JP4072440B2 - シリコンの精製装置及び精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンの精製装置及び精製方法に関し、特に太陽電池用シリコンを製造するシリコンの精製装置及び精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境問題から石油などの代替としての自然エネルギー利用が注目されるようになった。その中で、シリコン半導体の光電変換原理を用いる太陽電池は、太陽エネルギーの電気への変換が容易に行なえる特徴を有する。普及拡大には太陽電池のコスト低減、とりわけ、半導体シリコンのコストダウンが大切になっている。半導体集積回路用の高純度シリコンは、珪石を炭素還元して得られる純度98%以上の金属シリコンを原料に、化学的な方法でトリクロルシラン(SiHCl3)を合成し、これを蒸留法で純化した後、還元することで11N程度の高純度シリコンが得られる(シーメンス法)。複雑な製造プラント設備や、還元に要するエネルギー使用量が多くなることなどで、この高純度シリコンは必然的に高価な素材になる。
【0003】
太陽電池の低コスト化のために、半導体集積回路の製作の各工程からの高純度シリコンの再生利用と並行して、金属シリコンからの直接的な冶金的精製が試みられるようになった。再生利用では、シリコンウエハ、CZインゴット端材(スクラップ)などを原料に多結晶シリコンインゴットを作る際、シリコン融液の一方向凝固を行なうことで偏析による精製効果があり、実用的な太陽電池特性が得られるようになった。金属シリコンからの一方向凝固精製は、多くの不純物元素を同時低減できる点に優れるものの、例外的にボロンについては、その偏析係数は0.8と大きいため、原理的に偏析凝固を効率的には行なえず、実用的なボロン低減は困難な状況にある。より効率的なボロン除去を目指す技術としては、ボロンを酸化ボロンとすることで、溶融シリコン中から気相に移動させて除去する方法がある。Theuererの実験結果(Journal of metals, October 1956, p. 1316)には、溶融シリコンを水蒸気含有ガスと反応させることによりシリコン中のボロンが減少することが示されている。
Theuererによると水蒸気含有ガスとボロン含有溶融シリコンとの反応処理によるシリコン中のボロン濃度減少について初期ボロン濃度をとし、処理時間t分の処理後のボロン濃度をとすると次式(1)の関係が成立するとしている。
【0004】
【数1】
Figure 0004072440
【0005】
ここで、は水蒸気分圧(mmHg)、は処理ガスと溶融シリコンの接触面積(cm2)、は溶融シリコンの体積(cm3)を表す。すなわち、ボロン濃度の減少速度を大きくするためには処理ガスの水蒸気分圧を大きくし、処理ガスと溶融シリコンの接触面積を大きくすることが効果的であるとしている。一定容量の溶融シリコンと処理ガスの接触面積を大きくするためには処理ガスを溶融シリコン中に吹込むバブリング法で気泡サイズを最小にすることが効果的である。
特開2001−58811号公報には、5vol%以下の水蒸気を添加した精製ガスを円板状回転体から溶融シリコン中に吹き込みつつ撹拌することで、溶融シリコン中に存在するボロンと水蒸気添加ガスとの接触面積を大きくして、ボロンを酸化物に変えて、溶融シリコンから除去する方法が紹介されている。
【0006】
【非特許文献1】
Journal of metals, October 1956, p. 1316
【特許文献1】
特開2001−58811号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている、回転する翼車を用いてシリコンの溶湯を撹拌しつつ、水蒸気を含有させたアルゴン等の処理ガスを吹き込むシリコンの精製方法は、図12に示すように回転する翼車70に開口している水蒸気含有ガス吹出し孔71には、SiO2(酸化物)を形成し難くする工夫がなされてないため、水蒸気分圧5vol%を超える水蒸気含有ガスを用いると吹出し孔71に直ちにSiO2の塊81が形成され(図12(a)参照)、さらに吹き込まれた水蒸気ガスと溶融シリコンとが反応してSiO2の塊81を成長させ、遂には吹出し孔71をSiO2の塊81が覆い(図12(b)参照)、目詰まりを引き起こす問題があった。そのため、SiO2の融点1700℃以上に溶融シリコンを加熱することも考えられるが、このような高温ではSiO2の溶融は可能であっても、坩堝や周辺部材の耐久性が極めて短くなり実用的ではなくなる。
【0008】
そこで、本発明の主要な目的の一つは、原料シリコン中の不純物元素、特にボロンの高効率な除去に最適であり、かつSiO2の酸化皮膜形成と成長を抑制し、精製ガス吹出し孔の目詰まりを防ぎ、長時間安定した操業を行なうことができるシリコンの精製装置及び精製方法を提供することにある。
また、本発明の主要なもう一つの目的は、上記シリコンの精製装置及び精製方法を用いて高純度にかつ安価に精製シリコンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、不純物を含有する原料シリコンを溶融状態に保持する溶解炉と、前記溶解炉内の溶融シリコン中に酸化性ガスを含む精製ガスを吹込みつつ溶融シリコンを攪拌してシリコンを精製する精製ガス吹込み攪拌手段とを備え、この精製ガス吹込み攪拌手段が、中空で、その内部が精製ガス導入通路とされた棒体と、この棒体の先端に設けられ、前記精製ガス導入通路と連通するガス吹出し孔が外表面に形成された攪拌体と、前記棒体を駆動させることにより、攪拌体を溶融シリコン中で運動させる棒体駆動部とを備えたシリコンの精製装置であって、
前記攪拌体が、その外表面に角部を有し、
前記ガス吹出し孔が、攪拌体の前記角部乃至その近傍で開口したシリコンの精製装置が提供される。
【0010】
つまり、攪拌体の角部で開口するようにガス吹出し孔を形成し、それによってガス吹出し孔の開口端面の面積を小さくすることにより、シリコン精製時において、酸化性ガスを含む精製ガスを溶融シリコン中に吹き込むことにより酸化性ガスと溶融シリコンが反応して形成される酸化物の塊、すなわちガス吹出し孔の開口端面に形成されるSiO2の塊の付着面積を小さくして付着強度を小さくすることができる。したがって、流動する溶融シリコンの剪断力によってSiO2の塊を開口端面から容易に剥ぎ取ることができ、吹出し孔の目詰まりを防止することができる。この結果、長時間安定した操業を行なうことができ、溶融シリコン中に含まれるボロン等の不純物元素を効率よく気化除去して、高純度にシリコンを精製することができる。また、攪拌体の角部近傍で開口するようにガス吹出し孔を形成する場合は、攪拌体の角部の運動方向側に開口部を配置するのが好ましい。つまり、ガス吹出し孔から出る精製ガスは、攪拌体の運動方向とは相対的に逆方向に流れる溶融シリコンによって吹出し方向が上記逆方向に曲げられるため、開口端面における上記逆方向側に酸化物が形成され易い。そのため、開口部を角部近傍の運動方向側に形成して酸化物の付着し易い面部の面積を小さくすることにより、酸化物が大きく成長し難くなり、かつ酸化物を剥がし易くできる。
【0011】
本発明において、精製ガス吹込み攪拌手段の駆動部による攪拌体の運動は、一方向の回転、正逆方向の回動、直線的な往復動、曲線的な揺動、振動などあらゆる運動を包含するものである。特に、攪拌体を回転させることが好ましく、それにより駆動部をモータのみで簡素に構成することができると共に、攪拌体を高速回転することができ、それによって不純物元素と精製ガスとの接触率が高まり不純物元素の除去効率を向上することができる。
【0012】
攪拌体は、その外表面に角部を有する外観形状であれば特に限定されるものではないが、攪拌体の運動によって精製ガスを含む溶融シリコンを均一に効率よく攪拌できる外観形状が好ましい。攪拌体の外観形状の具体例として、方形ブロック状の羽根部を放射状に有する形状や、角錐状又は円錐の突起部を放射状に有する形状や、立方体、直方体、四面体、六面体、八面体等の比較的鋭角な角部を有する多面体などを挙げることができる。本発明において、角部は、このような各種形状において、2面が接する稜線部分、3面以上が接する頂部、円錐の頂部とされている。ここで稜線部分や頂部とは、角張った尖鋭な形状のみならず、丸みを帯びた形状をも意味する。丸みを帯びた形状の角部においては、ガス吹出し孔の開口端面の運動方向寸法Yはガス吹出し孔の開口部の運動方向寸法Xと等しくなり、X/Y=1.0となる。なお、攪拌体の材料としては、黒鉛、窒化珪素、炭化珪素などを用いることができる。また、棒体の材料としては黒鉛、窒化珪素、炭化珪素などを用いることができる。
【0013】
本発明において、ガス吹出し孔は、上述のように攪拌体の角部で開口するが、その開口端面は運動方向に対して非垂直面であることが好ましく、開口端面が運動方向と略平行であることがより好ましい。
このようにすれば、開口端面に形成された酸化物(SiO2)の塊に対して、運動する攪拌体との相対的な溶融シリコンの流れ方向の大きな剪断力を加えることができ、開口端面に付着した酸化物を効果的に剥ぎ取ることができる。
【0014】
また、ガス吹出し孔の開口部の運動方向寸法Xと、ガス吹出し孔の開口端面の運動方向寸法Yとの関係が、0.1<(X/Y)=1.0であることが、開口端面での酸化物(SiO2)の形成抑制と、形成した酸化物の剥離容易化を図ることができる上で好ましい。なお、X/Yが0.1以下であると、開口端面の運動方向側の面積が大きくなって酸化物が形成され易くなり、かつ付着面積が大きくなって剥離が困難となり、ガス吹出し孔の目詰まりを生じやすくなる。
【0015】
本発明において、棒体駆動部が、棒体を回転軸として攪拌体を回転させるよう構成された(例えばモータからなる)場合、ガス吹出し孔は、その開口端面が回転方向と略平行に形成され、かつ開口部が開口端面における回転方向とは逆方向寄りに形成されているのもよい。つまり、上述したように、ガス吹出し孔の開口端面は運動方向と略平行に形成することが、開口端面上の酸化物の塊に溶融シリコンの大きな剪断力を加えることができる上で好ましいが、運動が回転(一方向)の場合、ガス吹出し孔の精製ガスは、攪拌体の回転方向とは相対的に逆方向に流れる溶融シリコンによって吹出し方向が上記逆方向に曲げられるため、開口端面における上記逆方向側に酸化物が形成され易い。そのため、開口部を開口端面における回転方向とは逆方向寄りに形成してそちら側の端面面積(幅)を小さくすることにより、酸化物が大きく成長し難くなり、かつ酸化物を剥がし易くしなる。
【0016】
本発明は別の観点によれば、上述のシリコンの精製装置を用いて不純物を含む原料シリコンを精製するシリコンの精製方法であって、
溶融シリコンは、溶融スラグとしてアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、Al23あるいはCaF2のうち少なくとも1つを含むシリコンの精製方法を提供できる。
【0017】
つまり、溶解炉での原料シリコン(例えば、珪石を炭素還元して得られる純度98%以上の金属シリコン)の溶解に際して、スラグ材としてアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、Al23あるいはCaF2のうち少なくとも1つを添加混合して溶解する。
例えば、酸化ケイ素(SiO2)と酸化カルシウム(CaO)とを混合したものをスラグ材として用いる場合は、SiO2−CaO二元系状態図(Nobuo Sano, Wei-Kao Lu, Paul V Riboud, Advanced Physical Chemistry for Process Metallurgy, 108)からわかるように、シリコンの融点1414℃よりわずかに高い1460℃以上で、酸化ケイ素と酸化カルシウムとの混合物であるスラグ材を溶融状態にできる。すなわち、SiO2単体では融点1700℃以上であるが、CaOを添加することによりスラグを形成してSiO2の融点を下げ、溶融状態とすることができる。したがって、溶解炉の比較的小さな温度上昇(熱エネルギー増加)でガス吹出し孔の開口端面に形成したSiO2を溶融に近い状態にして、SiO2の開口端面への付着力を低下させることができ、溶融シリコンの剪断力によるSiO2の除去(剥ぎ取り)が容易かつ効率よく行え、ガス吹出し孔の目詰まりを確実に防止することができる。
【0018】
また、スラグ材のさらなる作用としては、スラグ材が無い場合では、溶融シリコン中において、SiO2酸化皮膜が精製ガス気泡を覆うように形成し、溶融シリコン中のボロンと精製ガスとの酸化反応を阻害してしまうが、スラグ材が有る場合では、シリコンの融点から大幅に温度上昇させずともSiO2を溶融状態とすることができるので、溶融シリコン中のボロンと精製ガスとの酸化反応を阻害することなく、効率よくボロンを酸化させ気化除去することができ、かつ坩堝や周辺部材の耐久性を保持することができる。さらに、精製ガス、スラグ材、溶融シリコンの3相が非常に効率よく混合されることにより、各相間の接触面積が著しく増大し、精製ガス中の酸化性ガス及び溶融スラグから供給される酸素による溶融シリコン中のボロンの酸化反応が著しく促進され、精製シリコンの純度を向上することができる利点もある。
なお、スラグ材の添加量としては、原料シリコンに対して重量比で50重量%以下が好ましい。SiO2−CaO系溶融スラグの粘度は1Pa・s程度であり、溶融シリコンの粘度0.001Pa・sと比較して圧倒的に大きいことから、50重量%よりも多いと溶融スラグの高い粘性のために、溶融シリコンと溶融スラグの混合が困難となる。
また、SiO2−CaO系溶融スラグの構成成分としては、強い酸化剤としての機能を有する酸化ケイ素を主成分とすることが好ましく、より具体的には酸化ケイ素を重量比45%以上含む溶融スラグを使用する方がより好ましい。
【0019】
本発明のシリコンの精製方法において、精製ガスは、酸化性ガスとして水蒸気を含有するものであってもよい。酸化性ガスに水蒸気を用いた場合、精製ガス中の水蒸気量は体積比で5〜100vol%が好ましく、5vol%以上は上記溶融スラグによるSiO2の融点低下によって実現できる。なお、5vol%未満であると、前述の(1)式においてp(水蒸気圧)が小さくなるのでボロン除去速度が小さくなり、除去効率が悪くなる。精製ガス中の水蒸気量は簡便な加湿装置を用いて、ガス露点を代表的には33〜100℃の範囲とすることで、上記5〜100vol%の範囲内で容易に制御することができる。
なお、精製ガスは水蒸気含有ガスに限定されることはなく、酸化性ガスとして例えば酸素ガスや一酸化炭素ガス等の酸素を含有するガスであってもよい。さらに広義の酸化反応を考えれば、塩酸等のハロゲン系ガス等であっても同様の効果が期待される。また、キャリアガスはシリコンとの反応性が小さいガス、例えばアルゴン等の不活性ガスが特に好ましく、窒素等も使用できる。また、精製ガス中に水素ガスを適宜混合してもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1のシリコンの精製装置を模式的に示す正面断面図であり、図2は同実施の形態1における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図であり、図3は同実施の形態1における攪拌体のガス吹込み孔を示す要部正面図であり、図4は同実施の形態1における攪拌体をガス吹込み孔に沿って切断した要部断面図である。なお、図1〜図4において矢印Aは回転方向を表し、図4において矢印Bは精製ガスの吹出し方向、矢印Cは溶融シリコンの剪断力を表している。
【0022】
本発明のシリコンの精製装置は、水蒸気(酸化性ガス)とアルゴンや窒素などの不活性ガスとが混合した精製ガスを、ボロンなどの不純物を含む溶融シリコン中に吹込み、不純物を酸化して溶融シリコン中から気化除去して高純度にシリコンを精製するものである。
【0023】
図1に示すように、このシリコンの精製装置は、不純物を含有する原料シリコンを溶融状態に保持する溶解炉1と、溶解炉1内の溶融シリコンM中に酸化性ガスを含む精製ガスGを吹込みつつ溶融シリコンMを攪拌してシリコンを精製する精製ガス吹込み攪拌手段S1とを備える。
【0024】
溶解炉1は、ステンレス製の上方開口状容器本体10と、容器本体10の上方開口部を密封する蓋体11と、容器本体10内に設けられた原料シリコンを装入する黒鉛製の坩堝2と、容器本体10の外周壁の内部に設けられて坩堝2を周囲から加熱する電磁誘導加熱部3とを備える。
【0025】
容器本体10は、上方開口状の外壁部11と、外壁部11の内面に設けられた断熱材14と、断熱材14の内面に設けられた坩堝サセプター13とを備え、外壁部11と断熱材14との間に形成された円環状空間部に電磁誘導加熱部3が収納されている。一方、蓋体11には、図示省略の雰囲気ガス供給部からの雰囲気ガスを容器本体10内に導入するための雰囲気ガス導入管15と、排気口16と、精製後のシリコンを坩堝2内から採取するための採取口17とが設けられると共に、中心に貫通孔を有し、この貫通孔に後述する精製ガス吹込み攪拌手段S1の回転軸5を回転可能にかつ昇降可能に保持しつつ容器本体1内を密封するシール機構8が設けられている。
【0026】
精製ガス吹込み攪拌手段S1は、中空で、その内部を精製ガス導入通路4とした上記回転軸5と、回転軸5の先端(下端)に設けられ、前記精製ガス導入通路4と連通するガス吹出し孔7が外表面に形成された攪拌体6と、回転軸5を駆動させることにより、攪拌体6を溶融シリコンM中で回転させる回転軸5の基端(上端)に設けられた図示しない回転軸駆動部と、回転軸5の精製ガス導入通路4に精製ガスを供給する図示しない精製ガス供給部とを備えている。また、精製ガス吹込み攪拌手段S1の一構成要素として、回転軸5の基端(上端)には、回転軸5を昇降させて攪拌体6を溶融シリコンM中に浸漬又は溶融シリコンM中から引き上げる図示省略の昇降機構部が設けられている。
【0027】
図2に示すように、回転軸5の下端に連設された攪拌体6は、略四角錐形の突起部6aが、円周方向に角度間隔90°で4個一体化して、かつ各突起部6aの頂部を径方向外方へ向けた外観形状であり、各突起部6aの頂部に、回転軸5の精製ガス導入通路4と連通するガス吹出し孔7の開口部が形成されている。このガス吹出し孔7の開口部は、上述したように径方向外側へ開口するものであるため、図3と図4に示すようにその開口端面7aは、回転軸5の回転方向(矢印A)と略平行な面(回転方向に対して非垂直面)として形成されている。
【0028】
このガス吹出し孔7において、開口部の運動方向寸法(口径)Xと、開口端面7aの運動方向寸法Yとの関係は、0.1<(X/Y)=1.0であり、例えば、開口部の口径Xが1mmで、肉厚が2mmであった場合にはX=1、Y=5となりX/Y=0.2となり、上記範囲内であり、ガス吹出し孔7の目詰まり防止に有効である。
【0029】
次に、図1〜図4を参照しながら、実施の形態1のシリコンの精製装置を用いて不純物(ボロン)を含む原料シリコンを精製する方法(ボロン量低減を行なう手順)について説明する。
先ず、酸化ケイ素(SiO2)と酸化カルシウム(CaO)とを混合したものをスラグ材として原料シリコンと共に溶解炉1の坩堝2内に装入する。本発明の効果を明確に示すため、純度11Nの半導体級シリコン中に、ボロンが65ppm含有しているスクラップシリコンを、重量比でおよそ8:1で混合することにより、ボロンを約7ppmに調整したものを、精製対象であるボロンを含有する原料シリコンとした。なお、原料シリコンとして半導体級シリコンとボロン含有スクラップシリコンの混合物を用いたが、ボロン以外の元素が含有している原料、例えば工業的に広く利用されている純度98%程度の金属シリコンであっても、本発明の効果が発現することは言うまでもない。その他に一方向凝固精製後のやや高純度な原料、脱りん(P)後のシリコン材料などにも本発明は適用が可能である。
【0030】
溶解炉1の内部をアルゴン等の不活性ガス雰囲気として、電磁誘導加熱装置3により加熱して、坩堝2、原料シリコン及びスラグ材の温度が上昇し、ついには原料シリコン及びスラグ材が溶融する。そのようにしてできた融液(溶融スラグを含む溶融シリコンM)を所定の処理温度に保持する。この段階では、溶融シリコンMとスラグ材は互いに完全に分離している。この際、シリコン中のボロン含有量を測定するため、スラグ材が混入しないように溶融シリコン数gを採取しておく。
【0031】
精製ガス導入通路4を通じて精製ガスGを攪拌体6の精製ガス吹出し孔7から吹出しつつ、昇降機構部により回転軸5を下降させ、攪拌体6を溶融シリコンMに浸漬させる。この際、精製ガス導入圧力を大気圧より大きく、例えば0.15〜0.3MPa程度の範囲とすることで、粘度の高いスラグ材が混合した場合でも精製ガスGの吹出しを安定して継続できる。
【0032】
溶融シリコンMの下部、好ましくはスラグ材と溶融シリコンMとの界面付近へ攪拌体6を下降させた後、回転軸駆動部により回転軸5を及び攪拌体6を回転させて溶融シリコンMを攪拌する。回転軸5の回転により、精製ガス吹出し孔7から吹出される精製ガスGの気泡およびスラグ材が微細化され、かつ均一に混合される。精製ガス、スラグ材、溶融シリコンMの3相が非常に効率よく混合されることで、各相間の接触面積が著しく増大し、溶融シリコンM中のボロンの酸化反応が著しく促進される。一方、その間には、ガス吹出し孔7から吹き出す精製ガスGによってシリコンが酸化されて開口端面7aにSiO2の塊81が形成される。このとき、ガス吹出し孔7から出る精製ガスGは、攪拌体6の回転方向(矢印A)とは相対的に逆方向に流れる溶融シリコンMによって吹出し方向(矢印B)が上記逆方向(相対的な溶融シリコンMの流れの方向)に曲げられるため、開口端面7aにおける上記逆方向側にSiO2の塊81が形成され易い(図4参照)。このSiO2の塊81は、相対的な溶融シリコンMの流れの剪断力(矢印C)を受けることにより、比較的小さな程度に成長した時点で開口端面7aから剥ぎ取られるので、ガス吹出し孔7の開口部が塞がれることがない。なお、ガス吹出し孔7の開口部の運動方向寸法(口径)Xと、開口端面7aの運動方向寸法Yとの関係が、X/Y≦0.1であると、SiO2の塊81が付着する面積が大きくなるのでSiO2の塊81を剥ぎ取り難くなる。また、攪拌体6の周速度は100cm/sec以上とすることが望ましい。周速度100cm/secよりも小さい回転速度では、吹出し孔7部の開口端面7aに形成したSiO2の塊を剥ぎ取る溶融シリコンMの剪断力が小さく、目詰まりを起こしやすくなるためである。
【0033】
以上述べたような原理により、ボロン低減処理を所定の時間行った後、精製ガスGの導入を停止し、精製ガス導入通路4と排気口16を電磁弁により閉じる。本発明のスラグ材の役割は、攪拌体6の精製ガス吹出し孔7において、精製ガスに添加された水蒸気と溶融シリコンMとの反応により形成したSiO2を溶融させて、吹出し孔7のSiO2による目詰まりを防止することにある。原料シリコンとともに装入するスラグ材の成分構成としては、酸化ケイ素(SiO2)と酸化カルシウム(CaO)の重量比で65:35が好ましい。この比率で、シリコンの融点1414℃よりわずかに高い1440℃以上でスラグ材を溶融状態とすることができる。シリコン融点付近で溶融可能なスラグ材を用いることにより、溶融シリコンM中に良好に攪拌混合ができ、酸化剤としての機能を十分に引き出しながら、実用的な高いボロン除去速度が得られるに至る。
【0034】
なお、本発明の効果が発現するところは、SiO2−CaO二元系のスラグ材に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、SiO2の融点を下げる効果は、酸化アルミニウム(Al23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化リチウム(Li2O)等を適宜添加してもよい。
具体的には、SiO2−CaO−MgO系ではそれらの比率をSiO2:CaO:MgO=50:30:20とすることで1367℃以上において溶融状態とできる。その他の具体例としては、SiO2−CaO−Al23系ではそれらの比率をSiO2:CaO:Al23=60:25:15とすることで1200℃以上において溶融状態とでき、SiO2−CaO−Li23系ではそれらの比率をSiO2:CaO:Li23=50:20:30とすることで1024℃以上において溶融状態とできる。この他SiO2の融点を下げる効果は、酸化バリウム(BaO)、フッ化カルシウム(CaF2)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)等をスラグ材の構成成分として用いてもよい。
【0035】
所定の時間だけ処理を行った後、溶融シリコンMの液面から十分上方に攪拌体6が位置するまで昇降機構部により回転軸5を上昇させ、処理後のボロン含有量を測定するための溶融シリコンMを、試料採取口17から数g程度を採取する。この際、溶融シリコンMと溶融スラグを十分に分離させるために数分間静置して、溶融スラグが混入しないようにする。ボロン含有量の測定はICP発光分析法を用いて行うことができる。
【0036】
[実施の形態2]
図5は本発明の実施の形態2のシリコンの精製装置における攪拌体のガス吹込み孔を示す要部正面図である。なお、図5において、実施の形態1と同一の要素には同一の符号を付している。
【0037】
上記実施の形態1のシリコンの精製装置ではガス吹込み孔7(図3参照)は開口部が開口端面7aの略中心に形成されていたのに対し、この実施の形態2のシリコンの精製装置は、そのガス吹込み孔27の開口部が開口端面27aにおける回転方向(矢印A)と逆方向寄りに形成されている。このとき、ガス吹出し孔27において、開口部の運動方向寸法(口径)Xと、開口端面27aの運動方向寸法Yとの関係は、0.1<(X/Y)=1.0である。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0038】
このように、ガス吹出し孔27の開口部を矢印Aの回転方向(運動方向)と逆方向寄りに形成したのは、図4で説明したように、ガス吹出し孔の精製ガスは、攪拌体6の回転方向(矢印A)とは相対的に逆方向に流れる溶融シリコンMによって吹出し方向(矢印B)が上記逆方向に曲げられるため、開口端面7aにおける上記逆方向側にSiO2の塊81が形成され易い。そのため、実施の形態2では、開口部を開口端面27aにおける回転方向(矢印A)とは逆方向寄りに形成してそちら側の端面面積(幅)を小さくすることにより、SiO2の塊81が大きく成長し難く、かつ溶融シリコンの流れの剪断力によってSiO2の塊81を剥がし易くなる。
【0039】
[実施の形態3]
図6は本発明の実施の形態3のシリコンの精製装置における攪拌体をガス吹込み孔に沿って切断した要部断面図である。なお、図6において、実施の形態1と同一の要素には同一の符号を付している。
【0040】
この実施の形態3では、ガス吹込み孔37において、開口部の運動方向寸法(口径)Xと、開口端面の運動方向寸法Yとの関係は、X/Y≒1.0である。つまり、開口端部を鋭角に形成して端面の幅(厚み)を非常に小さくしている。このようにガス吹込み孔37の開口端面にほとんど幅を無くせばSiO2がほとんど形成できず、形成しても付着面積が極小さいので成長できずに溶融シリコンの剪断力にて剥ぎ取られる。
【0041】
[実施の形態4]
図7は本発明の実施の形態4のシリコンの精製装置における攪拌体をガス吹込み孔に沿って切断した要部断面図である。この実施の形態4の実施の形態1と異なる点は、攪拌体の突起部6bが、弾丸形に形成され、かつその丸みを帯びた頂部にガス吹出し孔77が開口したことであり、その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0042】
この実施の形態4では、上述のように攪拌体の弾丸形の突起部6bの丸みを帯びた頂部にガス吹出し孔77が開口したことにより、ガス吹出し孔77の開口端面の運動方向寸法Yはガス吹出し孔の開口部の運動方向寸法Xと等しくなり、X/Y=1.0となる。このようにガス吹込み孔77の開口端面に幅が無いため、SiO2がほとんど形成できず、形成しても付着面積が極小さいので成長できずに溶融シリコンの剪断力にて容易に剥ぎ取られる。
【0043】
[実施の形態5]
図8は本発明の実施の形態5のシリコンの精製装置における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。なお、図8において、実施の形態1と同一の要素には同一の符号を付している。
【0044】
この実施の形態5では、精製ガス吹込み攪拌手段S2の攪拌体46の外観形状が八面体であり、径方向外方に配置された4つの角部にそれぞれガス吹込み47の開口部が形成されている。実施の形態5におけるその他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0045】
[実施の形態6]
図9は本発明の実施の形態6のシリコンの精製装置における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。なお、図9において、実施の形態1と同一の要素には同一の符号を付している。
【0046】
この実施の形態6では、精製ガス吹込み攪拌手段S3の攪拌体56は、回転軸5の下端に矩形ブロック形(角柱状)の4個の突起部56aが、円周方向に角度間隔90°で、かつ回転軸心に対して捩れた状態で突設されたものである。そして、各突起部56aの径方向外端の上面側であって、回転方向(矢印A)と逆方向側の角部に、ガス吹込み57の開口部が形成されている。実施の形態6におけるその他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0047】
[実施の形態7]
図10は本発明の実施の形態7のシリコンの精製装置における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。なお、図10において、実施の形態1と同一の要素には同一の符号を付している。
【0048】
この実施の形態7では、精製ガス吹込み攪拌手段S4の攪拌体66は、回転軸5の下端に矩形ブロック形の8個の突起部66aが、円周方向に角度間隔45°で一体歯車状に突設されたものである。そして、各突起部66aの径方向外端面であって、回転方向(矢印A)と逆方向側の角部近傍に、ガス吹込み孔67の開口部が形成されている。実施の形態7におけるその他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0049】
[他の実施の形態]
1.上記実施の形態1〜6(図1〜図9)では、攪拌体の角部における頂部にガス吹込み孔の開口部が設けられた場合を例示したが、角部における稜線部分
に開口部を設けてもよい。
2.上記実施の形態1〜7では、攪拌体を回転させるように構成した場合を例示したが、例えば攪拌体を上下に往復動させる場合は、攪拌体を、円周方向に複数の抜き孔を有する円板形に形成し、攪拌体の外周縁の円周方向に延びる角部にガス吹込み孔の開口部を設けた構成を一例として挙げることができる

【0050】
【実施例】
以下、本発明の効果を実施例によって説明する。
[実施例1]
実施例1では、図2で説明した実施の形態1の攪拌体6を用い、図3に示されるガス吹出し孔7の口径を1mm、肉厚を2mm、つまりX=1、Y=5として、X/Y=0.2に設定して、シリコン精製を行った。
被精製材料である原料シリコンとして、ボロン65ppm含有のスクラップシリコンと、半導体級シリコン(11−nine)とを、重量比1:8で調合することにより、ボロン濃度7ppmのシリコンを調製した。また、スラグ材として、酸化シリコン粉末と酸化カルシウム粉末とを重量比でSiO2:CaO=65:35となるよう調合し、原料シリコンの20重量%添加することで全量を1kgとして坩堝2に装入した。
【0051】
精製炉1の内部を1気圧のアルゴンガス雰囲気として、電磁誘導加熱装置3により、坩堝2を加熱することにより原料シリコンおよびスラグ材を融解して1550℃に保持した。溶融スラグは溶融シリコンに対して比重が大きいので、坩堝2の底部に沈殿した。処理前のボロン濃度を分析するため、試料採取口17から溶融シリコンを数g採取した。
【0052】
アルゴンガス中の水蒸気含有率が47vol%である精製ガスGを、攪拌体6のガス吹出し孔7から流速3L/minで吹出しつつ、攪拌体6のガス吹出し孔7が溶融スラグと溶融シリコンMとの界面付近に達するまで昇降機構により回転軸5を下降させた後、回転軸5を周速度157cm/secで回転させて、2時間の精製を行なった。
【0053】
Theuererの報告では9.8 mmHg以上、すなわち1.3vol%以上の水蒸気分圧では気液反応面にSiO2の酸化皮膜の成長が激しくなるとされており、この酸化皮膜の成長は気液反応を妨げるため水蒸気分圧の大きい精製ガスを使用するときはボロン除去速度を悪化させてしまうことが述べられている。
しかしながら本実施例では、溶融シリコンMに溶融スラグが添加されていることから、SiO2の酸化皮膜の融点を下げ、SiO2を溶融状態とすることができ、気液反応の妨げを防ぐことができた。また、攪拌体6に形成したガス吹出し孔7にはSiO2による目詰まりは発生しなかった。精製後のボロン濃度を測定したところ、0.3ppmであった。
【0054】
[実施例2]
実施例2では図9に示される攪拌体56を用いてシリコン精製を行った。原料シリコンとともに装入するスラグ材としては、酸化シリコン粉末と酸化カルシウム粉末と炭酸リチウム粉末を、質量比でSiO2:CaO:Li23=50:20:30となるよう調合し、原料シリコンの20重量%添加した。酸化性ガスとしては、本例では酸素ガスをアルゴン中に20vol%含有させた精製ガスを攪拌体56のガス吹出し孔57から流速3L/minで溶融シリコンMに吹き込んだ。その他の処理条件は実施例1と同様にして、2時間の精製を行なった。攪拌体56のガス吹出し孔57にはSiO2による目詰まりは発生しなかった。精製後のボロン濃度を測定したところ、0.7ppmであった。
【0055】
[実施例3]
実施例3では図10に示される攪拌体66を用いてシリコン精製を行った。原料シリコンとともに装入するスラグ材としては、酸化シリコン粉末と酸化カルシウム粉末と酸化マグネシウム粉末を、質量比でSiO2:CaO:MgO=50:30:20となるよう調合し、原料シリコンの20重量%添加した。アルゴンガス中の水蒸気含有率が31vol%である精製ガスを、攪拌体66のガス吹出し孔67から流速3L/minで吹出しつつ、攪拌体66のガス吹出し孔67が溶融スラグと溶融シリコンMとの界面付近に達するまで昇降機構により回転軸5を下降させた後、回転軸5を210cm/secで回転させて、2時間の精製を行なった。攪拌体66のガス吹出し孔67にはSiO2による目詰まりは発生しなかった。精製後のボロン濃度を測定したところ、0.4ppmであった。
【0056】
[実施例4]
実施例4では、実施例1において、アルゴンガス中の水蒸気含有率が20vol%である精製ガスを用い、スラグ材を使用しないこと以外は同様に行った。その結果、図2において、ガス吹出し孔7の周辺部にSiO2の付着が見られたが、目詰まりは無く2時間の精製処理を行なうことができた。精製後のボロン濃度を測定したところ、1.2ppmであった。
【0057】
[比較例]
比較例では図11に示されるような回転しない精製ガス吹込み管100を使用し、溶融シリコンMに水蒸気含有率20vol%のアルゴンガスを流速3L/minで吹き込んだ。なお、スラグ材は用いなかった。その結果、ガス吹き込み開始約5分後にはバブリングの状態が弱くなり、開始約20分後にはバブリングが停止して精製ガス導入の流速計の目盛りがゼロを指示した。精製ガス吹き込み管100を溶融シリコンMから引上げると精製ガス吹込み管100の下端部の吹出し孔を覆うようにSiO2が形成し目詰まりを起こしていた。なお、精製処理時間25分後のボロン濃度は、6.7ppmであった。
【0058】
上記実施例1〜4及び比較例の結果をまとめると、ガス吹き込み孔の目詰まりに関しては、実施例1〜4は全て目詰まりが無く、比較例は早期に目詰まりを生じた。ボロン濃度に関しては、実施例1は0.3ppm、実施例2は0.7ppm、実施例3は0.4ppm、実施例4は1.2ppm、比較例は6.7ppmであった。
上記結果から、実施例1が最もシリコン純度が高く、次いで実施例3、実施例2、実施例4の順に良好であり、これらに比して比較例はシリコン純度が大幅に低下している。このことから、シリコン精製時には、溶融シリコンを攪拌すること、溶融シリコンの流れの剪断力によりガス吹き込み孔をSiO2の目詰まりから防止すること、スラグ材を用いることがシリコン純度を向上させる重要な要素となっていることが分かった。また、実施例1〜実施例4とを比較すると、酸化性ガスとして水蒸気を用いた実施例1及び実施例3が、酸素ガスを用いた実施例2よりボロン除去に優れ、また、スラグ材を用いた実施例1〜3が、スラグ材を用いない実施例4よりもボロン除去に優れていることが分かった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、攪拌体の角部乃至その近傍で開口するようにガス吹出し孔を形成することにより、シリコン精製時においてガス吹出し孔の開口端面に形成されるSiO2の塊を流動する溶融シリコンの剪断力によって容易に剥ぎ取ることができ、吹出し孔の目詰まりを防止することができる。この結果、長時間能率よく安定した操業を行なうことができ、溶融シリコン中に含まれるボロン等の不純物元素を効率よく気化除去して、高純度にシリコンを精製することができる。
また、原料シリコンとともにスラグ材を溶解することによって溶融シリコン中のSiO2の融点低下及び不純物(ボロン)の酸化反応を著しく促進することと、それによって精製ガスに含ませる酸化性ガスとしての水蒸気の量を増大できることの相乗効果により、高効率なボロン除去効果を発揮できるので、短時間の精製処理で高純度のシリコンを低コストにて得ることができる。
したがって、半導体電子部品、特に太陽電池用のシリコンとして低コストにて供給することができ、太陽電池の普及拡大に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のシリコンの精製装置を模式的に示す正面断面図である。
【図2】同実施の形態1における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。
【図3】同実施の形態1における攪拌体のガス吹込み孔を示す要部正面図である。
【図4】同実施の形態1における攪拌体をガス吹込み孔に沿って切断した要部断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2のシリコンの精製装置における攪拌体のガス吹込み孔を示す要部正面図である。
【図6】本発明の実施の形態3のシリコンの精製装置における攪拌体をガス吹込み孔に沿って切断した要部断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4のシリコンの精製装置における攪拌体をガス吹込み孔に沿って切断した要部断面図である。
【図8】本発明の実施の形態5のシリコンの精製装置における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態6のシリコンの精製装置における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態7のシリコンの精製装置における精製ガス吹込み攪拌手段を示す要部斜視図である。
【図11】比較例としてのシリコンの精製装置を示す模式的な要部正面断面図である。
【図12】従来のシリコンの精製装置における攪拌体の要部拡大斜視図であって、同図(a)はSiO2形成初期の状態を表し、同図(b)はSiO2によりガス吹出し孔が覆われた状態を表す。
【符号の説明】
4 精製ガス導入通路
5 回転軸(棒体)
6、46、56、66 攪拌体
7、27、37、47、57、67、77 ガス吹出し孔
7a、27a 開口端面
10 溶解炉
G 精製ガス
M 溶融シリコン
1、S2、S3、S4 精製ガス吹込み攪拌手段
X 運動方向寸法
Y 運動方向寸法

Claims (6)

  1. 不純物を含有する原料シリコンを溶融状態に保持する溶解炉と、前記溶解炉内の溶融シリコン中に酸化性ガスを含む精製ガスを吹込みつつ溶融シリコンを攪拌してシリコンを精製する精製ガス吹込み攪拌手段とを備え、この精製ガス吹込み攪拌手段が、中空で、その内部を精製ガス導入通路とした棒体と、この棒体の先端に設けられ、前記精製ガス導入通路と連通するガス吹出し孔が外表面に形成された攪拌体と、前記棒体を駆動させることにより、攪拌体を溶融シリコン中で運動させる棒体駆動部とを備えたシリコンの精製装置であって、
    前記攪拌体が、その外表面に角部を有し、
    前記ガス吹出し孔が、攪拌体の前記角部乃至その近傍で開口したことを特徴とするシリコンの精製装置。
  2. ガス吹出し孔の開口端面は、運動方向に対して非垂直面である請求項1に記載のシリコンの精製装置。
  3. ガス吹出し孔の開口部の運動方向寸法Xと、ガス吹出し孔の開口端面の運動方向寸法Yとの関係が、0.1<(X/Y)=1.0である請求項1又は2に記載のシリコンの精製装置。
  4. 棒体駆動部が、棒体を軸として攪拌体を回転させるよう構成
    され、
    ガス吹出し孔は、その開口端面が回転方向と略平行に形成され、かつ開口部が開口端面における回転方向とは逆方向寄りに形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のシリコンの精製装置。
  5. 請求項1〜4の何れか1つに記載のシリコンの精製装置を用いて不純物を含む原料シリコンを精製するシリコンの精製方法であって、
    溶融シリコンは、溶融スラグとしてアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、Al23あるいはCaF2のうち少なくとも1つを含むことを特徴とするシリコンの精製方法。
  6. 精製ガスが、酸化性ガスとして水蒸気を含む請求項5に記載のシリコンの精製方法。
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