JP4067335B2 - 全反射光を利用した測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、全反射光を利用した測定装置に関し、詳しくは、測定用の光ビームを全反射させる複数の測定ユニットを備えた全反射光を利用した測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属中においては、自由電子が集団的に振動してプラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化したものは表面プラズモンと呼ばれている。
【0003】
従来より、この表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置が種々提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、 Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号参照)。
【0004】
上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて液体試料などの被測定物質に接触させられる金属膜等からなる薄膜層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、この誘電体ブロックと薄膜層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる入射光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する受光手段とを備えてなるものである。
【0005】
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
【0006】
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、この金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記受光手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
【0007】
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角θspより表面プラズモンの波数が解ると被測定物質の誘電率が求められる。すなわち表面プラズモンの波数をKsp、表面プラズモンの角周波数をω、cを真空中の光速、εm とεs をそれぞれ金属、被測定物質の誘電率とすると、以下の関係がある。
【0008】
【数1】
Figure 0004067335
すなわち、上記反射光強度が低下する入射角である全反射減衰角θspを知ることにより、被測定物質の誘電率εs 、つまりは屈折率に関連する特性を求めることができる。
【0009】
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、この誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する受光手段とを備えてなるものである。
【0010】
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
【0011】
なお、表面プラズモン共鳴測定装置もしくは漏洩モード測定装置等の全反射を利用した測定装置としては、光を界面に全反射条件が得られる入射角で入射させ、その光によるエバネッセント波の発生により、界面で全反射した光の状態の変化を測定することにより被測定物質の特性分析等を行うに際して、前述の全反射減衰を生じる特定入射角の測定をする装置のほか、複数の波長の光ビームを界面に入射させ、角波長毎の全反射減衰の程度を検出する装置、あるいは、光ビームを界面に入射させるとともに、この光ビームの一部を、界面入射前に分割し、この分割した光ビームを界面で反射した光ビームと干渉させて、この干渉の状態を測定する装置等種々のタイプがある。
【0012】
さらに、多数の試料を同時に測定することができるように、光ビームを、並設された複数の誘電体ブロックと各誘電体ブロック上に形成された薄膜層との界面に入射させ、各界面で全反射された各光ビームを、並設された複数の受光手段で個別に受光して上記界面で全反射した光の状態を検出する測定装置も知られている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記複数の誘電体ブロックを備えた測定装置には、限られたスペース内でより多くの試料の測定を行なえるようにしたいという要請があり、各誘電体ブロックを並設する間隔を狭くして密度高く誘電体ブロックが並ぶように改良するとともに、各受光手段を並設する間隔を狭くして受光手段を密度高く並べ、一定のスペースにより多くの試料を配置して測定する検討が行なわれている。
【0014】
しかしながら、各受光手段が並設される間隔が狭まるにしたがって、特定の受光手段と互いに隣合う受光手段へ入射する光路を通る光ビームから分岐された迷光成分の、この特定の受光手段への入射光量が多くなり、全反射減衰角を測定する際に、この迷光が上記特定の受光手段に入射する光ビームと共に、この特定の受光手段で受光され、全反射減衰による全反射光強度の鋭い低下を表すプロファイルが変動して全反射減衰角の測定精度が低下するという問題がある。
【0015】
また、上記迷光成分が特定の受光手段に入射する光ビームと干渉してこの特定の受光手段の受光面に干渉縞が生じ、全反射減衰角を測定する際に、この干渉縞による光強度の強弱と上記全反射減衰による光強度の減衰とが重なり合い、全反射減衰による全反射光強度の鋭い低下を表すプロファイルが変動して全反射減衰角の測定精度が低下するという問題もある。
【0016】
より具体的には、96個の誘電体ブロックを並設して測定を行なった場合に混入する迷光の光量は、同じ幅に384個の誘電体ブロックを4倍密度高く並設して測定を行なった場合に混入する迷光の光量の約1/5になることが実験で確認されている。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、受光手段への迷光の入射による全反射減衰角の測定精度の低下を抑制することができる全反射光を利用した測定装置を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の全反射光を利用した測定装置は、光ビームを発生する光ビーム発生手段と、光ビームに対して透明な誘電体ブロック、この誘電体ブロックの上面に形成された薄膜層、およびこの薄膜層の表面上に試料を保持する試料保持機構を備えてなる複数の測定ユニットと、光ビームを、各測定ユニットの誘電体ブロックに対して、各誘電体ブロックと薄膜層との界面で全反射条件が得られる入射角で入射させる入射光学系と、各界面で全反射した光ビームを個別に受光し、各光ビームの強度を測定する複数の受光手段を並設してなる光検出手段とを備えてなる全反射光を利用した測定装置であって、光ビーム発生手段が、誘電体ブロックの数より少ない複数の光源を備え、入射光学系が、互いに隣合う受光手段にそれぞれ対応する誘電体ブロックに対して、複数の光源のうち互いに異なる光源からの光ビームを入射させたり、互いに隣合う受光手段に対して、それぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させる光ビーム入射手段を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
前記光ビーム発生手段を、互いに隣合う受光手段に対して入射されるそれぞれの光ビームを発生させる第1の光源と第2の光源とを有するものとし、前記光ビーム入射手段を、第1の光源と第2の光源とを互いに異なるタイミングで点灯させるものとすることができる。
【0020】
前記光ビーム入射手段は、各光受光手段に向かう光ビームの光路を個別に遮断あるいは偏向してこの光ビームを光路から外す光制限手段と、互いに隣合う前記受光手段に対してそれぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させるようにこの光制限手段を制御する制御手段とを備えたものとすることができる。
【0021】
上記測定装置は、上記薄膜層を金属膜からなるものとし、前述の表面プラズモン共鳴による効果を利用して測定を行なうように構成されたものとしてもよい。
【0022】
また、上記測定装置は、上記薄膜層を、誘電体ブロックの前記上面に形成されたクラッド層とこのクラッド層上に形成された光導波層からなるものとし、この光導波層における導波モードの励起による効果を利用して測定を行なうように構成されたものとしてもよい。
【0023】
またさらに、本発明による測定装置においては、受光手段により前記界面で全反射した光ビームの強度を測定して試料の分析を行う種々の方式があり、例えば、光ビームを前記界面で全反射条件が得られる種々の入射角で入射させ、各入射角に対応した位置毎に前記界面で全反射した光ビームの強度を測定して、全反射減衰により発生した暗線の位置(角度)を検出することにより試料分析を行ってもよいし、D.V.Noort,K.johansen,C.-F.Mandenius, Porous Gold in Surface Plasmon Resonance Measurement, EUROSENSORS XIII, 1999, pp.585-588 に記載されているように、複数の波長の光ビームを前記界面で全反射条件が得られる入射角で入射させ、各波長毎に前記界面で全反射した光ビームの強度を測定して、各波長毎の全反射減衰の程度を検出することにより試料分析を行ってもよい。
【0024】
また、P.I.Nikitin,A.N.Grigorenko,A.A.Beloglazov,M.V.Valeiko,A.I.Savchuk,O.A.Savchuk, Surface Plasmon Resonance Interferometry for Micro-Array Biosensing, EUROSENSORS XIII, 1999, pp.235-238 に記載されているように、光ビームを前記界面で全反射条件が得られる入射角で入射させるとともに、この光ビームの一部を、この光ビームが前記界面に入射する前に分割し、この分割した光ビームを、前記界面で全反射した光ビームと干渉させて、その干渉後の光ビームの強度を測定することにより試料分析を行ってもよい。
【0025】
また、誘電体ブロックは、前記光ビームが入射および射出される面と、前記薄膜層が形成される面とを全て有する1つのブロックとして形成されたものであってもよいし、前記光ビームが入射および射出される面を有する部分と、前記薄膜層が形成される面を有する部分の2つが、屈折率マッチング手段を介して接合されてなるものであってもよい。
【0026】
複数の測定ユニットは、1個ずつ個別に形成されたものであってもよいし、1次元もしくは二次元に配列され一体的に形成されていてもよい。また、測定ユニットが、薄膜層の表面上に試料を連続的に供給すると共に、この供給された試料を連続的に排出する試料給排手段を備えていてもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明の全反射光を利用した測定装置によれば、光ビーム発生手段を、誘電体ブロックの数より少ない複数の光源を備えたものとし、入射光学系を、互いに隣合う受光手段にそれぞれ対応する誘電体ブロックに対して、複数の光源のうち互いに異なる光源からの光ビームを入射させて、特定の受光手段と隣合う受光手段に入射する光ビームの光路から外れた迷光成分とこの特定の受光手段に入射する光ビームとの干渉性を低下させ、干渉縞の発生を抑制したり、あるいは、複数の受光手段のうち互いに隣合う受光手段に対して、それぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させる光ビーム入射手段を備えるようにして、特定の受光手段と隣合う受光手段に入射する光ビームの光路から外れた迷光成分のこの特定の受光手段への入射光量を低減するようにしたので、受光手段への迷光成分の入射による全反射減衰角の測定精度の低下を抑制することができる。
【0028】
また、光ビーム発生手段を、互いに隣合う受光手段に対して入射されるそれぞれの光ビームを発生させる第1の光源と第2の光源とを有するものとし、光ビーム入射手段を、第1の光源と第2の光源とを互いに異なるタイミングで点灯させるものとしたり、あるいは、光ビーム入射手段を、各光受光手段に向かう光ビームの光路を個別に遮断あるいは偏向してこの光ビームを光路から外す光制限手段と、互いに隣合う前記受光手段に対してそれぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させるようにこの光制限手段を制御する制御手段とを備えるようにすれば、特定の受光手段と隣合う受光手段に入射する光ビームの光路から外れてこの特定の受光手段へ入射する迷光成分のこの特定の受光手段への入射光量をより確実に低減することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の全反射光の状態を測定する表面プラズモン測定装置の概略構成を示す側面図であり、図2は上記表面プラズモン測定装置の平面図、図3は測定プレートの斜視図、図4は測定プレートの断面図、図5は入射角と受光手段で受光した光ビームの反射光強度との関係を示す図、図6は干渉縞による濃淡と全反射減衰による暗線とが重なった光強度パターンを示す図、図7は受光手段上に干渉縞による濃淡が生じたときの反射光強度プロファイルを示す図、図8は迷光成分によって全体的に強度が高い方向にシフトされた反射光強度プロファイルを示す図である。
【0030】
本発明の実施の形態の表面プラズモン測定装置は、光ビームを発生する光ビーム発生手段10、光ビームに対して透明な誘電体ブロック52、この誘電体ブロック52の上面に形成された薄膜層14、およびこの薄膜層14の表面上に試料を保持する試料保持機構53を備えてなる複数の測定ユニット55(55a〜55e)が並べられて形成された測定プレート50(図2のII−II断面を示す図4参照)と、光ビームを、各測定ユニット55(55a〜55e)の誘電体ブロック52(52a〜52e)に対して、誘電体ブロック52と薄膜層14との界面54で全反射条件が得られる入射角で入射させる入射光学系20と、各界面54(54a〜54e)で全反射した光ビームを、個別に受光して各光ビームの強度を測定する複数の受光手段30(30a〜30e)を並設してなる光検出手段35とを備え、光ビーム発生手段10が、誘電体ブロック52の数より少ない複数の光源であるレーザ光源9、レーザ光源8およびレーザ光源7を備え、入射光学系20が、互いに隣合う受光手段30にそれぞれ対応する誘電体ブロック52(52a〜52e)に対して、レーザ光源9、レーザ光源8およびレーザ光源7のうち互いに異なる光源からの光ビームを入射させる。すなわち、受光手段30a、受光手段30c、受光手段30eにそれぞれ対応する誘電体ブロック52a、誘電体ブロック52c、誘電体ブロック52eに対して第1の光源であるレーザ光源9およびレーザ光源7からの光ビームを入射させ、受光手段30b、受光手段30dにそれぞれ対応する誘電体ブロック52b、誘電体ブロック52dに対して第2の光源であるレーザ光源8からの光ビームを入射させる。
【0031】
各測定ユニット55は、試料保持機構53で形成された複数のウェル(液溜め)51(51a〜51e)に測定対象となる試料15を溜めて保持する。測定ユニット55は例えば透明樹脂等からなり、ウェル51は円錐台形状である。このウェル51の底面が誘電体ブロック52の上面となり、この誘電体ブロック52の上面に金属膜12およびセンシング物質13がこの順に積層されて薄膜層14が形成されている。そして、この誘電体ブロック52と上記金属膜12との界面54に測定用の光ビームLが入射されるようになっている。なお、ここでは、測定ユニット55を構成する誘電体ブロック52と試料保持機構53とが一体化されて形成されている。
【0032】
また、測定プレート50は、複数の測定ユニット55(55a〜55e)が線状に並べられて(図中矢印Y軸方向に並べられて)一体化されたものであり、この測定プレート50が上記Y軸方向と直交する方向(図中矢印X軸方向)に複数並べられた状態で支持台(図示は省略)上に載置されこれらの測定プレートが逐次移送されて測定に供される。なお、図中に示すX軸とY軸とは水平面に平行な軸であり、Z軸は上記水平面に直交する鉛直方向の軸を示すものである。
【0033】
入射光学系20は、光ビーム発生手段10のレーザ光源9から細径の平行光として射出された光ビームLを分岐するハーフミラー21aおよび分岐された光ビームLを反射させるミラー21c、光ビーム発生手段10のレーザ光源8から細径の平行光として射出された光ビームLを分岐するハーフミラー22dおよび分岐された光ビームLを反射させるミラー22b、上記分岐された光ビームLおよびレーザ光源7から細径の平行光として射出された光ビームLの光束の径を図1の紙面と平行なX−Z平面でのみ拡大するシリンドリカルビームエキスパンダ24、シリンドリカルビームエキスパンダ24によって1方向にのみ(X−Z平面でのみ)径が拡大された光ビームを、X−Z平面でのみ集光するシリンドリカルレンズ26とを備え、光源10から出射された光ビームLを各測定ユニット55の界面54に並列的に入射させる。すなわち、レーザ光源9から射出されハーフミラー21aを透過した光ビームは誘電体ブロック52aに入射し、レーザ光源9から射出されハーフミラー21aで分岐されミラー21cで反射された光ビームは誘電体ブロック52cに入射し、レーザ光源8から射出されハーフミラー22dを透過した光ビームは誘電体ブロック52dに入射し、レーザ光源8から射出されハーフミラー22dで分岐されミラー22bで反射された光ビームは誘電体ブロック52bに入射し、レーザ光源7から射出された光ビームは誘電体ブロック52eに入射する。このとき、各光ビームLは、それぞれの界面54に対して、種々の入射角成分を持った状態で入射することになる。上記各界面54で反射された光ビームは再びX−Z平面でのみ発散され1方向に径が拡大されつつ誘電体ブロック52から射出される。
【0034】
なお、界面54に対して種々の角度で入射する入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そのため、界面54で全反射した光ビームには、種々の反射角で全反射された成分が含まれることになる。なお、上記入射光学系20は、光ビームを界面54上にデフォーカス状態で入射させるように構成してもよい。そのようにすれば、界面54上のより広い領域において光ビームLが全反射されるので、全反射減衰の状態の検出誤差が平均化されて全反射解消角の測定精度を高めることができる。
【0035】
なお、各レーザ光源9、8、7は、直線偏光である各レーザ光源から射出された光ビームがp偏光状態で界面54に入射するように配設されている。その他、光ビームを界面54に対してp偏光で入射させるには波長板で光ビームの偏光の向きを制御するようにしてもよい。
【0036】
受光手段30a〜30eの各々は、多数のフォトダイオードが線状に並べられたラインセンサーから構成されており、フォトダイオードの並び方向は、光ビームが界面54で反射され誘電体ブロック52から射出されてX−Z平面内の1方向に径が拡大される方向である。
【0037】
以下、上記構成の表面プラズモン測定装置による試料分析について説明する。
【0038】
光ビーム発生手段10の各レーザ光源から射出された光ビームLは、入射光学系20を通して、誘電体ブロック52と金属膜12との界面54上に収束された状態で入射する。界面54で全反射された光ビームLは、誘電体ブロック52から射出され受光手段30a〜30eによって受光される。各受光手段30a〜30eそれぞれには、多数のフォトダイオードが上記光ビームLの発散方向に線状に並んで形成されているので、上記界面54において種々の反射角で全反射された光ビームの各角度における成分が、線状に並ぶそれぞれ異なるフォトダイオードで受光されることになる。これにより、各受光手段30a〜30eそれぞれから、各フォトダイオードによって検出された上記光ビームの強度分布を示す信号が出力される。
【0039】
界面54に特定入射角θSPで入射した上記光ビームの成分は、金属膜12と液体試料15との界面54に表面プラズモンを励起させるので、この角度で入射した光については反射光強度が鋭く低下する。つまり上記特定入射角θSPが全反射解消角であり、この角度θSPにおいて反射光強度は極小値を示す。この反射光強度が低下する領域は、発散する反射光ビーム中の暗線として観察される。ウェル51の底面の金属膜12に接している物質の誘電率つまりは屈折率が変化すると、それに応じて反射光強度が極小値を示す角度が変動して全反射光の状態の変化が検出される。
【0040】
光ビームLの界面54への入射角θと各受光手段で受光した光ビームの反射光強度Iとの関係は、図5に示すように、特定入射角θSPのみに極小値を有する反射光強度プロファイルFを示す。試料液を滴下後、光ビームの反射光強度プロファイルをモニタし、暗線の変化を観察することにより、上記のようにして全反射光の状態を観察することができる。
【0041】
ここで、特定の受光手段に入射する光ビームと、この特定の受光手段に隣合う受光手段へ入射する光路から外れた迷光成分とによる、この特定の受光手段の受光面上での干渉縞の発生を抑制する作用について説明する。
【0042】
特定の受光手段を受光手段30bとし、この受光手段30bと隣合う受光手段である受光手段30aおよび受光手段30cに入射する光路から外れて迷光として受光手段30bに入射する迷光成分EaおよびEcとして、この迷光成分EaおよびEcと、所定の光路を通して受光手段30bに入射する光ビームLbとが受光手段30bの受光面上で干渉して干渉縞が発生したとすると、図6に示すように受光手段30bの受光面上には干渉縞による濃淡81と全反射減衰による暗線82とが重なった光強度パターン83が生じ、受光手段30bに基づいて作成された光ビームの界面54への入射角θと受光手段30bで受光した光ビームの反射光強度Iとの関係は、図7に示すように、全反射減衰により光強度が低下した反射光強度プロファイルF1に干渉縞による光強度の強弱パターンのプロファイルが重畳された反射光強度プロファイルF2で示され、特定入射角θSPの特定が難しくなり全反射減衰角の測定精度が低下するおそれがある。なお、光強度パターン83に重なり合う位置に上記多数のフォトダイオードが線状に並べられたラインセンサーが位置する。
【0043】
しかしながら、本実施の形態においては、光ビームLbと迷光成分Eaおよび光ビームLbと迷光成分Ecとは異なるレーザ光源から発せられた干渉性が極めて低い光なので、干渉縞は殆ど発生することなく、迷光成分EaおよびEcが光ビームLbとともに受光手段30bで受光されても、図8に示すように、全反射減衰により光強度が鋭く低下した光ビームLbの反射光強度プロファイルF1が、迷光成分EaおよびEcによって全体的に強度が高い方向にシフトされる影響だけを受けた反射光強度プロファイルF3として測定され、反射光強度プロファイルが殆ど変形しないので、全反射減衰角の測定精度の低下を抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態においては、測定プレート50は測定ユニット55(55a〜55e)が並べられて形成されたものとしたが、必ずしも各測定ユニット、すなわち各誘電体ブロックはY軸方向に正確に規則的に並べる必要はなく、各誘電体ブロックが並ぶY軸方向のピッチ、Z方向位置、およびX方向位置等がずれて配置されていても上記全反射減衰角の測定精度の低下を抑制する効果を得ることができる。
【0045】
また、互いに隣合う受光手段に対して、それぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させる光ビーム入射手段を備えるようにしてもよい。具体的には、図9に示すように、光ビーム入射手段の第1の光源となるレーザ光源9およびレーザ光源7と、光ビーム入射手段の第2の光源となるレーザ光源8とを互いに異なるタイミングで点灯させる光ビーム入射制御部60をさらに備えるようにしてもよい。すなわち、光ビーム入射制御部60によって第1の光源が点灯され、受光手段30a、受光手段30cおよび受光手段30eに光ビームLa、LcおよびLeが入射されるときには、第2の光源が点灯されることなく受光手段30bおよび受光手段30dに光ビームLbおよびLdが入射されないように制御される。したがって、例えば、受光手段30cに光ビームLcが入射するときに、この受光手段30cと隣合う受光手段30bおよび受光手段30dに入射する光路から外れて迷光として受光手段30cに入射する迷光成分EbおよびEdが生じることがないので、光ビームLcの界面54への入射角θと受光手段30cで受光した光ビームの反射光強度Iとの関係を表す反射光強度プロファイルが上記のように全体的に強度が高い方向にシフトする影響も取り除かれて、反射光強度プロファイルが殆ど変形することなく、全反射減衰角の測定精度の低下をさらに抑制する効果を得ることができる。なお、光ビーム入射制御部60によって第2の光源が点灯され、受光手段30bおよび受光手段30dに光ビームLbおよびLdが入射されるときには、第1の光源が点灯されることなく受光手段30a、受光手段30cおよび受光手段30eに光ビームLa、LcおよびLeが入射されないように制御される。
【0046】
また、上記光ビーム入射制御部の替わりに互いに隣合う受光手段に対して、それぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させる光ビーム入射手段として、図10に示すように、各光受光手段30に向かう各光ビームの光路を個別に遮断あるいは偏向してこの光ビームを各光路から外すシャッタや音響光学素子等からなる光制限手段70と、互いに隣合う受光手段に対してそれぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させるように光制限手段70を制御する制御手段75とを備えるようにしてもよい。このようにすれば、制御手段75で光制限手段70を制御して、互いに隣合う受光手段に対して、それぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させて測定を行なうことができる。これにより、特定の受光手段と互いに隣合う受光手段へ入射する光路を通る光ビームから分岐された迷光成分が、この特定の受光手段に入射することなく全反射光の状態の測定を行なうことができ、上記と同様に、各受光手段で受光された光ビームに基づいて作成された入射角θと光ビームの反射光強度Iとの関係を表す反射光強度プロファイルが殆ど変形しないので、全反射減衰角の測定精度の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、上述の表面プラズモン測定装置において、測定ユニットの一部の構成を変更することにより漏洩モードセンサーとすることができる。以下、本発明の測定装置を漏洩モードセンサーとした場合の実施形態について説明する。
【0048】
図11は、漏洩モードセンサー用の測定プレート59に用いられる測定ユニット56(56a〜56e)の一例を示す図である。なおこの図11において、表面プラズモン測定装置用の測定プレートを示す図4中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する。
【0049】
測定プレート59の各測定ユニット56(56a〜56e)は、薄膜層19として、誘電体ブロック52上にクラッド層17と光導波層18とがこの順に形成されている。それ以外の構成は上述の表面プラズモン測定装置と同一である。
【0050】
上記各測定ユニット56の誘電体ブロック57(57a〜57e)は、例えば合成樹脂やBK7等の光学ガラスを用いて形成することができる。一方クラッド層17は、この誘電体ブロック57よりも低屈折率の誘電体や、金等の金属を用いて薄膜状に形成されている。また光導波層18は、クラッド層17よりも高屈折率の誘電体、例えばPMMAを用いてこれも薄膜状に形成されている。クラッド層17の膜厚は、例えば金薄膜から形成する場合で36.5nm、光導波層18の膜厚は、例えばPMMAから形成する場合で700nm程度とされる。
【0051】
上記構成の漏洩モードセンサーにおいて、光ビーム発生手段10から射出された光ビームを誘電体ブロック57を通して各誘電体ブロック57とクラッド層17との各界面58(58a〜58e)に対して全反射角以上の入射角で入射させると、光ビームの多くの成分が界面58で全反射するが、クラッド層17を透過して光導波層18に特定入射角で入射した特定波数の光は、この光導波層18を導波モードで伝搬されるようになる。こうして導波モードが励起されると、特定入射角で入射した入射光のほとんどが光導波層18に取り込まれるので、上記界面58に特定入射角で入射し、全反射された光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。光導波層18における導波光の波数は、この光導波層18上の液体試料15の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角である全反射解消角の変動を知ることによって、特定物質の有無を得ることができる。
【0052】
なお、上述の各実施形態の測定装置は、光源からの光ビームを界面に対して種々の角度で入射させ、この界面からの反射光を測定し暗線となる入射角度の変化から全反射減衰の状態を測定して被検体とセンシング物質との結合状態を得るものであるが、光ビームの入射角度を界面で全反射条件を満たす所定の角度とし、種々の波長を有する光ビームを入射させる、もしくは入射させる光ビームの波長を変化させ、界面からの反射光を測定し、各波長毎の全反射減衰の状態により被検体とセンシング物質との結合状態を得るようにしてもよい。
【0053】
なお、上記表面プラズモン測定装置を、全反射光の状態を光の位相を利用して測定する表面プラズモン測定装置とすることもできる。
【0054】
すなわち、図12に示すように、測定ユニット340a〜340eの集合体である測定用プレート350の誘電体ブロック342a〜342eの光ビーム入射面U側に、光ビーム発生手段である光源334と入射光学系320とを配設し、誘電体ブロック342a〜342eの光ビーム射出面V側に受光手段であるCCD360a〜360eを配設する。また、光源334からCCD360a〜360eに至る光ビームの光路中の入射光学系320には、コリメータレンズ350、光ビーム分岐光学系359、後述する干渉光学系、集光レンズ355a〜355eおよびアパーチャー356a〜356eを配設する。
【0055】
上記干渉光学系は、偏光フィルタ351a〜351e、ビームスプリッタ352a〜352e、ビームスプリッタ353a〜353eおよびミラー354a〜354eにより構成されている。
【0056】
さらに、CCD360a〜360eは信号処理部361に接続されており、信号処理部361は表示部362に接続されている。
【0057】
以下、上記表面プラズモン測定装置における試料の測定について説明する。なおここでは、測定用プレート350の測定ユニット340a〜340eのうち、CCD360aに整合する状態とされた測定ユニット340aを例に取って説明を行なうが、その他の測定ユニットにおいても測定は同様になされる。
【0058】
光源334が点灯されてこの光源334から光ビーム330が発散光の状態で出射される。この光ビーム330は、コリメータレンズ350により平行光とされ、光ビーム分岐光学系359によって各測定ユニット340a〜340eに向かう光路に分岐された後、偏光フィルタ351aに入射する。偏光フィルタ351aを透過して界面141aに対してp偏光で入射するようにされた光ビーム330は、ビームスプリッタ352aにより一部がレファレンス光ビーム330Rとして分割され、ビームスプリッタ352aを透過した残りの光ビーム330Sは界面141aに入射する。この界面141aで全反射した光ビーム330S、およびミラー354aで反射したレファレンス光ビーム330Rはビームスプリッタ353aに入射して合成される。合成された光ビーム330Gは集光レンズ355aにより集光され、アパーチャー356aを通過してCCD360aによって検出される。このとき、CCD360aで検出される光ビーム330Gは、光ビーム330Sとレファレンス光ビーム330Rとの干渉の状態に応じて干渉縞を発生させる。
【0059】
試料15中で、特定物質とセンシング物質との結合状態に応じてセンシング物質の屈折率が変化すると、界面で全反射した光ビームとリファレンス光ビームとの干渉状態が変化するため、干渉縞の変化に応じて結合を有無を検出することができる。
【0060】
信号処理部361は、以上の原理に基づいて上記反応の有無を検出し、その結果が表示部362に表示される。
【0061】
このように構成された表面プラズモン測定装置に対しても、上記全反射減衰角の測定精度の低下を抑制する手法を適用することができる。すなわち、光ビーム発生手段を、誘電体ブロックの数より少ない複数の光源を備えたものとし、入射光学系を、互いに隣合う受光手段にそれぞれ対応する誘電体ブロックに対して、複数の光源のうち互いに異なる光源からの光ビームを入射させて、特定の受光手段へ入射する光ビームと、この特定の受光手段に隣合う受光手段へ入射する光ビームの光路から外れた迷光成分との干渉による干渉縞の発生を抑制したり、あるいは、複数の受光手段のうち互いに隣合う受光手段に対して、それぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させる光ビーム入射手段を備えるようにして、全反射減衰角の測定精度の低下を抑制することができる。
【0062】
なお、上記光の位相を利用して全反射光の状態を測定する表面プラズモン測定装置の構成を上記と同様に漏洩モードセンサーに利用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表面プラズモン測定装置の概略構成を示す側面図
【図2】表面プラズモン測定装置を示す平面図
【図3】測定プレートの斜視図
【図4】測定プレートのII−II断面を示す図
【図5】入射角θと受光手段で受光した光ビームの反射光強度Iとの関係を示す図
【図6】干渉縞による濃淡と全反射減衰の暗線とが重なった光強度パターンを示す図
【図7】受光手段上に干渉縞による濃淡が生じたときの反射光強度プロファイルを示す図
【図8】迷光成分によって全体的に強度が高い方向にシフトされた反射光強度プロファイルを示す図
【図9】互いに隣合う受光手段に対してそれぞれ異なるタイミングで光ビームを入射させる光ビーム入射手段を備えた表面プラズモン測定装置を示す図
【図10】光制限手段とこの光制限手段を制御する制御手段とを備えた表面プラズモン測定装置を示す図
【図11】漏洩モードセンサー用の測定プレートに用いられる測定ユニットを示す図
【図12】光の位相により全反射光の状態を測定する表面プラズモン測定装置を示す図
【符号の説明】
10 光ビーム発生手段
14 薄膜層
20 入射光学系
30 受光手段
50 測定プレート
52 誘電体ブロック
53 試料保持機構
54 界面
55 測定ユニット

Claims (1)

  1. 光ビームを発生する光ビーム発生手段と、
    前記光ビームに対して透明な誘電体ブロック、この誘電体ブロックの上面に形成された薄膜層、およびこの薄膜層の表面上に試料を保持する試料保持機構を備えてなる複数の測定ユニットと、
    前記光ビームを、前記各測定ユニットの誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で全反射条件が得られる入射角で入射させる入射光学系と、
    前記各界面で全反射した光ビームを個別に受光し、該光ビームの強度を測定する複数の受光手段を並設してなる光検出手段とを備えてなる全反射光を利用した測定装置であって、
    前記光ビーム発生手段が、前記誘電体ブロックの数より少ない複数の光源を備え、前記入射光学系が、互いに隣合う前記受光手段にそれぞれ対応する誘電体ブロックに対して、前記複数の光源のうち互いに異なる光源からの光ビームを入射させるものであることを特徴とする全反射光を利用した測定装置。
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