JP4074473B2 - 多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔性フィルム及びその製造方法に関する。詳しくは、透気性(空気透過性)、透湿性(水蒸気透過性)などに優れ、しかも、優れた液に対する防漏性、浸み出し防止性能と隠蔽性を発揮し、接着部の遮蔽性にも優れた多孔性フィルムおよびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィン系樹脂および無機充填剤を含むフィルムを一軸方向または二軸方向に延伸し、フィルムに連通した空孔(ボイド)を発生させて多孔性フィルムを製造する方法が多数提案されている。そして、この種の多孔性フィルムは衛生材料、医療用材料、建築用材料、電池セパレーターなどの多様な用途に使用されている。
【0003】
近年、大人用の使い捨てオムツの需要が高まっており、吸湿(水)性素材を包むバックシートにつき、透気化、透湿化の要求も年々高まってきている。この大人用オムツは、子供用オムツに比べて、内部で局部的に高い圧力がかかり透気性バックシートを通過して、尿がオムツの外に漏れるケースがあり、問題となっている。また使い捨てナプキン用途でも、バックシートへ透気性フィルムを用いる傾向も強まっている。ナプキン用途はオムツに比べ、さらに高い圧力がかかるのと、血液の表面張力が尿に比べて低いので、尿に比べて細孔から漏れ易いという状況にある。
【0004】
また、近年、ナプキン用バックシートとして、透気性フィルムが使用されるようになったが、ナプキンのバックシート用として使用する場合、吸湿(水)性素材に吸収された経血がバックシートシートを通して透けて見えるので、バックシートの隠蔽性を高めることが求められてきている。また、使い捨てオムツまたはナプキンを人体に止着テープで固定する際、接着テープに含まれる成分が多孔性フィルムに移行し、不透明性の多孔性フィルムを透明化し内側が透けて見えるということが問題にされており、ナプキン用の場合はより深刻な問題である。
【0005】
このため、優れた防漏性、浸み出し防止性を具備し、かつ、優れた隠蔽性を発揮し、接着部の遮蔽性も良好な多孔性フィルムが要求されている。また、多孔性フィルムを使い捨てオムツ、生理用品の資材として用いた場合、人尿、血液などは洩らさず、湿気のみを通す性能を備えた多孔性フィルムが要求されている。
【0006】
上記の問題を解決する手段として、基体樹脂に充填剤を配合し、さらに第三成分として脂肪酸アミド、流動パラフィン、ソルビタン脂肪酸エステルの少なくとも1種を添加してフィルム化する手法が提案されている(例えば、特開昭62−250038号公報参照)。本発明者らの実験によれば、これらの第三成分を添加することにより、フィルム製造時の均一延伸性と、得られたフィルムの柔軟性は達成され得るが、親水性液体の浸み出し防止性、透気性、透湿性、接着部の遮蔽性などにおいて、バランスのとれたフィルムは得られないことが分かった。
【0007】
また、特開昭58−15538号公報には、第三成分として炭化水素重合体(側鎖を有するものも含む)として、液状ポリブタジエン、液状ポリブテン、末端ヒドロキシ液状ポリブタジエンなどを添加する例が記載されており、特開昭58−149925公報には、液状ポリイソプレンを添加する例が記載されているが、本発明者らの実験によれば、このような第三成分を添加しても、親水性液体の浸み出し防止性が低く、延伸ムラもあり、隠蔽性も低いことが分かった。
【0008】
さらにまた、登録特許1763293号公報には、第三成分として、シリコーンオイルおよび/またはポリグリセリン脂肪酸エステル界面活性剤の添加すること、これらを添加することによって、フィルムの柔軟性、引張強度、引裂強度、均一延伸性、耐水圧などが向上する旨の記載がある。しかしながら、本発明者らの実験によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルに関しては、浸み出し防止性、隠蔽性が不十分であることが分かった。シリコーンオイルの場合は、上記の脂肪酸エステルや炭化水素重合体に比べると良好な浸み出し防止性を示すが、フィルムの配向状態、孔径、空孔率などの空孔構造を特定の狭い範囲に制御しないと、第三成分を含む樹脂組成が同一であっても、大幅に浸み出し防止性が低下し、防漏性も不十分であることが分かっている。例えば、二軸方向に3.0倍×3.0倍に延伸したフィルムの場合、フィルムの配向状態が等方的になるため、空孔径の厚さ方向への液の連通性が高くなりすぎるばかりでなく、孔径が大きくなりすぎるので、浸み出し防止性は不十分である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる状況に鑑み、透気性、透湿性などに優れ、優れた液に対する防漏性、浸み出し防止性能、良好な隠蔽性を発揮し、接着部の遮蔽性が良好な多孔性フィルム、およびその製造方法を提供することを目的として、鋭意検討した結果本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明では、ポリオレフィン系樹脂{(A)成分}、充填剤{(B)成分}、および、ひまし油{(C1)成分}とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}との混合物{(C)成分}のそれぞれを少なくとも含む樹脂組成物を、溶融・混練してフィルム状に成形し、得られたフィルムを室温〜樹脂の軟化温度の範囲において、一軸方向にのみ1.2〜5倍延伸された多孔性フィルムあって、最大孔径が0.05〜0.3μm、空孔率が10〜40%、曲折率が0.4〜4.0であり、温度を200℃としたシリコーンオイル中に60秒間浸漬した際の収縮率が、収縮の小さい方向が−5%〜−40%(膨張率として5〜40%)、収縮の大きい方向が40%〜95%であることを特徴とする多孔性フィルムを提供する。
【0011】
また、第2発明では、メルトインデックス0.1〜8g/10分、密度0.89〜0.950g/cm3の線型低密度ポリエチレン30〜100重量%と、メルトインデックス0.1〜8g/10分、密度0.900〜0.930g/cm3の分岐状低密度ポリエチレン0〜70重量%との混合ポリエチレン系樹脂{(A)成分}25〜50重量部、平均粒径が0.5〜3.0μmの無機充填剤{(B)成分}75〜50重量部を含み、かつ、{(A)成分}と{(B)成分}の2成分100重量部に対して、ひまし油{(C1)成分}とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}との混合物{(C)成分}0.1〜10重量部、を少なくとも含む樹脂組成物を溶融・混練してフィルム状に成形し、得られたフィルムを室温〜樹脂の軟化温度の範囲で、一軸方向にのみ1.2〜5倍延伸することを特徴とする多孔性フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る多孔性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂{以下、(A)成分と略称することがある}を基体とした樹脂組成物から製造される。本発明においてポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテンなどのモノオレフィン類の重合体、および共重合体を主成分とするものを言う。具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線型(または直鎖状、以下「線型」と記載する。)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびこれらの混合物が挙げられる。中でも、線型低密度ポリエチレンがしなやかで強靱であることから、特に好ましい。
【0013】
線型低密度ポリエチレンは、分岐状低密度ポリエチレンとを混合して用いるのが好ましい。線型低密度ポリエチレンは、炭素数が3〜8個の分子骨格であるα−オレフィンとエチレンとの共重合体である。好ましい線型低密度ポリエチレンは、密度が0.890〜0.950g/cm3、メルトインデックス(MI)が0.1〜8g/10分の範囲のものである。密度が0.890g/cm3未満であると、フィルムを製造する際の均一延伸性が低下し、0.950g/cm3を超えると延伸フィルムのソフト感が損なわれ、いずれも好ましくない。また、メルトインデックスが0.1g/10分未満になると、フィルムを製造する際に異常流動が起こり、厚さの均一なフィルムが製造し難くなり、8g/10分を超えると均一延伸性が悪化し、いずれも好ましくない。
【0014】
分岐状低密度ポリエチレンは、エチレンを従来から知られている高圧法での重合によって得られるもので、メルトインデックスが0.1〜8g/10分、密度が0.90〜0.930g/cm3のものである。メルトインデックスが0.1g/10分未満であると、上記線型低密度ポリエチレンと混合し難くなり、2g/10分を超えると、均一厚さのフィルムが得られなくなり、いずれも好ましくない。また、密度が0.930を超えると、均一厚さのフィルムの製造が困難となる。
【0015】
線状低密度ポリエチレンは、分岐状低密度ポリエチレンと混合物してを使用する場合は、線型低密度ポリエチレン30〜100重量%、分岐状低密度ポリエチレン0〜70重量%の割合で組み合わせるのが好ましい。線型低密度ポリエチレンが30重量%未満であると、溶融状態でのフィルムの伸びがなくなり、フィルムに加工することが難しなり、好ましくない。上記の範囲で特に好ましいのは、線型低密度ポリエチレン70〜98重量%、分岐状低密度ポリエチレン2〜30重量%の範囲の混合物であり、とりわけ好ましいのは線型低密度ポリエチレン70〜96重量%、分岐状低密度ポリエチレン4〜30重量%の範囲の混合物である。
【0016】
上記のポリオレフィン系樹脂には、フィルムに柔軟性を付与する目的で、さらにエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などのアイオノマーや、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−ブチレンゴム(EBM)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体(EPDM)などのオレフィン系エラストマーや、エチレン・ビニルアルコール共重合体などを混合することができる。
【0017】
(A)成分には、充填剤{以下、(B)成分と略称することがある}を配合する。(B)成分は、樹脂組成物からフィルムを製造する際に、フィルムに空孔を形成し多孔性として透湿性を付与し、人尿、経血の浸み出しを防止するように機能する。(B)成分は、無機系充填剤、有機系充填剤のいずれであってもよい。無機系充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ、タルクなどが挙げられる。有機系充填剤の具体例としては、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末が挙げられる。これらのうち、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムが特に好ましい。
【0018】
(B)成分の平均粒径は、浸み出し防止性に極めて大きな影響があり、平均粒径は0.5〜3.0μmの範囲のものとする。平均粒径が0.5μm未満であると、フィルムに空孔が形成され難く、透気性、透湿性が不十分となり、3.0μmを超えると空孔が大きくなり過ぎて、人尿、経血の浸み出し量が多くなり、いずれも好ましくない。(B)成分は、(A)成分との分散性を向上させるために表面処理が施されたものが好ましい。表面処理剤は、(B)成分の表面を被覆することにより、凝集を防止し、その表面を疎水化できるものが好ましく、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸またはそれらの金属塩などを挙げることができる。なお、(B)成分の平均粒径は、恒圧式透過法により測定した比表面積(島津式粉体比表面積測定器、型式:SS−100を使用して測定)から算出した値を意味する。
【0019】
(A)成分には、(B)成分の他にさらに、ひまし油{(C1)成分}とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}との混合物{以下、(C)成分と略称することがある}を配合する。(C)成分は、多孔性フィルムを製造する際の加工性を改良し、多孔性フィルムの撥水性を向上させ、多孔性フィルムに接着テープとの接着性、良好な浸み出し防止性、遮蔽性などを付与する。
【0020】
(C1)成分は、トウゴマの種子から得られる天然の不乾性油を精製、脱水、水素添化などの操作によってえられた誘導品を総称し、精製ひまし油、脱水ひまし油、重合脱水ひまし油、吸込みひまし油、などの常温で液状を呈するひまし油、硬化ひまし油などの常温で固体のものも挙げられる。中でも、硬化ひまし油が好適である。ひまし油は、脱水縮重合などの合成により得られた脂肪酸グリセリドなどの脂肪酸モノ、またはポリエステルなどに比べると、天然の化合物の状態で存在し、分子内の水酸基などの官能基による水素結合や、または、その結合に起因する結晶構造の影響により、他の油類、一部を除く有機溶媒全般に対して、低い親和性を示し、この性質がシロキサン結合を骨格とするシリコーン類(C2)と組み合わされて、良好な接着性と遮蔽性、優れた浸み出し防止性などを発揮する。
【0021】
(C2)成分としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジンなどが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル)、ポリメチルフェニルシロキサン、環状ジメチルポリシロキサンのようなシロキサン構造とアルキル基のみで構成されるものや、アルキル基が各種の官能基で変性されたエポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メチルスチリルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メルカプトシリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性オイル類、メチルアルコキシ変性シリコーンオイル類などが挙げられる。
【0022】
また、シリコーンレジンとしては、通常のジメチルポリシロキサンの他に、トリメチルシロキシケイ酸のポリマー、またゴム状のシリコーンゴムとしては、加熱架橋(HTV)のミラブルゴム、液状ゴム、室温硬化(RTV)の液状ゴムなどが挙げられる。また、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体などのシロキサンシロキサン構造を有するモノマー同士の共重合体やエチレン・プロピレンゴムを特殊なポリオルガノシロキサンで変性した変性シリコーンゴム(SEP)なども挙げられる。
【0023】
多孔性フィルム製造用の樹脂組成物は、(A)成分25〜50重量部、(B)成分75〜50重量部を含み、かつ、(A)成分と(B)成分の2成分100重量部に対して、(C)成分0.1〜10重量部をそれぞれ少なくとも含むものが好ましい。(A)成分と(B)成分とを組み合わせる際、(B)成分が50重量部未満であると、(A)成分と(B)成分との界面が剥離してできる隣接した空孔(ボイド)同士が連通しなくなり、好ましい通気性が得られなくなる。また、75重量部を超えると、フィルムの延伸時の伸びがなくなり、延伸が困難になり好ましくない。
【0024】
(C)成分は、前記のとおり、ひまし油(C1)およびシロキサン結合を骨格とするシリコーン類(C2)の混合物で構成される。(C)成分の添加量は、フィルム製造時の延伸性、厚さの均一性、風合い、後加工性、風合い、防水性、親水性、液体に対する浸み出し防止性、接着テープとの接着性、隠蔽性などに影響を及ぼす。ひまし油(C1)の添加量が多すぎると、多孔性フィルムが硬くなり過ぎ、風合いが悪くなり、厚さの均一性も悪くなる。ひまし油(C1)の添加量が少ないと、接着剤層または粘着剤層の低分子成分に対する多孔性フィルムの濡れ性が向上し、低分子成分が多孔性フィルムの空孔内に移行し、接着強度が低下、多孔性フィルムが透明化して遮蔽性が低下する。
【0025】
また、シロキサン結合を骨格とするシリコーン類(C2)の添加量が多すぎると、多孔性フィルムから接着剤層または粘着剤層の低分子成分に対する多孔性フィルムの濡れ性が向上し、低分子成分が多孔性フィルムの空孔内に移行し、接着強度が低下、多孔性フィルムが透明化して遮蔽性が低下する。シロキサン結合を骨格とするシリコーン類(C2)の添加量が少ないと、多孔性フィルムの表面の撥水性が低下し、十分な親水性液体の浸み出し防止性が得られず、さらに多孔性フィルムの柔軟性が損なわれ、多孔性フィルムの透明性も若干高くなり、ナプキンのバックシートなどに使用した場合、吸湿(水)性素材に吸収された経血がバックシートシートを通して透けて見えるようになり、好ましくない。
【0026】
上記の状況を勘案すると、(C)成分の添加量は上記範囲が好ましい。(A)成分と(B)成分の2成分100重量部に対して、0.1重量部未満であると、樹脂組成物から製造される多孔性フィルムに、十分な浸み出し防止性、遮蔽性などを付与することができず、10重量部を超えると多孔性フィルムの生産性が低下し、いずれも好ましくない。特に好ましい範囲は、0.5〜5重量部である。
【0027】
(C)成分を構成するひまし油(C1)とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類(C2)の割合は、(C1)/(C2)を重量比で0.3〜3.0の範囲とするのが好ましい。(C1)と(C2)の合計量が同じであっても、ひまし油(C1)の割合が少ないと、接着剤層または粘着剤層への移行による接着性、遮蔽性が十分でない傾向があり、逆に多くなり過ぎると、浸み出し防止性、多孔性フィルムの隠蔽性が低下する傾向がある。
【0028】
多孔性フィルム製造用の樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分および(C)成分の3成分を少なくとも含み、これらの他に従来から知られている各種の樹脂添加剤、例えば、加工助剤{以下、(D)成分と略称することがある}、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤などを配合することができる。これら各種の樹脂添加剤の配合量は、上記樹脂組成物100重量部に対し、5重量部以下とするのが好ましく、一種類でもよいし、複数を組み合わせて配合してもよい。
【0029】
加工助剤{(D)成分}としては、アミド化合物、側鎖を有する炭化水素化合物、鉱油、ワックス類などが挙げられる。アミド化合物は、アミンとカルボン酸からなる構造のモノまたはポリアミド化合物であれば特に制限はなく、アミノ基およびカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、アミド基の形で封鎖された化合物のいずれでもよい。具体的には、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、トリメチレンビスオクチル酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、トリオクタトリメリット酸アミド、ジステアリル尿素、ブチレンビスステアリン酸アミド、キシリレンビスステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルフタル酸アミド、ジステアリルオクタデカ二酸アミド、イプシロンカプロラクタム、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0030】
側鎖を有する炭化水素重合体としては、ポリα−オレフィン類で、炭素数4以上の側鎖を有する通常オリゴマーに分類されるものが好ましい。具体的には、エチレン−プロピレンの共重合体やそのマレイン酸誘導体(例えば、三井石油化学工業社製、商品名:ルーカント)、イソブチレンの重合体(例えば、出光石油化学工業社製、商品名:ポリブテンHV−100)、ブタジエン、イソプレンのオリゴマーおよびその水添物、1−ヘキセンの重合物、ポリスチレンの重合物およびこれらから誘導される誘導体、ヒドロキシポリブタジエンやその水添物、末端ヒドロキシポリブタジエン水添物(三菱化学製、商品名:ポリテールHA)、などが挙げられる。鉱油としては、流動パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0031】
多孔性フィルム製造用の樹脂組成物を調製するには、次のいずれかの方法によることができる。(1)まず、(A)成分、(B)成分および(C)成分と、さらに要すれば(D)成分などの他の樹脂添加剤を各々所定量秤量し、各成分をドラムタンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機によって混合物とする。ついで、一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの混練機によって溶融・混練し、ペレット化する方法。(2)(A)成分と(C)成分とをあらかじめ混合しておき、これに(B)成分とさらに要すれば(D)成分などの他の樹脂添加剤を混合・混練する方法。なお、各成分の混合物をペレット化しないで、混合物から本発明に係る多孔性フィルムを直接製造することもできる。
【0032】
上記樹脂組成物から多孔性フィルムを製造するには、上記の方法で調製したペレットまたは混合物を、押出機で溶融・混練してフィルム化する。フィルム化するには、従来から知られている方法、例えばインフレーション法、Tダイ法などによって未延伸フィルムを製造し、引き続き一方向にのみ、すなわち縦方向(フィルム引き取り方向、MD)にのみ延伸したフィルムとする。延伸倍率は、1.2〜5.0倍が好ましい。なお、縦方向にのみ延伸すると、MDと直角の方向(フィルム横方向、CD)に積極的に延伸しなくても、CDに若干、例えば1.1倍程度延伸されるのを排除するものではなく、本発明の第2発明に含まれる。
【0033】
未延伸フィルムを延伸する際には、従来から知られている方法、例えば、ロール法、テンター法、チューブラー法などによればよい。延伸するには、室温ないし(A)成分の軟化点(JIS−K6760に準拠して測定される値)の範囲で、少なくとも一軸方向に延伸を行い、フィルム内で(A)成分と(B)成分との界面を剥離させ、多孔質フィルムとする。延伸は、一段(同時)延伸方式、二段以上の多段(逐次)延伸方式のいずれであってもよい。
【0034】
多孔性フィルムの厚さは、特に制限はないが、10〜200μmの範囲のものが好ましい。厚さが10μm未満であると、多孔性フィルムの強度が不十分で後加工する際に破れ易くなり、200μmを越えると、多孔性フィルムが硬くなり、布のようなソフト感、良好な風合いのものが得られない。
【0035】
多孔性フィルムは、空孔の最大孔径が0.05〜0.3μmのものが好ましい。空孔は、多孔性フィルムをオムツなどのバックシートとして使用した際に、多孔性フィルムが吸湿(水)性素材に吸収された液体をオムツの外部に漏らさず、湿気のみを通すように機能する。空孔は、未延伸フィルムを延伸することにより、(A)成分と(B)成分との界面が剥離して形成される。
【0036】
多孔性フィルムは、空孔率が10〜40%の範囲が好ましい。空孔率が10%未満であると、多孔性フィルムの通気性、透湿性が不十分で、40%を越えると、親水性、液体の浸み出し防止性が不十分であり、いずれも好ましくない。
【0037】
多孔性フィルムは、曲折率Wが0.4〜4.0の範囲が好ましい。ここで曲折率Wとは、多孔性フィルムの空孔が管状モデルとなっていると仮定した場合、どれだけ曲がっているかという孔の厚さ方向の連通性の指標であり、この値が小さいと厚さ方向の流路長が短いことを意味し、この値が大きいと流路長が長いことを意味する。この曲折率Wは、次式により算出される。すなわち、曲折率W(sec/100cc)={透気度(sec/100cc)×空孔率×ピーク孔径(μm)}/膜厚(μm)。曲折率Wが0.4未満であると、厚さ方向の流路長が短く、人尿、経血の漏れが生じ易く、また4.0を越えると、透気性、透湿性が著しく低下し、多孔性フィルムを使い捨てナプキンなどの用途に使用した場合、肌の蒸れなどが発生し易く、ともに好ましくない。
【0038】
多孔性フィルムの配向状態は、温度200℃としたシリコーンオイル中に60秒間浸漬した際の収縮率で評価することができる。空孔の配向状態を制御することは、人尿、血液などの体液の浸み出し防止性と、透湿性(水蒸気透過性)、透気性(空気透過性)を両立させるのに極めて重要である。温度200℃としたシリコーンオイル中に60秒間浸漬した際の収縮率が、収縮が小さい方向が−5%〜−40%(膨張率として5%〜40%)、収縮が大きい方向の収縮率が40%〜95%であることが必要である。収縮が小さい方向とは、延伸倍率の小さいCD方向を意味し、収縮が大きい方向とは、延伸倍率の大きいMD方向を意味する。上記の加熱条件で多孔性フィルムが、収縮が大きい方向が40%〜95%、収縮が小さい方向が−5%〜−40%(膨張率として5%〜40%)であると、浸み出し防止性、透湿性または透気性ともに良好となる。
【0039】
多孔性フィルムの空孔の最大孔径、平均孔径、ピーク孔径、空孔率、加熱収縮率、厚さ、曲折率Wなどは、(A)成分の種類、配合割合、(B)成分の種類、平均粒径、配合割合、(C)成分の種類、配合割合、フィルム製造時の温度条件、延伸倍率、延伸温度などを選ぶことによって容易に調節することができる。
【0040】
本発明に係る多孔性フィルムは、適度の透気性、透湿性、接着剤成分の移行に関する遮蔽性、良好な浸み出し防止特性、隠蔽性、柔軟性を有する。そのため、使い捨て紙オムツ、体液吸収用パット、ベッドシーツなどの衛生材料、手術衣、温湿布用基材などの医療用材料、ジャンパー、雨着などの衣料用材料、壁紙、屋根防水材などの建築用材料、乾燥剤、防湿剤、脱酸素剤、使い捨てカイロ、鮮度保持包装、食品包装などの包装材、電池用セパレーターなどの産業用資材として極めて好適に使用できる。
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下に記載の例に限定されるものではない。
【0042】
以下に記載の例おいて使用した各成分は、表−1に略称で記載したが、略称で記載したものの詳細は次のとおりである。
(1)FW20G:(A)成分であって、密度が0.921g/cm3、MIが1g/10分の線型低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、商品名:FW20G)である。
(2)LF441:(A)成分であって、密度が0.919g/cm3、MIが2g/10分の分岐状低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、商品名:LF441)である。
【0043】
(3)HC−WX:(C1)成分の硬化ひまし油(豊国製油社製、商品名:カスターワックスHC−WX)である。
(4)DCO:(C1)成分の脱水ひまし油(豊国製油社製、商品名:DCO)である。
(5)TSF451−3000:(C2)成分としてのシリコーンオイル(東芝GEシリコーン社製、商品名:ジメチルシリコンTSF451−3000)である。
(6)HIVAC F−5:(C2)成分としてのシリコーンオイル(信越シリコーン社製、商品名:メチルフェニルシリコーンオイルHIVAC F−5)である。
【0044】
(7)KF861:(C2)成分としてのシリコーンオイル(信越シリコーン社製、商品名:アミノ変性シリコーンオイルKF861)である。
(8)B3000:(D)成分としてのポリブタジエン(日本曹達社製、商品名:B3000)である。
(9)J−4081:(D)成分としてのテトラグリセリンステアレート(理研ビタミン社製、商品名:ポエムJ−4081)である。
(10)S−95:(D)成分としてのグリセリントリ・ジステアレート(理研ビタミン社製、商品名:ポエムS−95)である。
【0045】
以下に記載の例において、各種物性は以下に記載の方法で評価したものである。
(a)平均粒径(μm):(B)成分につき、恒圧式透過法(島津式粉体比表面積測定器SS−100使用)により、測定した比表面積から算出した。試料の重量を3.0g、試料を厚さ1.35cmとし、試料層の断面積を2cm2、空気圧力を50cmH2Oの条件下で測定し、空気の粘性係数を181×10-6g/(cm・sec)として計算した。
(b)収縮率(%):試料の多孔性フィルムを用い、フィルム引き取り方向(MD)とMDに対して直角方向(TD)を示すように線を描き、直径10cmの円形状に打ち抜き、200℃の温度に調節したシリコーンオイルに侵漬し、最大(MAX)収縮率と最小(MIN)収縮率(膨張率)とを測定した。マイナス記号(−)は、膨張率を意味する。
【0046】
(c)最大孔径、ピーク孔径(μm):コールター社製のポロメーターを使用し、JIS−K3832に準拠して測定した。最大孔径は、測定した孔径分布において、大孔径側の分布の端で、孔径=0から立ち上るポイントの孔径である。ピーク孔径は、測定した孔径分布において、最も単位面積当たりの孔数が多い部位での孔径であり、多孔性フィルムでは、ほぼ平均孔径に近似する。
(d)空孔率(%):多孔性フィルムから10cm角の試料を切り取り、その重量w(g)と厚さt(μm)を計測し、樹脂組成物の比重ρ(g/cm3)から、次式、すなわち、空孔率(%)=[1−{w/(10×10×0.0001×ρ)}]×100、から算出した。
【0047】
(e)曲折率W(sec/100cc):次式、{透気度(sec/100cc)×空孔率(%)×ピーク孔径(μm)/多孔性フィルムの厚さ(μm)}、によって算出した。
(f)透気度(sec/50cc):JIS−P8117に準拠し測定した。透気度は、数値が小さいほど空気を通過させ易いことを意味する。
(g)浸み出しテスト(g):試料の多孔性フィルム上にコットンを置き、その上から試験液(Aerosol−OTの0.01重量%水溶液)を3cc滴下し、コットンに接触するように、直径60mmで重量2000gの分銅を載せて、荷重を加え、20分間放置した後、あらかじめ、多孔性フィルムの下に敷いてあった濾紙の重量増加分を測定し、多孔性フィルムを通過して、浸み出した試験液の量を測定する方法。浸み出し量は、少ないほど好ましい。
【0048】
(h)全光線透過率(%):ヘーズメーター(日本電色社製、型式:NDH−200)を使用し、JIS-K7105に準拠して測定した。
(i)フィルム外観:試料の多孔性フィルムの均一延伸性を、目視観察して評価した。判定基準は、延伸ムラ殆ど認められないものを○、延伸ムラ認められるものを△、延伸ムラ著しく認められるものを×とした。
(j)経時の接着強度(g/25mm幅):多孔性フィルムの片面に、幅25mmの両面粘着テープ(コクヨ社製、商品名:コクヨT−225)の片面を貼付して試料とし、この試料を40℃、75%の恒温高湿中に1週間放置した後、室温に戻し、残りの剥離紙を剥がし、剥がした面にガーゼを貼りあわせて、テンシロン引張試験機によって、粘着面からガーゼを剥がす際の剥離応力を、JIS-Z0237に規定される180度引き剥がし法によって測定した。
【0049】
(k)遮蔽性(%):ヘーズメーター(日本電色社製、型式:NDH−200)を使用し、JIS−K7105に準拠して全光線透過率T1とT2を測定し、T1とT2の差(T1−T2)を意味する。T1は、試料の多孔性フィルムの片表面に、幅25mmの両面粘着テープ(コクヨ社製、商品名:コクヨT−225)の片面を貼付し、引き続き残りの剥離紙をはがして測定した全光線透過率である。T2は、試料の多孔性フィルムの片表面に、幅25mm両面粘着テープ(コクヨ社製、商品名:コクヨT−225)の片面を貼付し、この試料を40℃、75%の恒温高湿中に1週間放置した後、室温に戻し、残りの剥離紙をはがした全光線透過率である。この値は、小さい方が好ましい。
【0050】
[実施例1]
(A)成分としてのFW20Gを30.0重量部、LF441を5.0重量部、平均粒径が1.2μmの炭酸カルシウムを63.0重量部、HC−WXを2重量部、TFS451−3000を2重量部それぞれ秤量し、タンブラーミキサーによって混合した後、シリンダー温度を220℃に設定したタンデム型混練押出機によって、溶融・混練してペレット化した。このペレットを、Tダイを装着した押出成形機によって、シリンダー温度を200℃に設定して溶融して無延伸フィルムを製造した。この無延伸フィルムを、60℃に加熱したロールと延伸ロールとの間で、引き取り方向に延伸倍率2.0倍に一軸延伸し、厚さ25μmの多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−1に示した。
【0051】
[実施例2]
実施例1に記載の例において、(A)成分としてのFW20Gを28.5重量部、LF441を7.0重量部に変更し、(C)成分をDCO1.5重量部と、HIVACF−5を1.4重量部との混合物に変更した他は、同例におけると同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−1に示した。
【0052】
[実施例3]
実施例1に記載の例において、(C)成分をHC−WX3重量部と、KF861を1重量部との混合物に変更した他は、同例におけると同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−1に示した。
【0053】
[比較例1]
実施例1に記載の例において、(C1)成分をなくし、(C2)成分をTFS451−3000を4重量部に変更した他は、同例におけると同様の手順でペレット化し、同例に記載したと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−1に示した。
【0054】
[比較例2]
実施例2に記載の例において、(C2)成分をなくし、(C1)成分のHC−WXを4.5重量部に変更した他は、同例におけると同様の手順でペレット化し、同例に記載したと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−1に示した。
【0055】
[比較例3]
実施例1に記載の例において、(C1)成分のHC−WXを2重量部、(D)成分のB−3000を4重量部の混合物に変更した他は、同例におけると同様の手順でペレット化し、同例に記載したのと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−1に示した。
【0056】
[比較例4]
実施例1に記載の例において、(C1)成分のHC−WXを2重量部、(D)成分のJ−4081を2重量部の混合物に変更した他は、同例におけると同様の手順でペレット化し、同例に記載したと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0057】
[比較例5]
実施例1に記載の例において、(C2)成分のTSF451−3000を2重量部と、S−95を2重量部の混合物に変更した他は、同例に記載したのと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0058】
[比較例6]
実施例1に記載の例において、同例に記載したのと同様の手順でペレット化し、このペレットから、同例におけると同様の手順で無延伸フィルムを製造した。この無延伸フィルムを60℃に加熱したロールと延伸ロールとの間で、引き取り方向に延伸倍率1.3倍延伸したあと、テンター式延伸機で引き取り方向に直角方向に1.2倍延伸した。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0059】
[比較例7]
実施例1に記載の例において、延伸倍率を5.2に代えた他は、同例に記載したのと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0060】
[比較例8]
実施例1に記載の例において、延伸倍率を1.1に代えた他は、同例に記載したのと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0061】
[比較例9]
比較例8に記載の例において、(B)成分を平均粒径が3.6μmの炭酸カルシウムにえた他は、同例に記載したのと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0062】
[比較例10]
比較例9に記載の例において、延伸倍率を2.0に代えた他は、同例に記載したのと同様の手順で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて各種物性を評価し、測定結果を表−2に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表−1および表−2より、次のことが明らかとなる。
(1)(A)成分、(B)成分、および(C)成分を2種類{(C1)および(C2)}を含み、収縮率が請求項1の要件を満たす多孔性フィルムは、透気度、浸み出し防止性、隠蔽性および接着部の隠蔽性などが優れている(実施例1〜実施例3参照)。
(2)これに対して、(A)成分と(B)成分を含み、(C)成分のうち(C1)成分を含まず(C2)成分を多く含むものは、経時の接着強度が低く、遮蔽性にも劣る(比較例1参照)。
【0066】
(3)また、(C)成分のうち(C1)のみを多く含み(C2)成分を含まないフィルムは、浸み出し防止性と外観が劣る(比較例2〜比較例4参照)。また、(C2)と他の(D)成分とを組み合わせても、(C1)を含まないフィルムは、経時の接着性、隠蔽性が劣る(比較例5参照)。
(4)二軸延伸したフィルムは延伸倍率が小さくても、収縮率が請求項1の要件を満たさず、最大孔径が好ましい範囲外であり、浸み出し量が多い(比較例6参照)。
(5)(A)成分、(B)成分、および(C)成分を2種類{(C1)および(C2)}を含んでいても、延伸倍率が好ましい範囲より大きいフィルムは、熱収縮性が好ましい範囲外となり、空孔率が好ましい範囲より大きくなり、透気度が低く、経時の接着強度が極端に劣る(比較例7参照)。
【0067】
(6)(A)成分、(B)成分、および(C)成分を2種類{(C1)および(C2)}を含んでいても、延伸倍率が好ましい範囲より小さいフィルムは、熱収縮性が好ましい範囲外となり、空孔率、曲折率Wが好ましい範囲より小さいので、通気性が劣る(比較例8参照)。
(7)(B)成分が請求項1で規定する範囲より大きい平均粒径のものを配合し、好ましい範囲より小さい倍率で延伸したフィルムは、熱収縮性が好ましい範囲外となり、空孔率が小さく、浸み出し防止性、隠蔽性が劣る(比較例9参照)。
(8)(B)成分が請求項1で規定する範囲より大きい平均粒径のものを配合し、好ましい倍率で延伸したフィルムは、透気度が極端に大きくなり好ましくない(比較例10参照)。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る多孔性フィルムは、染み出し防止性、通気性、接着性、遮蔽性、隠蔽性の優れた多孔性フィルムである。
2.本発明に係る多孔性フィルムは、染み出し防止性、通気性、接着性、遮蔽性、隠蔽性の優れ、下着または他の部材との接着部の粘着剤の染み込みによって透明化し難く、外観も隠蔽性も高いので、人尿や血液が漏れ難く、紙おむつ、ナプキンのなどの吸湿(水)性素材を包む透湿性バックシートとしての用途に好適である。
3.本発明に係る多孔性フィルムの製造方法によれば、透湿度、浸み出し防止性、隠蔽性、および接着部の隠蔽性などが優れた多孔性フィルムを、安定的に製造することができる。
Claims (9)
- ポリオレフィン系樹脂{(A)成分}、充填剤{(B)成分}、および、ひまし油{(C1)成分}とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}との混合物{(C)成分}のそれぞれを少なくとも含む樹脂組成物を、溶融・混練してフィルム状に成形し、得られたフィルムを室温〜樹脂の軟化温度の範囲において、一軸方向にのみ1.2〜5倍延伸された多孔性フィルムあって、最大孔径が0.05〜0.3μm、空孔率が10〜40%、曲折率が0.4〜4.0であり、温度を200℃としたシリコーンオイル中に60秒間浸漬した際の収縮率が、収縮の小さい方向が−5%〜−40%(膨張率として5〜40%)、収縮の大きい方向が40%〜95%であることを特徴とする多孔性フィルム。
- 樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂{(A)成分}25〜50重量部、充填剤{(B)成分}75〜50重量部を含み、かつ、{(A)成分}と{(B)成分}の2成分100重量部に対して、ひまし油{(C1)成分}とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}との混合物{(C)成分}0.1〜10重量部のそれぞれを少なくとも含むものである、請求項1に記載の多孔性フィルム。
- ポリオレフィン系樹脂{(A)成分}が、メルトインデックス0.1〜8g/10分、密度0.89〜0.950g/cm3の線型低密度ポリエチレン30〜100重量%と、メルトインデックス0.1〜8g/10分、密度0.900〜0.930g/cm3の分岐状低密度ポリエチレン0〜70重量%との混合物である、請求項1または請求項2に記載の多孔性フィルム。
- ひまし油{(C1)成分}が硬化ひまし油であり、シロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}がシリコーンオイルである、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の多孔性フィルム。
- シリコーンオイルが、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーン)である、請求項4に記載の多孔性フィルム。
- 多孔性フィルムが、厚さが10〜200μmである、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の多孔性フィルム。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の多孔性フィルムを、構成要素とする使い捨てナプキン用バックシート。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の多孔性フィルムを、構成要素とする使い捨てオムツ用バックシート。
- メルトインデックス0.1〜8g/10分、密度0.89〜0.950g/cm3の線型低密度ポリエチレン30〜100重量%と、メルトインデックス0.1〜8g/10分、密度0.900〜0.930g/cm3の分岐状低密度ポリエチレン0〜70重量%との混合ポリエチレン系樹脂{(A)成分}25〜50重量部、平均粒径が0.5〜3.0μmの無機充填剤{(B)成分}75〜50重量部を含み、かつ、{(A)成分}と{(B)成分}の2成分100重量部に対して、ひまし油{(C1)成分}とシロキサン結合を骨格とするシリコーン類{(C2)成分}との混合物{(C)成分}0.1〜10重量部、を少なくとも含む樹脂組成物を溶融・混練してフィルム状に成形し、得られたフィルムを室温〜樹脂の軟化温度の範囲で、一軸方向にのみ1.2〜5倍延伸することを特徴とする多孔性フィルムの製造方法。
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