JP4076191B2 - 移動式クレーンのブーム伸縮機構 - Google Patents

移動式クレーンのブーム伸縮機構 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動式クレーンのブーム伸縮機構に関し、さらに詳しくは、単一の油圧シリンダを用いて複数段のブームを伸縮させる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、トラッククレーンなどに用いられるブームの伸縮機構には、伸縮対象となるブーム同士に油圧シリンダをそれぞれ設け、各油圧シリンダの伸縮動作に応じて各段のブームを伸縮させる機構がある。
しかし、この機構では、油圧シリンダが複数必要となることから、各ブームに油圧シリンダを収容するためのスペースが必要となる。この結果、ブームが大型化し、ブームの重量増加によるブーム伸長時での曲げモーメントの増加や油圧シリンダに対する油圧供給系統の大型化を招く不具合がある。
そこで、単一の油圧シリンダを用いて複数段のブームを伸縮させる構成を備えた伸縮機構が提案されている(例えば、特開平7−267584号公報)。
上記公報には次のような開示がある。
複数段のブームを内部に収納し、ピストンロッドが基部側のブームに固定されている油圧シリンダを備えている。
上記油圧シリンダへの給油により伸縮動作する油圧シリンダのシリンダチューブ側には、径方向に進退可能な伸縮動作用ロックピンが設けられている。
各ブームにおける伸長方向後部には上記伸縮動作用ロックピンと対向することができるブッシュとこのブッシュと直角な方向に位置する保持用ロックボルトとが設けられている。
上記ブッシュは、伸縮移動用ロックボルトを嵌合させることができる部材であり、上記ブームの伸縮時に伸縮移動用ロックボルトが嵌合すると嵌合した上記ブームがピストンロッドの伸縮動作に連動する。さらに上記保持用ロックボルトは、バネによって外側に向け突出する習性を付与され、上記ブームの内側に突出する円形盤を備えている。
上記保持用ロックボルトは外側に位置するブームのロック孔に係合すると、伸長あるいは収縮した位置で保持される。また保持用ロックボルトは、上記ピストンロッドに備えられているピストンシリンダユニットに係合することができ、係合したときにはピストンシリンダユニットが収縮する動作に連動して外側のブームのロック孔から外されてブームを伸縮移動させることができる。
【0003】
上記公報に開示されている伸縮機構によってブームを伸長する場合には、トップブームに相当する先端側のブームに設けられているブッシュに対してシリンダ側の伸縮動作用ロックボルトが嵌合させられ、さらに、ピストンシリンダユニットが保持用ロックボルトに係合する。保持用ロックボルトは、ピストンシリンダユニットの収縮動作に連動して外側のブームのロック孔から外れる。この結果、油圧シリンダのシリンダチューブが伸長すると、トップブームは伸縮用ロックボルトを介して伸長される。伸長したブームは、ピストンシリンダユニットと保持用ロックボルトとの係合が解除され、保持用ロックボルトが外側のブームに設けられているロック孔に係合して伸長した位置に保持される。
以下、各段のブームに対して同じ動作を繰り返して各ブームを伸長させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報の伸縮機構には、次のような問題がある。
上記公報に記載の伸縮機構では、各ブームの一つを選択して伸縮させる場合、選択されたブームの位置に応じて油圧シリンダの伸縮ストロークを変化させている。つまり、油圧シリンダは、シリンダ側において径方向に進退可能な伸縮動作用ロックピンが設けられ、その伸縮動作用ロックピンを選択されたブームに有するブッシュの位置まで移動させるようになっている。このため、常時、同じストロークで油圧シリンダを伸縮させることができず、油圧シリンダの全ストロークのうちで、一部のみしか使用できない。これにより、油圧シリンダは、選択されたブームのブッシュの位置までの伸縮量を変更するためにオイルの給排制御を切り換えることが必要となり、油圧シリンダのオイル供給制御が複雑化してしまう。特に、伸縮段数が多くなれば、それに従って伸縮量の切り換え回数が増加するので、油圧シリンダの伸縮動作が煩雑になる。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の移動式クレーンのブーム伸縮機構における問題に鑑み、ブームの伸縮駆動源である油圧シリンダの伸長ストロークを常に一定にして伸縮動作を常に同じ動作の繰り返しという単純な動作ですませることができる構成を備えた移動式クレーンのブーム伸縮機構を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための、請求項1記載の発明は、ベースブーム内にて複数の中間ブームを伸縮自在に挿嵌し、さらにこの中間ブーム内にトップブームを伸縮自在に挿嵌してなる多段伸縮ブームを備えた移動式クレーンのブーム伸縮機構において、上記ベースブームにピストンロッドの端部が軸支され、上記ピストンロッドの端部近傍まで延長されているシリンダチューブを備えている伸縮可能な単一の1段復動油圧シリンダと、上記シリンダチューブのロッド側端部に配置され、上記シリンダチューブの伸縮方向に移動可能な連結装置と、上記連結装置に設けられ、上記各段の中間ブーム基端部とを選択的に連結し、連結時には上記シリンダチューブの伸縮動作に連動して選択された中間ブームを伸縮させるシリンダブーム連結手段と、上記各ブームのうちで隣り合うブーム同士を固定するブーム間固定手段であって、隣接する各ブームのうちで上記ベースブーム寄りのブーム基端側で上記ブームの軸線と直角な方向に沿って外側に突出する習性を付与されているピンと、隣接する各ブームの適所に位置して上記ピンを受容する係合部とからなり、ブームの全縮時および適宜伸長した位置でブーム同士を固定するブーム間固定手段と、上記連結装置に設けられ、上記ブーム間固定手段に有するピンと係脱可能であって、上記ピンと係合してそのピンを上記係合部から離脱させることでそのピンおよびこれが係合していたブーム同士の固定を解除するブーム間固定解除手段と、上記シリンダチューブの外周面で上記ブームの伸縮方向に配置され、上記シリンダブーム連結手段と上記ブーム間固定解除手段が設けられた上記連結装置の位置決め用係合部が上記各ブームの基端部側に対応して複数箇所に形成されているガイド部材と、上記ガイド部材に有する上記位置決め用係合部に対向して上記連結装置に設けられていて、上記位置決め用係合部に対して挿脱可能な位置決めピンを有する位置決め手段とを備え、上記連結装置は、選択されたブームの基端部に対応する位置決め用係合部に一致する位置に向け移動し、上記シリンダブーム連結手段の連結操作および上記ブーム間固定手段の固定解除操作を可能にすることにより、選択されたブームを伸縮可能な状態に設定することを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の移動式クレーンのブーム伸縮機構において、上記連結装置に設けられているシリンダブーム連結手段と上記位置決め手段とは兼用された構成とされていることを特徴としている。
【0008】
【作用】
請求項1記載の発明では、シリンダチューブの外表面でブームの伸縮方向に移動可能な連結装置を設け、上記連結装置によりシリンダブーム連結手段、ブーム間固定解除手段を選択された中間ブームの必要箇所に向け移動させるようにしているので、1段復動油圧シリンダは、各ブームの基端部の位置に応じて伸縮量を変更しなくて済む。これにより、1段復動油圧シリンダとは、常時、一定した伸縮ストロークを有するものを用いることができ、しかも、選択されたブームの位置に拘わらず、全伸長および全収縮を繰り返すだけでブームの伸縮動作を行わせることができる。
【0009】
請求項2記載の発明では、連結装置に設けられているシリンダブーム連結手段と位置決め手段とを兼用することにより構成の簡略化ができる。
【0010】
【実施例】
以下、図示実施例により本発明の詳細を説明する。
図1および図2は、ベースブーム1およびトップブーム2を含めて6段の伸縮ブームを備えたブーム伸縮機構を説明するための平面視および側面視の部分的な断面図であり、同図においてベースブーム1の内部には、4段の中間ブーム3、4、5、6が伸縮自在に挿嵌され、それら中間ブームのうちで最先端側に位置する中間ブーム3内にはトップブーム2が伸縮自在に挿嵌されている。
ブームの内部には、伸縮自在のブームを移動させるための単一の1段復動油圧シリンダ7が配置されており、1段復動油圧シリンダ7は、図2に示すように、ピストンロッド7Aの端部がベースブーム1に軸支されている。
1段復動油圧シリンダ7は、図2に示すように、シリンダチューブ7Bがピストンロッド7Aの端部まで延長されて構成され、シリンダチューブ7B側がブームの伸縮方向に移動する。
【0011】
1段復動油圧シリンダ7のシリンダチューブ7Bには、全縮時のトップブーム2の基部近傍位置を始発位置とする連結装置8が挿嵌されて設けられている。
連結装置8は、シリンダチューブ7Bにおける上記位置に設けられているフランジ7B1によって始発位置に位置決めされ、その始発位置からベースブーム1の基部近傍位置を終点位置として1段復動油圧シリンダ7の伸縮方向に移動可能なリング状部材で構成されている。
【0012】
シリンダチューブ7Bにおいて上記始発位置に相当するトップブーム2の基部近傍の位置からベースブーム1に軸支されているピストンロッド7Aの端部近傍の範囲には、図1および図2において符号7Cで示すように、シリンダチューブ7Bの径方向に突出させて1段復動油圧シリンダ7の伸縮方向に沿って形成されたガイド部材7Cが設けられており、このガイド部材7Cを含めた状態で図3に示すように連結装置8が挿嵌されている。
図1および図2に示すように、ガイド部材7Cには、1段復動油圧シリンダ7の伸縮方向に沿って所定間隔で穿孔された複数の位置決め用係合部7C1が設けられている。位置決め用係合部7C1は、トップブーム2および中間ブーム3〜6の基部の位置に対応して設けられている。位置決め用係合部7C1は、連結装置8に有する位置決め手段が係合することにより、後述するシリンダブーム連結手段およびブーム間固定手段に対するブーム固定解除手段の位置決めが行えるようになっている。なお、位置決め手段に関しては後で詳しく説明する。
【0013】
連結装置8には、図3において詳細が示されているシリンダブーム連結手段9、ブーム間固定解除手段10および位置決め手段12がそれぞれシリンダチューブ7Bの縦方向中心線を境にして径方向両側に一体化されて設けられている。
図3において連結装置8に設けられているシリンダブーム連結手段9は、1段復動油圧シリンダ7のシリンダチューブ7Bと各中間ブーム3〜6の基端部とを選択的に連結してシリンダチューブ7Bの伸縮動作に連動させて選択された中間ブーム3〜6を伸縮させるためのものであり、ピストン9Aとこのピストン9Aを内部に収容しているシリンダ9Bとを備えている。
ピストン9Aおよびこのピストン9Aと対向する側のシリンダ9Bの端面にはトップブーム2、中間ブーム3〜6の基端部内面に設けられている孔で構成された係合部2A、3A、4A、5A、6A(図2参照)に対して係脱可能な連結コア部材9Cが取り付けられている。
図3において係合部(便宜上、係合部2Aのみを示す)は、各中間ブーム3〜6の内面でブームの伸縮方向に対して直角な方向の両端に設けられており、内径が連結コア部材9Cよりも小径とされている。
連結コア部材9Cは、軸方向の途中にこの係合部3Aとの径の違いによる段部が形成されており、図4に示すように、ピストン9Aが伸長した際に段部を係合部2A、3A、4A、5A、6A(図2参照)の開口端縁に突き当てることができ、このときに発生する反力によってシリンダ9Bをピストン9Aとは反対側に移動させ、図4に示すように、シリンダ9Bの端面に取り付けられている連結コア部材9Cをこの連結コア部材9Cに対向する側の係合部内に進入させるようになっている。なお、連結コア部材9Cの復動位置は、図3に示すように、連結装置8の外表面に形成されている突起部で構成された径支部によって規定される。
【0014】
一方、各ブームには、隣り合うブーム同士を固定するためのブーム間固定手段11が設けられている。
ブーム間固定手段11は、図1、図3および図4に示すように、各ブームにおける基端部に装備されているケーシング11A内に配置されたバネ11Bによってブームの伸縮方向と直角な方向で外側に向け突出する習性を付与されているピン11Cと、このピン11Cが突出する側のブームに形成されている孔が該当する係合部11Dとで構成されている。
ピン11Cと係合部11Dとは、上記したシリンダブーム連結手段9における係合部2A、3A、4A、5A、6Aと連結コア部材9Cとの構成と同じように、ピン11Cの軸方向途中に段部を備えた構成とされ、バネ11Bの付勢により突出量が規定されるようになっている。この場合の規定量は、係合部11D内に嵌合するピン11Cのストロークに対応させてある。
ピン11Cの軸方向で係合部11Dに嵌合する側と反対側の端部には、図3および図4に示すように、鍔部11Eが設けられており、この鍔部11Eは後述するブーム間固定解除手段10と係合することができる。
【0015】
ブーム間固定解除手段10は、図3および図4に示すように、連結部材8に一体化され、1段復動油圧シリンダ7のシリンダチューブ7Bをはさんでシリンダブーム連結手段9と対向し、シリンダブーム連結手段9における連結動作方向と平行する固定解除動作方向を設定されたピストン10Aとシリンダ10Bとを備えている。ピストン10Aの先端およびこの先端と反対側に位置するシリンダ10Bの端面にはブーム間固定手段11のピン11Cの端部に有する鍔部11Eに係合可能な解除部10Cが設けられている。
ブーム間固定解除手段10は、一例として、油の給排制御によりシリンダブーム連結手段9と協働してシリンダブーム連結手段9が選択されたブームを伸縮動作する際にそのブームとこれに隣接するブームとの固定を解除するために用いられる。つまり、図3において、選択されたブームのブーム間固定手段11に有する鍔部11Eに解除部10Cが対向すると、シリンダ10B内に向けピストン10Aが引き込まれる。これにより、ピストン10Aの先端に位置する解除部10Cによってシリンダチューブ7Bの縦方向中心線に向けピン11Cが引かれると、係合部11Dの一方からピン11Cが抜け、解除部10Cの下端は連結装置8の外表面に形成されている突起に突き当たる。すると、ピン11Cはそれ以上移動することができない代わりに、シリンダ10Bがシリンダチューブ7Bの縦方向中心線に向け移動する。これにより、図4に示すように、係合部11Dの他方からもピン11Cが抜ける。以上のように、解除部10Cの移動ストロークは、連結装置8の外表面に形成されている突起で構成された係止部によって設定されるようになっている。
【0016】
一方、連結装置8には、シリンダブーム連結手段9およびブーム間固定解除手段10を選択されたブームに対応する位置に位置決めするための位置決め手段12が設けられている。
位置決め手段12は、図2乃至図4に示すように、ガイド部材7Cの位置決め用係合部7C1に対し、連結装置8によって挿脱可能に支持されている位置決めピン12Aと、位置決めピン12Aが挿嵌されている支持筒12B(図2、図3参照)と、支持筒12B内に配置されて位置決めピン12Aを常時位置決め用係合部7C1内に挿入させる習性を付与するバネ12C(図2参照)と、位置決めピン12Aとリンク結合されて位置決めピン12Aの挿脱方向に平行移動可能な駆動ピストン12D(図2参照)と、駆動ピストン12Dが挿嵌されているシリンダ12E(図2参照)とを備えている。位置決め手段12は、一例として、シリンダ12E内への油の給排制御により位置決めピン12Aを摺動させることができる。
【0017】
さらに連結装置8には、シリンダチューブ7Bにおけるガイド部材7Cが設けられていない箇所、換言すれば、シリンダチューブ7Bの全縮時にトップブーム2および各中間ブーム3〜6の基部が占めるシリンダチューブ7Bの長手方向の位置以外の箇所には、先端が連結装置8の一部に連結されたピストンロッド13Aを有する駆動シリンダ13が取り付けられており、ピストンロッド13Aの進退移動を介して連結装置8がブームの伸縮方向に駆動されるようになっている。ピストンロッド13Aは、全伸長時から全縮時に至る過程のストロークとして、連結装置8に有するシリンダブーム連結手段9およびブーム間固定解除手段10をベースブーム1、各中間ブーム3〜6およびトップブーム2に有する係合部あるいはブーム間固定手段11にそれぞれ対向できるストロークが設定されている。本実施例では、駆動シリンダ13のストロークが図示されないストロークセンサによって検知され、所定のストロークが得られるように駆動シリンダ13の駆動制御が行われる。
【0018】
本実施例は以上のような構成であるから、1段復動油圧シリンダ7は、シリンダチューブ7Bの伸縮ストロークが、図6、8、10において符号Lで示すように、常に一定とされる。特に、全縮時には、シリンダチューブ7Bの一端は、ピストンロッド7Aの端部近傍に達する間で収縮移動する。
一方、本実施例では、トップブーム2側から順に伸長されるようになっており、選択されたブームの伸長時には、連結装置8がガイド部材7Cに沿って駆動シリンダ13の伸長移動によって選択されたブームに対応する位置に移動し、その位置で位置決め手段12がガイド部材7Cの位置決め用係合部7C1に係合することで位置決めされる。さらに、シリンダブーム連結手段9によって選択されたブームとシリンダチューブ7Bとが連結されると共に、ブーム間固定解除手段10によりブーム間固定手段11の固定が解除されることによりシリンダチューブ7Bの伸長移動に連動して選択されたブームを伸長させることができる。
【0019】
いま、ブームを全縮状態から全伸長状態に設定する場合を説明すると、図5乃至図10に示すとおりである。なお、図5乃至図10において、ブーム間固定手段11におけるピン11Cと係合部11Dとが係合している状態を黒で塗りつぶして表示し、ブーム間固定解除手段10によってブーム間での固定が解除されている状態は白抜きにて表示する。また、シリンダブーム連結手段9が連結状態にあることは符号9を付して示す。
図5は全縮状態にあるブームのなかからトップブーム2を伸長させようとする状態を示している。
この状態では、トップブーム2に対してシリンダブーム連結手段9が連結されるとともに、ブーム間固定解除手段10が動作されてトップブーム2と中間ブーム3との固定が解除される。また、このときには、駆動シリンダ13が全縮状態に設定され、これにより、連結装置8は、シリンダブーム連結手段9およびブーム間固定手段10をトップブーム2の基端部の所定位置に位置決めする。
ブーム間固定解除手段10が動作すると、図4に示すように、ピン11Cの鍔部11Eが解除部10Cによって引き動かされ、係合部11Dからピン11Cが引き抜かれる。これにより、トップブーム2と中間ブーム3との固定が解除され、トップブーム2が伸長移動できる状態とされる。
【0020】
図5に示した状態で1段復動油圧シリンダ7が伸長すると、図6に示すように、トップブーム2が伸長方向に移動する。
ベースブーム1に連結されている1段復動油圧シリンダ7が伸長動作された状態を示している。
【0021】
図6に示したようにトップブーム2が伸長されると、1段復動油圧シリンダ7が、図7に示すように全収縮する。
図7において1段復動油圧シリンダ7が全収縮すると、トップブーム2に隣接する中間ブーム3が伸長態位とされる。この場合には、図7において符号L1で示すストロークだけ駆動シリンダ13のピストンロッド13Aが伸長され、シリンダブーム連結手段9およびブーム間固定解除手段10が中間ブーム3の基部に対応するように連結装置8が移動して位置決めされる。
連結装置8の位置決めは、図2乃至図4に示したように、位置決め手段12におけるシリンダ12E内で駆動ピストン12Dがガイド部材7Cの位置決め用係合部7C1に向け移動することにより位置決めピン12Aがバネ12Bの付勢によって位置決め用係合部7C1に挿嵌される。
連結装置8の位置決めが行われると、シリンダブーム連結手段9によって中間ブーム3とシリンダチューブ7Bとが連動できる状態とされると共に、中間ブーム3と4との間の固定がブーム間固定解除手段10によって解除される。
【0022】
図7に示した状態、つまり、連結装置8に有するシリンダブーム連結手段9の連結操作およびブーム間固定解除手段10による解除操作が完了すると、図8に示すように、1段復動油圧シリンダ7が符号Lで示すように全伸長され、シリンダチューブ7Bの伸長移動に連動して中間ブーム3が伸長方向に移動する。
中間ブーム3、4,5が同様に伸長し終わると、1段復動油圧シリンダ7が図9に示すように全収縮する。
1段復動油圧シリンダ7が全収縮すると、中間ブーム6の伸長準備が行われる。
この場合には、図9において符号L2(L2>L1)で示すストロークだけ駆動シリンダ13のピストンロッド13Aが伸長され、前回の中間ブーム3の伸長準備の場合と同様に、シリンダブーム連結手段9およびブーム間固定解除手段10が中間ブーム4の基部に対応するように連結装置8が移動して位置決めされる。
連結装置8の位置決めに関しては、前回の位置決め時と同様な操作が行われる。
連結装置8の位置決めが行われると、シリンダブーム連結手段9によって中間ブーム6とシリンダチューブ7Bとが連動できる状態とされると共に、中間ブーム4と5との間の固定がブーム間固定解除手段10によって解除され、1段復動油圧シリンダ7が図10において符号Lで示すストロークで全伸長するのに連動して中間ブーム4が伸長方向に移動する。
【0023】
上記実施例によれば、連結装置8がガイド部材7Cに沿って摺動するので、ガイド部材7Cによってシリンダチューブ7Bの中心回りの回転が阻止される。これにより、シリンダブーム連結手段9およびブーム間固定解除手段10とこれに対応する係合部およびブーム間固定手段11との位置ずれが防止され、円滑にシリンダチューブ7Bと選択されたブームとの連動関係およびブーム間での固定解除が可能になる。
【0024】
次に、上記実施例に示した構成の一部変形例を図11乃至図14において説明する。なお、図11乃至図14において図1乃至図10に示したものと同じ構成部品については同符号により示してある。
図11乃至図14に示す構成では、ブーム間固定手段11が図11および図12に示すようにブームの上面側に設けられており、また、図1乃至図10に示したガイド部材7Cがシリンダチューブ7Bに設けられていない。
図11および図12において、シリンダチューブ7Bの上周面には、図13および図14に詳細が示されているように、ブームの伸縮方向に沿って延長されたスライドレール7Dが一体化されており、このスライドレール7Dには、連結装置8’が摺動可能に設けられている。
【0025】
連結装置8’は、図13および図14に示すようにスライドレール7Dに嵌合する板状部材で構成され、下面から下方に張り出した支持片8A’(図14参照)には、位置決め手段12’が取り付けられている。
位置決め手段12’は、図13および図14に示すように、シリンダチューブ7Bの両側面に位置するチューブ側係合部7Eとブーム側係合部14との対向位置に係脱可能な係止ピン12A’と、この係止ピン12A’をチューブ側係合部7Eとブーム側係合部14との対向位置に向け進行させる習性を付与するバネ12B’と、係止ピン12A’のピストン部とバネ12B’とを収容しているシリンダ12C’と、シリンダ12C’と共に係止ピン12A’の移動方向に平行移動可能なプランジャ15Aを内部に位置させてプランジャ15Aを摺動させる駆動シリンダ15とを備えている。
さらに駆動シリンダ15には、これと一体化されたブーム間固定解除手段(便宜上、図13において符号10’で示す部材)が設けられている。ブーム間固定解除手段10’は、シリンダ12C’の昇降動作に連動してブーム間固定手段11をブーム側の係合部に対して進退させるようになっている。
【0026】
位置決め手段12’は、係止ピン12A’が、プランジャ15Aの摺動に連動することができ、図11に示すように、平面視形状が凹状のチューブ側係合部7Eとブーム側係合部14とで形成される矩形の係合隙間S内に対して挿脱できるようになっている。
位置決め手段12’は、位置決め機能に加えて係合隙間S内に挿入された場合にはシリンダチューブ7Bとブームとを連結する機能を併せ持ち、係合隙間S内に挿入されると、シリンダチューブ7Bに連動してブームを伸縮方向に移動させることができる。
【0027】
上記構成においては、選択されたブームの基部側に駆動シリンダ13によって連結装置8’が移動させられ、その位置で位置決め手段12’における係止ピン12A’がチューブ側係合部7Eとブーム側係合部14とで形成される係合隙間S内に入り込む。係止ピン12A’が係合隙間Sに入り込む際には、図13においてプランジャ15Aの下降に連動してシリンダ12C’が下降するので、このシリンダ12C’と一体のブーム間固定解除手段10’がブーム間固定手段11の固定を解除する方向に移動する。
この構成においても、1段復動油圧シリンダ7は、図5乃至図10において符号Lで示したストロークによって全伸長および全収縮し、そして、駆動シリンダ13は、図5乃至図10において説明したように、符号L1、L2で示すストロークで伸縮移動する。
【0028】
このような構成によれば、連結装置8’の構成が簡略化できる。つまり、連結装置8’には、位置決めとシリンダブーム連結手段としての機能を併せ持たせることができる位置決め手段12’のみが設けられているので、図1乃至図4に示したようなシリンダブーム連結手段9を設置する必要がない。このため、連結装置8’は、単に位置決め手段12’を支持するだけの強度で済むので、小型軽量化を可能にできる。しかも、連結装置8’は、スライドレール7Dに沿って摺動可能な板状部材で構成されているので、不用意にシリンダチューブ7Bの中心回りに回転することがなく、これによって、図1乃至図10に示した構成と同様に、ブーム間固定手段11とブーム間固定解除手段10との対応位置関係および位置決め手段12’と係合隙間との対応位置関係を正確に維持することができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、シリンダチューブの外表面でブームの伸縮方向に移動可能な連結装置を設け、上記連結装置よりシリンダブーム連結手段、ブーム間固定解除手段を選択された中間ブームの必要箇所に向け移動させるようにしているので、1段復動油圧シリンダは、各ブームの基端部に向けて伸縮量を変更しなくて済む。これにより、1段復動油圧シリンダは、常時、一定した伸縮ストロークを有するものを用いることができ、しかも、選択されたブームの位置に拘わらず、全伸長および全収縮を繰り返すだけでブームの伸縮動作を行わせることができる。これにより、煩雑な伸縮操作をなくして1段復動油圧シリンダの給油制御を含めて構成の簡略化が図れる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、連結装置に設けられているシリンダブーム連結手段と位置決め手段とを兼用することにより構成の簡略化ができる。これにより、連結装置に要求され得る強度を低くすることができるので、連結装置の大型化を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例による移動式クレーンのブーム伸縮機構の要部構成を説明するための平面視的な部分断面図である。
【図2】図1に示したブーム伸縮機構を側面から見た断面図である。
【図3】図1示したブーム伸縮機構に用いられる連結装置、シリンダブーム連結手段、ブーム間固定手段およびブーム間固定解除手段の関係を説明するためにブームの後面から見た模式図である。
【図4】図3に示した各手段の一態様を説明するための図3相当の模式図である。
【図5】図1に示したブーム伸縮機構を用いたブームの全縮状態を説明するための模式図である。
【図6】図1に示したブーム伸縮機構を用いたブームの伸長状態の一態様を説明するための模式図である。
【図7】図6に示したブームの伸長状態における伸長終了時の状態を説明するための図6相当の模式図である。
【図8】図1に示したブーム伸縮機構を用いたブームの伸長状態の他の態様を説明するための模式図である。
【図9】図1に示したブーム伸縮機構を用いたブームの伸長状態の別の態様を説明するための模式図である。
【図10】図9に示したブームの伸長状態における伸長終了時の状態を説明するための図9相当の模式図である。
【図11】本発明の別実施例による移動式クレーンのブーム伸縮機構の要部構成を説明するための平面視的な部分断面図である。
【図12】図11に示したブーム伸縮機構を側面から見た断面図である。
【図13】図11示したブーム伸縮機構に用いられる連結装置、シリンダブーム連結手段、ブーム間固定手段およびブーム間固定解除手段の関係を説明するためにブームの後面から見た模式図である。
【図14】図13に示した各手段の一態様を説明するための図13相当の模式図である。
【符号の説明】
1 ベースブーム
2 トップブーム
3〜6 中間ブーム
3A〜6A 係合部
7 1段複動油圧シリンダ
7A ピストンロッド
7B シリンダチューブ
7C ガイド部材
7C1 位置決め用係合部
7D スライドレール
7E チューブ側係合部
8、8’ 連結装置
8A’ 支持片
9 シリンダブーム連結手段
10、10’ ブーム間固定解除手段
11 ブーム間固定手段
12、12’ 位置決め手段
12A 位置決めピン
12A’ 係止ピン
12D 駆動ピストン
13 駆動シリンダ
14 ブーム側係合部
S 係合隙間

Claims (2)

  1. ベースブーム内にて複数の中間ブームを伸縮自在に挿嵌し、さらにこの中間ブーム内にトップブームを伸縮自在に挿嵌してなる多段伸縮ブームを備えた移動式クレーンのブーム伸縮機構において、
    上記ベースブームにピストンロッドの端部が軸支され、上記ピストンロッドの端部近傍まで延長されているシリンダチューブを備えている伸縮可能な単一の1段復動油圧シリンダと、
    上記シリンダチューブのロッド側端部に配置され、上記シリンダチューブの伸縮方向に移動可能な連結装置と、
    上記連結装置に設けられ、上記各段の中間ブーム基端部とを選択的に連結し、連結時には上記シリンダチューブの伸縮動作に連動して選択された中間ブームを伸縮させるシリンダブーム連結手段と、
    上記各ブームのうちで隣り合うブーム同士を固定するブーム間固定手段であって、隣接する各ブームのうちで上記ベースブーム寄りのブーム基端側で上記ブームの軸線と直角な方向に沿って外側に突出する習性を付与されているピンと、隣接する各ブームの適所に位置して上記ピンを受容する係合部とからなり、ブームの全縮時および適宜伸長した位置でブーム同士を固定するブーム間固定手段と、
    上記連結装置に設けられ、上記ブーム間固定手段に有するピンと係脱可能であって、上記ピンと係合してそのピンを上記係合部から離脱させることでそのピンおよびこれが係合していたブーム同士の固定を解除するブーム間固定解除手段と、
    上記シリンダチューブの外周面で上記ブームの伸縮方向に配置され、上記シリンダブーム連結手段と上記ブーム間固定解除手段が設けられた上記連結装置の位置決め用係合部が上記各ブームの基端部側に対応して複数箇所に形成されているガイド部材と、
    上記ガイド部材に有する上記位置決め用係合部に対向して上記連結装置に設けられていて、上記位置決め用係合部に対して挿脱可能な位置決めピンを有する位置決め手段とを備え、
    上記連結装置は、選択されたブームの基端部に対応する位置決め用係合部に一致する位置に向け移動し、上記シリンダブーム連結手段の連結操作および上記ブーム間固定手段の固定解除操作を可能にすることにより、選択されたブームを伸縮可能な状態に設定することを特徴とする移動式クレーンのブーム伸縮機構。
  2. 請求項1記載の移動式クレーンのブーム伸縮機構において、
    上記連結装置に設けられているシリンダブーム連結手段と上記位置決め手段とは兼用された構成とされていることを特徴とする移動式クレーンのブーム伸縮機構。
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