁スペースの削減といったことが挙げられる。額縁スペースを考えた場合、ドライバ(特にデータライン・ドライバ)の占有面積を小さくするのが好ましく、そのためには、図15(b)に示したようにデータライン・ドライバを片側配置とするのが得策である。
しかしながら、片側駆動を行う場合、図16に関して説明したように、縦ライン反転駆動を実現するためにはドライバ出力の各チャネル(奇数チャネル及び偶数チャネル)毎に正極性の駆動電圧及び負極性の駆動電圧を出力できるようにドライバを構成する必要がある。このためには、基準電源数やアナログスイッチを倍に増やす(つまり、16階調を実現するために32個の階調電圧を作成する)必要があり、この結果、ドライバ内の階調電圧作成部及びセレクタ部の回路規模が増大するといった問題があった。これは、ドライバ全体の回路規模の増大につながり、ひいては額縁スペースの増大にもつながるので、好ましくない。
また、片側駆動で縦ライン反転駆動を実現するための他の手法として、従来使用されている基準電源の数を半分ずつ正側と負側に振り分けるといったことも考えられる。しかしこの方法では、表示階調数が半分になってしまい、良好な表示の実現という観点から好ましくない。
また、図16に示したように、従来のデータライン・ドライバでは、各階調電圧を伝達する階調電圧ラインは全チャネル分の回路に亘って配列されており、また、チャネル単位で見た場合、各階調電圧ラインからアナログスイッチで選択された規定の階調電圧はその箇所から出力配線を経由して出力されるようになっていたので、以下のような問題があった。
すなわち、出力配線の長さ(階調電圧を選択した箇所から出力パッドまでの距離)は各階調毎に一定ではなく、また配線層の抵抗は0ではないから、階調間で配線抵抗の差が生じるといった問題があった。かかる問題は、特に配線層の線幅が細い場合や、抵抗の大きい配線層を使用する場合には、一層顕著に現れる。
図16を参照すると、各階調電圧ラインは、中央の電圧(Vcとする)に対し正側と負側のグループに分けてそれぞれの電圧レベルに従って順番に配列されているが、正側と負側の同じ階調同士(例えばVA16とVB16)で配線位置が離れてしまうため、それぞれのアナログスイッチから出力パッドまでの距離、すなわち出力配線の長さに差が生じる。この結果、両者の配線抵抗に差が生じ、同じ階調の正側と負側で出力抵抗が異なり、出力抵抗及びデータラインの抵抗の和(Rとする)と液晶パネルの負荷容量(Cとする)とをまとめて考えた場合、CRで決まる時定数に差が生じる。これは他の階調でも同様である。
液晶パネルの駆動時間を十分長く確保できれば問題はないが、高精細表示あるいは多階調表示への応用のため駆動時間に制限があり十分な充電時間がとれない場合には、ドライバ入力での正負の基準電圧が同じレベル(例えば、V9−Vc=V4−Vc)であったとしても、図17に示すように、正極性と負極性とでは同一時間内に画素に印加される電圧va,vbは異なる(va≠vb)。この結果、階調毎に階調電圧がばらつき、階調間の変動が大きくなるといった問題があった。
なお、図17において、例えばva16は、階調レベルVA16の階調電圧VR32と中央の電圧Vcとの電位差により画素に印加される電圧を示し、同様にvb16は、階調レベルVB16の階調電圧VR16と中央の電圧Vcとの電位差により画素に印加される電圧を示す。
また、図16に示したような階調電圧ラインの配列形態では、奇数チャネルの出力配線と負側の階調電圧ラインの交差部、及び、偶数チャネルの出力配線と正側の階調電圧ラインの交差部は、それぞれ回路的に空きスペースとなる(つまりアナログスイッチが設けられていない)ため、ドライバをICとして実現する場合にチップサイズが大きくなってしまうといった課題もあった。
特開平9−319340号公報(平成9年12月12日公開)
特許第3307308号公報(平成14年5月17日公開)
特開平6−324642号公報(平成6年11月25日公開)
本発明の主な目的は、上述した従来技術における課題に鑑み、液晶の劣化防止とフリッカを抑えた良好な表示を実現する一方で、額縁スペースの削減を図ることができるデータライン・ドライバを提供することにある。
本発明の他の目的は、反対極性の同じ階調同士の階調電圧間のばらつきを少なくし、ひいては品質の良い多階調表示を可能とするデータライン・ドライバを提供することにある。
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の基本形態によれば、液晶パネルに配列された各データラインを駆動するディジタル方式のデータライン・ドライバであって、外部からのクロックに応答してデータを取り込むデータ入力部と、複数の階調レベルに応じた基準電圧を有する基準電源部と、前記基準電源部から前記データに応じた規定の基準電圧を選択するセレクタ部と、前記セレクタ部で選択された基準電圧をそれぞれ表示データとして各データラインに出力する出力部とを具備し、前記データ入力部と前記出力部が、それぞれ外部からのデータ切り換え制御信号に基づいて、前記各データラインの隣合うチャネル間でデータの入れ換えを行うデータクロス機能を有し、隣接出力チャネル間において、極性反転した電圧を出力できることを特徴とするデータライン・ドライバが提供される。
より詳細にいえば、本発明は、液晶パネルに配列されたデータラインを駆動するデータライン・ドライバであって、前記データライン・ドライバ内に、データ切り換え信号に基づいて、前記データライン・ドライバの第1のチャネルから出力されるべき第1のデータを第2のチャネルへ、第2のチャネルから出力されるべき第2のデータを第1のチャネルへ、入れ換えて供給する入力側データクロス部と、前記第1のチャネルに接続され、極性反転駆動における正側の基準電圧を有する第1の基準電源部と、前記第2のチャネルに接続され、極性反転駆動における負側の基準電圧を有する第2の基準電源部と、前記第1又は第2のデータに応じて、前記第1又は第2の基準電源部より、所定の基準電圧を選択するセレクタ部と、前記データ切り換え制御信号に基づいて、前記セレクタ部から出力された、前記第1のチャネルの前記第2のデータに対応する第2のデータ電圧を前記第2のチャネルへ、前記第2のチャネルの前記第1のデータに対応する第1のデータ電圧を前記第1のチャネルへ、入れ換えて出力する出力側データクロス部とを備えるデータライン・ドライバを提供する。
また、本発明の好適な実施形態においては、第1の基準電源部及び第2の基準電源部の一方が奇数チャネルに割り当てられ、且つ、他方が偶数チャネルに割り当てられる。さらに、本発明の好適な実施形態においては、第1のチャネルと第2のチャネルとが隣接して配置される。
上述した本発明に係るデータライン・ドライバの構成によれば、隣合うチャネル間でデータの入れ換えを行うデータクロス機能を入力側データクロス部(データ入力部)と入力側データクロス部(出力部)にそれぞれ持たせているので、同一チャネルのデータラインに対して正極性と負極性の駆動電圧を交互に出力することができる。つまり、交流駆動を容易に行うことができ、これによって液晶の劣化防止を図ることが可能となる。
また、階調電圧を作成するための第1及び第2の基準電源部をそれぞれ各データラインの奇数チャネル及び偶数チャネルに割り当てているので、例えば、第1の基準電源部を正側に、第2の基準電源部を負側に設定することにより、隣合うチャネルのデータラインに対して異なる極性の駆動電圧を同時に出力することができる。つまり、縦ライン反転駆動を行うことができ、これによって画面のフリッカの抑制を図り、ひいては良好な表示を実現することが可能となる。
さらに、各データラインの奇数チャネルと偶数チャネルにそれぞれ専用に基準電源部を割り当てているので、従来形に見られたように基準電源数やアナログスイッチを倍に増やすことなく、縦ライン反転駆動を片側駆動方式で実現することができる。これによって、ドライバ内の階調電圧作成部やセレクタ部の回路規模を縮小し、ひいては額縁スペースの削減を図ることが可能となる。
また、本発明の実施形態によれば、上述したデータライン・ドライバにおいて、第1及び第2の基準電源部が、それぞれ複数の基準電圧から複数の階調レベルに応じた基準電圧をそれぞれ作成する第1及び第2の階調電圧作成部を有し、セレクタ部が、第1及び第2の階調電圧作成部で作成された複数の階調電圧をそれぞれ対応する奇数チャネル及び偶数チャネルに伝達する第1及び第2の階調電圧ライン群を有し、該第1及び第2の階調電圧ライン群の各々の同じ階調同士のラインを隣合わせに配列し、且つ、階調電圧の順序に従って交互に配列したことを特徴とするデータライン・ドライバが提供される。
この構成によれば、第1及び第2の階調電圧ライン群の各々の同じ階調同士のラインを隣合わせに配列し、且つ、各階調電圧ライン群の各々の階調電圧ラインを交互に階調電圧の順序に従って配列しているので、例えば第1の階調電圧ライン群を正側に、第2の階調電圧ライン群を負側に割り当てることにより、正側と負側の同じ階調同士の配線位置を相対的に近づけることができる。この結果、両者の出力配線の長さの差は小さくなり、配線抵抗の差も小さくなる。
従って、正極性と負極性とで同一時間内に画素に印加される電圧の差を縮小することができ(図10参照)、これによって、反対極性の同じ階調同士の階調電圧間のばらつきを少なくすることができる。これは、品質の良い多階調表示の実現に寄与するものである。
また、上述したように第1,第2の階調電圧ライン群を特定の配列形態で配置することにより、従来形(図16参照)に見られたような無駄な空きスペースを無くすことが可能となる。これは、ドライバをICとして実現する場合にチップサイズの縮小化に寄与する。
本発明によれば、液晶の劣化防止とフリッカを抑えた良好な表示を実現する一方で、額縁スペースの削減を図ることが可能となる。また、反対極性の同じ階調同士の階調電圧間のばらつきを少なくし、ひいては品質の良い多階調表示を実現することができる。
図1には本発明の第1実施形態に係るLCDのデータライン・ドライバの構成が示される。本実施形態は16階調ディジタル方式のデータライン・ドライバであり、その基本的な構成は図13に示したデータライン・ドライバと同じであるので、その説明は省略する。
本実施形態に係るデータライン・ドライバの構成上の特徴は、(1) 階調電圧作成部として、予め各データラインの奇数チャネルOCH及び偶数チャネルECHに対し専用に割り当てられた正側基準電源部15及び負側基準電源部16を設けたこと、(2) ドライバ外部からのデータ切り換え制御信号POLに基づいて隣合うチャネル間でデータの入れ換えを行うデータクロス機能をデータ入力部10と出力部18にそれぞれ持たせたこと、である。
本実施形態では、正側及び負側の各基準電源部15,16は、それぞれ16本の基準電圧V16〜V31,V0〜V15を16階調の階調電圧として、セレクタ部17の対応する奇数チャネル及び偶数チャネルにつながる階調電圧ラインに直接出力している。16階調の階調電圧は、そのうちの一つが、デコーダ部14のデコード結果に基づいてセレクタ部17内の対応するアナログスイッチにより選択出力される。
なお、データ入力部10とシフトレジスタ部11に入力されている信号R/Lは、データのシフト方向を切り換えるための制御信号である。また、シフトレジスタ部11から出力されている信号SPは、データレジスタ部12によるデータ取り込みのタイミングを制御するための信号である。
図2にはデータ入力部10の回路構成が示される。図示の回路は、データの1ビットについてデータクロス機能を実現する場合の構成例で、データを右シフト及び左シフトに対して使用可能な構成例を示している。図中、FF1〜FF6はクロックCLKに応答するフリップフロップ、FF7〜FF12はクロックCLK1(クロックCLKを1/2分周したクロック)に応答するフリップフロップ、SL1〜SL6はシフト方向切り換え制御信号R/Lに応答するセレクタ、SL7〜SL12はデータ切り換え制御信号POLに応答するセレクタを示す。最終段のフリップフロップ群FF7〜FF12から出力される各データ(3) 及び(4) と各制御信号R/L及びPOLとの関係については、図3に示される通りである。
図4にはデータ入力部10の回路動作のタイミングの一例が示される。図中、R1,R2,………,R80は、それぞれ赤(R)の1クロック目のデータ、2クロック目のデータ、………、80クロック目のデータといった具合に入力データを表している。緑(G)のG1,G2,………,G80と、青(B)のB1,B2,………,B80についても同様である。図4の例では、80クロック分のデータをR,G,Bの3系統で入力した場合の240出力の場合が示されている。
先ず、クロックCLKにより取り込まれたデータは、1段目のフリップフロップ群FF1〜FF6を通り、動作タイミング図の(1) のようになる。更に2段目のフリップフロップ群FF7〜FF12を通過すると、(2) のようになる。このようにして(1) と(2) でタイミング的に揃った6個のデータを、各セレクタSL1〜SL12においてシフト方向切り換え制御信号R/Lとデータ切り換え制御信号POLによりそれぞれ選択する。選択されたデータは、最終段のフリップフロップ群FF7〜FF12においてクロックCLK1のタイミングで取り込まれ(動作タイミング図の(3) ,(4) 参照)、データレジスタ部12(図1参照)へ送られる。
この時、図3に示すように、隣合うチャネルの出力は、データ切り換え制御信号POLのレベル(1又は0)に応じて交互に入れ換えられている。
図5には出力部18の回路構成が示される。この回路は、データ切り換え制御信号POLに応答するインバータINVと、セレクタ部17から供給される隣合うチャネル間のデータを対応するチャネルにそのまま出力するか、或いは入れ換えて出力するかを選択するスイッチ群とから構成されている。このスイッチ群は、例えばデータD1,D2について見ると、データ切り換え制御信号POLによりデータD1を対応するチャネル(データラインQ1)に送出するスイッチSW11と、インバータINVの出力によりデータD1を隣のチャネル(データラインQ2)に送出するスイッチSW12と、インバータINVの出力によりデータD2を隣のチャネル(データラインQ1)に送出するスイッチSW21と、データ切り換え制御信号POLによりデータD2を対応するチャネル(データラインQ2)に送出するスイッチSW22とを有している。
以上説明したように、本実施形態に係るデータライン・ドライバの構成によれば、データ入力部10と出力部18においてそれぞれデータ切り換え制御信号POLにより隣合うチャネル間でデータの入れ換えを行うようにしているので、同一チャネルのデータラインに対して正極性と負極性の駆動電圧を交互に出力することができる。つまり、交流駆動を行うことができ、これによって液晶の劣化防止を図ることができる。これは、液晶の長寿命化にも有効である。
また、階調電圧を作成するための正側及び負側の各基準電源部15,16をそれぞれ各データラインの奇数チャネルOCH及び偶数チャネルECHに割り当てているので、隣合うチャネルのデータラインに対して異なる極性の駆動電圧を同時に出力することができる。つまり、縦ライン反転駆動を行うことができ、これによって画面のフリッカの抑制を図ることができる。これは、良好な表示の実現に寄与する。
さらに、奇数チャネルOCHと偶数チャネルECHにそれぞれ専用に基準電源部15,16を割り当てているので、従来形に見られたように基準電源数やアナログスイッチを増やすことなく、縦ライン反転駆動を片側駆動方式で実現することができる。つまり、片側駆動の実現により額縁スペースの削減を図ることが可能となる。
図6には本発明の第2実施形態に係るLCDのデータライン・ドライバの構成が示される。本実施形態に係るデータライン・ドライバは、上述した第1実施形態(図1参照)の構成と比べて、正側及び負側の各基準電源部15a,16aにそれぞれ階調電圧作成部21,22を内蔵させた点で異なっている。他の構成については第1実施形態と同じであるので、その説明は省略する。
正側及び負側の各階調電圧作成部21,22は、例えば図14に示したような抵抗アレイ型D/Aコンバータの形態でそれぞれ構成することができる。本実施形態では、正側及び負側の各基準電源部15a,16aにおいて各階調電圧作成部21,22は、それぞれ5本の基準電圧V5〜V9,V0〜V4から16階調のレベルに応じた基準電圧をそれぞれ作成している。作成された16階調の電圧は、セレクタ部17の対応する奇数チャネル及び偶数チャネルにつながる階調電圧ラインにそれぞれ出力され、各々一つの電圧が、デコーダ部14のデコード結果に基づいてセレクタ部17内の対応するアナログスイッチにより選択出力される。
この第2実施形態によれば、上述した第1実施形態(図1参照)で得られた効果に加えて、外部からの入力基準電源数を第1実施形態に比べて少なくできるという利点が得られる。
図7には本発明の第3実施形態に係るLCDのデータライン・ドライバの構成が示される。本実施形態に係るデータライン・ドライバは、上述した第2実施形態(図6参照)の構成と比べて、デコーダ部14aに階段状電圧制御部を内蔵させた点で異なっている。他の構成については第2実施形態と同じであるので、その説明は省略する。
デコーダ部14aにおける階段状電圧制御部は、データ入力部10からデータレジスタ部12及びラッチ部13を介して入力される6ビットのデータのうち2ビットのデータと外部から供給される制御信号AP,BPとに基づいて4階調レベルを指示する階段状電圧制御信号を出力する機能を有している。この第3実施形態では、セレクタ部17において、上記階段状電圧制御信号に基づいて作成した階段状電圧を、正側及び負側の各階調電圧作成部21,22で作成された16階調の電圧にそれぞれ重畳させることを特徴としている。
図8には本実施形態における階調制御の原理が示される。図8(a)に示すように、デコーダ部では、ラッチ部から供給される6ビットのデータのうち上位4ビットを上位デコード部でデコードし、16階調の電圧V0及びVR01〜VR15の中から1つを選択する。一方、下位2ビットのデータを下位デコード部でデコードし、制御信号AP,BPを用いて4階調レベルを指示する階段状電圧制御信号を作成する(図8(b)参照)。そして、この階段状電圧制御信号に基づいて階段状電圧を作成し(図8(c)参照)、これを、16階調の電圧V0及びVR01〜VR15にそれぞれ重畳させることで、16×4=64階調の表示を実現することができる。
この第3実施形態によれば、上述した第2実施形態(図6参照)で得られた効果に加えて、第2実施形態と同じ入力基準電源数でありながら表示階調数を増やすことができるという利点が得られる。これは、多階調表示の実現に大いに有効である。
図9には本発明の第4実施形態に係るLCDのデータライン・ドライバにおける要部の構成(階調電圧ラインの配列)が示される。図中、20は抵抗アレイ型D/Aコンバータの形態で構成された階調電圧作成部を示す。この階調電圧作成部20は、正側の基準電源として入力される5本の基準電圧V5〜V9から、16個の抵抗器を用いてV5〜V6の間、………、V8〜V9の間をそれぞれ4等分に分圧することで、VR17〜VR32の正側の16階調(VA01〜VA16)の電圧を作成し、また、負側の基準電源として入力される5本の基準電圧V0〜V4から、16個の抵抗器を用いてV0〜V1の間、………、V3〜V4の間をそれぞれ4等分に分圧することで、VR01〜VR16の負側の16階調(VB01〜VB16)の電圧を作成している。作成された正側の16階調の電圧VR17〜VR32は、セレクタ部の対応する奇数チャネル(Q1,Q3,……)につながる階調電圧ラインにそれぞれ出力され、同様に、負側の16階調の電圧VR01〜VR16は、セレクタ部の対応する偶数チャネル(Q2,Q4,……)につながる階調電圧ラインにそれぞれ出力される。そして、各々一つの電圧が、セレクタ部内の対応するアナログスイッチにより選択出力される。
なお、図9の例示では階調電圧作成部20は1つのブロック単位で構成されているが、機能的には、第2実施形態(図6参照)における2つの階調電圧作成部21,22と同じである。
この第4実施形態の構成上の特徴は、正側の階調電圧ライン群(VR17〜VR32)と負側の階調電圧ライン群(VR01〜VR16)の各々の同じ階調同士(例えばVA16とVB16、VA15とVB15、……)のラインを隣合わせに配列し、且つ、正負交互に階調電圧の順序に従って配列したことである。
図16に示した従来形の配列形態では、正側と負側の同じ階調同士(例えばVA16とVB16)で配線位置が離れていたが、この第4実施形態に係る配列形態では、正側と負側の同じ階調同士(VA16とVB16)のラインの位置を近づけることができる。この結果、両者のそれぞれのアナログスイッチから出力パッドまでの距離、すなわち出力配線の長さの差は小さくなり、配線抵抗の差も小さくなる。
従って、図10に示すように、正極性と負極性とで同一時間内に画素に印加される電圧va,vbの差を極小にすることができる(va≒vb)。これによって、反対極性の同じ階調同士の階調電圧間のばらつきを少なくすることができ、ひいては品質の良い多階調表示を実現することが可能となる。
また、正側及び負側の各階調電圧ライン群を上述したように特定の配列形態で配置することにより、従来形(図16参照)に見られたような無駄な空きスペースを無くすことができる。これは、ドライバをICとして実現する場合にチップサイズの縮小化に寄与する。
図11には本発明の第5実施形態に係るLCDのデータライン・ドライバにおける要部の構成(階調電圧ラインの配列)が示される。この第5実施形態の構成上の特徴は、正側の階調電圧ライン群(VR17〜VR32)と負側の階調電圧ライン群(VR01〜VR16)の各々の同じ階調同士のラインを2本単位で(例えばVA16,VA15とVB16,VB15、………)隣合わせに配列し、且つ、正負交互に階調電圧の順序に従って配列したことである。
この第5実施形態によれば、上述した第4実施形態(図9参照)と同等の効果を奏することができる。
なお、本実施形態では正側と負側で同じ階調同士のラインを2本単位で隣合わせに配列したが、両者間の配線抵抗の差が許容できる範囲であれば、2本に限定されることなく、任意の複数本毎に交互に配列することも可能である。
図12には本発明の第6実施形態に係るLCDのデータライン・ドライバにおける要部の構成(階調電圧ラインの配列)が示される。この第6実施形態の構成上の特徴は、正側の階調電圧ライン群(VR17〜VR32)と負側の階調電圧ライン群(VR01〜VR16)の各々において最も高い電圧のライン(VR32,VR16)、最も低い電圧のライン(VR17,VR01)、2番目に高い電圧のライン(VR31,VR15)、2番目に低い電圧のライン(VR18,VR02)、………の順序で各階調電圧ラインを配列し、且つ、正負交互に配列したことである。
この第6実施形態によれば、上述した第4実施形態(図9参照)で得られた効果に加えて、黒レベル及び白レベルの階調にそれぞれ対応する高電圧及び低電圧の各ラインが近接していることにより、配線抵抗による偏差の影響を小さくできるという利点が得られる。
ここで、参考のため、本発明と関連する技術文献である特開平10−62744号公報(特許第3056085号公報)の「特許請求の範囲」の部分を記載しておく。この技術文献に記載の発明は、本発明より後に出願されたものであるが、本発明より先に特許登録がなされている。
〔請求項1〕 供給されるデータビットに応じて、液晶駆動電圧の1/2の電圧または液晶共通電極の電圧を基準として正及び負の電圧を発生させ、出力端子に時系列に正及び負の電圧を交互に出力するマトリクス型液晶表示装置の駆動回路であって、該駆動回路が、前記データビットを第1の系統の回路又は第2の系統の回路の何れかを選択して供給する第1のスイッチ回路と、前記第1の系統の回路に設けられ、前記第1のスイッチ回路が前記第1の系統の回路を選択した時に前記データビットを第1の電圧レベルにシフトさせる第1のレベルシフト回路と、前記第2の系統の回路に設けられ、前記第1のスイッチ回路が前記第2の系統の回路を選択した時に前記データビットを前記第1の電圧レベルよりも低圧の第2の電圧レベルにシフトさせる第2のレベルシフト回路と、前記第1のスイッチ回路により選択された前記第1の系統の回路又は前記第2の系統の回路からの出力を対応する出力端子に与えるように切り換える第2のスイッチ回路とを備えたことを特徴とするマトリクス型液晶表示装置の駆動回路。
〔請求項2〕 前記第2のスイッチ回路の耐圧は、液晶のしきい電圧値の2倍以上に設定したものであることを特徴とする請求項1に記載のマトリクス型液晶表示装置の駆動回路。
〔請求項3〕 前記第1の系統の回路と前記第2の系統の回路には、それぞれ高圧側オペアンプと低圧側オペアンプとを有し、これら高圧側オペアンプ及び低圧側オペアンプの差動入力段は、導電型の異なるトランジスタで構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のマトリクス型液晶表示装置の駆動回路。
〔請求項4〕 前記第1の系統の回路と前記第2の系統の回路には、それぞれ高圧側階調電圧発生回路と低圧側階調電圧発生回路とを有し、これら高圧側階調電圧発生回路と低圧側階調電圧発生回路は、外部入力に基づいて液晶に階調表示する階調電圧が微調整されるものであることを特徴とする請求項1に記載のマトリクス型液晶表示装置の駆動回路。
〔請求項5〕 前記高圧側階調電圧発生回路と前記低圧側階調電圧発生回路は、抵抗分割方式により液晶γ曲線に合うような抵抗比に階調電圧が微調整されるものであることを特徴とする請求項4に記載のマトリクス型液晶表示装置の駆動回路。
〔請求項6〕 隣接する全ての出力端子間には共通端子スイッチが設けられ、全出力端子には前記共通端子スイッチを介して液晶駆動電圧の1/2の電圧が与えられることを特徴とする請求項1に記載のマトリクス型液晶表示装置の駆動回路。