JP4077992B2 - 電気集じん装置の運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイラ等の排ガス中からばいじん(ダスト)を分離捕捉し、公害防止装置等として利用される電気集じん装置の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラ等から出る排ガスを処理する電気集じん装置(以下EPと呼ぶ)においては、排ガス中のばいじんを除去(集じん)するため、本来は、ばいじんが発生するボイラ燃焼中にEPを荷電すれば良い。
ところが、ボイラ点火前に通風系(ファン)が起動(具体的には押込通風機(FDF)や誘引通風機(IDF)が起動)している状態の時や、ボイラ消火後に通風系がまだ動いている時も、煙道内にガス流れがあるため、EP上流側に付着・堆積しているばいじんが飛来したり、また、EP内部に付着・堆積したばいじんが後流側へ飛散していったりすることから、例えボイラが点火(燃焼)していなくとも、ばいじん除去の観点からEPを荷電して集じん機能を発揮させるのが通常の運転となっている。
このボイラ燃焼中以外、つまりボイラ点火前か又はボイラの消火後の荷電方法については、従来、以下の方法がとられている。
【0003】
まず、油焚きボイラ用EPでの荷電方法について次に示す。
油焚きボイラから発生するばいじんには未燃カーボンが多く含まれていることがあり、この未燃カーボンは燃焼性があり、燃焼に必要な条件が揃うと燃焼することがある。
ボイラ点火前とボイラ消火後は、排ガスが空気となるため、ガス中の酸素濃度が高くなり、ここに着火源が存在すると、ばいじんは燃焼する。
これを防止するため、できるだけ着火源を無くすとの観点から、EPで発生する火花を少なくする「火花抑制荷電」という方法が用いられる(図2a参照)。
【0004】
この「火花抑制荷電」の方法の一例として、EPに印加する荷電量を抑えるということで、印加電流を定格の40%以下に抑えたり、印加電圧を火花発生電圧以下に抑えたりする方法がとられている。
尚、プラントによっては、ボイラ起動時の点火前は、EP内にばいじんが少ないので着火(燃焼)しないとして、火花抑制荷電ハを実施しない場合(図2b参照)があったり、また、未燃カーボンが少ないとして、停止時の消火後にも火花抑制荷電ハを実施しない(図2c参照)ところもある。
【0005】
次に、石炭焚きボイラ用EPでの荷電方法を以下に示す。
石炭焚きボイラから発生するばいじんは、通常、フライアッシュと呼ばれ、燃焼後の灰が主成分で、未燃カーボンは少ない。
この灰は難燃性であるため、油焚きボイラから発生するばいじんのように、EPで発生する火花により着火(燃焼)することは少なく、従って、油焚きボイラ用EPのような火花抑制荷電ハを採用せず、ボイラ点火前及びボイラ消火後も通常運転中と同じ荷電方法がとられる場合が多い(図2c参照)。
【0006】
ただし、石炭焚きボイラ用EPでも、プラントによっては、油を専焼する運転があったり、また、起動・停止時の補助燃料として油を使うことがあることから、油焚きボイラ用EPと同じように「火花抑制荷電」を採用しているところもある。
尚、火花抑制荷電ハの実施時期を、ボイラ点火前及びボイラ消火後として今まで述べてきたが、プラントによっては必ずしもそうではなく、最低運用負荷帯以下で火花抑制荷電ハを実施する(図2d)等、その運用はそれぞれのプラントの事情によって少しずつ異なっている。
【0007】
以上のような従来の技術(EPの運転方法)の場合、次のような問題がある。
EPで処理するばいじんの電気抵抗率が高い場合は、逆電離現象という、集じん性能を著しく阻害する現象が起こることが知られている。このばいじんの電気抵抗率というのは、ばいじん粒子の電気的性質は勿論ではあるが、雰囲気(ガス)の温度、水分(湿度)によっても影響を受ける。
【0008】
その関係の一例を示したのが図3である。
図3上の曲線(b)は、水分10%における、ガス温度とダストの電気抵抗率との関係を表している。温度が130℃の時に、電気抵抗率は最大値1×1012Ω―cmを示し、温度が130℃より高くなっても、低くなっても、電気抵抗率は下がってくる。
また、曲線(a)は水分20%、曲線(c)は水分5%、曲線(d)は水分1%であるが、曲線(b)と同様に、ある温度で電気抵抗率は最大値を示す。そして水分が少なくなればなる程、電気抵抗率の最大値は上昇し、その時の温度は低下している。曲線(e)は水分0%であるが、水分が無くなると、温度の低下に伴って電気抵抗率は上がっていくことになる。
【0009】
EPの運転状態を図3に照らし合わせてみると、ボイラが燃焼中の場合、一般に排ガス中の水分は8〜10%程度ある。運転温度はシステムによって異なり、90℃付近の低低温EPシステム、130℃付近の低温EPシステム、380℃付近の高温EPシステムとあるが、それぞれ図3の曲線(b)上のA点、B点、C点に対応する。
ところが、ボイラ点火前やボイラ消火後は、EPが処理するガスが空気であるため、その水分量が大気中の水分(約1%)へ低下すると共に、温度もボイラ燃焼中より低くなり、図3の曲線(d)上の、例えばE点のように、A、B、Cの各点より電気抵抗率は高い運転状態となる。
【0010】
実際の運転の一実施例として、低低温EPシステムで通常運転(ボイラが燃焼中)している時で、プラントが停止に向いボイラが消火した状態を例にとると、ボイラ燃焼中はA点の状態で運転していたのに対し、ボイラ消火直後は水分が低くなり、温度は急に冷えないため、D点の状態に移り、その後温度が冷えていくことに従って、曲線(d)上をE点の方向に状態が移行していくことになる。
【0011】
以上の例からわかるように、いずれの場合においても、ボイラ点火前及びボイラ消火後のEP処理ガスが空気で温度が低くなる状態においては、ボイラ燃焼中よりダストの電気抵抗率が高くなる。
ダストの電気抵抗率が高くなると、前述の通り、逆電離という現象が起こることがあり、集じん性能が著しく低下するという問題が生じる。
【0012】
さらに、従来のEP荷電運用方法の場合、前述のごとくボイラ点火前及びボイラ消火後には、火花抑制荷電を行っていたり、通常のボイラ燃焼中の荷電を継続していたりしているが、このような荷電方法であると、ダストの電気抵抗率が高くなった場合、電気抵抗率の値によっては逆電離現象を避けることはできず、EPへ飛来するダストの集じん能力が落ちることは勿論のこと、集じん極上に捕集されているダストも再飛散していってしまい、状況によっては通常運転(ボイラ燃焼)中以上のダストが、ボイラ点火前やボイラ消火後にEP出口で検出されるという問題が生じる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に対して、従来の問題点であるプラントの起動および停止時のボイラ点火前およびボイラ消火後に電気集じん装置で発生する逆電離現象による集じん性能低下およびダストの再飛散を防止するにあたり、十分な効果を有する電気集じん装置の運転方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法は、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、ボイラの点火時に通常荷電に切替ることを特徴とする。別の形態として、本発明のボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法は、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、最低運用負荷到達時に通常荷電に切替ることを特徴とする。
【0015】
また別の形態として、本発明のボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法は、ボイラの点火中は通常荷電を適用し、ボイラの消火時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする。また別の形態として、本発明のボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法は、ボイラの点火中は通常荷電を適用し、最低運用負荷以下到達時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする。
【0016】
また別の形態として、本発明のボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法は、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、ボイラの点火時に通常荷電に切替え、ボイラの消火時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする。また別の形態として、本発明のボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法は、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、ボイラの点火時または最低運用負荷到達時に通常荷電に切替え、最低運用負荷以下到達時、またはボイラの消火時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする。
【0017】
本発明の電気集じん装置の運転方法は、上述した逆電離抑制荷電として、例えば間欠荷電を採用することができる。
本発明の電気集じん装置の運転方法は、上述した逆電離抑制荷電として、例えばパルス荷電を採用することができる。
【0018】
また、本発明の電気集じん装置の運転方法は、電気集じん装置出口に設置したばいじん濃度計とのフィードバック制御により、自動的に逆電離抑制荷電に入るようにすることもできる。
さらに、本発明の電気集じん装置の運転方法は、電気集じん装置へ印加している荷電電圧の1サイクル当りの最小値を検知して、その値の変化によって自動的に逆電離抑制荷電に入ることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の電気集じん装置の運転方法は、ボイラ等から出る排ガスを処理する電気集じん装置において、プラント起動の電気集じん装置荷電時に逆電離抑制荷電を適用することを特徴とする。また別の形態として、本発明の電気集じん装置の運転方法は、前記電気集じん装置において、プラント停止時に排ガス中の水分が減少してダストの電気抵抗率が高くなって逆電離現象が発生する条件となった時に、逆電離抑制荷電を適用することを特徴とする。さらに本発明は、前記電気集じん装置において、プラント起動の電気集じん装置荷電時に逆電離抑制荷電を適用し、加えてプラント停止時に排ガス中の水分が減少してダストの電気抵抗率が高くなって逆電離現象が発生する条件となった時に、逆電離抑制荷電を適用することを特徴とする。
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1及び図4に、本発明にかかる電気集じん装置の運転方法の一実施の形態について、運転スケジュールの概略を示す。
プラントの運転状態を経時的に説明すると、時間は図1及び図4を左から右へ流れるものとし、順に、ファン起動t1、火炉パージ完了t2、MFTリセットt3、ボイラ点火t4、最低運用負荷到達t5、最低運用負荷以下到達t6、ボイラ消火t7、ファン停止t8である。
【0020】
図1の実施の形態cは、プラント起動の電気集じん装置荷電時に逆電離抑制荷電を適用することを特徴とする電気集じん装置の運転方法である。
まず、プラントの起動としてファン起動t1し、火炉パージ完了t2のタイミングで、それまで停止していた電気集じん装置を逆電離抑制荷電ロでスタートさせる。
ファンが起動することによって、電気集じん装置の通風系上流側に付着・堆積しているばいじんが飛来したりするため、ファン起動t1の後は、すみやかに電気集じん装置を運転し、ばいじん除去を行うことが好適である。
【0021】
また、ここではボイラ点火前であるため、通風系内は排ガスではなく空気であり、水分が少なく、温度も低いことから、ダストの電気抵抗率が高くなる可能性がある。よって通常荷電イでは、逆電離現象が発生し、電気集じん装置の集じん性能が低下、または再飛散してしまう場合があり、本来の目的を達成することができない。
そのため本発明では、逆電離抑制荷電ロで電気集じん装置をスタートさせることにより、集じん性能の低下およびダストの再飛散を防止することとしている。
【0022】
次に、ボイラ点火t4によって、通風系は空気から排ガスに変わり、水分が上昇する。よってダストの電気抵抗率が、逆電離現象の発生の領域から正常の領域まで下がるため、ボイラ点火t4のタイミングで逆電離抑制荷電ロから通常荷電イに切替えて、電気集じん装置を運転することができる。
【0023】
プラント停止に向け、ボイラ消火t7に到っても通風系がまだ動いており、煙道内にガス流れがあるため、電気集じん装置上流側に付着・堆積しているばいじんが飛来したり、また、電気集じん装置内部に付着・堆積したばいじんが後流側へ飛散していったりすることがある。そのため、ボイラ消火t7後、ボイラが燃焼していなくとも、ばいじん除去の観点から電気集じん装置に通常荷電イを継続し、集じん機能を発揮させるのが望ましい。
そして、プラント停止であるファン停止t8のタイミングで、電気集じん装置の通常荷電イを停止させる。
【0024】
図1の実施の形態cは代表例であって、逆電離抑制荷電ロのオンのタイミングを火炉パージ完了t2、通常荷電イのオフのタイミングをファン停止t8としているが、これらのタイミングは本発明を特に限定するものではなく、プラントの特性によって種々の異なるタイミングをとることができる。
また、荷電切替えのタイミングも必ずしもボイラ点火t4でなくても良く、燃料切替等のタイミングでも可能であり、本発明は図1の例に限定されるものではないことを言い添えておく。
【0025】
ここで、本発明の基本となる「逆電離抑制荷電ロ」は、従来の電気集じん装置の荷電運用で用いられている「火花抑制荷電ハ」とは、その目的、概念、方法が全く異なるものであり、逆電離抑制荷電の原理および方法を以下に述べる。
【0026】
逆電離の発生は、ダストの電気抵抗率が高い時に発生する現象として前述したが、詳細は集じん堆積ダスト層内の電界強度Edが、ダストの絶縁破壊電界強度Edb以上になる時に発生し、次式(1)の関係がある。
Ed=ρd×id≧Edb ・・・・・・・・・・(1)
ここでρdはダストの電気抵抗率で、idはダスト層を流れる電流密度である。
したがって、式(1)より、ダストの電気抵抗率ρdが高くても、ダスト層を流れる電流密度idを制御すれば、ダスト層の電界強度Edを絶縁破壊電界強度Edb以下とすることができ、逆電離を抑制することができる。
このダスト層を流れる電流密度を抑えながら、ダストに強力な帯電量を与え、集じん性能低下を防止する荷電が「逆電離抑制荷電」であり、具体的には、例えば間欠荷電、パルス荷電等の方法がある。
【0027】
間欠荷電は、ある周期で電流のオン・オフ(ON−OFF)、すなわちダスト層電界強度が逆電離開始よりも高くなる前に、コロナ放電電流を遮断し、ダスト層電界強度が低下した後、再びコロナ放電電流を流すということを繰り返し、逆電離を防ぎながら高いピーク電圧で電気集じん装置を運転する荷電制御方式である。
【0028】
パルス荷電は、電気集じん装置の放電極に急峻で短いパルス状の高電圧を繰返し印加することによってパルスコロナ放電を発生させるもので、ダスト粒子を高いレベルまで帯電させ、コロナ放電電流分布を均一にすることができ、平均電流密度が逆電離発生電流密度以下でできるだけ高く保つことができることにより、高性能が維持できる。
【0029】
図1の実施の形態bは、プラント停止時の排ガス中の水分が減少してダストの電気抵抗率が高くなって逆電離現象が発生する条件となった時に、逆電離抑制荷電ロを適用することを特徴とする電気集じん装置の運転方法である。
まず、プラントの起動としてファン起動t1し、火炉パージ完了t2のタイミングで、それまで停止していた電気集じん装置を通常荷電イでスタートさせる。
ファンが起動することによって、実施の形態cと同様の理由より、ばいじん除去をする必要があるが、プラントによっては、プラント起動時のダストの電気抵抗率が高くなるような条件がない場合があり、逆電離抑制荷電ロを採用せずに通常荷電イで電気集じん装置をスタートさせる運転方法もある。
【0030】
ボイラ点火t4後、ボイラ燃焼中も通常荷電イを継続するが、ボイラ消火t7直後は、通風系が排ガスから空気になることで水分が低くなり、また温度は急に冷えないため、ボイラ燃焼中より、ダストの電気抵抗率が高くなる。
そのため通常荷電イでは、上述した通り逆電離現象が発生してしまうが、逆電離抑制荷電ロに切替えることにより、前記の電流密度を低下させ、電界強度を絶縁破壊電界強度以下に保ち、逆電離現象の発生を抑えることができる。
そして、プラント停止であるファン停止t8のタイミングで、逆電離抑制荷電ロをオフにし、電気集じん装置を停止させる。
【0031】
ここで、前記実施の形態cと同様に、図1の実施の形態bも代表例であって、通常荷電イオン、荷電切替え、逆電離抑制荷電ロオフのタイミングは、プラントの特性によって異なるものであり、本発明を限定するものではない。
また、逆電離抑制荷電の方法も、前記実施の形態cと同様に、間欠荷電、パルス荷電等を含む。
【0032】
図1の実施の形態aは、プラント起動の電気集じん装置荷電時に逆電離抑制荷電ロを適用することと、プラント停止時の排ガス中の水分が減少してダストの電気抵抗率が高くなって逆電離現象が発生する条件となった時に、逆電離抑制荷電ロを適用することと、を特徴とする電気集じん装置の運転方法である(従って、図1の実施の形態bと実施の形態cの両方の逆電離抑制荷電ロを伴う電気集じん装置の運転方法である)。
【0033】
ここで、前記実施の形態b、cと同様に、図1の実施の形態aも代表例であって、通常荷電イオン、荷電切替え、逆電離抑制荷電ロオフのタイミングは、プラントの特性によって異なるものであり、本発明を限定するものではない。
また、逆電離抑制荷電の方法も、前記実施の形態b、cと同様に、間欠荷電、パルス荷電等を含む。
【0034】
図1の実施の形態dは、実施の形態aと同様に、実施の形態bと実施の形態cの両方の逆電離抑制荷電ロを伴う電気集じん装置の運転方法であるが、逆電離抑制荷電ロから通常荷電イへの切替え時期を最低運用負荷到達t5に、通常荷電イから逆電離抑制荷電ロへの切替え時期を最低運用負荷以下到達t6にした電気集じん装置の運転方法である。
【0035】
逆電離抑制荷電ロから通常荷電イへの切替え時期を例にとると、ボイラ点火t4から最低運用負荷到達t5への間では、通風系の排ガスの水分および温度も低いことから、その様な状態で、逆電離抑制荷電ロから通常荷電イへ切替えた場合、ダストの電気抵抗率が高くなり、逆電離現象が発生する可能性がある。
よって、通風系の排ガスの水分および温度が、通常荷電イであっても逆電離現象を発生しない時点まで、逆電離抑制荷電ロを継続する必要がある。
【0036】
実施の形態a〜dで述べてきた実施例では、プラント起動時又は停止時又はその両方の時に、あるタイミングで通常荷電から逆電離抑制荷電に切替えることを特徴としている。
一方、一定のタイミングで設定した場合、石炭の性状の違いによって、ある時はその切替えタイミングで逆電離現象が起こらなかったり、また逆に、切替え前に既に逆電離現象が起こっていたりということも想定し得る。このように、逆電離現象の発生と逆電離抑制荷電への切替えとのタイミングが大きく異なるような場合には、本発明が期待する集じん性能を十分に発揮できないこともあり得る。
そこで、上記タイミングを大きく異ならないようにするため、自動制御を用いた運転スケジュールの概略を、図4に示す。
図4の実施の形態eは、電気集じん装置出口に設置したばいじん濃度計とのフィードバック制御により、逆電離抑制荷電を制御することを特徴とする電気集じん装置の運転方法である。ここでは、電気集じん装置出口にばいじん濃度計が設置されており、ばいじん濃度計の指示値に連動して、逆電離現象の発生の有無を確認し、自動的に通常荷電または逆電離抑制荷電になる荷電装置が設置されている。
【0037】
図4の実施の形態eについて説明する。まず、図1に示された実施の形態と同様に、火炉パージ完了t2のタイミングで、それまで停止していた電気集じん装置に、通常荷電または逆電離抑制荷電を自動制御する荷電ニを印加し、スタートさせる。それと同時に、ばいじん濃度計とのフィードバック制御ホもスタートさせる。
次に、電気集じん装置の運転中、例えばボイラ消火t7から、ある時間経過後に逆電離現象が発生した場合、ばいじん濃度が増加するため、フィードバック制御により逆電離現象が発生したタイミングで、自動的に逆電離抑制荷電へ移行する。よって、逆電離現象の発生と逆電離抑制荷電への切替えとのタイミングが大きく異なることなく、最適な荷電を印加するため、集じん性能の低下およびダストの再飛散を防止する。そして、このフィードバック制御はファン停止t8で、電気集じん装置と同時に停止させる。
図4の実施の形態eは代表例であって、通常荷電または逆電離抑制荷電を自動制御する荷電ニ及びフィードバック制御ホのオンのタイミングを火炉パージ完了t2、オフのタイミングをファン停止t8としているが、これらのタイミングは本発明を特に限定するものではなく、プラントの特性によって種々の異なるタイミングをとることができる。
【0038】
また、ばいじん濃度の増減から逆電離現象の発生の有無を確認する方法を、図5を用いて説明する。図5は、逆電離抑制荷電として間欠荷電を用いた場合、その間欠荷電の荷電率と電気集じん装置出口のばいじん濃度との関係の一例である。図5上の曲線(f)は、ダストの電気抵抗率が正常の領域のケースを表し、また曲線(g)は、逆電離現象が発生した下でのケースを表している。間欠荷電の荷電率は、1/1が連続荷電であり、本願発明では通常荷電と呼ばれるものである。また、荷電率を1/1以下に下げたものが、逆電離抑制荷電である。
【0039】
曲線(f)に示されるように、逆電離現象が発生していない場合、通常荷電(荷電率=1/1)が最も電気集じん装置出口のばいじん濃度が少ない。フィードバック制御により、荷電率を1/2に下げた時、出口のばいじん濃度は増加し、その結果、再び通常荷電(荷電率=1/1)に戻る。よって最適(最小排出ばいじん濃度)運転を行うことができる。
ところが、曲線(g)のように、逆電離現象が発生すると、通常荷電(荷電率=1/1)では、出口ばいじん濃度が増加する。フィードバック制御により、荷電率を1/2に下げた時、出口のばいじん濃度は減少するので荷電率は下がったままである。次に、荷電率を1/5に下げた時も、出口のばいじん濃度は減少するので荷電率は下がったままである。しかし、荷電率を1/10に下げた時は、出口のばいじん濃度は増加し、その結果、再び荷電率1/5に戻る。以上のように、間欠荷電の荷電率を変化させながら、ばいじん濃度計指示値の信号と相関をみることにより、最適(排出ばいじん濃度が最小)となる荷電率に自動的に設定されることになる。
【0040】
以上の説明からわかるように、図4の実施の形態eに示された運転方法は、図1のように逆電離抑制荷電に切替えるタイミングを固定することなく、運転中に自動的に切替えることができる。よって、逆電離現象が発生しているにもかかわらず、逆電離抑制荷電へ切替わっていないため、性能が低下するという問題を生じることはない。また、逆電離現象が発生していないのに、逆電離抑制荷電へ切替わってしまい、性能が低下するという問題も生じることがない。したがって、本実施の形態により、絶えず最大性能が発揮できる。
【0041】
また、図4の実施の形態fは、逆電離抑制荷電として間欠荷電を用いた場合の荷電率を自動制御する機能を採用して、自動的に逆電離抑制荷電になることを特徴とする電気集じん装置の運転方法である。
実施の形態fも、上記実施の形態eと同様、逆電離抑制荷電に入るタイミングを予め設定することなく、運転電圧の値を常時監視しながら、自動的に逆電離抑制荷電へ移行するものである。正常な領域では、電圧の1サイクル当りの最小値が最大値となるように荷電率を制御する。逆電離現象発生時では、電圧の1サイクル当りの最小値が極大値となるように荷電率を制御する。本実施の形態は、荷電状態を監視することにより、自動的に逆電離抑制荷電へ移行するもので、実施の形態eのようなばいじん濃度計を不要とすることもできる。
【0042】
上記実施の形態の構成とすることにより、本発明では、逆電離現象の発生を防止し、電気集じん装置の本来の集じん性能を発揮させることができる。また本発明は、ダストの電気抵抗率が高いまま逆電離現象を防止するという意図があり、ダストの電気抵抗率上昇の要因である排ガスの水分や温度が広範囲に渡るプラントの電気集じん装置にも適用することもできる。さらに、荷電方式の改変だけで済むので、従来の装置で本発明を実施することも比較的容易である。
【0043】
【発明の効果】
上記したところから明かなように、本発明によれば、プラントの起動および停止時のボイラ点火前およびボイラ消火後に電気集じん装置で発生する逆電離現象による集じん性能低下およびダストの再飛散を防止するにあたり、十分な効果を有する電気集じん装置の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電気集じん装置の運転方法を説明する経時的変化を示す図である。
【図2】従来の電気集じん装置の運転方法を説明する経時的変化を示す図である。
【図3】ガス温度とダストの電気抵抗率との関係の一例を表したグラフである。
【図4】本発明にかかる電気集じん装置の運転方法を説明する経時的変化を示す図である。
【図5】間欠荷電の荷電率と電気集じん装置出口のばいじん濃度との関係の一例を表したグラフである。
【符号の説明】
t1 ファン起動
t2 火炉パージ完了
t3 MFTリセット
t4 ボイラ点火
t5 最低運用負荷到達
t6 最低運用負荷以下到達
t7 ボイラ消火
t8 ファン停止
イ 通常荷電
ロ 逆電離抑制荷電
ハ 火花抑制荷電
ニ 通常荷電または逆電離抑制荷電を自動制御する荷電
ホ ばいじん制御フィードバック制御
へ 間欠荷電荷電率最適自動制御
Claims (9)
- ボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法において、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、ボイラの点火時に通常荷電に切替ることを特徴とする電気集じん装置の運転方法。
- ボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法において、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、最低運用負荷到達時に通常荷電に切替ることを特徴とする電気集じん装置の運転方法。
- ボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法において、ボイラの点火中は通常荷電を適用し、ボイラの消火時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする電気集じん装置の運転方法。
- ボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法において、ボイラの点火中は通常荷電を適用し、最低運用負荷以下到達時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする電気集じん装置の運転方法。
- ボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法において、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、ボイラの点火時に通常荷電に切替え、ボイラの消火時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする電気集じん装置の運転方法。
- ボイラから出る排ガスを処理する電気集じん装置の運転方法において、プラント起動時の電気集じん装置荷電の際に逆電離抑制荷電を適用し、ボイラの点火時または最低運用負荷到達時に通常荷電に切替え、最低運用負荷以下到達時、またはボイラの消火時に逆電離抑制荷電に切替ることを特徴とする電気集じん装置の運転方法。
- 上記逆電離抑制荷電として、間欠荷電を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気集じん装置の運転方法。
- 上記逆電離抑制荷電として、パルス荷電を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気集じん装置の運転方法。
- 電気集じん装置出口に設置したばいじん濃度計とのフィードバック制御により、逆電離抑制荷電になることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気集じん装置の運転方法。
Priority Applications (1)
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