JP4076317B2 - クリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、クリンプされたアクリル酸化繊維およびその製造方法に関する。更に詳しくはクリンプの固定性に優れクリンプされたアクリル酸化繊維であり、またそれをカットした場合に繊維長の長い紡績原綿として紡績性の良好な、堅牢性の高い繊維を提供することができるクリンプされたアクリル酸化繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸化繊維は、炭素繊維の前駆体として用いられるほか、クリンプ付与後カットしステープルファイバーとして、紡績糸やフェルト、不織布等の材料として普及しつつある。特に、アクリル酸化繊維は耐熱性や耐炎性に優れることから、スパッタシート等の耐熱・断熱材料、また、ブレーキ等の摩擦材用途に適している。
【0003】
また、紡績糸として用いるためにアクリル系繊維をクリンプ付与することは知られている。アクリル繊維のクリンプ付与については、1.特開昭57−95308号公報に、多孔性のアクリル繊維を捲縮付与し、熱処理、油剤付与後乾燥すること記載されている。また、アクリル酸化繊維のクリンプ付与については、2.特開平4−100931号公報に、水分付与後、スタッフィングボックスに押し込み、少なくとも95℃の温度で熱処理することが記載されている。
【0004】
最近では、紡績用にクリンプ付与されたアクリル繊維について、織物・スパッタシート等の加工品の強度アップのため、65mm以上の長繊維綿にての繊維加工を要求されるようになってきた。しかし、上記特開昭57−95308号に記載の方法をアクリル酸化繊維に用いた場合、静電気の発生を十分抑えられず、特にカット長65mmを超える綿についてはカードへの巻き付きが発生するという問題が生じ、安定したスライバーやウェブが得られない。このため、強度等が低く、紡績性や加工性が悪いといった問題が生じる。また、特開平4−100931号は、アクリル酸化繊維のクリンプ付与方法において、スタッフィングボックス中のみで熱処理を行うため、クリンプが十分固定される前に、次工程に移動することになり、高いクリンプの状態からクリンプが一部伸びた状態になる。その結果、クリンプ不十分となり、カード工程で巻き付きトラブル等の問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、カード工程においても静電気の発生が少なく、巻き付きトラブルがない繊維加工性の良いクリンプされたアクリル酸化繊維及びその方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するための主な本発明の構成は以下の通りである。
(請求項1) アクリル酸化繊維を予熱し、クリンプ工程−熱処理工程−乾燥工程を経て製造されるクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法であって、熱処理工程が、クリンプ工程後クリンプを付与された状態のまま25〜35℃の大気中にさらした後、クリンプ率10〜20%の形態のまま101〜140℃の水蒸気雰囲気で3分間以上熱処理することを特徴とするクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
(請求項2) 予熱前のアクリル酸化繊維の比重が1.31以上、1.45未満である特徴とする請求項1記載のクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。本発明のアクリル酸化繊維とは、アクリロニトリル系繊維を空気中200〜300℃で酸化処理した繊維である。アクリロニトリル系繊維は、少なくとも90重量%以上のアクリロニトリルを含む重合体または共重合体よりなる繊維であり、コモノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する化合物またはその塩類、及びアクリル酸メチルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸メチルのようなメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、メタクリロニトリル等の中性基を有する共重合成分を含むものである。共重合成分が10重量%を超えると、耐熱性等が低下し酸化処理時に膠着が生じ、脆弱な繊維の原因となる。
【0008】
アクリロニトリル系繊維の紡糸溶剤は多くの有機溶剤や無機塩系溶剤が使用されるが、特に塩化亜鉛系水溶液中での均一系溶液重合によって重合体溶液を直接得る方法は分子量分布を狭くできるので好ましい。ここで、塩化亜鉛系水溶液とは、アクリロニトリル系繊維製造用溶剤として周知の溶液で、塩化亜鉛単独またはこれとナトリウム、カリウム、マグネシウム等の塩化物との混合溶液である。
【0009】
アクリロニトリル系繊維は空気中200〜300℃の範囲で、繊維の蓄熱切断温度より低い温度で段階的に昇温するのが好ましい。また、酸化処理初期では比重が1.2程度であるが、酸化処理工程では比重が1.31〜1.45に上昇するまでに20%以下の収縮を与えることが好ましい。この収縮が繊維の毛羽立ちや糸切れを防止する上で重要である。また、比重は、アクリル酸化繊維の耐熱性を利用した用途、例えば、断熱材、溶接時に発生するノロ除けに加工する場合は1.37以上がさらに好ましい。比重が、1.31未満であると酸化処理不十分となり耐熱性、耐炎性が低く好ましくない。比重が1.45超であと結節強度や伸度が低下し繊維加工性が劣るという問題が生じる。
【0010】
クリンプ付与工程に供するアクリル酸化繊維トウは繊度0.6〜6dtex(0.5〜5デニール)が好ましく、1.7〜2.8dtex(1.5〜2.5デニール)が繊維の加工性および生産性の点から更に好ましい。トウは、1,000〜60,000モノフィラメントとの集合体で、この1,000〜60,000フィラメントで構成されるトウを、更に複数本併せて、数十万〜数百万フィラメントで構成される場合もある。
【0011】
アクリル酸化繊維に付着させる処理剤は、通常の繊維油剤と同じく、性質として、平滑性、帯電防止性、集束性を要求され、さらに工程別には紡績工程、加工工程、撚糸編立工程、製織工程などに類別される工程の要求特性がある。特にアクリル酸化繊維は、炭素繊維までの中間段階と類似した構造をとることから、このアクリル酸化繊維の加工物を不活性ガス雰囲気下で焼成し、炭素繊維成形物として利用されることも多い。炭素繊維は、その強度、軽量性、耐熱性、高温安定性、耐薬品性から航空宇宙分野にも広く使用されている。この航空宇宙分野に使用されるアクリル酸化繊維に付着させる油剤は、その後の加工で物性への影響を無くす必要があり、このため、金属成分の無いもので、分解してガス化しても成型物および環境に影響を与えないものがより好ましい。
【0012】
本発明では、成分として金属を含まず帯電防止剤を含まないポリアルキルエーテル系油剤やポリアルキルエステル系油剤だけでも、静電気の発生を低減し、良好な工程安定性を得られるアクリル酸化繊維を提供する。さらに、本発明により、アクリル酸化繊維に衣料用オイルを使用する場合でも、使用オイル量を減じることができるため、オイル分解による物性への影響、環境への影響を小さくできる。
【0013】
得られたアクリル酸化繊維トウを、90℃で蒸気加熱にて予熱してから、スタッフィングボックス内にて110〜130℃、1〜30秒でクリンプを付与する。ついで、クリンプを付与された形態のまま、スタッフィングボックスから移動させ25〜35℃の大気中にさらす。この時のクリンプ率は10〜20%である。
【0014】
ついで、その形態のまま、101〜140℃の水蒸気で3分以上の熱処理を行い、60〜90℃の乾燥機にて、水分率8〜15重量%まで乾燥をする。クリンプを付与された形態のまま25〜35℃の大気中にさらすことにより、繊維がクリンプされた状態で一旦固定され、熱処理装置へトウを移動する際の形態保持性を高める。その後、101〜140℃の水蒸気熱処理を施すことにより、クリンプが伸びることなく一気に熱固定されるため、クリンプが強固に付与されるためクリンプ固定が良好で高堅牢性の繊維を提供できる。
【0015】
こうして得られた本発明のクリンプされたアクリル酸化繊維には、亜鉛の金属成分が10〜400ppm残存することが好ましい。400ppm超の場合、原料のアクリル系繊維を焼成(酸化)する工程において燃焼切れ等のトラブルが発生し、得られるアクリル酸化繊維は毛羽が多く強度が低くなる。また、10ppm未満の場合は、生産工程が複雑になる一方で得られる繊維性能はがあまりよくならず、工業的ではない。
【0016】
本発明のクリンプされたアクリル酸化繊維の熱水復元後クリンプ率は、6〜20%、熱水復元前後でのクリンプ率の変化率は、0〜50%であった。この熱水復元前後のクリンプ率の変化率が50%を超えると、即ち、クリンプの固定が不十分であることを表し、カードへの巻き付きや、ウェブの渡りが悪い等のトラブルを引き起こす。
【0017】
本発明のクリンプされたアクリル酸化繊維の結節強度は、0.2cN/dtex以上で、伸度は1.0%以上であり、強度・堅牢性等の高い紡績に適した繊維である。本発明でいうクリンプ数とは、クリンプトウ25mmにおける山の数である。本発明でいうクリンプ率とは、下式(1)で求めた値である。
クリンプ率(%)=(b−a)/a×100 (式1)
a:初期荷重下の長さ(mm)
b:1デニール(0.11tex)あたり50mgf(490m N)の荷重をかけたときの長さ(mm)
【0018】
本発明でいう熱水復元後クリンプ率とは、クリンプの固定状態を数値化する指標で、クリンプトウ15cmを熱水に30分間さらし、次いで流水で30分間冷却する。この後、30分間20℃で乾燥し、トウ1デニールあたり50mgfの荷重をかけたときの長さを測定し、式(1)で求めたクリンプ率である。また、熱水復元後クリンプ率の変化率とは、熱水処理前後のクリンプ率の変化率を下式(2)で求めた値である。なお、熱処理前クリンプ率と熱水復元前クリンプ率は、同じ数値になる。
熱水復元後クリンプ率の変化率(%)
={1−(熱水復元前クリンプ率−熱水復元後クリンプ率)/熱水復元前クリンプ率}×100 (式2)
【0019】
得られたクリンプされたアクリル酸化繊維トウを38mm〜102mm間で定長カットしたものや、ターボステープラー等を使用し30〜150mm間で綿長に傾斜を持たせたものは、紡績原綿や不織布等の原料として有用である。特に綿長65mm以上については静電気防止の点で特に効果が顕著である。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明する。なお、物性測定は下記の方法によるものである。
静電気: 静電気測定器(富士丸化学工業製FR−211C)
巻き付き: 試験用カードで、シリンダーおよびドッファーへの巻き付き状態を目視にて測定し、◎、○、△、×の4段階で評価する。
巻き付き無し=◎、巻き付き少ない=○、巻き付き多発=△〜×
ウエブの渡り:カード工程にて開繊された繊維は、ドッフィングシリンダーから紡出される。この時、静電気や巻き付き以外の要因で、ウェブが次工程に受け渡されず、切れてしまう場合やネップ、厚み斑などの欠点が多数発生する場合がある。このような現象が見られたときは×で評価する。これ以外、ウェブが切れなく、ネップなどの欠点も無い=◎、欠点はあるが、切れることなくウェブの受け渡しができる=○、ウェブに厚み斑があり、安定しない=△、ウェブの切れ受け渡しができない=×として判定する。
【0021】
(実施例1)
1.49dtex(1.35デニール)の360,000フィラメントのアクリル繊維トウを空気中230℃次いで、240℃次いで、250℃と1時間処理することにより、比重1.38、繊度1.65dtex(1.5デニール)のアクリル酸化繊維トウを得た。このトウにラウリン酸ポリエトキシエステル油剤(ICI社製)を0.5重量%付着させアクリル酸化繊維トウを得た。この1.65dtexのアクリル酸化繊維をトウの厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、クリンプトウを得た。
このクリンプトウは、クリンパー直後では、90℃の温度で、スタッフィングボックスで折り畳まれた形状を保っており、この形状のまま30℃の風により折り畳まれたトウの表面を冷却した。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は13個/吋、クリンプ率は14%であった。この時の熱水復元後のクリンプ率は4%であった。
この折りたたまれたトウをバットに取り、120℃で10分間蒸気中で熱処理した。処理後のトウの熱水復元後のクリンプ率は13%であった。熱処理したトウの結節強度は0.79cN/dtex、結節伸度は5.8%であった。ついで、この熱処理したトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.01kV、シリンダーへの巻き付きはなく、良好なウェブを作製できた。表1にアクリル酸化繊維トウの性能、カードテストの結果等を示す。
【0022】
(実施例2)
実施例1で得られたスタッフィング後の折りたたまれたアクリル酸化繊維トウをバットにとり110℃で5分間蒸気中で熱処理した。処理後のトウの熱水復元後のクリンプ率は12%であった。熱処理したトウの結節強度は0.53cN/dtex、結節伸度は3.6%であった。ついで、この熱処理したトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.01kV、シリンダーへの巻き付きはなく、良好なウェブを作製できた。
【0023】
(実施例3)
実施例1で得られたスタッフィング後の折りたたまれたアクリル酸化繊維トウをバットにとり105℃で3分間蒸気中で熱処理した。処理後のトウの熱水復元後のクリンプ率は10%であった。熱処理したトウの結節強度は0.50cN/dtex、結節伸度は3.1%であった。ついで、この熱処理したトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.05kV、シリンダーへの巻き付きは微量で、良好なウェブを作製できた。
【0024】
(比較例1)
実施例1で得られたスタッフィング後の折りたたまれたアクリル酸化繊維トウを引き出し折りたたまれた状態を崩したのち、このトウをバットにとり120℃で10分間蒸気中で熱処理した。処理後のトウの熱水復元後のクリンプ率は9%であった。熱処理したトウの結節強度は0.71cN/dtex、結節伸度は3.6%であった。ついで、この熱処理したトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.01kV、シリンダーへの巻き付きは微量で、ウェブのたれ込みはあったものの良好なウェブを作製できた。
【0025】
(実施例4)
1.65dtex(1.5デニール)の312,000フィラメントのアクリル繊維トウを空気中230℃次いで、240℃次いで、250℃と1時間処理することにより、比重1.41、繊度2.2dtex(2.0デニール)のアクリル酸化繊維トウを得た。このトウにラウリン酸ポリエトキシエステル油剤(ICI社製)を0.5重量%付着させアクリル酸化繊維トウを得た。この2.2dtexのアクリル酸化繊維をトウの厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、クリンプトウを得た。このクリンプトウは、クリンパー直後では、90℃の温度で、スタッフィングボックスで折り畳まれた形状を保っており、この形状のまま30℃の風により折り畳まれたトウの表面を冷却した。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は8個/吋、クリンプ率は8%であった。この時の熱水復元後のクリンプ率は3%であった。この折りたたまれたトウをバットに取り、120℃で10分間蒸気中で熱処理した。処理後のトウの熱水復元後のクリンプ率は13%であった。熱処理したトウの結節強度は0.26cN/dtex、結節伸度は1.0%であった。ついで、この熱処理したトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.03kV、シリンダーへの巻き付きは微量で、良好なウェブを作製できた。
【0026】
【表1】
クリンプトウ形態
形態1:クリンパーから出たままの折りたたまれた形態
形態2: 折りたたまれた形態から引き出して、乾燥後振り落とした形態
【0027】
(比較例2)
1.49dtex(1.35デニール)の360,000フィラメントのアクリル繊維トウを空気中230℃次いで、240℃次いで、250℃と1時間処理することにより、比重1.38、繊度1.65dtex(1.5デニール)のアクリル酸化繊維トウを得た。このトウにラウリン酸ポリエトキシエステル油剤(ICI社製)を0.5重量%付着させアクリル酸化繊維トウを得た。この1.65dtexのアクリル酸化繊維をトウの厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、クリンプトウを得た。このクリンプトウは、クリンパー直後では、90℃の温度でスタッフィングボックスで折り畳まれた形状を保っており、この形状のまま30℃の風により折り畳まれたトウの表面を冷却した。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は13個/吋、クリンプ率は14%であった。このトウの熱水復元後のクリンプ率は4%であった。このトウを102mmにカットし、アクリル酸化繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−1.5kVとなり、静電気によりシリンダーへの巻き付きが発生した。ウェブは、ネップを含み欠点が多く途中で切れるトラブルも発生した。表2にアクリル酸化繊維トウの性能、カードテストの結果等を示す。
【0028】
【表2】
クリンプトウ形態
形態1:クリンパーから出たままの折りたたまれた形態
形態2: 折りたたまれた形態から引き出して、乾燥後振り落とした形態
【0029】
(比較例3)
比較例2の方法で作製したクリンプ前のアクリル酸化繊維トウを厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、クリンプトウを得た。このクリンプトウは、クリンパー直後では、90℃の温度でスタッフィングボックスで折り畳まれた形状を保っており、このスタッフィングボックスから出たトウを冷却することなく80℃で延展乾燥しクリンプトウを採取した。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は11個/吋、クリンプ率は12であった。このトウを120℃で10分間蒸気中で熱処理した。このトウの熱水復元後のクリンプ率は5%であった。このトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.02kVとなり、静電気によるシリンダーへの巻き付きは発生しなかったものの、ウェブの切断トラブルが発生した。
【0030】
(比較例4)
1.49dtex(1.35デニール)の360,000フィラメントのアクリル繊維トウを空気中230℃次いで、240℃次いで、250℃と1時間処理することにより、比重1.38、繊度1.65dtex(1.5デニール)のアクリル酸化繊維トウを得た。このトウにラウリン酸ポリエトキシエステル油剤(ICI社製)を0.5重量%付着させアクリル酸化繊維トウを得た。この1.65dtexのアクリル酸化繊維をトウの厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、クリンプトウを得た。 このクリンプトウは、クリンパー直後では、90℃の温度でスタッフィングボックスで折り畳まれた形状を保っており、この形状のまま30℃の風により折り畳まれたトウの表面を冷却した。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は13個/吋、クリンプ率は14%であった。この時の熱水復元後のクリンプ率は4%であった。この折りたたまれたトウをバットに取り、110℃で2分間蒸気中で熱処理した。処理後のトウの熱水復元後のクリンプ率は5%であった。熱処理したトウの結節強度は0.53cN/dtex、結節伸度は2.6%であった。ついで、この熱処理したトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.10kV、シリンダーへの巻き付きが見られた、ウェブの状態も安定しなかった。
【0031】
(比較例5)
比較例2の方法で作製したクリンプ前のアクリル酸化繊維トウを厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、クリンプトウを得た。このクリンプトウは、クリンパー直後では、90℃の温度でスタッフィングボックスで折り畳まれた形状を保っており、この形状のまま30℃の風により折り畳まれたトウの表面を冷却した。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は13個/吋、クリンプ率は14%であった。このトウの熱水復元後のクリンプ率は4%であった。ついで、このトウを51mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.01kV、シリンダーへの巻き付きはなく、長繊維で発生する問題は確認できなかった。
【0032】
(比較例6)
実施例4の方法で作製したクリンプ前のアクリル酸化繊維トウを厚みおよび幅が均一になるよう整トウし、クリンパーに誘導する。ニップ圧を290kPa、スタッフィング圧を160kPaに調整し、スチームを70kPaかけることにより、2.2dtexのクリンプトウを得た。このトウのクリンプ数およびクリンプ率を測定したところ、クリンプ数は8個/吋、クリンプ率は8%であった。この時の熱水復元後のクリンプ率は3%であった。このトウを102mmにカットし、耐炎繊維綿を作製した。この綿を開繊し、大和機工(株)製サンプルカードSC200にて、カードテストを行ったところ、静電気発生量は−0.20kV、シリンダーへの巻き付きが見られ、安定したウェブを作製できなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によるクリンプされたアクリル酸化繊維トウは、熱処理前に冷却工程を設けたことからクリンプの固定度が高く、得られたクリンプされたアクリル酸化繊維トウは、特に長繊維綿にて加工する際に、カード工程における静電気発生の抑制、巻き付きトラブル等がないという繊維加工性に優れたものであった。また、強度等も高く紡績性にも優れたトウを提供できた。
Claims (5)
- アクリル酸化繊維を予熱し、クリンプ工程−熱処理工程−乾燥工程を経て製造されるクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法であって、熱処理工程が、クリンプ工程後クリンプを付与された状態のまま25〜35℃の大気中にさらした後、クリンプ率10〜20%の形態のまま101〜140℃の水蒸気雰囲気で3分間以上熱処理することを特徴とするクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
- 予熱前のアクリル酸化繊維の比重が1.31以上、1.45未満である特徴とする請求項1記載のクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
- 乾燥工程が60〜90℃の乾燥機にて水分率8〜15%まで乾燥させるものである請求項1または2記載のクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
- 亜鉛の金属成分が10〜400ppm残存している請求項1〜3のいずれか1項記載のクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
- クリンプされたアクリル酸化繊維の、熱水復元後クリンプ率が6%以上でかつ、熱水復元前後のクリンプ率の変化率が50%以下である請求項1〜4のいずれか1項記載のクリンプされたアクリル酸化繊維の製造方法。
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