JP4070579B2 - セルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液およびセルロース/蛋白質複合繊維 - Google Patents
セルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液およびセルロース/蛋白質複合繊維 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4070579B2 JP4070579B2 JP2002315973A JP2002315973A JP4070579B2 JP 4070579 B2 JP4070579 B2 JP 4070579B2 JP 2002315973 A JP2002315973 A JP 2002315973A JP 2002315973 A JP2002315973 A JP 2002315973A JP 4070579 B2 JP4070579 B2 JP 4070579B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- protein
- cellulose
- spinning
- solution
- fiber
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Artificial Filaments (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質を含有するセルロース繊維を製造するための紡糸原液およびこの紡糸原液を用いて紡糸されたセルロース系繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスコース法を中心とする再生セルロース繊維は、優れた吸湿性を有するなど天然繊維に近い特性を有する人造繊維として、古くから親しまれてきた。しかし、単に綿に近い繊維、あるいは天然代用繊維というだけでは飽き足らず、これに更に新たな特性を付与しようとする試みも種々実施されてきた。再生セルロース繊維に新規な機能を付与する方法は、大別して、紡糸段階以前の工程で行なうものと、紡糸後に糸や反物で行なういわゆる後加工に大別される。後者の代表的なものは寸法安定性を目的とした反物での弱シルケット加工および樹脂加工等が実用化されているが、その他の機能性付与は一般に耐久性および加工コスト面で課題を残している。これに対し前者の方法は比較的安価に且つ大量生産に適している。
【0003】
前者の例としては、まず、消臭機能および抗菌機能を付与する目的で備長炭やキトサンの微粒子をビスコース等の紡糸原液に分散させるいわゆる練り込み法が挙げられる。これらの練り込み法の場合、添加する微粒子は、糸切れや紡口詰まりを防止するために粒度が数μm程度以下に限定されると同時に紡糸原液のアルカリ(通常5%NaOH)に安定で、機能および形状において異常を生じないことが必須となる。
【0004】
また、主にアニオニックな染料に対して親和性を向上させる目的でポリエチレンイミン(特許文献1等参照)や第4級アンモニウム化合物(特許文献2等参照)などのカチオン性物質あるいはカゼイン(Cisalpha、Lacisana)、大豆、アルブミン、フィブロイン(特許文献3参照)、羊毛溶液(特許文献4参照)などの蛋白質成分をビスコースに導入する方法が提案されている。しかし、これらの方法はビスコースとの相溶性に問題があったり、紡糸に際しズルの上がりが多いなど製造上の欠点を抱え、染色性についても染着性および堅牢度が十分でないなど、市場性に乏しく、現在市販されているものは皆無と言ってよい。
【0005】
特許文献3によれば、蛋白質の分散に強アルカリ溶液(pH13以上)を用いており、しかも蛋白質と架橋剤及びアミノ基化合物との反応を50℃以上の高温で実施している。そして、上記反応物を粘性樹脂として得ている。更に歩留まりは、上記樹脂分として表記しており、樹脂中に残存する蛋白質量は不明である。また、その特徴は、酸性染料に対する染色性の向上のみである。同様に非特許文献1に記載された技術でも、蛋白質の分散を強アルカリ溶液(pH13以上)で実施している。更に特許文献5に記載のカルバミルエチル化による方法も蛋白質溶液のアルカリが高く、同様と考えられる。
【0006】
また、羊毛繊維のアルカリ溶解については多数の報告(例えば、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)があり、温度、時間などの条件によってその挙動は大きく変動する。特許文献4によれば5%アルカリ水溶液に溶解した20%羊毛溶液との記述があるのみで、その技術開示は不十分である。いずれにしても蛋白質分子のアルカリ加水分解により分子が切断されて溶解するもので、その分解の程度をコントロールすることは非常に困難であり、一般に均一な羊毛アルカリ溶解液を得るためにその分子量をオリゴマーやアミノ酸レベルまで低下させることが必要である。この場合はビスコースにアミノ酸を配合して紡糸するのと同様であって、実質的にセルロースに羊毛の特性を付与できるとは考えにくい。また、羊毛繊維は酸やアルカリへの溶解性において異なる複数の蛋白質成分から構成されていて、アルカリ溶解後紡糸して酸性の凝固浴に導けば、蛋白質のうちの酸可溶性成分が酸性凝固浴へ少なくとも部分的に溶出して脱落するなど製造上の安定性および得られる繊維の品質再現性に問題がある。
【0007】
更に、セルロース繊維に酸性染料に対する染色性を付与する目的でポリエチレンイミンをビスコースに添加する方法は既に報告されている(特許文献6、特許文献7)が、ポリエチレンイミンは分子量が低いと歩留まりが悪く、逆に分子量が高いと紡糸性において凝固再生の不良に起因するビスカス(繊維状の塊状物、膠着物)の多発という問題が生じる。
【0008】
【特許文献1】
特公平1-59361号公報
【特許文献2】
特開昭52-91913号公報
【特許文献3】
特公昭38−18563号公報
【特許文献4】
特開平9-241920号公報
【特許文献5】
特公昭35−11458号公報
【特許文献6】
特公昭35-9677号公報
【特許文献7】
特公昭35-16714号公報
【非特許文献1】
板谷著、繊維学会誌,25,p.24〜34(1969)
【非特許文献2】
JIS L1030 6.2.11 水酸化ナトリウム法
【非特許文献3】
JIS L1030 6.2.12 水酸化ナトリウム法
【非特許文献4】
JIS L1081 7.21.1 アルカリ溶解度
【非特許文献5】
"Alkaline Hydrolysis", Chemistry of Natural Protein Fibers,5.2.2,p.198(PLENUM PRESS NEW YORK AND LONDON)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紡糸原液の段階で蛋白質を配合して再生セルロース繊維に好ましい機能を付与しようとする技術において、上記したような従来の技術が直面していた課題を解決しようとするものである。すなわち、配合する蛋白質が製造工程で顕著な加水分解等の作用を受けてオリゴマーやアミノ酸にまで分子量が低下する等の変質を生じることなくセルロースに配合され、もってこれまでにない特性を再生セルロースに付与するとともに、製造および得られる繊維品質の安定性が改良された技術を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、pH8〜12の範囲で溶解する蛋白質をpH8〜12のアルカリ性水溶液中で水溶性架橋剤を蛋白質に対して10〜50重量%付加して架橋した架橋蛋白質を、蛋白質換算でセルロースに対して5〜50重量%混合されてなるセルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液に関する。
詳しくは、本発明は、アルカリ可溶性蛋白質が獣毛蛋白質のジスルフィド架橋結合開裂ポリペプチドである上記の紡糸原液に関する。
更に詳しくは、本発明は、アルカリ可溶性蛋白質が酸凝固性蛋白質である上記の紡糸原液に関する。
また詳しくは、本発明は、紡糸原液中にポリエチレンイミンをセルロースに対して0.5〜5.0重量%配合した上記いずれかに記載の紡糸原液に関する。
上記紡糸原液においては、セルロースはセルロースザンテートとして溶解していることが好ましい。
【0011】
また本発明は、上記いずれかに記載の紡糸原液から凝固再生して得られたセルロース/蛋白質複合繊維に関する。
加えて本発明は、上記いずれかに記載の紡糸原液から凝固再生して得られたフィルム、粒状物または粉体状のセルロース/蛋白質複合体に関する。
本発明の上記セルロース/蛋白質複合繊維、フィルム、粒状物または粉体状のセルロース/蛋白質複合体は、セルロース用染料、酸性染料、含金属染料及びクロム染料に対して良好な染色性を示し、アンモニア及びホルムアルデヒドに対して消臭性能を有し、紫外線遮蔽性能を有し、および希薄な金属イオン水溶液から金属イオンに対して吸着能を有するという特徴を備えている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の特徴は、セルロースの紡糸原液に配合する蛋白質として、アルカリでは可溶であるが酸性サイドでは不溶である成分のみを用いたことである。このため、蛋白質は酸性凝固浴中で湿式紡糸するに当たって蛋白質は浴中に溶出せず、セルロースとともに凝固して繊維中に導入することができる。
本発明の第2の特徴は、ビスコース等のセルロースのアルカリ性紡糸原液に配合する蛋白質を、予めpH8〜12のアルカリ性水溶液に溶解し、架橋剤を作用させることにより、蛋白質分子を保護し、アルカリ性の紡糸原液中でも蛋白質が分解を受けないようにしたことにある。
【0013】
本発明の第3の特徴は、上記蛋白質をポリエチレンイミンとともにセルロース紡糸原液に配合することにより、ポリエチレンイミンの添加に伴う紡糸時のビスカス発生を改善するとともにセルロース系再生繊維にアニオン系染料に対する優れた染着性を付与しているところにある。
【0014】
本発明で使用することができる蛋白質は弱アルカリ性で水溶性を示す蛋白質であればいかなる蛋白質でもよく、例えば、牛乳蛋白質(casein)、トウモロコシ蛋白質(zein)、落花生蛋白質(arachin)、大豆蛋白質(glycinin)等の球状蛋白質、コラーゲン(collagen)、絹繊維蛋白質(fibroin)、獣毛繊維(keratin)等の繊維状蛋白質が挙げられる。獣毛繊維は、安価に入手でき、且つ硫黄を含有している点で特別の性能を発揮できるため特に好ましい。
これらの蛋白質の中でも、特に酸凝固性の蛋白質を使用した場合、酸性凝固浴に溶け出さないため、ほぼ紡糸原液の組成に近い成分のセルロース繊維が安定して得られるとともに、蛋白質の損失も少ない。
【0015】
本発明で使用する蛋白質は単一で使用する必要はなく、2種類以上の蛋白質を使用しても何ら問題はない。
【0016】
獣毛繊維とりわけ羊毛繊維を弱アルカリ性媒体で溶解させる方法が、最近、特許公報第2975414号によって確立された。本発明で使用する蛋白質はこの方法によって調製されたものに限定されるものではないが、この方法によれば工業的規模(大量、安価)で短時間に行なえ、しかも調製された蛋白質の分子量は比較的大きいという特徴を有している。この方法で得られる羊毛蛋白質溶液は羊毛を構成する性質の異なる蛋白質、すなわち酸性サイドおよびアルカリ性サイドの両方の水溶液に可溶な成分とアルカリ性では可溶であるが酸性サイドでは不溶で固化し沈殿する成分の混合物である。
本発明では、このうち酸性サイドで不溶性の成分を使用することが好ましい。
【0017】
上記方法で得られるアルカリ可溶性獣毛蛋白質は、その調製の過程で獣毛繊維に特有なジスルフィド結合が酸化開裂されており、この蛋白質をセルロースに配合することにより、セルロースが本来有するヒドロキシル基に加えて、蛋白質の官能基であるアミノ基およびカルボキシル基はもとより同時にスルホン酸基を導入できるという特徴を発揮できる。このためスルホアニオンが作用してカチオン物質の収着性を著しく向上することができる。
【0018】
本発明の蛋白質の使用量は特に限定されるものではないが、好ましくはセルロース100重量部に対して5〜50重量部、特に好ましくは10〜30重量部の量で紡糸原液中に添加される。この添加量により、湿式紡糸されたセルロース/蛋白質複合繊維中にはセルロースに対して一般に添加した蛋白質の70%以上が歩留まることになる。5重量部未満では蛋白質を配合した効果が薄く、一方50重量部より多いと相対的にセルロースの割合が低くなって繊維としての物理的特性が損なわれがちである。
【0019】
蛋白質を配合するセルロース紡糸原液は、アルカリ可溶性蛋白質が均一に混合されるセルロース溶液であればどのようなものでもよい。特に再生セルロースの代表的紡糸原液であるビスコースが好適である。
【0020】
蛋白質は一般にpH13以上の強アルカリ水溶液中では加水分解して分子量が低下するため、紡糸性および得られる繊維の再現性或いは繊維中の蛋白質歩留まり等を低下する。そのため蛋白質の溶解においても好ましくはpH12以下で行う必要がある。また、蛋白質単独では苛性ソーダ濃度が5重量%前後のビスコースのようなセルロース紡糸原液中に安定に存在することができない。しかしながら、架橋剤と反応させることにより、一部の蛋白質主鎖(ポリペプチド結合)が加水分解により切断されても架橋剤のベースが蛋白質と共有結合を形成しているため実質的に蛋白質としての特性の低下を抑制することができる。
【0021】
アルカリ可溶性蛋白質をアルカリ難加水分解性とするために蛋白質に反応付加する架橋剤は、水溶性であり且つアルカリ水溶液中で蛋白質の活性水素と反応して架橋することができるものであることが必須要件であり、且つ架橋後およびセルロース紡糸原液へ添加後、紡糸原液の粘度を大きく変動させず安定であることが必要である。このような架橋剤の例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、N-メチロール化合物、ジビニルスルホン系化合物、ビニルスルホニウム化合物、多官能のアクリロイル化合物、トリアジン化合物、エポキシ化合物およびハロヒドリン化合物等が挙げられる。特に好ましくは1分子中に2個以上のエポキシ基を有する水溶性エポキシ化合物であり、本発明では1分子中に2個以上のエポキシ基を有する水溶性エポキシ化合物が有用である。具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、等が例示できる。
【0022】
蛋白質を保護するために使用する上記架橋剤の量は、その分子量および官能基当量によって異なるため一概には言えないが、例えばジエチレングリコールジグリシジルエーテルである「デナコールEX-851」(ナガセ化成工業株式会社)の場合は、蛋白質に対して10〜50重量%程度が適量である。
【0023】
本発明のひとつの態様では、セルロースと蛋白質を含むセルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液に更にポリエチレンイミンが配合される。ポリエチレンイミンが含有されることにより、この紡糸原液から紡糸したセルロース系繊維は酸性染料に対する染色性が付与される。先に記載したように、ポリエチレンイミンは分子量が低いと歩留まりが悪く、逆に分子量が高いとビスカスが多発するという紡糸上に問題が生じるが、ポリエチレンイミンは蛋白質との親和性が高いため、蛋白質の存在によって繊維中で安定に存在できるので、繊維中への歩留まりが向上する。
使用するポリエチレンイミンは分子量が10000〜100000のものが好ましく、特に30000以上のものがより好ましい。
ポリエチレンイミンは紡糸原液中にセルロースに対して好ましくは0.5〜5.0重量%、より好ましくは1〜2重量%配合される。
【0024】
以上説明したような構成および特徴を有する本発明の蛋白質を含有するセルロース紡糸原液から紡糸された再生セルロース繊維は、再生セルロース繊維本来の特徴に加えて、染色性、形態安定、保温性、ホルムアルデヒド吸着性、消臭性、紫外線遮断性、pH緩衝作用等の機能が付与されている。
本発明の紡糸原液から酸性凝固浴を用いて湿式紡糸された再生セルロース繊維は、図8(a)にその電子顕微鏡写真を示すように、一般に比較的凹凸の少ない繭型に近い断面をしており、図8(b)に示す普通レーヨンの細かい凹凸を多数有する断面構造とは異なるという特徴を持っている。
【0025】
本発明の紡糸原液およびこれを基に紡糸される再生セルロース繊維には、酸化チタンの配合、シルケット加工など従来の技術を全く問題なく併用することができる。
【0026】
本発明の紡糸原液は、単に繊維用の紡糸原液としてだけでなく、フィルム、粒状体または粉体状のセルロース/蛋白質複合体の原料としても利用でき、この紡糸原液を凝固浴中で製膜または粉粒体として凝固させて得られるフィルム、粒状体または粉体状も本発明に含まれる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に且つ具体的に説明する。
〔羊毛蛋白質の調製〕
アンモニア水を用いpH8に調整した30重量%濃度の過酸化水素水500Lに、羊毛繊維100kgを浸漬した。10分後に自動的に激しい発熱発泡が始まり、羊毛繊維は40分後にほぼ完全に溶解した。温度40℃まで冷却したのち、水を加え撹拌しながら徐々に水酸化ナトリウムを添加し、pH10の溶液1500Lを得た。痕跡量の不溶残渣を100メッシュのフィルターで除去し、さらに1時間撹拌した。次に稀硫酸を滴下してpH3.5の溶液とし、撹拌を止めた。この操作でpHの低下に伴い白色の蛋白質が析出した。その後、スラリーポンプでフィルタープレスに導き、圧搾してケーキ約100kgを回収した。なお、上澄み液および搾り液は酸性サイドであっても水溶性であり、本発明とは別用途で有効に利用される。
【0028】
ケーキとして回収した蛋白質(以下、本発明でこれを羊毛蛋白質という)の性状は次の通りであった:
1.残留過酸化水素濃度:2.1μg/g羊毛蛋白質
(測定方法)
▲1▼0.1Mクエン酸リン酸緩衝溶液(pH=5)を調製した。
▲2▼パーオキシダーゼ1mg/mL(0.1Mクエン酸リン酸緩衝溶液)を調製した。
▲3▼o-フェニレンジアミン0.8mg/mL(0.1Mクエン酸リン酸緩衝溶液)を調製した。
▲4▼試料溶液を次のように調製した。
羊毛蛋白質21.07gを300mLの三角フラスコにとり、水150mLを加えてシェイカーで20分間振り混ぜたのち、濾紙(No.5B)で濾過した。濾液を200mLのメスシリンダーに移して純水を加えて200mLとし、さらに1/10に希釈した。
▲5▼パーオキシダーゼ溶液0.5mL+o-フェニレンジアミン溶液0.5mL+試料溶液0.1mL(いずれもそれぞれ上記▲2▼〜▲4▼で調製したもの)を混合し、インキュベーター内(37℃、10分)で発色反応を行った。
▲6▼発色後、1M硫酸4mLを加え、492nmの吸光度を測定した。
▲7▼同様に、過酸化水素水標準液(10〜50μg/mL)の吸光度を測定し、検量線を作成して、羊毛蛋白質中の過酸化水素の濃度を算出した。
【0029】
2.pH:4.3 硫酸イオン濃度5.5mg/g羊毛蛋白質
(測定方法)
▲1▼羊毛蛋白質約0.5gを正確に計量し、超純水115gを加えて10分間超音波抽出した。
▲2▼抽出液のpHを測定した。
▲3▼抽出液をイオンクロマトグラフィーで分析し、硫酸イオン濃度を算出した。
【0030】
3.含水率:44%
(測定方法)
▲1▼羊毛蛋白質約10gを正確に計量し、秤量ビンに入れて乾燥機内(110℃)で絶乾した。
▲2▼絶乾終了後、次式によって含水率(%)を算出した:
含水率(%)=(絶乾前試料重量−絶乾後試料重量)/絶乾前試料重量×100
【0031】
4.分子量測定
HPLCを用いたGPCにより測定を行なった。まず、標準試料(PEO MW=250000、PEO MW=24000、PEG MW=1000、EG MW=62の混合溶液)を作製し、各pHでのカラムの分子量校正を行なった。作成した校正グラフを図1、2および3に示した。
続いて、羊毛蛋白質3.3mgを0.05M Tris-HCl(pH8.0)1000μL、羊毛蛋白質3.6mgを0.05M Glycine-NaOH(pH10)600μL、羊毛蛋白質5.2mgを0.05M Glycine-NaOH(pH12)800μLで超音波にかけて溶解し、フィルター処理したものを各種pHでの分子量測定試料とした。検出はUV280nmで行なった。測定データのチャートを図4、5および6に示した。
図4、5および6のリテンションタイムよりpH8の場合2種類のピークを持つ。すなわち、高分子量成分122000と低分子量成分18000が認められる。pH10、pH12の場合も高分子量成分152000、189000、低分子量成分16500、18000にそれぞれピークを持ち、ほぼ同じプロフィールであるが、新たに分子量600、1600付近に小さなピークが観察される。総括して、測定したいずれのpHでも大きな変動も無くピークは、ブロードであり、分子量分布がかなり広いことが観察された。
【0032】
実施例 1
上記で得たケーキ状の羊毛蛋白質(純分56%)1.0kgに3倍量の水を加え、撹拌翼型の電動式撹拌機で撹拌し、羊毛蛋白質が14重量%の水分散液(pH3.5)4.0kgを得た。この溶液を50%水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整し、羊毛蛋白質を溶解した。羊毛蛋白質溶液を濾過したのち、デナコールEX-851(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル)を224g(蛋白質に対して40重量%)加えて1時間撹拌し、羊毛蛋白質が13重量%の架橋蛋白質溶液を得た。
常法によって得られたビスコース(セルロース含有量8.5重量%、水酸化ナトリウム5.7重量%、二硫化炭素32重量%)10kgに、羊毛蛋白質がセルロースに対して20重量%となるように上記の架橋蛋白質溶液を1307.6g添加した。さらに、このビスコースに30重量%ポリエチレンイミン水溶液を57g(セルロースに対して2重量%)添加した。これを充分混合するまで撹拌した。
得られた架橋蛋白質含有ビスコースを紡糸速度50m/min、延伸率50%の条件でミューラー浴(硫酸110g/L、硫酸ナトリウム350g/L、硫酸亜鉛15g/L、紡糸温度50℃)にて紡糸し、スライバーのカット(89mm)を行ない、常法にて精練・乾燥を実施した。
これにより、繊度3.3dtexのセルロース/羊毛蛋白質複合繊維を得た。
【0033】
実施例 2
ビスコース中の羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるように、架橋蛋白質溶液をビスコースに添加した以外は実施例1と同様にして、セルロース/羊毛蛋白質複合繊維を得た。
【0034】
実施例 3
ビスコース中の羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して50重量%となるように、架橋蛋白質溶液をビスコースに添加した以外は実施例1と同様にして、セルロース/羊毛蛋白質複合繊維を得た。
【0035】
比較例 1
架橋蛋白質溶液の代わりに、デナコールEX-851無添加、すなわち無架橋の上記羊毛蛋白質を13重量%で溶解した羊毛蛋白質溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して20重量%となるようにビスコース溶液を調製し、羊毛蛋白質含有セルロース繊維を得た。
【0036】
比較例 2
羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して50重量%となるようにビスコース溶液を調製した以外は比較例1と同様にして、羊毛蛋白質含有セルロース繊維を得た。
【0037】
比較例 3
蛋白質は添加することなく、ポリエチレンイミン水溶液を、セルロースに対してポリエチレンイミンの割合が2重量%となるように添加したビスコースを紡糸し、常法にて精練・乾燥を実施してポリエチレンイミンを2重量%含有する再生セルロース繊維を得た。
【0038】
実施例1および普通レーヨンの形状を図8、実施例1〜3および比較例1〜3で得た繊維の物性を表1に記載した。
ここで、「普通レーヨン」とはダイワボウレーヨン(株)製の市販品「コロナ 3.3dtex」である。
図8から、本発明のセルロース/羊毛蛋白質複合繊維の断面形状は、繭玉状であり普通レーヨンとは異なっていることがわかる。
【0039】
【表1】
(上記繊度および繊維物性の測定はJIS L 1015(化学繊維ステープル試験方法)に準じた。)
【0040】
染色性については、本発明の複合繊維である実施例1〜3の再生セルロース繊維は、セルロース用染料のみならず、羊毛用染料である酸性染料、含金属染料、クロム染料についてもほとんど完全吸着してよく染まった。
羊毛蛋白質を添加せず、ポリエチレンイミンだけを添加した比較例3の再生セルロース繊維は、部分的に羊毛用染料で染まったが、大部分は染まらず極端な斑染めであった。
このように本発明のセルロース/羊毛蛋白質複合繊維は羊毛用染料による染色性も良好であった。
染色性の評価結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
比較例 4
デナコール EX-851無添加の羊毛蛋白質を使用した以外は実施例2と同様にして、羊毛蛋白質含有セルロース繊維を得た。
【0043】
表3に架橋剤(デナコール EX-851)を付加した羊毛蛋白質を使用した場合(実施例2)と架橋剤無添加の羊毛蛋白質を使用した場合(比較例4)について、得られた繊維の物性および蛋白質含有率(蛋白質の歩留まり)を比較した。このデータから架橋剤(デナコール EX-851)を付加して蛋白質を架橋することにより、繊維中の蛋白質の歩留まりが向上することが確認された。
【0044】
【表3】
【0045】
表3中の、繊維中への蛋白質の歩留まり率は次のようにして測定した。
〔歩留まり率の測定〕
(1)前処理
▲1▼試料繊維約0.5gを、0.001mgの精度まで秤り採り、100mLのケルダールフラスコに入れた。
▲2▼分解用試薬として、硫酸を8mL、過塩素酸を1mL加えた。
▲3▼電熱器上で加温し、繊維を分解した。
▲4▼フェノールフタレインを指示薬とし、1N-水酸化ナトリウム水溶液で中和した。
▲5▼500mLの蒸留フラスコに上記溶液を移し、純水で洗い込み、液量を約350mLにした。
▲6▼酸化マグネシウム粉末を0.25g加えた。
▲7▼沸騰石を加えたのち、蒸留装置にセットして溶液の蒸留を行なった。
この時、受け器の200mLのメスシリンダーには25mmol-硫酸溶液を50mL加えておいた。
▲8▼流出液全量が約180mLになったところで蒸留を止めた。
▲9▼冷却器の内壁を少量の純水で洗い込み、全量を200mLとした。
(2)窒素含有量の測定(インドフェノール青吸光光度法)
▲1▼検水を適量(NH4 +として0.005〜0.1mgに相当する量)精秤し、50mLのメスフラスコに入れ、純水を加えて約30mLとした。
▲2▼EDTA液(5g/100mL)を1mL加えて撹拌した。
▲3▼ナトリウムフェノキシド溶液を10mL加えて撹拌した。
▲4▼次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10g/L)を5mL加えて撹拌した。
▲5▼純水を50mLの標線まで加え撹拌混合した。
▲6▼液温を20〜25℃に保持して約30分間放置した。
▲7▼波長630nmで吸光度を測定した。
▲8▼別にNH4 +の検量線を作製しておき、濃度を算出した。
▲9▼同様にケーキ状の羊毛蛋白質について測定を行ない、繊維中の蛋白質の含有量を算出した。なお、蛋白質含有率を計算する際、以下の補正を実施した。
(1)本発明で得られた複合蛋白質繊維の窒素分を測定し、蛋白質含有率を算出した(P1)。
(2)空試験として比較例3の再生セルロース繊維の窒素分を測定し、窒素分に対する蛋白質相当含有率として算出した(P2)。
(3)本発明で得られた複合蛋白質繊維の蛋白質含有率(P1)から比較例3の再生セルロース繊維の蛋白質相当含有率(P2)を引き、補正した。
蛋白質含有率(%)=P1−P2
(上記窒素含有量の測定方法は、JIS K 0102(工業排水試験方法)、44.有機体窒素に準じた。)
【0046】
実施例 4
ゼラチン(和光1級 和光純薬工業株式会社)0.4kgに9倍量の水を加え、撹拌翼型の電動式撹拌機で撹拌し、ゼラチン蛋白質が10重量%の水分散液(pH7.2)4.0kgを得た。この溶液を50%水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整し、ゼラチン蛋白質を溶解した。ゼラチン蛋白質溶液を濾過したのち、デナコールEX-851を160g(蛋白質に対して40重量%)加えて1時間撹拌し、ゼラチン蛋白質が9.5重量%の架橋蛋白質溶液を得た。
常法によって得られたビスコース10kgに、ゼラチン蛋白質がセルロースに対して30重量%となるように上記の架橋蛋白質溶液を3580g添加した。さらに、このビスコースに30重量%ポリエチレンイミン水溶液を57g(セルロースに対して2重量%)添加した。これを充分混合するまで撹拌した。
得られた架橋蛋白質含有ビスコースを紡糸速度50m/min、延伸率50%の条件でミューラー浴(硫酸110g/L、硫酸ナトリウム350g/L、硫酸亜鉛15g/L、紡糸温度50℃)にて紡糸し、スライバーのカット(89mm)を行ない、常法にて精練・乾燥を実施した。
これにより、繊度3.3dtexのセルロース/ゼラチン蛋白質複合繊維を得た。
【0047】
実施例 5
ゼラチン蛋白質の代わりに大豆蛋白質(平均分子量:Mw=200000)(分子量分布は、図7参照)を使用した以外は実施例4と同様にして、大豆蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるようにビスコース溶液を調製し、セルロース/大豆蛋白質複合繊維を得た。
【0048】
比較例 5
デナコール EX-851無添加のゼラチン蛋白質を使用した以外は実施例4と同様にして、ゼラチン蛋白質含有セルロース繊維を得た。
【0049】
比較例 6
デナコール EX-851無添加の大豆蛋白質を使用した以外は実施例5と同様にして、大豆蛋白質含有セルロース繊維を得た。
【0050】
実施例4〜5および比較例5〜6で得られた繊維の物性および蛋白質含有率を表4に記載した。このデータから明らかなように羊毛蛋白質以外の蛋白質についても架橋剤(デナコール EX-851)を付加して蛋白質を架橋することにより、繊維中の蛋白質の歩留まりが向上した。
【0051】
【表4】
【0052】
比較例 7
羊毛蛋白質溶液をpH12.5に調整した以外は、実施例2と同様にして、羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるようにビスコース溶液を調製し、セルロース/羊毛蛋白質複合繊維を得た。
【0053】
比較例 8
ゼラチン蛋白質溶液をpH12.5に調整した以外は、実施例4と同様にして、ゼラチン蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるようにビスコース溶液を調製し、セルロース/ゼラチン蛋白質複合繊維を得た。
【0054】
比較例 9
ゼラチン蛋白質の代わりに大豆蛋白質を使用した以外は比較例8と同様にして、大豆蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるようにビスコース溶液を調製し、セルロース/大豆蛋白質複合繊維を得た。
【0055】
表5に蛋白質を弱アルカリ条件(pH10)で溶解した場合(実施例2および4〜5)と強アルカリ条件(pH12.5)で溶解した場合(比較例7〜9)について得られた繊維の物性および蛋白質含有率を比較した。本発明の骨子でもあるように架橋蛋白質調整はできるだけ弱アルカリ条件で蛋白質を溶解することが好ましく、結果として繊維中の蛋白質の歩留まりが向上した。
【0056】
【表5】
【0057】
実施例 6
デナコールEX-851の代わりにデナコール EX-810(エチレングリコールジグリシジルエーテル)を使用した以外は実施例2と同様にして、羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるようにビスコース溶液を調製し、セルロース/羊毛蛋白質複合繊維を得た。
【0058】
実施例 7
デナコールEX-851の代わりにデナコール EX-313(グリセロールポリグリシジルエーテル)を使用した以外は実施例2と同様にして、羊毛蛋白質の純分がセルロースに対して30重量%となるようにビスコース溶液を調製し、セルロース/羊毛蛋白質複合繊維を得た。
【0059】
実施例6〜7で得られた繊維の物性および蛋白質含有率を表6に記載した。このデータから明らかなように他の架橋剤(デナコール EX-851以外)によっても同様の効果を有している。
【0060】
【表6】
【0061】
〔生地としての評価〕
実施例 8
実施例2で製造した繊維綿を常套の方法で紡績してメートル番手24番双糸(下撚りZ500、上撚りS450)を製造した。得られた紡績糸を用いて平織り組織(2/2リブ)、密度:1目引き込み当たりのインチ間おさめ15.5/2=31本、打ち込み:30本/インチ、織巾:71.2インチで、本発明品100%の反物を製造した。紡績工程および織布工程において、何らトラブルもなく通常の管理下で目的の品質をもった製造物を得た。
【0062】
比較例 10
経糸として、普通レーヨンを用いて製造したメートル番手24番双糸を用いた以外は、実施例8と同様にして反物を製造した。すなわち、この反物は経糸が普通レーヨン、緯糸が本発明品で構成されている。
【0063】
比較例 11
経糸および緯糸ともに普通レーヨンの紡績糸メートル番手24番双糸を用いて実施例8と同様の反物を製造した。
【0064】
実施例8および比較例10、11で作製した反物を、通常の衣料品製造を目的として常套の整理工程(同時同浴にて)を施し、得られた反物について、各物性を測定した。結果を表7に記載した。
なお、下晒し工程では通常のレーヨンで採用される弱シルケットを同一条件で行なった。これは表7にあるように実施例8および比較例10、11とも目付に関して大きな変化はなく、羊毛蛋白質の溶出や脱落を懸念させる知見は得られなかったためである。
【0065】
【表7】
【0066】
液流染色機による染色の際はクロム染料(クロムブラック PLW 山田化学株式会社製)5%owf(本発明品の繊維重量に対して)を用い、通常羊毛織物の染色と同一条件にて行なった。実施例8の反物は真っ黒に染まり、比較例10は経糸がほとんど染まらず(汚染程度の薄いグレー)で緯糸は真っ黒に染まったシャンブレー調の織物で、比較例11の反物は殆ど白に近い薄いグレーであった。
最終仕上げ工程は、レーヨン素材において寸法安定加工と称され一般的であるグリオキザール系樹脂(スミテックスレジンNS-210 6%、スミテックスアクセレーター X110 2% pick up 100% padにて)を付与したものと付与しないものとで比較した。表7より明らかなように寸法安定加工を施さなくても本発明品は実用洗濯における寸法安定性が高い。特に、寸法安定加工を施さない比較例10のものは、洗濯し風乾すると経糸(普通レーヨン)は収縮し、織物の外観変化として全体に横波(しわ)が発生していた。また、モンサント法によるしわ回復率も本発明品が優位である。このことは羊毛蛋白質に作用させたエポキシ化合物により、蛋白質の歩留まりばかりか得られた繊維の寸法安定性にまでトータルで架橋効果として寄与するものと推測できる。その他物性に関し、引張、引裂き強力に若干の低下が見られるものの織物物性として許容される範囲内であった。さらに抗ピリング性も良好であった。
【0067】
結局、この件に関して本発明品はグリオキザール系樹脂を用いなくとも寸法安定加工された普通レーヨン並みの物性を十分有している。さらに表7にはJISL 1041 6.3.1 2アセチルアセトン法に準拠した遊離ホルムアルデヒドの測定値を記した。表7から明らかなように寸法安定加工を施していない本発明品は検出限界以下であった。衣服として用いる場合、人体に対しての安全性は高い。
【0068】
〔消臭性能の評価〕
普通レーヨン(比較例11)と本発明品(実施例8)の生成り生地を用いて各種消臭機能を比較した。
試験結果を表8に記載した。この表から明らかなように、本発明品はアンモニア、ホルムアルデヒドのいずれに対しても高いレベルの消臭機能を有している。特にホルムアルデヒドに対してはその効果は顕著であり、近年のシックハウス症候群に対し有効と考えられ、衣料用途に留まらず機能素材としても利用できる。これらの機能発現の要因は主にポリペプチドおよびアミノ基の導入によるものと推測できる。
【0069】
【表8】
【0070】
表8における、アンモニアに対する試験方法は、次の通りである。
試料1gの入った1Lテドラーバッグにアンモニアガスを投入し、2時間及び24時間経過後のテドラーバッグ内のガス濃度を検知管により測定した。なお、比較として試料を入れないものを空試験として同時に測定した。
また、ホルムアルデヒドに対する試験方法は、次の通りである。
まず、5Lテドラーバッグに試料1gを入れ、0.37%ホルマリン/メタノール溶液6μLをマイクロシリンジにてテドラーバッグ内に添加する。そこへ、新鮮な空気を入れ、テドラーバッグ内を満タンにし、ホルマリン/メタノール溶液を揮発させる。そして、2時間後及び24時間経過後のテドラーバッグ内のガス濃度を検知管により測定した。なお、比較として試料を入れないものを空試験として同時に測定した。
【0071】
〔アニオン性評価〕
セルロース/羊毛蛋白質複合繊維について、アニオン性について比較した。Astrazon Blue 3RL 2g/L−40mM 酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH6)の溶液50mLに実施例1〜3或いは比較例1〜3の綿1gを入れ、10分間常温にて振盪し、その後、5分間流水にて洗浄後、乾燥し、染色状態によりアニオン性を評価した(濃く染まるほど、アニオン性が高いと言える)。その結果、比較例においては染色が認められなかったが、実施例においては、濃い染色が認められ、またその染色濃度は、含有蛋白質濃度が高いほど濃いものであった。結果を表9に記載した。
【0072】
【表9】
【0073】
〔吸着機能の評価〕
(1)金属イオン吸着能
普通レーヨンと本発明品の銅イオンの吸着機能を比較した。硫酸銅(CuSO4・5H2O)1g/Lの水溶液400mLに、実施例8(本発明品)と比較例11(普通レーヨン)の生成り生地各5gを15分間常温にて浸漬した。各々の吸着量を次のような手順により原子吸光分析法により測定した。即ち、硫酸銅処理試料約0.3gを湿式灰化(硝酸+硫酸)処理後、処理液を超純水で100mLのメスフラスコに移し、超純水を標線まで加えた後、原子吸光分析(Cu)を実施した。結果を表10に記載した。
【0074】
【表10】
【0075】
(2)ガス吸着能
本発明品は前述したようにフリーのスルホン酸基が導入されていてスルホアニオンが作用し、カチオン性物質に対し収着性が極めて向上する。これは表10から明らかである。このため銅イオンを吸着した本発明品は前述の消臭機能に加えて硫化水素およびメチルメルカプタンの吸着性能が極端に向上する。即ち、1Lテドラーバッグに試料1gを入れ、各種ガス(硫化水素及びメチルメルカプタン)を所定濃度投入し、24時間経過後のテドラーバッグ内の残留ガス濃度を検知管により測定した。その後、新たに各種ガスを所定濃度投入することを繰り返すことにより、繰り返し吸着性能を検討した。更に、試料をJIS L 0217 104法で洗濯した後、繰り返し吸着性能と同様の方法により洗濯耐久性についても検討した。この結果を図9,10,11及び12に記載した。
図9,10,11及び12から明らかなように本発明品は繰り返し吸着性能および洗濯耐久性に優れている。
【0076】
〔紫外線の透過および反射特性の評価〕
実施例8と比較例11の生成り品に対して紫外線の透過および反射を評価した。結果を図13および図14に示した。このスペクトルから明らかなように紫外線領域全般において、紫外線の透過率および反射率ともに本発明品である実施例8のものが小さい。これは人体に有害とされる280〜400nmの紫外線を吸収するものであり、人体および外界に影響を与えない機能を有することを意味する。
【0077】
【発明の効果】
本発明の紡糸原液を用いて紡糸したセルロース/蛋白質複合繊維は、後加工を必要とすることなく、再生セルロース繊維本来の吸湿性および肌触りに加えて、形態安定性、ホルマリン等有害物質の吸着性、消臭性能、紫外線遮蔽性等の機能性に優れ、更にセルロース用染料だけでなく、羊毛用染料である酸性染料、含金属染料、クロム染料によっても極めてよく染色される。
本発明の複合繊維の上記特性は紡糸原液の段階で導入されるため、大量生産にも適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で使用する蛋白質の分子量を測定するに当たって作成されたGPCカラムの分子量校正直線(試料調製時のpHが8の場合)。
【図2】 本発明で使用する蛋白質の分子量を測定するに当たって作成されたGPCカラムの分子量校正直線(pH10の場合)。
【図3】 本発明で使用する蛋白質の分子量を測定するに当たって作成されたGPCカラムの分子量校正直線(pH12の場合)。
【図4】 本発明で使用する蛋白質の分子量測定のために測定したGPCチャート(試料調製時のpHが8の場合)。
【図5】 本発明で使用する蛋白質の分子量測定のために測定したGPCチャート(pH10の場合)。
【図6】 本発明で使用する蛋白質の分子量測定のために測定したGPCチャート(pH12の場合)。
【図7】 本発明で使用する大豆蛋白質の分子量測定のために測定したGPCチャート(pH10の場合)。
【図8】 繊維断面の電子顕微鏡写真
(a)本発明のセルロース/羊毛蛋白質複合繊維、
(b)普通レーヨン。
【図9】 硫化水素に対する繰り返し吸着性能
【図10】 メチルメルカプタンに対する繰り返し吸着性能
【図11】 硫化水素に対する洗濯耐久性
【図12】 メチルメルカプタンに対する洗濯耐久性
【図13】 本発明のセルロース/羊毛蛋白質複合繊維および普通レーヨンを用いた生地の紫外線透過スペクトル(2回の測定データを含む)。
【図14】 本発明のセルロース/羊毛蛋白質複合繊維および普通レーヨンを用いた生地の紫外線反射スペクトル(2回の測定データを含む)。
【符号の説明】
1:本発明のセルロース/羊毛蛋白質複合繊維、
2:普通レーヨン。
Claims (10)
- pH8〜12の範囲で溶解する蛋白質をpH8〜12のアルカリ性水溶液中で水溶性架橋剤を蛋白質に対して10〜50重量%付加して架橋した架橋蛋白質を、蛋白質換算でセルロースに対して5〜50重量%混合されてなるセルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液。
- 水溶性架橋剤が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、N-メチロール化合物、ジビニルスルホン系化合物、ビニルスルホニウム化合物、多官能のアクリロイル化合物、トリアジン化合物、エポキシ化合物またはハロヒドリン化合物から選ばれる請求項1に記載の紡糸原液。
- 架橋剤が、1分子中に2個以上のエポキシ基を持つ化合物である請求項1に記載の紡糸原液。
- 蛋白質が獣毛蛋白質のジスルフィド架橋結合開裂ポリペプチドである請求項1〜3のいずれかに記載の紡糸原液。
- 蛋白質が酸凝固性蛋白質である請求項1〜4のいずれかに記載の紡糸原液。
- 蛋白質が2種以上の蛋白質で構成される請求項1〜5のいずれかに記載の紡糸原液。
- 紡糸原液中にポリエチレンイミンをセルロースに対して0.5〜5.0重量%配合した請求項1〜6のいずれかに記載の紡糸原液。
- 紡糸原液がセルロースがセルロースザンテートとして溶解しているビスコースである請求項1〜7のいずれかに記載の紡糸原液。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の紡糸原液から凝固再生して得られたセルロース/蛋白質複合繊維。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の紡糸原液から凝固再生して得られたフィルム、粒状物または粉体状のセルロース/蛋白質複合体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002315973A JP4070579B2 (ja) | 2002-10-30 | 2002-10-30 | セルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液およびセルロース/蛋白質複合繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002315973A JP4070579B2 (ja) | 2002-10-30 | 2002-10-30 | セルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液およびセルロース/蛋白質複合繊維 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004149953A JP2004149953A (ja) | 2004-05-27 |
JP4070579B2 true JP4070579B2 (ja) | 2008-04-02 |
Family
ID=32459818
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002315973A Expired - Fee Related JP4070579B2 (ja) | 2002-10-30 | 2002-10-30 | セルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液およびセルロース/蛋白質複合繊維 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4070579B2 (ja) |
Families Citing this family (17)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3887703B2 (ja) * | 2003-12-01 | 2007-02-28 | 学校法人 関西大学 | ゼラチン繊維とその製造方法 |
CN100375796C (zh) * | 2005-06-21 | 2008-03-19 | 中国科学院过程工程研究所 | 使用离子液体溶解动物毛制备再生蛋白纤维的方法 |
CN100375797C (zh) * | 2005-06-21 | 2008-03-19 | 中国科学院过程工程研究所 | 混合溶解动物毛和纤维素原料制备生物蛋白毛纤的方法 |
JP4776297B2 (ja) | 2005-08-03 | 2011-09-21 | 倉敷紡績株式会社 | セルロース/ゼラチン複合ビスコースレーヨンフィラメントの製造方法 |
JP5072846B2 (ja) * | 2006-04-21 | 2012-11-14 | ジャングー ロンマ グリーン ファイバーズ カンパニー リミテッド | パイロット規模でのセルロース製品の製造における水酸化ナトリウム/チオ尿素水溶液の使用 |
JP4895401B2 (ja) * | 2008-07-23 | 2012-03-14 | 倉敷紡績株式会社 | セルロース/ゼラチン複合ビスコースレーヨンフィラメントとその製造方法及びこれを含む繊維製品 |
CN102080270A (zh) * | 2010-12-21 | 2011-06-01 | 中原工学院 | 再生纤维素纤维的改性方法 |
CN102560735B (zh) * | 2012-02-15 | 2013-11-20 | 成都丽雅纤维股份有限公司 | 一种羊毛蛋白复合粘胶纤维的生产工艺 |
CN103572403B (zh) * | 2012-08-07 | 2015-12-09 | 香港理工大学 | 多肽与化学纤维复合纤维及其制备方法 |
CN111218119A (zh) * | 2020-04-09 | 2020-06-02 | 北京林业大学 | 一种可自修复、高强度、抗菌大豆蛋白膜及制备方法 |
JP7519828B2 (ja) * | 2020-07-02 | 2024-07-22 | 倉敷紡績株式会社 | 生分解性再生セルロース繊維とその製造方法及びこれを用いた繊維構造物 |
CN112322051A (zh) * | 2020-11-24 | 2021-02-05 | 中国科学院过程工程研究所 | 一种复合蛋白及其制备方法和应用 |
CN112481737A (zh) * | 2020-11-24 | 2021-03-12 | 中国科学院过程工程研究所 | 一种复合蛋白纤维及其制备方法和应用 |
CN112323164B (zh) * | 2020-12-01 | 2023-02-17 | 许昌学院 | 一种蛋白改性再生纤维素纤维及其生产工艺 |
CN112760726A (zh) * | 2020-12-30 | 2021-05-07 | 宜宾惠美纤维新材料股份有限公司 | 一种羊奶蛋白纤维及其制备方法 |
WO2023038153A1 (ja) | 2021-09-13 | 2023-03-16 | Spiber株式会社 | 消臭材、消臭性付与剤並びに消臭性の付与方法 |
CN114086270A (zh) * | 2021-12-13 | 2022-02-25 | 上海水星家用纺织品股份有限公司 | 一种复合植物蛋白纤维的制备方法 |
-
2002
- 2002-10-30 JP JP2002315973A patent/JP4070579B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004149953A (ja) | 2004-05-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4070579B2 (ja) | セルロース/蛋白質複合繊維用紡糸原液およびセルロース/蛋白質複合繊維 | |
EP0538977B1 (en) | Treatment of cellulosic fibres to reduce their fibrillation tendency | |
JP4776297B2 (ja) | セルロース/ゼラチン複合ビスコースレーヨンフィラメントの製造方法 | |
US5562739A (en) | Lyocell fiber treatment method | |
JP4044155B2 (ja) | 溶剤紡績セルロースファイバーの処理方法 | |
JPH10507496A (ja) | セルロースファイバー | |
CN102733001A (zh) | 一种羽毛蛋白纤维及其制备方法 | |
CN1811020A (zh) | 大豆蛋白和粘胶共混纤维 | |
JPH08109514A (ja) | ポリマー性アミン化合物で変性したレーヨン | |
FR2802217A1 (fr) | Procede de fabrication de fibre de cellulose regeneree amelioree et fibre de cellulose ainsi obtenue | |
AU5531098A (en) | Dispersion spinning process for poly(tetrafluoroethylene) and related polymer | |
CN1128812A (zh) | 胺化再生纤维素的制备方法 | |
KR100323253B1 (ko) | 고강도, 고탄성을 가진 키토산 섬유 | |
JPH10511150A (ja) | セルロースファイバー | |
CN107502982A (zh) | 一种羽毛角蛋白粘胶纤维的制备方法 | |
JP2013204205A (ja) | 消臭性再生セルロース繊維、その製造方法及び繊維構造物 | |
JP2780745B2 (ja) | セルロース系繊維含有繊維製品及びその製造方法 | |
EP3696317A1 (en) | Spun-dyed fiber and method for its manufacture | |
TW201938669A (zh) | 具新穎剖面的萊纖纖維 | |
JPH09158054A (ja) | 繊維構造物およびその製造方法 | |
Ray et al. | The effect of strong alkali treatment on the cell-wall structure of ramie fiber | |
WO2023106275A1 (ja) | 湿式紡糸繊維及びその製造方法、並びにサブミクロンフィブリル及びその製造方法 | |
WO2023120697A1 (ja) | 再生セルロース繊維、その製造方法、及びその繊維構造物 | |
JP2001164418A (ja) | 改質セルロース再生繊維の製造法 | |
JP2001164419A (ja) | 改質セルロース再生繊維の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050809 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070810 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070814 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20071011 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20071218 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080115 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 4070579 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110125 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120125 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120125 Year of fee payment: 4 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120125 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |