JP4068803B2 - 多元系セラミックス粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2種以上の金属元素とN、さらにはCを構成成分とする多元系セラミックス粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属粉末とセラミックス粉末がともに焼結されることにより製造される複合材は、金属に由来する高靱性と、セラミックスに由来する高硬度および高強度とを兼ね備えており、種々の分野で広汎に使用されている。例えば、炭化タングステンとコバルトが焼結されてなる炭化タングステン−コバルト系超硬合金や、炭化チタンとモリブデンが焼結されてなる炭化チタン系サーメットは、切削工具の刃具として採用されている。これらには、炭化ニオブ等がさらに配合されることもある。
【0003】
ところで、複合材の原料として使用されるセラミックス粉末は、上記したような炭化タングステンや炭化チタン、炭化ニオブ等、1種の金属元素とCとを構成成分とする2元系炭化物セラミックスや、1種の金属元素とNとを構成成分とする2元系窒化物セラミックス等である。これらはそれ自体で充分な硬度を有しているが、用途によってはさらに高硬度なセラミックスが希求される場合がある。
【0004】
高硬度なものとしては、ダイヤモンドや正方晶系窒化ホウ素(c−BN)等が例示される。さらに、近年では、Ti、AlおよびNを構成成分とするTi−Al−N3元系セラミックスの薄膜がc−BNに匹敵する高硬度を有することが報告されている。すなわち、Ti−Al−N3元系セラミックスの硬度は、TiNまたはAlNの硬度に比して著しく高く、かつTiNとAlNとがともに焼結された焼結体に比しても高い。
【0005】
Ti−Al−N3元系セラミックスの薄膜は、物理的気相成長(PVD)法または化学的気相成長(CVD)法により作製することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ダイヤモンドやc−BNには、耐酸化性が良好ではなく、しかも、高価であるので複合材の製造コストの高騰を招くという不具合がある。そこで、化学的に安定でかつ高硬度な複合材を低コストで得るためには、Ti−Al−N3元系セラミックスのように、2種以上の金属元素とCまたはNとを構成成分とする多元系セラミックス粉末を原料として使用することが有効であると考えられる。
【0007】
しかしながら、上記したように、PVD法やCVD法により作製されたTi−Al−N3元系セラミックスの形態は薄膜であり、粉末に関してはこれまでのところ報告されていない。
【0008】
また、PVD法やCVD法により多元系セラミックス粉末を製造しようとした場合、複合材の製造コストが高騰してしまうという不具合を招く。この理由は、これらの方法では反応効率が低くかつ反応速度も遅いので、多元系セラミックス粉末の生産効率が低いからである。さらに、これらの方法には、粉末が得られるような反応条件を実験的に求める必要があり、そのために長時間を要するとともに煩雑であるという不具合が顕在化している。
【0009】
Ti−Al−N3元系セラミックス粉末を作製する別の方法としては、TiとAlの混合粉末を窒化することが想起される。しかしながら、この場合、TiNとAlNとの混合粉末が得られるのみであり、Ti−Al−N3元系セラミックス粉末を得ることはできない。
【0010】
そこで、Ti−Al2元系合金を窒化することが想起される。しかしながら、この合金は、その表面が空気中の酸素で酸化されることにより形成された酸化物膜で被覆されている。このため、Ti−Al2元系合金を内部まで窒化させることが著しく困難であるので、得られた粉末を原料としても複合材の硬度の向上はさほど認められない。
【0011】
このように、2種以上の金属元素とCまたはNとを構成成分とする多元系セラミックス粉末を製造することには著しい困難を伴っており、このため、このような多元系セラミックス粉末は未だに得られていない。
【0012】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、2元系セラミックスを原料とする焼結体に比して高硬度を有する焼結体を得ることが可能な多元系セラミックス粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明に係る多元系セラミックス粉末は、Ti、Al、V、Nb、Zr、Hf、Mo、Ta、Cr、Wの群から選択される少なくとも3種の金属元素と、Nと、Cとを構成成分としたことを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明に係る多元系セラミックス粉末とは、例えば、Ti−Al−Nb−(C,N)等のように表される、3種以上の金属元素を含む5元系以上の複合炭窒化物セラミックスの粉末である。ただし、本発明に係る製造方法(後述)には、上記したような複合炭窒化物セラミックス粉末の製造方法のみならず、例えば、Ti−Al−N等のような3元系以上の複合窒化物セラミックスの粉末の製造方法が含まれる。
【0016】
このような複合窒化物セラミックス粉末または複合炭窒化物セラミックス粉末を原料とする焼結体は、TiNやTiC、NbC等の2元系セラミックスを原料とする焼結体に比して高硬度を示す。また、前者の相対密度は理想密度に近く、したがって、前者は高強度かつ高靱性も示す。
【0017】
なお、複合窒化物セラミックスを原料とする焼結体の特性と複合炭窒化物セラミックスを原料とする焼結体の特性とを比較した場合、両焼結体における金属が同一種であれば、後者の方が高硬度を示す。すなわち、Cをも構成成分とする多元系セラミックス粉末であることが好ましい。
【0018】
この場合、CとNとの原子比がC/N<1であることが好ましい。C/Nが1以上であると、多元系セラミックス粉末の種類によっては焼結体の硬度が低下することがあるからである。
【0019】
上記した金属の表面には、該金属が空気中の酸素で酸化されることにより酸化物膜が形成されている。このため、多元系セラミックス粉末には、不可逆不純物としてのOが含有されている。
【0020】
このOの割合は、0.5重量%以下であることが好ましい。0.5重量%を超えると、硬度や靱性が低い焼結体となることがあるからである。
【0021】
また、本発明は、Ti、Al、V、Nb、Zr、Hf、Mo、Ta、Cr、Wの群から選択される少なくとも2種の金属の粉末と、還元剤と、前記金属の窒化または炭窒化を促進する触媒とを混合し、前記2種の金属同士をメカニカルアロイングにより合金化して合金とする工程と、
前記合金を含む混合粉末を窒素ガス存在下で焼成処理して前記合金を窒化または炭窒化することにより多元系セラミックスとする工程と、
を有することを特徴とする。
【0022】
焼成処理が施される際、まず、合金の表面に存在する酸化物膜が還元剤により還元される。このため、合金の表面が極めて活性な状態となる。したがって、該合金を表面から内部に亘って容易かつ簡便に、しかも、大量に窒化または炭窒化することができる。このため、多元系セラミックス粉末を低コストで製造することができる。
【0023】
そして、このように表面から内部に亘って窒化または炭窒化された多元系セラミックス粉末を原料とする焼結体は、高硬度を示す。
【0024】
還元剤の好適な例としては、アルカリ土類金属または粉末炭素材を挙げることができる。このうち、粉末炭素材を使用することが好ましい。酸化物膜を還元することにより自身が酸化されると、粉末炭素材はCOまたはCO2に変化する。これらはガスであり、したがって、反応炉外へと容易かつ速やかに排出することができるからである。
【0025】
また、粉末炭素材はC源としても作用する。すなわち、この場合、複合炭窒化物セラミックスを得ることができる。
【0026】
この場合、粉末炭素材の添加割合は、0.1重量%〜11.6重量%とすることが好ましい。0.1重量%未満では還元作用に乏しく、11.6重量%を超えると遊離炭素が生成するので硬度の低い焼結体が得られることがあるからである。
【0027】
一方、触媒の好適な例としては、アルカリ土類金属、第VIIA族元素または第VIII族元素を挙げることができる。
【0028】
いずれの場合においても、焼成処理を施した後、得られた多元系セラミックス粉末を酸溶液で処理することが好ましい。これにより未反応の還元剤や触媒、酸化された還元剤や触媒が酸溶液中に溶出されるので、高純度の多元系セラミックス粉末を得ることができるからである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多元系セラミックス粉末およびその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
本実施の形態に係る多元系セラミックス粉末は、2種以上の金属元素とNとを構成成分とする複合窒化物セラミックス粉末、または、2種以上の金属元素とNとCとを構成成分とする複合炭窒化物セラミックス粉末である。
【0031】
金属元素は、Ti、Al、V、Nb、Zr、Hf、Mo、Ta、Cr、Wの群から選択された2種以上である。これらは、互いに窒化または炭窒化可能な合金を構成する。
【0032】
Nは、上記した金属元素の2種以上を構成成分とする合金の粉末が焼成処理される際の雰囲気ガスに含まれた窒素ガスを源として供給されたものである。後述するように、前記金属元素の2種以上を構成成分とする合金を窒素ガスで窒化することにより複合窒化物セラミックス粉末が得られる。
【0033】
この複合窒化物セラミックス粉末を焼結することにより得られる焼結体や、複合窒化物セラミックス粉末と金属粉末をともに焼結することにより得られる焼結体(複合材)、すなわち、複合窒化物セラミックス粉末を原料とする焼結体は、TiNまたはTiC等の2元系セラミックス粉末を原料とする焼結体に比して高硬度を示す。
【0034】
Cをさらに構成成分とする複合炭窒化物セラミックス粉末の場合、Cは、カーボンブラック等の粉末炭素材を源として供給されたものである。複合炭窒化物セラミックス粉末を原料とする焼結体は、複合窒化物セラミックス粉末を原料とする焼結体に比して一層高硬度を示す。
【0035】
ここで、Cを構成成分とする場合、CとNとの原子比がC/N<1であることが好ましい。C/Nが1以上であると、多元系セラミックス粉末の種類によっては焼結体の硬度が低下することがあるからである。より好ましい原子比は、0.4<C/N<0.9である。
【0036】
また、この多元系セラミックス粉末は、不可逆不純物としてのOを含有する。このOの割合は、0.5重量%以下に設定される。0.5重量%を超えると、この多元系セラミックス粉末を原料とする焼結体の硬度が低くなることがあるからである。
【0037】
このような多元系セラミックス粉末は、以下のようにして製造することができる。
【0038】
本実施の形態に係る多元系セラミックス粉末の製造方法をフローチャートにして図1に示す。この製造方法は、金属の粉末、還元剤および触媒を混合するメカニカルアロイング工程S1と、得られた混合粉末を焼成処理する焼成処理工程S2と、焼成処理により得られた多元系セラミックス粉末を酸溶液で処理する酸処理工程S3とを有する。
【0039】
まず、メカニカルアロイング工程S1において、金属粉末、還元剤および触媒を混合する。
【0040】
金属粉末としては、Ti、Al、V、Nb、Zr、Hf、Mo、Ta、Cr、Wの群の中から少なくとも2種の粉末が選択される。これらは、メカニカルアロイングにより容易に合金を生成する。しかも、これらを構成成分とする多元系セラミックス粉末を原料とする焼結体は、高硬度を示す。
【0041】
還元剤は、これらの金属の表面に形成された酸化物膜を還元するためのものである。すなわち、通常、これらの金属は、その表面が空気中の酸素で酸化されることにより形成された酸化物膜で被覆されている。還元剤は、焼成処理時に自身が酸化されることによってこの酸化物膜を還元する。
【0042】
このように機能する還元剤の好適な例としては、Mg、Ca、Sr、Baに代表されるアルカリ土類金属または粉末炭素材を挙げることができる。これらはともに上記金属に比して還元力が強く、したがって、上記金属に対して有効な還元剤となる。
【0043】
このうち、粉末炭素材を使用することが好ましい。粉末炭素材は取り扱いが容易であり、しかも、安価でコスト的に有利であるからである。また、粉末炭素材が酸化物膜と反応することによりCOまたはCO2が生成される。これらはガスであるので、焼成処理工程S2を行う際に容易かつ速やかに焼成炉外へと排出することができる。すなわち、酸化物が残留することはない。このため、高純度の多元系セラミックス粉末を得ることができるからである。さらに、粉末炭素材はC源としても作用するので、複合窒化物セラミックスに比して高硬度の複合炭窒化物セラミックスを生成することができるからである。
【0044】
なお、粉末炭素材の添加割合は、0.1重量%〜11.6重量%とすることが好ましい。0.1重量%未満では、還元剤としての能力に乏しい。また、11.6重量%を超えると、遊離炭素が生成されるようになる。また、例えば、金属としてAl粉末を選択した場合、Al4C3も生成されるようになる。このようなものを含有する焼結体は、硬度および靱性に乏しい。
【0045】
還元剤としてMg粉末を使用する場合、金属の粉末100gに対して0.1〜5gを添加するようにすればよい。また、Ba粉末を使用する場合、金属の粉末100gに対して0.5〜10gを添加するようにすればよい。
【0046】
触媒は、上記した金属の窒化を促進するためのものである。また、粉末炭素材が存在する場合、炭窒化をも促進する。
【0047】
触媒の好適な例としては、アルカリ土類金属、第VIIA族元素または第VIII族元素を挙げることができる。このうち、第VIIA族元素または第VIII族元素を使用することが好ましい。これらは、後述する酸処理工程S3により酸溶液中に溶出され易く、したがって、多元系セラミックスを高純度で得ることができるからである。なお、第VIII族元素としてはFe、Co、Niが例示され、第VIIA族元素としてはMnが例示される。このうち、上記金属の窒化または炭窒化を促進する作用に最も優れていることから、Mnを使用することが好ましい。
【0048】
触媒の好ましい添加割合は、触媒の種類によって異なるので一義的には決定されない。例えば、Mnを使用する場合には3重量%以下、Fe、Co、Niを使用する場合には5重量%以下とすることが好ましい。前記した割合を超えて触媒を添加すると、いずれの場合においても、未反応の触媒の残留量またはこれらの窒化物や炭窒化物の生成量が多くなる。したがって、酸処理工程S3でこれらを溶出することが容易ではなくなるので、焼結体の硬度を向上することが容易ではなくなる。
【0049】
ここで、還元剤および触媒としては、アルカリ土類金属、第VIIA族元素または第VIII族元素の純物質だけでなく、化合物も使用することができる。例えば、Fe、Niの粉末に代替してカルボニル鉄、カルボニルニッケルの粉末を使用するようにしてもよい。このような化合物粉末は、純物質粉末に比して粒径が著しく小さい。このため、混合粉末中に均一に分散されるので、純物質粉末に比して少ない添加量で窒化または炭窒化を促進することができる。したがって、省資源化を図ることができ、結局、コスト的に有利となる。
【0050】
以上の金属粉末、還元剤および触媒の混合は、選択した2種の金属同士がメカニカルアロイングにより合金を生成するような条件下で行う。具体的には、アトライタを構成する水冷容器内に金属粉末、還元剤、触媒および鋼球を収容して該水冷容器を封止し、該水冷容器内に挿入された回転翼を回転動作させる。これにより金属粉末同士が高エネルギ下で摩砕および圧接され、その結果、合金粉末が生成される。また、合金粉末中に還元剤および触媒が略均一に分散される。
【0051】
このようにして得られた混合粉末を、次いで、焼成処理工程S2において、窒素ガス存在下で焼成処理する。この際、粉末炭素材を含まない混合粉末においては合金の窒化が進行し、一方、粉末炭素材を含む混合粉末においては窒化が進行する。
【0052】
なお、窒素ガスは、合金を窒化または炭窒化可能な程度に雰囲気ガスに含まれていればよい。すなわち、窒素ガスのみを雰囲気ガスとしてもよく、窒素ガスと他の不活性ガス、例えば、アルゴンガス等との混合ガスを雰囲気ガスとしてもよい。
【0053】
また、焼成処理の温度は、1000℃〜1600℃とすることが好ましい。1000℃未満では窒化または炭窒化が効率的に進行しない。また、1600℃を超えても窒化または炭窒化の進行速度は向上しないので、多元系セラミックスの製造コストが高騰する。
【0054】
焼成処理工程S2においては、まず、合金の表面に形成された酸化物膜が還元される。すなわち、合金の表面は、該合金を構成する金属が空気中の酸素により酸化されて形成された酸化物膜で被覆されている。この酸化物膜が還元剤で還元され、活性な合金となる。
【0055】
還元剤として粉末炭素材を使用した場合、該粉末炭素材は、酸化物膜から酸素を奪取することにより自身は酸化されてCOまたはCO2となる。これらはともにガスであるので、雰囲気ガスに同伴させることにより反応炉外に容易かつ速やかに排出することができる。
【0056】
酸化物膜が還元されることにより、合金は、その表面が極めて活性な状態となる。このため、表面から内部に亘り容易に窒化される。なお、還元剤として粉末炭素材を使用した場合には、余剰の粉末炭素材がC源としても作用する。すなわち、この場合、合金は表面から内部に亘り炭窒化される。
【0057】
焼成処理工程S2に際しては、触媒も酸化されることがある。また、還元剤としてアルカリ土類金属を使用した場合、アルカリ土類金属は酸化物から酸素を奪取することにより自身が酸化され、酸化物として多元系セラミックス粉末中に残留する。すなわち、焼成処理工程S2により得られた多元系セラミックス粉末中には、未反応の還元剤および触媒、還元剤の酸化物および触媒の酸化物が不純物として混在している。これらの不純物が混在した多元系セラミックス粉末を原料として焼結体を製造した場合、該焼結体は低硬度を示すことがある。
【0058】
そこで、次に、酸処理工程S3において、不純物を多元系セラミックス粉末から分離除去する。具体的には、得られた多元系セラミックス粉末を酸溶液中に浸漬することにより、不純物を溶出する。
【0059】
この酸溶液には、フッ化水素酸またはホウフッ化水素酸が含まれていることが好ましい。これらは上記した不純物の溶解能に優れ、したがって、多元系セラミックス粉末から不純物を効率よく分離除去することができるからである。
【0060】
なお、この際には、多元系セラミックス粉末を構成する金属元素の一部も酸化されることがある。上記したように、Oの割合が0.5重量%を超えている粉末を原料とする焼結体は硬度が低下する。したがって、酸溶液の濃度や浸漬時間はOの割合が0.5重量%を超えないように設定される。
【0061】
ろ過を行ってろ液と粉末とを分離した後、粉末を中和処理して水洗することにより、高純度の多元系セラミックス粉末が得られるに至る。
【0062】
この多元系セラミックス粉末を原料とする焼結体は、該多元系セラミックス粉末が表面から内部に亘って窒化または炭窒化されているので、高硬度を示す。また、多元系セラミックス粉末から不純物が除去されているので、焼結体の相対密度が理論密度に近づく。このため、該焼結体は、強度および靱性にも優れるようになる。
【0063】
このように、2種以上の金属粉末、還元剤および触媒を混合した後、窒素ガス存在下で焼成処理することにより多元系セラミックス粉末を容易かつ簡便に製造することができる。しかも、PVD法やCVD法に比して反応効率が高くかつ反応速度も高い。このため、1バッチ当たりの生産量が多く、したがって、焼結体の製造コストを低廉化することもできる。
【0064】
この多元系セラミックス粉末は、チップやバイト等の切削加工用刃具や金型等の好適な原料として使用することができる。すなわち、この多元系セラミックス粉末を単体で、あるいは金属粉末とともに成形した後に焼結させることにより、高硬度の切削加工用刃具や金型等を得ることができる。
【0065】
【実施例】
Ti、Al、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Wを金属粉末として、カーボンブラックを還元剤かつC源として、Mgを還元剤または触媒として、Mn、Niを触媒として図2に示す割合(数字は重量%)で混合した。この混合は、金属同士がメカニカルアロイングにより合金を生成する条件下で行った。
【0066】
このようにして得られた混合粉末中の合金を、窒素雰囲気下において図3に示すパターンで焼成処理することにより炭窒化させて種々の複合炭窒化物セラミックス粉末を得た。
【0067】
さらに、この複合炭窒化物セラミックス粉末を王水またはフッ酸と硝酸の混合溶液に浸漬し、未反応のMg、Mn、Niやこれらの酸化物を酸溶液中に溶出させることにより複合炭窒化物セラミックス粉末から分離した。そして、精製した複合炭窒化物セラミックス粉末を焼結して焼結体とした後、各焼結体のビッカース硬度を測定した。これらを実施例1〜28とする。
【0068】
また、比較のために、触媒を添加しなかったことを除いては実施例1〜28に準拠して焼結体を製造し、各焼結体のビッカース硬度を測定した。これらを比較例1〜3とする。
【0069】
実施例1〜28および比較例1〜3の各焼結体のビッカース硬度(Hv)を図2に併せて示す。この図2から、実施例1〜28の各焼結体が著しく高い硬度を示すこと、また、触媒を添加しない場合、焼結体の硬度が著しく低いことが明らかである。
【0070】
図2からは、Ti−Al−Nb−(C,N)系セラミックス粉末からなる焼結体が比較的高硬度であることも諒解される。そこで、この系について、カーボンブラックの添加割合を種々変化させてセラミックス粉末を製造し、該セラミックス粉末を焼結して得られた焼結体のHvを測定した。カーボンブラックの添加割合と焼結体のHvとの関係をグラフにして図4に示す。図4から、この系においては、カーボンブラックの添加割合が3重量%で最大となり、それを超えると、添加割合が大きくなるほどHvが低下することが分かる。
【0071】
また、得られた粉末におけるC/N(原子比)を機器分析により測定した。C/Nと焼結体のHvとの関係をグラフにして図5に示す。この図5から、この系においては、C/Nが1未満であることが好ましいということがいえる。
【0072】
さらに、この系で最大の硬度を示したC/N≒0.7の粉末を平均粒径2μm程度に調製した後、Niを7重量%添加してボールミルで湿式混合した。この混合粉末を150MPaで加圧成形した後、窒素雰囲気中1400℃で1.5時間保持することにより焼結させてTi−Al−Nb−(C,N)とNiとの複合材を作製した。この複合材の相対密度は略100%であった。
【0073】
また、この複合材につきロックウェル硬度、抗折強度を測定したところ、それぞれ、93.4〜94.0、3GPaであった。これらの値は、TiCおよびNbCとNiとからなるサーメットに比して、それぞれ、2ポイント、1GPa高かった。
【0074】
以上のことから、多元系セラミックス粉末を原料とする焼結体は、TiCやTiN等の2元系セラミックスを原料とする焼結体に比して高硬度を示すものであることが明らかである。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る多元系セラミックス粉末によれば、2種以上の金属とN、さらにはCを構成成分としている。このため、この粉末を原料として得られる焼結体は、1種の金属の窒化物または炭窒化物である2元系窒化物セラミックス粉末または2元系炭窒化物セラミックス粉末を原料として得られる焼結体に比して高硬度を示すという効果が達成される。
【0076】
また、本発明に係る多元系セラミックス粉末の製造方法によれば、2種以上の金属をメカニカルアロイングにより合金化し、この合金の表面に形成された酸化物膜を還元した後に窒化または炭窒化を行うようにしている。このため、合金をその表面から内部に亘り確実に窒化または炭窒化することができ、結局、容易かつ簡便に、しかも、低コストで多元系セラミックス粉末を得ることができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る多元系セラミックス粉末の製造方法のフローチャートである。
【図2】実施例1〜28および比較例1〜3の焼結体の原料である多元系セラミックス粉末を得る際の各粉末の混合割合およびビッカース硬度を示す図表である。
【図3】前記多元系セラミックス粉末を得る際の焼成処理工程S2における焼成パターンである。
【図4】Ti−Al−Nb−(C,N)系セラミックス粉末を得る際のカーボンブラックの添加割合と焼結体のHvとの関係を示すグラフである。
【図5】Ti−Al−Nb−(C,N)系セラミックス粉末におけるC/N(原子比)と焼結体のHvとの関係を示すグラフである。
Claims (7)
- Ti、Al、V、Nb、Zr、Hf、Mo、Ta、Cr、Wの群から選択される少なくとも3種の金属元素と、Nと、Cとを構成成分とし、且つCとNとの原子比がC/N<1であることを特徴とする多元系セラミックス粉末。
- 請求項1記載の多元系セラミックス粉末において、不可逆不純物として含有されたOの割合が0.5重量%以下であることを特徴とする多元系セラミックス粉末。
- Ti、Al、V、Nb、Zr、Hf、Mo、Ta、Cr、Wの群から選択される少なくとも2種の金属の粉末と、還元剤と、前記金属の窒化または炭窒化を促進する触媒とを混合し、前記2種の金属同士をメカニカルアロイングにより合金化して合金とする工程と、
前記合金を含む混合粉末を窒素ガス存在下で焼成処理して前記合金を窒化または炭窒化することにより多元系セラミックスとする工程と、
を有することを特徴とする多元系セラミックス粉末の製造方法。 - 請求項3記載の製造方法において、アルカリ土類金属または粉末炭素材の少なくともいずれか一方を前記還元剤として使用することを特徴とする多元系セラミックス粉末の製造方法。
- 請求項4の製造方法において、前記粉末炭素材の添加割合を0.1重量%〜11.6重量%とすることを特徴とする多元系セラミックス粉末の製造方法。
- 請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、アルカリ土類金属、第VIIA族元素または第VIII族元素の少なくともいずれか1つの粉末を前記触媒として使用することを特徴とする多元系セラミックス粉末の製造方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、さらに、前記多元系セラミックス粉末を酸溶液で処理する工程を有することを特徴とする多元系セラミックス粉末の製造方法。
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