JP4076902B2 - 光学式バイオセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体内の体液中に溶存する物質の量を測定するセンサに関し、特に光導波現象を用いた光学式バイオセンサに係わる。
【0002】
【従来の技術】
生体内の体液中に溶存する物質の量を測定するセンサとして、光導波現象を利用した平面光導波路型測定センサが知られている。この平面光導波路型測定センサは、図7に示す通り、光源6から光が入射する基板1上の位置に入射側グレーティング3、基板1から受光素子に向けて光を出射する位置に出射側グレーティング4を形成し、さらに基板1表面に光を透過させる単一の光導波路層2を形成し、この光導波路層2上に分子認識機能および情報変換機能を有する膜、例えばグルコースオキシダーゼ(GOD)固定化膜5を形成した構造を有する。この平面光導波路型測定センサは、生体から注射器等で抽出した血液等をグルコースオキシダーゼ(GOD)固定化膜5上に滴下した状態で、レーザ光を入射側グレーティング3を通して光導波路層2に入射させ、エバネッセント波を発生させ、光導波路層2上の膜による血液等に含まれる生体分子との反応に起因するエバネッセント波の変化量を出射側グレーティング4から放出される光を受光する受光素子7により検出して、血液等に含まれる生体分子を分析するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−61346号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、平面光導波路型測定センサで、高精度にエバネッセント波の変化量を測定できるように光導波路層2を基板1上に形成するのには、光が所望の屈折をしながら光導波路層2内を透過するようにするため、精密な製造装置と高度の技術が必要である。
【0005】
本発明は、簡単な作製方法によって、高精度にエバネッセント波の変化量を測定できる光学式バイオセンサを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、発光素子と、前記発光素子から出射した光を回折させる入射側のグレーティングと、前記入射側のグレーティングにおいて回折した光を、ガラス層と前記ガラス層の表面に形成された酸化シリコン層とから構成される導波層内を全反射させながら透過させる全反射層と、
前記全反射層を透過する光を回折させ、前記全反射層の外に出射させる出射側のグレーティングと、前記出射側のグレーティングで回折した光を受光する受光素子と、前記酸化シリコン層に接して、前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングの間に設けられた、酵素と発色試薬を含有するセンシング膜とを具備し、前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングは、前記全反射層に接し、互いに離間して設けられていることを特徴とする光学式バイオセンサであることを要旨とする。
また、本願発明は、発光素子と、前記発光素子から出射した光を回折させる入射側のグレーティングと、前記入射側のグレーティングにおいて回折した光を、ガラス層と前記ガラス層の表面に形成された酸化チタン層とから構成される導波層内を全反射させながら透過させる全反射層と、
前記全反射層を透過する光を回折させ、前記全反射層の外に出射させる出射側のグレーティングと、前記出射側のグレーティングで回折した光を受光する受光素子と、前記酸化チタン層に接して、前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングの間に設けられた、酵素と発色試薬を含有するセンシング膜とを具備し、前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングは、前記全反射層に接し、互いに離間して設けられていることを特徴とする光学式バイオセンサであることを要旨とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
【0008】
本発明の実施の形態に係る光学式バイオセンサは、図2に示すように、入射した光が層内を全反射しながら透過する全反射層10と、全反射層10に接して、互いに離間して設けられた入射側グレーティング11a及び出射側グレーティング11bと、全反射層10に接して、入射側グレーティング11a及び出射側グレーティング11bの間に設けられた酵素と発色試薬を含有するセンシング膜12とを含む。さらに図1に示すように、センシング膜12を囲いながら、入射側グレーティング11a及び前記出射側グレーティング11bを覆う保護膜13をさらに含む。
【0009】
続いて各部の材料や形成方法を詳細に説明する;
(イ)全反射層10は、石英(酸化シリコン)をプレート状に成型し形成する:
(ロ)入射側グレーティング11a及び出射側グレーティング11bは、全反射層10より高屈折率の材料、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、ガリウム砒素、インジウム錫酸化物、ポリイミド、酸化タンタル等を化学蒸着法(CVD)等により全反射層10上に堆積させ、リソグラフィー技術とドライエッチング技術でパターニングすることにより形成する:
(ハ)センシング膜12は、酵素と発色試薬をセルロース誘導体等によってゲル状に固定し形成する。例えば、測定する体液中の物質がグルコースである場合、酵素としては、GOD、ペルオキシダーゼ(POD)及びムタローゼ等を用いる。発色試薬としては、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン等を用いる。センシング膜がグルコースによって発色する化学反応式は(1)〜(3)のようになる。なお、右辺には本反応を理解するのに必要な事項のみを記載しており、生成される物質等のすべてを記載してはいない:
グルコース + GOD → H2O2 ・・・・・(1)
H2O2 + POD → O* ・・・・・(2)
O* + 発色試薬 → 発色 ・・・・・(3)
(ニ)保護膜13は、フッ素系樹脂のような入射側グレーティング11a及び出射側グレーティング11bに比べて低屈折率の材料を塗布して形成する。
【0010】
図2に示すように、発光素子21より入射された光は、入射側グレーティング11aで回折し、全反射層10内を全反射しながら透過していく。全反射層10とセンシング膜12の境界面で屈折する際に、エバネッセント波がセンシング膜12の発色によって吸収される。したがってセンシング膜12の発色の度合い、すなわち測定しようとする物質の量に比例して光が吸収されることになる。最終的に出射側グレーティング11bに到達した光は、全反射層10から受光素子22に向けて出射される。そして、発光素子21より放射した光量と、受光素子22で受けとった光量との差から測定しようとする物質の量を算出することになる。
【0011】
本発明の実施の形態によれば、簡単な技術により、単純な構造の光学式バイオセンサを作製することができる。
【0012】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態の第1の変形例に係る光学式バイオセンサは、図3に示すように、全反射層10が、ガラス層10aと、ガラス層10a表面に形成された酸化シリコン層10bから構成させている。それ以外の構成は、前述した光学式バイオセンサと同様である。これは、全反射層10を石英で形成すると材料が高価で、光学式バイオセンサも高価になってしまうため、安価な材料で作製しようとするものである。
【0013】
各部の材料や形成方法を説明する;
(イ)ガラス層10aは、無アルカリガラスをプレート状に成型し形成する:
(ロ)酸化シリコン層10bは、CVDやスパッタ等で酸化シリコンをガラス層10a上に堆積させ形成する。
【0014】
酸化シリコン層10bを設けた理由は、ガラス層10aの表面に存在する金属が均一ではないため、ガラス層10a上にセンシング膜12を設けると、使用する無アルカリガラス材料ごとに測定に影響を及ぼしてしまうからである。図4に示したように、X線光電子分光分析(XPS)の結果、ガラス層10aの表面には、シリコン(Si)の他に、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)が存在していることがわかる。ガラス層10aの表面に酸化シリコン層10bを設けると、図5に示したXPSの結果のように、シリコンのみが存在する表面上にセンシング膜12を設けることができる。そして、測定への影響を除去できる。したがって、第1の変形例では、本発明の実施の形態で述べた効果を低価格で得ることができる。
【0015】
(第2の変形例)
本発明の実施の形態の第2の変形例に係る光学式バイオセンサは、図6に示すように、全反射層10が、ガラス層10aと、ガラス層10a表面に形成された酸化チタン層10cから構成させている。それ以外の構成は、本発明の実施の形態で述べた光学式バイオセンサと同様である。これは、第1の変形例と同様に、全反射層10を石英で形成すると材料が高価で、光学式バイオセンサも高価になってしまうため、安価な材料で作製しようとするものである。
【0016】
各部の材料や形成方法を説明する;
(イ)ガラス層10aは、無アルカリガラスをプレート状に成型し形成する:
(ロ)酸化チタン層10cは、CVDやスパッタ等で酸化チタンをガラス層10a上に堆積させ形成する。センシング膜12との境界面での光の吸収量を極大とするため、酸化チタン層10cの厚さは、好ましくは180nm〜200nm、最も好ましくは200nmとする。
【0017】
この形成方法では、入射側グレーティング11a及び出射側グレーティング11bを、酸化チタン層10cからリソグラフィー技術とドライエッチング技術でパターニングすることにより形成することが可能であり、作製が容易となる。
【0018】
さらに、全反射層10を、ガラス層10aとガラス層10aより高屈折率を有する酸化チタン層10cで構成することで、センシング膜12との境界面でのエバネッセント波の電場強度を増大させられる。
【0019】
したがって、第2の変形例では、本発明の実施の形態で述べた効果を低価格で得ることができるとともに、作製手順が容易になる。
【0020】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態を説明するために各図において示した各部位の厚さや位置関係は、あくまでも例示であって、本発明の機能を実現するために限定したものでない。よって、本発明の機能が実現可能な範囲において、各部位の厚さや位置関係が考え得ることは言うまでもない。
【0021】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な作製方法によって、高精度にエバネッセント波の変化量を測定できる光学式バイオセンサを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学式バイオセンサの上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学式バイオセンサの図1のI−Iの断面図である。
【図3】本発明の第1の変形例に係る光学式バイオセンサの断面図である。
【図4】ガラス層のX線光電子分光分析(XPS)の結果である。
【図5】酸化シリコン層のX線光電子分光分析(XPS)の結果である。
【図6】本発明の第2の変形例に係る光学式バイオセンサの断面図である。
【図7】従来の平面光導波路型測定センサの断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…光導波路層、3…入射側グレーティング、4…出射側グレーティング、5…GOD固定化膜、6…光源、7…受光素子、10…全反射層、10a…ガラス層、10b…酸化シリコン層、10c…酸化チタン層、11a…入射側グレーティング、11b…出射側グレーティング、12…センシング膜、13…保護膜、21…発光素子、22…受光素子
Claims (7)
- 発光素子と、
前記発光素子から出射した光を回折させる入射側のグレーティングと、
前記入射側のグレーティングにおいて回折した光を、ガラス層と前記ガラス層の表面に形成さ
れた酸化シリコン層とから構成される導波層内を全反射させながら透過させる全反射層と、
前記全反射層を透過する光を回折させ、前記全反射層の外に出射させる出射側のグレーティン
グと、
前記出射側のグレーティングで回折した光を受光する受光素子と、
前記酸化シリコン層に接して、前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングの間に設けられた、酵素と発色試薬を含有するセンシング膜とを具備し、
前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングは、前記全反射層に接し、互いに離間して設けられていることを特徴とする光学式バイオセンサ。 - 発光素子と、
前記発光素子から出射した光を回折させる入射側のグレーティングと、
前記入射側のグレーティングにおいて回折した光を、ガラス層と前記ガラス層の表面に形成さ
れた酸化チタン層とから構成される導波層内を全反射させながら透過させる全反射層と、
前記全反射層を透過する光を回折させ、前記全反射層の外に出射させる出射側のグレーティン
グと、
前記出射側のグレーティングで回折した光を受光する受光素子と、
前記酸化チタン層に接して、前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングの間に設けられた、酵素と発色試薬を含有するセンシング膜とを具備し、
前記入射側のグレーティング及び前記出射側のグレーティングは、前記全反射層に接し、互いに離間して設けられていることを特徴とする光学式バイオセンサ。 - 前記入射側グレーティング及び前記出射側グレーティングは、前記全反射層よりも高屈折率の材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式バイオセンサ。
- 前記入射側グレーティング及び前記出射側グレーティングを覆う保護膜をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光学式バイオセンサ。
- 前記酵素は、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びムタローゼの内の少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式バイオセンサ。
- 前記発色試薬は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式バイオセンサ。
- 前記センシング膜が、セルロース誘導体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光学式バイオセンサ。
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