JP4076820B2 - ゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ディンプルの断面形状の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルの役割は、ゴルフボール飛行時にゴルフボール周りの空気の流れを乱すことによって境界層の乱流遷移を促進し、乱流剥離を起こさせることにある(以下、「ディンプル効果」と称される)。乱流遷移の促進により空気のゴルフボールからの剥離点が後方に下がり、抗力係数(Cd)が小さくなってゴルフボールの飛距離が増大する。しかも、乱流遷移の促進により、バックスピンに起因するゴルフボールの上側と下側とにおける剥離点の差が助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。飛行性能向上を意図したディンプル断面形状の改良が、種々提案されている。
【0003】
特開平5−237202号公報には、断面形状が互いに異なるディンプルのエッジ角度が同一とされたゴルフボールが開示されている。特開平9−285566号公報には、ディンプルのエッジにおけるディンプル表面に対する接線の傾斜角度が所定範囲とされたゴルフボールが開示されている。特開平11−89967号公報には、エッジ角度が30度以下であるディンプルを備えたゴルフボールが開示されている。特開2000−279553公報には、断面形状が特殊なディンプルを備えたゴルフボールが開示されている。これらの技術は、エッジよりも内側の部分の形状に関するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ゴルファーのゴルフボールに対する最大の関心事は、飛距離である。飛距離向上の観点から、ディンプルの断面形状には改良の余地がある。本発明の目的は、ゴルフボールの飛行性能を改善することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るゴルフボールは、表面に多数のディンプルを備えている。このディンプルは、エッジとこのエッジの外側に位置する郭外部とを含んでいる。この郭外部の幅Wの平均値は、0.03mm以上0.20mm以下である。このゴルフボールは、幅Wの大きな郭外部を備えている。この郭外部は、ゴルフボールの飛行性能向上に寄与する。郭外部が飛行性能向上に寄与する詳細な理由は不明であるが、ディンプルの内側に向けて流れる空気の剥離が郭外部によって抑制されるためと推測される。
【0006】
好ましくは、ディンプルの最大寸法dに対する郭外部の幅Wの比(W/d)の平均値は、0.015以上0.040以下である。好ましくは、郭外部と最大寸法線とのなす角度αの平均値は、1.0°以上15.0°以下である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。このゴルフボール1は、球状のコア2と、カバー3とを備えている。カバー3の表面には、多数のディンプル4が形成されている。このゴルフボール1は、カバー3の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの図示は省略されている。
【0009】
このゴルフボール1の直径は、通常は40mmから45mm、特には42mmから44mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされる範囲で空気抵抗が低減されるという観点から、直径は42.67mm以上42.80mm以下が好ましい。このゴルフボール1の質量は、通常は40g以上50g以下、特には44g以上47g以下である。米国ゴルフ協会の規格が満たされる範囲で慣性が高められるという観点から、質量は45.00g以上45.93g以下が好ましい。
【0010】
コア2は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0011】
コア2の架橋には、通常は共架橋剤が用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0012】
ゴム組成物には、充填剤、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。コア2に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0013】
コア2の直径は、通常は30.0mm以上42.0mm以下、特には38.0mm以上41.5mm以下である。コア2が、2以上の層から構成されてもよい。
【0014】
カバー3は、合成樹脂組成物から成形されている。カバー3の基材樹脂としては、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが例示される。
【0015】
カバー3には、必要に応じ、着色剤、充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー3にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0016】
カバー3の厚みは、通常は0.3mm以上6.0mm以下、特には0.6mm以上2.4mm以下である。カバー3が、2以上の層から構成されてもよい。
【0017】
図2は図1のゴルフボール1が示された拡大平面図であり、図3はその正面図である。図2及び図3から明らかなように、全てのディンプル4の平面形状は円形である。図2では、ゴルフボール1の表面が10個の等価なユニットに区画された場合の1個のユニットにおいて、符号AからDによってディンプル4の種類が示されている。このゴルフボール1は、直径が4.05mmであるAディンプルと、直径が3.60mmであるBディンプルと、直径が3.40mmであるCディンプルと、直径が3.2mmであるDディンプルとを備えている。Aディンプルの個数は132個であり、Bディンプルの個数は180個であり、Cディンプルの個数は60個であり、Dディンプルの個数は60個である。このゴルフボール1のディンプル総数は、432個である。
【0018】
図4は、図1のゴルフボール1の一部が示された模式的拡大断面図である。この図には、ディンプル4の最深箇所及び仮想球中心を通過する断面が示されている。ゴルフボール1の表面は、ディンプル4とランド部5とから構成される。ランド部5は、ディンプル4以外の部分である。図4において二点鎖線で示されているのは、仮想球である。仮想球は、ディンプル4が存在しないと仮定されたときの球である。ディンプル4は、仮想球から凹陥している。ランド部5は、仮想球と一致している。図4において符号Sで示されているのは、ディンプル4とランド部5との境界である。換言すれば、境界Sよりも内側においてゴルフボール1の表面は仮想球と離れており、境界Sよりも外側においてゴルフボール1の表面は仮想球と一致している。
【0019】
図4において両矢印dで示されているのは、ディンプル4の直径である。この直径dは、ディンプル4の両側に共通の接線Tが画かれたときの、一方の接点Eと他方の接点Eとの距離である。接点Eは、ディンプル4のエッジでもある。エッジEは、ディンプル4の平面形状を画定する。本明細書では、ディンプル4の平面形状内に画かれうる最長線分の長さが、最大寸法と称される。円形ディンプルでは、直径dが最大寸法である。本明細書では、接線Tは最大寸法線とも称される。
【0020】
図5は、図4のゴルフボール1の一部がさらに拡大された模式的断面図である。ゴルフボール1の表面のうち境界SとエッジEとに挟まれた領域は、郭外部6である。この郭外部6は、仮想球よりも低い。この郭外部6は、ディンプル4の一部である。図5において左から右に向かって流れる空気は、境界Sよりも左側の領域を通過し、次に郭外部6を通過し、エッジEの右側の領域へと流れ込む。エッジEの右側の領域は仮想球よりも低いので、この領域において空気はディンプル4の表面から剥離しやすい。エッジEよりも上流に仮想球よりも低い郭外部6が存在することで、空気が段階的に降下する。これによりエッジEの右側の領域における空気の剥離が抑制され、空気が円滑にディンプル4の内側に流入する。郭外部6は、ディンプル効果を高める。郭外部6により、ゴルフボール1の飛行性能が向上する。
【0021】
境界SとエッジEとの直線距離Wは、郭外部6の幅である。郭外部6の幅Wの平均値は、0.03mm以上0.20mm以下が好ましい。幅Wの平均値が上記範囲未満であると、空気の剥離が抑制されにくい。この観点から、幅Wの平均値は0.05mm以上がより好ましく、0.07mm以上が特に好ましい。幅Wの平均値が上記範囲を超えると、後述される表面積占有率が小さくなって、ゴルフボール1の飛行性能が不十分となることがある。この観点から、幅Wの平均値は0.18mm以下がより好ましく、0.15mm以下が特に好ましい。
【0022】
図1から図5に示されたゴルフボール1では、全てのディンプル4の郭外部6の幅Wは0.12mmである。従って、幅Wの平均値は0.12mmである。
【0023】
幅Wは、ランド部5と隣接している箇所において測定される。換言すれば、ランド部5を介することなくディンプル4が他のディンプル4と隣接している箇所では、幅Wの測定は行われない。1個のディンプル4においてランド部5と隣接している箇所は、通常は複数個存在する。これらの箇所のうち無作為に決定された1箇所において、そのディンプル4の幅Wが測定される。原則的には、全てのディンプル4についての幅Wの合計がディンプル総数で除されることで、平均値が算出される。ランド部5と隣接している箇所が存在しないディンプルでは、幅Wは測定され得ない。ランド部5と隣接している箇所が存在しないディンプル以外のディンプル4において幅Wが測定され、平均値が算出される。
【0024】
射出成形法によってカバー3が成形されたゴルフボール1では、保持ピン先端及びベントピン先端によって形成されたディンプルが存在する。ピンの先端で形成されたディンプルでは、幅Wの正確な測定は困難である。このようなゴルフボール1では、ピンの先端で形成されたディンプル以外のディンプル4において幅Wが測定され、平均値が算出される。
【0025】
ランド部5と隣接している箇所が存在しないディンプル、ピンの先端で形成されたディンプル等の、幅Wの平均値の算出において考慮されないディンプルの数は、ディンプル総数の10%以下、特には5%以下が好ましい。
【0026】
個々のディンプル4の幅Wは、0.02mm以上0.22mm以下が好ましい。幅Wが上記範囲未満であると、空気の剥離が抑制されにくい。この観点から、幅Wは0.04mm以上がより好ましく、0.06mm以上が特に好ましい。幅Wが上記範囲を超えると、後述される表面積占有率が小さくなって、ゴルフボール1の飛行性能が不十分となることがある。この観点から、幅Wは0.20mm以下がより好ましく、0.18mm以下が特に好ましい。幅Wが上記範囲に含まれるディンプル4の数がディンプル総数に占める比率は50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0027】
最大寸法dが大きなディンプル4において幅Wが比較的大きくされ、最大寸法dが小さなディンプル4において幅Wが比較的小さくされるのが好ましい。ディンプル4の最大寸法dに対する郭外部6の幅Wの比(W/d)の平均値は、0.015以上0.040以下が好ましい。(W/d)の平均値が上記範囲未満であると、空気の剥離が抑制されにくい。この観点から、(W/d)の平均値は0.018以上がより好ましく、0.020以上が特に好ましい。(W/d)の平均値が上記範囲を超えると、乱流遷移が阻害されることがある。この観点から、(W/d)の平均値は0.037以下がより好ましく、0.035以下が特に好ましい。原則的には、全てのディンプル4についての(W/d)の合計がディンプル総数で除されることで、平均値が算出される。幅Wの測定が不可能なディンプルは、(W/d)の平均値の算出において考慮されない。
【0028】
図1から図5に示されたゴルフボール1では、Aディンプルの(W/d)は0.0296であり、Bディンプルの(W/d)は0.0333であり、Cディンプルの(W/d)は0.0353であり、Dディンプルの(W/d)は0.0375である。このゴルフボール1の(W/d)の平均値は、0.033である。
【0029】
個々のディンプル4における比(W/d)は、0.010以上0.045以下が好ましい。(W/d)が上記範囲未満であると、空気の剥離が抑制されにくい。この観点から、(W/d)は0.013以上がより好ましく、0.015以上が特に好ましい。(W/d)が上記範囲を超えると、乱流遷移が阻害されることがある。この観点から、(W/d)の平均値は0.042以下がより好ましく、0.040以下が特に好ましい。(W/d)が上記範囲に含まれるディンプル4の数がディンプル総数に占める比率は50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0030】
郭外部6と最大寸法線Tとのなす角度αの平均値は、1.0°(degree)以上15.0°以下が好ましい。αの平均値が上記範囲未満であると、空気の剥離が抑制されにくい。この観点から、αの平均値は3.0°以上がより好ましく、5.0°以上が特に好ましい。αの平均値が上記範囲を超えると、エッジEが空気の流れを妨げてディンプル効果が低減されることがある。この観点から、αの平均値は12.0°以下がより好ましく、10.0°以下が特に好ましい。原則的には、全てのディンプル4についてのαの合計がディンプル総数で除されることで、平均値が算出される。幅Wの測定が不可能なディンプルは、αの平均値の算出において考慮されない。
【0031】
図1から図5に示されたゴルフボール1では、全てのディンプル4のαは7.0°である。従って、αの平均値は7.0°である。図5に示されるように、境界S及びエッジEを通過する直線と、このエッジEを通過する接線Tとのなす角度が、αである。
【0032】
個々のディンプル4におけるαは、0.5°以上17.5°以下が好ましい。αが上記範囲未満であると、空気の剥離が抑制されにくい。この観点から、αは2.5°以上がより好ましく、4.5°以上が特に好ましい。αが上記範囲を超えると、エッジEが空気の流れを妨げてディンプル効果が低減されることがある。この観点から、αは14.5°以下がより好ましく、12.5°以下が特に好ましい。αが上記範囲に含まれるディンプル4の数がディンプル総数に占める比率は50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0033】
図6は、図4のディンプル4が形成されるための切削工具7の一部が示された正面図である。この切削工具7は、張り出し部8を備えている。この切削工具7によって、マスター型に凹部が形成される。このマスター型により、成形型が形成される。この成形型には、マスター型の凹部の形状が反転した形状の凸部が形成される。この成形型により、ゴルフボール1が成形される。ゴルフボール1には、成形型の凸部の形状が反転した形状のディンプル4が形成される。このディンプル4は、郭外部6を備える。郭外部6は、張り出し部8の形状が反転された形状を備える。
【0034】
マスター型が製作されず、円柱状の金属塊が工具で直接切削されることで、成形型が製造される場合もある。この場合は、凸部のエッジ近傍が工具によって丸められる。この成形型によっても、郭外部6を備えたゴルフボール1が成形されうる。
【0035】
碗状のディンプルが形成され、このディンプルのエッジが研磨によって丸められることで、郭外部6が形成されてもよい。碗状のディンプルが形成され、このディンプルのエッジの近傍に厚みが不均一な塗料が塗られることで、郭外部6が形成されてもよい。
【0036】
図5において仮想球とディンプル4の表面とに囲まれた部分の容積は、ディンプル容積である。ディンプル4の総容積は、300mm以上700mm以下が好ましい。総容積が上記範囲未満であると、ホップする弾道となることがある。この観点から、総容積は350mm以上が特に好ましい。総容積が上記範囲を超えると、ドロップする弾道となるおそれがある。この観点から、総容積は600mm以下が特に好ましい。
【0037】
図1から図5に示されたゴルフボール1では、Aディンプルの容積は1.555mmであり、Bディンプルの容積は1.087mmであり、Cディンプルの容積)は0.938mmであり、Dディンプルの容積は0.772mmである。このゴルフボール1の総容積は、503.5mmである。
【0038】
ディンプル4の総面積が仮想球の表面積に占める比率は、表面積占有率と称される。表面積占有率は、70%以上90%以下が好ましい。表面積占有率が上記範囲未満であると、飛行中のゴルフボール1の揚力が不足するおそれがある。この観点から、表面積占有率は72%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。表面積占有率が上記範囲を超えると、ホップする弾道となることがある。この観点から、表面積占有率は88%以下がより好ましく、86%以下が特に好ましい。
【0039】
ディンプル4の面積は、無限遠からゴルフボール1の中心を見た場合の、エッジラインに囲まれた領域の面積(すなわち平面形状の面積)である。平面形状が円形であるディンプル4の場合は、下記数式によって面積sが算出される。
s=(d/2)×π
図1から図5に示されたゴルフボール1では、Aディンプルの面積は12.9mmであり、Bディンプルの面積は10.2mmであり、Cディンプルの面積は9.1mmであり、Dディンプルの面積は8.0mmである。このゴルフボール1の総面積は、4564.8mmである。この総面積が仮想球の表面積で除されることにより、表面積占有率が算出される。このゴルフボール1では、表面積占有率は79.6%である。
【0040】
ディンプル4の最大寸法dの平均値は、3.0mm以上5.0mm以下が好ましい。最大寸法dの平均値が上記範囲未満であると、ディンプル効果が不十分となることがある。この観点から、最大寸法dの平均値は3.2mm以上がより好ましく、3.4mm以上が特に好ましい。最大寸法dの平均値が上記範囲を超えると、ゴルフボール1の表面がいびつになることがある。この観点から、最大寸法dの平均値は4.8mm以下がより好ましく、4.6mm以下が特に好ましい。
【0041】
個々のディンプル4の最大寸法dは、2.2mm以上6.0mm以下が好ましい。最大寸法dが上記範囲未満であると、ディンプル効果が不十分となることがある。この観点から、最大寸法dは2.5mm以上がより好ましく、2.7mm以上が特に好ましい。最大寸法dが上記範囲を超えると、ゴルフボール1の表面がいびつになることがある。この観点から、最大寸法dは5.8mm以下がより好ましく、5.6mm以下が特に好ましい。最大寸法dが上記範囲に含まれるディンプル4の数がディンプル総数に占める比率は50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0042】
個々のディンプル4の深さは、0.1mm以上0.6mm以下が好ましい。深さが上記範囲未満であると、ホップする弾道となることがある。この観点から、深さは0.12mm以上がより好ましく、0.14mm以上が特に好ましい。深さが上記範囲を超えると、ドロップする弾道となることがある。この観点から、深さは0.55mm以下がより好ましく、0.50mm以下が特に好ましい。深さが上記範囲に含まれるディンプル4の数がディンプル総数に占める比率は50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。深さは、仮想球の表面からディンプル4の最深部までの距離である。
【0043】
ディンプル4の総数は、200個以上500個以下が好ましい。総数が上記範囲未満であると、ディンプル効果が得られにくい。この観点から、総数は230個以上がより好ましく、260個以上が特に好ましい。総数が上記範囲を超えると、ディンプル効果が得られにくい。この観点から、総数は470個以下がより好ましく、440個以下が特に好ましい。
【0044】
形成されるディンプル4は単一種類でもよく、複数種類であってもよい。円形ディンプル4に代えて、又は円形ディンプル4とともに、非円形ディンプル(平面形状が円でないディンプル4)が形成されてもよい。非円形ディンプルの場合、最深箇所及び仮想球中心を通過し、かつ寸法が最大となる断面が選択され、この断面において幅W、角度α及び最大寸法dが測定される。
【0045】
図1に示されたゴルフボール1は、ツーピース構造であるが、マルチピースゴルフボール、糸巻きゴルフボール又はワンピースゴルフボールにおいても、郭外部6を備えたディンプル4が形成されるのが好ましい。
【0046】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0047】
[実施例1]
ソリッドゴムからなり直径が38.4mmであるコアを金型に投入し、コアの周りにアイオノマー樹脂組成物を射出してカバー層を形成した。このカバー層の表面に塗装を施して、平面図が図2であり正面図が図3であるディンプルパターンを備えた実施例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールの外径は約42.70mmであり、質量は45.4gである。アッティエンジニアリング社のATTIコンプレッションテスターによって測定されたゴルフボールのコンプレッションは、約85である。このゴルフボールは、直径が4.05mmであり深さが0.2667mmであり容積が1.555mmである132A個のディンプルと、直径が3.60mmであり深さが0.2337mmであり容積が1.087mmである180個のBディンプルと、直径が3.40mmであり深さが0.2348mmであり容積が0.938mmである60個のCディンプルと、直径が3.20mmであり深さが0.2220mmであり容積が0.772mmである60個のDディンプルとを備えている。このゴルフボールのディンプル総容積は503.5mmであり、表面積占有率は79.6%である。郭外部の幅W、比(W/d)及び角度αが、下記の表1に示されている。
【0048】
[実施例2から5及び比較例1から3]
郭外部の幅W、比(W/d)及び角度αを下記の表1及び表2に示されるように設定した他は実施例1と同様にして、実施例2から5及び比較例1から3のゴルフボールを得た。
【0049】
[飛距離テスト]
スイングマシン(ツルテンパー社製)に、メタルヘッドを備えたドライバー(住友ゴム工業社の「XXIO W#1」、ロフト:8°、シャフト硬度:X)を装着した。そして、ヘッド速度が49m/secであり、打ち出し角度が約11°であり、バックスピンの速度が約3000rpmである条件で、ゴルフボールを打撃した。そして、キャリー(発射地点から落下地点までの距離)、ラン(落下地点から静止地点までの距離)及びトータル距離(発射地点から静止地点までの距離)を測定した。測定時は、ほぼ無風であった。20個の測定結果の平均値が、下記の表1及び表2に示されている。
【0050】
【表1】
Figure 0004076820
【0051】
【表2】
Figure 0004076820
【0052】
表1及び表2に示されるように、実施例のゴルフボールは比較例のゴルフボールよりも飛距離が大きい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【0053】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明のゴルフボールは飛行性能に優れる。このゴルフボールは、これを打撃するゴルファーに爽快感を与え、かつスコアの向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールが示された拡大平面図である。
【図3】図3は、図1のゴルフボールが示された拡大正面図である。
【図4】図4は、図1のゴルフボールの一部が示された模式的拡大断面図である。
【図5】図5は、図4のゴルフボールの一部がさらに拡大された模式的断面図である。
【図6】図6は、図4のディンプルが形成されるための切削工具の一部が示された正面図である。
【符号の説明】
1・・・ゴルフボール
2・・・コア
3・・・カバー
4・・・ディンプル
5・・・ランド部
6・・・郭外部
7・・・切削工具
8・・・張り出し部
A・・・Aディンプル
B・・・Bディンプル
C・・・Cディンプル
D・・・Dディンプル

Claims (3)

  1. 表面に多数のディンプルを備えており、
    このディンプルが、
    (1)ディンプルの最深部及びゴルフボール仮想球中心を通過する断面図において、ディンプルの両側に共通の接線が画かれたときに、接点となるエッジ
    並びに
    (2)このエッジと、ディンプル及びランド部の境界との間に位置する郭外部
    を含んでおり、
    この郭外部の幅Wの平均値が0.05mm以上0.20mm以下であるゴルフボール。
  2. 上記ディンプルの最大寸法dに対する郭外部の幅Wの比(W/d)の平均値が0.015以上0.040以下である請求項1に記載のゴルフボール。
  3. 上記郭外部と最大寸法線とのなす角度αの平均値が1.0°以上15.0°以下である請求項1又は請求項2に記載のゴルフボール。
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