JP4070037B2 - 新規な結晶型のジケトピロロピロール顔料 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、新規な結晶型の1、4−ジケト−3、6−ジフェニール−ピロロ[3,4−c]ピロールと、その製造方法、ならびにこの新規生成物の顔料としての使用に関する。
【0002】
多数の代表的な各種のクラスの有機顔料、特にフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料およびいくつかのアゾ顔料が多形態であること、すなわち同じ化学組成を有しているにもかかわらず、2つまたはそれ以上の異なる結晶形態をとることは一般に知られている。しかし、ここ数年の間に公知となり、そして特に米国特許第4415685号明細書および米国特許第4579949号明細書に記載されているジケトピロロピロール顔料の場合には、下記式の3種の顔料についてのみ異なる複数の形態が知られているだけである。
【化3】
Figure 0004070037
これらについては、米国特許第5591865号明細書、欧州特許第A−690058号明細書および欧州特許第A−690059号明細書に記載がある。これらの顔料は、特定の条件下において、可溶性潜在顔料型を顔料型に再変換することによって得られる。
【0003】
誠に驚くべきことに、今回、下記式I
【化4】
Figure 0004070037
の顔料の新規な結晶型が、米国特許第4579949号明細書の実施例1に記載されている式Iの顔料の合成法を変えることによって、得られることが見いだされた。すなわち、その合成の前または間に、少量のシアノ置換ジケトピロロピロールを添加し、そしてプロトリシスの後、そのプロトリシス混合物を50乃至150℃に加熱する。これによって得られる新規な結晶型(以下β−型という)は従来公知の結晶型(以下α−型という)とは異なり、特定の異なるX線回折図を示すこと、色が青赤色の方向にシフトしていること、はるかに高い色濃度および色度(chroma)を示すこと、ならびに向上された耐熱性を有することによって区別される。
完全X線回折図は、Siemens D500(商標)X線回折計を使用して、常用方法によって測定された(CuKα線)。
従来公知のα−型のX線回折図は、下記の回折線によって特性化される。
【表2】
Figure 0004070037
本発明はβ−型の下記式Iのジケトピロロピロールに関し、そのX線回折図は下記の回折線によって特性化される。
【化5】
Figure 0004070037
【表3】
Figure 0004070037
【0004】
この新規なβ−型は、ジアルキルスクシナートまたはジフェニルスクシナート(そのスクシナート残基中のアルキル部分はC1 −C18アルキルであり、フェニルは置換されていないか、または1個または2個のハロゲン原子、1個または2個のC1 −C6 アルキルまたはC1 −C6 アルコキシ基によって置換されている)の1モルを、ベンゾニトリルの2モルと、不活性有機溶剤中、強塩基としてのアルカリ金属またはアルカリ金属アルコラートの存在下、高められた温度において反応させて顔料アルカリ金属塩を生成させ、次にこの顔料アルカリ金属塩をプロトリシスによって式Iのジケトピロロピロールに導き、そしてこれを常用方法によってコンディショニングする方法によって製造され、この方法は、上記合成の前または間に、下記式
【化6】
Figure 0004070037
のジケトピロロピロールの2.2乃至20モル%を添加し、そして50乃至120℃においてコンディショニングを実施することを特徴とする。
【0005】
スクシナート部分の中のC1-C18アルキルの例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、オクチル、2、2−ジメチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルおよびオクタデシルなどである。
【0006】
スクシナート部分の中のフェニル置換分としてのC1 −C6 アルキルおよびC1 −C6 アルコキシの例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、あるいはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、アミルオキシおよびヘキシルオキシなどである。
【0007】
式IIのジケトピロロピロールの添加は顔料アルカリ塩のプロトリシスの前に実施するのが好都合であり、または好ましくはスクシナートとニトリルとが溶剤と塩基とに添加される前の合成開始時に実施される。式IIのジケトピロロピロールは、好ましくは2.5乃至10モル%の量で、最も好ましくは2.5乃至6モル%の量で添加される。
【0008】
式IIのジケトピロロピロールは公知化合物であり、たとえば米国特許第4579949号明細書に記載されている方法によって製造することができる。プロトリシスはpH>9において実施するのが適当であり、好ましくはpH≧11、最も好ましくはpH>12において実施される。pH調整のため、プロトリシスの前、間または後に、酸を添加することができる。適当な酸は、有機酸または無機酸である。コンディショニングは、好ましくは50乃至120℃の範囲の温度において、特に好ましくは50乃至80℃の範囲において実施される。
【0009】
本新規β−ジケトピロロピロールは高分子有機材料、たとえばα−ジケトピロロピロールの場合について米国特許第4415685号明細書および米国特許第4579949号明細書に記載されているような高分子有機材料を着色するための顔料として適当である。
【0010】
他の多くの顔料と同様に、本新規なβ−ジケトピロロピロールは、塗料系内におけるその特性を改善するための公知の方法によって有利に表面処理されることもできる。また、凝集を防止または低減するための添加剤、あるいは分散安定性を向上させるための添加剤を、本新規顔料と一緒に有利に使用することができる。このようにして処理された顔料は、単独または他の顔料と混合して、各種塗料系、好ましくはアクリル、アルキドおよびポリエステルのタイプの自動車用塗料系に配合して赤マストーン着色物の製造のために適する良好な特性を有する。使用できる抗凝集剤の例は、2−フタルイミドメチルキナクリドン、キナクリドンスルホン酸およびその他の類似の誘導体である。
【0011】
ある種の系においては、重合体分散剤を添加して本顔料の特性をさらに一層改善することができる。
【0012】
本新規β−ジケトピロロピロールは、被着色高分子有機材料を基準にして、0.01乃至30重量%、好ましくは0.1乃至10重量%の量で使用され、20乃至180℃の範囲の温度において被着色高分子有機材料中へ混合されるのが都合がよい。
【0013】
本新規β−ジケトピロロピロールは、一般に粉末、ペースト、フラッシュペーストまたは調合物の形で使用することができ、そして、たとえば印刷インク、サイズ色料、バインダー色料、あらゆる種類の塗料たとえば物理的乾燥および酸化的乾燥塗料、酸−、アミド−および過酸化物硬化性塗料、あるいはポリウレタン塗料中において使用するのに適している。本顔料は、その高い耐熱性の故に、他の有機または無機顔料と一緒に、高温において加工される合成、半合成または天然の高分子材料の着色のためにも使用することができる。このようにして得られた色、たとえば塗料、印刷インクまたはプラスチック材料中に配合して得られた色は優れた青赤色であり、上塗り、マイグレーション、光、天候に対する優秀な堅牢性を有すると共に、卓越した色濃度および色度(chroma)を示す。
【0014】
本新規顔料は固体状、弾性、ペースト状、粘性、低粘性またはチキソトロピー材料の着色のために使用することができ、そしてそれ自体公知の方法でこれらの材料の中に配合することができる。たとえば、水含有ペーストは、湿潤剤または分散剤を添加して、または添加しないで、本顔料を水中に撹拌混合するか、あるいは水の存在、かつ、場合によっては、有機溶剤または油の存在下において、撹拌または混練りによって分散剤中に本顔料を混合することによって得ることができる。このようにして調製されたペーストは、次に、たとえばフラッシュペースト、印刷インク、サイズ色料、プラスチック分散物の製造のために使用することができる。しかし、本顔料は撹拌、ロールがけ、混練り、または摩砕によって、水、有機溶剤、非乾性油、乾性油、塗料、プラスチックまたはゴム中に配合することもできる。さらにまた、有機または無機材料、顆粒、繊維材料、粉末、またはその他の顔料と乾式混合して、本顔料を組成物に加工することもできる。
以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
実施例1
無水tert−アミルアルコールの150mlにナトリウム23.0gを添加し、この混合物を100℃に加熱し、そしてナトリウムが完全に反応してしまうまで撹拌する。この溶液を100℃に冷却した後、最初に式IIのジケトピロロピロールの2.3g(6.7ミリモル)を、次にベンゾニトリルの31.25g(99%,0.3モル)とtert−アミルアルコールの50mlとを、その次にジイソプロピルスクシナートの39.4gを11時間かけて添加する。添加終了時に、この混合物をtert−アミルアルコールの40mlで希釈し、そして95℃において2時間撹拌を続ける。この反応混合物を、温時に、水170mlとメタノール170mlとからなる混合物中に、初期温度28℃で加える。添加完了後、この混合物を、45乃至48℃において5時間撹拌し、一晩70℃に加熱し、そのあと濾過する。濾過残留物を、濾液が無色となるまで、メタノールと水とで洗い、80℃の真空乾燥炉内において乾燥して、赤色生成物27.76gを得た。この生成物はPVCに配合された時に、透明な青赤色着色物を与えた。
分析 C H N
計算値 75.0 % 4.2 % 9.7 %
測定値 74.8 % 4.2 % 9.8 %
この生成物のX線回折図は、下記の回折線によって特性化される:
【表4】
Figure 0004070037
【0016】
実施例2
無水tert−アミルアルコールの150mlにナトリウム23.0gを添加し、この混合物を100℃に加熱し、そしてナトリウムが完全に反応してしまうまで撹拌する。この溶液を100℃に冷却した後、最初に式IIのジケトピロロピロールの1.52g(4.5ミリモル)を、次にベンゾニトリルの31.25g(99%,0.3モル)とtert−アミルアルコールの10mlとを、その次にジイソプロピルスクシナートの39.4gを5時間かけて添加する。添加終了後、この混合物を、100℃において、さらに1時間撹拌する。この後、反応混合物を水170mlとメタノールの170mlとからなる混合物中に加える。この際、同時に濃硫酸を添加してpHを12.3に保持する。添加終了後、この混合物を66℃に1時間保持し、そのあと6時間還流加熱し、そして濾過する。濾過残留物を、濾液が無色となるまで、メタノールと水とで洗い、80℃の真空乾燥炉内において乾燥して、赤色生成物33.88gを得た。この生成物は実施例1で得られた生成物よりもやや青味が強かった。
分析 C H N
計算値 75.0 % 4.2 % 9.7 %
測定値 74.4 % 4.3 % 10.1 %
【0017】
実施例3
式IIのジケトピロロピロール1.27g(3.8ミリモル)を使用して実施例2の操作を繰り返して、赤色顔料31.1gを得た。この顔料をPVCに配合した時、透明赤色の着色物を得た。
分析 C H N
計算値 75.0 % 4.2 % 9.7 %
測定値 74.3 % 4.3 % 9.9 %
【0018】
実施例4
式IIのジケトピロロピロール5g(15ミリモル)を使用して実施例1の操作を繰り返して、赤色顔料27.14gを得た。この顔料をPVCに配合した時、透明赤色の着色物を得た。
分析 C H N
計算値 75.0 % 4.2 % 9.7 %
測定値 73.9 % 4.3 % 9.9 %
【0019】
実施例5
無水tert−アミルアルコールの200mlにナトリウム18.4gを添加し、この混合物を100℃に加熱し、そしてナトリウムが完全に反応してしまうまで撹拌する。この溶液を105℃に冷却した後、最初に式IIのジケトピロロピロールの1.8g(5.4ミリモル)を、次にベンゾニトリルの41.7g(99%,0.4モル)とtert−アミルアルコールの10mlとを、その次にジイソプロピルスクシナートの52.6gを5時間かけて添加する。添加終了後、この混合物を104℃において、さらに1時間撹拌する。この後、反応混合物を、温時において、水170mlとメタノール170mlとからなる混合物中に、50℃の初期温度で加える。添加終了後、この混合物を、50℃において1時間、60℃に2時間加熱し、そして濾過する。濾過残留物を、濾液が無色となるまで、メタノールと水とで洗い、80℃の真空乾燥炉内において乾燥して、赤色生成物42gを得た。この生成物をPVCに配合した時、透明赤色の着色物を得た。
【0020】
実施例6
実施例1記載の方法で製造された顔料 7.5g
後記組成のCAB溶液 98.9g
ポリエステル樹脂、(商標)DYNAPOL H700(Dynamit Nobel社) 36.50g
メラミン樹脂、(商標)MAPRENAL MF650(Hoecht 社) 4.60g
分散剤、(商標)DISPERBYK 160(Byk Chemie社) 2.50g
を分散器中において、一緒に90分間分散させた(総ワニス150g;顔料5%)。
Figure 0004070037
ベースコートを塗るため、マストーン塗料27.69gを下記組成のAl原液(8%)17.31gと混合した:
(商標)SILBERLINE SS 3334AR, 60%(Silberline社) 12.65g,
CAB溶液(組成は前記) 56.33g,
ポリエステル樹脂、(商標)DINAPOL H700 20.81g,
メラミン樹脂、(商標)MAPRENAL MF650 2.60g,
(商標)SOLVESSO 150 (ESSO社から入手の芳香族溶剤) 7.59g。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この混合物をアルミ板にスプレー塗布した(ウエット膜厚は約20μm)。室温において30分間自然乾燥した後、この塗層の上に、下記組成のTSAワニスをトップコートとしてスプレー塗布した(ウエット膜厚は約50μm)。
Figure 0004070037
室温において30分間自然乾燥した後、このワニスを、130℃において、30分間焼付けた。
【0021】
実施例7
実施例1により製造された顔料0.6gを、ポリ塩化ビニル67g,ジオクチルフタレートの33g,ジブチルスズジラウレートの2gおよび二酸化チタン2gと混合し、そして160℃において、15分間ロールミルにかけ、薄いフィルムに加工した。得られた赤色PVCフィルムは非常に良好な堅牢性を示した。
【0022】
実施例8
実施例1において得られた顔料 1.0g
酸化防止剤〔IRGANOX(商標)1010、 CIBA-GEIGY社〕 1.0g
高密度ポリエチレン顆粒〔(商標)VESTOLEN 60-16、HUELS社〕1000g
の混合物を、ロールギヤテーブル上のガラスフラスコ内において15分間予備混合した。次に、この混合物を単軸押出機に2回通して押出し、得らた顆粒を6つのグループに分け、それぞれ200℃、220℃、240℃、260℃、280℃および300℃において射出成形機(Ferromatik Aarburg 200) 内において板に成形加工した。これによって得られたすべての圧延板は、良好な堅牢性を有する青赤色に着色されていた。

Claims (3)

  1. 結晶型がβ−型であって、そのX線回折図が下記の回折線:
    Figure 0004070037
    によって特性化される下記式のジケトピロロピロール。
    Figure 0004070037
  2. ジアルキルスクシナートまたはジフェニルスクシナート(そのスクシナート残基中のアルキル部分はC−C18アルキルであり、そしてフェニルは置換されていないか、または1個または2個のハロゲン原子、1個または2個のC−CアルキルまたはC−Cアルコキシ基によって置換されている)の1モルを、ベンゾニトリルの2モルと、不活性有機溶剤中、強塩基としてのアルカリ金属またはアルカリ金属アルコラートの存在下、高められた温度において反応させて顔料アルカリ金属塩を生成させ、次にこの顔料アルカリ金属塩をプロトリシスによって式Iのジケトピロロピロールに導き、そしてこれを常用方法によってコンディショニングして請求項1記載のジケトピロロピロールを製造する方法において、上記合成の前または間に、下記式
    Figure 0004070037
    のジケトピロロピロールの2.2乃至20モル%を添加し、そして50乃至120℃においてコンディショニングを実施することを特徴とする方法。
  3. 請求項1記載のジケトピロロピロールを含有している高分子有機材料。
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