JP4073034B2 - 磁性体−生体物質複合体型構造体、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を有するペプチド断片及びその遺伝子、ならびに磁性体−生体物質複合体型構造体の製造方法 - Google Patents

磁性体−生体物質複合体型構造体、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を有するペプチド断片及びその遺伝子、ならびに磁性体−生体物質複合体型構造体の製造方法 Download PDF

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本発明は、磁性体−生体物質複合体型構造体、前記構造体調製用の磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を有するペプチド断片及びその遺伝子、ならびに磁性体−生体物質複合体型構造体の製造方法に関する。
磁性体含有構造体は、磁力により容易に捕集される点から、主に生化学分野において、医療診断薬用担体、細菌あるいは細胞分離用担体、核酸あるいは蛋白質分離精製用担体、ドラッグ・デリバリー用担体、酵素反応担体、細胞培養用担体等として、分離操作性優れた担体機能の利用が期待され、更には、核酸、ペプチド、タンパク質、糖鎖等の生体高分子を含む薬剤候補物質から、目的とする生理作用、薬理効果を示す標的物質を効率的に選択する、薬剤スクリーニング分野に適する担体としての応用も期待されている。
これらの分野において、担体として、磁性体含有構造体を利用する場合、該磁性体含有構造体の表面に何らかの形で生理活性物質を固定・担持する手段が必要となる。その担持方法の例として、以下の方法が文献に開示されている。
特開平05−209884号公報(特許文献1)は、磁性細菌より抽出した磁性粒子を担体とし、該磁性粒子表面に抗体フラグメントを固定化する方法を開示している。磁性細菌由来の磁性粒子は、その周囲は脂質膜で覆われており、この脂質膜に対して、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートを利用して、抗体フラグメントの固定化を行っている。
特開平05−080052号公報(特許文献2)は、ポリスチレンを主成分としたポリマー粒子にFe34をコーティングしたフェライト粒子を担体とし、粒子表面にカップリング剤で−(CH23NHCO(CH23CONH(CH26NH2官能基を修飾した後、末端アミノ基を有する官能基を利用して、抗ウサギIgG(Fc)を固定化する方法を開示している。
特開平07−063761号公報(特許文献3)は、平均粒径0.3〜1.0 μmの磁性を有する磁性微粒子を、核となる平均粒径1.0〜10 μmの樹脂粒子に対して、高速気流中衝撃法を用いて固定化し、固定化された磁性微粒子の表面をシランカップリング剤で処理し、該表面処理によって導入した官能基を利用して、直接に、あるいは他の官能基を結合させた後、生理活性物質を結合させることを特徴とする生理活性物質固定化磁性微粒子の製造法を開示している。
特表平10−502494号公報(特許文献4)は、マグネタイト微粒子の表面にアミノシラン化処理を施し、導入される該アミノ基を利用して、グルタルアルデヒドを用いて、HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)抗体を担持する方法を開示している。
特開平05−209884号公報 特開平05−080052号公報 特開平07−063761号公報 特表平10−502494号公報
上述する生体物質を担体に含まれる磁性体上に担持する従来技術においては、生体物質を磁性体に担持する手法として、化学的手法によって、生体物質との間に形成される共有結合に拠る方法を利用している。このような手法を用いる場合、共有結合を形成するための条件(温度、pH、試薬等)によっては、生体物質が変換、変性を受ける可能性がある。例えば、生体物質本来の機能を発揮する部位(分子認識部位や触媒部位等)中に試薬による修飾が導入され、生体物質本来の機能へ影響を及ぼす可能性がある。また、共有結合の形成される位置によっては、生体物質本来の機能を発揮する部位(分子認識部位や触媒部位等)の近傍に共有結合の形成がなされ、それに伴い、生体物質本来の機能発揮の障害を引き起こす可能性もある。
前記のような影響を受けた結果として、得られる生体物質を担持した担体は、目標とする、医療・診断薬担体、細菌・細胞分離担体、核酸・蛋白分離精製担体、ドラッグ・デリバリー担体、酵素反応担体、細胞培養担体、薬剤スクリーニング担体として、本来の機能が達成できない状況が生じ得る。
本発明は、前記の課題を解決するものであり、磁性体を含む担体上にタンパク質等の生体物質を担持する際、磁性体表面に担持される生体物質は、その機能を十分発揮できる状態に保持でき、また、目的とする生体物質を選択的に磁性体表面に担持することを可能とする新規な担持手法、かかる手法に基づく、磁性体−生体物質複合体型構造体、ならびにその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、磁性体表面に対して、特定のアミノ酸配列を有するペプチドは再現性よく、また、安定した結合をする機能を有することを見出し、さらに、生体物質に対して、前記磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片を含むスペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体とすると、このスペーサー部分の磁性体に対する結合能によって、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持することが可能であることを見出した。加えて、スペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体自体、その生体物質が有する本来の機能を十分に発揮する状態に調製することが可能であり、結果として、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持した際にも、磁性体表面に担持される生体物質は、その機能を十分発揮できる状態に保持できることを確認した。
加えて、本発明者らは、磁性体に対し結合能を有するアミノ酸配列を有するペプチド断片は、用いる磁性体に対する結合能について、ランダム・ペプチド・ライブラリをスクリーニングすることで、所望の磁性体に対する結合能を有するペプチド断片を簡便に取得することができ、そのペプチド断片のアミノ酸配列に基づき、上記の磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片を含むスペーサーを容易に設計することが可能であることも見出した。これらの知見に加えて、本発明者らは、種々の生体物質に対して、その機能を保持する生体物質−スペーサー複合体を調製することが可能であり、それを利用して、磁性体を含む担体の磁性体表面に、直接、磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片を含むスペーサー介して生体物質を担持して得られる構造体は、種々の用途・目的に極めて有効なものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体は、
磁性体を含有する担体上に生体物質を担持した構造体であって、
前記生体物質は、アミノ酸配列を含むスペーサーを介して、前記担体表面に担持されていることを特徴とする磁性体−生体物質複合体型構造体である。その際、生体物質の担持に用いる、前記アミノ酸配列を含むスペーサーは、アミノ酸2ユニット以上からなるペプチド構造を含むスペーサーであることが好ましい。
また、前記アミノ酸2ユニット以上からなるペプチド構造は、
前記担体に含まれる磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチド断片であることが望ましい。なお、前記磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列は、
前記磁性体に対する結合能に関して、ランダム・ペプチド・ライブラリをスクリーニングすることにより選択されたアミノ酸配列であることが可能である。
一方、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体では、
前記生体物質は、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質、ならびにそれらの複合体からなる群から選択される生体物質一つ以上であることが望ましい。例えば、前記タンパク質は、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である場合にも、好適に適用できる。
また、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体では、
前記磁性体として、Fe成分を含む磁性体、例えば、MO・Fe23(M:2価の金属)構造、またはFe23構造を含む磁性体を好適に利用でき、かかる磁性体を採用する際には、例えば、前記スペーサーに含まれるアミノ酸配列として、
下記の配列番号:15〜配列番号:30に示すアミノ酸配列、ならびにそれらの複合体からなる群から選択されるアミノ酸配列1つ以上を含むアミノ酸配列を選択することが好ましい。
Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)
Met-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr(配列番号:16)
Met-Leu-Pro-His-Arg-Pro-Pro-His-Tyr-Met-Ser-His(配列番号:17)
Met-Leu-Asn-Pro-Pro-Gln-Gly-His-His-His-Met-Gly(配列番号:18)
His-Thr-Met-His-Ala-Trp-Pro-Pro-Pro-Ala-Pro-Phe(配列番号:19)
His-Ala-His-His-Gln-Gln-His-Leu-Lys-Pro-Gln-Ser(配列番号:20)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:21)
Gly-Tyr-Ala-Ser-Pro-Lys-Ala-His-Trp-Ser-Ser-Gly(配列番号:22)
Ala-Ser-Arg-Pro-Met-His-Met-Pro-His-Ile-Pro-Ala(配列番号:23)
Ala-Pro-Gly-Met-Asn-Ala-Met-Ala-Ser-Ile-His-His(配列番号:24)
His-Asn-His-Gln-Phe-Gln-Ala-Ser-Met-His-Pro-Asp(配列番号:25)
Arg-Ser-Ile-His-His-Asp-Ser-His-Met-Leu-Arg-Gly(配列番号:26)
Thr-His-Ser-Asn-Ser-Met-Thr-Arg-Asn-Thr-Pro-Met(配列番号:27)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:28)
Asp-Gly-His-Gln-Pro-Phe-His-Thr-Leu-Lys-Pro-Ala(配列番号:29)
Gln-Glu-Ser-His-Gly-Gly-Pro-Pro-Arg-Ser-Pro-His(配列番号:30)
対応して、本発明は、上記のスペーサーに含まれるペプチド構造に利用可能な、磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片の発明をも提供し、
本発明にかかる磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片の発明の一例は、
下記の配列番号:15〜配列番号:30に示すアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする磁性体に対して結合能を有するペプチド断片である。
Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)
Met-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr(配列番号:16)
Met-Leu-Pro-His-Arg-Pro-Pro-His-Tyr-Met-Ser-His(配列番号:17)
Met-Leu-Asn-Pro-Pro-Gln-Gly-His-His-His-Met-Gly(配列番号:18)
His-Thr-Met-His-Ala-Trp-Pro-Pro-Pro-Ala-Pro-Phe(配列番号:19)
His-Ala-His-His-Gln-Gln-His-Leu-Lys-Pro-Gln-Ser(配列番号:20)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:21)
Gly-Tyr-Ala-Ser-Pro-Lys-Ala-His-Trp-Ser-Ser-Gly(配列番号:22)
Ala-Ser-Arg-Pro-Met-His-Met-Pro-His-Ile-Pro-Ala(配列番号:23)
Ala-Pro-Gly-Met-Asn-Ala-Met-Ala-Ser-Ile-His-His(配列番号:24)
His-Asn-His-Gln-Phe-Gln-Ala-Ser-Met-His-Pro-Asp(配列番号:25)
Arg-Ser-Ile-His-His-Asp-Ser-His-Met-Leu-Arg-Gly(配列番号:26)
Thr-His-Ser-Asn-Ser-Met-Thr-Arg-Asn-Thr-Pro-Met(配列番号:27)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:28)
Asp-Gly-His-Gln-Pro-Phe-His-Thr-Leu-Lys-Pro-Ala(配列番号:29)
Gln-Glu-Ser-His-Gly-Gly-Pro-Pro-Arg-Ser-Pro-His(配列番号:30)
さらには、本発明にかかる磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片をコードする遺伝子DNAの発明の一例は、
下記の配列番号:15〜配列番号:30に示すアミノ酸配列を含んでなる、磁性体に対して結合能を有するペプチド断片をコードするDNAを含むことを特徴とする遺伝子DNAである。
Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)
Met-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr(配列番号:16)
Met-Leu-Pro-His-Arg-Pro-Pro-His-Tyr-Met-Ser-His(配列番号:17)
Met-Leu-Asn-Pro-Pro-Gln-Gly-His-His-His-Met-Gly(配列番号:18)
His-Thr-Met-His-Ala-Trp-Pro-Pro-Pro-Ala-Pro-Phe(配列番号:19)
His-Ala-His-His-Gln-Gln-His-Leu-Lys-Pro-Gln-Ser(配列番号:20)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:21)
Gly-Tyr-Ala-Ser-Pro-Lys-Ala-His-Trp-Ser-Ser-Gly(配列番号:22)
Ala-Ser-Arg-Pro-Met-His-Met-Pro-His-Ile-Pro-Ala(配列番号:23)
Ala-Pro-Gly-Met-Asn-Ala-Met-Ala-Ser-Ile-His-His(配列番号:24)
His-Asn-His-Gln-Phe-Gln-Ala-Ser-Met-His-Pro-Asp(配列番号:25)
Arg-Ser-Ile-His-His-Asp-Ser-His-Met-Leu-Arg-Gly(配列番号:26)
Thr-His-Ser-Asn-Ser-Met-Thr-Arg-Asn-Thr-Pro-Met(配列番号:27)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:28)
Asp-Gly-His-Gln-Pro-Phe-His-Thr-Leu-Lys-Pro-Ala(配列番号:29)
Gln-Glu-Ser-His-Gly-Gly-Pro-Pro-Arg-Ser-Pro-His(配列番号:30)
例えば、本発明において利用する、磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片を含むスペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体の発明の一例は、
配列番号:15〜配列番号:30に示すアミノ酸配列からなる磁性体に対して結合能を有するペプチドと、配列番号:1または配列番号:3に示すポリヒドロキシアルカノエート重合酵素タンパク質とを融合してなる融合型タンパク質であることを特徴とする融合型ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素タンパク質である。
加えて、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体の製造方法は、
磁性体を含有する担体上に生体物質を担持した構造体であって、前記生体物質は、アミノ酸配列を含むスペーサーを介して、前記担体表面に担持されている磁性体−生体物質複合体型構造体を製造する方法であって、
(1)前記アミノ酸配列を含むスペーサーと前記生体物質とが連結してなる生体物質−スペーサー融合体を調製する工程、及び
(2)前記磁性体を含有する担体と前記生体物質−スペーサー融合体とを接触させる工程とを含み、
前記担体表面に前記生体物質−スペーサー融合体中のスペーサー部分によって結合させて、担持を行うことを特徴とする磁性体−生体物質複合体型構造体の製造方法である。その際、前記アミノ酸配列を含むスペーサーは、アミノ酸2ユニット以上からなるペプチド構造を含むスペーサーとすることが好ましい。
このアミノ酸2ユニット以上からなるペプチド構造を含むスペーサーを利用する際、
前記生体物質は、タンパク質を含んでおり、
前記生体物質−スペーサー融合体を調製する工程では、
前記生体物質に含まれるタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、
前記スペーサーに含まれるペプチド構造のアミノ酸配列をコードする塩基配列とを連結してなる塩基配列を有する連結遺伝子に基づき、前記スペーサーに含まれるペプチド構造と前記生体物質に含まれるタンパク質とが連結してなる融合体型タンパク質を発現させる工程を含み、
前記融合体型タンパク質によって、前記生体物質とペプチド構造を含むスペーサーとを融合してなる前記生体物質−スペーサー融合体を調製する構成を採用することが可能である。例えば、前記生体物質に含まれるタンパク質が、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である際に、前記の構成を好適に採用することができる。
また、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体の製造方法は、
前記磁性体は、Fe成分を含む磁性体、例えば、MO・Fe23(M:2価の金属)構造、またはFe23構造を含む磁性体である場合に好適に利用でき、かかる磁性体を利用する際には、
前記スペーサーに含まれるアミノ酸配列は、下記の配列番号:15〜配列番号:30に示すアミノ酸配列、ならびにそれらの複合体からなる群から選択されるアミノ酸配列1つ以上を含むアミノ酸配列を選択することができる。
Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)
Met-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr(配列番号:16)
Met-Leu-Pro-His-Arg-Pro-Pro-His-Tyr-Met-Ser-His(配列番号:17)
Met-Leu-Asn-Pro-Pro-Gln-Gly-His-His-His-Met-Gly(配列番号:18)
His-Thr-Met-His-Ala-Trp-Pro-Pro-Pro-Ala-Pro-Phe(配列番号:19)
His-Ala-His-His-Gln-Gln-His-Leu-Lys-Pro-Gln-Ser(配列番号:20)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:21)
Gly-Tyr-Ala-Ser-Pro-Lys-Ala-His-Trp-Ser-Ser-Gly(配列番号:22)
Ala-Ser-Arg-Pro-Met-His-Met-Pro-His-Ile-Pro-Ala(配列番号:23)
Ala-Pro-Gly-Met-Asn-Ala-Met-Ala-Ser-Ile-His-His(配列番号:24)
His-Asn-His-Gln-Phe-Gln-Ala-Ser-Met-His-Pro-Asp(配列番号:25)
Arg-Ser-Ile-His-His-Asp-Ser-His-Met-Leu-Arg-Gly(配列番号:26)
Thr-His-Ser-Asn-Ser-Met-Thr-Arg-Asn-Thr-Pro-Met(配列番号:27)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe(配列番号:28)
Asp-Gly-His-Gln-Pro-Phe-His-Thr-Leu-Lys-Pro-Ala(配列番号:29)
Gln-Glu-Ser-His-Gly-Gly-Pro-Pro-Arg-Ser-Pro-His(配列番号:30)

なお、本発明が目標とする、「磁性体−生体物質複合体型構造体」とは、「磁性体を含む担体」上に、「生体物質を複合体の形態」とした上で担持してなる、「磁性体を含む担体を基体とし、その表面上に生体物質を担持層として有する構造体」を意味する。
本発明により、磁性体を含む担体上にタンパク質等の生体物質を担持する際、磁性体表面に担持される生体物質を、その機能を十分発揮できる状態に保持でき、また、目的とする生体物質を選択的に磁性体表面に担持することが可能となる。
発明の実施の形態
本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体では、従来利用されている、化学的手法を利用して、生体物質を磁性体表面に共有結合を介して固定する手法に代えて、例えば、用いる磁性体に対する結合能について、ランダム・ペプチド・ライブラリをスクリーニングすることで簡便に取得することができ、所望の磁性体に対する結合能を有するペプチド断片のアミノ酸配列に基づき、前記磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片を含むスペーサーを設計し、生体物質に対して、該スペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体とすると、このスペーサー部分の磁性体に対する結合能によって、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持する手法を用いている。
従って、前記スペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体において、生体物質の本来の機能が発揮されていることを、前もって確認しておくことができ、その後、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持する際、生体物質の機能に対して、影響を及ぼす試薬等を利用する化学的な反応を利用していないので、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持した際にも、磁性体表面に担持される生体物質は、その機能を十分発揮できる状態に保持されたものとなる。加えて、利用する磁性体に応じて、スクリーニングによって、予め所望の結合能を有するアミノ酸配列を選別することができ、また、対象とする生体物質に応じて、生体物質と予め結合させるスペーサーの結合形態と、スペーサー中に含まれる磁性体に対する結合能を示すアミノ酸配列とを設計できるので、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体は、利用する磁性体、対象とする生体物質の双方ともに、広範囲に適用することが可能である。
以下に、本発明について、より詳しく説明する。
<磁性体>
本発明で利用する、磁性体含有担体を構成する際に利用することが可能な「磁性体」は、本発明で結合用スペーサーに含まれる、アミノ酸配列を有するペプチドがその親和力により好適に結合することのできるものであれば、何れについても適宜選択して用いることができる。また、前記結合用スペーサーを介した生体物質の担持条件や、作製した磁性体−生体物質複合体型構造体の応用の形態等に応じて、磁性体の種類や構造を適宜選択して用いることができる。なお、本発明の磁性体含有担体には、粒状、繊維状、針状、平板あるいはフィルム状の構造体中に磁性体を構成成分として含むものが包含される。
本発明に用いる担体を構成する磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄(Fe34)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe23)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルなどの合金を挙げることができ、これらに限定されるものではない。ここで、例えば、生体物質複合体を担持・固定化する場合、あるいは、生体物質複合体を担持・固定化した構造体とした上で、生体内に投与する場合などでは、生体に対する適合性の良好なマグネタイト(Fe34)の他、必要に応じて、マグネタイトの金属元素の一部を少なくとも1種類の他の金属元素で置換した各種フェライト組成などが好適に適用可能である。これら磁性体の形状は、生成条件によって変化し、多面体、8面体、6面体、球状、棒状、鱗片状等などがあるが、異方性の少ない構造が担体とした際、機能の安定発現のためにはより好ましい。本発明に利用する磁性体含有担体を構成する磁性体の一次粒子の粒子径は、その用途に応じて、適宜選択可能であるが、例えば、0.001〜10μmの範囲内の粒径を有する粒子を用いると良い。
また、本発明に利用する磁性体含有担体を構成する磁性体としては、超常磁性を有するものについても、好ましく用いることができる。例えば、フェライトの粒子径が20nm程度以下と小さい場合には、フェライト微粒子は熱擾乱影響を受け、超常磁性を示すようになり、残留磁化や保磁力を持たなくなる。超常磁性であっても、外部磁界を印加することにより磁気的操作が可能であり、また、超常磁性であれば、残留磁化や保磁力を持たないので、外部から印加される磁界の無い際には、磁性体含有担体相互の磁気的な凝集の生じるおそれがない。
本発明において利用する磁性体含有担体は、上述の磁性体単体、あるいは2種類以上の磁性体の複合体を含有するものであってもよい。
更に、本発明において利用する磁性体含有担体は、一般的な高分子化合物や無機系固形物、例えば、樹脂、ガラス、セラミック、金属、金属酸化物等に、前記磁性体が混合や蒸着、めっき等の方法で含有されていてもよいが、本発明の方法により、磁性体含有担体上に生体物質複合体を担持するためには、少なくとも前記磁性体含有担体の表面の一部に、磁性体が露出していることが必要である。
この磁性体を含む担体を構成する際、磁性体以外の構成材料として利用可能なものとして、例えば、有機高分子化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系重合性モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性モノマー、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性モノマー、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン類などのビニル系重合性モノマー、からなる群より選択された重合性モノマーを重合させて製造された有機高分子化合物を挙げることができる。
また、例えば、無機系固形物の例としては、カオリナイト、ベントナイト、タルク、雲母等の粘土鉱物;アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムゲル等の不溶性無機塩;金、銀、プラチナ、銅等の金属;GaAs,GaP,ZnS等の半導体化合物などを用いることができるが、勿論、これらに限定されるものではない。これら磁性体以外の構成材料は、必要に応じて二種以上を組合せて用いることができる。
磁性体含有担体の構成に利用される、磁性体以外の構成材料を利用して成形される担体形状は、本発明により作製される磁性体−生体物質複合体型構造体の応用を考慮した場合、多くの場合、粒状であることが好ましいが、応用の形態によっては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセテート、トリセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのプラスチックからなるフィルム、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン等からなる多孔性高分子膜、木板、ガラス板、シリコン基板、木綿、レーヨン、アクリル、絹、ポリエステルなどの布、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、ダンボール紙、レジンコート紙などの紙を用いて、膜状やシート状とすることもできるが、勿論、これらに限定されるものではない。なお、これら膜状やシート状の材料は、その表面に磁性体が保持可能であれば、滑らかなものであっても、凹凸のついたものであっても良い。
<生体物質>
本発明の磁性体−生体物質複合体型構造体において、前記磁性体を含有する担体上に担持される「生体物質」には、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質が含まれ、更に詳しくは、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質から選択される生体分子を含んでなるものであり、具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプタ、酵素、ペプチドの何れかから選択された物質を含むものであれば、如何なる物質にも本発明を適用することができる。更には、前記の「生体物質」を産生する細菌や細胞そのものも、本発明が対象とする「生体物質」として用いることができる。なお、後述する、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むスペーサー、特に、そのペプチド構造との融合体を構成した状態で、磁性体を含有する担体上に担持することにより、磁性体−生体物質複合体型構造体を製造する場合には、生体物質は、ペプチド構造との融合体を構成可能なペプチド鎖を有するもの、特には、タンパク質を含んでいることがより好ましい。
<磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造>
本発明において利用する、磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列は、ランダム・ペプチド・ライブラリのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列もしくは磁性体の化学的性質により合理的に設計されたアミノ酸配列である。
本発明において、磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列の選択に際し、そのスクリーニングに用いられるランダム・ペプチド・ライブラリとしては、ランダム・ペプチドを可溶性の形で化学的に合成したランダム合成ペプチド・ライブラリーや、樹脂ビーズ上で合成した固相固定化ペプチド・ライブラリー、化学合成されたランダム配列のDNAをリボソーム無細胞系で生合成したペプチド・ライブラリー、例えば、M13系ファージの表面蛋白質(例えばgeneIII 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージディスプレイ・ペプチド・ライブラリー、同様の手法で、細菌の膜タンパク質、Omp A(Francisco ら、1993、PNAS、90、10444−10448、あるいはPistor と Hoborn、 1989、 Klin.Wochenschr.、 66、 110−116)、PAL(Fuchs ら、 1991、 Bio/Technology、 9、 1369−1372)、Lamb(Charbitら、 1988、 Gene、 70、 181−189 及び Bradbury ら、 1993、 Bio/Technology、 1565−1568)、フィンブリン(Hedegaard と Klemm、 1989、 Gene、 85、 115−124 及びHofnung、 1991、 Methods Cell Biol.、 34、 77−105)、あるいは、IgAプロテアーゼβ領域(Klauser ら、1990、 EMBO J.、 9、 1991−1999)に融合して提示したランダム・ペプチド・ライブラリ、などを挙げることができる。
これらランダム・ペプチド・ライブラリを利用して、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列をスクリーニングする手法の代表例として、化学合成ペプチド・ライブラリーを用いる手法、ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーを用いる手法等が挙げられる。
化学合成ペプチド・ライブラリーを用いる場合には、ペプチド・ライブラリーと磁性体とを接触させ、磁性体に対して結合能を有しないペプチドを除き、しかる後に、磁性体に結合しているペプチドを回収し、エドマン分解等を用いて、そのアミノ酸配列を決定する。
一方、ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーを用いる場合には、磁性体が粒形の場合には、カラムやプレート上に該磁性体を固定化し、あるいは磁性体が板状の場合には、そのままで、その磁性体表面に、上記のライブラリーを添加することによって接触させ、磁性体表面に結合ファージを残し、非結合ファージは洗浄により洗い流す。洗浄後、残ったファージを酸などにより溶出し、緩衝液で中和した後、大腸菌に感染させ、ファージを増幅する。この選別操作を複数回繰り返すと、目的の磁性体に結合能のある複数のクローンが濃縮される。ここで、単一なクローンを得るため、再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈澱精製し、その単一クローン・ファージが有するランダム領域の塩基配列を解析すれば、磁性体に対する結合能を示すペプチドの構造(アミノ酸配列)を知ることができる。
ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーを用いた、磁性体に対して結合能を有するペプチドのスクリーニングは、磁性体に対してより強く結合するファージを濃縮する、所謂パンニング操作を含んでいるために、より信頼性のあるペプチド候補を選別できるため、本発明に好適に適用することができる。ファージ・ディスプレイ・ランダム・ペプチド・ライブラリーを構築する方法としては、例えば、M13系ファージの表面蛋白質(例えば、geneIII蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結し作製すればよい。その構築例としては、Scott、 JK.and Smith、 GP.、 Science Vol. 249、 386、 1990、 やCwirla、 SE et al.、 Proc.Natl. Acad. Sci. USA Vol. 87、 6378、 1990 等の報告がある。挿入するランダム合成遺伝子の大きさは、ペプチドが安定に発現できれば、特に制限はないが、作製したランダム・ペプチド・ライブラリが、全てのランダム配列を網羅し、しかも、磁性体に対する結合能を有するためには、6〜40アミノ酸に相当する長さ(分子量約600から4000に相当)が適当で、中でも、7〜18アミノ酸に選択すると好ましい。目的の磁性体に結合するファージを選択するためには、磁性体を、例えば、カラムやプレート上に固定化し、上記のライブラリーを磁性体に接触させ、結合ファージを残し、非結合ファージは洗浄により洗い流す。洗浄後、残ったファージを酸などにより溶出し、緩衝液で中和した後、大腸菌に感染させ、ファージを増幅する。この選別操作を複数回繰り返すと、目的の磁性体に結合能のある複数のクローンが濃縮される。ここで、単一なクローンを得るため、再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈澱精製し、その単一クローン・ファージが有するランダム領域の塩基配列を解析すれば、磁性体に対する結合能を示すペプチドの構造(アミノ酸配列)を知ることができる。
ランダムなアミノ酸配列を有するペプチド・ライブラリーの作製方法としては、上記のようなファージを用いる方法の他、化学合成したペプチドを用いることも可能である。その化学合成ペプチド・ライブラリーの作製方法として、例えば、ビーズを用いる方法(Lam、KS et al、 Nature、354、 82、 1991)、液相フォーカシング法(Houghton、 RA et al.、 Nature、 354、84、 1991)、マイクロプレート法(Fodor、 SPA et al.、 Science、 251、 767、 1991)などが報告されており、何れも、本発明におけるスクリーニングに利用できる。
ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーを用いたスクリーニングによって、磁性体に対して結合能を有するペプチドが、二種類以上得られた場合には、これら複数種のペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのペプチド、あるいは、二種以上のペプチドの、全部または一部分のアミノ酸配列を適当な組合せで直列に繋いだアミノ酸配列を有するペプチドを、磁性体に対して結合能を有するペプチドとして用いてもよい。その際、連結される二種類のアミノ酸配列の間には、適当なリンカー配列を設けることが望ましい。リンカー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、リンカー配列は、いかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、リンカー配列は、例えば、複合体を形成した際、生体物質、例えば、PHA合成酵素などが示す機能を妨害せず、また、目的の生体物質複合体が、連結される二種類のアミノ酸配列のいずれかを利用して、前記磁性体に結合する際、その結合反応を妨害しないものである。
本発明において利用する、磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列は、ランダム・ペプチド・ライブラリのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列の他、磁性体の化学的性質により合理的に設計されたアミノ酸配列とすることもできる。
<生体物質の担持・固定化>
本発明においては、磁性体に対する生体物質の固定化は、該生体物質と複合体を形成する、該磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造を有するスペーサーを介して成される。
具体的には、磁性体に生体物質を担持・固定化する工程は、予め該磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造を有するスペーサーと、目的とする生体物質とを結合させた、生体物質−スペーサー複合体を調製した上で、この生体物質−スペーサー複合体を水性媒体中で磁性体と接触させることにより、スペーサー部に含まれる、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造と磁性体との結合によって達成される。
この担持・固定化の工程において利用する、水性媒体の組成は、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造と磁性体との間での固定化反応を妨げないものであればよいが、担持・固定化される生体物質自体の機能を発揮させ得る組成としておくことも必要である。
ここで、前記生体物質自体の機能を発揮させ得る水性媒体の組成として、例えば、緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、生化学的反応に用いられる一般的な緩衝液、例えば、酢酸バッファー、リン酸バッファー、リン酸カリウムバッファー、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー、トリス塩酸バッファー、グリシンバッファー、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどが好適に用いられる。生体物質の機能を発揮させ得る緩衝液の濃度は、一般的な濃度、すなわち、5mM〜1.0Mの範囲を使用することができるが、望ましくは、10〜200mMの範囲に選択することが好ましい。また、pHは、5.5〜9.0の範囲、好ましくは、7.0〜8.5の範囲となるように調製するが、適用する生体物質の至適pHやpH安定性によっては、上記のpH範囲以外に条件を設定することも除外されない。
また、磁性体が粉体の場合、水性媒体中での磁性体の分散状態を保つために、担持・固定化工程、その後の工程、ならびに生体物質の機能を妨げない種類及び濃度であれば、適当な界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤の例として、例えば、オレイン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル−N−サルコシン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、3−〔(コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホン酸(CHAPS)、3−〔(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)、パルミトイルリゾレシチン、ドデシル−β−アラニン等の両性イオン界面活性剤、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、ヘプチルチオグルコシド、デカノイル−N−メチルグルカミド(MEGA−10)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(Brij、Lubrol)、ポリオキシエチレン−i−オクチルフェニルエーテル(Triton X)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(Nonidet P−40、Triton N)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Span)、ポリオキシエチレンソリビトールエステル(Tween)等の非イオン界面活性剤などを挙げることができる。
また、水性媒体中での粉体状磁性体の分散状態を保つために、担持・固定化工程、その後の工程、ならびに生体物質の機能を妨げない種類及び濃度であれば、適当な補助溶媒を添加してもよい。補助溶媒としては、例えば、ヘキサン等、直鎖脂肪族炭化水素、また、メタノール、エタノール等の1価アルコール類やグリセロール等の多価アルコール類、ならびに脂肪酸エーテル類、カルボン酸エステル類等の誘導体から選ばれる一種又は二種以上の溶媒を選択して、使用することができる。
上記の担持・固定化処理において、磁性体と生体物質複合体の混合された水性媒体の組成としては、水性媒体のpHや塩濃度によって、磁性体および生体物質複合体、特に、スペーサー部に含まれる磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化するので、それを考慮した組成とすることが望ましい。例えば、前記磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド構造と磁性体との結合力の一因が、イオン吸着性である場合には、塩濃度を下げることにより、磁性体とペプチド構造との吸着に寄与する電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、両者の反対電荷を増やすこともできる。逆に、ペプチド構造と磁性体との結合が主に疎水吸着性である場合には、塩濃度を上げることによって、両者の疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動や、ぬれ角の測定等を行って、磁性体やペプチド構造の荷電状態や疎水性を調べることで、吸着に適した組成を設定することもできる。
<生体物質−ペプチド融合体>
上記方法により得られた磁性体に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、生体物質がタンパク質である際には、所望のタンパク質に融合して、生体物質複合体の調製に利用される。例えば、磁性体に対する結合能を有するペプチドは、前記タンパク質のアミノ酸配列のアミノ末端(−NH2)またはカルボキシ末端(−COOH)に連結して、融合タンパク質として、遺伝子組換え発現することができる。また、この融合タンパク質では、磁性体に対する結合能を有するペプチド部と目的とするタンパク質との連結部に、適当なリンカー配列として、1ユニット以上のアミノ酸を挿入して発現することもできる。
このリンカー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、リンカー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、リンカー配列は、前記タンパク質自体の機能を妨害せず、また、前記磁性体に対する結合能を有するペプチドを利用する磁性体上への結合を妨害しないものである。従って、磁性体に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列、さらには、必要に応じて挿入される前記リンカー配列を含む、アミノ酸配列を含むスペーサーを所望のタンパク質に連結した、タンパク質−ペプトド融合体型の生体物質複合体とすることができる。
本発明の磁性体−生体物質複合体型構造体において、生体物質として用いることができるタンパク質として、上記方法により担持可能なタンパク質であればよく、遺伝子工学的手法を用いて、前記ペプチドと融合した融合タンパク質を作製する際には、その遺伝子配列が既知であることが望ましいが、前記磁性体に対する結合能を有するペプチドとの結合を化学的手法で行う場合には、その遺伝子配列全体が既知である必要はない。
生体物質が、その遺伝子配列が既知のタンパク質である場合には、前記生体物質−ペプチド構造融合体は、遺伝子工学的手法を用いて、該ペプチド構造と該タンパク質との融合タンパク質として、例えば、大腸菌のような宿主菌株を用いて、直接、組み換え生産、回収することができる。
生体物質が、その遺伝子配列が未知なタンパク質や核酸、糖鎖の場合には、生体物質あるいは/及びペプチド構造を含むスペーサーに対して、その機能が失われない程度に、予め化学的に修飾・変換を施した上で、両者間を化学結合によって連結した複合体を作成することができる。具体的には、マレイミド基とスルファニル基(−SH)、スクシイミド基とアミノ基、イソシアネート基とアミノ基、ハロゲンと水酸基、ハロゲンとスルファニル基(−SH)、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とスルファニル基(−SH)の組み合わせになるように、生体物質及びペプチド構造を含むスペーサーのいずれか、あるいは、両方に、予め化学修飾・変換を施した後に、前記の官能基間で化学的な結合を形成させることで、所望の生体物質−ペプチド構造含むスペーサー融合体を得ることができる。
生体物質が脂質の場合には、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸を複数含む「疎水ペプチド構造」を、前記磁性体結合性ペプチド構造と連結させた「スペーサー」を作製し、「疎水ペプチド構造」に対する疎水結合により、脂質−ペプチド構造含むスペーサー複合体を得ることができる。
<ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素>
本発明の磁性体−生体物質複合体型構造体において、磁性体上に担持させる生体物質として用いるタンパク質の一例として、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素(以下、PHA合成酵素と記載する)を挙げることができる。
ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと記載する)は、後述のように微生物が有するPHA合成酵素により合成される脂肪族ポリエステルであり、生分解性、生体適合性し、更には、その側鎖部分に様々な官能基を導入できることから、生化学や医療領域での応用が期待されている材料である。最近になって、この様なPHAにより、核となる種々の構造体表面を被覆した複合材料の開発がなされ始めている(特開2002−327046号公報、特開2003−11312号公報等を参照)。この様な複合材料は、核となる構造体そのものの機能と、表面のPHA被覆に起因する特性とを併せ持たせることができ、様々な分野での応用がなされている(特開2003−12957号公報、特開2003−15168号公報、特開2003−12984号公報、特開2003−15359号公報、特開2003−26506号公報、特開2003−26493号公報を参照)。
本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体の一形態として、磁性体を含有する担体上にPHA合成酵素複合体を担持した、磁性体−PHA合成酵素複合体型構造体を利用することより、PHA合成酵素の基質であるPHAのモノマーユニット前駆体を共存させると、前記磁性体−PHA合成酵素複合体型構造体の表面が、PHA合成酵素のより合成されるPHAにより被覆された磁性複合材料の生産可能となる。このPHAにより被覆された磁性複合材料は、生化学や医療領域を始め、様々な産業分野での応用が期待される。
本発明において、磁性体上に担持させる生体物質として用いることが可能なPHA合成酵素自体は、該PHA合成酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物由来のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体により生産されるものを用いることができる。
PHA合成酵素を生産する微生物の例として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)のなどの他に、本発明者らにより分離された、バルクホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp. TL2)などを挙げることができる。なお、KK01株は、寄託番号:FERM BP−4235として、TB64株は、寄託番号:FERM BP−6933として、TL2株は、寄託番号:FERM BP−6913として、それぞれ「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約」に基づき、国際寄託機関である、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター(旧名:経済産業省 産業技術研究所 生命工学工業技術研究所 特許微生物寄託センター)に寄託されている。
更には、シュードモナス・オレオボランス、シュードモナス・レジノボランス、シュードモナス属61−3株、シュードモナス・プチダ・KT2442株、シュードモナス・アエルギノーサなどのほかに、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001−78753号公報に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P−17370)、特開2001−69968号公報に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P−17371)などのバークホルデリア属微生物などに由来するPHA合成酵素を用いることもできる。また、これら微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)などに属し、mcl−PHAやunusual−PHAを生産する微生物に由来するPHA合成酵素を用いることも可能である。
なお、P91株は:寄託番号:FERM BP−7373として、H45株は、寄託番号:FERM BP−7374として、YN2株は、寄託番号:FERM BP−7375として、P161株は、寄託番号:FERM BP−7376として、それぞれ「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約」に基づき、国際寄託機関である、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター(旧名:経済産業省 産業技術研究所 生命工学工業技術研究所 特許微生物寄託センター)に寄託されている。また、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センターに、国内寄託されている菌についても、その寄託番号をそれぞれ付記してある。
また、前述のPHA生産菌に由来するPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を組み換え生産することも可能である。PHA生産菌に由来するPHA合成酵素遺伝子のクローニング、組み換え生産用の発現ベクターの構築、および、発現ベクターを用いた形質転換体の作製は、常法に従って行うことができる。
PHA合成酵素の分離・精製方法は、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であれば、いかなる方法をも用いることができる。例えば、培養により得られたPHA合成酵素産生微生物の菌体を、フレンチプレス、超音波破砕機、リゾチームや各種界面活性剤等を用いて破砕した後、遠心分離して得られた粗酵素液、または、粗酵素液から調製した硫安塩析物について、アフィニティ・クロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等の精製手段を単独または適宜組み合わせることによって、精製酵素タンパク質を得ることができる。また、遺伝子組換えタンパク質では、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、この「タグ」を介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することもできる。親和性樹脂に結合させた融合タンパク質から、目的の酵素タンパク質を分離するには、トロンビン、血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いるとよい。あるいは、発現ベクターとして、pTYB1(New Englan Biolab社製)を用いた場合のようにタグが「インテイン」を含む場合には、ジチオトレイトールなどで還元条件として、−S−S−結合の切断を行う。アフィニティ・クロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他に、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合ドメイン(CBD)、マルトース結合タンパク(MBP)、あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
以上の通り、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体では、化学的手法を利用して、生体物質を磁性体表面に共有結合を介して固定する手法に代えて、例えば、用いる磁性体に対する結合能について、ランダム・ペプチド・ライブラリをスクリーニングすることで簡便に取得することができる、所望の磁性体に対する結合能を有するペプチド断片のアミノ酸配列に基づき、前記磁性体に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド断片を含むスペーサーを設計し、生体物質に対して、該スペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体とすることで、このスペーサー部分の磁性体に対する結合能によって、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持することができる。加えて、スペーサーを予め結合してなる生体物質−スペーサー複合体において、生体物質の本来の機能が発揮されていることを、前もって確認しておくことができ、その後、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持する際、生体物質の機能に対して、影響を及ぼす試薬等を利用する化学的な反応を利用していないので、生体物質−スペーサー複合体を磁性体表面に担持した際にも、磁性体表面に担持される生体物質は、その機能を十分発揮できる状態に保持できる利点を有する。さらには、利用する磁性体に応じて、スクリーニングによって、予め所望の結合能を有するアミノ酸配列を選別することができ、また、対象とする生体物質に応じて、生体物質と予め結合させるスペーサーの結合形態と、スペーサー中に含まれる磁性体に対する結合能を示すアミノ酸配列とを設計できるので、本発明にかかる磁性体−生体物質複合体型構造体は、利用する磁性体、対象とする生体物質の双方ともに、広範囲に適用することが可能で、各種分野における用途に適合する磁性体−生体物質複合体型構造体として利用できる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下に述べる実施例は本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
参考例1. 磁性粒子の作製
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して、1.0〜1.1当量の水酸化ナトリウム溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。この水溶液のpHを8前後に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に、当初のアルカリ量(水酸化ナトリウムのナトリウム成分)に対して、0.9〜1.2当量となるように硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応を進めた。酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を、洗浄、濾過乾燥し、凝集している酸化鉄粒子を解砕し、平均粒径が0.10μmの磁性粒子(1)を得た。
実施例1. 磁性体結合性ペプチド構造の取得
1.磁性粒子懸濁液の調製
参考例1で作製した磁性粒子(1)5mgに対して、1mlのTBSバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl)を添加し、懸濁した。10,000rpm(9300g)5分遠心分離を行い、上清を取り除いた。沈澱に対して、アセトン1mlを添加・懸濁し、再度前述の条件で遠心分離を行い、上清を取り除いた。さらに、沈澱に対してTBS−0.1Tバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween−20)1mlを添加・懸濁し、前述の条件で遠心分離を行い、上清を取り除いた。この操作をさらに2度繰り返した。得られた沈澱を1ml TBS−0.1Tバッファーにて懸濁し、さらに、懸濁液10μlに対して、990μlのTBS−0.1Tバッファーを添加し、ファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリーからのスクリーニングに用いる磁性粒子懸濁液とした。
2.ファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリーからのパンニング
磁性粒子懸濁液に、4×1010 pfuのPh.D.−12ファージ・ディスプレイ・ライブラリー(NewEngland Biolabs, Inc.)と100μlのTBS−0.1Tバッファーを加え、30分、室温(25℃)に放置した。その後、10,000rpm(9300g)5分遠心分離を行い、上清を取り除いた。生じた沈澱を、TBS−0.1Tバッファー1mlにて懸濁した後、10,000rpm(9300g)5分遠心分離を行い、上清を取り除き、未結合のファージを除去する洗浄操作とした。さらに、9回同様の洗浄操作を行った。次いで、pH2.2のバッファー(0.2Mグリシン−HCl(pH2.2)、1mg/mlBSA)により、磁性粒子に結合したファージを回収した。回収したファージを、大腸菌ER2537株(NewEngland Biolabs, Inc.)に感染させ、増幅を行った。
この一次スクリーニングで分画、増幅されたファージを用いて、同様の操作で二次以降のスクリーニングを実施した。ただし、二次スクリーニング以降、添加するファージは、2×1011 pfuとし、洗浄操作時に用いるバッファーには、TBS−0.5Tバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.5% Tween−20)を使用した。
3.塩基配列の決定
この多段スクリーニング後、最終的に増幅されたファージを一部採り、これをクローン化した。単離された35個のクローンから、それぞれssDNAを調製し、ペプチド・ライブラリー中のランダム領域の塩基配列を決定した。解読されたランダム領域の塩基配列に基づき、磁性粒子に対する結合能を示すペプチドのアミノ酸配列として、下記の配列番号:15〜配列番号:30に示すアミノ酸配列が選別された。
Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro (配列番号:15)
Met-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr (配列番号:16)
Met-Leu-Pro-His-Arg-Pro-Pro-His-Tyr-Met-Ser-His (配列番号:17)
Met-Leu-Asn-Pro-Pro-Gln-Gly-His-His-His-Met-Gly (配列番号:18)
His-Thr-Met-His-Ala-Trp-Pro-Pro-Pro-Ala-Pro-Phe (配列番号:19)
His-Ala-His-His-Gln-Gln-His-Leu-Lys-Pro-Gln-Ser (配列番号:10)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe (配列番号:21)
Gly-Tyr-Ala-Ser-Pro-Lys-Ala-His-Trp-Ser-Ser-Gly (配列番号:22)
Ala-Ser-Arg-Pro-Met-His-Met-Pro-His-Ile-Pro-Ala (配列番号:23)
Ala-Pro-Gly-Met-Asn-Ala-Met-Ala-Ser-Ile-His-His (配列番号:24)
His-Asn-His-Gln-Phe-Gln-Ala-Ser-Met-His-Pro-Asp (配列番号:25)
Arg-Ser-Ile-His-His-Asp-Ser-His-Met-Leu-Arg-Gly (配列番号:26)
Thr-His-Ser-Asn-Ser-Met-Thr-Arg-Asn-Thr-Pro-Met (配列番号:27)
Gly-Leu-Asp-Ser-Gly-Pro-Thr-His-Arg-His-Met-Phe (配列番号:28)
Asp-Gly-His-Gln-Pro-Phe-His-Thr-Leu-Lys-Pro-Ala (配列番号:29)
Gln-Glu-Ser-His-Gly-Gly-Pro-Pro-Arg-Ser-Pro-His (配列番号:30)
実施例2. 磁性体結合性ペプチド構造の磁性体結合評価
参考例1で作製した磁性微粒子5μgを、TBS−0.1T(50mM Tris−HCl (pH 7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween20)バッファー100μL中に懸濁し、前記配列番号:15に示すアミノ酸配列のペプチドを提示するファージを2×1011 pfu含む溶液10μLを加えて、室温(25℃)で30分混合し、結合反応を行った。さらに、TBS−0.5T(50mM Tris−HCl (pH 7.5)、150mM NaCl、0.5% Tween20)バッファー中に懸濁し、磁力により回収する工程を10回繰り返すことで、未吸着、及び非特異的吸着したファージを遊離・洗浄した。
Nature,405,665−668(2000)に記載の方法に従い、回収されたファージが特異的吸着している磁性微粒子に、抗fdファージ抗体−ビオチン複合体(Sigma社製)及びストレプトアビジン−テトラメチルローダミンを反応させ、磁力による回収、洗浄を3回繰り返し、再度、前記TBS−0.1Tバッファー中に分散した。
得られた分散液を、通常モード、及び蛍光モード(フィルタにより緑色光で励起)の落射型光学顕微鏡で観察したところ、分散液中に含まれる磁性微粒子から、抗fdファージ抗体−ビオチン複合体に結合したストレプトアビジン−テトラメチルローダミンの存在を示す、ローダミン蛍光色素に由来する橙色蛍光が観察された。
比較として、上記のスクリーニングで選別された磁性体結合性ペプチドを提示するファージに代えて、ランダム・ファージ・ライブラリーから任意に抽出した同量のファージを用いて、上記と同様の操作、蛍光の観察を行った。その結果、観察した磁性微粒子においては、ローダミン蛍光色素に由来する蛍光は全く確認されなかった。
更に、配列番号:16〜配列番号:30に示すアミノ酸配列の磁性体結合性ペプチドを提示するファージに関しても、同様の結合実験を行ったところ、いずれの場合も、観察した磁性微粒子から、ローダミン蛍光色素に由来する橙色蛍光が観察された。
以上の結果により、実施例1に記載のスクリーニング方法で選別されるアミノ酸配列のペプチドを介して、そのペプチドを提示しているM13ファージが磁性微粒子上に特異的結合によって、担持されることが示された。
参考例2. PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製、および、PHA合成酵素の組換え生産
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体を以下の方法で作製した。
先ず、YN2株を、100 mLのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)中で30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全分解した。クローニング・ベクターには、pUC18を使用し、制限酵素HindIIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning、1、572、(1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版)を施した後、DNAライゲーションキットVer. II(宝酒造)を用いて、ベクターの切断部位(クローニング・サイト)に、染色体DNAのHindIII完全分解断片を連結、挿入した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミド・ベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB101株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
次に、YN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:5および配列番号:6の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行った。PCR増幅されてきたDNA断片を、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)を利用して行った。得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーから、コロニー・ハイブリダイゼーション法によって、PHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドを、シュードモナス・チコリアイ YN2ml株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により導入して、形質転換したところ、YN2ml株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイ YN2ml株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
このPHA合成酵素遺伝子領域を含むDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:2および配列番号:4で示される塩基配列が存在することが確認された。下で述べるように、前記二種の塩基配列にコードされるペプチド鎖からなる蛋白質二種は、ともに酵素活性を有しており、配列番号:2および配列番号:4で示される塩基配列は、それぞれPHA合成酵素をコードする遺伝子であることを確認することができた。すなわち、配列番号:1に示すアミノ酸配列を、配列番号:2の塩基配列はコードしており、配列番号:3に示すアミノ酸配列を、配列番号:4の塩基配列はコードしており、この二種のアミノ酸配列を有する蛋白質の一方のみで、PHA合成能が発揮されることが確認された。
配列番号:2で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。
配列番号:2で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:7)、ならびに、下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:8)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
同様に、配列番号:4で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子についても、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。配列番号:4で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:9)および下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:10)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
次に、得られたPHA合成酵素遺伝子の完全長を含むPCR増幅断片二種を、それぞれ、制限酵素HindIIIを用いて完全分解した。また、発現ベクターpTrc99Aも、制限酵素HindIIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、1巻、572頁、1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)した。この発現ベクターpTrc99Aの切断部位に、前記制限酵素HindIII消化により両末端の不用な塩基配列を除いた、PHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて連結した。
得られた組換えプラスミドを用いて、大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:2の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドを、pYN2−C1(配列番号:2由来)、配列番号:4の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドを、pYN2−C2(配列番号:4由来)とした。
組換えプラスミドpYN2−C1、pYN2−C2によって、大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株それぞれを、酵母エキス0.5%、オクタン酸0.1%を含むM9培地200mlに植菌して、37℃、125ストローク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離によって回収し、常法によりプラスミドDNAを回収した。
プラスミドpYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:11)、ならびに下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:12)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、pYN2−C1をテンプレートとして、PCR増幅を行い、上流にBamHIおよびSacI制限部位、下流にSpeIおよびXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
同様に、プラスミドpYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:13)、ならびに下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:14)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、pYN2−C2をテンプレートとして、PCR増幅を行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
精製したPCR増幅産物それぞれを、BamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらのベクター(pGEX−C1およびpGEX−C2)を用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片について、その塩基配列を確認することによって行った。得られた菌株を、LB−Amp培地10mL中で一晩プレ・カルチャーした後、その培養液0.1mLを、10mLのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後、IPTGを添加し(終濃度 1mM)、37℃で4〜12時間培養を続けた。なお、前記発現ベクター(pGEX−C1およびpGEX−C2)では、PHA合成酵素遺伝子は、プラスミドpGEX−6P−1中のGSTタンパク質遺伝子と連結され、GST融合タンパク質として発現される。
IPTG誘導した大腸菌を遠心(8000×g、 2分、4℃)により集菌し、1/10量の4℃ PBS中に再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、 10分、4℃)して、固形夾雑物を取り除いた。上清に目的の発現タンパク質が存在することを、SDS−PAGEで確認した後、誘導発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
使用したグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄した後(8000×g、1分、4℃)、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロース 40μLを、無細胞抽出液1mLに添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−YN2−C1およびGST−YN2−C2は、それぞれグルタチオン・セファロースに吸着される。
吸着後、遠心(8000×g、 1分、4℃)して、グルタチオン・セファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着されている融合タンパク質を溶出した。遠心(8000×g、2分、4℃)して上清を回収し、上清をPBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通して、プロテアーゼとGSTを除去した。PHA合成酵素を含むフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、組み換え発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEにより、それぞれ60.8kDa、および61.5kDaのシングルバンドを示すことを確認した。
各精製酵素について、その酵素活性は、PHA合成酵素による3−ヒドロキシアシルCoAの重合によって、PHAが合成される反応において放出されるCoA量が、1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1単位(U)として測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
Figure 0004073034
各精製酵素溶液は、生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくん AB−1100、 アトー(株)製)を用いて濃縮し、活性10U/mlの精製酵素溶液を得た。
実施例3. 磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体の調製
アミノ酸配列Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)の磁性体結合性配列を、リンカー配列GGGSを介して、PHA合成酵素アミノ酸配列のN末端に融合した、磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体を発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。この磁性体結合性配列とリンカー配列部をコードするDNAは、二本鎖合成オリゴヌクレオチドとして作製し、融合タンパク質GST−YN2−C1発現用のpGEX−C1プラスミドの適切な制限開裂部位(BamHIおよびSacI)にライゲーションする。その際、2つの合成オリゴヌクレオチドO1(5’−GATCCATGCCGAGTTGGAGGACTCATCATGTTGCGACTCCGGGTGGAGGTTCGGAGCT−3’、配列番号:31)およびO2(5’−CCGAACCTCCACCCGGAGTCGCAACATGATGAGTCCTCCAACTCGGCATG−3’、配列番号:32)を製造業者の説明に従い、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて、80℃で5分間加熱し、その後、室温までゆっくり冷却させた。この二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
プラスミドpGEX−C1をBamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとして、pGEX 5’ Sequencing Primer(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)を用いたシークエンシングによって、インサートの塩基配列を決定することによって行った。得られた菌株をLB−Amp培地10mL中で一晩プレ・カルチャーした後、その培養液0.1mLを、10mLのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後、IPTGを添加し(終濃度 1mM)、37℃で4〜12時間培養を続けた。なお、得られる発現ベクター中には、融合パートナータンパク質GST、磁性体結合性配列とリンカー配列部、PHA合成酵素YN2−C1の順で連結されたGST融合タンパク質がコードされている。
IPTG誘導した大腸菌を遠心(8000×g、 2分、4℃)して集菌し、1/10量の4℃ PBS中に再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。上清に目的の発現タンパク質が存在することをSDS−PAGEで確認した後、誘導発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
使用したグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄した後(8000×g、1分、4℃)、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロース 40μLを、無細胞抽出液1mLに添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−(磁性体結合性ペプチド+リンカー・ペプチド)−YN2−C1をグルタチオン・セファロースに吸着させた。
吸着後、遠心(8000×g、 1分、4℃)してグルタチオン・セファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着したGST融合タンパク質を溶出した。遠心(8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS−PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
精製したGST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通して、プロテアーゼとGSTを除去した。フロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体型の組み換え発現タンパク質YN2−C1(Fe)15の最終精製物を得た。SDS−PAGEにより61.9kDaのシングルバンドを示すことを確認した。
精製酵素の活性は、実施例2に記載の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。測定された酵素活性は、1.9 U/ml、また比活性は、4.0 U/mgタンパク質であった。精製酵素を、生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくん AB−1100、 アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
実施例4. 磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体の磁性体に対する結合能の評価
磁性体微粒子を、0.1%Tween−20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この懸濁液10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例3で調整した磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体型の酵素タンパク質YN2−C1(Fe)15、ならびに参考例2で調製した酵素タンパク質YN2−C1の0.5U相当量を加え、室温で30分間振とうした。
反応懸濁液より、磁力によって磁性体粒子を沈澱として回収し、磁性体に結合しなかった酵素を含む上清と分離した。回収した磁性体を再び0.1%Tween−20を含むTBSバッファーに懸濁し、磁力による回収操作を繰り返すことによって、磁性体を洗浄した。
洗浄処理後、回収された磁性体懸濁液の酵素活性を測定した結果を表2に示す。
Figure 0004073034
また、配列番号:16〜配列番号:30に示す15種類の磁性体結合性配列についても、実施例3と同様の方法で、磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体:(YN2−C1(Fe)16〜YN2−C1(Fe)30)を調製し、同様に、磁性体に対する結合能の評価を行うため、磁性体に結合したそれぞれのPHA合酵素活性を測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 0004073034
磁性体結合性配列を含んでいないコントロールの酵素YN2−C1と比べて、磁性体結合性配列を融合した酵素YN2−C1(Fe)16〜YN2−C1(Fe)30を接触させた磁性体において、観測される酵素活性が高く、磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体とすることで、酵素を有効に磁性体表面に固定化できることが確かめられた。
実施例4. 磁性体に対する二種類連結ペプチドの結合能の評価
磁性体に対する結合能を有する二種類のアミノ酸配列、Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)とMet-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr(配列番号:16)を、リンカー配列Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Serを介して、この順番で直列に繋いだ配列、Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro- Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Ser- Met-Gln-Thr-His-His-Thr-Thr-Val-Thr-Ser-Trp-Thr(配列番号:95)を、さらに、リンカー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合した複合体を発現する大腸菌発現ベクターを、次のようにして構築した。このPHA合成酵素のN末端に連結されるアミノ酸配列をコードするDNAは、二種類の合成オリゴヌクレオチド、5’−gatccatgccgagttggaggactcatcatgttgcgactccgggcggcggcagcggcggcggcagcatgcagacgcatcatactacggtgacttcgtggactgagct−3’(配列番号:96)、および5’−ccggctgatgacgaatatacggcggccaccaccagttgctgccgccgccgctgccgccgccgctcgccggccaccacactttccacgcatgcggccag−3’(配列番号:97)を、それぞれT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した後、等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後、室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片として形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、実施例3と同様にして、プラスミドpGEX‐C1のBamHI/SacIサイトに挿入し、このベクターを用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。実施例3と同様にして、配列番号:95のアミノ酸配列をN末端に融合した発現タンパク質YN2−C1(Fe)95を精製し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。実施例4と同様にして、精製酵素の磁性体に対する結合能を評価した。結果を表4に示す。
Figure 0004073034
磁性体結合性配列を含んでいないコントロールの酵素YN2−C1と比べて、磁性体結合性配列を融合した酵素YN2−C1(Fe)95を接触させた磁性体において、観測される酵素活性が高く、磁性体結合ペプチド−PHA合成酵素複合体(aa147−YN2−C1(cb):YN2−C1(Fe)95)とすることで、酵素を有効に磁性体表面に固定化できることが確かめられた。
本発明により、磁性体を含む担体上にタンパク質等の生体物質を担持する際、磁性体表面に担持される生体物質を、その機能を十分発揮できる状態に保持でき、また、目的とする生体物質を選択的に磁性体表面に担持することが可能となる。

Claims (3)

  1. MO・Fe 2 3 (M:2価の金属)構造、またはFe 2 3 構造を含む磁性体に対して結合能を有するペプチド断片であって、
    下記の配列番号:15に示すアミノ酸配列からなるペプチド断片である
    ことを特徴とするペプチド断片
    Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)
  2. 請求項1に記載するペプチド断片を構成する、下記の配列番号:15に示すアミノ酸配列コードするDNAである
    ことを特徴とする遺伝子DNA。
    Met-Pro-Ser-Trp-Arg-Thr-His-His-Val-Ala-Thr-Pro(配列番号:15)
  3. 請求項1に記載するペプチド断片と、配列番号:1または配列番号:3に示すポリヒドロキシアルカノエート重合酵素タンパク質とを融合してなる融合型タンパク質であり、
    前記ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素タンパク質のN末端側に、該請求項1に記載するペプチド断片が融合されている
    ことを特徴とする融合型ポリヒドロキシアルカノエート重合酵素タンパク質。
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