JP4079029B2 - 加工機におけるミスト回収機構 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、工具により工作物を加工する領域に冷却或いは潤滑剤を供給して加工を進める工作機械、特に研削盤における適用に好適なミスト回収機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、研削盤においては、ワークに対し回転砥石が研削作用する研削点近辺に研削液を供給しながら研削加工が行われる。研削点近辺に供給された研削液の大部分は、研削盤上に配置された所定の排出経路を通って研削液供給装置へ回収されるが、研削液の一部は霧状に飛散しミストとなって加工領域に滞留する。このため、従来の研削盤においては、研削領域をカバーで包囲し、この包囲空間の上部にミスト回収口を配置し、この回収口をミスト収集装置に接続してミストを回収するようにしている。これに対し、研削液の大部分は加工領域の直下に落下し、そこからベッド上に形成した研削液回収通路を経て研削液供給装置へ回収される。このため、研削液を液体状で回収する排出経路とミストを回収するミスト回収経路とが別系統となり、研削液及びミストの回収機構を複雑にし、別々の保守管理作業を必要とするなどの不具合を生じている。
【0003】
このような問題を回収するため、特開平5−16072号公報に記載される研削盤の研削液回収装置においては、砥石がワークに対し作用する加工領域の直下に落下する研削液の回収通路をベッド中に形成したダクトとして構成し、ミスト収集装置によりこのダクト内をバキューム作用し、これによりこのダクトを通して研削液とミストを研削盤の外部へ導き、そこから研削液は研削液回収装置へ直接回収するとともに、ミストはミスト収集装置に吸引させるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−16072号公報(第3頁、図1、図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の研削液回収装置では、ミスト収集装置のミスト取り入れ口は、研削盤のベッドに形成したダクトに開口すると共に研削液回収装置を構成する研削液貯蔵タンクに貯蔵される研削液の液面から離間して開口している。すなわち、ミスト収集装置は、ダクト内を通過するミストを収集すると共に、研削液貯蔵タンクへ回収されるときに噴霧化しタンク内に充満するミストをも収集する。このため、ミスト収集装置は、貯蔵タンク内のミストや空気を収集する分、ダクト内のミストつまり、加工領域からミストを吸引する吸引能力が低下されてしまい、加工領域に浮遊するミストを効率よく収集できないとの不具合を生じていた。
【0006】
本発明の課題は、加工領域に浮遊するミストを効率よく収集できるようにしたミスト回収機構を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段と作用及び発明の効果】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、加工機上で工具がワークに対し加工動作を行う加工領域の直下のベッド上に設けられる加工液回収部と、この加工液回収部内に落下回収された加工液を加工機の機外へ導くためベッド内を挿通するように配置された排出導管と、この排出導管の末端部の排出口から排出される加工液が流入される回収容器手段と、排出導管の末端部の直前で分岐して上方に延びるミスト回収導管と、このミスト回収導管に接続されこの回収導管に対しバキューム動作するミスト収集装置と、このミスト収集装置が動作してミスト回収導管が負圧になるとき、排出口から回収容器手段へ向かう加工液の流動を許容するが排出口からミスト回収導管へ向かう気体の流れを阻止する通気阻止手段とからなり、前記回収容器手段は前記排出導管の末端の前記排出口に接続されこの排出口から流入する加工液を所定の水位に維持できる容器を含み、前記通気阻止手段は前記容器の天板から垂下されてこの容器内に滞留する加工液内に前記下端縁を侵入させることにより前記容器内の前記排出口側の空間を区画して大気から遮蔽する仕切板を含み、さらに、前記容器内に流入される加工液を前記所定の水位に維持するために前記容器の排出口側から排出される過量の加工液を受け入れる加工液貯蔵タンクとを設けたことである。
【0008】
この構成によれば、ミスト収集装置が動作してミスト回収路導管が負圧になるとき、通気阻止手段は回収導管の排出口から回収容器手段への加工液の流れは許容するのに対して、排出口からミスト回収導管へ向かう気体の流れは阻止するように働く。このため、排出導管の末端の排出口側から空気を吸い込んでミスト回収導管内へ吸入されることにより、加工液回収部から排出導管に加工液と共に流動するミストがミスト回収導管内へ効率よく吸引されなくなると云った不具合が生じなく、排出導管内を流動するミストは大きな吸引能力でミスト回収導管内へ吸引され、この結果、ミストの回収性能が飛躍的に向上されると云う実用上の効果が奏せられる。特に、流入する加工液を所定の水位に維持できる容器を排水導管の末端の排出口に接続し、この容器の天板に仕切板を垂下させてその下端縁が所定水面下に臨むように設けることにより、加工液を流通させかつ空気の流通を阻止する機能を誤動作のない簡単で低コストな構成により実現できる。
【0009】
請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、加工機上で工具がワークに対し加工動作を行う加工領域の直下のベッド上に設けられた加工液回収部と、この加工液回収部内に落下回収された加工液を前記加工機の機外へ導くため前記ベッド内を挿通するように配置された排出導管と、この排出導管の末端部の排出口から排出される加工液が流入される回収容器手段と、前記排出導管の前記末端部の直前で分岐して上方に延びるミスト回収導管と、このミスト回収導管に接続されこの回収導管に対しバキューム動作するミスト収集装置と、このミスト収集装置が動作して前記ミスト回収導管が負圧になるとき、前記排出口から前記回収容器手段へ向かう加工液の流動を許容するが前記排出口から前記ミスト回収導管へ向かう気体の流れを阻止する通気阻止手段とからなり、前記回収容器手段は前記排出導管の末端の前記排出口に接続されこの排出口から流入する加工液を所定の水位に維持して前記排出導管の前記排出口近辺に加工液を残留させる容器を含み、前記容器内に流入される加工液を前記所定の水位に維持するために前記容器の排出口側から排出される過量の加工液を受け入れる加工液貯蔵タンクが前記容器とは別に設けられ、さらに前記通気阻止手段は前記排出導管上の前記分岐点と前記排出口との間で前記排出導管の天板から垂下され前記排出導管内を流動する加工液の液面より下方にその下端縁を臨ませて加工液面の上部空間における空気の流動を阻止する仕切板により構成されることである。
【0010】
この構成によれば、流動する加工液の液面よりも下に下端縁を臨ませた仕切板を排出導管の排出口の手前において設けることにより、加工液を流通させかつ空気の流通を阻止する機能を簡単かつ低コストな構成で実現でき、容易に効率のよいミスト回収機能を実現できる。特に、排出導管の末端の排出口に接続されこの排出口から流入する加工液を所定の水位に維持する容器が排出導管の排出口近辺に加工液を残留させるので、またこの残留加工液面の下方に仕切板の下端縁を臨ませたので、加工液を流通させかつ空気の流通を阻止する機能を誤動作のない簡単で低コストな構成により実現できる。
【0013】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2記載のものにおいて、前記容器内へ流入する加工液から切り屑を分離する磁気式分離手段を備える切り屑分離装置をさらに設けたことである。
この構成によれば、加工液貯蔵タンクと切り屑分離装置とで構成され一般的に使用される工作機械用の加工液供給装置を利用し、請求項1に従属する発明では前記容器内に、請求項2に従属する発明では前記排出導管内に、仕切板を設けることにより、加工液を流通させかつ空気の流通を阻止する機能を付加することができ、仕切板1枚の追加により効率のよいミスト回収機能を実現できる。
【0014】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2記載のものにおいて、前記仕切板の下端縁に対向する前記排出導管の部分に加工液の溜まり部を形成し、この溜まり部に溜まっている加工液の水面下に前記仕切板の下端縁を臨ますようにしたことである。
【0015】
この構成によれば、溜まり部を通して加工液を流動させたり或いは溜まり部に加工液を残留させたりでき、この溜まり部を通過或いは残留する加工液が仕切板と協働して空気の流通を阻止するので、加工液を流通させかつ空気の流通を阻止する機能を簡単かつ低コストな構成で実現でき、上述した工作機械用の加工液供給装置を使用しない場合でも、容易に効率のよいミスト回収機能を実現できる。
【0016】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4のいずれかに記載のものにおいて、加工領域の4つの側面及び上面を覆うようにしたことである。
この構成によれば、加工領域がこの領域外からの空気流入が阻止された実質的に閉鎖空間として構成されるので、ミスト収集装置が発生するバキューム作用は、加工領域にまで波及され、この結果、加工領域内で飛散するミストを効率よく回収することができる。
【0017】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜5のいずれかに記載のものにおいて、加工機を、ベッド上に配置されワークを回転可能支持し回転するワーク支持駆動手段と、加工液回収部を間にしてワーク支持駆動手段と対向して配置され工具として砥石を回転支持すると共にこの砥石をワークの回転軸線方向及びこの軸線を横切る方向に移動可能に支持する砥石支持送り装置とからなる円筒研削盤で構成し、加工液として研削液を用いたことである。
この構成によれば、円筒研削盤におけるミストの回収を効率よく行うことができる。
【0018】
【実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態に係るミスト回収機構を備えた加工機について図面を参照して説明する。図1において、10は研削加工システムを示し、同システム10は、円筒研削盤11と付属装置50からなる。付属装置50は、図例では、研削液供給装置51、ミスト収集装置60及びこれら装置51、60を円筒研削盤と接続するダクト装置70からなる。
【0019】
円筒研削盤11は、ベッド12を有し、このベッド12は図示左側の前部側の上面にワーク支持駆動装置20を搭載し、図示右側の後部側の上面に砥石台装置30を搭載している。図2に拡大して示すように、ワーク支持駆動装置20は、ベッド12上に固定のワークテーブル21から立設されたサポート22の側面に一対のリニアガイド23に沿って紙面と垂直方向に位置調整可能に搭載固定されている。ワーク支持駆動装置20は、主軸台24と図略の心押台とで構成され、ワークWを水平軸線の周りに回転自在に支持し、主軸モータ25により回転できるように構成されている。
【0020】
一方、砥石台装置30は、ベッド12の後部上面で紙面と垂直方向に延びて固定された一対のリニアガイド31(図1参照)に沿ってリニアモータ32より左右方向に移動されるスライド33を備える。砥石台34は、スライド33上で図示左右方向に伸びる一対のリニアガイド35(1つのみ図示)に沿って図略のリニアモータにより進退できるように搭載されている。砥石台34の前部には砥石軸受ユニット37が搭載され、砥石Gを固着した砥石軸38が回転自在に支持されている。砥石軸38に固着されたプーリ39は、砥石台34の後部に搭載された駆動モータ40の出力軸に固着したプーリ41とベルト42を介して回転連結され、駆動モータ40の回転動力を砥石軸38及び砥石Gに伝達できるようにしている。研削液供給ノズル47は、砥石軸受ユニット37上に設置され、砥石台34に取り付けた給送管路47aから給送される研削液をワークWと砥石Gとの接触点である研削点近辺に向けて吐出する。
さらに、図中45は、ベルトテンション調整機構を示し、46は加工工具としての砥石GがワークWに対し加工動作を行う加工領域MAを砥石台送り機構設置領域FUAに対し隔絶するパーティション装置で、同装置46は砥石台34の左右移動と前後進退移動を許容しながら加工領域MAを砥石台送り機構設置領域FUAから実質的に機密的に隔絶するX−Yスライドカバー機構を内蔵している。
【0021】
前後面板、左右側面板及び天板からなる箱形カバー装置48(図1参照)は、前記パーティション装置46と協働して本発明におけるカバー装置を構成し、ワーク支持駆動装置20及び砥石軸受ユニット37が存在する加工領域MAを機外及び砥石台送り機構設置領域FUAから気密的に遮断隔絶し、かつ砥石台送り機構設置領域FUAを機外から遮断隔絶している。天板の加工領域MAを覆う部分には、スライド開閉シャッター装置48aが設けられ、適宜搬入・搬出装置(図略)がワークWを加工領域MA内へ搬入・搬出できるようにしている。
【0022】
再び図1を参照すれば、加工領域MAの下部を形成するベッド12の部分には、本発明における加工液回収部を構成するすり鉢状の回収案内面を有する加工液回収器13が設けられ、研削点に向けて研削液供給ノズル47から吐出された研削液を受け入れるように形成されている。ベッド12内には、後面開口部からダクト装置70の排出導管71が挿入されている。排出導管71は、全長に亘ってその外面が閉鎖されて実質的に気密を維持できる矩形断面の流体通路を形成するように構成され、この矩形断面の下層部で研削液を流動させつつ同時に上層部に必要量のミストを通過させ得る大きさの断面積を有している。排出導管71は、加工領域MAの直下まで進出する先端部の上面が開口され、前記回収器13の下端部外周を気密的に包囲し、回収器13の下端開口から流体を受け入れるように構成されている。図例では回収器13はベッド12と別体のものとして構成されているが、この回収器13が形成するすり鉢状の回収案内面をベッド12に直接形成してもよい。
【0023】
排出導管71の後端部の直前において、上面開口からミスト回収導管72が分岐して上方に伸び、設置台61上に搭載されたミスト収集装置60の吸入口62に連結されている。ミスト収集装置60は、公知のもので、バキューム作用により吸入口62からミストを吸入し、ミストから空気成分と液体成分を例えば遠心分離し、空気成分は大気に放出し、液体成分は研削液供給装置51の研削液貯蔵タンク52へ還流するものである。
【0024】
研削液供給装置51は、タンク52内に研削液を貯蔵し、モータ53により駆動される図略のポンプユニットによりタンク52内の研削液を汲み上げ、吐出管54からフレキシブルホース55を経由して研削液を前記給送管路47aへ送出する。
【0025】
また、研削液供給装置51は、タンク52上に切り屑分離装置57を搭載している。図3に詳細図示されるように、この装置57は、研削液を一時的に貯留する概ね箱形の容器571を備える。この容器571は、排出導管71の末端部の排出口73から排出される加工液が流入される本発明における回収容器手段として機能すると共に、その内部に研削液を一時的に溜める本発明における溜まり部を形成する手段としても機能する。この研削液の一時的な溜まりを作るために、容器571はその内部に立設された図略の還流管の開口端を所定の水位H0に臨ませている。この還流管は、容器571内の研削液の水位が所定の水位H0を超えるとき、研削液の一部をタンク52内へ戻すように、下端がタンク52内に開口している。
【0026】
容器571内には本発明における磁気式分離手段を構成するドラム572が減速機付駆動装置573により図3において時計方向に回転されるように支持され、ドラム572の外周に等間隔で設けた図略の磁石棒が容器571内の研削液に混入している切り屑を磁気吸着し研削液から分離する。自由回転可能に支持されたゴムロール574は、ドラム572の外周に押圧されドラム572外周に連れまわる液体成分をドラム572から剥がすように作用する。掻板575は、ゴムロール574で水きり圧縮された鉄分をドラム572外周に摺接して剥がし、斜面に沿って切り屑回収箱576に落下させるように構成されている。
【0027】
前記容器571は、研削液取入れ口571aを備え、この取入れ口571aにおいて前記ダクト装置71の後端部の排出口73と接続されている。取入れ口571a近辺の容器571内には、本発明における通気阻止手段を構成する仕切板80が容器571の天板下面から垂下固定されている。仕切板80は、容器571内空間を取入れ口側室571fと切り屑分離側室571rとに区画しているが、前記所定の水位H0よりかなり下方の容器571の底面近辺では両室571f、571rを連通し、この底辺近辺でのみ取入れ口側室571fから切り屑分離側室571rへの研削液の流動を許容する。
【0028】
ドラム572の上方部分は大気に開放されて切り屑分離側室571rの前記水位H0より上方の空間は、大気と通じているが、取入れ口側室571fの前記水位H0より上の空間は密閉されており外部からの気体の流入を阻止している。これにより、ミスト収集装置60がミスト吸引動作するとき、切り屑分離側室571rから空気を吸引することが防止され、ミスト収集装置60のバキューム作用の吸引力は、ダクト装置70の排出導管71内のミストの吸引に有効に作用するようになっている。
【0029】
なお、図3に明示されるように、容器571に一時的滞留する研削液が前述した所定の水位H0に維持される状態においては、研削液が研削液取入れ口571a、ダクト装置70の排出口73及び排出導管71に若干滞留するようになっている。
【0030】
次に、上記構成の第1実施形態の動作を説明する。
研削作業が指令されると、主軸台24に支持されたワークWが回転され、スライド33の左右位置決め送り及び砥石台33の前進送りが行われて、回転中の砥石GがワークWに係合し、ワークWの円筒面が研削される。砥石台33が前進送りを開始すると同時に、研削液供給装置51のモータ53が駆動され、研削液が図略のポンプユニットにより汲み上げられ、吐出管54からフレキシブルホース55を経由して給送管路47aへ送出され、研削液供給ノズル47からワークWと砥石Gとの接触点である研削点近辺に向けて吐出される。
【0031】
また、研削液供給装置51のモータ53の駆動と同時に、ミスト収集装置60が駆動され、ミスト回収導管72からミストを吸引する。なお、切り屑分離装置57のドラム572は研削盤への電源投入と同時に回転動作され、切り屑の分離作用を行っている。
【0032】
研削点近辺に向けて供給された研削液は、研削液供給ノズル47からの吐出力の作用を受けて、或いは図示反時計方向に高速回転する砥石Gに連れ回し加速されて、或いは自然落下力を受けて、研削領域MA直下に配置される回収器13内へ図1及び図2において実線矢印で示すように回収される。研削点近辺に吐出された研削液の一部は研削領域MA内で飛散してミスト化するが、ミスト収集装置60の動作によりミスト回収導管72、排出導管71及びその先端に接続した回収器13内が負圧になっているため、回収器13内、排出導管71内、そしてミスト回収導管72内へと順次吸引される。これにより、加工領域MA内に発生するミストが効率よく回収され、加工領域MA内にミストが充満することが防止される。
【0033】
この場合、回収器13内に回収され排出導管71内を流動する研削液及びミストは、両者の比重の違いにより、排出導管71の底面部を研削液が流動され、流動研削液の液面上の空間をミストが流動する。そして、研削液は、排出導管71から切り屑分離装置57の仕切板80の前室である取入れ口側室571fへ流入し、仕切板80の下端部を潜り抜けて仕切板80の後室である切り屑分離側室571rへ流入し、ドラム572により切り屑分離処理を受ける。切り屑分離された研削液は、図略の還流管の上端開口から流入してタンク52内へ還流される。
【0034】
一方、排出導管71内の上方空間を流動するミストは、ミスト回収導管72内に入る。このとき、仕切板80は、切り屑分離側室571r側から取入れ口側室571f側への空気の流入を遮断しており、ダクト装置70の排出導管71からミスト回収導管72が分岐する分岐点から取入れ口側室571fまでの空間は、気体の流動が阻止された閉鎖空間として構成されている。このため、ミスト回収導管内72に発生されるバキューム負圧は、専ら排出導管71内の空間を負圧にするように作用し、ミスト収集装置60のバキューム吸引力は回収器13まで波及し、加工領域MA内にも作用する。この結果、加工領域MA内で発生するミストは、効率よくミスト収集装置60により吸引されることができる。
そして、ミスト収集装置60内へ吸引されたミストは、例えば遠心分離作用により空気と研削液に分離され、空気は大気中に放出され、研削液はタンク52へ還流される。加えて、加工領域MAは下方を除く前後面、左右側面及び上面がカバー装置48とパーティション装置46との協働により機外及び砥石台送り機構設置領域FUAから機密的に閉鎖されているので、加工領域MAへの吸引力の作用が一層助長され、ミスト収集装置60のミスト吸引作用を向上させている。
【0035】
次に、本発明による第2実施形態について、図4を参照して説明する。この実施形態においては、仕切板80は、図4に示すように、切り屑分離装置57の容器571内から除去され、排出導管71からミスト回収導管72が分岐する分岐点からダクト装置70の後端部の排出口73との間に配置される。この場合、仕切板80の下端縁は、排出導管71を流動する研削液の液面と同位又はそれよりも下位に臨むように配置される。これにより、排出導管71内を研削液が流動するとき、この流動研削液の液面により仕切板80の下方が閉鎖され、排出口73側からミスト回収導管72内への空気の流動を阻止し、ミスト回収導管72内に発生されているミスト収集装置60のバキューム吸引力を専ら排出導管71内へ波及させることができ、ミスト収集装置60のバキューム能力をミスト回収に有効に使用できる。排出導管71内での研削液の流動が無い状態でも仕切板80が空気の流動を確実に阻止できるようにする場合では、仕切板80の下端縁を切り屑分離装置57内に滞留する所定水位H0の水面よりも若干低く臨ませることが望ましい。
【0036】
仕切板80の下端縁と排出導管71の底面との間に十分な研削液の流通空間を確保できない場合は、仕切板80の下端縁に対向する排出導管71の部分に研削液の溜まり部74を形成し、この研削液の溜まり部74に溜まっている研削液の水面下に仕切板80の下端縁を臨ますように構成してもよい。このように、仕切板80をダクト装置70の排出導管71に設けた溜まり部74に臨ませる場合では、排出口73に研削液が残留するように設計する必要はない。この場合、排出口73は下方の研削液貯留手段或いは回収手段に研削液を放出できるように向けられた状態で、これら手段と連続的に接続されずに、大気に開放されていてもよい。
すなわち、床面を掘り下げて研削液回収ピットを形成し、多数の工作機械からの排出加工液を回収する収集クーラントシステムを採用するような場合では、排出導管71の排出口73は研削液回収ピットにクーラントを投入できるようになっていれば、ピットに対し管路で連結されている必要はない。なお、この第2実施形態における溜まり部74の形成は、この実施形態を望ましい形で実現するためのものであって、この実施形態の実現にとって不可欠なものではないことが理解されるべきである。
【0037】
上記した各実施形態では、仕切板80は、液体の流通を許容するが気体の流通を阻止する手段として用いたものであり、このような手段としては仕切板80以外の他の手段を採用できる。
【0038】
さらに、上記した各実施形態では、排出導管71の排出口73から排出される研削液を切り屑分離装置57へ流入するようにしたが、仕切版80を図4のように排出口73の手前に配置してこの排出口73から空気が排出導管71内へ吸入されないようにすれば、切り屑分離装置57を使用する必要がない場合においては、排出口73から直接タンク52へ研削液を還流させるようにしてもよい。
【0039】
さらに、本発明によるミスト回収機構は、加工液として水溶性の研削液を使用する形態に採用したものであるが、加工液として油性の研削液を使用する形態においても適用可能である。
【0040】
さらに、本発明によるミスト回収機構は、研削液を使用する円筒研削盤に適用した形態を例示したが、平面研削盤等のその他の研削盤にも適用されることは勿論のこと、加工時に加工液を使用する切削工作機械や塑性加工機等の他の種々の加工機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係わるミスト回収機構を備えた円筒研削盤の一部を破断して示す側面図。
【図2】 図1に示す研削盤のベッド上の構成を拡大して示す側面図。
【図3】 図1に示すA部を拡大して示す部分拡大断面図。
【図4】 本発明による第2実施形態におけるA部の部分拡大断面図。
【符号の説明】
10・・・研削加工システム、11・・・円筒研削盤(加工機)、G・・・研削砥石(工具)、W・・・ワーク、MA・・・加工領域、FUA・・・砥石台送り機構設置領域、12・・・ベッド、13・・・加工液回収器(加工液回収部)、20・・・ワーク支持駆動手段、30・・・砥石台装置、32・・・リニアモータ、33・・・スライド、34・・・砥石台、37・・・砥石軸受ユニット、46・・・パーティション装置、47・・・研削液供給ノズル、48・・・箱形カバー装置(カバー手段)、51・・・研削液供給装置、52・・・研削液貯蔵タンク、57・・・切り屑分離装置、571・・・容器(回収容器手段、溜まり形成手段)、571f・・・取入れ口側室(容器内の排出口側の空間)、571r・・・切り屑分離側室、572・・・ドラム(磁気式分離手段)、70・・・ダクト装置、71・・・排出導管、72・・・ミスト回収導管、60・・・ミスト収集装置、74・・・溜まり部(溜まり形成手段)、80・・・仕切板(通気阻止手段)。
Claims (6)
- 加工機上で工具がワークに対し加工動作を行う加工領域の直下のベッド上に設けられた加工液回収部と、この加工液回収部内に落下回収された加工液を前記加工機の機外へ導くため前記ベッド内を挿通するように配置された排出導管と、この排出導管の末端部の排出口から排出される加工液が流入される回収容器手段と、前記排出導管の前記末端部の直前で分岐して上方に延びるミスト回収導管と、このミスト回収導管に接続されこの回収導管に対しバキューム動作するミスト収集装置と、このミスト収集装置が動作して前記ミスト回収導管が負圧になるとき、前記排出口から前記回収容器手段へ向かう加工液の流動を許容するが前記排出口から前記ミスト回収導管へ向かう気体の流れを阻止する通気阻止手段とからなり、前記回収容器手段は前記排出導管の末端の前記排出口に接続されこの排出口から流入する加工液を所定の水位に維持できる容器を含み、前記通気阻止手段は前記容器の天板から垂下されてこの容器内に滞留する加工液内に前記下端縁を侵入させることにより前記容器内の前記排出口側の空間を区画して大気から遮蔽する仕切板を含み、さらに、前記容器内に流入される加工液を前記所定の水位に維持するために前記容器の排出口側から排出される過量の加工液を受け入れる加工液貯蔵タンクとを設けたことを特徴とする加工装置におけるミスト回収機構。
- 加工機上で工具がワークに対し加工動作を行う加工領域の直下のベッド上に設けられた加工液回収部と、この加工液回収部内に落下回収された加工液を前記加工機の機外へ導くため前記ベッド内を挿通するように配置された排出導管と、この排出導管の末端部の排出口から排出される加工液が流入される回収容器手段と、前記排出導管の前記末端部の直前で分岐して上方に延びるミスト回収導管と、このミスト回収導管に接続されこの回収導管に対しバキューム動作するミスト収集装置と、このミスト収集装置が動作して前記ミスト回収導管が負圧になるとき、前記排出口から前記回収容器手段へ向かう加工液の流動を許容するが前記排出口から前記ミスト回収導管へ向かう気体の流れを阻止する通気阻止手段とからなり、前記回収容器手段は前記排出導管の末端の前記排出口に接続されこの排出口から流入する加工液を所定の水位に維持して前記排出導管の前記排出口近辺に加工液を残留させる容器を含み、前記容器内に流入される加工液を前記所定の水位に維持するために前記容器の排出口側から排出される過量の加工液を受け入れる加工液貯蔵タンクが前記容器とは別に設けられ、さらに前記通気阻止手段は前記排出導管上の前記分岐点と前記排出口との間で前記排出導管の天板から垂下され前記排出導管内を流動する加工液の液面より下方にその下端縁を臨ませて加工液面の上部空間における空気の流動を阻止する仕切板により構成されることを特徴とするミスト回収機構。
- 請求項1又は2記載のミスト回収機構において、前記容器内へ流入する加工液から切り屑を分離する磁気式分離手段を備える切り屑分離装置がさらに設けられていることを特徴とするミスト回収機構。
- 請求項2記載のミスト回収機構において、前記仕切板の下端縁に対向する前記排出導管の部分に加工液の溜まり部を形成し、この溜まり部に溜まっている加工液の水面下に前記仕切板の下端縁を臨ますようにしたことを特徴とするミスト回収機構。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のミスト回収機構において、前記加工領域の4つの側面及び上面を覆うカバー手段をさらに含むことを特徴とするミスト回収機構。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のミスト回収機構において、前記加工機は、前記ベッド上に配置され前記ワークを回転可能支持し回転するワーク支持駆動手段と、前記加工液回収部を間にして前記ワーク支持駆動手段と対向して配置され前記工具として砥石を回転支持すると共にこの砥石を前記ワークの回転軸線方向及びこの軸線を横切る方向に移動可能に支持する砥石支持送り装置と、からなる円筒研削盤であり、前記加工液が研削液であることを特徴とするミスト回収機構。
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