JP4060505B2 - 平版印刷版の品質管理方法 - Google Patents

平版印刷版の品質管理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット印刷マスターとして使用可能であり、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版可能な、いわゆるダイレクト製版用の赤外線レーザー用のネガ型画像形成材料を適用した平版印刷版の品質管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する、赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版材料は、赤外線吸収剤と、熱によりラジカル或いは酸を発生する化合物と、重合性化合物或いは架橋性化合物とを含む感光層を有する平版印刷版材料である。
【0003】
通常、このようなネガ型の画像記録材料は、熱により発生した酸を開始剤として、酸による架橋反応を生起させて露光部の記録層を硬化させて画像部を形成するか、あるいは熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部の記録層を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。このようなネガ型の画像形成材料は、赤外線レーザ照射のエネルギーにより記録層の可溶化を起こさせるポジ型に比較して画像形成性が低く、架橋或いは重合などの硬化反応を促進させて強固な画像部を形成するため、現像工程前に加熱処理を行うのが一般的である。
【0004】
しかし、このような赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版材料においては、UV露光により製版するネガ型平版印刷版材料と比べ、現像液の活性度に対するラチチュードが狭いため、活性度が高くなると、画像部の濃度低下、耐刷低下を、活性度が低くなると、現像不良を容易に引き起こす問題がある。
前記問題は、以下の、前記赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版材料と、前記UV露光により製版するネガ型平版印刷版材料との製版メカニズムの本質的な相違に起因する。
【0005】
前記UV露光により製版するネガ型平版印刷版材料の多くのものは、ジアゾニウム化合物と結合剤となるポリマーとを必須成分とする。画像形成性は、使用するジアゾニウム化合物と結合剤によって異なるが、一般に結合剤の分子量が大きく、カルボキシル基等の親水性基との共重合比が小さいために、非画像部(未露光部)はベンジルアルコールなどの有機溶剤を添加した現像液で容易に溶解、除去することができる。一方、UV露光により、露光部では前記結合剤とジアゾニウム化合物とが光反応を起こして網状構造を形成するため、有機溶剤を含有する現像液を用いた場合でも溶解し難くなる。したがって、該UV露光により製版するネガ型平版印刷版材料においては、露光部と非露光部の現像液に対する溶解性の差が非常に大きい。
【0006】
これに対し、前記赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版材料においては、露光時に、露光部(非画像部)では、光が赤外線吸収剤により熱エネルギーに変換され、その熱により、酸或いはラジカルなどの画像部の硬化に寄与する成分が生成するが、反応を促進させるためには、加熱処理が必要であり、加熱により架橋反応或いは重合反応が進行してはじめて画像部が硬化する。しかも、加熱温度を調整して画像部と非画像部を形成させているが、平版印刷版として実際に使用しうるレベルのものを得られる加熱処理の温度範囲は非常に狭い。さらに、ここで用いられる重合性化合物或いは架橋性化合物は、UV露光用の画像形成材料に用いられる結合剤に比較して親水性基が圧倒的に多いため、硬化した後もアルカリ性の現像剤に対して溶解しやすい。このため、赤外線レーザ用のネガ型平版印刷版材料では、非露光部と露光部との溶解性の差が小さい。
このような現像液の活性度に対するラチチュードが狭い画像形成材料を使用して安定した画像を連続的に形成するためには、その工程管理が非常に困難である。
【0007】
通常、赤外レーザー用ネガ感光性平版印刷版を現像する際、現像液感度を極力一定に保つような補充機構を有する自動現像機を用いる。該補充機構は、プレートの現像処理やCO2の吸収より現像液のpHが低下し現像性が低下することを防ぐため、高活性の補充液を加えるものである。具体的には、通常のPS版の処理システムでは、電導度を管理して、それが一定になるように補充液を加える方法や、プレートの現像処理が一定枚数に達する毎、或いは、一定の処理時間を経過した後、などに定期的に所定量の補充液を加える方法が提案されている。しかし、電導度で管理する方法では、現像処理枚数が増えて感光層の組成物が多く溶解するようになると、スタート時と比べて同じ電導度値でもpHが異なり、現像性も異なってくるという事実がある。
【0008】
また、平版印刷版の現像処理枚数、或いは、一定の時間等の、決まった間隔で所定量の補充液を加える方法では、プレートの単位面積当りの補充量を規定するため、画像面積によって現像液にとけ込む感光層の組成物量が異なり、さらに、自動現像機の設置環境(温度、湿度、CO2濃度等)により経時でのCO2吸収量が異なる等の要因により、条件が微妙に変化し、一定値での管理では、均一な現像性を持続的に得るのは困難であった。
【0009】
UV露光を用いる通常の平版印刷版はラチチュードが広いため、上記の点は大きな問題にならないが、赤外レーザー用ネガ感光性平版印刷版は先に述べたようにラチチュードが狭いため、現像液の活性度の変化により、画像形成性が大きく異なるため、平版印刷版の品質上の問題を容易に引き起こす。
しかしながら、汎用の赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版材料に適用して、画像部の濃度低下、耐刷低下又は現像不良を、簡易な工程管理で、効果的に防止する方法は未だ見出されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ダイレクト製版用の赤外線レーザ用ネガ型画像形成材料の製版条件、特に、現像液の活性状態を容易に判定する簡易な評価方法の結果を露光/加熱/現像工程にフィードバックして、平版印刷版の品質を一定に保ち、均一な画像を連続的に形成するための品質管理方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、検討の結果、特定の標準的な露光及び加熱を行った画像形成材料を製版した後、評価対象となる画像形成材料の製版を行い、両者を比較することで、簡単に形成された画像の評価を行うことができる点、及び、その評価結果をフィードバックすることで、平版印刷版の品質管理が容易に行えることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
発明の平版印刷版の品質管理方法は、(A)支持体上に、赤外線吸収剤と、熱によりラジカル或いは酸を発生する化合物と、重合性化合物或いは架橋性化合物とを含む感光層を設けてなるネガ型画像形成材料に、ベタ画像部と非画像部とを形成する標準の露光、加熱を行った評価用平版印刷版を作成し、標準的な配合の標準現像液で現像し、標準現像液処理平版印刷版を作成する工程と、(B)前記と同様の条件で露光、加熱を行った評価用平版印刷版を、評価しようとする現像液で現像する他は前記標準現像処理平版印刷版と同様にして現像し、対象現像液処理平版印刷版を作成する工程と、(C)標準現像処理平版印刷版と対象現像処理平版印刷版のベタ画像部或いは非画像部の状態を比較する工程と、(D)前記ベタ画像部或いは非画像部を比較した結果、両者の差異が所定の値を超えた場合に、露光/加熱/現像条件を調整する工程と、を有することを特徴とする。
なお、ここで前記ベタ画像部と非画像部とは、それぞれの領域を全面露光することと、まったく露光を行わないことで形成することができる。
像処理できた。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明においては、まず、ベタ画像部と非画像部とを形成する条件で露光を行った評価用平版印刷版(以下、適宜、評価用原版と称する)を作成する。これは、一枚の平版印刷版原版の表面積の一部分、例えば、20%程度をベタ画像部、残りの部分を非画像部とするような構成でもよく、部分的に複数のベタ画像部を形成したものであってもよい。これらの画像の大きさは、濃度計の最小測定面積を考慮すれば、少なくとも一片が7mm以上であることが好ましい。例えば、画像領域はレーザー光の所定領域の全面露光により形成され、非画像領域はレーザー光の所定領域の非露光部により形成される。
【0015】
このような評価用原版は、独立に作成して、一般的な現像、製版処理が行われている装置において、製版される平版印刷版の間に、所定の間隔をおいて適用し、製版条件を確認するのに使用してもよいが、製版される製品である平版印刷版の余白、即ち、平版印刷版の枠部などにこのような全面露光を行った評価用の露光部とそれに隣接して未露光部を形成し、その製版状況を確認することで、評価、品質管理を行うこともできる。
【0016】
このようにして作成した評価用原版を標準的な条件で加熱した後、まず、(A)標準的な配合の標準現像液で現像し、標準現像液処理平版印刷版を作成する。これは、ベースとなる現像条件の標準試料となるもので、ここで用いた現像液の処方、処理時間、処理温度などが標準的な工程として採用される。この評価基準となる標準現像液処理平版印刷版は、評価毎に作成する必要はなく、同一の製版処理を行う連続工程において、評価、管理を行なおうとする場合には、最初の段階で一枚だけ作成すればよい。
【0017】
次に、評価対象となる平版印刷版を作成する。これは、経時後の現像液の疲労の状況などを確認するためのもので、評価を必要とする時点で、先に述べた評価用原版を処理する。これが、(B)前記と同様の条件で露光、加熱を行った評価用平版印刷版を、評価しようとする現像液で現像する他は前記標準現像処理平版印刷版と同様にして現像し、対象現像液処理平版印刷版を作成する工程である。このとき、現像処理温度、処理時間などは、標準現像液処理平版印刷版を作成したのと同一の条件とする。
【0018】
次に、前記のようにして得られた評価の標準となる平版印刷版と対象となる平版印刷版において、(C)同様の露光、加熱条件となる部分の画像部或いは非画像部の現像状態を比較して画像評価を行なう。ここでの評価は、一対比較となるので、版面状態を目視で評価してもよいが、好ましくは、簡便性及び精度の観点から、画像部と非画像部の濃度測定により行う。ここで、画像部濃度が充分であるか、非画像部における汚れや着色がないかを評価することで、得られた画像を客観的に評価できる。
【0019】
また、このように、標準的な現像処理を行なった試料との比較により、露光/加熱/現像条件の変化が容易に検地できる。したがって、この平版印刷版の評価結果を、露光工程、加熱工程、現像工程にフィードバックすることで、平版印刷版の品質管理を合理的に行なうことができる。即ち、試験した対象現像処理平版印刷版において現像性の低下が見られる場合、即ち、非画像部の濃度が上がった場合には、露光条件を下げる、加熱条件を緩和する、現像条件を活性化させる等の手段をとり、過剰に現像されている場合、即ち、画像部の画像濃度が下がった場合には、露光条件を上げる、加熱条件を厳しくする、現像条件を緩和する等の手段をとればよい。
この評価結果を露光/加熱/現像工程へフィードバックする場合の限度は、所望される平版印刷版の均一性により決定すればよいが、一般的には、非画像部濃度、画像部濃度が、標準試料より3.0%はずれたとき、一対比較により変化を目視で検知することが可能となり、露光/加熱/現像工程にフィードバックする目安となる。
【0020】
露光工程を調整するには、レーザー光の出力、ビーム径、走査速度、露光時間などを調製して、所望の露光条件に調整すればよい。
【0021】
画像部及び/又は非画像部の濃度が規定範囲をはずれたときの対策方法としては、現像が過剰に行なわれている場合には、以下の手段が挙げられる
加熱工程においては、
(1)加熱温度を上げる
(2)加熱時間を長くする(オーブン内の搬送速度を下げる)
(3)温風の風量を上げる
(4)プレートとヒーターとの距離を短くする
等の手段をとることができる。
【0022】
現像工程においては、
(1)現像液に水を加える、
(2)現像液にドライアイスを入れる
(3)CO2ガスを吹き込む
(4)補充液の希釈比を下げる
(5)自動現像機の補充量の設定を少なくする
(6)現像温度を下げる
(7)現像時間を短くする(自動現像機の搬送速度を上げる)
(8)自動現像機の現像ブラシの圧力を下げる
(9)自動現像機の現像ブラシの数を減らす
(10)スプレーの吐出量を下げる
(11)現像液を撹拌する
(12)現像液を新液に交換する
等の手段をとることができる。また、露光工程、その他の工程に適用する手段としては、
(13)露光量を上げる
(14)赤外レーザー用ネガ感光性平版印刷版を露光前に加熱する
等の手段をとることができる。
【0023】
一方、現像性が低下して、画像濃度が規定範囲をはずれたときの対策方法としては、以下の手段が挙げられる
加熱工程においては、
(1)加熱温度を下げる
(2)加熱時間を短くする(オーブン内の搬送速度を上げる)
(3)温風の風量を下げる
(4)プレートとヒーターとの距離を長くする
等の手段をとることができる。
【0024】
現像工程においては、
(1)補充液を加える
(2)補充液の希釈比を上げる
(3)自動現像機の補充量の設定を多くする
(4)現像温度を上げる
(5)現像時間を長くする(自動現像機の搬送速度を下げる)
(6)自動現像機の現像ブラシの圧力を上げる
(7)自動現像機の現像ブラシの数を増やす
(8)スプレーの吐出量を上げる
(9)現像液を新液に交換する
等の手段をとることができる。また、露光工程、その他の工程に適用する手段としては、
(10)露光量を下げる方法がある。
【0025】
以下に、本発明の品質管理方法を適用し得るネガ型平版印刷版原版について説明する。
本発明の方法は赤外線レーザによる書き込み可能なすべてのネガ型平版印刷版原版、即ち、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層を有する平版印刷版原版であれば、いずれのものにも適用することができる。
このようなネガ型感光層の1つとして、光重合層が挙げられる。光重合層には、(A)赤外線吸収剤と(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物とを含有し、好ましくは(D)バインダーポリマーを含有する。赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
【0026】
また、感光層の他の態様としては、酸架橋層が挙げられる。酸架橋層には、(E)光又は熱により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤と称する)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下、架橋剤と称する)とを含有し、さらに、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性ポリマーを含む。この酸架橋層においては、光照射又は加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士あるいは架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。このとき、赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、感光層中には(A)赤外線吸収剤が配合される。
【0027】
ネガ型平版印刷版原版の感光層に用いられる各化合物について以下に述べる。
[(A)赤外線吸収剤]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層は、赤外線を発するレーザで画像記録可能な構成を有する。このような感光層には、赤外線吸収剤を用いることが好ましい。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、ラジカル発生剤や酸発生剤が分解し、ラジカルや酸を発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0028】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば、特開平10−39509号公報の段落番号[0050]〜[0051]に記載のものを挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、シアニン色素が好ましく、特に下記一般式(I)で示されるシアニン色素が最も好ましい。
【0029】
【化1】
Figure 0004060505
【0030】
一般式(I)中、X1は、ハロゲン原子、またはX2−L1を示す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z1-は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-は必要ない。好ましいZ1-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0031】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0032】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0033】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。これらの顔料の詳細は、特開平10−39509号公報の段落番号[0052]〜[0054]に詳細に記載されており、これらを本発明にも適用することができる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0034】
感光層中における、上述の染料又は顔料の含有量としては、感光層の全固形分重量に対し、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10重量%が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10重量%が最も好ましい。
前記含有量が、0.01重量%未満であると、感度が低くなることがあり、50重量%を超えると、平版印刷用原版とした場合の非画像部に汚れが発生することがある。
【0035】
[(B)ラジカルを発生する化合物]
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物としては、オニウム塩が挙げられ、具体的には、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩である。これらのオニウム塩は酸発生剤としての機能も有するが、後述するラジカル重合性化合物と併用する際には、ラジカル重合の開始剤として機能する。本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(III)〜(V)で表されるオニウム塩である。
【0036】
【化2】
Figure 0004060505
【0037】
式(III)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0038】
式(IV)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0039】
式(V)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0040】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特願平11−310623号明細書の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
【0041】
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0042】
これらのオニウム塩は、感光層塗布液の全固形分に対し0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%の割合で感光層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらのオニウム塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらのオニウム塩は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0043】
[(C)ラジカル重合性化合物]
本発明に係る感光層に使用されるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いる事ができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0044】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物であるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステルの具体例は、特願平11−310623号明細書の段落番号[0037]〜[0042]に記載されており、これらを本発明にも適用することができる。
【0045】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0046】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0047】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0048】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(VI)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0049】
一般式(VI)
CH2=C(R41)COOCH2CH(R42)OH
(ただし、R41およびR42は、HまたはCH3を示す。)
【0050】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0051】
さらに、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0052】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol. 20、No. 7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0053】
これらのラジカル重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上がこのましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものが良く、さらに、異なる官能数・異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。画像記録層(感光層)中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感光層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80重量%、好ましくは20〜75重量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0054】
[(D)バインダーポリマー]
本発明においては、さらにバインダーポリマーを使用する。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、感光層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0055】
特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0056】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
【0057】
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0058】
本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量については好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0059】
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0060】
本発明で使用されるポリマーは従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0061】
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。
【0062】
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーは、感光層塗布液の全固形分に対し20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%の割合で感光層中に添加される。添加量が20重量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95重量%を越える場合は、画像形成されない。またラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機ポリマーは、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0063】
次に、酸架橋層の構成成分について説明する。ここで用いられる赤外線吸収剤は、前記光重合層において説明した(A)赤外線吸収剤と同様のものを用いることができる。
好ましい含有量は、感光層の全固形分重量に対し、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10重量%が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10重量%が最も好ましい。
前記含有量が、0.01重量%未満であると、感度が低くなることがあり、50重量%を超えると、平版印刷用原版とした場合の非画像部に汚れが発生することがある。
【0064】
[(E)酸発生剤]
本実施の形態において、熱により分解して酸を発生する酸発生剤は、200〜500nmの波長領域の光を照射する又は100℃以上に加熱することにより、酸を発生する化合物をいう。
前記酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、熱分解して酸を発生しうる、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、
【0065】
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号に記載の有機ハロゲン化合物、特開平2−161445号公報に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特願平3−140109号に記載のイミノスルフォネート等に代表される、光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号に記載のジスルホン化合物を挙げることができる。
【0066】
また、これら酸を発生する基又は化合物を、ポリマーの主鎖若しくは側鎖に導入した化合物も好適に挙げることができ、例えば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号の各明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146037号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号に記載の化合物が挙げられる。
さらに、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad et al,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem,Soc,.(B),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号の各明細書等に記載の、光により酸を発生する化合物も使用可能である。
上述の酸発生剤のうち、下記一般式(I)〜(V)で表される化合物が好ましい。
【0067】
【化3】
Figure 0004060505
【0068】
前記一般式(I)〜(V)中、R1、R2、R4及びR5は、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。R3は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10以下の炭化水素基又は炭素数10以下のアルコキシ基を表す。Ar1、Ar2は、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R6は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の整数を表す。
前記式中、R1、R2、R4及びR5は、炭素数1〜14の炭化水素基が好ましい。
【0069】
前記一般式(I)〜(V)で表される酸発生剤の好ましい態様は、本発明者らが先に提案した特願平11−320997号明細書段落番号[0197]〜[0222]に詳細に記載されている。これらの化合物は、例えば、特開平2−100054号、特開平2−100055号に記載の方法により合成することができる。
【0070】
また、(E)酸発生剤として、ハロゲン化物やスルホン酸等を対イオンとするオニウム塩も挙げることができ、中でも、下記一般式(VI)〜(VIII)で表されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げることができる。
【0071】
【化4】
Figure 0004060505
【0072】
前記一般式(VI)〜(VIII)中、X-は、ハロゲン化物イオン、ClO4 -、PF6 -、SbF6 -、BF4 -又はR7SO3 -を表し、ここで、R7は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Ar3、Ar4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R8、R9、R10は、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化水素基を表す。
このようなオニウム塩は、特開平10−39509号公報段落番号[0010]〜[0035]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載されている。
【0073】
酸発生剤の添加量としては、感光層の全固形分重量に対し0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜25重量%がより好ましく、0. 5〜20重量%が最も好ましい。
前記添加量が、0.01重量%未満であると、画像が得られないことがあり、50重量%を超えると、平版印刷用原版とした時の印刷時において非画像部に汚れが発生することがある。
上述の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0074】
[(F)架橋剤]
次に、架橋剤について説明する。架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
【0075】
以下、前記(i)〜(iii)の化合物について詳述する。
前記(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物又は複素環化合物が挙げられる。但し、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物のうち、中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
また、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物では、中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物がより好ましい。
【0076】
【化5】
Figure 0004060505
【0077】
【化6】
Figure 0004060505
【0078】
前記一般式(1)〜(4)中、L1〜L8は、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を表す。
これらの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上できる点で好ましい。
【0079】
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許公開(以下、「EP−A」と示す。)第0,133,216号、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号に記載の、単量体及びオリゴマー−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、EP−A第0,212,482号明細書に記載のアルコキシ置換化合物等が挙げられる。
なかでも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体が最も好ましい。
【0080】
(iii) エポキシ化合物としては、1以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー状のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。
その他、米国特許第4,026,705号、英国特許第1,539,192号の各明細書に記載され、使用されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0081】
架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化合物を用いる場合の添加量としては、感光層の全固形分重量に対し5〜80重量%が好ましく、10〜75重量%がより好ましく、20〜70重量%が最も好ましい。
前記添加量が、5重量%未満であると、得られる画像記録材料の感光層の耐久性が低下することがあり、80重量%を超えると、保存時の安定性が低下することがある。
【0082】
本発明においては、架橋剤として、(iv)下記一般式(5)で表されるフェノール誘導体も好適に使用することができる。
【0083】
【化7】
Figure 0004060505
【0084】
前記一般式(5)中、Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。
原料の入手性の点で、前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。また、その置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0085】
上記のうち、高感度化が可能である点で、Ar1としては、置換基を有していないベンゼン環、ナフタレン環、或いは、ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチオ基又はニトロ基等を置換基として有するベンゼン環又はナフタレン環がより好ましい。
【0086】
[(G)アルカリ水可溶性高分子化合物]
本発明に係る架橋層に使用可能なアルカリ水可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。前記ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
【0087】
中でも、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下、反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好ましい。
前記ノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000のものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いればよい。
【0088】
また、前記側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも好ましく、該ポリマー中のヒドロキシアリール基としては、OH基が1以上結合したアリール基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられ、中でも、入手の容易性及び物性の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
本実施の形態に使用可能な、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーとしては、例えば、下記一般式(IX)〜(XII)で表される構成単位のうちのいずれか1種を含むポリマーを挙げることができる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0089】
【化8】
Figure 0004060505
【0090】
一般式(IX)〜(XII)中、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12及びR13は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基又は炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。また、R12とR13が結合、縮環してベンゼン環やシクロヘキサン環を形成していてもよい。R14は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R15は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R16は、単結合又は炭素数10以下の2価の炭化水素基を表す。X1は、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を表す。pは、1〜4の整数を表す。q及びrは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
【0091】
これらのアルカリ可溶性高分子としては、本発明者らが先に提案した特願平11−320997号明細書段落番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されている。
本実施の形態に使用可能なアルカリ水可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
【0092】
アルカリ水可溶性高分子化合物の添加量としては、感光層の全固形分に対し5〜95重量%が好ましく、10〜95重量%がより好ましく、20〜90重量%が最も好ましい。
アルカリ水可溶性樹脂の添加量が、5重量%未満であると、感光層の耐久性が劣化することがあり、95重量%を超えると、画像形成されないことがある。
【0093】
また、本発明の方法が適用できる公知の記録材料としては、特開平8−276558号公報に記載のフェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特開平7−306528号公報に記載のジアゾニウム化合物を含有するネガ型記録材料、特開平10−203037号公報に記載されている環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架橋反応を利用したネガ型画像形成材料などが挙げられ、これらに記載の感光層を本発明に係るネガ型感光層としての酸架橋層に適用することができる。
【0094】
[その他の成分]
本発明では、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、感光層塗布液全固形分に対し、0.01〜10重量%の割合である。
【0095】
また、本発明においては、感光層が光重合層である場合、塗布液の調製中あるいは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01重量%〜約5重量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1重量%〜約10重量%が好ましい。
【0096】
また、本発明における感光層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0097】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0098】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0099】
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光層塗布液中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0100】
さらに、本発明に係る感光層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0101】
本発明の方法に適用し得る画像形成材料、即ち、平版印刷版原版を製造するには、通常、感光層塗布液に必要な上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。
【0102】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感光層の皮膜特性は低下する。
【0103】
[支持体]
本発明の方法を適用し得る平版印刷版原版において前記感光層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0104】
本発明の平版印刷版原版に使用する支持体としては、軽量で表面処理性、加工性、耐食性に優れたアルミニウム板を使用することが好ましい。この目的に供されるアルミニウム材質としては、JIS 1050材、JIS 1100材、JIS 1070材、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金。Al−Mg−Si系合金などが挙げられる。
【0105】
好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む前記の如き合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10重量%以下である。アルミニウム板としては、純アルミニウムが好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように、アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。前記アルミニウム板の厚みとしては、およそ0.1〜0.6mm程度が好ましく、0.15〜0.4mmがより好ましく、0.2〜0.3mmが特に好ましい。
【0106】
前記アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。
【0107】
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。陽極酸化による、陽極酸化皮膜の量は、1.0g/m2以上が好ましい。陽極酸化皮膜の量が、1.0g/m2未満の場合には、耐刷性が不十分であったり、平版印刷版として用いた場合には、非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなることがある。
前記陽極酸化処理を施された後、前記アルミニウムの表面は、必要に応じて親水化処理が施される。
【0108】
また、このようなアルミニウム支持体は陽極酸化処理後に有機酸またはその塩による処理または、感光層塗布の下塗り層を適用して用いることができる。
【0109】
なお支持体と感光層との密着性を高めるための中間層を設けてもよい。密着性の向上のためには、一般に中間層は、ジアゾ樹脂や、例えばアルミニウムに吸着するリン酸化合物等からなっている。中間層の厚さは任意であり、露光した時に、上層の感光層と均一な結合形成反応を行い得る厚みでなければならない。通常、乾燥固体で約1〜100mg/m2の塗布割合がよく、5〜40mg/m2が特に良好である。中間層中におけるジアゾ樹脂の使用割合は、30〜100%、好ましくは60〜100%である。
【0110】
支持体表面に以上のような処理或いは、下塗りなどが施された後、支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
【0111】
平版印刷版用支持体として好ましい特性としては、中心線平均粗さで0.10〜1.2μmである。0.10μmより低いと感光層と密着性が低下し、著しい耐刷の低下を生じてしまう。1.2μmより大きい場合、印刷時の汚れ性が悪化してしまう。さらに支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であり、0.15より白い場合、画像露光時のハレーションが強すぎ画像形成に支障をきたしてしまい、0.65より黒い場合、現像後の検版作業において画像が見難くく、著しく検版性が悪いものとなってしまう。
【0112】
以上のようにして、本発明の方法を適用しうるネガ型の平版印刷版原版を作成することができる。この平版印刷版原版は、赤外線レーザで記録できる。また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。記録材料に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
【0113】
赤外線レーザにより露光した後、平版印刷版原版は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。ここで、本発明の品質管理方法を適用する場合、形成された画像を評価し、それに応じて所望により、先に述べたような現像条件の制御を行うものである。
【0114】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の方法に係る現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0115】
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じものまたは、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。この補充を行う場合にも、必要に応じて前記品質管理方法に係る制御を適用することができる。
【0116】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
【0117】
さらに、現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸または亜硫酸水素酸のナトリウム塩およびカリウム塩等の無機塩系還元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0118】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理されたのち、印刷に用いられる。
【0119】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。このような自動現像機においても、本発明の品質管理方法を適用することにより、より安定した品質の平版印刷版を得ることができる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式にも、温度或いは処理時間を制御することで、本発明の方法を適用できる。
【0120】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができる。
本発明の方法を適用して、所定の工程を経て画像形成された平版印刷版は、均一の品質を保持することができるため、オフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<架橋剤[KZ−9]の合成>
1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]―4―[α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンを、水酸化カリウム水溶液中で、ホルマリンと反応させた。反応溶液を硫酸で酸性とし晶析させ、更にメタノールから再結晶することにより、下記構造の架橋剤[KZ−9]を得た。逆相HPLCにより純度を測定したところ、92%であった。
【0122】
【化9】
Figure 0004060505
【0123】
<バインダーポリマー[BP−1]の入手>
丸善石油化学(株)製のポリ(p−ヒドロキシスチレン)、マルカ リンカーM S−4P(商品名)を入手し、[BP−1]とした。
【0124】
<支持体の調製>
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用い、その表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、更に2%HNO3 に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。次に、この板を7%H2SO4を電解液として電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。次に、このアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2 であった。
【0125】
<下塗り液>
・β−アラニン ・・・ 0.1 g
・フェニルホスホン酸 ・・・ 0.05g
・メタノール ・・・40 g
・純水 ・・・60 g
【0126】
次に、下記溶液[P−1]を調製し、この溶液を、上記の下塗り済みのアルミニウム板に塗布し、100℃で1分間乾燥してネガ型平版印刷版原版[P−1]を得た。乾燥後の被覆量は1.5g/m2 であった。
【0127】
<溶液[P−1]>
・ノニルフェノール(異性体混合物、Aldrich社製)・ 0.05g
・酸発生剤[SH−1] ・・・ 0.3 g
・架橋剤[KZ−9] ・・・ 0.5 g
・バインダーポリマー[BP−1] ・・・ 1.5 g
・赤外線吸収剤[IK−1] ・・・ 0.07g
・AIZEN SPILON BLUE C−RH ・・・ 0.035g
(保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 ・・・ 0.01g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン ・・・12 g
・メチルアルコール ・・・10 g
・1−メトキシ−2−プロパノール ・・・ 8 g
【0128】
溶液[P−1]に用いた酸発生剤[SH−1]及び赤外線吸収剤[IK−1]の構造を以下に示す。
【0129】
【化10】
Figure 0004060505
【0130】
次に、浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機LP−900H(富士写真フイルム(株)製)の現像処理槽に、下記組成のアルカリ現像処理液A(pH約13)を20リットル仕込み、30℃に保温した。LP−900Hの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フイルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を8リットル仕込んだ。
【0131】
〔アルカリ現像処理液Aの組成〕
・SiO2・K2O 4.0重量%
(K2O/SiO2=1.1(モル比))
・クエン酸 0.5重量%
・ポリエチレングリコール(重量平均分子量=1000) 0.5重量%
・水 95.0重量%
【0132】
露光した平版印刷版[P−1](650mm×550mm×0.24mm厚)をLP−900Hで、一版現像処理する毎に、下記組成の現像補充液Bを35ccずつ補充しながら処理した。
【0133】
〔現像補充液Bの組成〕
・SiO2・K2O 5.0重量%
(K2O/SiO2=1.1(モル比))
・クエン酸 0.6重量%
・ポリエチレングリコール(重量平均分子量=1000) 0.6重量%
・水 93.8重量%
【0134】
平版印刷版[P−1](650mm×550mm×0.3mm厚)をプレートセッターLuxcel Platesetter 9000CTP(富士写真フイルム(株)製)を用いて(出力270mW、回転数1000rpm、解像度2438dpi)、実用画像の周辺、即ち、印刷物が完成した後に切り落として廃棄する部分、に一片が7mmの大きさのベタ画像を形成するような条件で露光し、続いて、搬送式オーブンSPC Mini EV34(商品名:Wisconsin社製)内を搬送することにより、版面温度146℃(295°F)で75秒間加熱処理を行った後、一日当り100版現像処理し、3ヵ月間現像処理した。
その際、毎日最初にLuxcel Platesetter 9000CTPで上記画像を用いて、露光量270mW(135mJ/cm2)で露光現像した。
初日の画像部、非画像部の濃度をGRETAG社製反射濃度計(D19Cタイプ)で測定した。非画像部濃度は0.70、画像部濃度は2.00であった。
そこで非画像部濃度或いは画像部濃度が初日に測定した前記濃度を3.0%以上はずれた際に、露光量、現像条件、加熱条件などを変化させて、上記範囲におさまるように調整した。
本発明の品質管理方法を適用した現像液管理方法により、90日間安定に現像処理できた。
【0135】
なお、20日目に非画像部の濃度が0.73に上昇したため、本発明の管理方法に基づいてフィードバックし、加熱温度を143℃(290°F)に変化させたところ、非画像部の濃度は0.70となった。28日目に非画像部濃度が再度0.73と上昇したため、現像液温度を30.0℃から32.0℃に変更したところ非画像部濃度は0.70となった。40日目に画像部濃度が1.90に低下したため、設定露光量300mWに変化させたところ、画像部濃度は1.98となった。さらに、58日目に画像部濃度が再度1.90に低下したため、加熱温度を146℃(295°F)に変更したところ画像部濃度は1.99となった。75日目に画像部濃度が再度1.90に低下したため、現像時間を11秒に変更したところ画像部濃度は1.97となった。その後は90日目まで、安定した現像状態が得られた。
【0136】
本発明の品質管理方法により、90日間安定に現像処理できた。なお、20日目に非画像部濃度が当初の設定値よりも高くなったため、本発明の品質管理方法を用いなければ、自動現像機は、好ましい状態の平版印刷版を得られる条件では、20日間しか稼働できなかったことになる。このことから、本発明の品質管理方法が有効であることがわかる。また、フィードバックする条件も、本実施例より、露光条件、加熱条件、現像条件のいずれを調整しても、有効な制御を行い得ることがわかった。
【0137】
(実施例2)
[支持体の作成]
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A1050合金の溶湯を清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0138】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0139】
次いで支持体と感光層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1%の硝酸と0.5%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0140】
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0141】
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上により作成した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0142】
[下塗り]
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り液をワイヤーバーにて塗布し、温風式乾燥装置を用いて90℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被服量は10mg/m2であった。
【0143】
Figure 0004060505
【0144】
[感光層]
次に、下記溶液[P−2]を調整し、上記の下塗り済みのアルミニウム板にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥してネガ型平版印刷版原版[P−2]を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0145】
Figure 0004060505
【0146】
溶液[P−2]に用いた赤外線吸収剤[IR−6]及びオニウム塩[OI−6]の構造を以下に示す。
【0147】
【化11】
Figure 0004060505
【0148】
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用いて、連続的に、現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。現像時間は20秒とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0149】
平版印刷版[P−2](650mm×550mm×0.3mm厚)を水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で、実用画像の周辺に一片が7mmの大きさのベタ画像を形成するような条件で露光し、続いて、搬送式オーブンSPC Mini EV34(商品名:Wisconsin社製)内を搬送することにより、版面温度146℃で75秒間加熱処理を行った後、一日当り100版現像処理し、3ヵ月間現像処理した。
その際、毎日最初にCreo社製Trendsetter3244VFSで上記画像を用いて、露光量9W(100mJ/cm2)で露光現像した。
初日の画像部、非画像部の濃度をGRETAG社製反射濃度計(D19Cタイプ)で測定した。非画像部濃度は0.70、画像部濃度は2.10であった。
そこで非画像部濃度或いは画像部濃度が初日に測定した前記濃度を3.0%以上はずれた際に、露光量、現像条件、加熱条件などを変化させて、上記範囲におさまるように調整した。
本発明の品質管理方法を適用した現像液管理方法により、90日間安定に現像処理できた。
【0150】
なお、25日目に非画像部の濃度が0.73に上昇したため、本発明の管理方法に基づいてフィードバックし、加熱温度を143℃に変化させたところ、非画像部の濃度は0.30となった。32日目に非画像部濃度が再度0.73と上昇したため、現像液温度を30.0℃から32.0℃に変更したところ非画像部濃度は0.70となった。42日目に画像部濃度が1.98に低下したため、設定露光量を9.5Wに変化させたところ、画像部濃度は2.10となった。さらに、55日目に画像部濃度が1.98に低下したため、加熱温度を146℃に変更したところ画像部濃度は2.10となった。72日目に画像部濃度が1.99に低下したため、現像時間を11秒に変更したところ画像部濃度は2.10となった。その後は90日目まで、安定した現像状態が得られた。
【0151】
本発明の品質管理方法により、90日間安定に現像処理できた。なお、25日目に非画像部濃度が当初の設定値よりも高くなったため、本発明の品質管理方法を用いなければ、自動現像機は、好ましい状態の平版印刷版を得られる条件では、25日間しか稼働できなかったことになる。このことから、本発明の品質管理方法は、光重合型の感光層を有するネガ型平版印刷版にも有効であることがわかる。
【0152】
【発明の効果】
本発明によれば、ダイレクト製版用の赤外線レーザ用ネガ型画像形成材料に対する露光/加熱/現像条件が適性で好ましい画像が形成されているか否かを容易に判定することができ、この結果を露光/加熱/現像工程にフィードバックすることで、平版印刷版の品質を一定に保ち、均一な画像が形成された平版印刷版を連続的に製造しうる品質管理方法を提供することができる。

Claims (1)

  1. (A)支持体上に、赤外線吸収剤と、熱によりラジカル或いは酸を発生する化合物と、重合性化合物或いは架橋性化合物とを含む感光層を設けてなるネガ型画像形成材料に、ベタ画像部と非画像部とを形成する標準の露光、加熱を行った評価用平版印刷版を作成し、標準的な配合の標準現像液で現像し、標準現像液処理平版印刷版を作成する工程と、
    (B)前記と同様の条件で露光、加熱を行った評価用平版印刷版を、評価しようとする現像液で現像し、対象現像液処理平版印刷版を作成する工程と、
    (C)標準現像処理平版印刷版と対象現像処理平版印刷版のベタ画像部或いは非画像部の状態を比較する工程と、
    (D)前記ベタ画像部或いは非画像部を比較した結果、両者の差異が所定の値を超えた場合に、露光/加熱/現像条件を調整する工程と、
    を有することを特徴とする平版印刷版の品質管理方法
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