近年、簡単な構成でCD(コンパクトディスク)とDVD(デジタルビデオディスク)を互換することのできるピックアップが求められている。
簡単な構成で、使用波長の異なる光ディスクを互換することのできる光ピックアップは、例えば特許文献1に開示されているようなものや特許文献2に開示されているようなものがある。
特許文献1に開示されている光ピックアップを図6(a)に示した。図6(a)において、符号6は「光ディスク」の1種であるCDを、符号7は同じく「光ディスク」の1種であるDVDを示している。これら2種の光ディスクに対する使用波長は、CD6が785nm、DVD7が650nmである。半導体レーザ101は波長785nmの光を、半導体レーザ102は波長650nmの光を照射する。
CD6に対して情報の記録再生を行うときは、半導体レーザ101を発光させる。半導体レーザ101から放射された光は、波長785nmの光を反射し、波長650nmの光を透過させるダイクロイックミラー膜を装荷したダイクロビームスプリッタ117により反射され、コリメータレンズ104にて平行光束とされた後、ビームスプリッタ118を透過し、対物レンズ105にてCD6の記録面上に集光される。記録面からの反射光は、対物レンズ105を透過し、ビームスプリッタ118により反射され、ホログラム素子116により回折されて、光検出器119に入射する。
一方、DVD7に対して情報の記録・再生を行うときには、半導体レーザ102を発光させる。半導体レーザ102から放射された波長650nmの光は、ダイクロビームスプリッタ117を透過し、コリメータレンズ104にて平行光束となる。この平行光束はビームスプリッタ118を透過し、対物レンズ105によって、DVD7の記録面上に集光される。記録面からの反射光は、対物レンズ105を透過し、ビームスプリッタ118により反射され、ホログラム素子116により回折されて、光検出器119に落ちる。
光検出器119は、図6(b)に示すように、単一のものであって、同一ウエハ上に、2つの受光部領域、受光部領域(A、B、C、D)と受光部領域(E、F、G、H)とが別個に形成されている。これら受光部領域からの各出力信号をそれぞれSA〜SHとする。また、ホログラム素子116は、図6(c)に示すように、2種のホログラムH1、H2で構成されており、ホログラムH1は、波長785nmの光を回折しつつ非点収差を与え、ホログラムH2は、波長650nmの光を回折しつつ非点収差を与えるように最適化されている。波長785nmの戻り光は、ホログラムH1により、図6(a)に実線で示す如く回折され、非点光束化されて受光部領域(A、B、C、D)に入射する。
この受光部領域(A、B、C、D)から出力される信号をそれぞれSA、SB、SC、SDとすると、フォーカス誤差信号(以下、FESと略記する。)は非点収差法による「(SA+SC)−(SB+SD)」の演算から、トラック誤差信号(以下、RESと略記する。)はプッシュプル法による「(SA+SB)−(SC+SD)」の演算から、再生信号(以下、RFと略記する。)は「(SA+SB+SC+SD)」の演算から得られる。同様に、波長650nmの戻り光は、ホログラムH2のホログラム作用により図6(a)に破線で示す如く回折され、非点光束化されて、受光部領域(E、F、G、H)に入射する。この受光部領域(E、F、G、H)から出力される信号をそれぞれSE、SF、SG、SFとすると、FESは「(SE+SG)−(SF+SH)」、RESは「(SE+SF)−(SG+SH)」、RFは「(SE+SF+SG+SH)」の演算で得られる。単一ピッチのホログラム素子を使用した場合、使用する波長によって回折角度が変わる、いわゆる色収差のため、光ディスクからの戻り光を単一の光検出器に導けなくなるが、このように構成することで、使用波長が変わっても単一の光検出器に導くことができる。
次に、特許文献2に開示されている光ピックアップを図7に示した。DVD等の光ディスク7を再生する場合、光源220からの650nmの波長の光ビームは、ホログラム素子21の回折格子209によりメインビーム及び二つのサイドビームに分割された後、対物レンズ105により、光ディスク7の信号記録面に集束される。光ディスク7からの戻り光は、再び対物レンズ105を介して、ホログラム21に入射する。ホログラム21は、図7に示すように、半円形のホログラム部21aと、1/4円形の二つのホログラム部21b,21cとの合計3つの領域を備えている。
また、光検出器22は、図8(a)に示すように、上記回折格子209により分割されたメインビームが入射すべき受光部221、222、223、224が形成されている。またこれらの受光部222、223、224の両サイドには、上記回折格子209により分割されたサイドビームが入射すべき受光部225、226が形成されている。受光部221〜224は、横方向に一列に並んでいると共に、それぞれが中心線によって、これと直交する方向に二つに分割されて、それぞれ221A・221B・222C・222D・223E・223F及び224部G・224Hを構成している。
ここで、上記戻り光は、ホログラム21の各ホログラム部21a、21b、21cによりそれぞれ回折されて、図8(a)に示すように、メインビームの戻り光が、光検出器22の受光部221、222、223に入射すると共に、サイドビームの戻り光の一部、即ちホログラム部21b、21cによる回折光が、光検出器の受光部225、226に入射する。受光部221A、221B、222C、222D、223E、223Fから出力される信号をそれぞれSa、Sb、Sc、Sd、Se、Sfとすると、光ディスク7に関するRFは「(Sa+Sb)+(Sc+Sd)+(Se+Sf)」の演算から、FESはナイフエッジ法により「(Sa−Sb)」の演算から、RESはDPD(Differential Phase Detection)法により「(Sc+Sd)−(Se+Sf)」の演算から得られる。
また、CD等の光ディスク6を再生する場合、光源220からの780nmの波長の光ビームは、ホログラム素子21の回折格子209によりメインビーム及び二つのサイドビームに分割された後、対物レンズ105により、光ディスク7の信号記録面に集束される。光ディスク7からの戻り光は、再び対物レンズ105を介して、ホログラム21に入射する。ここで、上記戻り光は、ホログラム21の各ホログラム部21a、21b、21cによりそれぞれ回折されて、図8(b)に示すように、メインビームの戻り光が、光検出器の受光部222、223、224に入射すると共に、サイドビームの戻り光が、光検出器の受光部225、226に入射する。これにより、受光部222C、222D、223E、223F、224G、224H、225、226から出力される信号をそれぞれ、Sc・Sd・Se・Sf・Sg・Sh・Si・Sjとすると、光ディスク7に関するRFは「(Sc+Sd)+(Se+Sd)+(Sg+Sh)」、FESは「(Sc−Sd)」、RESは「(Si−Sj)」の演算で得られる。
この場合、単一ピッチのホログラムを使用しているため、使用波長が変わると回折角度
も変わり、光検出器上での光の落ちる位置が違ってくるが、使用する波長それぞれに応じ
て光の落ちる位置に受光部を設けることで対応している。
特開2000−76688号公報(公開日:平成12年3月14日)
特開2000−215491号公報(公開日:平成12年8月4日)
しかし、特許文献1に開示されている光ピックアップでは、使用するそれぞれの波長に応じて最適化されたホログラム素子を使用するため、最適化されていない領域の光は光検出器に入らず、光の利用効率が低下し、広帯域を必要とするRF信号のS/N比が悪くなり、エラーレートが高くなる。
また、特許文献2に開示されている光ピックアップでは、単一のホログラム素子を使用するため戻り光は、波長の違いにより回折角度が変わり、違う受光部に落ちるように構成されているため、上記特許文献1の光ピックアップにおける、光の利用効率の低下という問題は解消される。しかしながら、この構成では、例えばDVDの光学系でフォーカス誤差信号(FES)が出力されるようにホログラム素子の調整を行った場合、CDの光学系では調整が出来ないという問題が生じる。具体的には、DVDとCDの戻り光のホログラム素子上での大きさが違うこと、DVDとCDの光軸調整ずれ、及び光検出器を作製する上で生じる公差により、DVD又はCDのいずれか一方に適合するようにホログラム素子の調整を行った場合には、FESにオフセットが発生する。そして、最悪の場合、フォーカス誤差信号が出力されないといった問題が起こり得る。また、近年提案されている1パッケージで2つの波長のレーザを照射することのできるいわゆる「2波長1レーザユニット」の場合、2つのレーザの発光点位置が光軸と垂直面内方向にずれているが、このレーザユニットを使用した場合、ホログラム素子上で、DVDとCDの戻り光位置がずれることになり、PP法でRESを生成する場合、DVDでRESのオフセット調整を行うと、CDでは必然的にオフセットが発生してしまう。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用波長の異なる複数の光ディスクに対して別個に記録再生を行うことが可能な互換型の集積化ピックアップおよび光ピックアップにおいて、上記光の利用効率低下およびオフセットの発生という問題を解決することが可能な集積化ピックアップおよび光ピックアップを提供することにある。
本発明に係る集積化ピックアップは、上記の課題を解決するために、使用波長の異なる光ディスクを互換可能な集積化ピックアップであって、波長の異なる2つの第1光および第2光を照射する光源と、波長の異なる第1光および第2光それぞれに対応したディスク構造をもつ第1のディスクおよび第2のディスクからの反射光を受光する1つの光検出手段と、上記第1および第2のディスクと光検出手段との間に配置され、上記第1および第2のディスクからの反射光を光検出手段に導く1つのホログラム素子とを備え、上記光検出手段は、フォーカス誤差信号およびトラック誤差信号を生成するための第1サーボディテクタおよび第2サーボディテクタと、再生信号を生成するための第1再生信号ディテクタおよび第2再生信号ディテクタとを備えており、上記ホログラム素子は、その第1および第2のディスクからの反射光が入射する面が上記第1および第2のディスクの半径方向に相当する分割線によって第1領域および第2領域に2分割され、さらに上記第1および第2のディスクの接線方向に相当する分割線により上記第1領域が第1象限および第2象限に、上記第2領域が第3象限および第4象限に分割され、かつ、上記第1領域が第1光の波長に対応する回折ピッチに設定され、第2領域が第2光の波長に対応する回折ピッチに設定されており、上記ホログラム素子は、第1領域の第2象限で回折される第1光および第2領域の第4象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第1サーボディテクタの略同一位置に入射し、第1領域の第1象限で回折される第1光および第2領域の第3象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第2サーボディテクタの略同一位置に入射し、第1光の反射光のうち上記ホログラム素子の第3象限および第4象限で回折される光が第1再生信号ディテクタに入射し、第2光の反射光のうち上記ホログラム素子の第1象限および第2象限で回折される光が第2再生信号ディテクタに入射するように構成されていることを特徴とする。
なお、ここで、上記「集積化ピックアップ」とは、光ピックアップの構成のうち、光源と光検出手段とホログラム素子からなる構成部分を意味している。
本発明に係る集積化ピックアップは、上記の構成に加えて、上記ホログラム素子の第2象限で回折される第1光の焦点位置および第4象限で回折される第2光の焦点位置のうち、一方が上記第1サーボディテクタの受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクに近く、他方が当該受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクから遠くなるように設定されており、かつ、上記第1象限で回折される第1光の焦点位置および第3象限で回折される第2光の焦点位置のうち、一方が上記第2サーボディテクタの受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクに近く、他方が当該受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクから遠くなるように設定されているものであってもよい。
本発明に係る集積化ピックアップは、上記の構成に加えて、上記光源は第1光および第2光を異なる発光点から照射するものであり、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とが、上記第1および第2のディスクの半径方向にずれているものであってもよい。
本発明に係る集積化ピックアップは、上記の構成に加えて、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とのずれは、第1象限および第2象限のビーム面積が等しくなるように、また第3象限および第4象限のビーム面積が等しくなるように設定されているものであってもよい。
また、本発明に係る集積化ピックアップは、使用波長の異なる光ディスクを互換可能な集積化ピックアップであって、波長の異なる2つの第1光および第2光を異なる発光点から照射する光源と、波長の異なる第1光および第2光それぞれに対応したディスク構造をもつ第1のディスクおよび第2のディスクからの反射光を受光する1つの光検出手段と、上記第1および第2のディスクと光検出手段との間に配置され、上記第1および第2のディスクからの反射光を光検出手段に導く1つのホログラム素子とを備え、上記光検出手段は、フォーカス誤差信号およびトラック誤差信号を生成するための第1サーボディテクタおよび第2サーボディテクタとを備えており、上記ホログラム素子は、その第1および第2のディスクからの反射光が入射する面が上記第1および第2のディスクの半径方向に相当する分割線によって第1領域および第2領域に2分割され、さらに上記第1および第2のディスクの接線方向に相当する分割線により上記第1領域が第1象限および第2象限に、上記第2領域が第3象限および第4象限に分割され、かつ、上記第1領域が第1光の波長に対応する回折ピッチに設定され、第2領域が第2光の波長に対応する回折ピッチに設定され、これにより第1領域の第2象限で回折される第1光および第2領域の第4象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第1サーボディテクタに入射し、第1領域の第1象限で回折される第1光および第2領域の第3象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第2サーボディテクタに入射するように構成されており、かつ、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とが、上記第1および第2のディスクの半径方向にずれていることを特徴とするものである。
本発明に係る集積化ピックアップは、上記の構成に加えて、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とのずれは、第1象限および第2象限のビーム面積が等しくなるように、また第3象限および第4象限のビーム面積が等しくなるように設定されているものであってもよい。
また、本発明に係る集積化ピックアップは、上記の構成に加えて、上記ホログラム素子が光源から上記第1および第2のディスクに至る光路中の発散光領域に配置されているものであってもよい。
本発明に係る光ピックアップは、少なくとも上記第1および第2光をそれぞれ対応する第1および第2のディスクの信号記録面に集光する1つ以上の対物レンズと、上記構成の集積化ピックアップとを備えることを特徴とするものである。
本発明に係る集積化ピックアップは、波長の異なる2つの第1光および第2光を照射する光源と、フォーカス誤差信号およびトラック誤差信号を生成するための第1サーボディテクタおよび第2サーボディテクタと再生信号を生成するための第1再生信号ディテクタおよび第2再生信号ディテクタとを備えている光検出手段と、ディスクからの反射光を光検出手段に導く1つのホログラム素子とを備えており、上記ホログラム素子は、その第1および第2のディスクからの反射光が入射する面が上記第1および第2のディスクの半径方向に相当する分割線によって第1領域および第2領域に2分割され、さらに上記第1および第2のディスクの接線方向に相当する分割線により上記第1領域が第1象限および第2象限に、上記第2領域が第3象限および第4象限に分割され、かつ、上記第1領域が第1光の波長に対応する回折ピッチに設定され、第2領域が第2光の波長に対応する回折ピッチに設定されており、第1領域の第2象限で回折される第1光および第2領域の第4象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第1サーボディテクタの略同一位置に入射し、第1領域の第1象限で回折される第1光および第2領域の第3象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第2サーボディテクタの略同一位置に入射するように構成されているため、どちらか一方の波長の光を使用して正確なフォーカス誤差信号(FES)が出力されるようにホログラム素子を調整するだけで、他方の波長の光を使用した場合に、無調整でオフセットがほとんど無いフォーカス誤差信号(FES)が得られるという効果を奏する。
また、上記ホログラム素子の第1領域の第2象限で回折される第1光および第2領域の第4象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第1サーボディテクタの略同一位置に入射し、上記ホログラム素子の第1領域の第1象限で回折される第1光および第2領域の第3象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第2サーボディテクタの略同一位置に入射するだけでなく、第1光の反射光のうち上記ホログラム素子の第3象限および第4象限で回折される光が第1再生信号ディテクタに入射し、第2光の反射光のうち上記ホログラム素子の第1象限および第2象限で回折される光が第2再生信号ディテクタに入射するように構成されているため、戻り光すべてを再生信号(RF)とすることができ、S/N比の低下がなくなるという効果を奏するとともに、2種類の異なる波長の光を使用しても、フォーカス誤差信号およびトラック誤差信号を生成するための各種演算方法の適用を同一とすることができるという効果を奏する。
また、上記ホログラム素子の第2象限で回折される第1光の焦点位置および第4象限で回折される第2光の焦点位置のうち、一方が上記第1サーボディテクタの受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクに近く、他方が当該受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクから遠くなるように設定されており、かつ、上記第1象限で回折される第1光の焦点位置および第3象限で回折される第2光の焦点位置のうち、一方が上記第2サーボディテクタの受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクに近く、他方が当該受光面よりも光軸方向で上記第1および第2のディスクから遠くなるように設定されていることにより、上記第1サーボディテクタおよび第2サーボディテクタには常に同じ形状の光が入射する。これにより、スポットサイズ法を使用してフォーカス誤差信号を生成することができるので、ホログラム素子の光軸と垂直方向面内の調整精度が緩和できるという効果を奏する。さらに、波長の異なる2つの光のうちいずれか一方でホログラム素子の位置調整を行うことで、集積化ピックアップの全調整が完了できるという効果を奏する。
さらに、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とが、上記第1および第2のディスクの半径方向にずれている構成とすることで、第1象限のビーム面積と第2象限のビーム面積との差および第3象限のビーム面積と第4象限のビーム面積との差を小さくすることができる。これにより、例えばいわゆる「2波長1レーザユニット」を使用した場合に2つの発光点位置がずれることにより発生するトラック誤差信号のオフセットを低減させることができるという効果を奏する。
さらに、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とのずれは、第1象限および第2象限のビーム面積が等しくなるように、また第3象限および第4象限のビーム面積が等しくなるように設定されている構成とすることで、例えばいわゆる「2波長1レーザユニット」を使用した場合に2つの発光点位置がずれることにより発生するトラック誤差信号のオフセットをなくすことができるという効果を奏する。
本発明に係る集積化ピックアップは、波長の異なる2つの第1光および第2光を照射する光源と、フォーカス誤差信号およびトラック誤差信号を生成するための第1サーボディテクタおよび第2サーボディテクタを備えている光検出手段と、ディスクからの反射光を光検出手段に導く1つのホログラム素子とを備えており、上記ホログラム素子は、その第1および第2のディスクからの反射光が入射する面が上記第1および第2のディスクの半径方向に相当する分割線によって第1領域および第2領域に2分割され、さらに上記第1および第2のディスクの接線方向に相当する分割線により上記第1領域が第1象限および第2象限に、上記第2領域が第3象限および第4象限に分割され、かつ、上記第1領域が第1光の波長に対応する回折ピッチに設定され、第2領域が第2光の波長に対応する回折ピッチに設定され、これにより第1領域の第2象限で回折される第1光および第2領域の第4象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第1サーボディテクタに入射し、第1領域の第1象限で回折される第1光および第2領域の第3象限で回折される第2光が、上記光検出手段の第2サーボディテクタの略同一位置に入射するように構成されており、かつ、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とが、上記第1および第2のディスクの半径方向にずれている構成とすることで、第1象限のビーム面積と第2象限のビーム面積との差および第3象限のビーム面積と第4象限のビーム面積との差を小さくすることができる。これにより、例えばいわゆる「2波長1レーザユニット」を使用した場合に2つの発光点位置がずれることにより発生するトラック誤差信号のオフセットを低減させることができるという効果を奏する。
さらに、上記ホログラム素子の第1領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線と、上記ホログラム素子の第2領域を上記第1および第2のディスクの接線方向に分割する分割線とのずれは、第1象限および第2象限のビーム面積が等しくなるように、また第3象限および第4象限のビーム面積が等しくなるように設定されている構成とすることで、例えばいわゆる「2波長1レーザユニット」を使用した場合に2つの発光点位置がずれることにより発生するトラック誤差信号のオフセットをなくすことができるという効果を奏する。
本発明に係る光ピックアップは、少なくとも上記第1および第2光をそれぞれ対応する第1および第2のディスクの信号記録面に集光する1つ以上の対物レンズと、上記構成の集積化ピックアップとを備えるので、無調整でオフセットがほとんど無いフォーカス誤差信号(FES)が得られると共にS/N比の低下のない光ピックアップ、あるいは、2つの発光点位置がずれることにより発生するトラック誤差信号のオフセットを低減させることができる光ピックアップを提供することができるという効果を奏する。
本発明の集積化ピックアップおよびそれを使用した光ピックアップの一実施形態について図1ないし図5に基づいて説明すると以下の通りである。
図1は本発明の実施の一形態に係る光ピックアップの構成図である。本実施形態の光ピックアップは、互いに異なる第1波長および第2波長をそれぞれ使用し、第1波長および第2波長のレーザ光にそれぞれ対応したディスク構造をもつ第1波長専用ディスクおよび第2波長専用ディスクを互換可能な光ピックアップである。本実施形態では、光源として、波長の異なる第1波長のレーザ光(第1光)および第2波長のレーザ光(第2光)をそれぞれ照射する第1レーザチップおよび第2レーザチップを有している。第1レーザチップの発振波長(第1波長)を780nm、第2レーザチップの発振波長(第2波長)を650nmとし、第1波長専用ディスクをCD(コンパクトディスク)、第2波長専用ディスクをDVD(デジタルビデオディスク)とする。なお、2つの光の波長、光ディスクの種類および光源の種類はこれらに限定されるものではない。本願明細書において、「CD」とは、いわゆるCDファミリーを指し、再生専用のCD、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、CD−R(Compact Disc Recordable)、CD−RW(Compact Disc ReWritable)等を含むものとする。また、本願明細書において、「DVD」とは、いわゆるDVDファミリーを指し、再生専用のDVD、DVD−R(Digital Vesatile Disc Recordable)、DVD−RW(Digital Vesatile Disc ReWritable)、DVD+RW、DVD−RAM(Digital Vesatile Disc Random Access Memory)等を含むものとする。ディスクは、波長405nm専用のBlu-rayディスク等でもよい。
光源から出射した光は、ホログラム素子3を透過して、コリメータレンズ4に入射し平行光束にされた後、対物レンズ5にて第1波長専用ディスク6(以下、第1ディスクと称する。)または第2波長専用ディスク(以下、第2ディスクと称する。)7の信号記録面に集光される。第1ディスク6または第2ディスク7で反射された戻り光(反射光)は、対物レンズ5、コリメータレンズ4の順に透過して、ホログラム素子3にて回折され、光検出器8に導かれる。
図1に示した光ピックアップは、光源として第1レーザチップ1および第2レーザチップ2の2つのレーザチップを有しているが、一つのレーザチップで第1レーザチップ1の波長と第2レーザチップ2の波長を発振することのできるモノシリック型としてもよい。第1レーザチップ1および第2レーザチップ2は光軸と垂直平面内で1mm以内、好ましくは5〜100μmに近接している。
ホログラム素子3は、第1レーザチップ1および第2レーザチップ2から第1ディスク6および第2ディスク7に至る光路中の発散光領域に配置されている。ホログラム素子3は、光軸方向光源側の面には3ビーム用回折格子9が、光軸方向ディスク側の面(第1ディスク6または第2ディスク7からの反射光が入射する入射面)には4つのホログラム領域3a、3b、3cおよび3dが形成されている。光源側の面の3ビーム用回折格子9により、光源から出射した光が1つのメインビーム10aまたは11aと2つのサブビーム10b・10cまたは11b・11cとに分離される。ディスク側の面は、第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向に相当する分割線3eによって第1領域および第2領域に2分割され、さらに上記第1および第2のディスクの接線方向に相当する分割線3f・3gにより上記第1領域が第1象限(ホログラム領域3d)および第2象限(ホログラム領域3c)に、上記第2領域が第3象限(ホログラム領域3a)および第4象限(ホログラム領域3b)に分割されている。上記4つのホログラム領域3a、3b、3cおよび3dにより、第1ディスク6または第2ディスク7で反射された戻り光が回折され、光検出器8に導かれる。
本実施形態では、第1レーザチップ1および第2レーザチップ2(光源)とホログラム素子3と光検出器8とで1パッケージの集積化ピックアップを構成する。光ピックアップの構成としては、上記集積化ピックアップ、コリメータレンズ4および対物レンズ5の3パーツのみで構成でき、調整箇所も少なくなるため、光ピックアップの簡略化、小型化、低コスト化が図れる。
図2および図3に集積化ピックアップの構成図を示す。図2は、第1ディスク6(CD)を記録再生するときの光ビームおよび光検出器8上の光スポットの光軸位置(黒丸で示す)と共に集積化ピックアップの構成を示し、図3は第2ディスク7(DVD)を記録再生するときの光ビームおよび光検出器8上の光スポットの光軸位置(黒丸で示す)と共に集積化ピックアップの構成を示している。
光検出器8には、図2および図3に示すように、10個のディテクタ、すなわち、受光領域A・Bからなるディテクタ(以下、「ディテクタA+B」と記す)、受光領域C・Dからなるディテクタ(以下、「ディテクタC+D」と記す)、ディテクタE、ディテクタF、ディテクタG、ディテクタH、ディテクタI、ディテクタJ、ディテクタK、およびディテクタLが形成されている。なお、光検出器8が有するディテクタの数はこれに限定されるものではない。
ディテクタG、ディテクタH、ディテクタA+B、ディテクタC+D、ディテクタE、およびディテクタFは、第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向に相当する方向(分割線3eと平行な方向)に一列にこの順で並んでいる。ディテクタA+BおよびディテクタC+Dは、それぞれが第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向に相当する方向の中心線によって2つに分割されて、それぞれ受光領域A・Bおよび受光領域C・Dを構成している。また、ディテクタIおよびディテクタKは、ディテクタA+Bを挟んで、第1ディスク6および第2ディスク7の接線方向に相当する方向(分割線3f・3gと平行な方向)に一列に並んでいる。同様に、また、ディテクタJおよびディテクタLは、ディテクタC+Dを挟んで、第1ディスク6および第2ディスク7の接線方向に相当する方向に一列に並んでいる。
光検出器8のディテクタのうち、ディテクタA+BおよびディテクタC+Dが、サーボ信号(FESおよびRES)を生成するための第1サーボディテクタおよび第2サーボディテクタである。より詳細には、ディテクタA+BおよびディテクタC+Dは、これらで受光されたメインビーム10aまたは11aの光強度差を使用してRESを生成するためのものである。また、ディテクタA+BおよびディテクタC+Dは、一方のディテクタ(A+B)の一方の受光領域(A)と、これと点対称な位置にある他方のディテクタ(C+D)の受光領域(D)とで受光されたメインビーム10aの光強度差をとることによって、スポットサイズ法によるFESを生成するためのものである。
また、ディテクタE、Fが、第1ディスク6(CD)の記録再生時にメインビーム10aを受光して再生信号を生成するための第1再生信号ディテクタ(RFディテクタ)、ディテクタG、Hが、第2ディスク7(DVD)の記録再生時にメインビーム11aを受光して再生信号を生成するための第2再生信号ディテクタである。なお、ディテクタE〜Hだけでなく、ディテクタA+B、C+Dも、再生信号の生成に使用される。
ディテクタIおよびディテクタJは、これらで受光されたサブビーム10bの光強度差を使用してDPP(Differetial Push-Pull;3ビームプッシュプル方式)法によるRESを生成するためのものである。同様に、ディテクタKおよびディテクタLは、これらで受光されたサブビーム10cの光強度差を使用してDPP法によるRESを生成するためのものである。
まず、図2を説明する。第1レーザチップ1から出射した光はホログラム素子3の光軸方向光源側の面に設けられた3ビーム回折格子9によりメインビーム10aと2つのサブビーム10b・10cの3つの光に分離されて、コリメータレンズ4に向かう。第1ディスク6で反射された戻り光は、再びコリメータレンズ4を透過した後、ホログラム素子3にメインビーム10a、サブビーム10bおよび10cのように落ちる。
ホログラム素子3の光軸方向ディスク側の面は、上述のように、分割線3e、3f、3gによりホログラム領域3a、3b、3cおよび3dの4つに分割されている。この内第2象限のホログラム領域3cは第1レーザチップ1の発振波長である780nmの波長をもつメインビーム10aが、第4象限のホログラム領域3bは後述する図3の第2レーザチップ2の発振波長である650nmの波長をもつメインビーム11aが光検出器8の第1サーボディテクタA+B上の略同一位置に落ちるように最適化された格子ピッチに設定されている。同様に、第1象限の3dの領域は780nmの波長のメインビーム10aが、第3象限のホログラム領域3aは650nmの波長のメインビーム11aが光検出器8の第2サーボディテクタC+D上の略同一位置に落ちるように最適化された格子ピッチに設定されている。このような構成とすることにより、DVDとCDでサーボ用の光検出器(第1サーボディテクタA+Bおよび第2サーボディテクタC+D)を共用できるため、DVD光学系またはCD光学系のどちらか一方でホログラム素子3の調整を行うだけで、集積化ピックアップに関する全調整が完了できる。
ただし、これだけでは、第1レーザチップ1と第2レーザチップ2の発光点位置がずれている場合に、どちらか無調整の光学系において、サーボ信号、特にFESにオフセットが発生する場合がある。従って、ホログラム素子3の第1象限のホログラム領域3dおよび第4象限のホログラム領域3bから回折される光の焦点位置は光検出器8の第1サーボディテクタA+Bおよび第2サーボディテクタC+Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7に近くなるように(光軸方向でディスク側に)、第2象限のホログラム領域3cおよび第3象限のホログラム領域3aから回折される光の焦点位置は光検出器8の第1サーボディテクタA+Bおよび第2サーボディテクタC+Dの受光面(形成面)に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7から遠くなるように(光軸方向でディスクと反対側に)設定されている。詳細は後述するが、このように設定することで、FESの検出にスポットサイズ法を使用することができ、ホログラム素子3の光軸と垂直方向面内の調整精度が緩和できるため、オフセットの発生を完全に抑制できないまでも、非常に小さくすることができる。さらに、ホログラム素子3の分割線3fと3gが第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向に平行にずれて設定されている。これに関しても後述するが、このように設定することで、RESに発生するオフセットを抑制することができる。
上記のように設定されたホログラム素子3上に第1ディスク6で反射された戻り光が入射すると、ホログラム領域3cに入射したメインビーム10aは光検出器8の第1サーボディテクタA+B上に、ホログラム領域3dに入射したメインビーム10aは光検出器8の第2サーボディテクタC+D上に、ホログラム領域3aに入射したメインビーム10aは波長の違いにより生じる回折角度の変化により光検出器8のディテクタF上に、ホログラム領域3bに入射したメインビーム10aも同じく波長の違いにより生じる回折角度の変化により光検出器8のディテクタE上にそれぞれ回折される。さらに、ホログラム領域3cに入射したサブビーム10bは光検出器8のディテクタI上に、ホログラム領域3dに入射したサブビーム10bは光検出器8のディテクタJ上に、ホログラム領域3cに入射したサブビーム10cは光検出器8のディテクタK上に、ホログラム領域3dに入射したサブビーム10cは光検出器8のディテクタL上にそれぞれ回折される。なお、ホログラム領域3aに入射したサブビーム10b、ホログラム領域3bに入射したサブビーム10b、3a領域に入射したサブビーム10c、ホログラム領域3bに入射したサブビーム10cを検出するディテクタを設けてもよい。
光検出器8のディテクタA〜Lから出力される信号をそれぞれSA〜SLとすると、FESはスポットサイズ法を使用して、次式
FES=SA−SD ・・・(1)
で得られる。RESは、DPP法を使用して、次式
MPP=(SA+SB)−(SC+SD) ・・・(2)
により求められるMPP信号から、次式
RES=MPP−k{(SI−SJ)+(SK−SL)} ・・・(3)
により得られる。RFは、次式
RF=(SA+SB+SC+SD+SE+SF+SG+SH) ・・・(4)
で得られる。ここで式(3)の係数kは、基本的には光検出器8のディテクタA〜DとディテクタI〜Lに入射するビームの面積比とビームの強度比の違いを一つのゲインで補正するためのものであるが、集積化ピックアップの製作上発生する各部品寸法・調整等誤差やホログラム素子3の各ホログラム領域間の回折効率差により発生するオフセットもあわせて除去されるため、一概に各ディテクタ(受光素子)に入射するビームの面積比および強度比から決定されるものではない。
次に図3を説明する。第2レーザチップ2から出射した光はホログラム素子3の光軸方向光源側の面に設けられた3ビーム回折格子9によりメインビームとサブビーム2つの3つの光に分離されて、コリメータレンズ4に向かう。第2ディスク7で反射された戻り光は、再びコリメータレンズ4を透過した後、ホログラム素子3にメインビーム11a、サブビーム11bおよび11cのように落ちる。
ホログラム素子3の光軸方向ディスク側の面は、図2の説明で詳述したように、分割線3e、3f、3gによりホログラム領域3a、3b、3cおよび3dの4つに分割され、各象限の格子ピッチが設定されている。この構成により、ホログラム素子3上に第2ディスク7で反射された戻り光が入射すると、ホログラム領域3bに入射したメインビーム11aは光検出器8のディテクタA、B上に、ホログラム領域3aに入射したメインビーム11aは光検出器8のディテクタC、D上に、ホログラム領域3cに入射したメインビーム11aは波長の違いにより生じる回折角度の変化により光検出器8のディテクタG上に、ホログラム領域3dに入射したメインビーム11aも同じく波長の違いにより生じる回折角度の変化により光検出器8のディテクタH上にそれぞれ回折される。
さらに、ホログラム領域3bに入射したサブビーム11bは光検出器8のディテクタI上に、ホログラム領域3aに入射したサブビーム11bは光検出器8のディテクタJ上に、ホログラム領域3bに入射したサブビーム11cは光検出器8のディテクタK上に、ホログラム領域3bに入射したサブビーム11cは光検出器8のディテクタL上にそれぞれ回折される。なお、ホログラム領域3cに落ちたサブビーム11b、ホログラム領域3dに落ちたサブビーム11b、ホログラム領域3cに落ちたサブビーム11c、ホログラム領域3dに落ちたサブビーム11cを検出するディテクタを設けてもよい。
光検出器8のディテクタA〜Lから出力される信号をそれぞれSA〜SLとすると、FESは、スポットサイズ法を使用して、次式
FES=SA−SD ・・・(5)
で得られる。記録時のRES(「RES」と記す)は、DPP法を使用して、次式
MPP=(SA+SB)−(SC+SD) ・・・(6)
により求められるMPP信号から、次式
RES=MPP−k’{(SI−SJ)+(SK−SL)} ・・・(7)
により得られる。再生時のRES(「DPD」と記す)はDPD法を使用して、次式
DPD=Ph|(SA+SB)−(SC+SD)| ・・・(8)
(Phは位相比較差を取るという意味)
により得られる。RFは、次式
RF=(SA+SB+SC+SD+SE+SF+SG+SH) ・・・(9)
で得られる。ここで式(7)の係数k’は、基本的には光検出器8のディテクタA〜DとディテクタI〜Lに入射するビームの面積比とビームの強度比の違いを一つのゲインで補正するためのものであるが、集積化ピックアップの製作上発生する各部品寸法・調整等誤差やホログラム素子3の各ホログラム領域の回折効率差により発生するオフセットもあわせて除去されるため、一概に各ディテクタ(受光素子)に入射するビームの面積比および強度比から決定されるものではない。
なお、ここでは、第1ディスク6(CD)記録・再生時のRES、および第2ディスク(DVD)記録時のRESを、DPP法を使用して得ていたが、プッシュプル法を使用し、次式
RES=(SA+SB)−(SC+SD)
の演算から、あるいはDPD法を使用して式(8)の演算からこれらのRESを得てもよい。プッシュプル法あるいはDPD法を使用する場合、3ビーム用回折格子9およびサブビームを受光するためのディテクタI〜Lは不要である。また、これらのRESを3ビーム法を用いて得てもよい。ただし、より精度の高いRESを得るために、DPP法を使用してRESを得ることがより好ましい。
また、ここでは、第2ディスク7(DVD)再生時のRESを、DPD法を使用して得ていたが、3ビーム法、プッシュプル法、DPP法を使用して得てもよい。ただし、第2ディスク7が再生専用DVDである場合には、DPD法を使用してRESを得ることがより好ましい。DPD法がより好ましい理由としては、DPD法はその原理上ディスクの溝深さに関係なく信号が得られる方式であるが、プッシュプル法の場合はディスクの溝深さによっては信号が得られなくなるからである。再生専用DVDの規格書中には、ディスクの溝深さの規定が無いため、場合によってはプッシュプル信号が得られないディスクが流通する恐れがある。なお、記録・再生用のDVDの場合は、規格書中にディスクの溝深さの規定が無いが、別の規定によってプッシュプルの信号が得られるように保証されている。
図4に、光検出器8のサーボディテクタA〜Dの詳細図を示す。図4(a)は第1レーザチップ1使用時(CD記録再生時)を、図4(b)は第2レーザチップ2使用時(DVD記録再生時)を示している。第1レーザチップ1使用時のホログラム素子3のホログラム領域3cに入射するメインビーム10aが回折されて第1サーボディテクタA+Bに入射する光を12、第1レーザチップ1使用時の領域3dに入射するメインビーム10aが回折されて第2サーボディテクタC+Dに入射する光を13、第2レーザチップ2使用時のホログラム素子3の領域3bに入射するメインビーム11aが回折されて第1サーボディテクタA+Bに入射する光を14、第2レーザチップ2使用時のホログラム領域3aに入射するメインビーム11aが回折されて第2サーボディテクタC+Dに入射する光を15とする。
ホログラム素子3は、各戻り光12〜15が図4に図示するように分割線8Mおよび8Nをまたぐように調整される。ホログラム素子3の第1象限のホログラム領域3dおよび第4象限のホログラム領域3bから回折される光の焦点位置は光検出器8のサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7に近くなるように、第2象限のホログラム領域3cおよび第3象限のホログラム領域3aから回折される光の焦点位置は光検出器8のサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7から遠くなるようにホログラム素子3を設定することで、図4(a)、(b)に示すようにサーボディテクタA+BおよびC+Dには常に同じ形状の光が入射する。すなわち、焦点位置を光軸方向で第1および第2ディスクに近くなるように設定した場合にはホログラム素子3の各象限を照射する光の形状と180度回転した形状の光がサーボディテクタA〜Dの受光面に入射し、焦点位置を光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7から遠くなるように設定した場合にはホログラム素子3の各ホログラム領域を照射する光の形状と同一形状の光がサーボディテクタA〜Dの受光面に入射するため、サーボディテクタ8A、8Bおよび8C、8Dには常に同じ形状の光が落ちることになる。このように設定することで、スポットサイズ法を用いて、ホログラム素子3の光軸方向に垂直面内の調整精度が緩和できるだけでなく、CDおよびDVDで光検出器に落ちる光の形状が同じとなる。このため、調整方向が同じにできる。また、スポットサイズ法を用いてのFESの演算も、DVDおよびCDで同じにできる。
図5は、第1レーザチップ1と第2レーザチップ2を使用した際、ホログラム素子3に落ちる戻り光10aと11aの位置を示している。本実施形態では、発光点の異なる2つのレーザチップを有しており、コリメータレンズ4の光軸中心と、第1レーザチップ1の発光点を光軸と垂直面内において一致させている。このため、第2レーザチップ2からの光はコリメータレンズ4に対して斜めに入射することになり、それぞれ第1ディスク6および第2ディスク7で反射されて戻ってきた光はホログラム素子3上でずれることになる。MPP信号およびDPP信号(第2ディスク7(DVD)記録時のRES)は基本的に、第1ディスク6および第2ディスク7の接線方向の分割線(3f・3g)で戻り光を分割した際、第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向の2領域の光強度差が無い状態をジャストトラックと認定する。このため、第2ディスク7(DVD)記録時のRES(DPP信号)のオフセットを無くすためには、戻り光位置によって分割線3f・3gをそれぞれ設定する必要がある。すなわち、第1レーザチップ1の発光点とコリメータレンズ4の光軸中心とが垂直面内において一致しているため、第1レーザチップ1のから出射され第1ディスク6で反射された戻り光はホログラム素子3と同心円の状態となる。そのため、第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向の分割線3eによって分割される第1領域を接線方向に分割する場合はホログラム素子3の中心を通る第1ディスク6および第2ディスク7の接線方向の分割線で第1象限と第2象限に分割すれば、両象限のビーム面積が等しくなる。一方、第2レーザチップ2から出射され第2ディスク7で反射された戻り光はホログラム素子3と同心円とならない。そのため、半径方向の分割線3eによって分割される第2領域を接線方向に分割する場合は第2レーザチップ2の戻り光が描く円の中心を通る接線方向の分割線で第3象限と第4象限に分割することにより両象限の面積を等しくすることができる。これが、分割線3fと3gが半径方向に平行にずれて設定されている理由であり、このように設定することによって第1レーザチップ1と第2レーザチップ2の発光点位置がずれることにより発生するRESのオフセットを無くすことができる。ここで、上記「ビーム面積」とは受光面上における光ビームによって有効に照射されている領域の面積を意味し、この場合は第1ディスク6または第2ディスク7で反射された戻り光によって有効に照射されているホログラム素子3の第1および第2ディスク側の面面上の領域の面積である。
なお、本実施形態では第1レーザチップ1の発光点をコリメータレンズ4の光軸中心と一致させているが、必ずしも片方の発光点がコリメータレンズ4の光軸中心と一致している必要はない。両方の発光点ともコリメータレンズ4の光軸中心と一致していない場合でも、それぞれの戻り光がホログラム素子の受光面上で描く円の中心を通る接線方向の分割線で分割することにより、両象限の面積を等しくすることが可能となる。
また、本実施形態では、ホログラム素子3が、第1象限のホログラム領域3dおよび第4象限のホログラム領域3bから回折される光の焦点位置が、光検出器8のサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7に近くなるように、第2象限のホログラム領域3cおよび第3象限のホログラム領域3aから回折される光の焦点位置が、光検出器8のサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7から遠くなるように設定されている。しかしながら、ホログラム素子3が、第1象限のホログラム領域3dおよび第4象限のホログラム領域3bから回折される光の焦点位置が、光検出器8のサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7から遠くなるように、第2象限のホログラム領域3cおよび第3象限のホログラム領域3aから回折される光の焦点位置が、光検出器8のサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7に近くなるように設定されていても、全く同様の効果が得られる。また、これら4つの回折光の焦点位置を、他の位置関係、例えば、全ての焦点位置がサーボディテクタA〜Dの受光面に対して光軸方向で第1ディスク6および第2ディスク7から遠くなるように設定しても、従来技術と比較すると、FESのオフセットを低減させることができる。
また、本実施形態では、ホログラム素子3の第1領域を第1ディスク6および第2ディスク7の接線方向に分割する分割線3fと、ホログラム素子3の第2領域を第1ディスク6および第2ディスク7の接線方向に分割する分割線3gとが、第1ディスク6および第2ディスク7の半径方向にずれていたが、分割線3fと分割線3gとが一直線上にあって、FESのオフセットを低減させる効果を得ることができる。
また、本実施形態では、波長780nmのメインビーム10aが第2象限のホログラム領域3cで回折された光と、波長650nmのメインビーム11aが第4象限のホログラム領域3bで回折された光とが略同一位置に落ちるように、かつ、波長780nmのメインビーム10aが第1象限のホログラム領域3dで回折された光と、波長650nmのメインビーム11aが第3象限のホログラム領域3aで回折された光とが略同一位置に落ちるように、各ホログラム領域3a〜3dの格子ピッチが設定されている。しかしながら、これら回折光の落ちる位置は、第1レーザチップ1と第2レーザチップ2の発光点位置がずれることにより発生するRESのオフセットを無くすという効果を得るだけであれば、必ずしもこのような設定である必要はない。