JP4077272B2 - 鉄強化米又は鉄強化麦 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄が強化された米又は麦に関し、水による通常の米研ぎ(水洗い)において、米や麦表面に付着させた鉄分の流出が低減された安定な鉄強化米又は鉄強化麦に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
米飯を主食とする日本国の食生活において、近年、主食として米以外にパン等の小麦製品が食されるようになり、また、インスタント加工食品が広く利用されるようになった。その結果、栄養のバランスが偏り、人の健康に与える影響が社会的問題となってきた。このような栄養のアンバランスを補う方法として、特に、米の表面にビタミンB1及びその他の不足しがちな水溶性ビタミンや脂溶性ビタミン類、その他の栄養素を添加補強した強化精米等が市販され、広く食用されるようになった。
【0003】
そのような強化は、例えば、原料精米又は原料精麦を、強化栄養素を溶解した酸性溶液に浸漬した後、短時間蒸煮して栄養素を含有させ、熱風乾燥する方法や、水に溶けない脂溶性栄養素はこれを乳化し、水溶性のビタミンやカルシウム,鉄等のミネラル栄養素は、強化したいそれぞれの適量を混合し水溶液として、又は上記乳化液中に加えて、それらの栄養素を、例えば、流動造粒機,遠心式流動コーティング造粒機等を利用して精米等の表面にコーティングし、乾燥する方法等により製造され、提供されている。しかし、このようにして付着強化された栄養素は、米等を炊く前の水洗いにおいて、かなりの量が流れ出しロスとなるという問題が避けられなかった。これを防止するためには、無洗米(米等を炊く前の水洗いが不要とした米)用として加工する以外では、水洗いで容易に付着栄養素が水相に移行しないように固定することが望ましいが、実用的に有効な被覆方法はまだ見出されていないのが現状である。また、ツエインやセラックを被覆する方法では、大がかりな製造設備が必要となるため、これまで工業的に採用されていないのが実情である。
【0004】
特公平5−30426(特開昭59−130157)に記載されている油脂類及びロウ類の乳化物を被覆する方法では、ロウ類を用いるため、風味が低下するという問題があった。
また、特開平8−56593に記載されているエタノールを用いる方法は、エタノールに可溶性のものしかコーティング剤として使用できず、コーティングする際に使用するエタノールに引火する危険性がある等の問題があった。
また、いずれの方法によっても、栄養素を安定化させるには、栄養素を被覆した上で固定化のための被覆を行うという2段階の工程で行う必要があり、非常に手間のかかるものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、工業的に安全で、1回の被覆工程で簡単に製造可能な、水による通常の米研ぎ(水洗い)において、米粒や麦粒表面に付着させた鉄分の流出が低減された安定な鉄強化米又は鉄強化麦を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、鉄塩、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物を、米粒又は麦粒に被覆することにより、工業的に安全で、1回の被覆工程で簡単に製造可能な、米研ぎ時における鉄分の流出が抑制された安定な鉄強化米又は鉄強化麦を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
【発明の実施の形態】
本願発明における米とは、その種類については特に限定されるものではなく、粳米、餅米、陸稲、インディカ米、ジャワニカ米等のいずれでも良く、また、その搗精度合いにも限定されるものではなく、精白米、胚芽精米、七分搗き米、五分搗き米、玄米等のいずれでも良い。
本願発明における麦とは、その種類については特に限定されるものではなく、大麦、パン小麦、クラブ小麦、デュラム小麦、はと麦、燕麦、ライ麦等のいずれでも良く、また、その搗精度合いや形状にも限定されるものではなく、押麦、白麦、米粒麦等のいずれでも良い。
【0008】
本願発明における鉄塩とは、特に限定されるものではなく、ピロリン酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコン酸第二鉄、乳酸鉄、水酸化第二鉄、塩化第二鉄、フマル酸第一鉄、三二酸化鉄、スレオニン鉄を、単体で、又は複数組み合わせて用いることができるが、鉄分の米研ぎ時における流出抑制の面より、ピロリン酸第二鉄、フマル酸第一鉄、スレオニン鉄等の水に不溶性の鉄塩が好ましく、色調や風味の面も鑑み、最も好ましくは、ピロリン酸第二鉄である。なお、ここでいう不溶性とは、第七版食品添加物公定書通則29の試験法において「極めて溶けにくい」又は「ほとんど溶けない」に該当するものをいい、好ましくは「ほとんど溶けない」に該当するものである。
【0009】
鉄塩の平均粒径については、特に限定するものではないが、好ましくはレーザー回折型粒度分布測定による平均粒径が2μm以下、更に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。平均粒子径がこれよりも大きなものを利用した場合は、米粒又は麦粒に被覆する際により均一な被覆ができない場合がある。この平均粒径の鉄塩を得る方法としては、中和造塩による方法(特許第3050921号)や、ジェットミル等の乾式粉砕機や、コボールミルやダイノミル等の湿式粉砕機により粉砕する方法が挙げられ、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油中で湿式粉砕機により粉砕する方法が、粉砕と均一混合分散が同時にできるため好ましい。
【0010】
本願発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルをいい、これを構成するポリグリセリンの平均重合度や脂肪酸の種類、エステル化率については、特に限定されるものではない。親水基と親油基の分子量比より算定されるHLBは5以下が好ましく、4以下が更に好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は、3以上が好ましく、3〜11が更に好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数が8〜20である飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖中に水酸基を有する脂肪酸又は、縮合リシノレイン酸が好ましく、縮合リシノレイン酸が更に好ましい。
具体的には、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリン、オクタステアリン酸ヘキサグリセリン、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン、縮合リシノレイン酸ペンタグリセリンより選ばれる1種又は2種以上が好ましく、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン、縮合リシノレイン酸ペンタグリセリンより選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
また、本願発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤を併用しても良い。食品用乳化剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン等が挙げられる。
【0011】
本願発明における硬化油とは、常温で溶融しないものであれば、特に限定するものではなく、1種類のみの使用に限らず、2種以上を併用しても良い。通常、融点が30℃以上の油脂であり、好ましくは、融点が35℃以上の油脂である。例えば、大豆硬化油、綿実硬化油、菜種硬化油、ヤシ硬化油、米硬化油、トウモロコシ硬化油等の植物性硬化油や、牛脂、豚脂等の動物油脂及びこれらに水素添加して得られる動物性硬化油等が挙げられ、食味等への影響の面より、植物性硬化油が好ましい。
【0012】
鉄塩の添加量は特に限定するものではなく、所望の強化割合に応じて、鉄塩の種類によって適宜調整できる。通常、硬化油100重量部に対して1〜100重量部配合すると良い。添加量の下限値としては、好ましくは硬化油100重量部に対して10重量部であり、更に好ましくは25重量部である。鉄塩の添加量がこの割合未満の場合は、鉄分の強化のために多量の混合物を必要とするので実用的ではなくなる。添加量の上限値としては、好ましくは、硬化油100重量部に対して90重量部であり、更に好ましくは75重量部である。鉄塩の添加量がこの割合より多い場合には鉄塩の硬化油による被覆が不十分となり、鉄塩が米研ぎの際に溶出し易くなる。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は特に限定するものではないが、通常、硬化油100重量部に対して0.1〜100重量部配合すると良い。添加量の下限値としては、好ましくは硬化油100重量部に対して1重量部であり、更に好ましくは5重量部である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量がこの割合未満の場合は、鉄塩を十分に分散させることが困難となり実用的ではなくなる。添加量の上限値としては、好ましくは、硬化油100重量部に対して50重量部であり、更に好ましくは20重量部である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量がこの割合より多い場合には米研ぎの際に、乳化転相により内包する成分の溶出が生じ易くなる。
【0014】
本願発明において、米又は麦に強化される素材としては、鉄のみに限定されるものではなく、他の素材も強化できる。鉄塩と共に強化できる素材としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム等の鉄以外のミネラル類及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他食品添加物として認可されている有用物質の1種又は2種以上が使用できる。
【0015】
これら素材の添加量は、所望の強化に応じて、適宜、栄養素の種類及びそれぞれの添加量が選択的に付着強化されるが、例えば、ビタミンB1 は、米100g当たり100〜150mgを含むように以前制定されていた特殊栄養食品の基準量を参考にすることができる。また、国民栄養調査の結果の資料を参考に、不足分を補う様に強化することもできる。又は米等を元の玄米等の栄養価レベルに一致するように高めてもよい。これらは、鉄塩と同時に、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油と混合し、米粒又は麦粒に被覆すれば良い。
【0016】
これらの内、油溶性素材に関しては、硬化油に溶かせば良い。油に不溶性の素材については、鉄塩と同様、好ましくは、レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が2μm以下、更に好ましくは、平均粒子径が1μm以下、最も好ましくは、0.5μm以下になるように粉砕すると、米粒又は麦粒に被覆する際により均一な被覆が可能となるので望ましい。この粉砕は、上述の鉄塩と同様、湿式粉砕機により粉砕する方法が良く、鉄塩と同時に粉砕機にかけて、粉砕すれば良い。
【0017】
本願発明の強化米又は強化麦を製造する方法は、鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物を、米粒又は麦粒に被覆すれば良い。その際、鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物をそのまま用いても良いし、水に乳化させた乳化液として用いても良いが、そのまま用いることが乾燥等の工程が不要であるため好ましい。
本願発明において、米粒又は麦粒に、鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物を、米粒又は麦粒に被覆する方法は、米粒又は麦粒を均一に被覆できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、回転させたコーティングパンに米又は麦を投入し、熱風を送りながら鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物を噴霧して被覆する方法、同様の操作を流動造粒機中で行う方法等が挙げられる。中でも、より均一な被覆が可能である噴霧コーティングによる方法が好ましい。
本被覆液には、できあがりの強化米又は強化麦の着色を目的として、ビタミンB2、β−カロチン、クチナシ色素等の色素を添加しても良い。
【0018】
本願発明の強化米又は強化麦は、米飯類を炊飯・調理する際に通常の米又は麦に添加混合して、又は、強化米又は強化麦単独で用いることができる。通常の米又は麦に添加混合する割合については、特に限定するものではなく、強化米又は強化麦の栄養素の強化度合いや、米飯類へ栄養素を強化しようとする量によって任意に設定可能である。添加混合で使用する場合、米又は麦100重量部に対し通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜2重量部、本願発明の強化米又は強化麦を添加混合すれば良い。
なお、ここでいう米飯類とは、白飯、赤飯、粥、雑炊、ピラフ、炒飯、ドリア、リゾット、麦飯、オートミール等、米及び/又は麦を炊飯・調理したもののことである。
【0019】
次に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【実施例】
実施例1.鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物の調製(1)
ピロリン酸第二鉄30g、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン(サンソフト818H;HLB=1:太陽化学(株)製)8g、ヤシ硬化油(融点36℃)62gを混合し、これをコボールミル(神鋼パンテック株式会社製)を用いて粉砕均一混合し、混合物A96gを得た。
鉄塩のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径は、0.4μmであった。
【0020】
実施例2.鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物の調製(2)
硫酸第一鉄7水和物30g、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン(サンソフト818H;HLB=1:太陽化学(株)製)8g、ヤシ硬化油(融点36℃)62gを混合し、これをコボールミル(神鋼パンテック株式会社製)を用いて粉砕均一混合し、混合物B96gを得た。
鉄塩のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径は、0.4μmであった。
【0021】
実施例3.鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物の調製(3)
ピロリン酸第二鉄30g、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン(サンソフト818H;HLB=1:太陽化学(株)製)8g、ヤシ硬化油(融点36℃)62gをホモミキサーで均一混合し、混合物C94gを得た。
鉄塩のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径は、3.5μmであった。
【0022】
実施例4.鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物の調製(4)
ヨウ化カリウム2g、ビタミンB1塩酸塩30g、ナイアシン266g、ビタミンB1228mg、葉酸3gを混合し、ビタミンプレミックスを調製した。
ピロリン酸第二鉄20g、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン(サンソフト818H;HLB=1:太陽化学(株)製)7g、酵素分解レシチン(サンレシチンA:太陽化学(株)製)1g、ヤシ硬化油(融点36℃)54.2g、上記のビタミンプレミックス15g、ビタミンAパルミテート(100万単位/g)2.5g、カゼインカルシウムペプチド(CCP:太陽化学(株)製)0.3gを混合し、これをダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて粉砕均一混合し、混合物D96gを得た。
混合物中の鉄塩を含む固形分のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径は、0.3μmであった。
【0023】
実施例5.鉄強化米の調製(1)
精白米600gをコーティングパンに入れ、コーティングパンを回転させながら、常温の風を送り、実施例1で得られた混合物A20.6gを60℃に保ちながら2.5g/分の速度で噴霧してコーティングを行い、本願発明の鉄強化米E620gを得た。
【0024】
実施例6.鉄強化米の調製(2)
被覆液として実施例2で得られた混合物B31gを噴霧する以外は実施例5と同様にして本願発明の鉄強化米F630gを得た。
【0025】
実施例7.鉄強化米の調製(3)
被覆液として実施例3で得られた混合物C20.6gを噴霧する以外は実施例5と同様にして本願発明の鉄強化米G620gを得た。
【0026】
実施例8.鉄強化米の調製(4)
被覆液として実施例4で得られた混合物D31gを噴霧する以外は実施例5と同様にして本願発明の鉄強化米H630gを得た。
【0027】
比較例1.鉄塩−油脂の2段階被覆米の調製
精白米600gをコーティングパンに入れ、コーティングパンを回転させながら、熱風を送り、ピロリン酸第二鉄6.2gを脱イオン水200mlに分散した液を5ml/分の速度で噴霧してコーティングを行った。溶液を噴霧し終わった後も熱風を送り続けて水分10%になるまで乾燥後、送風を冷風にし、30℃まで冷却した。次いで、送風を常温にし、ヤシ硬化油(融点36℃)13.8gを60℃に保ちながら2.5g/分の速度で噴霧してコーティングを行い、比較品の鉄強化米I620gを得た。
【0028】
試験例1.洗米による鉄分の流出試験
本願発明及び比較品の鉄強化米E〜I各1gを、それぞれ精白米200gに混合して試料米とした。それぞれの試料米に250mlの水道水を加え、1分間に約30回転の速さでもみほぐす様に水洗し、水切りする作業を4回繰り返した。水切りされた水を集め、その水中に含まれる鉄の量を原子吸光光度法で測定し、鉄強化米1g中の含有量に対する比を計算することにより、損失率を求めた。その結果を表1にまとめた。
【0029】
【表1】
【0030】
この結果より明らかな様に、本願発明品は比較品よりも洗米による鉄分の損失が少なかった。また、水溶性の硫酸第一鉄よりも不溶性のピロリン酸第二鉄の方が鉄分の損失が少なく、同じピロリン酸第二鉄であっても未粉砕よりも粉砕した方が鉄分の損失が少なかった。
【0031】
実施例9.強化麦の調製
実施例5において、精白米の代わりに米粒麦600gを使用する以外は同様にして、本願発明の鉄強化麦620gを得た。
【0032】
試験例2.炊飯時の風味の確認
実施例5で得られた本願発明の強化米及び実施例9で得られた強化麦各1gをそれぞれ精白米200gに混合して試料米とした。それぞれを試験例1と同様な方法で洗米した後、電気炊飯器を使用して、鉄分及びビタミン類の強化されたご飯を調製した。鉄分の強化されていない米又は麦を同量添加したものを比較品として調製し、官能検査を行ったところ、両者に差は感じられなかった。
【0033】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下のとおりである。
(1) 鉄塩及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物を、米粒又は麦粒に被覆してなることを特徴とする鉄強化米又は鉄強化麦。
(2) 鉄塩が、水に不溶性の鉄塩であることを特徴とする(1)記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(3) 鉄塩が、ピロリン酸第二鉄であることを特徴とする(1)又は(2)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(4) ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが5以下であることを特徴とする(1)〜(3)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(5) ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが4以下であることを特徴とする(1)〜(4)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(6) ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が3以上であることを特徴とする(1)〜(5)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(7) ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が3〜11であることを特徴とする(1)〜(5)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(8) ポリグリセリン脂肪酸エステルが炭素数8〜20の脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む1種又は2種以上であることを特徴とする(1)〜(7)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(9) ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が縮合リシノレイン酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む1種又は2種以上であることを特徴とする(1)〜(8)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(10) ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリン、オクタステアリン酸ヘキサグリセリン、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン、縮合リシノレイン酸ペンタグリセリンより選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)〜(9)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
【0034】
(11) 鉄塩のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が2μm以下であることを特徴とする(1)〜(10)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(12) 鉄塩のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする(1)〜(10)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(13) 鉄塩のレーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が0.5μm以下であることを特徴とする(1)〜(10)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(14) 硬化油が、植物性硬化油であることを特徴とする(1)〜(13)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
【0035】
(15) 鉄塩の添加量が、硬化油100重量部に対して1〜100重量部であることを特徴とする(1)〜(14)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(16) 鉄塩の添加量が、硬化油100重量部に対して10重量部以上であることを特徴とする(15)記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(17) 鉄塩の添加量が、硬化油100重量部に対して25重量部以上であることを特徴とする(15)記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(18) 鉄塩の添加量が、硬化油100重量部に対して90重量部以下であることを特徴とする(15)〜(17)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(19) 鉄塩の添加量が、硬化油100重量部に対して75重量部以下であることを特徴とする(15)〜(17)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
【0036】
(20) ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が、硬化油100重量部に対して0.1〜100重量部であることを特徴とする(1)〜(19)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(21) ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が、硬化油100重量部に対して1重量部以上であることを特徴とする(20)記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(22) ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が、硬化油100重量部に対して5重量部以上であることを特徴とする(20)記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(23) ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が、硬化油100重量部に対して50重量部以下であることを特徴とする(20)〜(22)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(24) ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が、硬化油100重量部に対して20重量部以下であることを特徴とする(20)〜(22)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
(25) 米又は麦への栄養素の被覆工程が1回であることを特徴とする(1)〜(24)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦
(26) (1)〜(25)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦の製造方法。
(27) (1)〜(26)いずれか記載の鉄強化米又は鉄強化麦を含有することを特徴とする米飯類。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の強化米や強化麦に比べて水洗いの際に強化栄養素の流出ロスが極めて少ない強化米等が容易に且つ効率良く提供され、これを混和して炊いたごはんの風味も実質的に低下しないので、米等を主食とする人々には極めて有用であり、その産業上の利用価値は大である。
Claims (2)
- ピロリン酸第二鉄、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び硬化油を含有する混合物を湿式粉砕し、ピロリン酸第二鉄の平均粒子径を2μm以下とした混合物を、乳化液とせずに噴霧して、米粒又は麦粒に被覆してなることを特徴とした鉄強化米又は鉄強化麦。
- ポリグリセリン脂肪酸エステルがポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルである請求項1記載の鉄強化米又は鉄強化麦。
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