JP4073702B2 - シート型表示装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、たとえば色と帯電特性との双方が異なる回転粒子を電界の印加により、泳動、回転、停止等して像を表示するシート型表示装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子ペーパ、ペーパーライクディスプレイ、デジタルペーパなどと呼ばれ、電界により光学的吸収や光学的反射を変化させて像表示を行う表示装置が提案されている。
【0003】
電界により光学的吸収や光学的反射が変化する素子としては、色と電気的特性との双方が異なる半球を合わせた回転粒子を絶縁性液体とともに内包したマイクロカプセル、特開平第01−086116号公報に記載されたように電気泳動粒子を分散させた溶媒を着色し、この溶媒を内包したマイクロカプセル、2色性色素とスメクチック液晶とを含む液晶/高分子複合膜などがある。
【0004】
これらの方法は、メモリ性を有し、電源が無くても像情報を保持でき、反射型表示装置であるため、紙の代替として期待されている。
【0005】
また素子を電極のあるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等上に塗布すればよいので、薄くて、軽く、曲げることが可能なシート型表示装置である。
【0006】
特に、米国特許第4,126,854号および第4,143,103号の各明細書に記載されている、回転粒子の半球ずつを異なる色と帯電特性とに分けたものを用いる表示媒体は、他の方式に比べ、優れたコントラスト特性を示すディスプレイとして知られている。
【0007】
この表示媒体は、図1に示すように、誘電性液体を充填した空隙2を複数有し、かつ光学的に透明な層である基材3と、この空隙に回転粒子1とを有する構造をしている。また、回転粒子は、1粒子中に異なる色と異なる帯電特性の2つの領域を有するため、電界を印加すると、図2に示すように、基材であるゴム中の空隙(絶縁性液体)内にある2色粒子の電気泳動と回転運動とが起き、像表示を行うことができる。
【0008】
図2中、(a)は電界印加前の粒子、(b)は、電界の印加により回転しつつある粒子、(c)は、電界の印加により回転し終えた粒子を示している。
【0009】
この回転粒子の製造方法および材料としては、(1)米国特許第5,262,098号に記載されているように、材料として、カルナバワックス、カーボンブラック、ニ酸化チタンを使用し、色の異なる2種類の溶融したワックス粒子を結合させ、表面張力により球形化したのち固化させる方法、(2)特開平第11−85067号公報、特開平第11−85068号公報に記載の、ガラス、樹脂などの粒子の表面に、金属、カーボンブラック、硫化アンチモンなどを蒸着する方法、(3)特開平第11−85069号公報、特開平第11−161206号公報に記載の、材料として酸化亜鉛を、発色剤としてトナーを使用する感光材料からなる粒子を用い、露光、現像、定着処理により発色させる方法、たとえば親水性高分子に発色剤としてハロゲン化銀を添加したものなどが提案されている。
【0010】
また、たとえば樹脂を用いた場合には、ローラやプレス機により2色の着色樹脂を貼り合わせた圧延シートを作製したのち粉砕し、熱風による加熱処理により、粒子を製造する方法が特開平第01−282589号公報で提案されている。
【0011】
前述の方法により作製した粒子を誘電性液体とともにバインダ(基材)に封入することで、表示装置を形成する。これには、(1)米国特許第4,143,103号に記載の硬化前のゴムに2色粒子を分散、硬化したのち、オイルによりゴムを膨潤する方法、(2)「A Newly Developed Electrical Twisting Ball Display」,M.Saitoh et. al.: Proc. of SID,Vol23/4.1982に記載の、2色粒子をトルエン可溶性の樹脂で被覆し、ポリビニルアルコールに分散、硬化したのち、トルエンに浸す方法、(3)特開平第8−234686号公報に記載の、界面重合を用いて誘電性液体と2色粒子とを樹脂膜で覆い、マイクロカプセルを形成し、このマイクロカプセルを透明な樹脂中に分散する方法が挙げられる。
【0012】
(1)の方法は粒子を未硬化のゴムに分散し、加熱による硬化とオイルへの漬け込みだけで構成できるという利点がある。一方、(2)の方法では、揮発性のあるトルエンを使用することによる安全性、あるいは粒子を樹脂でコートする製造工程の増加が問題になる。また、(3)の方法はマイクロカプセルの製造効率の低さが問題である。
【0013】
なお、特許公報第2860790号では、空隙(キャビティ)の径を粒子の4倍以下とする方法が出願されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、膨潤させるためのオイルは、ある特定のものに限られることが多い。たとえば、粘度が低すぎる場合には、基材であるゴムが膨潤しすぎて、回転粒子相互の間隔が広がり、コントラストが低くなる。あるいは、オイルが揮発して、空隙が消失してしまうといった問題がある。
【0015】
また、粘度が高すぎる場合には、一般的にはゴムの膨潤は小さくなるものの、「ツイストボールディスプレイの表示球回転特性」,谷川他,:Japan Hardcopy 2000,論文集,P65に記載の粒子の回転の運動方程式から明らかなように、粘性抵抗が高くなり、応答速度が遅くなるといった問題がある。
【0016】
本願発明は、このような問題を解決し、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置の表示において、大きな応答速度と高いコントラストとの両立を実現する技術を提供することを目的としている。
【0017】
本願発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0018】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願発明の一態様によれば、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該オイルがフェニルメチルシリコーンオイルを含むシート型表示装置が提供される。
【0019】
このように、シリコーンゴムの膨潤に用いるオイルを最適化することで、シート型表示装置における表示の応答速度と相関のある粘性抵抗を低く保ったままで、回転粒子の相互間隔を小さく保ち、高いコントラストを実現できる。
【0020】
なお、前記オイルの粘度が、0.3mPa・s以下であることや前記シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であることが、大きな応答速度と高いコントラストとの両立を実現する上で好ましい。
【0021】
また、前記シリコーンゴムが、2液型シリコーンゴムであること、とりわけ、2液型付加タイプのシリコーンゴムであることが好ましい。表面から硬化反応が開始される1液型シリコーンゴムと異なり、層の全域で同時に硬化反応が開始されるため、一様な硬化品質を実現し易く、また、膨潤性と透明性との好ましい組み合わせが得られ、付加反応タイプでは副成物の生成がないからである。
【0022】
また、本願発明の他の一態様によれば、シリコーンゴム中に回転粒子を分散させ、その後オイルを当該シリコーンゴム中に含浸させることにより、当該回転粒子が当該オイルで充填された空隙中で、電界の作用により回転可能となるようにするシート型表示装置の製造方法において、当該オイルとしてフェニルメチルシリコーンを含む粘度が0.3mPa・s以下のオイルを使用するシート型表示装置の製造方法が提供される。
【0023】
前記オイルを使用した場合に前記シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であるように当該シリコーンゴムを選択することや、前記シリコーンゴムが、2液型シリコーンゴムであること、とりわけ、2液型付加タイプのシリコーンゴムであることが好ましい。
【0024】
このような方法により、表示の応答速度と相関のある粘性抵抗を低く保ったままで、回転粒子の相互間隔を小さく保ち、高いコントラストを持つシート型表示装置を製造することができる。
【0025】
なお、以下に説明する発明の実施の形態や図面の中で、本願発明の更なる特徴が明らかにされる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明の実施の形態を実施例等を使用して説明する。なお、これらの実施例等および説明は本願発明を例示するものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。本願発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本願発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0027】
また、以下の説明では、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置において、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子として、半球ずつに色分けされた2色粒子を使用して説明するが、本願発明に係る回転粒子は、上記本願発明の趣旨に従って、オイルに対し溶解、反応、膨潤等の相互作用がなく、泳動・回転を行うことができる限り、その他のどのような回転粒子であってもよい。たとえば多色粒子であってもよい。
【0028】
さらに、粒子の形状としては、通常真球に近いものが好ましいが、その他の形状を排除するものではない。
【0029】
シート型表示装置の具体的製造方法としては、たとえば米国特許第4,143,103号に、2色粒子を未硬化のエラストマー(2液型シリコーンゴム)に分散し、このエラストマーにシリコーンオイルを吸収させゴムを膨潤させる方法が提案されている。
【0030】
すなわち、2色粒子を未硬化の状態のシリコーンゴム中に分散し、このゴムをシート状に成形したのち、硬化させ、硬化させたゴムをシリコーンオイルに浸漬することで、ゴムを膨潤させ、2色粒子の回りに空隙を形成することができる。本願発明に係るシート型表示装置の製造に当たっては、本願発明の趣旨に反しない限りこのような公知の方法を利用することができる。
【0031】
本願発明に係る2色粒子の材料としては、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド等)、ワックス状物質(パラフィンワックス、カルナバワックス、オレフィンワックス等)などの公知の材料に、着色剤を混ぜたものを用いることができる。
【0032】
着色剤の具体例としては、白色顔料として、二酸化チタンをはじめ、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素などの公知の顔料を用いることができる。なお、白色度を高めるために、隠蔽率の高い粒径100〜300nmの二酸化チタンを用いるのが好ましい。
【0033】
また、黒色顔料としては、カーボンブラック、マグネタイト、アニリンブラック、あるいは銅、コバルト、鉄、マンガン、クロムなどからなる複合酸化物などの公知の顔料および染料を用いることができる。
【0034】
また、分散性の向上や樹脂の変色を防止するために、無機物、シラン化合物、樹脂などによる表面処理を顔料に施してもよい。
【0035】
なお、顔料、染料以外にも2色粒子の電気的特性を制御するためにリン酸三カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウムなどカルシウム塩を始めとする無機物を適宜混合してもよい。
【0036】
あるいは、白や黒以外の着色剤として、1)溶性アゾ系、モノアゾ系などのアゾ顔料、(2)フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリリン系、ペリノン系、イソインドリン系などの多環式顔料などがある。
【0037】
これら材料は、米国特許第5,262,098号に記載されているワックスジェット法や、特開平第01−282589号公報に記載されている、積層した樹脂を粉砕、溶融により球状にする方法など公知の方法により2色粒子とすることができる。
【0038】
このようなシート型表示装置に使用するシリコーンオイルについて種々検討したところ、従来用いられているジメチルシリコーンオイルに比べ、フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルを使用すると、シート型表示装置の表示において、大きな応答速度と高いコントラストとの両立が実現できることが判明した。
【0039】
これは、フェニルメチルシリコーンオイルを使用することそのものの効果であると共に、フェニルメチルシリコーンオイルでは、低粘性と低膨潤度との両立が可能であり、適切な粘度と膨潤度とのバランスが得られるためでもある。この粘度と膨潤度とのバランスには、フェニルメチルシリコーンオイルの表面張力が高いことも寄与しているものと推察されている。
【0040】
本願発明に係るフェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルとしては、フェニルメチルシリコーンオイル単独のものが好ましいが、フェニルメチルシリコーンオイルを使用することによる効果が確保される限り他の成分を共存していてもよい。
【0041】
フェニルメチルシリコーンオイルが主成分であること、具体的には90重量%以上であることが、好ましい態様の一つの目安となる。
【0042】
フェニルメチルシリコーンオイルとしては、たとえば、信越化学(株)の商品名KF56では、粘度が14.9×10−6Pa・sと小さく、かつ膨潤度を113%程度に抑制することができる。
【0043】
一方、ジメチルシリコーンオイルを用いると、たとえば(東レダウコーニングシリコーン(株)の商品名SH200−10cstの場合、粘度9.34×10−6Pa・sで膨潤度127%となり、SH200−20cstの場合、粘度19×10−6Pa・sで膨潤度117%となる。
【0044】
なお、フェニルメチルシリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルに対し、メチル基の一部がフェニル基に置換されたものである。
【0045】
フェニルメチルシリコーンオイルの製造方法や、フェニル基によるメチル基の置換の程度には種々のものがあるが、本願発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよい。
【0046】
なお、フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルの粘度が、0.3mPa・s以下であることが好ましい。フェニルメチルシリコーンオイルはシリコーンゴムの膨潤を低く抑え、これによって、2色粒子相互の間隔を小さく抑えることができるが、オイルの粘度が上記範囲を超えると、粒子の泳動・回転が遅くなり、表示の応答速度が不十分な場合があり得るからである。下限については、膨潤度が大きくなりすぎない限り、特に制限はない。
【0047】
2色粒子を充填した空隙を有する基材に使用する材料としての、本願発明に係るシリコーンゴムの製造方法には種々のものがあり、その硬化タイプとしては、1液タイプと2液タイプとの相違の他に、室温硬化型(RTV)、加熱硬化型等種々のものがあり、反応タイプとしては縮合タイプ、付加反応タイプ等種々のものがあるが、フェニルメチルシリコーンオイルにより膨潤し、2色粒子の周りに空隙が形成でき、本願発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよい。
【0048】
たとえば、2液型のシリコーンゴムの場合、ベースポリマー、架橋剤、硬化触媒を混合して、加熱あるいは室温に放置することで硬化させるのが通常の作製方法である。
【0049】
ただし、反応が均一に進む点で1液タイプより2液タイプの方が有用であり、副成物が発生しない点で、縮合タイプより付加反応タイプの方が有用である。副成物の存在による気泡の発生等の問題を回避できるからである。
【0050】
シリコーンゴムの膨潤度は120%以下であることが好ましい。この範囲を超えると、2色粒子相互の間隔が大きくなり、表示のコントラストが低下するからである。
【0051】
なお、この場合のシリコーンゴムの膨潤度は、使用するシリコーンオイル等の膨潤剤で測定する。具体的には後述する方法で測定した、浸漬前における体積に対する浸漬後の体積の比を%表示したものが、本願発明に係る膨潤度である。
【0052】
上記のようなシート型表示装置は、実施例で示すように、シリコーンゴム中に回転粒子を分散させ、その後フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルを当該シリコーンゴム中に含浸させることにより、当該回転粒子が当該オイルで充填された空隙中で、電界の作用により回転可能となるようにすることや、シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であるように当該シリコーンゴムを選択することで製造することができる。
【0053】
言い換えれば、フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルを空隙形成剤として使用し、そのオイルに対し、溶解、反応、膨潤等の相互作用のない2色粒子を選択し、また、基材としてのシリコーンゴムを選択するに当たり、そのオイルで膨潤させたときに膨潤度が120%以下であるようなものを選択すること等により、本願発明の特徴を有するシート型表示装置を製造することが可能となる。とりわけ、そのオイルとしてフェニルメチルシリコーンオイルを含む粘度が0.3mPa・s以下のオイルを使用すると、大きな応答速度と高いコントラストとの両立が容易になる。なお、本願発明に係るフェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルとしてフェニルメチルシリコーンオイル単独のものが好ましいことは、すでに述べたとおりである。
【0054】
なお、シート型表示装置をガスバリア性のフィルムでコートすることで、2色粒子の帯電の変動に影響する吸湿を防止でき、表示装置のさらに安定した駆動を実現できる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本願発明をより詳細に説明する。なお、物性の測定方法は下記の通りである。
【0056】
(膨潤度)
使用対象の2色粒子を、体積として充填率50%の割合で使用対象のシリコーンゴム中に分散し、使用対象のシリコーンオイル中にこの2色粒子を分散したシリコーンゴムを浸漬し、室温下放置し、所定時間毎に浸漬前における体積に対する浸漬後の体積の比を測定し、一定になった時点における比を%表示した。
【0057】
(シリコンオイルの粘度)
JIS Z 8803の方法によった。
【0058】
(コントラスト)
Gretag Macbeth社製の測色計SpectroEyeを使用し、拡散白色光を用いて、JIS Z8722に従い、表示面に対し45゜で入射する光に対する、表示面に直交する方向における反射光量を、基準板についての反射光量と比較し、白色表示をした場合と黒色表示をした場合における値の比として求めた。
【0059】
(応答速度)
2色粒子を分散させたゴムシートサンプルをITO(酸化インジウム−酸化スズ)蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で電界を印加し、2色粒子が回転を開始する電界強度で評価した。電界強度が低いほど応答速度が良いとした。
【0060】
[実施例1]
スチレンアクリル共重合体(モノマー組成重量比として、スチレンモノマー:アクリル酸グリシジル=6:4)80重量部に、二酸化チタン20重量部をロールミルで混練し、白色の混練物を作製した。
【0061】
また、同じスチレンアクリル共重合体の81重量部に、カーボンブラック1重量部とマグネタイト18重量部とをロールミルで混練し、黒色の混練物を作製した。
【0062】
白と黒の混練物をそれぞれ厚さ20μmのフィルムに成形し、加熱および加圧することで、2色を積層したフィルムを作製した。
【0063】
このフィルムを液体窒素中に浸漬し、超音波ホモジナイザにより粉砕した。粉砕した樹脂片を加熱したシリコーンオイル中に浸漬することで、2色粒子を作製した。この2色粒子をフィルタにより分級し、粒径50〜80μmの2色粒子を得た。
【0064】
この2色粒子を、同体積量の未硬化のシリコーンゴムである東レダウコーニングシリコーン(株)商品名KE106(2液型付加タイプ)に分散して充填率50%とし、テフロン樹脂板に対しドクターブレード法により均一に厚さ220μmで塗布し、温度50℃の雰囲気下で8時間かけて硬化させた。
【0065】
ついで、この2色粒子を分散したゴムシートを信越化学(株)のフェニルメチルシリコーンオイル商品名KF56に8時間浸漬し膨潤させた。
【0066】
この結果、ゴムシートの膨潤度は113%となり、このゴムシートについて、ITO蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で、電界強度3.0kV/mmの条件で電界を印加すると、2色粒子が回転し、コントラスト4:1の表示を実現できた。
【0067】
また、顕微鏡下で粒子の相互間隔を観察したところ、70〜110μmであった。
【0068】
なお、使用したKF56の粘度は0.015mPa・sであった。
【0069】
[実施例2]
低密度ポリエチレン(メルトインデックス150)80重量部に、二酸化チタン20重量部をロールミルで混練し、白色の混合物を作製した。
【0070】
一方、同じ低密度ポリエチレンの81重量部に、カーボンブラック1重量部とマグネタイト18重量部とをロールミルで混練し、黒色の混練物を作製した。
【0071】
この白と黒の混合物をそれぞれ厚さ20μmのフィルムに成形し、加熱および加圧しながら、フィルム同士を融着させることで2色を積層したフィルムを作製した。ついで、このフィルムを50μm×100μmのサイズに切断した。
【0072】
この樹脂片を、加熱したシリコーンオイル中に浸漬することで、2色粒子(粒径80μm)を作製した。この2色粒子の表面を、特許第2000−288412号公報の方法に基づき、サカタインクス製の撥水撥油処理剤スミフルノンにより処理した。
【0073】
この2色粒子を、同体積量の未硬化のシリコーンゴムである東レダウコーニングシリコーン(株)商品名KE106に分散して充填率50%とし、テフロン樹脂板に対しドクターブレード法により均一に厚さ220μmで塗布し、温度50℃の雰囲気下で8時間かけて硬化させた。
【0074】
ついで、この2色粒子を分散したゴムシートを信越化学(株)のフェニルメチルシリコーンオイル商品名KF56に8時間浸漬し膨潤させた。
【0075】
この結果、ゴムシートの膨潤度は113%となり、このゴムシートについて、ITO蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で、電界強度1.2kV/mmの条件で電界を印加すると、2色粒子が回転し、コントラスト4:1の表示を実現できた。
【0076】
[比較例1]
実施例1において、フェニルメチルシリコーンオイルの代わりに東レダウコーニングシリコーンオイル(株)製のジメチルシリコーンオイルSH200−10cstを使用した以外は同様にしてシート型表示装置を作製した。
【0077】
その結果、空隙は全ての2色粒子の周囲に形成できたものの、ゴムシートの膨潤度が127%と大きいために、粒子の相互間隔が広がり、コントラストは2:1に低下した。
【0078】
また、顕微鏡下で粒子の相互間隔を観察したところ、90〜150μmであった。
【0079】
[比較例2]
実施例1において、フェニルメチルシリコーンオイルの代わりに東レダウコーニングシリコーンオイル(株)製のジメチルシリコーンオイルSH200−20cstを使用した以外は同様にしてシート型表示装置を作製した。
【0080】
この結果、ゴムシートの膨潤度は117%となり、良好であった。
【0081】
このゴムシートについて、ITO蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で、電界強度4.8kV/mmの条件で電界を印加すると、2色粒子が回転し、コントラストは4:1であった。
【0082】
この結果より、コントラストは充分であるものの応答速度が不十分であることが理解できる。
【0083】
【発明の効果】
本願発明により、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置の表示において、大きな応答速度と高いコントラストとの両立が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2色粒子を用いたシート型表示装置の部分断面モデル図である。
【図2】電界の印加により回転する粒子の観察図である。(a)電界印加前、(b)電界印加中、(c)電圧印加後を表す。
【符号の説明】
1 2色粒子
2 空隙(絶縁性液体)
3 基材
【発明の属する技術分野】
本願発明は、たとえば色と帯電特性との双方が異なる回転粒子を電界の印加により、泳動、回転、停止等して像を表示するシート型表示装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子ペーパ、ペーパーライクディスプレイ、デジタルペーパなどと呼ばれ、電界により光学的吸収や光学的反射を変化させて像表示を行う表示装置が提案されている。
【0003】
電界により光学的吸収や光学的反射が変化する素子としては、色と電気的特性との双方が異なる半球を合わせた回転粒子を絶縁性液体とともに内包したマイクロカプセル、特開平第01−086116号公報に記載されたように電気泳動粒子を分散させた溶媒を着色し、この溶媒を内包したマイクロカプセル、2色性色素とスメクチック液晶とを含む液晶/高分子複合膜などがある。
【0004】
これらの方法は、メモリ性を有し、電源が無くても像情報を保持でき、反射型表示装置であるため、紙の代替として期待されている。
【0005】
また素子を電極のあるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等上に塗布すればよいので、薄くて、軽く、曲げることが可能なシート型表示装置である。
【0006】
特に、米国特許第4,126,854号および第4,143,103号の各明細書に記載されている、回転粒子の半球ずつを異なる色と帯電特性とに分けたものを用いる表示媒体は、他の方式に比べ、優れたコントラスト特性を示すディスプレイとして知られている。
【0007】
この表示媒体は、図1に示すように、誘電性液体を充填した空隙2を複数有し、かつ光学的に透明な層である基材3と、この空隙に回転粒子1とを有する構造をしている。また、回転粒子は、1粒子中に異なる色と異なる帯電特性の2つの領域を有するため、電界を印加すると、図2に示すように、基材であるゴム中の空隙(絶縁性液体)内にある2色粒子の電気泳動と回転運動とが起き、像表示を行うことができる。
【0008】
図2中、(a)は電界印加前の粒子、(b)は、電界の印加により回転しつつある粒子、(c)は、電界の印加により回転し終えた粒子を示している。
【0009】
この回転粒子の製造方法および材料としては、(1)米国特許第5,262,098号に記載されているように、材料として、カルナバワックス、カーボンブラック、ニ酸化チタンを使用し、色の異なる2種類の溶融したワックス粒子を結合させ、表面張力により球形化したのち固化させる方法、(2)特開平第11−85067号公報、特開平第11−85068号公報に記載の、ガラス、樹脂などの粒子の表面に、金属、カーボンブラック、硫化アンチモンなどを蒸着する方法、(3)特開平第11−85069号公報、特開平第11−161206号公報に記載の、材料として酸化亜鉛を、発色剤としてトナーを使用する感光材料からなる粒子を用い、露光、現像、定着処理により発色させる方法、たとえば親水性高分子に発色剤としてハロゲン化銀を添加したものなどが提案されている。
【0010】
また、たとえば樹脂を用いた場合には、ローラやプレス機により2色の着色樹脂を貼り合わせた圧延シートを作製したのち粉砕し、熱風による加熱処理により、粒子を製造する方法が特開平第01−282589号公報で提案されている。
【0011】
前述の方法により作製した粒子を誘電性液体とともにバインダ(基材)に封入することで、表示装置を形成する。これには、(1)米国特許第4,143,103号に記載の硬化前のゴムに2色粒子を分散、硬化したのち、オイルによりゴムを膨潤する方法、(2)「A Newly Developed Electrical Twisting Ball Display」,M.Saitoh et. al.: Proc. of SID,Vol23/4.1982に記載の、2色粒子をトルエン可溶性の樹脂で被覆し、ポリビニルアルコールに分散、硬化したのち、トルエンに浸す方法、(3)特開平第8−234686号公報に記載の、界面重合を用いて誘電性液体と2色粒子とを樹脂膜で覆い、マイクロカプセルを形成し、このマイクロカプセルを透明な樹脂中に分散する方法が挙げられる。
【0012】
(1)の方法は粒子を未硬化のゴムに分散し、加熱による硬化とオイルへの漬け込みだけで構成できるという利点がある。一方、(2)の方法では、揮発性のあるトルエンを使用することによる安全性、あるいは粒子を樹脂でコートする製造工程の増加が問題になる。また、(3)の方法はマイクロカプセルの製造効率の低さが問題である。
【0013】
なお、特許公報第2860790号では、空隙(キャビティ)の径を粒子の4倍以下とする方法が出願されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、膨潤させるためのオイルは、ある特定のものに限られることが多い。たとえば、粘度が低すぎる場合には、基材であるゴムが膨潤しすぎて、回転粒子相互の間隔が広がり、コントラストが低くなる。あるいは、オイルが揮発して、空隙が消失してしまうといった問題がある。
【0015】
また、粘度が高すぎる場合には、一般的にはゴムの膨潤は小さくなるものの、「ツイストボールディスプレイの表示球回転特性」,谷川他,:Japan Hardcopy 2000,論文集,P65に記載の粒子の回転の運動方程式から明らかなように、粘性抵抗が高くなり、応答速度が遅くなるといった問題がある。
【0016】
本願発明は、このような問題を解決し、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置の表示において、大きな応答速度と高いコントラストとの両立を実現する技術を提供することを目的としている。
【0017】
本願発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0018】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願発明の一態様によれば、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該オイルがフェニルメチルシリコーンオイルを含むシート型表示装置が提供される。
【0019】
このように、シリコーンゴムの膨潤に用いるオイルを最適化することで、シート型表示装置における表示の応答速度と相関のある粘性抵抗を低く保ったままで、回転粒子の相互間隔を小さく保ち、高いコントラストを実現できる。
【0020】
なお、前記オイルの粘度が、0.3mPa・s以下であることや前記シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であることが、大きな応答速度と高いコントラストとの両立を実現する上で好ましい。
【0021】
また、前記シリコーンゴムが、2液型シリコーンゴムであること、とりわけ、2液型付加タイプのシリコーンゴムであることが好ましい。表面から硬化反応が開始される1液型シリコーンゴムと異なり、層の全域で同時に硬化反応が開始されるため、一様な硬化品質を実現し易く、また、膨潤性と透明性との好ましい組み合わせが得られ、付加反応タイプでは副成物の生成がないからである。
【0022】
また、本願発明の他の一態様によれば、シリコーンゴム中に回転粒子を分散させ、その後オイルを当該シリコーンゴム中に含浸させることにより、当該回転粒子が当該オイルで充填された空隙中で、電界の作用により回転可能となるようにするシート型表示装置の製造方法において、当該オイルとしてフェニルメチルシリコーンを含む粘度が0.3mPa・s以下のオイルを使用するシート型表示装置の製造方法が提供される。
【0023】
前記オイルを使用した場合に前記シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であるように当該シリコーンゴムを選択することや、前記シリコーンゴムが、2液型シリコーンゴムであること、とりわけ、2液型付加タイプのシリコーンゴムであることが好ましい。
【0024】
このような方法により、表示の応答速度と相関のある粘性抵抗を低く保ったままで、回転粒子の相互間隔を小さく保ち、高いコントラストを持つシート型表示装置を製造することができる。
【0025】
なお、以下に説明する発明の実施の形態や図面の中で、本願発明の更なる特徴が明らかにされる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明の実施の形態を実施例等を使用して説明する。なお、これらの実施例等および説明は本願発明を例示するものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。本願発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本願発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0027】
また、以下の説明では、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置において、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子として、半球ずつに色分けされた2色粒子を使用して説明するが、本願発明に係る回転粒子は、上記本願発明の趣旨に従って、オイルに対し溶解、反応、膨潤等の相互作用がなく、泳動・回転を行うことができる限り、その他のどのような回転粒子であってもよい。たとえば多色粒子であってもよい。
【0028】
さらに、粒子の形状としては、通常真球に近いものが好ましいが、その他の形状を排除するものではない。
【0029】
シート型表示装置の具体的製造方法としては、たとえば米国特許第4,143,103号に、2色粒子を未硬化のエラストマー(2液型シリコーンゴム)に分散し、このエラストマーにシリコーンオイルを吸収させゴムを膨潤させる方法が提案されている。
【0030】
すなわち、2色粒子を未硬化の状態のシリコーンゴム中に分散し、このゴムをシート状に成形したのち、硬化させ、硬化させたゴムをシリコーンオイルに浸漬することで、ゴムを膨潤させ、2色粒子の回りに空隙を形成することができる。本願発明に係るシート型表示装置の製造に当たっては、本願発明の趣旨に反しない限りこのような公知の方法を利用することができる。
【0031】
本願発明に係る2色粒子の材料としては、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド等)、ワックス状物質(パラフィンワックス、カルナバワックス、オレフィンワックス等)などの公知の材料に、着色剤を混ぜたものを用いることができる。
【0032】
着色剤の具体例としては、白色顔料として、二酸化チタンをはじめ、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素などの公知の顔料を用いることができる。なお、白色度を高めるために、隠蔽率の高い粒径100〜300nmの二酸化チタンを用いるのが好ましい。
【0033】
また、黒色顔料としては、カーボンブラック、マグネタイト、アニリンブラック、あるいは銅、コバルト、鉄、マンガン、クロムなどからなる複合酸化物などの公知の顔料および染料を用いることができる。
【0034】
また、分散性の向上や樹脂の変色を防止するために、無機物、シラン化合物、樹脂などによる表面処理を顔料に施してもよい。
【0035】
なお、顔料、染料以外にも2色粒子の電気的特性を制御するためにリン酸三カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウムなどカルシウム塩を始めとする無機物を適宜混合してもよい。
【0036】
あるいは、白や黒以外の着色剤として、1)溶性アゾ系、モノアゾ系などのアゾ顔料、(2)フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリリン系、ペリノン系、イソインドリン系などの多環式顔料などがある。
【0037】
これら材料は、米国特許第5,262,098号に記載されているワックスジェット法や、特開平第01−282589号公報に記載されている、積層した樹脂を粉砕、溶融により球状にする方法など公知の方法により2色粒子とすることができる。
【0038】
このようなシート型表示装置に使用するシリコーンオイルについて種々検討したところ、従来用いられているジメチルシリコーンオイルに比べ、フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルを使用すると、シート型表示装置の表示において、大きな応答速度と高いコントラストとの両立が実現できることが判明した。
【0039】
これは、フェニルメチルシリコーンオイルを使用することそのものの効果であると共に、フェニルメチルシリコーンオイルでは、低粘性と低膨潤度との両立が可能であり、適切な粘度と膨潤度とのバランスが得られるためでもある。この粘度と膨潤度とのバランスには、フェニルメチルシリコーンオイルの表面張力が高いことも寄与しているものと推察されている。
【0040】
本願発明に係るフェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルとしては、フェニルメチルシリコーンオイル単独のものが好ましいが、フェニルメチルシリコーンオイルを使用することによる効果が確保される限り他の成分を共存していてもよい。
【0041】
フェニルメチルシリコーンオイルが主成分であること、具体的には90重量%以上であることが、好ましい態様の一つの目安となる。
【0042】
フェニルメチルシリコーンオイルとしては、たとえば、信越化学(株)の商品名KF56では、粘度が14.9×10−6Pa・sと小さく、かつ膨潤度を113%程度に抑制することができる。
【0043】
一方、ジメチルシリコーンオイルを用いると、たとえば(東レダウコーニングシリコーン(株)の商品名SH200−10cstの場合、粘度9.34×10−6Pa・sで膨潤度127%となり、SH200−20cstの場合、粘度19×10−6Pa・sで膨潤度117%となる。
【0044】
なお、フェニルメチルシリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルに対し、メチル基の一部がフェニル基に置換されたものである。
【0045】
フェニルメチルシリコーンオイルの製造方法や、フェニル基によるメチル基の置換の程度には種々のものがあるが、本願発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよい。
【0046】
なお、フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルの粘度が、0.3mPa・s以下であることが好ましい。フェニルメチルシリコーンオイルはシリコーンゴムの膨潤を低く抑え、これによって、2色粒子相互の間隔を小さく抑えることができるが、オイルの粘度が上記範囲を超えると、粒子の泳動・回転が遅くなり、表示の応答速度が不十分な場合があり得るからである。下限については、膨潤度が大きくなりすぎない限り、特に制限はない。
【0047】
2色粒子を充填した空隙を有する基材に使用する材料としての、本願発明に係るシリコーンゴムの製造方法には種々のものがあり、その硬化タイプとしては、1液タイプと2液タイプとの相違の他に、室温硬化型(RTV)、加熱硬化型等種々のものがあり、反応タイプとしては縮合タイプ、付加反応タイプ等種々のものがあるが、フェニルメチルシリコーンオイルにより膨潤し、2色粒子の周りに空隙が形成でき、本願発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよい。
【0048】
たとえば、2液型のシリコーンゴムの場合、ベースポリマー、架橋剤、硬化触媒を混合して、加熱あるいは室温に放置することで硬化させるのが通常の作製方法である。
【0049】
ただし、反応が均一に進む点で1液タイプより2液タイプの方が有用であり、副成物が発生しない点で、縮合タイプより付加反応タイプの方が有用である。副成物の存在による気泡の発生等の問題を回避できるからである。
【0050】
シリコーンゴムの膨潤度は120%以下であることが好ましい。この範囲を超えると、2色粒子相互の間隔が大きくなり、表示のコントラストが低下するからである。
【0051】
なお、この場合のシリコーンゴムの膨潤度は、使用するシリコーンオイル等の膨潤剤で測定する。具体的には後述する方法で測定した、浸漬前における体積に対する浸漬後の体積の比を%表示したものが、本願発明に係る膨潤度である。
【0052】
上記のようなシート型表示装置は、実施例で示すように、シリコーンゴム中に回転粒子を分散させ、その後フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルを当該シリコーンゴム中に含浸させることにより、当該回転粒子が当該オイルで充填された空隙中で、電界の作用により回転可能となるようにすることや、シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であるように当該シリコーンゴムを選択することで製造することができる。
【0053】
言い換えれば、フェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルを空隙形成剤として使用し、そのオイルに対し、溶解、反応、膨潤等の相互作用のない2色粒子を選択し、また、基材としてのシリコーンゴムを選択するに当たり、そのオイルで膨潤させたときに膨潤度が120%以下であるようなものを選択すること等により、本願発明の特徴を有するシート型表示装置を製造することが可能となる。とりわけ、そのオイルとしてフェニルメチルシリコーンオイルを含む粘度が0.3mPa・s以下のオイルを使用すると、大きな応答速度と高いコントラストとの両立が容易になる。なお、本願発明に係るフェニルメチルシリコーンオイルを含むオイルとしてフェニルメチルシリコーンオイル単独のものが好ましいことは、すでに述べたとおりである。
【0054】
なお、シート型表示装置をガスバリア性のフィルムでコートすることで、2色粒子の帯電の変動に影響する吸湿を防止でき、表示装置のさらに安定した駆動を実現できる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本願発明をより詳細に説明する。なお、物性の測定方法は下記の通りである。
【0056】
(膨潤度)
使用対象の2色粒子を、体積として充填率50%の割合で使用対象のシリコーンゴム中に分散し、使用対象のシリコーンオイル中にこの2色粒子を分散したシリコーンゴムを浸漬し、室温下放置し、所定時間毎に浸漬前における体積に対する浸漬後の体積の比を測定し、一定になった時点における比を%表示した。
【0057】
(シリコンオイルの粘度)
JIS Z 8803の方法によった。
【0058】
(コントラスト)
Gretag Macbeth社製の測色計SpectroEyeを使用し、拡散白色光を用いて、JIS Z8722に従い、表示面に対し45゜で入射する光に対する、表示面に直交する方向における反射光量を、基準板についての反射光量と比較し、白色表示をした場合と黒色表示をした場合における値の比として求めた。
【0059】
(応答速度)
2色粒子を分散させたゴムシートサンプルをITO(酸化インジウム−酸化スズ)蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で電界を印加し、2色粒子が回転を開始する電界強度で評価した。電界強度が低いほど応答速度が良いとした。
【0060】
[実施例1]
スチレンアクリル共重合体(モノマー組成重量比として、スチレンモノマー:アクリル酸グリシジル=6:4)80重量部に、二酸化チタン20重量部をロールミルで混練し、白色の混練物を作製した。
【0061】
また、同じスチレンアクリル共重合体の81重量部に、カーボンブラック1重量部とマグネタイト18重量部とをロールミルで混練し、黒色の混練物を作製した。
【0062】
白と黒の混練物をそれぞれ厚さ20μmのフィルムに成形し、加熱および加圧することで、2色を積層したフィルムを作製した。
【0063】
このフィルムを液体窒素中に浸漬し、超音波ホモジナイザにより粉砕した。粉砕した樹脂片を加熱したシリコーンオイル中に浸漬することで、2色粒子を作製した。この2色粒子をフィルタにより分級し、粒径50〜80μmの2色粒子を得た。
【0064】
この2色粒子を、同体積量の未硬化のシリコーンゴムである東レダウコーニングシリコーン(株)商品名KE106(2液型付加タイプ)に分散して充填率50%とし、テフロン樹脂板に対しドクターブレード法により均一に厚さ220μmで塗布し、温度50℃の雰囲気下で8時間かけて硬化させた。
【0065】
ついで、この2色粒子を分散したゴムシートを信越化学(株)のフェニルメチルシリコーンオイル商品名KF56に8時間浸漬し膨潤させた。
【0066】
この結果、ゴムシートの膨潤度は113%となり、このゴムシートについて、ITO蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で、電界強度3.0kV/mmの条件で電界を印加すると、2色粒子が回転し、コントラスト4:1の表示を実現できた。
【0067】
また、顕微鏡下で粒子の相互間隔を観察したところ、70〜110μmであった。
【0068】
なお、使用したKF56の粘度は0.015mPa・sであった。
【0069】
[実施例2]
低密度ポリエチレン(メルトインデックス150)80重量部に、二酸化チタン20重量部をロールミルで混練し、白色の混合物を作製した。
【0070】
一方、同じ低密度ポリエチレンの81重量部に、カーボンブラック1重量部とマグネタイト18重量部とをロールミルで混練し、黒色の混練物を作製した。
【0071】
この白と黒の混合物をそれぞれ厚さ20μmのフィルムに成形し、加熱および加圧しながら、フィルム同士を融着させることで2色を積層したフィルムを作製した。ついで、このフィルムを50μm×100μmのサイズに切断した。
【0072】
この樹脂片を、加熱したシリコーンオイル中に浸漬することで、2色粒子(粒径80μm)を作製した。この2色粒子の表面を、特許第2000−288412号公報の方法に基づき、サカタインクス製の撥水撥油処理剤スミフルノンにより処理した。
【0073】
この2色粒子を、同体積量の未硬化のシリコーンゴムである東レダウコーニングシリコーン(株)商品名KE106に分散して充填率50%とし、テフロン樹脂板に対しドクターブレード法により均一に厚さ220μmで塗布し、温度50℃の雰囲気下で8時間かけて硬化させた。
【0074】
ついで、この2色粒子を分散したゴムシートを信越化学(株)のフェニルメチルシリコーンオイル商品名KF56に8時間浸漬し膨潤させた。
【0075】
この結果、ゴムシートの膨潤度は113%となり、このゴムシートについて、ITO蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で、電界強度1.2kV/mmの条件で電界を印加すると、2色粒子が回転し、コントラスト4:1の表示を実現できた。
【0076】
[比較例1]
実施例1において、フェニルメチルシリコーンオイルの代わりに東レダウコーニングシリコーンオイル(株)製のジメチルシリコーンオイルSH200−10cstを使用した以外は同様にしてシート型表示装置を作製した。
【0077】
その結果、空隙は全ての2色粒子の周囲に形成できたものの、ゴムシートの膨潤度が127%と大きいために、粒子の相互間隔が広がり、コントラストは2:1に低下した。
【0078】
また、顕微鏡下で粒子の相互間隔を観察したところ、90〜150μmであった。
【0079】
[比較例2]
実施例1において、フェニルメチルシリコーンオイルの代わりに東レダウコーニングシリコーンオイル(株)製のジメチルシリコーンオイルSH200−20cstを使用した以外は同様にしてシート型表示装置を作製した。
【0080】
この結果、ゴムシートの膨潤度は117%となり、良好であった。
【0081】
このゴムシートについて、ITO蒸着ガラス/アルミ蒸着ガラス間で、電界強度4.8kV/mmの条件で電界を印加すると、2色粒子が回転し、コントラストは4:1であった。
【0082】
この結果より、コントラストは充分であるものの応答速度が不十分であることが理解できる。
【0083】
【発明の効果】
本願発明により、シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置の表示において、大きな応答速度と高いコントラストとの両立が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2色粒子を用いたシート型表示装置の部分断面モデル図である。
【図2】電界の印加により回転する粒子の観察図である。(a)電界印加前、(b)電界印加中、(c)電圧印加後を表す。
【符号の説明】
1 2色粒子
2 空隙(絶縁性液体)
3 基材
Claims (9)
- シリコーンゴム中に存在するオイルで充填された空隙中にある回転粒子を、電界の作用により回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該オイルがフェニルメチルシリコーンオイルを含むシート型表示装置。
- 前記オイルの粘度が、0.3mPa・s以下である請求項1に記載のシート型表示装置。
- 前記シリコーンゴムの膨潤度が120%以下である請求項1または2に記載のシート型表示装置。
- 前記シリコーンゴムが、2液型シリコーンゴムである請求項1〜3のいずれかに記載のシート型表示装置。
- 前記シリコーンゴムが、2液型付加タイプのシリコーンゴムである請求項1〜4のいずれかに記載のシート型表示装置。
- シリコーンゴム中に回転粒子を分散させ、その後オイルを当該シリコーンゴム中に含浸させることにより、当該回転粒子が当該オイルで充填された空隙中で、電界の作用により回転可能となるようにするシート型表示装置の製造方法において、当該オイルとしてフェニルメチルシリコーンオイルを含む粘度が0.3mPa・s以下のオイルを使用するシート型表示装置の製造方法。
- 前記オイルを使用した場合に前記シリコーンゴムの膨潤度が120%以下であるように当該シリコーンゴムを選択する請求項6に記載のシート型表示装置の製造方法。
- 前記シリコーンゴムが、2液型シリコーンゴムである請求項6または7に記載のシート型表示装置の製造方法。
- 前記シリコーンゴムが、2液型付加タイプのシリコーンゴムである請求項6〜8のいずれかに記載のシート型表示装置の製造方法。
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