JP4071905B2 - 平版印刷版原版の画像形成方法 - Google Patents

平版印刷版原版の画像形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザを走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なネガ型平版印刷版原版の画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンピュータのデジタルデータから直接製版するシステムとしては、▲1▼電子写真法によるもの、▲2▼青色又は緑色を発光するレーザを用い露光する光重合系によるもの、▲3▼銀塩を感光性樹脂上に積層したもの、▲4▼銀塩拡散転写法によるもの等が提案されている。
【0003】
しかしながら、▲1▼の電子写真法を用いるものは、帯電、露光、現像等画像形成のプロセスが煩雑であり、装置が複雑で大がかりなものになる。また、▲2▼の光重合系によるものでは、青色や緑色の光に対して高感度な版材を使用するため、明室での取扱いが難しくなる。▲3▼、▲4▼の方法では銀塩を使用するため現像等の処理が煩雑になる、処理廃液中に銀が含まれる等の欠点がある。
【0004】
一方、近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、これらのレーザは非常に有用である。しかし、実用上有用な多くの感光性記録材料は、感光波長が760nm以下の可視光域であるため、これらの赤外線レーザでは画像記録できない。このため、赤外線レーザで記録可能な材料が望まれている。
【0005】
このような赤外線レーザにて記録可能な画像記録材料として、US4、708、925号に記載されている、オニウム塩、フェノール樹脂及び分光増感剤より成る記録材料がある。この画像記録材料は、オニウム塩とフェノール樹脂により発現する現像液に対する溶解抑止効果を利用したポジ型の画像記録材料であり、本発明のようなネガ型ではない。一方、ネガ型の画像記録材料としては、赤外線吸収剤、酸発生剤、レゾール樹脂及びノボラック樹脂より成る記録材料がUS5,340,699号に記載されている。
通常、このようなネガ型の画像記録材料は、熱により発生した酸を開始剤として、酸による架橋反応を生起させて露光部の記録層を硬化させて画像部を形成するか、あるいは熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。このようなネガ型の画像形成材料は、赤外線レーザ照射のエネルギーにより記録層の可溶化を起こさせるポジ型に比較して画像形成性が低く、架橋或いは重合などの硬化反応を促進させて強固な画像部を形成するため、現像工程後にバーニング処理或いはベーキング処理と呼ばれる加熱処理を行うのが一般的である。このバーニング処理は、通常、200〜300℃に達する高温で、数分から数十分間にわたり加熱する処理であり、この加熱処理のために、大規模な装置と高いエネルギーを必要としていた。
【0006】
さらに、平版印刷版においては、非画像部の親水性を高め、版面を保護するため、ガム引き処理と呼ばれる親水化処理を施すことが好ましいが、このガム引き処理を行った後バーニング処理を行うと、高温のため、親水化剤が硬化してインクの付着性が悪化し、画像部へインクが付着しないという問題を生じていた。そこで、バーニング処理を行う場合には、現像工程の後、まず、水洗して整面液を塗布してからバーニング処理を行い、さらに水洗して整面液を除去した後、ガム引きを行うことが必要であり、工程数が多く、生産性が悪かった。
このため、装置の簡易化、省エネルギー、或いは工程数を少なくして生産性を向上させるといった観点から、現像工程後におけるバーニング処理を必要とせず、しかも耐刷性に優れた平版印刷版を得ることができるネガ型平版印刷版原版のの画像形成方法が所望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、赤外線を放射する半導体レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接記録可能な平版印刷版原版に画像を形成する場合、複雑な工程や大規模な装置を必要とせず、印刷時、良好な印刷物が多数枚得られる耐刷性に優れた平版印刷版を製版しうるネガ型平版印刷版原版の画像形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ネガ型平版印刷版原版の画像露光後の処理条件に着目し、鋭意検討の結果、画像露光工程及び現像工程の後に、版面、即ち、記録層の表面が所定の温度範囲になるように加熱或いは全面露光することにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の平版印刷版原版の画像形成方法は、支持体上に、赤外線吸収剤と、熱により酸或いはラジカルを発生する化合物と、重合性化合物と、アリル基及びカルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂とを含む感光層を設けてなるネガ型平版印刷版原版を、画像情報に基づいて赤外線を放射する半導体レーザにより画像露光する工程と、画像露光した平版印刷版原版を現像する工程と、現像した平版印刷版を、版面温度が80〜180℃の温度範囲となるように、加熱或いは全面露光する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この後加熱工程における加熱は、非接触型の加熱手段を使用することが好ましく、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱手段や紫外光〜可視光〜赤外光等による全面露光を行う加熱手段などが好ましく用いられる。ここで、加熱手段としての露光に用いられる光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
本発明の画像形成方法に適用する平版印刷版の感光層が、露光部が酸による架橋反応で硬化する酸架橋層である場合には、前記現像工程に先立って、加熱処理を行うことが架橋反応の促進に有用であり、画像形成性、耐刷性向上の観点から好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
図1には、本発明の方法に使用し得る感光性平版印刷版自動現像機100及び後加熱工程に用いられる後露光装置200の概略図が示されている。
【0011】
図2に示される如く、本発明に係る感光性平版印刷版原版102は、支持体であるアルミニウム板104上に感光層105が設けられている。また、この感光層105には、オーバコート層106が重ねられている。すなわち、この態様においては、平版印刷版原版102は、3層構造の状態でレーザ光により画像の露光がなされるようになっている。平版印刷版原版は、支持体上に感光層を設けてなるものであればよいが、必要に応じて、さらに、保護層、バックコート層、中間層など、公知のその他の機能層を設けたものとすることができる。本発明に係る平版印刷版原版の詳細な構成については、後述する。
このような平版印刷版原版への画像の露光は、デジタル画像情報に基づいて赤外線レーザ光を走査して書込むセッターによってなされるようになっている。ここで用いられるセッターは所謂インナードラム型であっても、アウタードラム型であってもよい。この画像露光によって、感光層の画像部の重合反応或いは架橋反応を促進させる。
【0012】
平版印刷版原版102は、上記露光処理が終了した後、図1の左端に位置する前加熱部110へ至るようになっている。この前加熱工程は、光重合性の感光層や酸架橋性の感光層に好適に適用されるが、感光層の構成によっては省略することもできる。
【0013】
前加熱部110では、平版印刷版原版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対112、114が配設され、その間にヒータユニット116が設けられている。このヒータユニット116に対向して平版印刷版原版102の搬送路下側にはガイド板118が設けられ、ヒータユニット116のヒータ面と平版印刷版原版102との距離を一定に保持するようになっている。
【0014】
このヒータユニット116による加熱によって、平版印刷版原版102は、感光層105の受光部の硬化反応が促進され、印刷に必要な耐刷性を向上させることができる。
【0015】
前加熱部110の下流側には、前水洗部120が設けられており、前加熱が終了した平版印刷版原版102が水平状態で送り込まれるようになっている。
【0016】
前水洗部120には、平版印刷版原版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対122、124が配設され、その間の搬送路よりも上側にブラシローラ126が配設されている。また、このブラシローラ126よりも若干上流側には、スプレーパイプ128が配置されており、搬送路方向に向けて水が吐出されるようになっている。ここで、スプレーパイプ128から水が吐出され、ブラシローラ126が回転(図1の反時計方向回転)している状態で平版印刷版原版102が搬送されてくると、平版印刷版原版102の最上層のオーバコート層106が湿潤し、ブラシローラ126によって除去される。
すなわち、平版印刷版原版102は、このオーバコート層106が除去された状態で、次工程の現像部130へ至ることになる。
【0017】
現像部130には、現像液が貯留された貯留槽132が設けられており、この現像液に平版印刷版原版102を浸漬することで、感光層105の未受光部を膨潤させ、その後、除去するようになっている。
【0018】
現像部130の感光性平版印刷版挿入口及び排出口のそれぞれの近傍には、搬送ローラ対134、136が設けられており、搬送ローラ対134は、平版印刷版原版102を貯留槽132へ案内し、搬送ローラ対136は、平版印刷版原版102を次工程のリンス部138へ案内する役目を有している。
【0019】
貯留槽132には、ガイド板140が設けられ平版印刷版原版102は、このガイド板140に案内され、大きな円弧を描いて搬送される。この貯留槽132には、搬送路よりも上側にブラシローラ142が設けられている。また、このブラシローラ142に対向して搬送路よりも下側には一対の受けローラ144、146が配設されており、平版印刷版原版102はこのブラシローラ142と受けローラ144、146との間に挟持されながら搬送される。このため、平版印刷版原版102の感光層105には、所定の圧力でブラシローラ142が当たっており、このブラシローラ142の回転によって感光層105の未受光部が除去される。なお、受光部と未受光部との境目付近の不要な未受光部もブラシローラ142のブラッシングによって確実に除去される。
【0020】
リンス部138には、平版印刷版原版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対148、150が配設され、その間の搬送路上下方向にそれぞれスプレーパイプ152、154が配設されている。このスプレーパイプ152、154からは水洗水が吐出するようになっている。
【0021】
ここで、平版印刷版原版102が現像部130から排出され、リンス部138へ至ると、スプレーパイプ152、154から水が吐出され、平版印刷版原版102の表裏面が洗浄される。洗浄された平版印刷版原版102は、次工程のフィニッシャー部156へと送られる。
【0022】
フィニッシャー部156には、平版印刷版原版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対158、160が配設され、その間の搬送路の上側にはスプレーパイプ162が配設されている。このスプレーパイプ162からはフィニッシャー液(不感脂化液)が吐出するようになっている。
【0023】
ここで、平版印刷版原版102がフィニッシャー部156を水平搬送されている状態で、スプレーパイプ162からフィニッシャー液が吐出され、画像形成面をコーティングする。この工程はガム引きとも呼ばれ、これにより、平版印刷版の版面親水化処理がなされる。
【0024】
コーティングされた平版印刷版原版102は、乾燥部164での乾燥後、その表面を硬質とするべく、加熱及び/又は露光により、感光層の硬化を一層強固とする後加熱処理を実行する後露光装置200(図3乃至図5参照)へ案内されるようになっている。
【0025】
図3に示される如く、後露光装置200は、その本体202が4本の脚部204によって支持されており、本体202は、ケーシング220によって矩形状に覆われている。
【0026】
図3乃至図5に示される如く、本体202を被覆するケーシング220は、一対のサイドカバー222と、平版印刷版原版102の挿入側の前カバー224B及び排出側の後側カバー224Cと天井面の上側カバー224Aとで構成され、それぞれ独立して着脱可能となっている。
【0027】
本体202のベース部226には、平版印刷版原版102の挿入側から排出側にかけて6本の搬送支持ローラ228が互いに平行に配列され、両端部の回転軸はベース部226の側面に軸支されている。
搬送支持ローラ228は、ステンレス製であり、熱に対して変形の少ない部材で形成されている。
【0028】
この6本の搬送支持ローラ228に並ぶように、平版印刷版原版102の挿入側には、挿入案内ローラ対230(図5参照)が配設され、また、平版印刷版原版102の排出側には、排出案内ローラ対232(図5参照)が配設されている。また、これらの両端の回転軸は、それぞれベース部226の側面に軸支されている。
【0029】
挿入案内ローラ対230は、芯材の全域に所定の硬度のゴムローラが取り付けられた所謂無垢のローラであり、前記乾燥部164から搬送されてくる平版印刷版原版102を挟持するように、相対的に上下に位置(下側のローラ230Lと上側のローラ230Hの互いの軸芯を結ぶ線が平版印刷版原版102の搬送方向に対して垂直)している。
【0030】
また、図5に示される如く、この挿入案内ローラ対230と乾燥部164との間には、前記ベース部226から突出されたブラケット234を介して、受け渡し案内ローラ236が配設されている。この受け渡し案内ローラ236は、所謂串形ローラであり、所定のピッチで薄肉の星形ゴムローラが配設されている。この受け渡し案内ローラ236は、平版印刷版原版102の搬送経路の下側に位置しており、乾燥部164から搬送されてくる平版印刷版原版102を支持し、前記挿入案内ローラ対230へ受け渡す役目を有している。このとき、星形ゴムローラを採用し、かつ串形としているため、平版印刷版原版102面との接触面積が少なく、乾燥部164から排出された直後の平版印刷版原版102に、変形等の悪影響を与えないようになっている。
【0031】
排出案内ローラ対232は、前記後露光装置200から排出されてくる平版印刷版原版102を挟持するように、相対的に上下に位置(互いの軸芯を結ぶ線が平版印刷版原版102の搬送方向に対して垂直)している。
【0032】
ここで、後露光装置200により加熱され徐々に冷却される平版印刷版原版102は、熱の影響による伸縮力によって若干変形する場合がある。この変形した平版印刷版原版102を大きな挟持力で挟み込むと、変形部分が逃げ場を失い折れ線が生じたり、塑性変形(しわとして残る状態)したりすることがある。そこで、前述のように駆動源(図示省略)から回転駆動力が伝達される下側のローラ232Lと上側のローラ232Hとの間に所定の隙間をあけることにより、挟持力を軽減すると共に、隙間以上の変形が生じ、この変形が串ローラ238の位置に対応した場合に、串ローラ238が平版印刷版原版102の変形による押圧力によって軸線方向に移動し、平版印刷版原版102に必要以上の挟持力を与えてしまって、この変形部分で平版印刷版原版102が織り曲がってしまったり、塑性変形をしてしまったりすることがない構造となっている。なお、平版印刷版原版102の冷却放置後は、変形は元に戻る。従って、排出時に無理な力を加えない限り、変形は画質等に影響はない。
【0033】
なお、この排出案内ローラ232の下側のローラ232Lの軸芯と、上側のローラ232Hの軸芯とを結ぶ線は、平版印刷版原版102の搬送方向に対して必ずしも垂直である必要はなく、上下のローラ間の最大隙間が平版印刷版原版102の肉厚寸法よりも小さければよい。また、この隙間の設定によっては、上側のローラ232Hを串ローラ238とせず、下側のローラ232Lと同様に無垢のローラとしてもよい。
図6及び図10に示される如く、ベース部226の側面からはそれぞれ側板264が互いに平行に立設されている。側板264は、ステンレス製の内張板266と外張板268とで構成され、これらの間には、所定の寸法Dの隙間が設けられている。この隙間には、板状の断熱材270が配設されている。この断熱材270は、前記隙間の寸法Dよりも薄い肉厚寸法E(D>E)とされ、外張板268側に貼り付けられている。これにより、内張板266からくる熱を内張板266と外張板68の間の空気層と断熱材270との両方で遮断し、この熱が外張板268へ至るまでに減衰される構造となっている。
【0034】
一対の側板264の外側面、すなわち外張板268と前記サイドカバー222との間は、それぞれ空間が設けられ、一方は制御系電気配線部272、他方はダクト収容部274とされている。
【0035】
ここで、この制御系電気配線部272又はダクト収容部274を点検整備する場合は、サイドカバー222を取り外すのみでよく、上方カバー224Aを取り外す必要はない。
【0036】
図6に示される如く、一対の側板264の上端部間には、ランプ支持板284が掛け渡されている。このランプ支持板284の下面には、前記搬送支持ローラ228の軸線方向に沿って、5個のランプソケット286が等ピッチで直線状に配設されている。
【0037】
このランプソケット286には、それぞれ水銀ランプ288が着脱可能に取り付けられている。水銀ランプ288の最下端と前記6本の搬送支持ローラ228による平版印刷版原版102の支持面との間には、所定の隙間が設けられており、平版印刷版原版102はこの隙間を通過することにより、水銀ランプ288からの熱及び紫外線を浴びるようになっている。なお、この水銀ランプ288の照射は拡散光であるため、等速度で搬送される平版印刷版原版102の全面(搬送方向及び幅方向)に対して均等な量の熱及び紫外線を付与することができる。
【0038】
なお、水銀ランプ288の仕様は、以下の通りである。
軸光度 :1000〜3300(cd)
ビームの開き :120〜140(°)
ビーム光束 :3300〜26000(lm)
全光束 :4100〜64000(lm)
相関色温度 :3700(K)
平均清色評価数 :58(Ra)
また、図10に示される如く、水銀ランプ288の外形寸法は、全長Lが315mm、外径φが180mmとされ、図11に示されるような波長スペクトル分布となっている。
【0039】
図3乃至図6に示される如く、ランプ支持板284の上面側には、横形排熱ダクト290が水銀ランプ288の配列方向に沿って設けられている。
ランプ支持板284の幅寸法(平版印刷版原版102の搬送方向寸法)は、前記メインカバー224の挿入側から排出側までの内寸法よりも短く形成されており、このランプ支持板284とメインカバー224との間には隙間が設けられている。この隙間から前記水銀ランプ288によって加熱された雰囲気の空気がランプ支持板284の上方へ案内されてくる。
【0040】
そこで、このランプ支持板284の上面側に横形排熱ダクト290を配置することによって、この高温の雰囲気の空気を横形排熱ダクト290を使って排出するようになっている。
【0041】
図3に示される如く、横形排熱ダクト290は、矩形状でその一端部に排気ファン292が取付けられている。この排気ファン292の吸引口に前記横形排熱ダクト290の一端開口が接続されている。排気ファン292の排気口は下向きとされ、縦形排熱ダクト294の上端開口部が接続されている。この縦形排熱ダクト294は、前記ダクト収容部274に配設されており、下端が開放状態となっている。
【0042】
一方、横形排熱ダクト290の上面には、複数の矩形孔296が設けられている。この矩形孔296は、排気ファン292から遠ざかるに従い大きい開口面積とされている。ここで、メインカバー224で覆われた内部空間の加熱された雰囲気の空気はこの矩形孔296から吸引され、縦形排熱ダクト294を通って外部に排出される構造となっている。
【0043】
ここで、一般的には、排気ファン292によって吸引する能力は、この排気ファン292に近い方が高いため、排気ファン292に近い側の雰囲気の空気を多く吸引することになり、均一な排気ができない。これに対して、本実施の形態における横形排熱ダクト290は、排気ファン292から遠ざかるほど矩形孔296の開口面積を大きくしている。このため、排気ファン292の吸引能力が低い方を開口面積の大きい矩形孔296としたため、横形排熱ダクト290の長手方向に亘りほぼ一定量の雰囲気の空気を吸引することが可能となり、雰囲気の空気の温度むらを防止することができる。
【0044】
図5に示される如く、水銀ランプ288を挿入案内ローラ230と排出案内ローラ232の間の平版印刷版原版102の搬送路の中央部上方に設けるようにした。これによって、搬送される平版印刷版原版102の表面温度は、搬送中央部の版面温度が最も高く(約100℃〜180℃)、挿入側及び排出側に至るに従いそれぞれ均等に温度が下がり、挿入位置及び排出位置では、版面温度が約50℃から100℃程度となっている。すなわち、6個の搬送支持ローラ228における挿入側から2番目と3番目との間から4番目と5番目との間までの領域(図5矢印HMで示す領域)が実加熱領域とされ、それ以外の挿入側が前加熱(予熱)領域(図5矢印HP)、排出側が後加熱(除熱)領域(図5矢印HC)となる。
【0045】
上記温度分布とすることにより、後露光装置200への平版印刷版原版102の挿入及び排出による平版印刷版原版102への過度の急加熱及び急冷却を緩和することができ(平版印刷版原版102の反りの防止)、かつ、搬送中に必要な熱量を付与(本来の後露光の目的である平版印刷版原版の表面の硬質化)することができる。しかしながら、本発明の方法における如き後加熱工程は、従来のバーニング処理工程が、画像部の記録材料成分の飛散防止のため、緩加熱を必須とするのに比較して、加熱における温度条件がマイルドで、且つ、加熱時間が短時間であるため、例えば、支持体に影響を及ぼすような過度の急加熱が避けられれば、上記の如き温度分布は必ずしも必要とせず、短時間に所定の温度に達する急加熱処理であってもよい。
【0046】
図5及び図6に示される如く、5個配列された水銀ランプ288の軸線上、かつ前記搬送支持ローラ228よりも下側には、光ファイバー298の一端面が水銀ランプ288のそれぞれに対して対向配置されている。
この光ファイバー298の中間部は、それぞれ一方の側板264の平版印刷版原版102の排出側面に設けられたインジケータ盤300まで配線されている。図6に示される如く、インジケータ盤300は、矩形の箱形で、前面パネル302には、5個の小円孔が横方向に1列に並んで設けられている。また、この前面パネル302には、この小円孔のそれぞれに対応して1〜5までの数字がプリントされている。
【0047】
前面パネル302の図示されない裏側にはフィルタ(例えば、赤色のみを透過するフィルタ)が配設され、このフィルタを挟持するように裏面パネルが配設されている。この裏面パネルには、前記小円孔のそれぞれと同軸となる5個の円孔が設けられ、5本の光ファイバー298の他端部のそれぞれが嵌入されている。これにより、光ファイバー298の他端面は、小円孔と同軸となる。
【0048】
すなわち、水銀ランプ288が点灯していると、この点灯領域内にある光ファイバー298の一端面から光の一部が入射し、光ファイバー298の特性上、光量ロスなく、他端面から出射され、この出射光(赤色)が小円孔から出射する構造となっている。ここで、各光ファイバー298の一端面はそれぞれの水銀ランプ288の軸線と一致した位置にあるため最も光量が多く、対向する水銀ランプ288が切れると(或いは消灯すると)、対向する光ファイバー298への入射光量のみが減少する(ほとんど光量0)。このため、前面パネル302上では、ランプ切れ(消灯)した水銀ランプに対応する小円孔からの光の出射がなくなり、オペレータは、5個の水銀ランプ288のうちのどの水銀ランプ288がランプ切れを生じたかを認識することができる。
【0049】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0050】
感光性平版印刷版(例えば、平版印刷版原版)102は、レーザ光による画像露光処理が終了した後、前加熱部110へ至り、2個の搬送ローラ対112、114によって搬送されながら、ヒータユニット116のヒータ面から熱を受ける。このとき、ヒータ面は平版印刷版原版102との距離が一定に保持されているため、均一な加熱ができる。
【0051】
このヒータユニット116による加熱によって、平版印刷版原版102は、感光層105の受光部の硬化性が向上する。
前加熱が終了すると、平版印刷版原版102は前水洗部120へ送られる。
【0052】
前水洗部120では、平版印刷版原版102が2個の搬送ローラ対122、124に搬送されながら、スプレーパイプ128から水が吐出され、ブラシローラ126が回転(図1の反時計方向回転)する。これにより、平版印刷版原版102の最上層のオーバーコート層106が湿潤し、ブラシローラ126によって除去される。ここで感光層105を保護していたオーバーコート層106が除去され、後に続く現像処理工程において現像性が向上する。
【0053】
オーバーコート層106が除去された平版印刷版原版102は、現像部130へ至る。平版印刷版原版102は、搬送ローラ対134によって搬送され貯留槽132へ浸漬される。ここで、平版印刷版原版102の感光層105に所定の圧力でブラシローラ142が当たり、このブラシローラ142の回転によって感光層105の未受光部が除去される。なお、受光部と未受光部との境目付近の不要な未受光部もブラシローラ142のブラッシングによって確実に除去される。この後、リンス部138を経て、スプレーパイプ152、154から吐出された水により表裏面が洗浄され、現像工程を終了した平版印刷版原版102は、次工程のフィニッシャー部156へと送られる。
【0054】
フィニッシャー部156では、スプレーパイプ162から吐出されるフィニッシャー液によって、画像形成面がコーティングされ、表面の親水化が行なわれる。乾燥部で乾燥された後、後露光装置200へ送られる。
【0055】
後露光装置200の本体202の上方のランプ支持板284からは、5個の水銀ランプ288が吊り下げ配置され、前記搬送支持ローラ228上を搬送される平版印刷版原版102は、この水銀ランプ288からの熱及び紫外線を受け、感光層の熱硬化処理及び紫外線による重合或いは架橋促進処理がなされる。
【0056】
ここで、水銀ランプ288は、その光軸は搬送路に対して垂直であり、かつ搬送長の中央(6本の搬送支持ローラ228の3本目と4本目の間)に位置している。水銀ランプ288に限らず、光源は、照射範囲中央の光軸付近が最も光量(熱量)が多く、この光軸付近を中心に輪状に拡がるように徐々に低下していく。従って、搬送経路の中央部上方に位置する水銀ランプ288では、搬送路の中央部が最も光量(熱量)が多く、挿入側及び排出側にかけて徐々に小さくなる。
【0057】
本実施の形態では、挿入口から所定長さを予熱領域HPとし、この予熱領域の温度分布を約50℃〜100℃として、平版印刷版原版102を予熱する。
一方、搬送経路の中央部は、実加熱領域HMとし、この実加熱領域の温度分布を100℃から180℃として、平版印刷版原版102を加熱(紫外線照射)する。
次に、実加熱領域と排出口までの搬送経路を除熱領域とし、この除熱領域HCの温度分布を50℃から100℃として、平版印刷版原版102を除熱する。
【0058】
上記温度分布とすることにより、平版印刷版原版102の過度の急加熱及び急冷却を緩和することができ(平版印刷版原版102の反りの防止)、かつ、搬送中に必要な紫外線の照射及び熱の供給(本来の後加熱の目的である平版印刷版原版の表面の硬質化)を行うことができる。
【0059】
また、図示した装置には、前述のように、断熱構造、排熱構造を備えるため、前記の予熱領域、実加熱領域、除熱領域の温度分布が安定され、且つ、側板264の外側に配設される制御系電気部品への熱の伝達を軽減することができる。すなわち、空気層を設けることにより、薄い断熱材270を使用することができる。また、耐熱温度が高い高価な断熱材用いる必要がない。
【0060】
本発明の画像形成方法においては、前記後加熱工程(前記実施態様においては後露光装置によりなされた工程)が重要である。すなわち、従来の高温のバーニング処理に代えてマイルドな加熱/露光処理により版面温度を80〜180℃の温度範囲で、15秒〜3分間加熱することで、画像部の感光層の耐刷性向上を達成でき、しかも、ガム引き処理、フィニッシング処理などに用いられる親水化剤の変質を生じないという利点を有する。加熱温度が180℃を超えると装置が大規模になるとともに、親水化剤の硬化を引き起こし、画像部へのインクの付着性が悪化し、このため、ガム引き処理を行うとすると、整面化処理工程が必要となる。また、温度が低すぎると耐刷性向上効果が不充分となる。加熱温度は前記親水化剤の硬化、変質をまねく温度より低い温度範囲であることが重要であり、好ましい温度範囲は90〜170℃であり、さらに好ましくは100〜160℃の範囲である。加熱時間は、使用する感光層の組成、加熱温度などにより適宜決定されるが、一般的には、30秒〜2分間である。
【0061】
この後加熱工程における加熱は、前記実施態様では水銀灯による全面露光を用いたが、これに制限されるものではなく、非接触型の加熱手段であればいずれも好適に使用することができる。例えば、所定の温度範囲に調整された熱風加熱方式の汎用のオーブンや加熱炉を用いて加熱してもよく、紫外光〜可視光〜赤外光等による全面露光を行う加熱手段を用いて加熱してもよく、これらを複数組み合わせてもよい。全面露光により加熱を行う場合、加熱/露光に用いられる光源としては、前記水銀灯のほか、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。これらの光源を用いる後加熱処理においては、感光層の硬化作用に合わせ、例えば、光重合性化合物を用いる場合、開始剤としてジアゾ化合物を用いる場合など、それぞれの化合物の硬化や定着を促進させる機能を有する波長の光源を選択することで、加熱による硬化促進にくわえ、光源の特性によってもさらに高い耐刷性向上効果を期待できるという利点を有する。光源は一種のみならず、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0062】
本発明の画像形成方法に係る後加熱工程では、版面が、実際にどれだけの熱量を受けたのかが、感光層の硬化の程度に影響を及ぼし、また、版面の温度が前記所定の温度より低い場合は、耐刷性の向上効果が不充分となるため、版面の温度及び、版面が所定の温度以上となっている時間が重要となる。また、上記の温度範囲では、記録層やそこに適用される添加剤等には大きな影響を与えることがないため、バーニング処理における如き、緩やかな加熱操作や、温度勾配を与えるような加熱操作は必要ではなく、所定の温度に調整された加熱炉や露光装置に予熱なしで導入するといった簡易な加熱処理方法で対応でき、温度制御操作も容易に行えるという利点も有する。
ここで、版面の温度は、公知の方法、例えば、熱電対等の温度センサーを版面上に貼付し、加熱装置へ導く方法等により容易に測定できる。
【0063】
以下に、本発明の画像形成方法を適用し得るネガ型平版印刷版原版について説明する。
本発明の方法は赤外線レーザによる書き込み可能な平版印刷版原版、即ち、赤外線を放出する半導体レーザ照射部が重合硬化して画像部を形成するネガ型の感光層を有する平版印刷版原版に適用することができる。
このようなネガ型感光層の1つとして、光重合層が挙げられる。光重合層には、(A)赤外線吸収剤と(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとしてアリル基及びカルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂を含有する。赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
【0064】
ネガ型平版印刷版原版の記録層に用いられる各化合物について以下に述べる。
[(A)赤外線吸収剤]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層は、赤外線を発するレーザで画像記録可能な構成を有する。このような感光層には、赤外線吸収剤を用いることが好ましい。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、ラジカル発生剤や酸発生剤が分解し、ラジカルや酸を発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0065】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば、特開平10−39509号公報の段落番号[0050]〜[0051]に記載のものを挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、シアニン色素が好ましく、特に下記一般式(I)で示されるシアニン色素が最も好ましい。
【0066】
【化1】
Figure 0004071905
【0067】
一般式(I)中、X1は、ハロゲン原子、またはX2−L1を示す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z1-は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-は必要ない。好ましいZ1-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0068】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0069】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0070】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。これらの顔料の詳細は、特開平10−39509号公報の段落番号[0052]〜[0054]に詳細に記載されており、これらを本発明にも適用することができる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0071】
感光層中における、上述の染料又は顔料の含有量としては、感光層の全固形分重量に対し、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10重量%が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10重量%が最も好ましい。
前記含有量が、0.01重量%未満であると、感度が低くなることがあり、50重量%を超えると、平版印刷用原版とした場合の非画像部に汚れが発生することがある。
【0072】
[(B)ラジカルを発生する化合物]
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物としては、オニウム塩が挙げられ、具体的には、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩である。これらのオニウム塩は酸発生剤としての機能も有するが、後述するラジカル重合性化合物と併用する際には、ラジカル重合の開始剤として機能する。本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(III)〜(V)で表されるオニウム塩である。
【0073】
【化2】
Figure 0004071905
【0074】
式(III)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0075】
式(IV)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0076】
式(V)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0077】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特願平11−310623号明細書の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
【0078】
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0079】
これらのオニウム塩は、感光層塗布液の全固形分に対し0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%の割合で感光層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらのオニウム塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらのオニウム塩は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0080】
[(C)ラジカル重合性化合物]
本発明に係る感光層に使用されるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いる事ができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0081】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物であるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステルの具体例は、特願平11−310623号明細書の段落番号[0037]〜[0042]に記載されており、これらを本発明にも適用することができる。
【0082】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0083】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0084】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0085】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(VI)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0086】
一般式(VI)
CH2=C(R41)COOCH2CH(R42)OH
(ただし、R41およびR42は、HまたはCH3を示す。)
【0087】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0088】
さらに、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0089】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol. 20、No. 7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0090】
これらのラジカル重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上がこのましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものが良く、さらに、異なる官能数・異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80重量%、好ましくは20〜75重量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0091】
[(D)バインダーポリマー]
本発明においては、さらにバインダーポリマーとして、アリル基及びカルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂を使用する。これに併用することができるバインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、感光層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0092】
本発明においては、アリル基及びカルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適に用いられる。
【0093】
また、併用しうるバインダーポリマーとして、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
【0094】
さらにこの他に併用しうる水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0095】
本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量については好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0096】
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0097】
本発明で使用されるポリマーは従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0098】
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。
【0099】
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーは、感光層塗布液の全固形分に対し20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%の割合で感光層中に添加される。添加量が20重量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95重量%を越える場合は、画像形成されない。またラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機ポリマーは、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0131】
[その他の成分]
本発明では、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、感光層塗布液全固形分に対し、0.01〜10重量%の割合である。
【0132】
また、本発明においては、感光層は光重合層である場合、塗布液の調製中あるいは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01重量%〜約5重量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1重量%〜約10重量%が好ましい。
【0133】
また、本発明における感光層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0134】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0135】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0136】
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光層塗布液中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0137】
さらに、本発明に係る感光層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0138】
本発明の平版印刷版原版を製造するには、通常、感光層塗布液に必要な上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。
【0139】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感光層の皮膜特性は低下する。
【0140】
[支持体]
本発明の方法を適用し得る平版印刷版原版において前記感光層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0141】
本発明の平版印刷版原版に使用する支持体としては、軽量で表面処理性、加工性、耐食性に優れたアルミニウム板を使用することが好ましい。この目的に供されるアルミニウム材質としては、JIS 1050材、JIS 1100材、JIS 1070材、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金。Al−Mg−Si系合金などが挙げられる。
【0142】
アルミニウム板は表面に粗面化処理等の表面処理を行い、感光層を塗布して平版印刷版原版とすることが出来る。粗面化処理には、機械的粗面化、化学的粗面化、電気化学的粗面化が単独又は組み合わせて行われる。また、表面のキズ付き難さを確保するための陽極酸化処理を行ったり、親水性を増すための処理を行うことも好ましい。
【0143】
以下に支持体の表面処理について説明する。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、必要に応じ、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われてもよい。アルカリの場合、次いで酸性溶液で中和、スマット除去などの処理を行ってもよい。
【0144】
次いで支持体と感光層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理がなされている。この砂目立て処理法の具体的手段としては、サンドブラスト等の機械的砂目立て方法があり、またアルカリまたは酸あるいはそれらの混合物からなるエッチング剤で表面を粗面化処理する化学的砂目立て方法がある。また、電気化学的砂目立て方法、支持体材料に、粒状体を接着剤またはその効果を有する方法で接着させて表面を粗面化する方法や、微細な凹凸を有する連続帯やロールを支持体材料に圧着させて凹凸を転写する粗面化方法等公知の方法を適用できる。
【0145】
これらのような粗面化方法は複数を組み合わせて行ってもよく、その順序、繰り返し数などは任意に選択することができる。前述のような粗面化処理すなわち砂目立て処理して得られた支持体の表面には、スマットが生成しているので、このスマットを除去するために適宜水洗あるいはアルカリエッチング等の処理を行うことが一般的に好ましい。
【0146】
本発明に用いられるアルミニウム支持体の場合には、前述のような前処理を施した後、通常、耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させる。
【0147】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならばいかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはこれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲にあれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化皮膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0148】
このようなアルミニウム支持体は陽極酸化処理後に有機酸またはその塩による処理または、感光層塗布の下塗り層を適用して用いることができる。
【0149】
なお支持体と感光層との密着性を高めるための中間層を設けてもよい。密着性の向上のためには、一般に中間層は、ジアゾ樹脂や、例えばアルミニウムに吸着するリン酸化合物等からなっている。中間層の厚さは任意であり、露光した時に、上層の感光層と均一な結合形成反応を行い得る厚みでなければならない。通常、乾燥固体で約1〜100mg/m2の塗布割合がよく、5〜40mg/m2が特に良好である。中間層中におけるジアゾ樹脂の使用割合は、30〜100%、好ましくは60〜100%である。
【0150】
支持体表面に以上のような処理或いは、下塗りなどが施された後、支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
【0151】
平版印刷版用支持体として好ましい特性としては、中心線平均粗さで0.10〜1.2μmである。0.10μmより低いと感光層と密着性が低下し、著しい耐刷の低下を生じてしまう。1.2μmより大きい場合、印刷時の汚れ性が悪化してしまう。さらに支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であり、0.15より白い場合、画像露光時のハレーションが強すぎ画像形成に支障をきたしてしまい、0.65より黒い場合、現像後の検版作業において画像が見難くく、著しく検版性が悪いものとなってしまう。
【0152】
以上のようにして、本発明の平版印刷版原版を作成することができる。この平版印刷版原版は、赤外線レーザで記録できる。より具体的には、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する半導体レーザにより画像露光される。レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。記録材料に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
【0153】
赤外線レーザにより露光した後、本発明の画像記録材料は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
【0154】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の画像記録材料の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0155】
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じものまたは、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0156】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
【0157】
さらに、現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸または亜硫酸水素酸のナトリウム塩およびカリウム塩等の無機塩系還元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0158】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理されたのち、本発明の特有の工程である後加熱工程に付される。
【0159】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0160】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、耐刷性向上のための後加熱処理が施される。本発明の後加熱工程は、版面の温度が所定の範囲に制御されているため、所謂整面液による表面処理を必要としない。
【0161】
本発明の方法により、所定の工程を経て画像形成された平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0162】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(対象例1)
[支持体の作成]
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A1050合金の溶湯を清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0163】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0164】
次いで支持体と感光層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1%の硝酸と0.5%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0165】
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0166】
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上により作成した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0167】
[下塗り]
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り液をワイヤーバーにて塗布し、温風式乾燥装置を用いて90℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被服量は10mg/m2であった。
【0168】
<下塗り液>
・エチルメタクリレートと2−アクリルアミド−2−メチル−1−
プロパンスルホン酸ナトリウム塩のモル比75:15の共重合体 0.1g
・2−アミノエチルホスホン酸 0.1g
・メタノール 50g
・イオン交換水 50g
【0169】
[感光層]
次に、下記溶液[P−1]を調整し、上記の下塗り済みのアルミニウム板にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥してネガ型平版印刷版原版[P−1]を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0170】
<溶液[P−1]>
・赤外線吸収剤[IR−6] 0.08g
・オニウム塩[OI−6] 0.30g
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 1.00g
・アリルメタクリレートとメタクリル酸の
モル比80:20の共重合体
(重量平均分子量12万) 1.00g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0171】
【化9】
Figure 0004071905
【0172】
[露光]
得られたネガ型平版印刷版原版[P−1]を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0173】
[現像処理]
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0174】
[印刷]
次に、平版印刷版[P−1]を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価した。結果は48,000枚であった。
【0175】
(実施例1)
対象例1で得られた平版印刷版[P−1]を、現像処理後、先に図1で示した後露光装置により、500Wの水銀灯5灯を用いて、0.3m/分の搬送速度で、加熱/露光を行った。版面の最高到達温度は130℃であり、後露光装置内で版面温度が100℃以上に保持されていた時間は、約30秒間であった。このようにして後加熱処理を行った後、対象例1と同様の条件で印刷を行い、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価した。結果は80,000枚であった。
対象例1と実施例1との関係において明らかなように、本発明の画像形成方法を実施したネガ型平版印刷版は、同じ平版印刷版原版を用いながら、耐刷性が大幅に向上していた。また、印刷工程における版面及び得られた印刷物を観察した結果、フィニッシャー処理後に行われた本発明の画像形成方法に係る後加熱工程はインクの付着性に悪影響を与えていないことが確認された。
【0176】
(実施例2)
実施例1で用いた後露光装置に代えて、現像工程を経た平版印刷版[P−1]をSPC Mini EV34/121(商品名:Wisconsin Oven社製)内を搬送することにより、版面の最高到達温度130℃、版面温度が100℃以上に保持される時間が30秒間となる条件で加熱し、後加熱工程に付した。実施例1と同様にして、印刷を行なったところ、十分なインキ濃度を保って70,000枚の印刷画像可能であった。このことから、後加熱工程を熱風加熱方式による加熱処理のみで行った場合も、加熱/露光処理と同様に、耐刷性が大幅に向上することが確認された。また、この後加熱工程も版面のインク付着性に悪影響を与えないことが確認された。
【0177】
(実施例3)
実施例1で用いた後露光装置に代えて、現像工程を経た平版印刷版[P−1]をUV露光用のPS版の焼き付けに用いる3kwのメタルハライドランプ2灯を装着した露光装置により、約1分間、紫外線による全面露光を行った。版面温度はあまり上昇せず約30℃であった。この露光処理に引き続き、実施例2で用いたのと同様の熱風加熱式オーブン内を搬送することにより、版面の最高到達温度130℃、版面温度が100℃以上に保持される時間が30秒間となる条件で加熱し、後加熱工程に付した。実施例1と同様にして、印刷を行なったところ、十分なインキ濃度を保って80,000枚の印刷画像可能であった。このことから、紫外線全面露光と加熱処理を連続して行う条件で後加熱工程を行った場合も、加熱/露光処理と同様に、耐刷性が大幅に向上することが確認された。また、この後加熱工程も版面のインク付着性に悪影響を与えないことが確認された。
【0178】
(対象例2)
<架橋剤[KZ−9]の合成>
1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]―4―[α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンを、水酸化カリウム水溶液中で、ホルマリンと反応させた。反応溶液を硫酸で酸性とし晶析させ、更にメタノールから再結晶することにより、下記構造の架橋剤[KZ−9]を得た。逆相HPLCにより純度を測定したところ、92%であった。
【0179】
【化10】
Figure 0004071905
【0180】
<バインダーポリマー[BP−1]の入手>
丸善石油化学(株)製のポリ(p−ヒドロキシスチレン)、マルカ リンカーM S−4P(商品名)を入手し、[BP−1]とした。
【0181】
<支持体>
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用い、その表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、更に2%HNO3 に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。次に、この板を7%H2SO4を電解液として電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。次に、このアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2 であった。
【0182】
<下塗り液>
・β−アラニン ・・・ 0.1 g
・フェニルホスホン酸 ・・・ 0.05g
・メタノール ・・・40 g
・純水 ・・・60 g
【0183】
次に、下記溶液[P−2]を調製し、この溶液を、上記の下塗り済みのアルミニウム板に塗布し、100℃で1分間乾燥してネガ型平版印刷用版材[P−2]を得た。乾燥後の被覆量は1.5g/m2 であった。
【0184】
<溶液[P−2]>
・ノニルフェノール(異性体混合物、Aldrich社製)・ 0.05g
・酸発生剤[SH−1] ・・・ 0.3 g
・架橋剤[KZ−9] ・・・ 0.5 g
・バインダーポリマー[BP−1] ・・・ 1.5 g
・赤外線吸収剤[IK−1] ・・・ 0.07g
・AIZEN SPILON BLUE C−RH ・・・ 0.035g
(保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 ・・・ 0.01g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン ・・・12 g
・メチルアルコール ・・・10 g
・1−メトキシ−2−プロパノール ・・・ 8 g
【0185】
溶液[P−2]に用いた酸発生剤[SH−1]及び赤外線吸収剤[IK−1]の構造を以下に示す。
【0186】
【化11】
Figure 0004071905
【0187】
[露光]
得られたネガ型平版印刷版原版[P−2]を、対象例1と同様の条件で露光した。
【0188】
[現像処理]
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FP−2Wの1:1水希釈液を用いた。
【0189】
[印刷]
次に、露光、現像により得られた平版印刷版[P−2]を、対象例1と同様にして印刷した。この際、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価した。結果は45,000枚であった。
【0190】
参考例1
対象例2で得られた平版印刷版[P−2]を、現像処理後、先に図1で示した後露光装置により、500Wの水銀灯5灯を用いて、0.15m/分の搬送速度で、加熱/露光を行った。版面の最高到達温度は150℃であり、後露光装置内で版面温度が100℃以上に保持されていた時間は、約1分間であった。このようにして後加熱処理を行った後、対象例2と同様の条件で印刷を行い、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価した。結果は75,000枚であった。
対象例2と参考例1との関係において明らかなように、本発明の画像形成方法を実施したネガ型平版印刷版は、同じ平版印刷版原版を用いながら、耐刷性が大幅に向上していた。また、印刷工程における版面及び得られた印刷物を観察した結果、フィニッシャー処理後に行われた本発明の画像形成方法に係る後加熱工程はインクの付着性に悪影響を与えていないことが確認された。
【0191】
参考例2
実施例2で用いた後露光装置に代えて、現像工程を経た平版印刷版[P−2]をSPC Mini EV34/121(商品名:Wisconsin Oven社製)内を搬送することにより、版面の最高到達温度150℃、版面温度が100℃以上に保持される時間が約1分間となる条件で加熱し、後加熱工程に付した。実施例2と同様にして、印刷を行なったところ、十分なインキ濃度を保って65,000枚の印刷画像可能であった。このことから、後加熱工程を熱風加熱方式による加熱処理のみで行った場合も、加熱/露光処理と同様に、耐刷性が大幅に向上することが確認された。また、この後加熱工程も版面のインク付着性に悪影響を与えないことが確認された。
【0192】
参考例3
実施例2で用いた後露光装置に代えて、現像工程を経た平版印刷版[P−2]をUV露光用のPS版の焼き付けに用いる3kwのメタルハライドランプ2灯を装着した露光装置により、約1分間、紫外線による全面露光を行った。版面温度はあまり上昇せず約30℃であった。この露光処理に引き続き、実施例5で用いたのと同様の熱風加熱式オーブン内を搬送することにより、版面の最高到達温度150℃、版面温度が100℃以上に保持される時間が約1分間となる条件で加熱し、後加熱工程に付した。実施例2と同様にして、印刷を行なったところ、十分なインキ濃度を保って85,000枚の印刷画像可能であった。このことから、紫外線全面露光と加熱処理を連続して行う条件で後加熱工程を行った場合も、加熱/露光処理と同様に、耐刷性が大幅に向上することが確認された。また、この後加熱工程も版面のインク付着性に悪影響を与えないことが確認された。
【0193】
(比較例1)
対象例2で得られた現像工程を経た平版印刷版[P−2]を、SPC Mini EV34/121(商品名:Wisconsin Oven社製)内を搬送することにより、版面の最高到達温度200℃、版面温度が100℃以上に保持される時間が約2分間となる条件で加熱し、従来のバーニング処理と同様の加熱工程に付した。実施例2と同様にして、印刷を行なったところ、画像部にインキが充分に付着せず、良好な印刷物が得られなかった。
【0194】
【発明の効果】
本発明によれば、赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接記録可能な平版印刷版原版に画像を形成する場合、複雑な工程や大規模な装置を必要とせず、印刷時、良好な印刷物が多数枚得られる耐刷性に優れた平版印刷版を製版しうるネガ型平版印刷版原版の画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像形成方法に適用し得る平版印刷版の自動現像機と後露光装置の一態様を示す概略構成図である。
【図2】 本発明の画像形成方法を適用し得る平版印刷版原版の例を示す断面図である。
【図3】 図1に示す後露光装置の斜視図である。
【図4】 図1に示す後露光装置を平版印刷版の排出口側から見た正面図である。
【図5】 図1に示す後露光装置の側面図である。
【図6】 図1に示す後露光装置の処理ステージの拡大図(排出口側から見た正面図)である。
【図7】 後露光装置の排出案内ローラ対の拡大図である。
【図8】 後露光装置の排出案内ローラ対の側面図である。
【図9】 搬送系ローラの駆動部の一部を示す断面図(搬送支持ローラ軸方向断面図)である。
【図10】 後露光装置の処理ステージの側板の断面図である。
【図11】 後露光装置の光源である水銀灯の露光波長スペクトル分布を示すグラフである。
【符号の説明】
100 感光性平版印刷版自動現像機
102 フォトポリマー版
200 後露光装置
202 本体
204 脚部
208 ブラケット
214 ボルト
218 切欠孔
222 サイドカバー
226 ベース部
228 搬送支持ローラ
230 挿入案内ローラ
232 排出案内ローラ
232 排出案内ローラ対
238 串ローラ
246 チェーン
248 モータ
250 歯車
254 歯車
256 チェーン案内板
258 ボルト
262 通過孔
264 側板
266 内張板
268 外張板
270 断熱材
272 制御系電気配線部
274 ダクト収容部
280 フック部
282 ボルト
284 ランプ支持板
288 水銀ランプ
290 横形排熱ダクト
292 排気ファン
294 縦形排熱ダクト
296 矩形孔
298 光ファイバー

Claims (5)

  1. 支持体上に、赤外線吸収剤と、熱によりラジカル或いは酸を発生する化合物と、重合性化合物と、アリル基及びカルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂とを含む感光層を設けてなるネガ型平版印刷版原版を、画像情報に基づいて赤外線を放射する半導体レーザにより画像露光する露光工程と、
    画像露光された平版印刷版原版に現像処理液を適用して非画像部の感光層を除去する現像工程と、
    現像された平版印刷版を、版面温度が80〜180℃の温度範囲となるように、加熱或いは全面露光する後加熱工程と、
    を含むことを特徴とする平版印刷版原版の画像形成方法。
  2. 前記露光工程を施した後、前記現像工程に先立って、平版印刷版原版を加熱する現像前加熱工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版の画像形成方法。
  3. 前記赤外線吸収剤が、下記一般式(I)で示されるシアニン色素である請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版の画像形成方法。
    Figure 0004071905
    一般式(I)中、X1は、ハロゲン原子、またはX2−L1を示す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示し、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していてもよい。
    Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。Z1-は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-は必要ない。
  4. 前記熱によりラジカル或いは酸を発生する化合物が、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、及び、スルホニウム塩から選択されるオニウム塩である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版の画像形成方法。
  5. 前記オニウム塩が、ヨードニウム塩である請求項4に記載の平版印刷版原版の画像形成方法。
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