JP4077948B2 - 原油の全酸価を低減する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸性原油の全酸価を触媒で低減する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
市場に制約があるために、酸性ナフテン原油などの高酸性原油を処理する方法に、経済的関心が高まってきている。こうした酸性原油を処理する際に、ナフテン酸やその他の酸の腐蝕に関連するさまざまな問題が起きる傾向があることは、良く知られている。全酸価(TAN)、つまり、1グラムの原油の酸分を中和するために必要な水酸化カリウムをミリグラム数で表した数、を低減する方法は、数多く提案されている。
【0003】
1つの方法は、酸性成分を各種の塩基を用いて化学的に中和することである。この方法は、エマルションの生成、無機塩濃度の増加、工程数の増加などの問題を処理しなければならない点で、不利益が生じる。別の方法は、処理装置に耐蝕性金属を使用することである。ただし、この方法には、かなり費用がかかるので、すでに設置した装置に適用するには経済的に無理があると思われる。他の方法は、腐蝕防止剤を酸性原油に添加することである。この方法は、腐蝕防止剤が触媒の寿命/効率を低下するなどして、下流の装置に悪影響を及ぼす欠点がある。さらに、詳細なモニタリングおよび検査を行ったとしても、均一かつ完全な防蝕の確認は困難である。別の方法として、酸性原油と酸分が少ない原油とをブレンドすることによって、酸分を少なくする方法もある。しかし、このような酸分が少ない原油として使える供給材料には限りがあることが、この方法をさらに困難にしている。
【0004】
米国特許第3,617,501号には、原油全体を精製する統合された方法が開示されている。第1のステップでは、原油全体を接触水素処理して、硫黄、窒素、金属およびその他の汚染物を除去する。米国特許第2,921,023号は、緩和水素処理時に触媒活性保全性を改善して、高沸点石油留分中のナフテン酸を除去する方法を意図していた。触媒は、シリカ/アルミナ担体に担持されるモリブデンであり、供給材料は重油留分である。米国特許第2,734,019号には、シリカを含まないアルミナに担持されたコバルト-モリブデンに接触させて、酸塩水素存在下で硫黄、窒素、およびナフテン酸の濃度を低減させることによって、ナフテン潤滑油留分を処理するための方法が記載されている。米国特許第3,876,532号は、全酸価または未使用の中間蒸留物のメルカプタン含量を低減するために、硫黄含量を顕著に低減せずに、より厳密な水素処理で予め失活させた触媒を用いて、未使用の中間蒸留物を極軽度に水素処理する方法に関する。
【0005】
中和/防蝕剤を追加せずに、かつ、原油を生成系に転化せずに、原油の酸度を低減することが望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸性原油の全酸価を低減する方法に関し、原油を水素処理触媒に、約200乃至370℃の温度で、硫化水素を含む水素処理ガスの存在下で、約239乃至13,900kPaの全圧で接触させる工程を含み、水素処理ガス中の硫化水素のモルパーセントは、0.05乃至25である、ことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般に、酸性原油は、ナフテン酸とその他の酸を含み、1乃至8の全酸価を有する。酸性原油の酸価は、酸性原油または抜頭原油を、硫化水素を含有する水素ガスの存在下で、水素処理することによって、かなり、低減することができる。通常は、水素処理触媒を使用して、オレフィンおよびまたは芳香族炭化水素を飽和し、製油所供給/生成系の窒素および/または硫黄の含量を低減する。ただし、このような触媒は、ナフテン酸の濃度を低減することによって、原油の酸価も低減してしまう傾向がある。
【0008】
水素処理触媒は、VIB族の金属を含む触媒(Fisher Scientificによって公表された周期表に基づく)およびVII族の非貴金属である。一般に、これらの金属または金属混合物は、耐火性金属担体に担持される酸化物または硫化物として存在する。こうした触媒の例には、アルミナなどに担持されるコバルト/ニッケル/モリブデン酸化物またはニッケル/モリブデン酸化物などが挙げられる。一般に、こうした触媒は、使用前に硫化することによって、活性化される。好ましい触媒には、アルミナに担持されたコバルト/モリブデン(酸化物として1-5%のコバルト、酸化物として5-25%のモリブデン)、ニッケル/モリブデン(酸化物として1-5%のニッケル、酸化物として5-25%のモリブデン)、およびニッケル/タングステン(酸化物として1-5%のニッケル、酸化物として5-30%のタングステン)などが挙げられる。特に好ましい触媒は、ニッケル/モリブデン触媒と、コバルト/モリブデン触媒である。
【0009】
適切な耐火性金属担体は、シリカ、アルミナ、チタニアあるいはそれらの混合物などの金属酸化物である。低酸性金属酸化物支持体は、水素化分解反応および/または水素異性化反応を最低限にするために好ましい。特に好ましい担体は、γ-アルミナまたはβ-アルミナなどの多孔質アルミナであり、50乃至300Åの平均細孔サイズと、100乃至400m2/gの表面積と、0.25乃至1.5cm3/gの細孔容積とを有する。
【0010】
酸性原油を水素処理触媒に接触させるための反応条件には、約200乃至370℃、好ましくは約232乃至316℃、最も好ましくは約246乃至288℃の温度と、0.1乃至10、好ましくは、0.3乃至4のLHSVを含む。水素の量は、水素の部分圧が、約20乃至2000psig(239乃至13,900kPa)、好ましくは50乃至500psig(446乃至3550kPa)の範囲であればよい。水素:原油供給比は、20乃至5000scf/B、好ましくは30乃至1500scf/B、最も好ましくは50乃至500scf/Bである。
【0011】
硫化水素を水素処理ガスに添加することで、酸性原油に対する全酸価をかなり低減することができることが、発見されている。硫化水素を水素処理ガスに導入することで、水素処理触媒の活性を改善するものと思われる。水素処理ガス中の硫化水素の量は、それに含まれる硫化水素をモルパーセントで示すと、0.05乃至25、好ましくは1乃至15、最も好ましくは2乃至10モルパーセントであればよい。硫化水素は、水素処理ガスに添加してもよい。その代わりに、高圧水素処理装置から出される排ガスなどのサワー水素含有製油所ガス気流を水素処理ガスとして使用しても良い。
【0012】
一般的な精製方法では、最初に、原油から脱塩する。次にこの原油を加熱して、加熱された原油を予備フラッシュ塔に誘導して、約100℃未満の沸点を有する生成物の大部分を除去してから、常圧塔で蒸留する。このため、本願明細書に使用される原油には、原油全体と抜頭原油とを含む。
【0013】
高酸性原油の酸価を低減するための本発明の方法は、熱交換器および/または炉と、常圧塔に至る触媒処理ゾーンとを利用する。熱交換器および/または炉は、原油を予熱する。次に、加熱された原油は、反応装置と触媒とを含む触媒処理ゾーンに誘導される。この反応装置は、好ましくは慣用の潅液充填塔式反応装置であり、この装置では、原油は触媒の固定床を通じて下方に誘導される。しかし、例えば沸騰床やスラリーなどを含むその他の設計の反応装置を使用することもできる。
【0014】
本発明に係る方法を、図1に具体的に示す。原油は、予熱しておいてもよく、ライン8経由で予備フラッシュ塔12に誘導される。軽質ナフサなどのガスや液体を含む塔頂留出物は、ライン14経由で予備フラッシュ塔12から除去される。残りの原油は、ライン16を通じて、加熱器20に直接誘導される。あるいは、原油をライン10経由で加熱器20に直接誘導してもよい。次に、加熱器20から得られる加熱された原油は、ライン22経由で反応装置24に誘導される。反応装置24に入る原油が十分な温度であり、反応装置24の温度必要条件に適合する場合には、加熱器20と反応装置24が並ぶ順序は、逆でもよい。反応装置24では、原油は、ライン26を通じて添加される硫化水素を含む水素処理ガスの存在下で、高温触媒床28に接触する。原油は、高温触媒床28経由で下方に流れて、ライン30経由で常圧塔32に誘導される。常圧塔32は、従来の方法で作動して、ライン34経由で除去される塔頂留出物が発生する。こうした塔頂留出物には、未使用の重質ナフサ、中間蒸留物、重質ガスオイルおよびプロセスオイルなどがあるが、これらは、図示のようにライン36経由でまとめて除去される。還元された原油は、ライン38経由で取り出されて、減圧蒸留塔(図示せず)で、さらに処理される。
【0015】
反応装置24では、原油の酸価は、原油中のより低分子量のナフテン酸成分を転化して、一酸化炭素、二酸化炭素、水および非酸性炭化水素生成物を生成することによって、接触還元される。反応装置24の反応装置条件は、付加水素存在下でさえも、芳香環飽和がほとんど生じないようにすることである。こうした軽微な反応装置条件であれば、水素分解反応または水素異性化反応も十分に促進することはない。水素存在下では、反応性硫黄すなわち無チオフェン硫黄を硫化水素にある程度転化することもある。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を、非限定的な例を用いてさらに具体的に説明する。
〔例1〕
この例は、高酸性原油に存在するナフテン酸の還元を目的とするものである。パイロット装置に水素処理触媒を充填し、その触媒を、二硫化ジメチルを含む未使用の蒸留物担体を硫黄源として用いて、従来の方法で硫化した。2種類の異なる市販のニッケルモリブデン触媒について試験をした。触媒Aは、流動接触分解装置供給材料に一般に使用される従来の高金属含量のニッケル/モリブデン水素処理触媒である。触媒Bは、水素化脱メタレーションに使用される低金属含量の広口細孔触媒である。3.7(mgKOH/ml)の酸価を有する高酸性原油を、供給オイルとして使用した。この原油を表1にまとめた条件下で、処理した。
【表1】
Figure 0004077948
【0017】
図2は、表1の実験条件下で測定された生成物の酸価を示すグラフである。あきらかに、生成物の酸価は、硫化水素の存在下では、低くなっている。
表2に、酸価の低減について算出され、かつ、硫化水素不在下での触媒Aの活性に対する参照となる一次速度定数を示す。
【表2】
Figure 0004077948
【0018】
低金属含量の触媒Bは、酸価を除去したために、触媒Aよりも著しく活性が低いが、両方の触媒の活性は、4%の硫化水素を水素処理ガスに含めたときには、30-50%だけ高まった。
【0019】
これは、水素処理時の従来の水素脱硫(HDS)反応および水素化脱膣(HDN)反応と比較したときとは、反対の結果である。尚、硫化水素はHDS反応とHDN反応の両方を阻害することが確認されている。このため、硫化水素を水素処理ガスに添加しても、効果は望めない。
【0020】
〔例2〕
新しい触媒を使用したことを除き、例1の手続きに従った。触媒Cは、蒸留物脱硫に使用されるタイプの高金属含量のコバルト/モリブデンである。触媒Dは、残油水素処理に使用される高金属含量のコバルト/モリブデン触媒である。表3および4は、それぞれ、例1の表1および表2と同様のものである。
【表3】
Figure 0004077948
【表4】
Figure 0004077948
【0021】
表2の結果と同様に、両方の触媒の活性は、4モル%の硫化水素を水素処理ガスに含めたときに、50乃至95%だけ高まった。
【図面の簡単な説明】
【図1】原油の酸価を低減するための方法を示す略工程系統図である。
【図2】 TAN低減時に添加された硫化水素の効果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
8、10、14、16、22、26、30、34、36、38 ライン
12 予備フラッシュ塔
20 加熱器
24 反応装置
28 高温触媒床
32 常圧塔

Claims (1)

  1. 酸性原油の全酸価を低減する方法において、前記酸性原油を水素処理触媒に、200乃至370℃の温度で、硫化水素を含有する水素処理ガスの存在下で、239乃至13,900kPaの全圧で接触させる方法であって、前記水素処理ガス中の硫化水素の量が、0.05乃至25モルパーセントであることを特徴とする方法。
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