JP2004157375A - 2色回転粒子およびシート型表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を提供する。
【解決手段】電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれるようにする。
【選択図】 なし
【解決手段】電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれるようにする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置およびその2色回転粒子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯情報端末や高度情報通信網などの発達に伴い、薄型かつ軽量で、携帯性に優れた表示装置の開発に注目が集まっている。なかでも、電界により光学的吸収特性や光学的反射特性を変化させて像表示を行い、紙と同様なフレキシビリティと電子情報を容易に書き換えることが可能な機能とを有する表示装置、いわゆる電子ペーパ、ペーパーライクディスプレイ、デジタルペーパなどと呼ばれる表示装置への期待が高まっている。
【0003】
電界により光学的吸収特性や光学的反射特性とを変化する素子としては、色と電気的特性の双方が異なる半球を合わせた回転粒子を誘電性液体とともに内包したマイクロカプセル(例えば特許文献1参照。)、電気泳動粒子を分散させた溶媒を着色し、この溶媒を内包したマイクロカプセル(例えば特許文献2参照。)、2色性色素とスメクチック液晶とを含む液晶/高分子複合膜などがある。
【0004】
これらの方法は電源が無くても像情報の保持が可能なメモリ性などの特徴を有し、また素子を電極のあるプラスチックフィルム上などに形成できるため、薄くて、軽く、曲げることが可能なシート型の表示装置を実現できることから、紙の代替として期待されている。
【0005】
特に、回転粒子の半球ずつを異なる色と帯電特性に分けた着色回転粒子を用いるシート型表示装置は、他の方式に比べ、優れたコントラスト特性を示すディスプレイとして知られている(例えば特許文献3、4参照。)。
【0006】
図1に示すように、このシート型表示装置は、誘電性液体を充填した空隙2を複数有し、かつ透光性を有する層であるシート基材3と、この空隙2に着色2色回転粒子1を有する構造をしている。また、回転粒子1は、1粒子中に、色と帯電特性との異なる2つの領域を有する着色回転粒子であるため、電界を印加することによって、粒子の電気泳動と回転運動とが起き、像表示を行うことができる。
【0007】
このような泳動回転粒子の製造方法および材料としては、
(1)材料としてカルナバワックス、カーボンブラック、ニ酸化チタンを使用し、色の異なる2種類の溶融したワックス粒子を結合させ、表面張力により球形化したのち固化させる方法(例えば特許文献5参照。)、
(2)ガラス、樹脂などの粒子の表面に、金属、カーボンブラック、硫化アンチモンなどを蒸着する方法(例えば特許文献6,7参照。)、
(3)材料として酸化亜鉛を、発色剤としてトナーを使用する感光材料からなる粒子を用い、露光、現像、定着処理により発色させる方法(例えば特許文献8,9参照。)、たとえば親水性高分子に発色剤としてハロゲン化銀を添加したものなどが提案されている。
【0008】
更に重合法を利用した回転粒子の製造方法として、(4)ポリエチレン等のワックスに酸化チタン等の白色顔料を添加した懸濁粒子にスチレンモノマ等を偏在して複合化し、重合を行った後、分散染料によりモノマ重合部のみを選択的に着色し、加熱処理による球形化を行うことで2色球を作製する方法が提案されている(特願2001−202731)。
【0009】
これらの手法で作製した回転粒子を、通常シリコーンゴムなどのシート状の担持媒体中に分散し、回転粒子の周りに透光性を有する誘電性液体の充填された空隙を作ることにより、シート型表示装置ができる。すなわち、この回転粒子を分散したシリコーンゴム等に電極を取り付け、電圧を印加することにより回転粒子の色相の異なる領域たとえば白色部と非白色部とが反転し、表示することが可能となるのである。
【0010】
しかしながら、全ての回転粒子が電圧の切り替えにより180°反転し、完全な表示を行うようにすることは容易ではない。たとえば白色部と非白色部とよりなる2色回転粒子が電界方向に対し反転するためには、白色部と非白色部との間に充分な帯電差が生じており、かつ、白色部と非白色部の体積比率がほぼ1:1で、境界面がフラットであることが望ましいが、このように理想的な2色回転粒子を数百μm以下のレベルで、機械的、あるいは化学的プロセスを用いて完璧に作製するのは困難である。そのため、白色部と非白色部との半球の体積比がずれていたり、白色部と非白色部との間の界面が湾曲している回転粒子が存在することで、シート型表示装置を作製した際に、十分回転しなかったり、一方の色から別の色への切り替えが行えない、あるいは回転しても他の2色回転粒子と同期せずに異なる動きを示す粒子が存在することで画質が低下するといった問題がある。
【0011】
また、このような回転粒子の組成の多くは、主に樹脂からなっており、回転粒子全体の誘電率が低いため電気的に分極しにくく、十分な電荷が発生しない。このため、回転に非常に大きな電圧を必要とすることになる。従って、低電圧で駆動できる多くのディスプレイ製品に対し、2色回転粒子を用いる表示装置は、エネルギー、コストの面で対抗することが難しいことが懸念されている。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−234686号公報(段落番号0006)
【0013】
【特許文献2】
特開平01−086116号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献3】
米国特許第4,126,854号明細書(クレーム)
【0015】
【特許文献4】
米国特許第4,143,103号明細書(クレーム)
【0016】
【特許文献5】
米国特許第5262098号明細書(クレーム)
【0017】
【特許文献6】
特開平11−85067号公報(段落番号0014〜0016)
【0018】
【特許文献7】
特開平11−85068号公報(段落番号0005,0006)
【0019】
【特許文献8】
特開平11−85069号公報(段落番号0027〜0033)
【0020】
【特許文献9】
特開平11−161206号公報(段落番号0008)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を提供することを目的としている。
【0022】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている2色回転粒子が提供される。本発明により、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子が得られる。
【0024】
前記電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質であることが好ましい。
【0025】
また、前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部であることや、前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部であることが好ましい。
【0026】
本発明の他の一態様によれば、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該2色回転粒子として上記いずれかの2色回転粒子を使用するシート型表示装置が提供される。本発明により、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置が実現される。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を実施例等を使用して説明する。なお、これらの実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0028】
本発明に係るシート型表示装置は、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うものであり、本発明に係る2色回転粒子はこのシート型表示装置に使用される。後述する空隙の中で2色回転粒子は回転するが、上下左右に動く(泳動する)こともある。本発明に係る2色回転粒子は回転することが重要であるが、このような泳動が含まれていてもよい。
【0029】
半球状の二つの着色部は真球を半分に切断した形状に近い方が好ましい。この着色部は内部まで着色されていてもよいが、表層のみにとどまっていてもよい。
【0030】
本発明に係る2色回転粒子においては、炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、上記半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている。このような電解質を含めると、電圧を印加した際に、2色回転粒子内部の分極性を高め、電荷を効率良く発生させ、大きな帯電差を生じさせることができる。このため、たとえ2色回転粒子の色の異なる二つの着色部の体積バランスが多少ずれていても、境界が湾曲していてもスムーズな回転が可能であり、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子となる。このため、この2色回転粒子を使用したシート型表示装置は、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるものとなる。
【0031】
炭化水素基としては、本発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよい。分子構造中には他の基や酸素等の他の元素が含まれてもよいが、イオン解離の容易さや2色回転粒子の主成分である樹脂等との相溶性を考慮すると炭素と水素とからのみなるものが好ましい場合が多い。炭化水素基には、具体的にメチル、エチル、ブチル、プロピル等の飽和結合を有するものや、エチレン、ブチレン、プロピレン等の不飽和結合を有するものが含まれる。さらに置換または非置換の芳香族基が含まれていてもよい。
【0032】
より具体的には、電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質であることが好ましい。
【0033】
このようなイオンが陽イオンである場合には、対をなす陰イオンには、BF4 −、ClO4 −、CF3SO3 −、等より選択された電解質を用いることができる。また、陰イオンである場合には、対をなす陽イオンには、Li、Na、K、等のアルカリ金属を中心とした陽イオンが望ましい。炭化水素基を分子構造中に有する電解質は、単独で使用し、あるいは複数の種類を同時に混合使用しても良い。
【0034】
この電解質の添加濃度は、0.1〜5重量%程度が望ましい。5量%を超えて添加しても樹脂中での均一分散が難しく帯電アップの効果が期待できないことが多い。また、0.1重量%未満では十分な帯電性能を期待できないことが多い。
【0035】
炭化水素基を分子構造中に有する電解質は、2色回転粒子を構成する組成物中に適宜分散して存在させる。この分散には公知のどのような方法を利用することも可能である。たとえば、2色回転粒子の主成分である母体樹脂に混練すればよい。
【0036】
このような電解質は、着色部の内部まで存在していても、表層のみにとどまっていても、内部のみにとどまっていてもよい。このような電解質は表層に近い部分に存在する方が好ましい場合が多いが、たとえば外部に浸出しやすい電解質の場合には、内部のみにとどまっているように分布させることが有効であることもある。
【0037】
2色回転粒子は、半球状の二つの着色部のいずれについても、主に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、カルバナワックス、アマイドワックスおよびパラフィンワックスからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。半球状の二つの着色部のそれぞれの構成は一致していなくてもよい。ここで、「主に」とは、2色回転粒子の半球状のそれぞれの着色部を構成する組成物の構成要素の内、着色剤や上記電解質、触媒や改質の目的のための添加剤を除いた要素がこれらの樹脂からなっていることを意味する。このため、この樹脂成分を母体樹脂と呼ぶ場合がある。樹脂は、2種類以上を混合してもよい。特にポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂は、比重が0.9〜1.0と非常に小さく粒子の回転動作に要する消費電力を低減できるため有効である。
【0038】
半球状の二つの着色部の着色には、顔料、染料等の着色剤を使用することができる。白色の着色部としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部が好ましい。分散が容易であり、優れた白色度と帯電性能とを実現しやすいからである。2種類以上混合してもよい。
【0039】
また、黒色の着色部としては、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部が好ましい。分散が容易であり、優れた黒色度と帯電性能とを実現しやすいからである。2種類以上混合してもよい。
【0040】
なお、上記の白色の着色部と黒色の着色部とを組み合わせて使用するとコントラストが明確になり好ましい。着色剤を2色回転粒子中に分散させる方法として公知の方法を使用することができる。たとえばニーダによる混練を例示できる。
【0041】
上記に示した母体樹脂と電解質、着色剤等を混合し、ニーダ、押し出し機などを用いて溶融混練し、白色部と非白色部の2層構造からなる多層シートを作製することができる。このとき、電解質は、白色部、非白色のどちらか一方に含まれていても、両方に含まれていても良い。
【0042】
多層シートの作製方法としては、一般的なキャスト方式、ラミネート方式等の多層シートの形成が可能な製造方法であればどのような方法を用いても良い。
【0043】
この2層シートを粗粉砕後、ジェットミル等で微粉砕し、風力分級機により微細化したシートの断片を得ることができる。また切削機等を用いてカッティングしても良い。
【0044】
このように粉砕あるいはカッティングした2層シートの断片を球形化するには、オイル中に分散したシート断片を樹脂の溶融温度以上に加熱する。溶融した樹脂の表面張力により球形化が実現する。この目的のために使用するオイルとしては、電気絶縁性が高く、揮発性の少ないシリコーンオイル等を用いることができる。このように球形化した粒子を、篩分、湿式分級等の方法で分級し、粒径分布のなるべく狭い粒子を採取することで2色回転粒子が得られる。このような方法で作製した2色回転粒子をシリコーンゴム等の絶縁物に分散してシート型表示装置を作製することができる。
【0045】
2色回転粒子の形状としては、真球状であり、同一粒径で揃っており、色の異なる二つの領域(着色部)に正確に二分されており、この二つの領域の比重が同一であることが理想的であるが、実際には、真球状からのずれ、粒径のバラツキ、領域境界の湾曲、比重の相違等が存在する。しかしながら、本発明に係る2色回転粒子は、このような場合でも、スムーズな回転が可能であり、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子となる。
【0046】
シート型表示装置の作製方法としては、まず上記のようにして作成した2色回転粒子を架橋反応前の液状シリコーンゴムとよく混合し、分散する。この分散系を板状あるいは膜状に成形し、その後シリコーンゴムを架橋させる。
【0047】
架橋反応後のシリコーンゴムを低粘性シリコーンオイル等の透光性を有する誘電性液体に所定時間浸漬することで、2色回転粒子の周囲に、この誘電性液体で充填された空隙ができる。2色回転粒子にこの誘電性液体が吸収され2色回転粒子が膨潤する等の不具合を生じないように、2色回転粒子が透光性液体に不溶であるか、あるいは2色回転粒子への透光性液体の吸収が極めて遅いことが重要である。浸透時間さえ適正であれば空隙の生成は容易である。
【0048】
次に、この2色回転粒子を駆動するのに必要な電極として、表示が確認できるよう光透過性を示すITOやSnO2等の透明導電膜を用いるのが好ましい。
【0049】
上記の技術により、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を実現できる。
【0050】
すなわち、本発明の表示用2色回転粒子は、母体樹脂に炭化水素基を分子構造中に有する電解質を混入させることで、粒子表面の電荷量をアップすることができ、低電圧で2色回転粒子が一斉に同期して回転するようにできる。すなわち優れた回転応答性を実現できる。
【0051】
また、この2色回転粒子を用いるシート型表示装置は、低電圧で駆動でき、2色回転粒子の優れた回転応答性に起因して、高解像度、高表示応答性、良好な表示を実現でき、低エネルギー、低コストが実現でき、紙のように薄くフレキシブルでかつ画像の書き込み、表示、消去が容易いペーパライクディスプレイへの応用が期待できる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例に沿って、本発明に係る2色回転粒子の製造方法について説明を行う。
【0053】
[実施例1]
低密度ポリエチレン(東ソー社製)79重量%と、酸化チタン(チタン工業社製)20重量%と電解質としてp−トルエンスルホン酸ナトリウム1重量%とを混合した組成物を2色回転粒子の白色部用組成物、低密度ポリエチレン80重量%と、マグネタイト(チタン工業社製)18重量%と、カーボン(キャボット社製)2重量%とを混合した組成物を非白色部用組成物とし、各々の組成物を溶融混練後、キャストフィルム製造装置により、膜厚20μmの白黒2層シートを作製した。
【0054】
これをアトマイザーにより冷凍粉砕後、200℃に加熱したジメチルシリコーン(東レダウシリコーン社製、SH200、粘度1cS)中で球形化した。篩を用いて分級操作後、数時間乾燥した。作製した2色回転粒子を2液型シリコーンゴム(信越化学製KE109)に分散させ、48時間放置して硬化させた。2液型シリコーンゴムの硬化後、ジメチルシリコーン(東レダウシリコーン社製、SH200、粘度1cS)中に60時間浸漬し、膨潤させたシリコーンゴムシートの表裏両面に透明電極を密着させ、ディスプレイデバイスとして電場を印加すると、白黒の反転表示を50Vで繰り返し駆動できた。また、全面白色に表示させ、測色計により反射率を測定すると、反射率40%を示した。光学顕微鏡で2色回転粒子の状態を確認するとほぼ100%、白色部を表示側に向けて静止していた。
【0055】
[実施例2]
実施例1の電解質に代えてp−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示を50Vで繰り返し駆動できた。また、白色部の反射率は40%を示し、良好な表示特性が得られた。
【0056】
[実施例3]
実施例1の電解質に代えて過塩素酸テトラエチルアンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示を40Vで繰り返し駆動できた。また、白色部の反射率は40%を示し、良好な表示特性が得られた。
【0057】
[実施例4]
実施例1の非白色部の材料組成に代えて、低密度ポリエチレン79重量%と、p−トルエンスルホン酸ナトリウム1重量%と、マグネタイト(チタン工業社製)18重量%と、カーボン(キャボット製社)2重量%とを混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示を50Vで繰り返し駆動できた。また、白色部の反射率は40%を示し、良好な表示特性が得られた。
【0058】
[比較例1]
実施例1の材料組成からp−トルエンスルホン酸ナトリウムを除いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示に必要な電圧は、150Vと高い値を示した。また、白色部の反射率は20%で、グレーな状態を示した。光学顕微鏡で2色回転粒子の状態を確認すると80%が白色部を、20%が非白色部と白色部の中間、あるいは非白色部の面積比率が大きい状態で表示側に向けて静止しており、画質劣化の原因が確認された。
【0059】
[比較例2]
実施例1の電解質に代えて過塩素酸リチウムを用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示に必要な電圧は、130Vと高い値を示した。また、白色部の反射率は20%で、グレーな状態を示した。光学顕微鏡で2色回転粒子の状態を確認すると85%が白色部を、15%が非白色部と白色部の中間、あるいは非白色部の面積比率が大きい状態で表示側に向けて静止しており、画質劣化の原因が確認された。
【0060】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0061】
(付記1) 電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、
炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている2色回転粒子。
【0062】
(付記2) 前記電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質である付記1に記載の2色回転粒子。
【0063】
(付記3) 2色回転粒子が、主に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、カルバナワックス、アマイドワックスおよびパラフィンワックスからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる、付記1または2に記載の2色回転粒子。
【0064】
(付記4) 前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部である、付記1〜3のいずれかに記載の2色回転粒子。
【0065】
(付記5) 前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部である、付記1〜4のいずれかに記載の2色回転粒子。
【0066】
(付記6) 電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該2色回転粒子として付記1〜5のいずれかに記載の2色回転粒子を使用するシート型表示装置。
【0067】
【発明の効果】
低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シート型表示装置の表示部の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 着色2色回転粒子
2 空隙
3 シート基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置およびその2色回転粒子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯情報端末や高度情報通信網などの発達に伴い、薄型かつ軽量で、携帯性に優れた表示装置の開発に注目が集まっている。なかでも、電界により光学的吸収特性や光学的反射特性を変化させて像表示を行い、紙と同様なフレキシビリティと電子情報を容易に書き換えることが可能な機能とを有する表示装置、いわゆる電子ペーパ、ペーパーライクディスプレイ、デジタルペーパなどと呼ばれる表示装置への期待が高まっている。
【0003】
電界により光学的吸収特性や光学的反射特性とを変化する素子としては、色と電気的特性の双方が異なる半球を合わせた回転粒子を誘電性液体とともに内包したマイクロカプセル(例えば特許文献1参照。)、電気泳動粒子を分散させた溶媒を着色し、この溶媒を内包したマイクロカプセル(例えば特許文献2参照。)、2色性色素とスメクチック液晶とを含む液晶/高分子複合膜などがある。
【0004】
これらの方法は電源が無くても像情報の保持が可能なメモリ性などの特徴を有し、また素子を電極のあるプラスチックフィルム上などに形成できるため、薄くて、軽く、曲げることが可能なシート型の表示装置を実現できることから、紙の代替として期待されている。
【0005】
特に、回転粒子の半球ずつを異なる色と帯電特性に分けた着色回転粒子を用いるシート型表示装置は、他の方式に比べ、優れたコントラスト特性を示すディスプレイとして知られている(例えば特許文献3、4参照。)。
【0006】
図1に示すように、このシート型表示装置は、誘電性液体を充填した空隙2を複数有し、かつ透光性を有する層であるシート基材3と、この空隙2に着色2色回転粒子1を有する構造をしている。また、回転粒子1は、1粒子中に、色と帯電特性との異なる2つの領域を有する着色回転粒子であるため、電界を印加することによって、粒子の電気泳動と回転運動とが起き、像表示を行うことができる。
【0007】
このような泳動回転粒子の製造方法および材料としては、
(1)材料としてカルナバワックス、カーボンブラック、ニ酸化チタンを使用し、色の異なる2種類の溶融したワックス粒子を結合させ、表面張力により球形化したのち固化させる方法(例えば特許文献5参照。)、
(2)ガラス、樹脂などの粒子の表面に、金属、カーボンブラック、硫化アンチモンなどを蒸着する方法(例えば特許文献6,7参照。)、
(3)材料として酸化亜鉛を、発色剤としてトナーを使用する感光材料からなる粒子を用い、露光、現像、定着処理により発色させる方法(例えば特許文献8,9参照。)、たとえば親水性高分子に発色剤としてハロゲン化銀を添加したものなどが提案されている。
【0008】
更に重合法を利用した回転粒子の製造方法として、(4)ポリエチレン等のワックスに酸化チタン等の白色顔料を添加した懸濁粒子にスチレンモノマ等を偏在して複合化し、重合を行った後、分散染料によりモノマ重合部のみを選択的に着色し、加熱処理による球形化を行うことで2色球を作製する方法が提案されている(特願2001−202731)。
【0009】
これらの手法で作製した回転粒子を、通常シリコーンゴムなどのシート状の担持媒体中に分散し、回転粒子の周りに透光性を有する誘電性液体の充填された空隙を作ることにより、シート型表示装置ができる。すなわち、この回転粒子を分散したシリコーンゴム等に電極を取り付け、電圧を印加することにより回転粒子の色相の異なる領域たとえば白色部と非白色部とが反転し、表示することが可能となるのである。
【0010】
しかしながら、全ての回転粒子が電圧の切り替えにより180°反転し、完全な表示を行うようにすることは容易ではない。たとえば白色部と非白色部とよりなる2色回転粒子が電界方向に対し反転するためには、白色部と非白色部との間に充分な帯電差が生じており、かつ、白色部と非白色部の体積比率がほぼ1:1で、境界面がフラットであることが望ましいが、このように理想的な2色回転粒子を数百μm以下のレベルで、機械的、あるいは化学的プロセスを用いて完璧に作製するのは困難である。そのため、白色部と非白色部との半球の体積比がずれていたり、白色部と非白色部との間の界面が湾曲している回転粒子が存在することで、シート型表示装置を作製した際に、十分回転しなかったり、一方の色から別の色への切り替えが行えない、あるいは回転しても他の2色回転粒子と同期せずに異なる動きを示す粒子が存在することで画質が低下するといった問題がある。
【0011】
また、このような回転粒子の組成の多くは、主に樹脂からなっており、回転粒子全体の誘電率が低いため電気的に分極しにくく、十分な電荷が発生しない。このため、回転に非常に大きな電圧を必要とすることになる。従って、低電圧で駆動できる多くのディスプレイ製品に対し、2色回転粒子を用いる表示装置は、エネルギー、コストの面で対抗することが難しいことが懸念されている。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−234686号公報(段落番号0006)
【0013】
【特許文献2】
特開平01−086116号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献3】
米国特許第4,126,854号明細書(クレーム)
【0015】
【特許文献4】
米国特許第4,143,103号明細書(クレーム)
【0016】
【特許文献5】
米国特許第5262098号明細書(クレーム)
【0017】
【特許文献6】
特開平11−85067号公報(段落番号0014〜0016)
【0018】
【特許文献7】
特開平11−85068号公報(段落番号0005,0006)
【0019】
【特許文献8】
特開平11−85069号公報(段落番号0027〜0033)
【0020】
【特許文献9】
特開平11−161206号公報(段落番号0008)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を提供することを目的としている。
【0022】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている2色回転粒子が提供される。本発明により、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子が得られる。
【0024】
前記電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質であることが好ましい。
【0025】
また、前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部であることや、前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部であることが好ましい。
【0026】
本発明の他の一態様によれば、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該2色回転粒子として上記いずれかの2色回転粒子を使用するシート型表示装置が提供される。本発明により、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置が実現される。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を実施例等を使用して説明する。なお、これらの実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0028】
本発明に係るシート型表示装置は、電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うものであり、本発明に係る2色回転粒子はこのシート型表示装置に使用される。後述する空隙の中で2色回転粒子は回転するが、上下左右に動く(泳動する)こともある。本発明に係る2色回転粒子は回転することが重要であるが、このような泳動が含まれていてもよい。
【0029】
半球状の二つの着色部は真球を半分に切断した形状に近い方が好ましい。この着色部は内部まで着色されていてもよいが、表層のみにとどまっていてもよい。
【0030】
本発明に係る2色回転粒子においては、炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、上記半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている。このような電解質を含めると、電圧を印加した際に、2色回転粒子内部の分極性を高め、電荷を効率良く発生させ、大きな帯電差を生じさせることができる。このため、たとえ2色回転粒子の色の異なる二つの着色部の体積バランスが多少ずれていても、境界が湾曲していてもスムーズな回転が可能であり、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子となる。このため、この2色回転粒子を使用したシート型表示装置は、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるものとなる。
【0031】
炭化水素基としては、本発明の趣旨に反しない限りどのようなものでもよい。分子構造中には他の基や酸素等の他の元素が含まれてもよいが、イオン解離の容易さや2色回転粒子の主成分である樹脂等との相溶性を考慮すると炭素と水素とからのみなるものが好ましい場合が多い。炭化水素基には、具体的にメチル、エチル、ブチル、プロピル等の飽和結合を有するものや、エチレン、ブチレン、プロピレン等の不飽和結合を有するものが含まれる。さらに置換または非置換の芳香族基が含まれていてもよい。
【0032】
より具体的には、電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質であることが好ましい。
【0033】
このようなイオンが陽イオンである場合には、対をなす陰イオンには、BF4 −、ClO4 −、CF3SO3 −、等より選択された電解質を用いることができる。また、陰イオンである場合には、対をなす陽イオンには、Li、Na、K、等のアルカリ金属を中心とした陽イオンが望ましい。炭化水素基を分子構造中に有する電解質は、単独で使用し、あるいは複数の種類を同時に混合使用しても良い。
【0034】
この電解質の添加濃度は、0.1〜5重量%程度が望ましい。5量%を超えて添加しても樹脂中での均一分散が難しく帯電アップの効果が期待できないことが多い。また、0.1重量%未満では十分な帯電性能を期待できないことが多い。
【0035】
炭化水素基を分子構造中に有する電解質は、2色回転粒子を構成する組成物中に適宜分散して存在させる。この分散には公知のどのような方法を利用することも可能である。たとえば、2色回転粒子の主成分である母体樹脂に混練すればよい。
【0036】
このような電解質は、着色部の内部まで存在していても、表層のみにとどまっていても、内部のみにとどまっていてもよい。このような電解質は表層に近い部分に存在する方が好ましい場合が多いが、たとえば外部に浸出しやすい電解質の場合には、内部のみにとどまっているように分布させることが有効であることもある。
【0037】
2色回転粒子は、半球状の二つの着色部のいずれについても、主に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、カルバナワックス、アマイドワックスおよびパラフィンワックスからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。半球状の二つの着色部のそれぞれの構成は一致していなくてもよい。ここで、「主に」とは、2色回転粒子の半球状のそれぞれの着色部を構成する組成物の構成要素の内、着色剤や上記電解質、触媒や改質の目的のための添加剤を除いた要素がこれらの樹脂からなっていることを意味する。このため、この樹脂成分を母体樹脂と呼ぶ場合がある。樹脂は、2種類以上を混合してもよい。特にポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂は、比重が0.9〜1.0と非常に小さく粒子の回転動作に要する消費電力を低減できるため有効である。
【0038】
半球状の二つの着色部の着色には、顔料、染料等の着色剤を使用することができる。白色の着色部としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部が好ましい。分散が容易であり、優れた白色度と帯電性能とを実現しやすいからである。2種類以上混合してもよい。
【0039】
また、黒色の着色部としては、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部が好ましい。分散が容易であり、優れた黒色度と帯電性能とを実現しやすいからである。2種類以上混合してもよい。
【0040】
なお、上記の白色の着色部と黒色の着色部とを組み合わせて使用するとコントラストが明確になり好ましい。着色剤を2色回転粒子中に分散させる方法として公知の方法を使用することができる。たとえばニーダによる混練を例示できる。
【0041】
上記に示した母体樹脂と電解質、着色剤等を混合し、ニーダ、押し出し機などを用いて溶融混練し、白色部と非白色部の2層構造からなる多層シートを作製することができる。このとき、電解質は、白色部、非白色のどちらか一方に含まれていても、両方に含まれていても良い。
【0042】
多層シートの作製方法としては、一般的なキャスト方式、ラミネート方式等の多層シートの形成が可能な製造方法であればどのような方法を用いても良い。
【0043】
この2層シートを粗粉砕後、ジェットミル等で微粉砕し、風力分級機により微細化したシートの断片を得ることができる。また切削機等を用いてカッティングしても良い。
【0044】
このように粉砕あるいはカッティングした2層シートの断片を球形化するには、オイル中に分散したシート断片を樹脂の溶融温度以上に加熱する。溶融した樹脂の表面張力により球形化が実現する。この目的のために使用するオイルとしては、電気絶縁性が高く、揮発性の少ないシリコーンオイル等を用いることができる。このように球形化した粒子を、篩分、湿式分級等の方法で分級し、粒径分布のなるべく狭い粒子を採取することで2色回転粒子が得られる。このような方法で作製した2色回転粒子をシリコーンゴム等の絶縁物に分散してシート型表示装置を作製することができる。
【0045】
2色回転粒子の形状としては、真球状であり、同一粒径で揃っており、色の異なる二つの領域(着色部)に正確に二分されており、この二つの領域の比重が同一であることが理想的であるが、実際には、真球状からのずれ、粒径のバラツキ、領域境界の湾曲、比重の相違等が存在する。しかしながら、本発明に係る2色回転粒子は、このような場合でも、スムーズな回転が可能であり、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子となる。
【0046】
シート型表示装置の作製方法としては、まず上記のようにして作成した2色回転粒子を架橋反応前の液状シリコーンゴムとよく混合し、分散する。この分散系を板状あるいは膜状に成形し、その後シリコーンゴムを架橋させる。
【0047】
架橋反応後のシリコーンゴムを低粘性シリコーンオイル等の透光性を有する誘電性液体に所定時間浸漬することで、2色回転粒子の周囲に、この誘電性液体で充填された空隙ができる。2色回転粒子にこの誘電性液体が吸収され2色回転粒子が膨潤する等の不具合を生じないように、2色回転粒子が透光性液体に不溶であるか、あるいは2色回転粒子への透光性液体の吸収が極めて遅いことが重要である。浸透時間さえ適正であれば空隙の生成は容易である。
【0048】
次に、この2色回転粒子を駆動するのに必要な電極として、表示が確認できるよう光透過性を示すITOやSnO2等の透明導電膜を用いるのが好ましい。
【0049】
上記の技術により、低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を実現できる。
【0050】
すなわち、本発明の表示用2色回転粒子は、母体樹脂に炭化水素基を分子構造中に有する電解質を混入させることで、粒子表面の電荷量をアップすることができ、低電圧で2色回転粒子が一斉に同期して回転するようにできる。すなわち優れた回転応答性を実現できる。
【0051】
また、この2色回転粒子を用いるシート型表示装置は、低電圧で駆動でき、2色回転粒子の優れた回転応答性に起因して、高解像度、高表示応答性、良好な表示を実現でき、低エネルギー、低コストが実現でき、紙のように薄くフレキシブルでかつ画像の書き込み、表示、消去が容易いペーパライクディスプレイへの応用が期待できる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例に沿って、本発明に係る2色回転粒子の製造方法について説明を行う。
【0053】
[実施例1]
低密度ポリエチレン(東ソー社製)79重量%と、酸化チタン(チタン工業社製)20重量%と電解質としてp−トルエンスルホン酸ナトリウム1重量%とを混合した組成物を2色回転粒子の白色部用組成物、低密度ポリエチレン80重量%と、マグネタイト(チタン工業社製)18重量%と、カーボン(キャボット社製)2重量%とを混合した組成物を非白色部用組成物とし、各々の組成物を溶融混練後、キャストフィルム製造装置により、膜厚20μmの白黒2層シートを作製した。
【0054】
これをアトマイザーにより冷凍粉砕後、200℃に加熱したジメチルシリコーン(東レダウシリコーン社製、SH200、粘度1cS)中で球形化した。篩を用いて分級操作後、数時間乾燥した。作製した2色回転粒子を2液型シリコーンゴム(信越化学製KE109)に分散させ、48時間放置して硬化させた。2液型シリコーンゴムの硬化後、ジメチルシリコーン(東レダウシリコーン社製、SH200、粘度1cS)中に60時間浸漬し、膨潤させたシリコーンゴムシートの表裏両面に透明電極を密着させ、ディスプレイデバイスとして電場を印加すると、白黒の反転表示を50Vで繰り返し駆動できた。また、全面白色に表示させ、測色計により反射率を測定すると、反射率40%を示した。光学顕微鏡で2色回転粒子の状態を確認するとほぼ100%、白色部を表示側に向けて静止していた。
【0055】
[実施例2]
実施例1の電解質に代えてp−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示を50Vで繰り返し駆動できた。また、白色部の反射率は40%を示し、良好な表示特性が得られた。
【0056】
[実施例3]
実施例1の電解質に代えて過塩素酸テトラエチルアンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示を40Vで繰り返し駆動できた。また、白色部の反射率は40%を示し、良好な表示特性が得られた。
【0057】
[実施例4]
実施例1の非白色部の材料組成に代えて、低密度ポリエチレン79重量%と、p−トルエンスルホン酸ナトリウム1重量%と、マグネタイト(チタン工業社製)18重量%と、カーボン(キャボット製社)2重量%とを混合した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示を50Vで繰り返し駆動できた。また、白色部の反射率は40%を示し、良好な表示特性が得られた。
【0058】
[比較例1]
実施例1の材料組成からp−トルエンスルホン酸ナトリウムを除いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示に必要な電圧は、150Vと高い値を示した。また、白色部の反射率は20%で、グレーな状態を示した。光学顕微鏡で2色回転粒子の状態を確認すると80%が白色部を、20%が非白色部と白色部の中間、あるいは非白色部の面積比率が大きい状態で表示側に向けて静止しており、画質劣化の原因が確認された。
【0059】
[比較例2]
実施例1の電解質に代えて過塩素酸リチウムを用いた以外は実施例1と同様にして2色回転粒子を作製し、ディスプレイデバイスの駆動電圧、白色部反射率を測定した。白黒の反転表示に必要な電圧は、130Vと高い値を示した。また、白色部の反射率は20%で、グレーな状態を示した。光学顕微鏡で2色回転粒子の状態を確認すると85%が白色部を、15%が非白色部と白色部の中間、あるいは非白色部の面積比率が大きい状態で表示側に向けて静止しており、画質劣化の原因が確認された。
【0060】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0061】
(付記1) 電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、
炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている2色回転粒子。
【0062】
(付記2) 前記電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質である付記1に記載の2色回転粒子。
【0063】
(付記3) 2色回転粒子が、主に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、カルバナワックス、アマイドワックスおよびパラフィンワックスからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる、付記1または2に記載の2色回転粒子。
【0064】
(付記4) 前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部である、付記1〜3のいずれかに記載の2色回転粒子。
【0065】
(付記5) 前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部である、付記1〜4のいずれかに記載の2色回転粒子。
【0066】
(付記6) 電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該2色回転粒子として付記1〜5のいずれかに記載の2色回転粒子を使用するシート型表示装置。
【0067】
【発明の効果】
低電圧で回転応答性に優れた2色回転粒子および、低電圧で駆動でき、高解像度でかつ表示応答性に優れ、良好な表示を行うことができるシート型表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シート型表示装置の表示部の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 着色2色回転粒子
2 空隙
3 シート基材
Claims (5)
- 電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置に使用する2色回転粒子において、
炭化水素基を分子構造中に有する電解質が、当該半球状の二つの着色部のいずれか一方または両方に含まれている2色回転粒子。 - 前記電解質が、イオン解離した場合に、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、CH3C6H4SO3 −、C2H5C6H4SO3 −、C3H7C6H4SO3 −からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを生じ得る電解質である請求項1に記載の2色回転粒子。
- 前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、アルミナおよび炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも1種の顔料を含む白色部である、請求項1または2に記載の2色回転粒子。
- 前記半球状の二つの着色部のいずれか一方が、カーボン、マグネタイト、キナクリドン、銅フタロシアニン誘導体、ジアゾ誘導体およびナフトール誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の着色剤を含む黒色部である、請求項1〜3のいずれかに記載の2色回転粒子。
- 電界の作用により、シート内にある半球状の二つの着色部よりなる2色回転粒子を回転させて表示を行うシート型表示装置において、当該2色回転粒子として請求項1〜4のいずれかに記載の2色回転粒子を使用するシート型表示装置。
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