JP4080198B2 - 偏光変換素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、偏光変換素子およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ランダムな偏光の光を、偏光方向の揃った1種類の直線偏光に変換して出射する偏光変換素子としては、特開平7−294906号公報に記載されたものが知られている。図11(A)には、このような偏光変換素子の斜視図、図11(B)にはその平面図およびこの偏光変換素子における偏光変換を例示した。この偏光変換素子は、偏光分離膜11を有する線状の偏光ビームスプリッタ110と、反射膜12を有するプリズム120とを交互に貼り合わせたものである。また偏光分離素子の出射面の一部に選択位相差板として、λ/2位相差板(1/2波長位相差板)130を備えている。
【0003】
この構成の偏光変換素子において、光入射面に入射したS偏光成分(偏光ベクトルが入射面に垂直な偏光、S波)とP偏光成分(偏光ベクトルが入射面内にある偏光、P波)とを含む入射光は、まず、偏光分離膜11によりS波とP波とに分離される。P波は、偏光分離膜11をそのまま透過し、λ/2位相差板130によってS波に変換されて出射する。またS波は偏光分離膜11によってほぼ直角に反射し、反射膜12によりさらに直角に反射し、出射する。従って、この偏光変換素子に入射したランダムな偏光方向を有する光は、すべてS波の光となって出射する。
【0004】
また、このような構造の偏光分離素子の製造方法については、特開平2−227901号、特開平10−39136号、特開平10−90520号に記載されている。これらは偏光分離膜と反射膜の形成された透光性板材を積層接着した後、積層面に対し例えば45°の角度で切断してブロックを切り出し、光学研磨加工を行った後に、光出射面に部分的に位相差板を1本ずつ貼りつけるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図11のような偏光分離素子においては、λ/2位相差板がむき出しになって光出射面に貼り付けられていることから、耐熱性、耐候性や耐久性などの面で改善すべき点があった。また素子本体には通常ガラスが用いられ、その出射面には反射防止膜が施され、この面に貼り付けられるポリカーボネートなどのプラスチックのλ/2位相差板は素子本体のガラス出射面との密着性がよくないという問題点があった。また液晶プロジェクタなどの投射型表示装置においては、高出力の光源の近くに偏光変換装置を配置して用いることから、耐熱性や耐久性のより優れた素子が強く望まれてきた。
【0006】
また偏光分離素子の製造において、光入射面と光出射面を研磨仕上げした後に偏光ビームスプリッタなどの光出射面にλ/2位相差板を1本ずつ貼り付ける工程を有するため、その生産性の点でも問題があった。
【0007】
本発明は、従来技術における上述の課題を解決した偏光分離素子およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の偏光変換素子は、第1の主面を光入斜面、第2の主面を光出射面とする平板状の透光性基材中に、第1および第2の主面に対し傾斜して間隔をおいて交互に平行配置された第1の機能性光学膜と第2の機能性光学膜とを備え、第1の機能性光学膜は第1の主面側から順に配置された偏光分離膜と位相差板からなり、第2の機能性光学膜は反射膜であることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、偏光変換素子を構成する上で、平板状の透光性基材が光入射面を形成する第1の主面と光出射面を形成する第2の主面とは互いにほぼ平行であることが好ましく、また第1の機能性光学膜および第2の機能性光学膜はほぼ等間隔に配置されていることが好ましく、さらに第1の機能性光学膜および第2の機能性光学膜が主面とのなす角はほぼ45°であることが好ましい。
【0010】
本発明において、位相差板としてP波をS波に変換するλ/2位相差板を用いることにより、偏光変換素子の光入射面にランダム偏光を入射し、偏光分離膜を透過したP波をλ/2位相差板でS波に変換して出射させ、他方で偏光分離膜を反射したS波を反射膜で反射させて出射するとことにより、偏光方向をS波に揃えた光を出射することができる。
【0011】
本発明に用いるこのような位相差板として、ポリカーボネート系フィルムやポリアクリレート系フィルムなどを2軸延伸したプラスチックフィルムを用いることができる。
【0012】
本発明の偏光変換素子によれば、位相差板がむき出しではなく、複数の透光性部材の接合部に偏光分離膜に隣接して挟み込まれて接着され配置されているので、位相差板として2軸延伸プラスチックフィルムが用いられた場合でも、ブラスチックフィルムの位相差板が熱によって変形したりはがれたりするのを避けることができる。このため耐熱性や耐候性などについて、従来に比べ大幅な向上が得られる。なお、本発明に用いる耐熱性の2軸延伸プラスチックフィルムとしては、ポリアクリレート系フィルムが特に優れていることがわかった。また本発明の偏光分離素子における接着面には、各種光学接着剤を用いることができる。
【0013】
本発明の偏光変換素子においては、光の反射損失を低減するために、光入射面や光出射面に反射防止膜を設けることができる。ここで用いる反射防止膜としては、例えばTiO2とSiO2とを5層程度交互に蒸着し積層した積層膜を用いることができる。本発明の偏光変換素子においては、従来の偏光変換素子が光出射面に配置していた位相差板を素子の内部に設けるようにしたので、光出射面には位相差板を設ける必要がない。このため本発明の偏光変換素子においては、位相差板に煩わされることなく、密着性の良好な反射防止膜を光入射面や光出射面に設けることができる。
【0014】
このようにして、本発明により耐熱性の優れた偏光変換素子が得られ、例えば100℃程度の高温度で長時間使用する液晶プロジェクタに用いた場合にも、劣化が少ないという利点を有する偏光変換素子が製造可能となった。
【0015】
本発明の偏光変換素子の製造方法は、平行な2面を有する第1の透光性板材の一方の面に偏光分離膜を形成する偏光分離膜形成工程と、平行な2面を有する第2の透光性板材の一方の面に反射膜を形成する反射膜形成工程と、位相差板と偏光分離膜の形成された前記第1の透光性板材と反射膜の形成された前記第2の透光性板材とを位相差板が前記偏光分離膜に隣接するように順次積層し接着して積層体を形成する積層接着工程と、この積層体を積層面に対し所定の角度で切断加工し互いに平行な光入射面と光出射面とを有する偏光変換素子ブロックを形成する偏光変換素子ブロック形成工程と、この偏光変換素子ブロックの光入射面と光出射面とを光学的に研磨する光学研磨工程とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また本発明の偏光変換素子の製造方法は、平行な2面を有する第1の透光性板材の一方の面に偏光分離膜を形成する工程と、この平行な2面を有する前記透光性部材のもう一方の面に反射膜を形成する工程と、位相差板と偏光分離膜および反射膜の形成された前記第1の透光性板材と偏光分離膜も偏光分離膜反射膜も形成していない第2の透光性板材とを、位相差板が偏光分離膜に隣接するように順次積層し接着して積層体を形成する積層接着工程と、この積層体を積層面に対し所定の角度で切断加工し、互いに平行な光入射面と光出射面とを有する偏光変換素子ブロックを形成する偏光変換素子ブロック形成工程と、この偏光変換素子ブロックの前記光入射面と前記光出射面とを光学的に研磨する光学研磨工程とを備えたものであってもよい。
【0017】
上記本発明の偏光変換素子の製造方法においては、偏光分離膜と反射膜が形成された第1と第2の透光性板を交互に積層する際に、偏光分離板にλ/2位相差板を接着し、これを第1と第2の透光性板の間に挟み込むようにすればよい。このため、従来のように偏光変換素子ブロックを形成し光出射面を研磨加工した後にλ/2位相差板を1枚ずつ貼り付けるという手間のかかる工程が不要となり、従来に比べて大幅な生産性向上が得られる。
【0018】
本発明の偏光変換素子の製造方法においては、上記積層接着工程が、複数の第1の透光性板材と複数の第2の透光性板材と位相差板とを光硬化性接着層を介して積層し、光照射により接着する光照射接着工程を備えているものであってもよい。このように、光硬化性接着材を用い、光照射によって接着する工程を用いることにより、偏光変換素子の製造の生産性及び信頼性を高めることができる。
【0019】
この光照射接着工程は、光照射接着工程が、第1の透光性板材、位相差板および第2の透光性板材を光硬化性接着層を介して積層する工程と、光を照射して光硬化性接着層を硬化させる工程とを順次繰り返すものであってもよい。
【0020】
また、この光照射接着工程は、光照射接着工程が、第1の透光性板材、位相差板および第2の透光性板材を光硬化性接着層を介して順次積層して積層体を形成する工程と、積層体を形成した後に光を照射して光硬化性接着層を硬化させる工程を備えたものであってもよい。
【0021】
この光照射接着工程は、第1および第2の透光性板材の互いに平行な面に対し、角度をなす方向から光の照射を行って光硬化を行うことが好ましい。こうすることによって光が接着層に効率よく照射され、短い照射時間で確実な接着を行なうことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に従い詳細に説明する。
(実施の形態1)偏光変換素子1
【0023】
図1(A)は本発明の一実施形態の偏光変換素子の模式的斜視図、また図1(B)はその平面図である。
【0024】
図1(A)および(B)において、偏光変換素子100はランダムな偏光光束を偏光方向が一方向に揃った光束に変換して出射する作用を持つ直方体形状の素子であり、断面がほぼ平行四辺形の柱状の第1の透光性部材101と第2の透光性部材102が交互に接合されて形成されている。この偏光変換素子100の一方の面を光入射面100aとし、これとほぼ平行な他方の面を光出射面100bとしている。
【0025】
光入射面100aおよび光出射面100bに対して所定の角度をなす第1の透光性部材101と第2の透光性部材102の接着面には、偏光分離膜11とこの偏光分離膜に隣接してλ/2位相差板130が配置された接着面と、反射膜12が形成された接着面とが、図1(A)に示されたように交互に配列されている。
【0026】
第1の透光性部材101および第2の透光性部材102には、磨きガラスやフロートガラスなどの板ガラスを用いることができる。これらの透光性部材はガラス以外の透光性材料、例えばアクリル樹脂やポリカーボネ−ト樹脂などの透光性樹脂を用いることもできる。
【0027】
反射膜12としては、例えばアルミニウム膜のような反射膜を用いることができるが、誘電体多層膜を積層し、偏光分離膜11で反射された直線偏光成分のみを選択的に反射し、他の直線偏光成分は反射しないように構成することによって、反射による損失のより少ない反射膜が形成できる。
【0028】
図2は本実施形態の偏光変換素子100の一部を模式的平面図で示し、この偏光変換素子100に入射したランダムな偏光の光が一方向の偏光に変換されて出射する様子を模式的に示したものである。
【0029】
ランダム偏光(S+P)の入射光は、偏光変換素子100の光入射面100aから偏光分離膜11に向けて入射し、透光性部材101内を通過して偏光分離膜11にてランダム偏光の成分中のP波が透過しS波が反射する。偏光分離膜11を透過したP波は、偏光分離板に隣接したλ/2位相差板130で直ちにS波に変換され、透光性部材102内を進んで光出向面100bから出射する。他方で偏光分離膜11を反射したS波は、透光性部材101内を進み、反射膜12にて反射され、光出射面100bから出射する。こうして偏光変換素子に入射した光は、いずれもS波となって偏光変換素子の光出射面から出射する。
【0030】
本実施形態の偏光変換素子においては、図3に例示したように、接着のための接着剤層を適宜設けることができる。
【0031】
図3の(A)は、第1の透光性部材101の互いに平行で対向する2つの側面のうち、一方の面に偏光分離膜11が形成され、さらにこの面にλ/2位相差板130が接着されており、また第2の透光性部材102の互いに平行で対向する2つの側面のうち、一方の面に反射膜12が形成されており、これら第1の透光性部材101と第2の透光性部材102が接着層20により交互に配列され、接着されているものを模式的に示した平面図である。
【0032】
また図3の(B)は、第1の透光性部材101の互いに平行で対向する2つの側面のうち、一方の面に偏光分離膜11が形成され、さらにこの面にλ/2位相差板130が接着され、もう一方の面には反射膜12が形成され、この第1の透光性部材101と第2の透光性部材102とが接着層20により交互に配列接着されたものを模式的に示した平面図である。
(実施の形態2)偏光変換素子の製造方法1
【0033】
図4は、本発明の偏光変換素子の製造方法の一実施形態における工程の流れ図である。図4において、第1の透光性板材101aに対し、工程603にて偏光分離膜を形成し、また第2の透光性板材102aに対し、工程604にて反射膜を形成する。これらの工程を経た第1の透光性板材と第2の透光性板材の間に、λ/2位相差板130を挟んで工程605にて積層・接着し、工程606にて硬化して積層体607を形成する。なお工程605と工程606とは一体化されていてもよい。次にこの積層体607を、工程608にてその積層面に対し所定の角度で切断し、偏光変換素子ブロック609を得る。続いてこの偏光変換素子ブロック609の光入射面および光出射面となる部分を工程610にて光学研磨して偏光分離素子100を得る。
【0034】
光学研磨を終えた偏光分離素子100の光入射面や光出射面には、光の反射損失を低減するための反射防止膜として、TiO2とSiO2とを交互に蒸着し積層した5層の積層膜を設ける。
【0035】
本発明の偏光変換素子においては、位相差板は素子の内部に設けられており、光出射面にはポリマーフィルムなどの位相差板を設けていない。このため位相差板の部分での反射防止膜の剥離の問題に煩わされることがない。また反射防止膜の形成時の偏光分離素子100の温度として、従来は光出射面に貼り付けられた位相差板を保護するために、70〜80℃程度に留めておかなけれはならなかったのに対し、本発明では100℃程度まで昇温が可能となり、密着性の良好な反射防止膜を形成することができる。
【0036】
図5は図4に示した本実施形態の工程の一部である板材の準備、積層・接着および硬化の様子を模式的に示した図である。図5(A)に示したそれぞれ複数枚の偏光分離膜11を形成した第1の透光性板材101a、反射膜12を形成した第2の透光性板材102aおよびλ/2位相差板130を、同図(B)に示したように積層し接着し、続いて同図(C)に示したように、紫外(UV)光を照射して硬化させる。UV光は透光性板材に対し垂直な方向から照射し、光硬化を行なう。このとき、透光性板材の板面に平行な方向から照射すると硬化する時間が短縮できて効率よく接着層の硬化を行なうことができる。
【0037】
図6は上記本発明の偏光変換素子の製造方法における積層体の切断工程を模式的に示したものである。積層体は図6(A)に示すように積層面に対し所定の角度、例えば45°で切断し、図6(B)に示すようにさらに端部を揃えるなどして偏光変換素子ブロック809を得る。
(実施の形態3)偏光変換素子の製造方法2
【0038】
図7は、本発明の偏光変換素子の製造方法の他の実施形態における工程の流れ図である。図7において、第1の透光性板材101aの一方の面に工程903にて偏光分離膜を形成し、工程904にて第1の透光性板材101aのもう一方の面に反射膜を形成する。この工程を経た第1の透光性板材101aとこれらの膜のいずれをも形成していない第2の透光性板材102aとの間に、λ/2位相差板130を挟んで工程905にて積層・接着し、工程906にて硬化して積層体907を形成する。なお工程905と工程906とは一体化されていてもよい。
【0039】
この積層体907を、工程908にてその積層面に対し所定の角度で切断し、偏光変換素子ブロック909を得る。続いて工程910にて、この偏光変換素子ブロック909の光入射面および光出射面となる部分を光学研磨して偏光変換素子100を得る。
【0040】
図8は図7に示した本実施形態の工程の一部である板材の準備、積層・接着および硬化の工程を模式的に示した図である。図8(A)に示したそれぞれ複数枚の偏光分離膜11および反射膜12を形成した第1の透光性板材101a、第2の透光性板材102aおよびλ/2位相差板130を、同図(B)に示したように積層し接着し、続いて同図(C)に示したように、紫外光を照射して硬化させる。
(実施の形態4)偏光変換素子の製造における光硬化方法
【0041】
図9は本実施の形態の偏光変換素子の製造方法における紫外光を用いた光硬化工程の上記とは別の実施形態を示したものである。図9(A)〜(C)において、まず第2の透光性板材102aと第1の透光性板材101aとを接着し、紫外光を照射して硬化、次にこれに位相差板130と第2の透光性板材102aとを接着し再び紫外光を照射して硬化、これにさらに第1の透光性板材101aを接着し紫外光を照射して硬化する、というように、接着と硬化を順次繰り返して積層体を形成する。
【0042】
こうすることによって効率よくしかも確実に接着層を硬化することができる。UV光は透光性板材に対し垂直な方向から照射し、光硬化を行なう。このとき、透光性板材の板面に平行な方向から照射すると硬化する時間が短縮できて効率よく接着層の硬化を行なうことができる。
(実施の形態5)偏光変換素子の評価
【0043】
まず、上記実施の形態2によって作製された偏光変換素子の反射防止膜の密着性を評価した。評価方法は、反射防止膜の形成された上記偏光変換素子の出射面に事務用セロハン粘着テープを貼り付け、その一端から引き剥がしたときの状態を調べるものである。その結果、反射防止膜の剥がれは全くなかった。比較のために、従来型の光出射面にポリマーフィルムの位相差板を設けた偏光変換素子の場合について同様の評価を行った結果、位相差板上の反射防止膜が剥がれて粘着テープ側に転写することが確認された。
【0044】
次に上記実施の形態2によって作製された反射防止膜つきの偏光変換素子を120℃の恒温槽で1000時間保持した後、および150℃の環境で200時間保持した後、目視によって評価を行った。その結果、どちらの場合にも偏光変換素子には変化が認められなかった。従来型の光出射面にポリマーフィルムの位相差板を設けた偏光変換素子の場合について同様の評価を行ったところ、どちらの場合も位相差板に変色とうねりが生じていることが見出された。
【0045】
このことから、本発明の偏光変換素子は、従来のものに比べ、反射防止膜の剥離などによる劣化が小さいこと、そして耐熱性に優れることがわかった。
(実施の形態6)表示装置への適用
【0046】
図10は本発明の偏光変換素子を投射型表示装置に適用した場合の一実施形態を示したものである。図10において、光源60から発した光は、第1および第2のレンズ系31、32を経て、偏光変換素子1にて一方向の偏光に効率よく変換され、全反射ミラー41で反射されて色分解フィルタ42、43、44に導かれてR(赤)G(緑)B(青)の3色の光に分解される。色分解フィルタ42を透過したR光は、全反射ミラー46を経て液晶装置51で変調されてダイクロイックプリズム36のR部に入射する。また色分解フィルタ42で反射したG、B光は、色分解フィルタ43でさらにG光とB光とに分けられる。このうちG光は液晶装置52で変調されてダイクロイックプリズム36のG部に入射する。またB光は全反射ミラー44、45を経て液晶装置53で変調されてダイクロイックプリズム36のB部に入射する。液晶装置でそれぞれに変調されたR、GおよびB光は、ダイクロックプリズム36で合成されてカラー映像が形成され、この映像が投射光学系37により、投射面70に投射される。
【0047】
このようにして本発明の偏光変換素子を投射型表示装置に適用すれば、むだなく光の変換が行えるので光の利用効率を高めることができ、スクリーン上に投射される映像を明るくすることができる。しかも本発明の偏光変換素子は位相差板が透光性部材に貼りつけられているのではなく、透光性部材の間に挟まれた構成であり、素子表面に露出したものではないため、強い光源にさらされて温度上昇がある場合でも、耐熱性を具備し安定してその機能を保つことができる。より具体的には、従来の素子表面に位相差板を貼り付けたものでは、長時間の使用により、位相差板の変色・うねりを生じ、着色による透過率低下、正確な位相変換ができなくなることによる有効光線の減少によって投射像が暗くなる問題があったが、本発明の偏光変換素子を使用した場合には、位相差板の劣化に起因するこれらの問題を生じないため、初期の投射照度を長時間維持できる。
【0048】
本発明の偏光変換素子は上記実施形態のほか、例えば上述のように前面型ではなく背面投射型の投射表示装置、カラーではなくモノクロ画像を投射するモノクロ投射型表示装置など、さまざまな投射表示装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の偏光変換素子は、位相差板が素子表面に露出していないため、従来の偏光変換素子に比べ、耐熱性、耐候性、耐久性の著しく優れたものが得られる。このため、本発明によれば、偏光変換素子に光源からの強い光線にさらされるなどして温度上昇があっても、安定してその機能を保つことが可能である。また本発明の偏光変換素子の製造方法によれば、位相差板は透光性板材を積層する工程で透光性部材の層の間に挟み込めばよく、偏光変換素子ブロックの光出射面の研磨後に各出射面に位相差板を貼るという従来の工程を必要としないので、従来に比べて製造工程が大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明の一実施形態の偏光変換素子の模式的斜視図、(B)はその平面図である。
【図2】 本実施形態の偏光変換素子の一部を模式的平面図で示し、この偏光変換素子に入射したランダムな偏光の光が一方向の偏光に変換されて出射する様子を模式的に示したものである。
【図3】 接着のために接着剤層を設けた本発明の偏光変換素子の実施形態を示す図である。
【図4】 本発明の偏光変換素子の製造方法の一実施形態における工程の流れ図である。
【図5】 図4に示した本発明の偏光変換素子の製造方法の一実施形態における工程の一部である板材の準備、積層・接着および硬化の様子を模式的に示した図である。
【図6】 (A)は上記本発明の偏光変換素子の製造方法における積層体の切断工程の一実施形態を模式的に示したものであり、(B)は切断された偏光変換素子ブロックを模式的に示したものである。
【図7】 本発明の偏光変換素子の製造方法の他の実施形態における工程の流れ図である。
【図8】 図7に示した本発明の偏光変換素子の製造方法の他の一実施形態における工程の一部である板材の準備、積層・接着および硬化を模式的に示した図である。
【図9】 本発明の偏光変換素子の製造方法における紫外光を用いた光硬化工程の別の一実施形態を示したものである。
【図10】 本発明の偏光変換素子を投射型表示装置に適用した場合の一実施形態を模式的に示した図である。
【図11】 (A)は従来技術による偏光変換素子の斜視図であり、(B)はその平面図およびこの偏光変換素子における光の偏光変換の様子を示す図である。
【符号の説明】
11……偏光分離膜、12……反射膜、20……接着層、31……第1のレンズ系、32……第2のレンズ系、36……ダイクロックプリズム、37……投射光学系、60……光源、70……投射面、100……偏光変換素子、100a……光入射面、100b……光出射面、101a……第1の透光性板材、101……第1の透光性部材、102……第2の透光性部材、102a……第2の透光性板材、130……λ/2位相差板、603,903……偏光分離膜形成工程、604.904……反射膜形成工程、605,905……積層・接着工程、606,906……硬化工程、607,907……積層体、608,908……切断工程、609,909……偏光変換素子ブロック、610,910……光学研磨工程。
Claims (11)
- 第1の主面を光入斜面、第2の主面を光出射面とする平板状の透光性基材中に、前記第1および第2の主面に対し傾斜して間隔をおいて交互に平行配置された第1の機能性光学膜と第2の機能性光学膜とを備え、前記第1の機能性光学膜は前記第1の主面側から順に配置された偏光分離膜と偏光分離膜の光出射面側に隣接して設けられた位相差板からなり、前記第2の機能性光学膜は反射膜であり、
前記偏光分離膜と前記位相差板と前記反射膜とが第1の主面に対して同一の方向に傾斜した状態で配置されることを特徴とする偏光変換素子。 - 前記位相差板が、2軸延伸プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
- 前記2軸延伸プラスチックフィルムが、ポリアクリレートフィルムであることを特徴とする請求項2記載の偏光変換素子。
- 光出射面に反射防止膜が被着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の偏光変換素子。
- 映像プロジェクタに組込んで用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の偏光変換素子。
- 平行な2面を有する第1の透光性板材の一方の面に偏光分離膜を形成する偏光分離膜形成工程と、平行な2面を有する第2の透光性板材の一方の面に反射膜を形成する反射膜形成工程と、位相差板と、偏光分離膜の形成された前記第1の透光性板材と、反射膜の形成された前記第2の透光性板材とを、前記位相差板が前記偏光分離膜に隣接するように順次積層し接着して積層体を形成する積層接着工程と、前記積層体を積層面に対し所定の角度で切断加工し、互いに平行な光入射面と光出射面とを有し、かつ前記偏光分離膜と前記反射膜と前記位相差板とが前記光入射面に対して同一の方向に傾斜した状態で配置される偏光変換素子ブロックを形成する偏光変換素子ブロック形成工程と、前記偏光変換素子ブロックの前記光入射面と前記光出射面とを光学的に研磨する光学研磨工程とを備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
- 平行な2面を有する第1の透光性板材の一方の面に偏光分離膜を形成する工程と、前記平行な2面を有する前記透光性部材のもう一方の面に反射膜を形成する工程と、位相差板と、偏光分離膜および反射膜の形成された前記第1の透光性板材と、偏光分離膜および反射膜のいずれをも形成していない第2の透光性板材とを、前記位相差板が前記偏光分離膜に隣接するように順次積層し接着して積層体を形成する積層接着工程と、前記積層体を積層面に対し所定の角度で切断加工し、互いに平行な光入射面と光出射面とを有し、かつ前記偏光分離膜と前記反射膜と前記位相差板とが前記光入射面に対して同一の方向に傾斜した状態で配置される偏光変換素子ブロックを形成する偏光変換素子ブロック形成工程と、前記偏光変換素子ブロックの前記光入射面と前記光出射面とを光学的に研磨する光学研磨工程とを備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
- 前記積層接着工程が、複数の第1の透光性板材と複数の第2の透光性板材と複数の位相差板とを、光硬化性接着層を介して積層し、光照射により硬化する光照射接着工程を備えていることを特徴とする請求項6または7記載の偏光変換素子の製造方法。
- 前記光照射接着工程が、前記第1の透光性板材、前記位相差板および第2の透光性板材を光硬化性接着層を介して積層する工程と、光を照射して前記光硬化性接着層を硬化させる工程とを順次繰り返すものであることを特徴とする請求項6または7記載の偏光変換素子の製造方法。
- 前記光照射接着工程が、前記第1の透光性板材、前記位相差板および前記第2の透光性板材を光硬化性接着層を介して順次積層して積層体を形成する工程と、前記積層体を形成した後に光を照射して前記光硬化性接着層を硬化させ工程を備えたものであることを特徴とする請求項6または7記載の偏光変換素子の製造方法。
- 前記積層接着工程が、前記第1および第2の透光性板材の互いに平行な面に対し、角度をなす方向から光の照射を行って光硬化を行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載の偏光変換素子の製造方法。
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