JP4077749B2 - 拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のエギゾーストマニホールドのような拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2002−66648号公報
【0003】
ハイドロフォーミング方法は、鋼管やステンレス管などの素材管を金型の内部にセットし、素材管の端部から軸押しを行うとともに内部に高内圧を加え、素材管を金型の内面形状に沿って塑性変形させる加工方法であり、従来のバルジ加工方法(金属管を金型内部に配置して金型の形状的拘束を与え、金属管内部に圧力を加えて加工する方法)の発展した中空部品の成形方法として開発が進められている。このようなハイドロフォーミング方法においては、特許文献1に示されるように、所定内圧値になるまで内圧を徐々に上昇させるとともに軸押しを行い、所定内圧値に到達後は内圧を一定に保持した状態として軸押しを行うのが普通である(図3に示すグラフ中の破線参照)。
【0004】
一方、最近では例えば自動車のエギゾーストマニホールドのような中央部等に拡管部を有し、更に素材管の表面軸方向に対して垂直や斜め方向の枝張出部を持つ複雑な形状の部品の成形を、ハイドロフォーミングすることが検討されている。
ところが、ハイドロフォーミングの場合、加工要素としては「拡管要素」と「枝張出要素」に大別することができる。拡管要素は平面歪を伴いつつ加工するものであるのに対し、枝張出要素は主としてせん断歪を伴いつつ加工するもので両者は加工特性を異にするものである。従って、エギゾーストマニホールドのような拡管部と枝張出部を持つ複雑な形状の部品の成形を一連の工程のハイドロフォーミングで行うことは非常に困難であった。この結果、枝張出部を持つ複雑な形状の部品の場合は、多工程に分けて成形し、しかも焼鈍や後加工等を駆使して成形する必要があり成形効率に劣るという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、拡管要素と枝張出要素の両要素を有する複雑な形状の部品であっても多工程に分けることなく一連の工程で効率よくハイドロフォーミングすることができる拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法を提供することを目的として完成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法は、拡管部成形用のキャビティと枝張出部成形用のキャビティを備えた金型の内部に素材管をセットした後、先ず内面降伏開始圧力より大きくバースト圧力より小さい第1の内圧力をかけた状態で軸押して拡管部の成形を行い、次いで内圧を第1の内圧力より小さくかつ全面降伏圧力より小さい第2の内圧力まで下げた状態で軸押して枝張出部の成形を行い、一連の工程で拡管と枝張出の両方を行うようにハイドロフォーミングすることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、第2の内圧力を内面降伏開始圧力より小さくすることが有効であることが多く、これを請求項2に係る発明とする。また、第1の内圧力を全面降伏圧力とし、第2の内圧力を内面降伏開始圧力の約90%とすることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。更に、第1の内圧力をかけた状態で軸押しする第1の軸押し量を枝張出成形が進まない量とし、第2の内圧力をかけた状態で軸押しする第2の軸押し量を枝張出成形に必要な量とすることが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。加えて、内圧力が第1の内圧力に到達する前に枝張出部成形用のキャビティを封鎖し、その後拡管部の成形を行った後に枝張出部成形用のキャビティを開放することが有効であることが多く、これを請求項5に係る発明とする。
【0008】
本発明によれば、先ず内面降伏開始圧力より大きくバースト圧力より小さい内圧力をかけた状態で軸押しして、枝張出部を除き素材管を金型の内部に完全に密着させ、次いで内圧を第1の内圧力より小さくかつ全面降伏圧力より小さい第2の内圧力まで下げた状態で軸押して枝張出部を成形することで、一連の工程で拡管と枝張出の両方を行うようにハイドロフォーミングすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1〜図2において、1はハイドロフォーミング用の金型であり、その内部には下方側に拡管部成形用のキャビティ2が、また上方側には枝張出部成形用のキャビティ3が形成されている。即ち、この金型1は拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品を成形するためのものである。
また、この金型1は一方だけに軸押し金具4を備えた片押し式のものであり、軸押し力は図面の右方向に作用するが、両側に軸押し金具を備えた両片押し式のものであってもよいことは勿論である。なお、5は軸押し金具4に設けられた高圧流体供給孔、Pは素材管である。
【0010】
次に、本発明のハイドロフォーミング方法の手順を説明すると、図1に示すように、この金型1の内部に素材管Pをセットし、軸押し金具4の高圧流体供給孔5から素材管Pの内部に数十MPaの高圧流体を供給しながら軸押し金具4を図面の右方向に移動させ、ハイドロフォーミングを行う点は従来のハイドロフォーミング方法と基本的には同じである。
そして本発明では、先ず内面降伏開始圧力より大きくバースト圧力より小さい第1の内圧力をかけた状態で軸押して拡管部の成形を行い、次いで内圧を第1の内圧力より小さくかつ全面降伏圧力より小さい第2の内圧力まで下げた状態で軸押して枝張出部の成形を行い、一連の工程で拡管と枝張出の両方を行うようにハイドロフォーミングする点に特徴的構成を有する。
【0011】
つまり本発明では、図3に示されるように、先ず内面降伏開始圧力(Pi)より大きくバースト圧力(Pb)より小さい第1の内圧力(P1)をかけた状態で軸押して素材管Pを金型の内部に完全に密着させ、次いで内圧を第1の内圧力(P1)より小さくかつ全面降伏圧力(Pg)より小さい第2の内圧力(P2)まで下げた状態で軸押して枝張出成形を完成させることにより、金型1内において一連の工程で拡管と枝張出の両方を行うようにハイドロフォーミングを行い拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品を効率よく成形するのである。
【0012】
ここで、第1の内圧力(P1)を内面降伏開始圧力(Pi)より大きくバースト圧力(Pb)より小さい圧力としたのは、内面降伏開始圧力(Pi)に近づくと変形が進みにくくなり、バースト圧力(Pb)に近づくと当然割れを発生させる危険性が増すからである。本発明者の研究によれば、第1の内圧力(P1)は全面降伏圧力(Pg)程度が最もよいことを確認している。
【0013】
また、第2の内圧力(P2)を第1の内圧力(P1)より小さくかつ全面降伏圧力(Pg)より小さい圧力としたのは、金型と素材管との摩擦力を低減し、枝張出のために必要な軸押し力を枝張出個所まで伝達するためである。また、第2の内圧力(P2)を内面降伏開始圧力(Pi)より小さい圧力とすることで、摩擦力を極力低減することができる。ただし、下げすぎると座屈が発生するので、数値解析等で最適値を求める必要がある。本発明者の研究によれば、第2の内圧力(P2)は内面降伏開始圧力(Pi)の約90%とするのが好ましいことを確認している。ただし、材質の影響が大きいので、その都度、数値解析等で求めることが好ましい。
【0014】
第1の内圧力をかけた状態で軸押しする第1の軸押し量(δ1)は、枝張出成形が進まない量とする。第1の内圧力(P1)で軸押しするのは素材管Pを金型の内部に完全に密着させる(拡管成形)ためであるので、素材管Pのr値や塑性変形等を考慮して軸押部のシール性を保持しつつ枝張出成形が進まない程度の最少の軸押し量を求め、第1の軸押し量(δ1)とする。経験的には、素材管Pの直径の10%程度と考えられる。
【0015】
第2の内圧力をかけた状態で軸押しする第2の軸押し量(δ2)は、枝張出成形に必要な量とする。ここで、素材管Pの直径をD、枝張出量をh、枝部の直径をdとすると、第2の軸押し量(δ2)は少なくともh×d/Dより大きい必要があるが、具体的には設計条件に従って決定される。
加えて、図6〜図7に示すように、例えばカウンター6等の使用によって枝張出部成形用のキャビティを封鎖することで、枝張出部におけるバーストの危険性が低減できる。このキャビティの封鎖は、後続の枝張出成形の際には開放されていなければならないので、その後拡管部の成形を行った後にカウンター6等を取り除く等して枝張出部成形用のキャビティを開放する。
【0016】
このように、先ず内面降伏開始圧力(Pi)より大きくバースト圧力(Pb)より小さい第1の内圧力(P1)の内圧をかけた状態で軸押し、次いで内圧を第1の内圧力(P1)より小さくかつ全面降伏圧力(Pg)より小さい第2の内圧力(P2)まで下げた状態で軸押しすることにより、拡管要素と枝張出要素の両要素を有する複雑な形状からなる部品を、一連の工程で確実にハイドロフォーミングすることができることとなり、従来のように多工程に分けて成形する必要がなく、成形効率を大幅に向上できることとなる。
なお、図4に示すように、本発明のハイドロフォーミング方法により素材管Pの表面に拡管部11と枝張出部12を持つ成形品が得られるので、この枝張出部11の先端を部品切断面13で切断すれば完成品となる。
【0017】
ここで、本明細書中において使用した三つの圧力について説明しておく。
内面降伏開始圧力(Pi)とは、素材鋼管の内面において局所降伏が開始される圧力である。軸力がかからない場合の外周に拘束がない状態における内面降伏開始圧力(Pi)は、薄肉理想鋼管に関して、降伏応力(σys)、直径(D)、肉厚(t)とから、式1の内面降伏開始圧力計算式で計算できることが理論的に導かれている。
【数1】
例えば、D=42.7mm、t=1.8mmのフェライト系ステンレス鋼管(σys=540MPa)では、Pi=45.5MPaである。
全面降伏圧力(Pg)とは、素材鋼管の断面全域において降伏した時の圧力であり、理論的に求めることができないので、数値解析により求めることになる。例えば、軸力がかからない場合の外周に拘束がない状態における上記鋼管では、Pg=51.0MPaである。
バースト圧力(Pb)とは、素材鋼管がバーストする圧力であり、理論的に求めることができないので、数値解析により求めることになる。例えば、軸力がかからない場合の外周に拘束がない状態における上記鋼管では、Pb=57.0MPaである。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のハイドロフォーミング方法によれば、拡管要素と枝張出要素の両要素を有する複雑な形状の部品であっても多工程に分けることなく一連の工程で効率よくハイドロフォーミングすることができることとなる。このため本発明は自動車のエギゾーストマニホールドのような複雑な形状を持つ部品の製造に適したものである。
よって本発明は従来の問題点を一掃した拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法として、産業の発展に寄与するところは極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す金型の断面図である。
【図2】図1の最終成形状態を示す金型の断面図である。
【図3】軸押し量と内圧の関係を示すグラフである。
【図4】本発明で得られる成形品を示す一部切欠断面図である。
【図5】本発明で得られる複雑な形状を持つ部品を示す一部切欠断面図である。
【図6】その他の実施の形態を示す金型とキャビティの封鎖機構の断面図である。
【図7】図6の最終成形状態を示す金型の断面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 拡管部成形用のキャビティ
3 枝張出部成形用のキャビティ
4 軸押し金具
5 高圧流体供給孔
6 カウンター
P1 第1の内圧力
P2 第2の内圧力
Pi 内面降伏開始圧力
Pg 全面降伏圧力
Pb バースト圧力
δ1 第1の軸押し量
δ2 第2の軸押し量
Claims (5)
- 拡管部成形用のキャビティと枝張出部成形用のキャビティを備えた金型の内部に素材管をセットした後、先ず内面降伏開始圧力より大きくバースト圧力より小さい第1の内圧力をかけた状態で軸押して拡管部の成形を行い、次いで内圧を第1の内圧力より小さくかつ全面降伏圧力より小さい第2の内圧力まで下げた状態で軸押して枝張出部の成形を行い、一連の工程で拡管と枝張出の両方を行うようにハイドロフォーミングすることを特徴とする拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法。
- 内面降伏開始圧力より小さい第2の内圧力まで下げた状態で軸押しする請求項1に記載の拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法。
- 第1の内圧力を全面降伏圧力とし、第2の内圧力を内面降伏開始圧力の約90%とする請求項1または2に記載の拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法。
- 第1の内圧力をかけた状態で軸押しする第1の軸押し量を枝張出成形が進まない量とし、第2の内圧力をかけた状態で軸押しする第2の軸押し量を枝張出成形に必要な量とする請求項1〜3のいずれかに記載の拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法。
- 内圧力が第1の内圧力に到達する前に枝張出部成形用のキャビティを封鎖し、その後拡管部の成形を行った後に枝張出部成形用のキャビティを開放する請求項1〜4のいずれかに記載の拡管要素と枝張出要素の両要素を有する部品のハイドロフォーミング方法。
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