JP4077303B2 - 原子炉用燃料集合体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉に装荷する燃料集合体に係り、特にエルビア(Er)を低濃度で混入した燃料棒を少なくとも一部に使用する燃料集合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料濃縮度の上昇は、同じ発電電力量を得るための新燃料集合体数を減少させることを可能とし、使用済み燃料集合体発生量の低減につながり、燃料サイクルコスト低減に大きな効果がある。
しかし、現在の「ウラン加工施設安全審査指針」においては、235U濃縮度5wt%以下を対象としており、濃縮度5wt%を超える燃料については「特定のウラン加工施設のための安全審査指針」に基づき、より厳格な規制を受けることから、現在商業規模で実用化されている軽水炉用燃料集合体加工施設は、通常濃縮度5wt%を上限とした未臨界評価に基づき設計され、設置許可を取得している。
これに伴い、核燃料サイクル施設や輸送キャスクにおける未臨界評価は、大部分が濃縮度5wt%を上限として評価を行っている。
【0003】
従って、5wt%を超える燃料濃縮度を採用するためには、臨界管理の観点から、濃縮・成型加工・輸送・新燃料貯蔵・使用済み燃料貯蔵・再処理の各工程における設計変更,設備改造等が必要となり、燃料濃縮度上昇による燃料サイクルコスト低減効果が相殺される可能性がある。
従って、現在商業規模で実用化されている軽水炉用燃料集合体においては、燃料濃縮度の上限は5wt%(燃料濃縮度の製造公差を考慮して4.95wt%程度)に制約されているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
今後、更なる経済性向上の観点からは、5wt%の制限にとらわれず、濃縮度を上昇することが望まれる。
しかし、5wt%を超える燃料濃縮度を採用するためには、前述のごとく臨界管理の観点から、各工程における設計変更,設備改造等のコストが大きくなり、燃料濃縮度上昇による燃料サイクルコスト低減効果が相殺される可能性があることから、これに対応する対策が必要となる。
【0005】
そこで、かかる対策について検討を行った結果、燃料集合体組立て後の輸送・新燃料貯蔵・使用済み燃料貯蔵・再処理については、燃料集合体全数を可燃性毒物入り燃料集合体として可燃性毒物の反応度抑制効果を活用することにより、輸送容器や設備の改造をさけられる可能性があるが、成型加工施設については、可燃性毒物を含まない濃縮度5wt%以上のウランを取り扱う工程において設備改造がさけられないと考えるに至った。
【0006】
本発明は上述の如き実状に鑑み、濃縮度5wt%以上の燃料については、すべてウラン燃料粉末段階において、可燃性毒物を混入することにより、成型加工施設における臨界管理対策への影響の軽減をはかり、燃料濃縮度上昇による燃料サイクルコスト低減効果を活用し、経済性向上を達成することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
しかして、上記の目的を達成するにあたっては、混入する可燃性毒物の種類と濃度が重要な意味を持つ。
現在軽水炉燃料棒に混入する可燃性毒物として一般的に用いられているガドリニア(Gd)は中性子吸収断面積が大きく、反応度抑制効果が強いため、濃縮度5wt%以上の燃料にすべて混入すると、初期反応度が低くなりすぎ、原子炉を臨界状態に保つことが困難になる。また、燃料燃焼と共に反応度が急激に上昇するため、出力ピーキングを抑制することも困難になる。
【0008】
これに対し、反応度抑制効果が弱く、かつ長く持続する可燃性毒物であるエルビア(Er23)を低濃度で混入すれば、初期反応度を極端に抑制することなく、燃料の中性子増倍率の最大値を235U濃縮度5wt%の燃料の中性子増倍率の最大値以下に抑制し、更に燃料燃焼に伴う反応度変化も緩やかにすることができる。
なお、特に指定せずにエルビア(Er 2 3 )という用語を使用した場合は天然組成のエルビウム(Er)を使用したエルビアを指すのが一般的であり、上記の混入するエルビアとの用語も同様に天然エルビウムを指す。
【0009】
すなわち、本発明は、原子炉に装架する燃料集合体において、235U濃縮度5wt%以上のウラン燃料ペレットについてはすべてペレット成型加工に先立ち、反応度抑制効果が弱く、かつ長く持続する可燃性毒物であるエルビア(Er23)を0.2〜2.0wt%程度の低濃度で混入し、燃料の中性子増倍率の最大値を235U濃縮度5wt%の燃料の中性子増倍率の最大値以下に抑制した燃料を少なくとも一部に使用することを特徴とする。
【0010】
また、上記エルビア(Er)を低濃度で混入したウラン燃料棒は、これと235U濃縮度5wt%以下のガドリニア(Gd)入りウラン燃料棒とを組み合わせ使用することも好適である。
【0011】
以上のように濃縮度5wt%以上の燃料については、すべてウラン燃料粉末段階から、可燃性毒物であるエルビア(Er23)を0.2〜2.0wt%程度の低濃度で混入することにより、燃料の中性子増倍率を235U濃縮度5wt%の燃料の中性子増倍率以下に抑制することにより、成型加工施設の設備改造費およびそれに伴う成型加工費の上昇を抑制することができる。
また、上記エルビア(Er23)濃度を上記0.2〜2.0wt%程度の低濃度とすることにより、サイクル末期の可燃性毒物の反応度ペナルティを低減することが可能であり、燃料濃縮度上昇による新燃料体数削減効果が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的内容について順次、詳述する。
【0013】
本発明は前述の如く濃縮度5wt%以上の燃料についてペレット成形加工に先立ち、即ち、ウラン燃料粉末段階から可燃性毒物であるエルビア(Er23)を0.2〜2.0wt%の低濃度で混入し、燃料の中性子増倍率を235U濃縮度5wt%の燃料の中性子増倍率の最大値以下に抑制した燃料棒を原子炉に装架する燃料集合体の少なくとも一部に使用するものである。
【0014】
ここで、特に可燃性毒物の種類としては、ウラン燃料粉末段階から可燃性毒物による反応度抑制効果を活用する必要があることから、ウラン燃料粉末と均一に混入できること、また235U濃縮度5wt%以上の燃料棒の全数に混入することから、中性子吸収断面積が極端に大きくなく、燃焼特性も緩やかな可燃性毒物であるエルビア(Er)が最適である。
可燃性毒物の混入段階の例としては、ウラン濃縮後のウラン燃料粉末への再転換工程直後とすることにより、ウラン燃料粉末の輸送を容易にすることが出来ると考えられる。
【0015】
本発明を適用した原子炉用燃料集合体の一例として、反応度抑制効果が弱く、かつ長く持続する可燃性毒物であるエルビア(Er)を燃料棒の全数に混入したPWR燃料集合体の例をガドリニア(Gd)を均一に混入した場合と比較して図1に示す。
【0016】
図1には、燃料集合体の全燃料棒に、濃縮度4.10wt%,4.95wt%,6.0wt%の標準ウラン燃料棒を用いた場合の無限増倍率、全燃料棒に0.3wt%のガドリニア(Gd)を均一に混入した場合の無限増倍率、全燃料棒に0.2wt%,2.0wt%のエルビア(Er)を均一に混入した場合の無限増倍率を夫々示している。
また、図2には、燃料集合体内の全燃料棒に、濃縮度4.95wt%,6.0wt%の標準ウラン燃料棒を用いた場合の無限増倍率、全燃料棒に0.2wt%,0.5wt%,1.0wt%,2.0wt%,3.0wt%のエルビア(Er)を均一に混入した場合の無限増倍率を夫々示している。
【0017】
これら燃料集合体の無限増倍率燃焼特性の図によれば、濃縮度5wt%のウラン燃料にガドリニアを均一に混入した燃料では、0.2wt%の低濃度で混入した場合でも、初期の燃料集合体無限増倍率が0.9程度と低くなりすぎることにより原子炉を臨界に保つことが困難になる。
更に、ガドリニアの燃焼特性が急激であることから燃料燃焼と共に無限増倍率が急激に上昇するため、出力ピーキングを抑制することが困難となる。
【0018】
これに対し、濃縮度6wt%のウラン燃料にエルビアを0.2wt%均質に低濃度で混入することにより、燃料集合体無限増倍率が最大となる初期においても濃縮度4.95wt%の可燃性毒物を含まない標準ウラン燃料集合体の無限増倍率よりも低く抑制しつつ、サイクル末期の可燃性毒物の反応度ペナルティを適正化することが可能である。但し、0.2wt%のエルビアを均一に混入した場合には集合体反応度が高いために、エルビア燃料棒だけでは炉心の内側に装荷する場合の出力ピーキングの抑制が難しい可能性がある。
【0019】
また、濃縮度6wt%のウラン燃料にエルビアを2.0wt%程度均一に混入する場合、初期の燃料集合体増倍率は1.0程度となり、原子炉を臨界に保つことが可能になると考えられる。しかし、これ以上エルビアの濃度を高くすると、初期の燃料集合体増倍率が低くなりすぎることにより、原子炉を臨界に保つことが困難になる可能性が高い。
更に、30GWd/t以下の燃料燃焼度領域において、濃縮度4.95wt%の標準ウラン燃料集合体よりも無限増倍率が低くなるため、経済性が悪化し、新燃料体数削減効果が小さくなってしまう可能性がある。
従って、全燃料にエルビアを混入する濃度としては、0.2〜2.0wt%程度の範囲は可能であると考えられるが、集合体出力ピーキングの抑制及び経済性の向上の観点からは、エルビア燃料を混入する濃度として0.5〜1.0wt%程度がより適切である。
この範囲においては燃料燃焼度約10GWd/t以上の領域においては濃縮度4.95wt%の標準ウラン燃料集合体を超える無限増倍率を確保することが可能であることから、235U濃縮度を現在の事実上の上限である4.95wt%まで上昇させた場合を上回る新燃料体数削減効果が期待できる。
【0020】
初期反応度の調節や可燃性毒物の燃焼タイミングについては、エルビア濃度1.0wt%の例を示すように、エルビア濃度により調節可能である。炉心の内側に装荷する場合の出力ピーキングを抑制するために、特に初期反応度を抑制しつつサイクル末期の反応度ペナルティを低減する必要がある場合は、より中性子吸収断面積が大きく、可燃性毒物の燃焼速度が速いガドリニア等を混入させた燃料棒と組み合わせて燃料集合体を構成することも可能である。
なお、以上においては、例として17×17型燃料集合体仕様を基に、エルビア燃料の濃度の範囲について検討したが、燃料集合体仕様が異なる場合には、適切なエルビアの濃度の範囲はこれと必らずしも一様でなく、異なる場合がある。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、濃縮度5wt%以上の燃料についてはすべてウラン燃料粉末段階から、可燃性毒物であるエルビア(Er)を低濃度で混入することにより、成型加工施設の設備改造費およびそれに伴う成型加工費の上昇を抑制することができる。
また、エルビア(Er)濃度を0.2〜2.0wt%程度の低濃度とすることにより、サイクル末期の可燃性毒物の反応度ペナルティを低減することが可能であり、燃料濃縮度上昇による新燃料体数削減効果が得られ、経済性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】可燃性毒物を混入していない標準ウラン燃料、全燃料棒に可燃性毒物であるガドリニア(Gd)を混入した燃料及び全燃料棒に可燃性毒物であるエルビア(Er)を混入した燃料の燃料集合体無限増倍率の燃焼に伴う変化を比較した図である。
【図2】可燃性毒物を混入していない標準ウラン燃料、全燃料棒に可燃性毒物であるエルビア(Er)を混入した燃料の燃料集合体無限増倍率の燃焼に伴う変化を比較した図である。

Claims (2)

  1. 原子炉に装架する燃料集合体であって、235U濃縮度5wt%以上のウラン燃料ペレットについては全てペレット成形加工に先立ち、反応度抑制効果が弱く、かつ長く持続する可燃性毒物であるエルビア(Er23)を0.2〜2.0wt%の低濃度で混入し、燃料の中性子増倍率の最大値を235U濃縮度5wt% の燃料の中性子増倍率の最大値以下に抑制した燃料棒を少なくとも一部に使用することを特徴とする原子炉燃料集合体。
  2. 上記エルビア(Er23)を低濃度で混入したウラン燃料棒と、235U濃縮度5wt%以下のガドリニア(Gd23)入りウラン燃料棒を組み合わせ使用する請求項1記載の原子炉用燃料集合体。
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