JP4069288B2 - ウォータージェット用の高圧水送給方法および同高圧水送給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、杭打作業に際して、杭の下端にジェットノズルを取り付け、このジェットノズルから高圧の水流を噴射する場合、
上記ジェットノズルに高圧の水流を送給する技術に関するものである。
ただし、上記の水流として気水混合流が用いられる場合も有る。従って、本発明において「水」とは「流体」を総称する意である。
【0002】
【従来の技術】
図6は、鋼管杭を地盤中に打ち込む場合、従来例の高圧水送給装置を備えたウォータージェットを用いている状態を示し、(A)は模式的に描いた正面図、(B)は模式的に描いた底面図であって、A,B両図とも杭打機の図示を省略して鋼管杭と給水配管とを描出して描いてある。
符号1を付して示したのは鋼管杭であり、本例では水底の地盤中に打ち込まれる。本図6は、ほぼ所定の位置まで打ち込んだ状態を描いてある。a−aは水面を、b−bは水底面をそれぞれ表している。
図示の面c−cよりも上方は軟質地層、該面c−cよりも下方は硬質の地層になっている。
【0003】
このような場合、鋼管杭の下端が硬質地層を押し退けて貫入することは容易でない。
硬質地盤内への貫入を促進するため、鋼管杭1の下端部にジェットノズル2を装着し、このジェットノズル2から下方に向けて高圧水を噴射する。
高圧で噴射された高速の噴射水流は、鋼管杭1の下方に位置している硬質の地層を攪拌して掘り弛め、鋼管杭1の沈下を容易ならしめる。
本例は鋼管杭を打設したが、鋼管杭以外の杭(たとえば鋼矢板)であっても、ジェットノズルによる杭打ち促進が行なわれる。本発明において鋼管杭と言わずに、単に杭と言う場合は杭全般を総称する意である。
【0004】
本例では6個のジェットノズルが設置されている。従って、該6個のジェットノズル2のそれぞれに対して給水用の配管(剛性の管および/または可撓性のホース)を接続しなければならない。
単純には、前記6個のジェットノズル2のそれぞれに対して垂直な給水管(図示省略)を接続して、鋼管杭の上端部付近から圧力水を送給すれば良いのであるが、実際問題としては次のような不具合を生じる。
a.鋼管杭に対して固定して配管した6本の給水管を回収することは極めて困難である。しかし、6本の給水管を埋め捨ててしまうことは不経済である。
b.鋼管杭に固着して配管された6本の給水管に対して、6本の給水用ホースを着脱するために多大の時間と労力とを浪費する。
【0005】
そこで本図6に示したようなマニホールド(多岐管)配管が考えられる。
3個のジェットノズル2に対してそれぞれ接続された3本の枝水管3を、水平環状管4を介してマニホールド部Mに集め、1本の給水主管5に接続する。
上記給水主管5を垂直姿勢ならしめて鋼管杭1に固着するとともに、該給水主管5の上端に高圧給水ホース6を接続し、図外の高圧水源(例えば水ポンプ)から圧力水を供給する。
ここに、前記のマニホールド部Mは、硬質地層の上面c−cよりも若干上方になるように設定される。その理由は次のとおりである。
【0006】
マニホールド部Mよりも上方の配管工事に比して、マニホールド部Mよりも下方の配管工事は、管経は細くて足りる(約1/1.414)が、管長は約3倍になる。従って、上記マニホールド部Mが鋼管杭1の上方に位置するほど工事費が高価になり、下方に位置するほど安価になる。
しかしながら、図6(A)から容易に理解されるように、水平環状管4は鋼管杭1の外周に膨出しているので、これを鋼管杭1の下方に配置すると、
イ.この水平環状管4が硬質地層を押しわけて貫入する際、多大の貫入抵抗を生
じ、杭打作業能率が低下する。
ロ.また、水平環状管4が硬質地層を押し退けてこれを圧密しようとすると大きい抵抗力を受ける。このため、該水平環状管4およびこれを含むマニホールド配管を頑丈に構成しなければならない。このため、配管構造が大形,大重量,
高コストになる。
【0007】
これらの諸事情を勘案して、前記マニホールド部Mおよび水平環状管4は、硬質地層の上面c−cよりも若干上方に設定することが望ましい。
しかし、地層の硬軟は相対的な問題であって、絶対的な基準は無く、その上、地層の境界面が判然としない場合もある。
従って、このマニホールド配管位置を地表付近に設定しても、また杭の下端部に設定しても、マニホールド位置を理由として本発明の技術的範囲を回避するものではない。
【0008】
この図6の例では、ジェットノズル2の数と枝水管3の数とはそれぞれ6であり、主管の数は2である。
このため、3本の枝水管3に対して1本の給水主管5が接続されて1個のマニホールド部Mが形成されている。
一般的にはn×m個のジェットノズル2のそれぞれから上方に延びるように枝水管3を配管する。従って、この枝配管の設置数はn×mである。
n本の枝水管3が1個のマニホールド部Mを介して1本の給水主管5に接続される。この給水主管5の上端部は高圧給水ホース6を介して図外の高圧水源(たとえば高圧水ポンプ)に接続される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図6に示した従来技術において、鋼管杭1を所定の位置まで打ち込み終えると、給水主管5から高圧給水ホース6を取り外すとともに、該鋼管杭1から杭打機(図示省略)を取り外す。
その結果、給水主管5は、鋼管杭1に固着されて該鋼管杭1と一緒に地中へ打ち込まれたままで埋め捨てられる。
このようにして、その後の役に立たない主管を地中に打ち込んで捨て去ることは、杭打工事費用を増加させるのみでなく、資源を節約するという社会的,国家的要請に反することとなる。
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、杭の下端に複数のジェットノズルを配設するとともに、給水主管・マニホールド配管・枝水管を介して上記複数個のジェットノズルのそれぞれに高圧水を送給する場合、上記の給水主管を引き抜いて回収し、反復使用できる技術を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的原理について、その実施形態に対応する図2を参照して略述すると次のとおりである。すなわち、鋼管杭1の下端に複数個のジェットノズル2を配設し、マニホールドMの枝水管3を上記ジェットノズル2に接続するとともに、該マニホールドMの給水主管5の上端から高圧水を送給する技術を改良して、前記の鋼管杭1を所定の位置まで打ち込んだ後、前記の給水主管を回収して反復使用を可能にするため、本発明は前記のマニホールドMと給水主管5との間に「所定の引張力を加えることによって離脱せしめ得る構造の引抜管継手8」を介挿接続する。
上記所定の力は、「前記の給水主管5が鋼管杭1と共に地中へ打ち込まれる際、地盤から受ける上向きの摩擦力」よりも大きく、かつ地上から該給水主管を引き抜く力(段落番号0009第11から12行参照)よりも小さく設定される。この場合の引き抜く力は、厳密に言えば引き抜き得る最大の力である。その理由は、引抜管継手が離脱すれば、それ以上の力は加え得ないからである。
前記の引抜管継手とは、引抜管で作られた継手という意味ではなく、引き抜き可能な管継手という意味である。
【0011】
上述の原理に基づいて創作した請求項1に係る発明方法の構成は、
表層よりも硬質の地層を有する地盤に杭を打ち込む場合、
杭の下端部に複数のジェットノズルを配設し、各ジェットノズルから上方に向かう枝水管を配管して杭に取り付け、
「前記の杭が所定の位置まで打ち込まれた状態において、該杭が前記硬質地層の上面に対応する箇所」に、前記枝水管の複数本を1本の給水主管に連通せしめるマニホールド配管を施し、該給水主管を杭の上方に導いて高圧給水ホースに接続し、
上記給水主管がマニホールド配管に接続される箇所の直近に、「所定の引抜力を受けると離脱する引抜管継手」を介装接続しておき、
上記所定の引抜力を『給水主管が杭と共に地中へ打ち込まれる際、前記硬質地層の上方に位置する軟質地層から受ける摩擦に因る上向きの力』よりも小さく、かつ『地上から給水主管を引き抜く力』よりも小さく設定し、
杭を所定の位置まで打ち込んだ後、前記給水主管の上端部に引抜力を加えて、前記引抜配管継手を分断させ、
該給水主管と、引抜管継手の上半部とを地上に引き抜いて回収し、反復利用を可能ならしめることを特徴とする。
【0012】
以上に説明した請求項1の発明方法によると、マニホールド配管の枝水管のそれぞれにジェットノズルが接続されるとともに、上記マニホールド配管の給水主管が高圧給水ホースに接続されているので、該高圧給水ホースを圧力水源に接続すると各ジェットノズルから圧力水流が噴出して鋼管杭の打込みを助長する。
前記マニホールド配管と給水主管との間に引抜管継手が介挿接続されているが、正常な状態で杭の打込み作業を行なっている限り、該引抜管継手を介挿したことによって別段の支障は生じない。
その理由は、正常な杭打込作業中に、給水主管に対して上向き方向の摩擦力が作用するが、引抜管継手の所要引抜力を適宜に設定しておけば、上記摩擦力が引抜力設定値を越える虞れが無いからである。
杭を所定の位置まで打ち込んだ後、地上から給水主管に引抜き方向の力を与えると、該引抜力はほとんどそのまま(摩擦力によって若干減少するが)引抜管継手に対して引抜力として伝達される。
このため、該引抜管継手が離脱して分断され、給水主管は引抜管継手の上半部が取り付けられたままで地上に引き抜かれる。
引き抜かれた給水主管、および、これに接続されている引抜管継手上半部は、回収して再使用することができ、資源の節約に貢献することができる。
【0013】
請求項2に係る発明方法の構成は、表層よりも硬質の地層を有する地盤に杭を打ち込む場合、杭の下端部に複数のジェットノズルを配設し、各ジェットノズルから上方に向かう枝水管を配管して杭に取り付け、
「前記の杭が所定の位置まで打ち込まれた状態において、該杭が前記硬質地層の上面に対応する箇所」に、前記枝水管の複数本を1本の給水主ホースに連通せしめるマニホールド配管を施して、上記給水主ホースを地上の高圧水源に接続し、
上記の給水主ホースがマニホールド配管に接続される箇所の直近に「所定の引抜力を受けると分断される引抜管継手」を介装接続しておき、
上記所定の引抜力を『給水主管が杭と共に地中へ打ち込まれる際、前記硬質地層の上方に位置する軟質地層から受ける摩擦に因る上向きの力』よりも小さく、かつ『地上から給水主管を引き抜く力』よりも小さく設定し、
杭を所定の位置まで打ち込んだ後、前記の給水主ホースに上向きの引抜力を与えて、前記引抜管継手を分断させ、
該引抜管継手の上半部と、前記の給水主ホースとを地上に引き抜いて回収し、反復使用を可能ならしめることを特徴とする。
【0014】
以上に説明した請求項2の発明方法によると、マニホールド配管の枝水管のそれぞれにジェットノズルが接続されていて、その主管である給水用主ホースが高圧給水ホースに接続されるので、この高圧給水ホースに圧力水源を接続すると上記ジェットノズルから圧力水流が噴出して杭の打込みを助長する。
本請求項の構成は上記のマニホールド配管と給水主ホースとの接合部の近傍に引抜管継手を介挿接続したが、この引抜管継手は噴射用の水流を絞る作用を及ぼさないので、正常な水噴射杭打作業を遂行することができる。また、正常な水噴射杭打作業においては引抜管継手を離脱させるような引張力は加えられないから作業中に不測の継手離脱を生じる虞れが無い。本請求項に開示された「所定の引抜力を受けると分断される引抜管継手」とは「所定の引抜力を受けないと分断されない引抜管継手」でもある。
当該杭を所定の位置に打ち込まれた後、給水主ホースを地上から引っ張ると、前記の引抜管継手に所定の引張力を与えると、該引抜管継手が離脱し分断され、前記の給水主ホースは、その先端に「分断された引抜管継手の上半部」を装着されたままで地上に引き抜かれる。
引き抜かれた給水主ホース、および引抜管継手上半部は反復使用することができるので経済的であり、かつ省資源に貢献することができる。
【0015】
請求項3に係る発明方法の構成は、前記請求項1または請求項2の発明方法の構成要件に加えて、
前記の引抜管継手を、円筒状の内周面を有するメス形継手と、上記円筒状の内周面に嵌合する円柱面を有するオス形継手とによって構成し、上記メス形継手とオス形継手との何れか片方をマニホールド配管に接続するとともに杭に対して固着し、
上記メス形継手とオス形継手との内の何れか他方を、杭に対して直接的に固着することなく、相手の継手に対して上方から嵌め合わせるとともに、
杭に対して直接的に固着されていない側の継手にバンド部材を巻き掛けて、該継手を杭に向けて押し付け、このバンド部材の両端部付近を杭に対して強固に固着し、
さらに上記の杭に対して直接的に固着されていない側の継手に、抜け止めとして機能する係止突起を固定して、該係止突起の上端部付近を前記バンド部材に当接させておき、
前記の杭を打ち込んだ後、上記の直接的に固着されていない継手に対して引き抜き方向の力を加えた際、抜け止めとして作用していた係止突起により、前記バンド部材に対して局部的な力を加えて該バンド部材を破断させ、
バンド部材の破断によって前記の抜け止め機能を消失せしめ、嵌合していたメス形継手とオス形継手とを分断させることを特徴とする
【0016】
以上に説明した請求項3の発明方法によると、引抜管継手が離脱する引張力の値を容易に、かつ高精度で制御することができる。
しかも、上記引抜管継手の引張所要力の設定が容易である上に、分断された引抜管継手の上半部を、ほとんど無傷で回収して反復使用に供することができるので、反復使用耐久性に優れている。
本請求項においては、引抜管継手の抜け止め作用を受け持っているバンド部材を破断するので、引抜管継手の本体部分(継手部材の対偶)が損傷を被ることなく引抜き分断されるから耐久性が良い。
抜け止め作用をしているバンド部材の取付部を引き剥がすのではなく、該バンド部材を破断するので、引張所要力の制御を容易に高精度で制御することができる。すなわち、従来技術におけるバンド式の抜け止めは、杭に溶接された鋼帯の溶接を引き剥がす形式であったため「所定の力以上で引き剥がされ、それ未満の力では引き剥がされないような溶接」を施工する必要が有ったのに比して、本請求項の発明においては、所定の力未満では引き剥がされないように、強固に溶接するだけで足りる。このため、溶接施工に別段の知識や高度の熟練を必要とせず、細心の注意を傾注する必要も無い。
さらに、杭に溶接されたバンド部材を杭から引き剥がすことをしないので、引き剥がされた杭が損傷を被る虞れも無い。
【0029】
請求項4に係る発明装置の構成は、杭打ち用のジェットノズルに高圧水を送給する装置において、杭の下端部に複数個のジェットノズルが取り付けられるとともに、各ジェットノズルから上方に向けて枝水管が配管され、これらの枝水管が杭に対して固着されており、
前記の杭の長手方向の上,下端を除く中間部において、複数本の枝管が水平環状管を介して1本の主管に連通するようにマニホールド配管されていて、前記の主管は剛性を有する金属管、または可撓性を有する高圧ホースによって構成されており、前記主管の下端部が、「所定の引張力を受けると離脱する引抜管継手」を介してマニホールド配管に接続されていることを特徴とする。
【0030】
以上に説明した請求項4の発明装置によると、杭に装着された高圧水送給用の部材のうち、杭の上半部に装着された部材を回収して繰り返し使用することができる。詳しくは、打設された状態で硬質地層の中に貫入する部分を除き、該硬質地層の上面よりも上部に相当する箇所に装着された部材を回収して反復使用することができる。これにより、杭打設工事の消耗資材費が節減されて経済的であるのみでなく、省資源という社会的,国家的要請に応えることができる。本請求項の装置は従来例の装置に比して引抜管継手が追加されているが、この構成部材は高圧水の送給管路を絞るものではないからウォータージェット併用杭打工事に何らの支障を及ぼさない。また、この引抜管継手は所定の引張力を受けると離脱するが、該所定の引張力を受けなければ離脱しないので、正常な杭打作業状態で意に反して離脱する虞れは無い。この請求項に係る発明装置は、マニホールド配管された枝管を集合させたマニホールド配管の主管として剛性の管を用いる場合にも適用することができ、また可撓性のホースを用いる場合にも適用することができる。本発明装置を用いて杭を所定の位置に打ち込んだ後、地上から引抜力を加えて給水用の主管もしくは主ホースを上方へ引っ張ると、引抜管継手が離脱して上半部と下半部とに分断され、上半部は主管もしくは主ホースと一緒に地上に引き出されて回収される。回収された引抜管継手および給水用の管路部材(主管または主ホース)は反復使用することができる。このため、杭打工事の消耗資材費が節減されるのみでなく、鉄鋼資源の節約に貢献することができる。
【0031】
請求項5に係る発明装置の構成は、前記請求項4の発明装置の構成要件に加えて、前記の引抜管継手が、挿脱可能に嵌合された1対のメス形継手とオス形継手との対偶から成り、
上記の対偶をなす継手の片方がマニホールド配管に接続されるとともに、杭に対して固定されており、該対偶をなす継手の他方は、杭に対して直接的に固定されることなく相手継手に対して上方から嵌め合わされていて、
前記と別体に構成された保持バンドが、前記“他方”の継手に巻き掛けられてその両端を杭に対して溶接固着され、または溶接し得るようになっており、
かつ、上記“他方”の継手に設けられた係止突起が上記保持バンドに当接して、該他方の継手が上方へ抜け出さないように係止しており、
前記の主管が所定の引張力を受けたとき、係止突起が保持バンドを破断させて抜け止め機能を喪失するようになっていることを特徴とする。
【0032】
以上に説明した請求項5の発明装置によると、保持バンドによって引抜管継手の抜け止めが為され、該保持バンドを破断させて引き抜くようになっている。このため、保持バンドを破断させて引抜管継手を引き抜いて離脱させても、該引抜管継手の本体部分であるメス形継手やオス形継手は損傷を被らない。従って、杭を所定の位置に打ち込んだ後に引抜管継手を離脱させ、その上半部を回収した際、損傷していない上半部が回収され、これを反復して使用することができる。さらに、引抜管継手が保持バンドで抜け止めされていて、これを破断させて引き抜く構造であるから、破断に要する力を設定することが容易であり、かつ、多数の保持ハンドを工業的に生産したとき、該多数の保持バンドそれぞれの耐破断力にバラツキが無い。この耐破断力が過小であると作業中に不測の事故を生じる虞れが有り、過大であると回収作業が困難であるから、上述のように耐破断力が均一であることの実用的効果は多大である。
【0041】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の1実施形態を示し、(A)は模式的に描いた正面図、(B)は同底面図である。この実施形態は前掲の図6に示した従来例のウォータージェット用高圧水送給装置に本発明を適用して改良した1例である。次に、本図2の構成が前記図6に比して異なる点、すなわち、本発明を適用して改良した点について述べると、マニホールドMと給水主管5との接続部付近に、本発明に係る引抜管継手8が介挿接続されている。引抜管継手とは、所定の引張力で引っ張ると離脱し、それ未満の引張力では離脱しない構造の管継手をいい、上記所定の引抜力は『給水主管が杭と共に地中へ打ち込まれる際、前記硬質地層の上方に位置する軟質地層から受ける摩擦に因る上向きの力』よりも小さく、かつ『地上から給水主管を引き抜く力』よりも小さく設定される。
【0042】
マニホールドとは、日刊工業新聞社刊の配管用語辞典によると、多数の枝管が集合または分岐するための配管部分をいう。上記の「枝管」に対応する語は「主管」である。
本例では、3本の枝水管3が、水平環状管4およびマニホールドMを介して1本の給水主管5に連通されている配管グループが、鋼管杭1の周囲に対称に、2グループ設けられている。
【0043】
これを一般化して言えば、nを2以上の整数、mを1以上の整数として、
nxm個のジェットノズル2を周方向に等間隔に配列し、
n個のジェットノズル2のそれぞれから上方に向かう計n本の枝水管3を配管して鋼管杭1に固着する。
これにより、鋼管杭1の中心線に関して回転対称形にジェットノズル2が配列され、該鋼管杭1に関して均斉のとれたウォータージェットが行なわれ、鋼管杭が垂直姿勢で垂直に沈下し、傾いたり偏ったりする虞れが無い。
mの数を2以上にすると、配管を介して鋼管杭1に掛かる貫入抵抗も対称となり、いっそう均斉のとれた杭打工事を行なうことができる。
【0044】
鋼管杭1を所定の位置まで打ち込んだならば、給水主管5の上端部に力を加えて上方に引っ張る。引張力が所定の値に達すると引抜管継手8が上下に分断され、給水主管5は、その下端に引抜管継手上半部を装着されたままで地上に引き抜かれる。
引き抜いた給水主管5および引抜管継手上半部は反復使用に供される。このため、これらの部材に関する消耗資材費が節減されて杭打工事コストを低減させる上に、鉄鋼資源の節約に貢献することができる。
【0045】
図3は、前掲の図2に示した実施形態の応用例であって、可撓性の主ホースで給水するように構成したウォータージェット用の高圧水供給装置にリールを付記した正面図である。
図2の実施形態に比して異なるところの主たる事項は、剛性を有する鋼管製の給水主管5に代えて、可撓性を有する高圧ホースからなる給水主ホース7をマニホールド配管Mに接続したこと、
および、上記給水主ホース7を上方へ引き抜くための巻き取り用のリール13を設けたことである。
鋼管からなる給水主管5を引き抜く作業はクレーン(図示省略)によって行ない得るが、そのためには杭打設箇所の上方に空間が必要である。このため、杭打作業空間の高さが制約されているときは本図3の例のように強い巻取力(例えば接線方向巻込力3トン)を有するリール13を設けておいて、前記の給水主ホース7を巻き取れば良い。
高圧ホースは一般に、鋼管に比べて高価であるが、巻取り回収・再使用を反復できるから経済的である。
図2,図3の実施形態においても、水平環状管4を殊更に頑丈にしなくても破損しないよう、この鋼管杭1を打設した状態で該水平環状管4が硬質地層の上面よりも下方にならないように配慮することが望ましい。
【0046】
図1は、本発明を適用して構成した引抜管継手を説明するために示したもので、(A)は鋼管杭の側壁に装着したところを描いた側面断面図、(B)は鋼管杭を省略するとともに給水主ホースの一部を付記した外観正面図、(C)は切断して描いた底面図である。
(図1(A)参照)引抜管継手は、主としてメス形継手8aとオス形継手8bとから成っている。
本図に表されているように、メス形継手8aの先端(図において上端)に形成された凹円柱面8cの中へ、オス形継手8bの先端(図において下端)に形成された凸円柱面8dが嵌合されている。
【0047】
上記の嵌合部にOリング8eが介装されるとともに、このOリングに側圧を加えるように導圧孔8fを穿った変形例の要部を図5に示す(図1,図5参照)。上記導圧孔8fは、オス形継手8bの先端嵌合部の管壁を貫いて穿たれているが、本例のOリング8eは次に述べるように特殊な作用をさせるため、2個を設置するとともに、該2個のOリングの中間に、直径寸法の大きい導圧孔8fを配設してある。そして更に、オス形継手8bの中心孔の先端開口部(本例においては下端開口部)付近に大径部8gを設けてある。本例においては1段の段付き孔の形に大径部8gを形成してあるが、ラッパ状(凹円錐面状)に拡開しても良く、多段孔形に形成しても良い。
【0048】
〔特別の作用・その1〕
正常な杭打ち作業中はオス形継手8bとメス形継手8aとが嵌合している。また、杭を打ち終えてオス形継手8bをメス形継手8aから引き抜く際は高圧水の送給を停止してから引き抜くのが正式の手順でもあり技術的常識でもある。
しかしながら、何らかの手違い又は過失などのため、高圧水を送給しながらオス形継手8bを引き抜いてしまう虞れが絶無とは言い難い。
また、何らかの故障によって、高圧水が送給されている状態でオス形継手8bがメス形継手8aから抜け出して離脱する虞れが絶対に無いとは言い切れない。
給水用の主ホース7の先端に装着されているオス形継手8bがメス形継手8aから外れて高圧水を噴き出すと、噴出水流の反動で主ホース7が首振り状に跳ね回って非常に危険である。
【0049】
本例(図5)のようにオス形継手8bの先端を拡開してあれば、何らかの事故によって該オス形継手8bから圧力水が噴出した場合、大径部8gで流速が低下するので跳ね回り事故の危険性が減少する。
さらに、本例(図5)のようにオス形継手8bの管壁を貫いて大径の導圧孔8fが設けられていると、噴出水流の一部が該導圧孔8fに分流して水圧を低下させる。このため、高圧水の噴出に因る給水主ホース7の跳ね回りの危険性はいっそう少なくなる。
【0050】
〔特別の作用・その2〕
杭打ち機を大別すると圧入式と振動式とが有る(その他にハンマー式なども有るが、振動公害,騒音公害の関係でほとんど実用されていない)。
本発明に係る高圧水送給装置は振動杭打機と併用される場合が少なくない。
振動杭打工法を用いた場合、本発明に係る引抜管継手に激しい振動が伝わる。
このためオス,メス継手の凹円柱面8cと凸円柱面8dとが、互いに衝突を繰り返す。
本実施形態(図1)に示したOリング8eは上記の衝突を緩和し、損耗の進行を防止する。
【0051】
符号9を付して示したのは、バンド部材として設けた保持バンドである。
本図1(C)に示すように、鋼板をアーチ形に成形した保持バンド9をオス形継手8bに巻き掛け、その両端部を鋼管杭1に対して強固に溶接する。
ここに強固に溶接するとは、例えば何トンの力を受けると引き剥がされるように、といった規制を受けることなく、充分な強度を持たせて溶接する意であって、溶接作業者に高度の知識や熟練を必要とせず、工程管理が容易である。
なお、本発明において保持バンドをオス形継手に巻き掛けるとは、円周方向にほぼ半円周にわたって当接させる意である。
【0052】
オス形継手8bに対して保持バンド9を巻き掛け、該保持バンド9を鋼管杭1に溶接することにより、該オス形継手8bは鋼管杭1に押しつけられて離れなくなる。しかし、これだけでは未だ図の上下方向に摺動して、メス形継手8aに対して抜き差しできる状態である。(これは図1に示した実施形態を発明方法として見たとき、中間工程の段階である)。
この段階に至る道筋として、(イ)保持バンド9をオス形継手8bに巻き掛けて、これを鋼管杭1に向けて押しつけながら溶接しても良く、また(ロ)アーチ状に成形された保持バンド9を(図1(C)参照)鋼管杭1に溶接しておいて、その後にオス形継手8bをアーチ形の保持バンド9と鋼管杭1との間に差し込んでメス形継手8aに嵌め合わせても良い。
【0053】
次に、前記オス形継手8bに抜け止めを施す。
この抜け止めは、機能面から見ればメス形継手8aから抜け出さないようにするものであり、また、力の均合から見ればオス形継手8bが保持バンド9に対して摺動しないように係止するものである。
係止突起8hを、予め、オス形継手8bと別体に構成しておき、取付ボルト8iでオス形継手8bに固着する。
固着された係止突起8hは、オス形継手8bに対して一体的に連設された突起部材となり、かつ保持バンド9に当接して、オス形継手8bの抜け止め機能を果たす。
【0054】
前記の保持バンド9が係止突起8hの当接を受ける箇所に切欠9aが設けられて、応力集中部Sが形成され、破断を制御し易くなっている。
給水主ホース7が上方へ引っ張られて、係止突起8hが保持バンド9を押し上げた場合、上記の引張力がある程度大きくないと、保持バンド9は係止突起8hの上昇を阻止して、オス形継手8bの抜け止め作用が発揮される。
上記の引張力が、予め設定された値に達すると、保持バンド9が破断して抜け止め機能が消失する。すると、引抜管継手の上半部であるオス形継手は主ホース7の先端(図において下端)に装着されたまま、メス形継手8aから抜け出して引き上げられ、回収される。
破断される部材は保持バンド9であって、オス形継手8bおよび係止突起8hは損傷を受けないから、清掃を加えた上で反復使用することができ、杭打作業の消耗性部材の消費が節減される。
【0055】
本図1の実施形態のように、係止突起8hがオス形継手8bと別体に構成されていて、取付ボルトなどによって着脱可能な構造である場合、回収された係止突起つきオス形継手(8b+8h)は、これを次回に使用する際、次の二通りの用法の何れかを任意に選択することができる。
〔用法・その1〕
回収されたオス形継手8bから係止突起8hを一旦取り外し、
突起の無くなったオス形継手8bを「鋼管杭1に溶接されたアーチ形の保持バンド9」に挿通するとともにメス形継手8aに嵌め合わせ、
上記オス形継手8bに、取り外してあった係止突起8hを取り付けて、次回の杭打作業の準備を整える。
この第1の用法によると、鋼管杭1に対する保持バンド9の溶接固着を予め済ませておくことができるので、良好な溶接作業環境で溶接作業を行ない得るという長所が有る。
【0056】
〔用法・その2〕
係止突起8hを取り付けられたオス形継手8bが回収されたとき、このオス形継手8bから係止突起8hを取り外すことなく再使用を繰り返すこともできる。この場合は、係止突起つきオス形継手8bに保持バンド9を巻き掛け、この保持バンド9でオス形継手8bを鋼管杭1に向けて押しつけながら、該保持バンド9を鋼管杭1に対して溶接固定する。
この第2の用法によると、取り外しておいた係止突起を紛失するとか、着脱を繰り返しているうちに取付ボルト8iのネジ山が損傷したりネジ穴が損傷したりするとかいった不具合を生じる虞れが無い。
【0057】
上述のように、着脱可能な構造の係止突起8hをオス形継手8bから取り外すことなく、取り付けたままで繰り返し使用することもできる(第2の用法)であるならば、この係止突起をオス形継手と一体に、取外し不可能な構造にすることも考えられる。
図示を省略するが、係止突起(8h)をオス形継手(8b)と一体に構成すると、前記第2の用法における効果(取り外した部材が紛失する虞れ無く、着脱用の構造部分が損傷する虞れも無い)が得られる上に、構造が簡単で製造コストが低廉である。
【0058】
本図1の実施形態では、メス形継手8aを相対的に下側に配置して、上向きに開口させ、オス形継手8bを相対的に上側に配置し、その先端を下向きにしてメス形継手8aの開口部に差し込む構成がとられている。
図示を省略するが、上述の構成に比してオス,メス、上,下の関係を逆にすることもでき、それぞれ長短が有る。
オス形継手を下側に配置してメス形継手を上側に配置した場合の長所は次のとおりである。
【0059】
図から容易に理解できるように、オス形継手8bの先端開口部の面積に比してメス形継手8aの先端開口部の面積は必然的に大きい。
図1の例のようにオス形継手8bの中心孔の先端付近に大径部8gを設けても、メス形継手8aの先端部の凹円柱面8cの断面積の方が大きい。
このため、メス形継手8aを主ホース7に接続しておいた方が、万一の「高圧給水中の継手離脱事故」を生じても、噴出水流の流速が低いという意味では安全である。しかし、図5の例におけるがごとく導圧孔8fから水流の1部を流出させて水圧を低下させる効果は期待できない。
【0060】
図1の例では、オス形継手8bもメス形継手8aも、その外周面をほぼ直円柱面状に構成してあるが、詳しく見るとオス形継手8bの外径がメス形継手8aの外径よりも若干細い。
特段の配慮をすることなく一般的に構成すると、メス形継手は先太形になり易く、オス形継手は先細形にすることが容易である。
従って、一般的に言えば、先細形のオス形継手を上半部に配置した方が、これをアーチ形の保持バンド9に差し込み易い。
【0061】
図4は、本発明におけるバンド部材としての保持バンドと、係止突起との対偶を説明するために示したもので、読図の便宜上、係止突起に斑点を付して描いてあり、(A)は前掲の図1に用いた保持バンド・係止突起対偶の模式図、(B),(C),(D)はそれぞれ上記と異なる実施形態における保持バンド・係止突起対偶の模式図である。
(B)図のように構成しても、前記実施形態に対応する(A)図の保持バンド・係止突起対偶と同様の作用、効果が得られる。
(C)図も、基本的には(A)図と同様の構成であるが、保持バンド11に設けられた切欠は円弧形切欠11aであって鋭い角を有していない。
【0062】
これだけの構成(円弧形切欠)だけでは顕著な応力集中を生じないので、係止突起8jに尖った当切部を形成して顕著な応力集中を発生させるようにしてある。応力集中を発生させるための手段として、(C)図に仮想線で示したように溝11bを作ることも有効である。
(D)図に示した例では、保持バンド12に円形孔12aを設けておき、その中に尖った当接部を有する係止突起8kを位置せしめた。
この(D)図の例のように円形孔の中に係止突起を嵌め合わせようとする場合は(図1参照)係止突起を取付ボルト8iで着脱可能な構造とするか、もしくは保持バンド9でオス形継手8bを押えつけた後に該保持バンド9を杭1に溶接しなければならない(すなわち、係止突起をオス形継手と一体構造とし、かつ、保持バンド9を予め杭1に溶接しておいて、その後に引抜管継手を嵌め込むことは出来ない。
【0063】
以上に説明した実施形態において、図2の例も図3の例も鋼管杭に本発明に係るマニホールドMおよび引抜管継手8を設けたが、本発明の実施対象は鋼管杭に限られるものではなく、例えば鋼矢板やコンクリートパイルに適用することもできる。
【0064】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げてその構成,作用を明らかならしめたように、請求項1の発明方法によると、マニホールド配管の枝水管のそれぞれにジェットノズルが接続されるとともに、上記マニホールド配管の給水主管が高圧給水ホースに接続されているので、該高圧給水ホースを圧力水源に接続すると各ジェットノズルから圧力水流が噴出して鋼管杭の打込みを助長する。
前記マニホールド配管と給水主管との間に引抜管継手が介挿接続されているが正常な状態で杭の打込み作業を行なっている限り、該引抜管継手を介挿したことによって別段の支障は生じない。
その理由は、正常な杭打込作業中に、給水主管に対して上向き方向の摩擦力が作用するが、引抜管継手の所要引抜力を適宜に設定しておけば、上記摩擦力が引抜力設定値を越える虞れが無いからである。
杭を所定の位置まで打ち込んだ後、地上から給水主管に引抜き方向の力を与えると、該引抜力はほとんどそのまま(摩擦力によって若干減少するが)引抜管継手に対して引抜力として伝達される。
このため、該引抜管継手が離脱して分断され、給水主管は引抜管継手の上半部が取り付けられたままで地上に引き抜かれる。
引き抜かれた給水主管、および、これに接続されている引抜管継手上半部は、回収して再使用することができ、資源の節約に貢献することができる。
【0065】
請求項2の発明方法によると、マニホールド配管の枝水管のそれぞれにジェットノズルが接続されていて、その主管である給水用主ホースが高圧給水ホースに接続されるので、この高圧給水ホースに圧力水源を接続すると上記ジェットノズルから圧力水流が噴出して杭の打込みを助長する。
本請求項の構成は上記のマニホールド配管と給水主ホースとの接合部の近傍に引抜管継手を介挿接続したが、この引抜管継手は噴射用の水流を絞る作用を及ぼさないので、正常な水噴射杭打作業を遂行することができる。また、正常な水噴射杭打作業においては引抜管継手を離脱させるような引張力は加えられないから作業中に不測の継手離脱を生じる虞れが無い。本請求項に開示された「所定の引抜力を受けると分断される引抜管継手」とは「所定の引抜力を受けないと分断されない引抜管継手」でもある。
当該杭を所定の位置に打ち込まれた後、給水主ホースを地上から引っ張ると、前記の引抜管継手に所定の引張力を与えると、該引抜管継手が離脱し分断され、前記の給水主ホースは、その先端に「分断された引抜管継手の上半部」を装着されたままで地上に引き抜かれる。
引き抜かれた給水主ホース、および引抜管継手上半部は反復使用することができるので経済的であり、かつ省資源に貢献することができる。
【0066】
請求項3の発明方法によると、引抜管継手が離脱する引張力の値を容易に、かつ高精度で制御することができる。
しかも、上記引抜管継手の引張所要力の設定が容易である上に、分断された引抜管継手の上半部を、ほとんど無傷で回収して反復使用に供することができるので、反復使用耐久性に優れている。
本請求項においては、引抜管継手の抜け止め作用を受け持っているバンド部材を破断するので、引抜管継手の本体部分(継手部材の対偶)が損傷を被ることなく引抜き分断されるから耐久性が良い。
抜け止め作用をしているバンド部材の取付部を引き剥がすのではなく、該バンド部材を破断するので、引張所要力の制御を容易に高精度で制御することができる。すなわち、従来技術におけるバンド式の抜け止めは、杭に溶接された鋼帯の溶接を引き剥がす形式であったため「所定の力以上で引き剥がされ、それ未満の力では引き剥がされないような溶接」を施工する必要が有ったのに比して、本請求項の発明においては、所定の力未満では引き剥がされないように、強固に溶接するだけで足りる。このため、溶接施工に別段の知識や高度の熟練を必要とせず、細心の注意を傾注する必要も無い。
さらに、杭に溶接されたバンド部材を杭から引き剥がすことをしないので、引き剥がされた杭が損傷を被る虞れも無い。
【0073】
請求項4の発明装置によると、杭に装着された高圧水送給用の部材のうち、杭の上半部に装着された部材を回収して繰り返し使用することができる。詳しくは、打設された状態で硬質地層の中に貫入する部分を除き、該硬質地層の上面よりも上部に相当する箇所に装着された部材を回収して反復使用することができる。これにより、杭打設工事の消耗資材費が節減されて経済的であるのみでなく、省資源という社会的,国家的要請に応えることができる。本請求項の装置は従来例の装置に比して引抜管継手が追加されているが、この構成部材は高圧水の送給管路を絞るものではないからウォータージェット併用杭打工事に何らの支障を及ぼさない。また、この引抜管継手は所定の引張力を受けると離脱するが、該所定の引張力を受けなければ離脱しないので、正常な杭打作業状態で意に反して離脱する虞れは無い。この請求項に係る発明装置は、マニホールド配管された枝管を集合させたマニホールド配管の主管として剛性の管を用いる場合にも適用することができ、また可撓性のホースを用いる場合にも適用することができる。本発明装置を用いて杭を所定の位置に打ち込んだ後、地上から引抜力を加えて給水用の主管もしくは主ホースを上方へ引っ張ると、引抜管継手が離脱して上半部と下半部とに分断され、上半部は主管もしくは主ホースと一緒に地上に引き出されて回収される。回収された引抜管継手および給水用の管路部材(主管または主ホース)は反復使用することができる。このため、杭打工事の消耗資材費が節減されるのみでなく、鉄鋼資源の節約に貢献することができる。
【0074】
請求項5の発明装置によると、保持バンドによって引抜管継手の抜け止めが為され、該保持バンドを破断させて引き抜くようになっている。このため、保持バンドを破断させて引抜管継手を引き抜いて離脱させても、該引抜管継手の本体部分であるメス形継手やオス形継手は損傷を被らない。従って、杭を所定の位置に打ち込んだ後に引抜管継手を離脱させ、その上半部を回収した際、損傷していない上半部が回収され、これを反復して使用することができる。さらに、引抜管継手が保持バンドで抜け止めされていて、これを破断させて引き抜く構造であるから、破断に要する力を設定することが容易であり、かつ、多数の保持バンドを工業的に生産したとき、該多数の保持バンドそれぞれの耐破断力にバラツキが無い。この耐破断力が過小であると作業中に不測の事故を生じる虞れが有り、過大であると回収作業が困難であるから、上述のように耐破断力が均一であることの実用的効果は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用して構成した引抜管継手を説明するために示したもので、(A)は鋼管杭の側壁に装着したところを描いた側面断面図、(B)は鋼管杭を省略するとともに給水主ホースの一部を付記した外観正面図、(C)は切断して描いた底面図である。
【図2】本発明の1実施形態を示し、(A)は模式的に描いた正面図、(B)は同底面図である。
【図3】前掲の図2に示した実施形態の応用例であって、可撓性の主ホースで給水するように構成したウォータージェット用の高圧水供給装置にリールを付記した正面図である。
【図4】本発明におけるバンド部材としての保持バンドと、係止突起との対偶を説明するために示したもので、読図の便宜上、係止突起に斑点を付して描いてあり、(A)は前掲の図1に用いた保持バンド・係止突起対偶の模式図、(B),(C),(D)はそれぞれ上記と異なる実施形態における保持バンド・係止突起対偶の模式図である。
【図5】前掲の図1の実施形態の変形例を示す要部断面図である。
【図6】鋼管杭を地盤中に打ち込む場合、従来例の高圧水送給装置を備えたウォータージェットを用いている状態を示し、(A)は模式的に描いた正面図、(B)は模式的に描いた底面図であって、A,B両図とも杭打機の図示を省略して鋼管杭と給水配管とを描出して描いてある。
【符号の説明】
1…杭
1a,1b…杭継手
2…ジェットノズル
3…枝水管
4…水平環状管
5…給水主管
6…高圧給水ホース
7…給水主ホース
8…引抜管継手
8a…メス形継手
8b…オス形継手
8c…凹円柱面
8d…凸円柱面
8e…Oリング
8f…導圧孔
8g…大径開口部
8h…係止突起
8i…取付ボルト
8j,8k…係止突起
9…保持バンド
9a…V字形切欠
10…保持バンド
10a…V字形切欠
11…保持バンド
11a…円弧状切欠
11b…溝
12…保持バンド
12a…円形孔
13…リール
Claims (5)
- 表層よりも硬質の地層を有する地盤に杭を打ち込む場合、
杭の下端部に複数のジェットノズルを配設し、各ジェットノズルから上方に向かう枝水管を配管して杭に取り付け、
「前記の杭が所定の位置まで打ち込まれた状態において、該杭が前記硬質地層の上面に対応する箇所」に、前記枝水管の複数本を1本の給水主管に連通せしめるマニホールド配管を施し、該給水主管を杭の上方に導いて高圧給水ホースに接続し、
上記給水主管がマニホールド配管に接続される箇所の直近に、「所定の引抜力を受けると離脱する引抜管継手」を介装接続しておき、
上記所定の引抜力を『給水主管が杭と共に地中へ打ち込まれる際、前記硬質地層の上方に位置する軟質地層から受ける摩擦に因る上向きの力』よりも小さく、かつ『地上から給水主管を引き抜く力』よりも小さく設定し、
杭を所定の位置まで打ち込んだ後、前記給水主管の上端部に引抜力を加えて、前記引抜配管継手を分断させ、
該給水主管と、引抜管継手の上半部とを地上に引き抜いて回収し、反復利用を可能ならしめることを特徴とする、ウォータージェット用の高圧水送給方法。 - 表層よりも硬質の地層を有する地盤に杭を打ち込む場合、杭の下端部に複数のジェットノズルを配設し、各ジェットノズルから上方に向かう枝水管を配管して杭に取り付け、
「前記の杭が所定の位置まで打ち込まれた状態において、該杭が前記硬質地層の上面に対応する箇所」に、前記枝水管の複数本を1本の給水主ホースに連通せしめるマニホールド配管を施して、上記給水主ホースを地上の高圧水源に接続し、
上記の給水主ホースがマニホールド配管に接続される箇所の直近に「所定の引抜力を受けると分断される引抜管継手」を介装接続しておき、
上記所定の引抜力を『給水主管が杭と共に地中へ打ち込まれる際、前記硬質地層の上方に位置する軟質地層から受ける摩擦に因る上向きの力』よりも小さく、かつ『地上から給水主管を引き抜く力』よりも小さく設定し、
杭を所定の位置まで打ち込んだ後、前記の給水主ホースに上向きの引抜力を与えて、前記引抜管継手を分断させ、
該引抜管継手の上半部と、前記の給水主ホースとを地上に引き抜いて回収し、反復使用を可能ならしめることを特徴とする、ウォータージェット用の高圧水送給方法。 - 前記の引抜管継手を、円筒状の内周面を有するメス形継手と、上記円筒状の内周面に嵌合する円柱面を有するオス形継手とによって構成し、上記メス形継手とオス形継手との何れか片方をマニホールド配管に接続するとともに杭に対して固着し、
上記メス形継手とオス形継手との内の何れか他方を、杭に対して直接的に固着することなく、相手の継手に対して上方から嵌め合わせるとともに、
杭に対して直接的に固着されていない側の継手にバンド部材を巻き掛けて、該継手を杭に向けて押し付け、このバンド部材の両端部付近を杭に対して強固に固着し、
さらに上記の杭に対して直接的に固着されていない側の継手に、抜け止めとして機能する係止突起を固定して、該係止突起の上端部付近を前記バンド部材に当接させておき、
前記の杭を打ち込んだ後、上記の直接的に固着されていない継手に対して引き抜き方向の力を加えた際、抜け止めとして作用していた係止突起により、前記バンド部材に対して局部的な力を加えて該バンド部材を破断させ、
バンド部材の破断によって前記の抜け止め機能を消失せしめ、嵌合していたメス形継手とオス形継手とを分断させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載したウォータージェット用の高圧水送給方法。 - 杭打ち用のジェットノズルに高圧水を送給する装置において、杭の下端部に複数個のジ ェットノズルが取り付けられるとともに、各ジェットノズルから上方に向けて枝水管が配管され、これらの枝水管が杭に対して固着されており、
前記の杭の長手方向の上,下端を除く中間部において、複数本の枝管が、水平環状管を介して1本の主管に連通するようにマニホールド配管されていて、
前記の主管は剛性を有する金属管、または可撓性を有する高圧ホースによって構成されており、
前記主管の下端部が、「所定の引張力を受けると離脱する引抜管継手」を介してマニホールド配管に接続されていて、
上記所定の引抜力が、『給水主管が杭と共に地中へ打ち込まれる際、地盤から受ける摩擦に因る上向きの力』よりも小さく、かつ『地上から給水主管を引き抜く力』よりも小さく設定されていることを特徴とする、ウォータージェット用の高圧水送給装置。 - 前記の引抜管継手が、挿脱可能に嵌合された1対のメス形継手とオス形継手との対偶から成り、
上記の対偶をなす継手の片方がマニホールド配管に接続されるとともに、杭に対して固定されており、該対偶をなす継手の他方は、杭に対して直接的に固定されることなく相手継手に対して上方から嵌め合わされていて、
前記と別体に構成された保持バンドが、前記“他方”の継手に巻き掛けられてその両端を杭に対して溶接固着され、または溶接し得るようになっており、
かつ、上記“他方”の継手に設けられた係止突起が上記保持バンドに当接して、該他方の継手が上方へ抜け出さないように係止しており、
前記の主管が所定の引張力を受けたとき、係止突起が保持バンドを破断させて抜け止め機能を喪失するようになっていることを特徴とする、請求項4に記載したウォータージェット用の高圧水送給装置。
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