JP4074676B2 - 油圧機械の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧機械の制御方法に関するものであり、さらに詳しくは、エンジン回転数及びポンプ傾転角度の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来技術におけるポンプ吐出流量の制御方法を示す図である。
【0003】
一般的に言って油圧ポンプの吐出流量Qd は
q:ポンプ吐出容量(1回転当たりのポンプ吐出流量(cc/rev))
N:エンジン回転数(rpm)
において、
【数1】
Qd =q・N(l/min)
である。
【0004】
油圧ポンプの吐出容量(cc/rev)は、ポンプ傾転角によって制御される。従来技術においては、作動状態におけるエンジン回転数は、スロットルレバーで定められる一定の設定回転数で運転される。
【0005】
ポンプ吐出流量(l/min)は、エンジン回転数が一定である場合、数1に従いポンプ傾転角度のみによって定められる。操作装置の操作レバーを中立状態から作動状態に傾けその操作量を増加させていくと、レバー操作量に対応してポンプ傾転角度は比例増加させられる。
【0006】
レバー操作量が0から不感帯域までの中立状態においては、ポンプ傾転角度は変動しない設定である。そして、レバー操作量が最大傾転角度に相当するレバー操作量以上になると、一律にそのときの設定回転数で定まる最大吐出流量となる。
【0007】
このポンプ傾転角度の制御は、常に操作レバー角度によってのみ制御され、且つ、一律に同じ制御である。従って、エンジン回転数が高速回転数であるときと低速回転数であるときではポンプ吐出流量が異なる。図9に示すように、ポンプ吐出流量は高速回転数のときの流量より低速回転数の流量の方が小流量となる。
【0008】
オペレータは作業状態に応じて設定回転数を変化させることによりポンプ吐出流量を変化させている。これにより所望の操作性に変化させることができる。但し、あくまでも上述のように、エンジン回転数はスロットルレバーで設定された一定の設定回転数であって、レバー操作量によってエンジン回転数は変動しない。
【0009】
図10は、エンジンが低速回転数運転状態からレバー操作を行ったときのエンジン回転数、ポンプ傾転角度及びポンプ吐出流量の相互関係を示す。
【0010】
レバー操作量が中立状態にあるときは、エンジン回転数は一定の低速回転数運転であり、ポンプ傾転角度も一定の小さな傾転角度である。従って、ポンプ吐出流量は一定の小流量Qa である。操作レバーが作動状態になるとエンジン回転数は低速回転数運転状態から設定回転数運転へとステップ応答で切り替わり、前記エンジンは一定の設定回転数で運転され、レバー操作量の変動に応じては変動しない。それに対して、ポンプ傾転角度はレバー操作量に応じて比例増加する。従って、ポンプ吐出流量はポンプ傾転角度のみによって変動させられる。
【0011】
図11はエンジン馬力によって制限される油圧ポンプの負荷圧と吐出流量の関係であるP−Q特性を示す図である。縦軸の吐出流量は負荷圧に対して吐出可能な最大吐出流量を示している。
【0012】
ここで油圧ポンプの吸収馬力は
Lp :ポンプ吸収馬力
P:ポンプ負荷圧
q:ポンプ吐出容量
N:エンジン回転数
ηp :油圧ポンプ全効率
において、
【数2】
Lp =P・q・N/ηp
であらわされ、エンジン回転数Nが一定である場合、ポンプ吸収馬力Lp はポンプ負荷圧P及びポンプ吐出容量qによって変動する。
【0013】
これに対して、エンジンの出力可能な最大出力馬力は最初に設定される設定回転数から定まる固定値である。従って、変動するポンプ吸収馬力がエンジン出力馬力を上回ることがないように、ポンプ吸収馬力が予め定められているP−Q特性に沿うように制御される。
【0014】
このP−Q特性は、通常ポンプ負荷圧の急激な上昇等を考慮してエンジン出力馬力に余裕をもたせた設定にされている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術においては、上述したように、エンジン回転数は一定の設定回転数で運転されている。この設定回転数は、大馬力が必要とされる操作が行われている場合にも対応できるように、相対的に高い回転数である。従って、小馬力しか必要とされない微操作作業を行っているときには、必要以上の高回転数でエンジンが運転されていることになる。このことから、従来技術は、燃費面で問題があることに加えて、エンジン音がうるさく騒音面でも問題がある。また、大馬力が必要とされる作業条件の際に、スロットルレバーが中速回転数以下などに設定されていると、エンジンの出力馬力はその設定回転数によって制限され、その設定回転数に基づくP−Q特性に従ってポンプ吐出流量は減少させられる。すなわち、操作性が損なわれる問題がある。
【0016】
そこで本発明は、上記した従来技術における実情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作性を損なわずに低燃費かつ低騒音の油圧機械の制御方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、請求項1の発明は、油圧ポンプの傾転角およびエンジンの回転数を制御することによって前記エンジンにより駆動される前記油圧ポンプの吐出流量を変化させ、操作レバーの操作に応じて前記油圧ポンプに接続された油圧アクチュエータを作動させる油圧機械の制御方法において、前記操作レバーが中立状態にあるときの前記エンジンの回転数を最高回転数より低い低速運転回転数とし、前記エンジンのエンジン回転数と前記油圧ポンプのポンプ負荷圧と前記操作レバーの操作量とを検出し、この検出したエンジン回転数とポンプ負荷圧と操作量とから、エンジン出力馬力と目標吐出流量と目標ポンプ吸収馬力とを演算し、低速運転回転数における前記エンジン出力馬力と前記目標ポンプ吸収馬力とを比較し、前記目標ポンプ吸収馬力が前記低速運転回転数におけるエンジン出力馬力以下の場合は、前記目標吐出流量を、前記エンジンの低速運転回転数を保持した状態で前記油圧ポンプの傾転角を制御することによって確保し、前記油圧ポンプの傾転角が最大ポンプ傾転角度に達した際には、前記目標吐出流量を、前記油圧ポンプの傾転角を最大傾転に保持した状態で前記エンジンの回転数を制御することによって確保するものである。
【0018】
請求項2の発明は、前記目標ポンプ吸収馬力が前記低速運転回転数におけるエンジン出力馬力を超える場合は、前記目標吐出流量を、前記エンジンの回転数と前記油圧ポンプの傾転角とを制御することによって確保するものである。
【0020】
請求項3の発明は、前記エンジン回転数を、前記操作装置の全てが中立状態となった時点から予め定められた遅延時間を経過した後に、低速運転回転数に減少させるものである。
【0021】
請求項4の発明は、スロットルレバーにより設定された一定の設定回転数とする設定回転数運転が指令されている場合は、前記エンジンを前記設定回転数で運転するものである。
【0022】
請求項5の発明は、前記目標ポンプ吸収馬力が前記エンジンの最大出力馬力を超える場合は、前記エンジンの回転数を前記最大出力馬力となる回転数に保持し、前記ポンプ傾転角を制御することにより前記目標ポンプ吸収馬力が前記エンジンの最大出力馬力を超えないようにするものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における一実施形態を図に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる制御装置を示す構成図である。図1は油圧ショベルの場合を示す。
【0025】
この実施形態においては、動力源であるエンジン1と、該エンジン1によって駆動される複数の可変容量形油圧ポンプ2(以下油圧ポンプと称す)と、該油圧ポンプ2によって吐出される圧油の方向と流量とを制御する複数の絞り付切換弁3と、該絞り付切換弁3によって導かれた圧油によって駆動される複数の油圧アクチュエータ4とが設けられている。前記エンジン1には、該エンジン1の回転数を検出する回転数検出部9とエンジン回転数を制御するエンジン回転制御部10とが設けられている。前記回転数検出部9からは常時前記エンジン1の回転数に相当する信号が出力される。
【0026】
前記油圧ポンプ2には、ポンプ吐出流量を制御するポンプ傾転制御部11とポンプ負荷圧を検出する負荷圧検出部12とがそれぞれ設けられている。前記ポンプ傾転制御部11は、傾転角度を変化させて前記油圧ポンプ2のポンプ吐出流量を制御する。前記負荷圧検出部12からは常時ポンプ負荷圧に相当する信号が出力されている。
【0027】
オペレータが操作する際の伝達手段として、複数の操作装置5が設けられている。前記操作装置5は、レバー操作角度に応じて変動する操作量に対応する操作信号を出力する。前記スロットルレバー6は、オペレターが前記エンジン1の最低回転数から最高回転数の範囲で所望のエンジン回転数に設定するために設けられている。前記モードスイッチ7は、予め固定されている回転数に設定するために設けられている。この実施形態では、エンジン回転数設定手段としてスロットルレバー6、モードスイッチ7を用いたが、これらのうち少なくとも1つが備えられていればよい。また、エンジン回転数とポンプ傾転角度とを前記操作装置5の変動する操作量と変動するポンプ負荷圧とに相関させて制御する変速運転と前記スロットルレバー6もしくは前記モードスイッチ7により設定された一定の設定回転数とする設定回転数運転のいずれかを選択する手段として切替スイッチ8が設けられている。
【0028】
前記操作装置5から出力される操作信号、前記スロットルレバー6から出力される信号、前記モードスイッチ7、前記切換スイッチ8、前記負荷圧検出部12、及び前記回転数検出部9から出力される信号をとりこみ処理するコントローラ13が設けられている。
【0029】
前記コントローラ13からは、前記絞り付切換弁3を制御する信号、前記ポンプ傾転制御部11を制御する信号、及び前記エンジン回転制御部10を制御する信号が出力される。
【0030】
図2は、前記コントローラ13の内部の構成図である。
【0031】
前記コントローラ13の内部には、前記操作装置5からの信号、前記スロットルレバー6からの信号、前記モードスイッチ7からの信号、前記切換スイッチ8からの信号、前記ポンプ負荷圧検出部12からの信号、前記回転検出部9からの信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器13aが設けられている。
【0032】
前記A/D変換器13aから前記回転検出部9の信号に相当する信号を受けて、その時点におけるエンジン出力馬力を算出するエンジン馬力演算部13bが設けられている。また、前記ポンプ負荷圧検出部12からの信号に相当する信号、前記回転検出部9の信号に相当する信号及び前記操作装置5からの信号に相当する信号を受けて目標吐出流量及び目標ポンプ吸収馬力を算出する目標ポンプ吸収馬力演算部13cが設けられている。その他に、前記操作装置5のレバー処理手順及び遅延時間のカウント手順等を記憶する記憶回路部13dが設けられている。前記A/D変換器13a、前記エンジン馬力演算部13b、前記目標ポンプ吸収馬力演算部13c及び前記記憶回路部13dからの信号を受けて比較演算処理する制御回路部13e、及び該制御回路部13eからの信号を受けて前記絞り付切換弁3、前記ポンプ傾転制御部11及び前記エンジン制御部10への出力を制御する出力制御回路部13fが設けられている。尚、前記目標ポンプ吸収馬力演算部13c、前記エンジン馬力演算部13b、及び前記制御回路部13eにおいて行われる演算処理は、予め前記制御回路部13e内にマップとして設定されていて、該マップから随時選定されてもよい。
【0033】
次に、上述した構成の装置による本発明の制御方法について図3乃至図8を参照して説明する。図3及び図4は、本発明の制御方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0034】
図5は、レバー操作量に対する目標吐出流量、ポンプ傾転角度及びエンジン回転数の関係を示す図である。
【0035】
図6及び図7は、油圧ポンプの負荷圧と油圧ポンプの吐出流量との関係を示す図である。
【0036】
操作レバーの状態に関わらず前記切換スイッチ8から変速運転を行う信号が出力されていないときは、前記スロットルレバー6によって設定されるエンジン回転数と前記モードスイッチ7によって設定されるエンジン回転数のいずれか小さいほうの回転数(以下設定回転数と称す)で前記エンジン1を駆動するための信号が前記コントローラ13から前記エンジン回転制御部10に出力される。
この制御の流れは図3及び図4におけるA〜Hの流れに相当する。尚、設定回転数は前記スロットルレバー6あるいは前記モードスイッチ7のいずれか一方のみによって定められる回転数であってもよい。
【0037】
前記切換スイッチ8から変速運転を行う信号が出力されているときは、前記操作装置5から操作レバーの操作量に応じた信号及び前記切換スイッチ8から変速運転を行う信号が前記コントローラ13へ入力される。また、ポンプ負荷圧が前記負荷圧検出部12から、エンジン回転数が前記回転検出部9から前記コントローラ13へ与えられる。
【0038】
この状態において、前記コントローラ13では、前記設定回転数と前記操作装置5のレバー操作量との関係から予め図5の実線に示すような目標吐出流量が定められる。又、該目標吐出流量に基づいて目標ポンプ吸収馬力が定められる。この制御の流れが図3及び図4におけるA〜Bの流れに相当する。
【0039】
図5において、前記油圧アクチュエータ4が作動しない中立状態では、一律最小吐出流量Qa である。この最小流量Qa は、エンジン回転数の変動に対応してポンプ傾転角度を補正することによって、常時一定の値に保持される。レバー操作が作動状態になると前記操作装置5のレバー操作量の増加に応じてポンプ吐出流量は比例増加する。最大吐出流量Qc は、設定回転数と最大傾転角度から算出される値である。レバー操作量が前記最大流量に達する操作量以上では一律前記最大吐出流量Qc である。該最大吐出流量Qc は、オペレータの意志を基に設定される設定回転数により定められることから、オペレータの意志に反する操作性となることがない。
【0040】
ここで目標吐出流量Qd は
Qd :目標吐出流量(l/min)
Qa :最小吐出流量
Qc :最大吐出流量
R:操作レバーにより定められる操作量
Rmin :中立状態における操作量
Rmax :最大傾転角度における操作量
において、
【数3】
R≦Rmin →Qd =Qa
R≧Rmax →Qd =Qc
Qd =(Qc −Qa )(R−Rmin )/(Rmax −Rmin )+Qa
であらわされる。
【0041】
図5の最小流量のQa からQb までの吐出流量に相当する作動領域において、目標ポンプ吸収馬力と低速運転回転数におけるエンジン出力馬力とが比較される(図3のC参照)。その結果、目標ポンプ吸収馬力が前記エンジン出力馬力以下であるときは前記目標吐出流量はポンプ傾転制御のみで確保される。そして、エンジン回転数は低速運転回転数に保持される(図3のD参照)。吐出流量Qb は、最大ポンプ傾転角度と低速運転回転数とによって定められる値である。
【0042】
ここで目標吐出流量、エンジン出力馬力及び目標ポンプ吸収馬力は
Qd :目標吐出流量(l/min)
Lp :目標ポンプ吸収馬力
Le :エンジン出力馬力
P:ポンプ負荷圧
q:ポンプ吐出容量(ポンプ傾転角度によって定められる1回転当たりのポンプ吐出流量(cc/rev))
N :エンジン回転数
ηp :ポンプ全効率
Te :エンジン出力トルク(エンジン回転数によって予め定められている性能値において、
【数4】
Qd =q・N(l/min)
Le =Te ・N
Lp =P・q・N/ηp
であらわされる。
【0043】
本発明の実施形態においては前記コントローラ13内の前記ポンプ吸収馬力演算部13cにおいて、目標吐出流量Qd とポンプ負荷圧Pとから目標ポンプ吸収馬力Lp を上記数4に従って算出する。また同時にエンジン出力馬力Le が数4に従って算出される。前記コントローラ13においては常時エンジン出力馬力と目標ポンプ吸収馬力が比較される。
【0044】
Qb ではポンプ傾転は最大傾転角度の状態にあるとともに、目標ポンプ吸収馬力がエンジン出力馬力に非常に近い状態(ここではエンジン出力馬力の90%とする。)にある。Qb からQc までの流量域ではポンプ傾転角度は常時最大傾転角度の状態である。レバー操作量がQb 以上になるとエンジン回転数は低速運転回転数からレバー操作量に応じたポンプ吐出流量を吐出可能な回転数へ徐々に上昇する。このとき、目標ポンプ吸収馬力がエンジン最大出力馬力以下であれば、ポンプ吐出流量は予め定められた目標吐出流量特性に沿って徐々に上昇する。この制御の流れが図3及び図4におけるA〜Jの流れに相当する。
【0045】
その際のポンプ吐出流量の最大値Qc はオペレータの意志を基に定められた回転数である設定回転数から定められるポンプ吐出流量であることから、オペレータの意志に反する吐出流量すなわちオペレータの意志に反する操作性が生じることを防止する。
【0046】
レバー操作が作動状態では常時設定回転数で駆動される従来技術に対して、本件は、レバー操作量及びポンプ負荷圧に応じて変動するポンプ吸収馬力に対応したエンジン出力馬力を出力することにより燃費性を向上させる。また、常時大きなエンジン音であった従来技術に対して、本件ではポンプ吸収馬力に応じたエンジン回転数で運転されることにより低騒音化を可能とする。
【0047】
以上説明したポンプ傾転及びエンジン回転数の制御は、ポンプ負荷圧が比較的低い場合における制御状態である。
【0048】
図6によりポンプ負荷圧が比較的大きい場合のポンプ傾転及びエンジン回転数の制御について説明する。
【0049】
図6において、A点は目標吐出流量がQA であり、ポンプ負荷圧力がPA なる点である。目標吐出流量QA は、ポンプ負荷圧が低ければ低速運転回転数におけるエンジン出力馬力でも吐出可能な流量である。しかし、ポンプ負荷圧力PA が大きいため目標ポンプ吸収馬力が低速運転回転数におけるエンジン出力馬力よりも大きくなる為、低速運転回転数では目標吐出流量QA は吐出不可能である。
【0050】
この状態においては、前記コントローラ13により目標吐出流量を吐出するのに必要なエンジン出力馬力が算出される。該エンジン出力馬力からエンジン回転数NA が算出されて、該エンジン回転数NA にするための信号が前記コントローラ13から前記エンジン回転数制御部10へ出力される。これと同時に、前記コントローラ13からエンジン回転数がNA に変化したことにともない傾転を補正する信号が前記ポンプ傾転制御部11へ出力される。これによりポンプ負荷圧PA における目標吐出流量QA を吐出することが出来る。
【0051】
次に、ポンプ負荷圧がPB であり目標吐出流量がQB である点では、ポンプ負荷圧PB が低ければ低速運転回転数と設定回転数の間の目標吐出流量QB を吐出可能な回転数に設定される。しかし、ポンプ負荷圧がPB が大きいためポンプ負荷圧がPB と目標吐出流量がQB とで算出されるポンプ吸収馬力が設定回転数から算出されるエンジン出力馬力の最大値よりも大きくなる。
【0052】
この状態においては、前記コントローラ13により目標吐出流量を吐出するのに必要なエンジン出力馬力が算出される。該エンジン出力馬力からエンジン回転数NB が算出されて、該エンジン回転数NB にするための信号が前記コントローラ13から前記エンジン回転数制御部10へ出力される。これと同時に、前記コントローラ13からエンジン回転数がNB に変化したことにともない傾転を補正する信号が前記ポンプ傾転制御部11へ出力される。これによりポンプ負荷圧PB における目標吐出流量QB を吐出することが出来る。
【0053】
この場合、前記エンジン回転数NB はオペレータの意志に基づき設定される設定回転数以上の回転数に制御される。しかし、操作性に影響するポンプ吐出流量は設定回転数から定められる目標吐出流量を超えることがないのでオペレータの意志に反する操作性は生じない。
【0054】
従来技術においては設定回転数により定められた一定のエンジン回転数で運転されるため、この一定のエンジン回転数で定められるエンジン出力馬力であった。しかし、本件では設定回転数に関わらず、低速運転回転数から最大エンジン回転数の範囲で変動することを可能とすることにより設定回転数により算出されるエンジン出力馬力を上回るようなポンプ吸収馬力に対して、目標吐出流量を確保することを可能とした。すなわち操作性を向上させることが出来る。本件における設定回転数を予め設定することはエンジン回転数を制限することではなく、ポンプ吐出流量を制限するためである。
【0055】
図7は、ポンプ負荷圧Pc と目標吐出流量Qc とで算出されるポンプ吸収馬力が前記エンジン1のもつ最大出力馬力以上になる場合の制御を示す図である。この場合、前記コントローラ13から前記エンジン回転制御部10へ出力される信号は、前記エンジン1のもつ最大出力馬力となる回転数とする信号である。エンジン出力馬力は最大となるが、ポンプ吸収馬力はエンジン出力馬力以上である。このとき前記コントローラ13においてエンジン出力馬力に相当するポンプ吸収馬力とすべくポンプ傾転角度が算出されポンプ吐出流量をQc からQc'に減少させる信号が前記ポンプ傾転制御部11に出力される(図3及び図4におけるA〜Kの流れ参照)。
【0056】
従って、従来技術においては設定回転数により定められたエンジン出力馬力しか出力できなかったが、本件ではエンジン最大出力馬力まで出力することによりエンジン最大出力馬力を上回るようなポンプ吸収馬力に対して、より目標吐出流量に近い吐出流量を確保することが出来る。すなわちエンジン馬力を効率的に出力させ操作性を向上することが出来る。
【0057】
尚、前記スロットルレバー6もしくは前記モードスイッチ7のいずれか小さい側のエンジン回転数により定められたエンジン出力馬力以上のエンジン出力馬力が出力されることが本意でないオペレータは、前記切換スイッチ8を切り替えることによってエンジン回転数の上限を設定回転数とすること、もしくは常時設定回転数で運転される設定にする事が出来る。
【0058】
図8は、操作レバーを作動状態から中立状態の方向に戻すようなレバー操作が行われた場合のエンジン回転数制御とポンプ傾転制御の関係を示す。
【0059】
エンジン回転数が低速運転回転数より高い回転数で運転され、且つ、レバー操作量が増加する方向もしくは保持された状態から中立状態に向かって減少する様な操作が行われたとき、レバー操作量が減少して中立状態になるまでの範囲はエンジン回転数はレバー操作量が減少する直前のエンジン回転数に保持される。この範囲におけるポンプ吐出流量の制御は、ポンプ傾転角度のみで制御され目標吐出流量を確保する。
【0060】
エンジン回転数が低速運転回転数以上の作動状態において、全ての操作レバーが中立状態に戻された点aから、前記コントローラ13において経過時間がカウントされる。この経過時間が予め定められた遅延時間を経過する迄はエンジン回転数は減少せず、その時点におけるエンジン回転数に保持される(図3及び図4におけるG〜E〜Aの流れ参照)。
【0061】
前記遅延時間を経過する前に再びレバー操作が作動状態になるような操作が行われた時点で経過時間のカウントはクリアされる。点b迄はエンジン回転数は保持されたままであり、ポンプ吐出流量はポンプ傾転制御のみで目標吐出流量に制御される。再びエンジン出力馬力を超えるようなレバー操作(点b〜点c)が行われると、目標吐出流量を確保するためエンジン回転数(点f〜点g)は上昇する。
【0062】
全ての操作レバーが中立状態に戻された点dからの経過時間が遅延時間を経過するまでに少なくとも1つの操作レバーが作動状態になるようなレバー操作が行われない時には、低速回転数に下げる信号が前記コントローラ13から前記エンジン回転数制御部10へ出力される。それと同時に目標吐出流量を確保するための信号が、前記ポンプ傾転制御部11へ出力される。経過時間のカウントは遅延時間に相当する値となった時点でクリアされる(図3及び図4におけるG〜E〜Fの流れ参照)。
【0063】
従って、操作レバーの操作量が頻繁に上下変動するレバー操作が行われた際に、エンジン回転数が頻繁に上下変動することを防ぐことが出来る。すなわち、燃費性の悪化を防ぐことが出来る。また、従来技術との異なる点としてエンジン回転数制御の変化に対応してポンプ傾転角度制御を変化させることによりポンプ吐出流量を制御して、操作性が損なわれることを防止している。尚、エンジン回転数の変動に伴う前記エンジン1のエンジン音の変動が本意でないオペレータは前記切換スイッチ8を切り替えることにより前記機能を解除する事が出来る。
【0064】
【発明の効果】
本発明は以上の通り構成したので次のような効果がある。請求項1の発明は、操作レバーが中立状態にあるときのエンジンの回転数を最高回転数より低い低速運転回転数とし、前記エンジンのエンジン回転数と前記油圧ポンプのポンプ負荷圧と前記操作レバーの操作量とを検出し、この検出したエンジン回転数とポンプ負荷圧と操作量とから、エンジン出力馬力と目標吐出流量と目標ポンプ吸収馬力とを演算し、低速運転回転数における前記エンジン出力馬力と前記目標ポンプ吸収馬力とを比較し、前記目標ポンプ吸収馬力が前記低速運転回転数におけるエンジン出力馬力以下の場合は、前記目標吐出流量を、前記エンジンの低速運転回転数を保持した状態で前記油圧ポンプの傾転角を制御することによって確保し、前記油圧ポンプの傾転角が最大ポンプ傾転角度に達した際には、前記目標吐出流量を、前記油圧ポンプの傾転角を最大傾転に保持した状態で前記エンジンの回転数を制御することによって確保する。このため、小馬力しか必要とされない微操作作業を行っている時に、必要以上の高回転数でエンジンが運転されることなく、燃費を向上させるとともに、騒音も低減させることができる。
【0065】
請求項2の発明は、前記目標ポンプ吸収馬力が前記低速運転回転数におけるエンジン出力馬力を超える場合は、前記目標吐出流量を、前記エンジンの回転数と前記油圧ポンプの傾転角とを制御することによって確保する。このため、作業において必要とされるポンプ吸収馬力に見合ったエンジン回転数で運転することができる。すなわち操作性を損なわず燃費を向上させるとともに騒音を低減させることができる。
【0067】
請求項3の発明は、前記エンジン回転数を、前記操作レバーの全てが中立状態となった時点から予め定められた遅延時間を経過した後に、低速運転回転数に減少させる。これにより、作業が比較的長い時間中断されるようなときは、エンジン回転数を低速運転回転数にして燃費面を向上させることができる。また、全ての操作レバーが中立状態になるようなレバー操作が行われ、それが比較的短い時間の小休止である様な場合に、遅延時間を設けたことにより、レバー操作が頻繁に変動するような操作に対してエンジン回転数が頻繁に変動することを防ぐことが出来る。すなわち、燃費の悪化を防ぐことが出来る。
【0068】
請求項4の発明は、スロットルレバーにより設定された設定回転数とする設定回転数運転をする。このため、オペレータがエンジン回転数を一定の回転数であると勘違いして急激なレバー操作をすると危険があるような作業の場合に、切換スイッチによりスロットルレバーにより設定された設定回転数とする設定回転数運転を指令して設定回転数運転にすることで、危険を回避することができる。
【0069】
請求項5の発明は、目標吸収馬力がエンジンの最大出力馬力を超えるような場合に、ポンプ傾転角を減少させる。このため、エンジン回転数がダウンすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるコントローラ内部の構成図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる制御装置のフローチャートである。
【図4】図3の※に続く制御装置のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態のレバー操作量に対する油圧ポンプの吐出流量、ポンプ傾転角度及びエンジン回転数の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施形態の油圧ポンプの負荷圧と油圧ポンプの吐出流量の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の油圧ポンプの負荷圧と油圧ポンプの吐出流量の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施形態のレバー操作量に対するポンプ傾転角度とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図9】従来技術におけるポンプ吐出流量の制御方法を示す図である。
【図10】従来技術におけるレバー操作量に対応するエンジン回転数、ポンプ傾転角度の関係を示す図である。
【図11】従来技術におけるP−Q特性を示す図である。
【符号の説明】
1:エンジン 2:油圧ポンプ 4:油圧アクチュエータ
5:操作レバー 6:スロットルレバー
Claims (5)
- 油圧ポンプの傾転角およびエンジンの回転数を制御することによって前記エンジンにより駆動される前記油圧ポンプの吐出流量を変化させ、操作レバーの操作に応じて前記油圧ポンプに接続された油圧アクチュエータを作動させる油圧機械の制御方法において、
前記操作レバーが中立状態にあるときの前記エンジンの回転数を最高回転数より低い低速運転回転数とし、
前記エンジンのエンジン回転数と前記油圧ポンプのポンプ負荷圧と前記操作レバーの操作量とを検出し、
この検出したエンジン回転数とポンプ負荷圧と操作量とから、エンジン出力馬力と目標吐出流量と目標ポンプ吸収馬力とを演算し、
低速運転回転数における前記エンジン出力馬力と前記目標ポンプ吸収馬力とを比較し、
前記目標ポンプ吸収馬力が前記低速運転回転数におけるエンジン出力馬力以下の場合は、前記目標吐出流量を、前記エンジンの低速運転回転数を保持した状態で前記油圧ポンプの傾転角を制御することによって確保し、
前記油圧ポンプの傾転角が最大ポンプ傾転角度に達した際には、前記目標吐出流量を、前記油圧ポンプの傾転角を最大傾転に保持した状態で前記エンジンの回転数を制御することによって確保することを特徴とする油圧機械の制御方法。 - 前記目標ポンプ吸収馬力が前記低速運転回転数におけるエンジン出力馬力を超える場合は、前記目標吐出流量を、前記エンジンの回転数と前記油圧ポンプの傾転角とを制御することによって確保することを特徴とする請求項1記載の油圧機械の制御方法。
- 前記エンジン回転数を、前記操作レバーの全てが中立状態となった時点から予め定められた遅延時間を経過した後に、低速運転回転数に減少させることを特徴とする請求項2記載の油圧機械の制御方法。
- スロットルレバーにより設定された設定回転数とする設定回転数運転が指令されている場合は、前記エンジンの回転数を常時前記設定回転数で運転することを特徴とする請求項1または請求項2記載の油圧機械の制御方法。
- 前記目標ポンプ吸収馬力が前記エンジンの最大出力馬力を超える場合は、前記エンジンの回転数を前記最大出力馬力となる回転数に保持し、前記油圧ポンプの傾転角を制御することにより前記目標ポンプ吸収馬力が前記エンジンの最大出力馬力を超えないようにすることを特徴とする請求項2記載の油圧機械の制御方法。
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