JP4067167B2 - レーザ共振器のビーム軸ずれ検出装置およびビーム軸位置制御装置 - Google Patents

レーザ共振器のビーム軸ずれ検出装置およびビーム軸位置制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ装置において光軸安定化のために行う制御方法および装置に関する。特に、高出力レーザ装置における能動的光軸調整方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高出力レーザ装置では光の質を高めるため共振器における光軸の安定性が問題となっていた。この目的で、共振ミラーホルダをインバーなどの低膨張率材料で支持してミラーの相対的角度を保持するなどの工夫がなされていた。しかし近時、低次ガウシアンビームなど、さらに高品質のレーザビームに対する要求が盛んになってきており、このような高品質レーザを得るためには僅かなミラー角度の変位も無視できないため、作動中に制御する能動的な機構を用いなくては必要とされる光軸安定性が得られなくなった。
【0003】
従来、能動的光軸調整方法としてレーザ出力をフィードバックする方法がよく用いられる。特開平9−153654号公報にも、間欠的にミラー角度を微少変位させてレーザ出力を観測して、より大きな出力が得られる方向にミラー角度を調整する方法が開示されている。
【0004】
しかし、上記開示方法では、光軸が適正な位置にある場合にも強制的にミラー角度を変動させてレーザ出力が最大になる位置を観測するので、制御する目的でかえって不要な外乱を与えて出力と光軸に揺らぎを生じさせるという問題があった。
さらに、レーザ出力を決定するものには光軸位置の不適正以外にも種々の要因があるので、レーザ出力のみに頼って光軸位置調整すると結果的に正しい光軸位置からずれてしまう可能性もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、レーザ装置のレーザ共振器におけるレーザビーム軸の位置ずれを検出する装置を提供することであり、またレーザビーム軸を適正位置に保持するための制御装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ共振器のビーム軸ずれ検出装置は、レーザ共振器における共振器ミラーの間に設置されるアパーチャにおいて、少なくとも3片の光検出板をビーム孔の周辺にほぼ等間隔に配設して光検出板の先端でアパーチャの開孔形状を調整できるようにし、該光検出板の先端縁には反射面が形成されていてレーザ光が照射して該光検出板で反射するときに光センサがこれを検出するようになっていて、各光センサの測定出力を比較することにより、レーザビーム軸がアパーチャ中心からずれた方向を知ることを特徴とする。
【0007】
レーザビームの質を向上させるため、共振器ミラー間にアパーチャを介設したレーザ発振器構造が使用される。共振器ミラー間を往復して増幅するレーザ光は軸中心から離れた成分をアパーチャにより除去して共振しビームのエミッタンスを向上させる。正常時には共振するビームの軸はアパーチャの中心孔の真ん中に位置するが、経時により共振器ミラーの位置や姿勢が変化したり、その他何らかの原因で共振器ミラー間のビーム軸位置がずれ出力が変化したり出力軸が狂ったりする場合が生ずる。
このような場合には、ビーム軸位置がアパーチャの中心孔からずれて偏心方向の縁に当たり、さらには孔から外れて共振を継続できなくなる。
【0008】
従来のビーム軸ずれ検出装置は、共振しているビームが孔の中心からずれると孔周縁を部分的に照射して加熱することに注目し、孔周縁に幾つかに分割した光検出板を配設して光検出板相互の温度差を観測することにより、ビームの変位方向を検出するものある。光検出板の温度測定は熱電対や抵抗式温度検出端などを用いて簡便に行うことができる。
【0009】
また、光検出板におけるレーザビーム軸の偏向方向を光検出板の温度上昇により検出する代わりに、光学的に検出することもできる。
本発明のビーム軸ずれ検出装置は、従来発明と同じように光検出板をアパーチャ開孔周縁部に配設するが、光検出板のビーム入射方向に面した先端縁に所定の傾きを持った反射面を形成し、各反射面で反射する光を受ける光センサを各反射面のそれぞれに対応して配設したものである。
レーザビーム軸がアパーチャ中心からずれて光検出板の幾つかにレーザ光が照射すると光検出板からの反射光強度に差が生ずるので、その偏差を検出してビーム軸のずれを知ることを特徴とする。
このような構成とすることにより応答性の良いビーム軸ずれ検出装置を得ることができる。
【0010】
ビーム変位方向をアパーチャ表面位置の2次元平面上で観測するためには、少なくとも3個の光検出板を取り付ける必要がある。
また、4枚の光検出板を上下左右に互いに直交するように配設すると、検出結果が直接直交座標上のビーム軸変位方向を表すことになるので信号処理が容易になる。
なお、光検出板の数や配置は目的に応じて適当に選択できることは言うまでもない。
【0011】
また、光検出板の取付位置を調整する機構を備え、アパーチャの開孔形状を調整できるようにしてもよい。
レーザ発振条件により必要となるアパーチャ径および形状が変化するため、光検出板の端をアパーチャ孔の壁として位置調整することにより要求に対応できるようにすると、条件に合わせて多数のアパーチャを準備する費用を省き、条件が変わる度に本体を取り替える手間を省くことができる。
特に、レーザビームの形状を変化させて横モードを適当に制御するために使用することができる。
【0012】
なお、光検出板を取付けるアパーチャベースに冷却水を循環させて冷却するようにしてもよい。
特に高出力レーザ装置では共振器ミラー間で共振するビームのエネルギが極めて大きいので、ビーム軸が変位してアパーチャ周縁の部品に照射するとたちまち過熱して溶融したり変形したりする。このため、ビームが直接照射する可能性がある部分には銅などの熱伝導率が高い材料を用いるが、強制冷却手段によりアパーチャの寿命を延ばすことができる。
しかも、温度変化を介して光照射部位を検出する場合には、冷却水で効率よく除熱して蓄熱させないようにすることにより応答性を向上させることができる。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ共振器のビーム軸位置制御装置は、1対の共振器ミラーを備えこの共振器ミラーの間にアパーチャを備えたレーザ共振器において、アパーチャにビーム軸ずれ検出装置を備え、共振器ミラーにミラー姿勢調整機構を備えて、共振器ミラーの間を共振する共振ビームのビーム軸がアパーチャ中心からずれた方向を検知し、ビーム軸のずれ方向に基づいてビーム軸がアパーチャの中心に寄るように共振器ミラーの姿勢を制御することを特徴とする。
【0014】
レーザ装置におけるレーザ出力は共振器におけるビーム軸のずれにより変化するが、レーザ出力変化の要因はこの他にもいろいろあって例えばヨウ素レーザではヨウ素供給量の変動なども大きな原因となる。したがって、ビーム軸の位置調整によりレーザ出力を制御しようとすると、ビーム軸が適切な位置にあった場合にも共振器ミラーを動かして結果的に光軸を不適正な位置に動かすことになる場合がある。
本発明のビーム軸位置制御装置は、ビーム軸の変位を直接に検出してこれを修正するから、光軸位置を高い精度で保持することができ、また他の原因で出力変動があった場合にビーム軸を不用意に移動させて調整を狂わせるようなことがない。
【0015】
ーム軸位置制御装置には、上記の温度検知方式あるいは光検知方式のビーム軸ずれ検出装置を使用することができる。
温度検知方式のビーム軸ずれ検出装置を用いて構築したビーム軸位置制御装置はレスポンスがやや遅いきらいはあるが簡単で安価な制御系を備え、ビーム軸を適正に維持する装置となる。
一方、本発明のように、光検知方式のビーム軸ずれ検出装置を用いた場合は、機構がやや複雑になるが応答の速い制御を行い、ビーム軸を適正に維持する装置となる。
【0016】
また、さらにレーザ出力測定装置を備えて、発振開始時にはレーザ出力測定信号に基づいてビーム軸位置調整を行い、所定水準以上のレーザ出力が得られた後に、ビーム軸ずれ検出信号に基づいたビーム軸位置調整を行うようにしてもよい。
レーザ発振直後はレーザ出力の測定値に基づいて共振器ミラーを段階的に変化させ、光軸位置の粗調整を行うことにより速やかに所定レベルのレーザ出力を得るようにする。その後、ビーム軸のアパーチャ中心からのずれを検知してずれ量が所定量より小さくなるようにミラー角度を変化させて光軸の微調整を行うようにすることができる。
なお、光軸微調整により一旦調整が終了した後では、ビーム軸のずれがあるレベル以上になったときのみ修正動作を行うようにすることが好ましい。制御動作が余計な外乱となる場合があるからである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
図1は従来例のレーザ装置のビーム軸位置制御装置を表すブロック図、図2は従来例のビーム軸ずれ検出装置の立面図、図3はその断面図、図4は一部拡大断面図、図5は本発明のビーム軸ずれ検出装置の第の実施例を示す側面断面図、図6は制御手順を示す流れ図、図7は本発明のビーム軸位置制御装置の第2の実施例を表すブロック図、図8はビーム軸ずれ検出装置の作動原理を説明する線図である。
【0018】
【実施例1】
従来例のビーム軸位置制御装置が用いられるレーザ共振器装置は、レーザ媒質1とこれを挟んで配設される全反射ミラー2と出力ミラー3からなり、発生したレーザ光4が全反射ミラー2と出力ミラー3の間を往復する間にレーザ媒質との相互作用により増幅して出力ミラー3から射出される。全反射ミラー2と出力ミラー3の少なくとも一方は凹面鏡であって、光軸を厳密に一致させて対向させることにより、両者の間を往復するレーザ光4を共振器空間に閉じ込めて十分な増幅作用を与える機能を有する。
【0019】
レーザ媒質1と全反射ミラー2の間およびレーザ媒質1と出力ミラー3の間にはそれぞれアパーチャ6、7が介装されていて、共振しているレーザビーム4のうち開孔より外側にはみ出る部分を除去して高次横モード成分の発振を抑制しビーム質を向上させる。
また、開孔の形状を適当に選択することによってレーザビームの断面形状を変更させて出力レーザの横モードを制限することも可能である。
なお、アパーチャ6、7には共振器内のレーザビームが当たるので、過熱のため変形したり溶融する場合があるので、内部にダクトを設けて冷水等を流通させて冷却する。
【0020】
アパーチャ6、7にはそれぞれレーザビームが照射していることを検知するための光検出板8、9が取り付けられている。光検出板8、9はアパーチャ6、7の中心開孔部の周囲に配設されていて、ビーム軸が偏心したときにどの光検出板にビームが照射するかを知ることにより偏心方向が分かる。
また、出力レーザはビームスプリッタ5を通るときに所定割合が偏向してパワーメータ10に射入する。
全反射ミラー2の背面には1軸アクチュエータ11が2個ないし4個設けられていて、ミラー面の向きとミラー位置を調整できるようになっている。出力ミラー3の背面にも2個ないし4個の1軸アクチュエータ12が設けられていて、同じ機能を果たす。
【0021】
上記の光検出板8、9とパワーメータ10の検出信号はデータロガー13に集約されて、適当な演算によりレーザ軸のずれ方向やレーザ出力レベルの測定値に変換されてコンピュータ14に送られる。コンピュータ14はこれらの測定値に基づいて予め決められた手順に従い制御信号を生成してコントローラ15に送る。コントローラ15は全反射ミラー2と出力ミラー3のアクチュエータ11、12を制御して、レーザ共振器におけるレーザ軸を最適な位置に保持させるようにする。
【0022】
図2は従来例のビーム軸ずれ検出装置の立面図、図3は反射光ダンパと共に示したビーム軸ずれ検出装置の断面図、図4は一部拡大断面図である。
このビーム軸ずれ検出装置は、ビーム軸が偏心していずれかの光検出板に当たるとレーザエネルギを受けて昇温するので、これを温度検出端で検知するものである。
レーザ媒質1と全反射ミラー2の間および出力ミラー3の間に設けられるアパーチャ6、7はいずれも同じ構成を有する。
【0023】
アパーチャ6、7は、アパーチャベース20とその表面に等間隔に取り付けられる4枚の光検出板8、9と光検出板の間に被さって周縁にできる凹部を補充する4枚の補助遮蔽板22からなり、支持棒24でレーザ共振器本体構造に固定されている。アパーチャベース20は中心に孔26を有し、光検出板8、9の先端と補助遮蔽板22の先端が突き合わされて形成する孔が共振ビーム4の通るアパーチャ開孔27となる。
光検出板8、9と補助遮蔽板22はそれぞれアパーチャベース20にネジ止めするための長孔もしくは切れ込みを有し、ネジ止めする位置を調整してアパーチャ開孔27の形状を決め、共振ビームの形状を決定することができる。
【0024】
アパーチャベース20の内部にはトーラス状の冷却ダクト25が設けられていて、冷却水がコネクタ23を介してダクト内を循環し、アパーチャ開孔27の周囲にレーザ光が当たって伝達する熱を除去する。
光検出板8、9は、アパーチャ開孔27側に突出部を有し、熱電対28の温接点が内側表面近くにセットされている。温接点は表面上に露出するようにしてもよい。熱電対28は端子台21でデータロガー13から繋がる熱電対補償導線29に接続される。
【0025】
このビーム軸ずれ検出装置は、4枚の光検出板が十字型に配置されているので、センサ出力を用いた複雑な演算をしなくても簡単に直交軸毎の変位状態を知ることができる。
例えば、水平方向のビーム位置偏差は、左右の光検出板に設けられた熱電対の出力をパラメータとした関数により評価でき、単純には一方の出力から他方の出力を引いた信号値の符号を見ることにより変位方向を知ることができる。
【0026】
なお、光検出板8、9の先端部は適当な角度で面取りされ、一方の光検出板からの反射光が他方の光検出板に当たらないように工夫されている。図3に示したように円筒状の光吸収体からなる反射光ダンパ30をビームを囲むように設置し、光検出板8、9の先端部を例えばアパーチャベース側で60度、その反対側で30度の面取りをすることにより、面取り面で反射した光が反射光ダンパ30に入射して吸収されるようにしてもよい。
なお、上記実施例では光検出板を直交座標に合わせて4個配置したが、光軸に垂直な平面上の偏心位置を知るためには検出端は3個あれば十分であることは言うまでもない。また勿論、5個以上の検出端を備えればより細かく位置測定できる。
【0027】
図5は第1実施例のビーム軸ずれ検出装置の断面図である。図2から図4により説明した温度検知方式では熱電対を用いるのに対して、このビーム軸ずれ検出装置は光検知方式であって、同様に本発明のビーム軸位置制御装置に用いることができる。
このビーム軸ずれ検出装置は、アパーチャ開孔側のエッジに斜面を形成した光検出板と光センサを用いて、ビーム軸が偏心してレーザ光の一部がいずれかの光検出板に当たって反射するところを光センサで検出して、ビーム軸の偏心を知るものである。
アパーチャベース31に取り付けられる光検出板32の先端部分に光軸と平行な光が当たると一定の方向に反射する鏡面33が形成されており、また、各光検
【0028】
レーザ光が偏心してその周辺部がどれかの鏡面33に当たると、反射して減光フィルタ35を通り光センサ34に入射する。鏡面33に対する入射方向は設定した光軸に対してほぼ平行になるので反射光線の方向は殆ど変化しない。
例えば上方に光ビーム軸位置がずれた場合には、上側に取り付けた光検出板32からの反射光が光センサ34で検出されるのに対して下側の光検出板からの反射光は弱くなるので、上下に設けられた光センサの出力から変位方向とその程度が分かる。
光検出板は理想的な光軸位置を中心とする直交座標軸上に軸対称に配置されているから、アパーチャ開孔の周囲に設けられた光センサの出力を対比することによってビーム軸の直交座標軸上における偏心状態を容易にしかも直接的に知ることが出来る。
【0029】
次に、上記発明のビーム軸ずれ検出装置を用いた第1実施例のビーム軸位置調整装置の制御手順を図6によって説明する。
はじめに、共振器に固有の出力鏡と全反射鏡のミラー曲率を入力し、出力パワーの設定値を入力して(S1)、レーザ発振を開始する(S2)。ここで、入力されたミラー曲率にしたがって、共振器に応じた最適調整を行うためのミラー角度、粗調整と微調整におけるそれぞれの刻み幅を決定する。レーザ発振が始まると発振終了の指示信号を受け取らない限り(S3)、所定出力に達するまで(S4)立ち上げ時の粗調整(S5)を行う。
粗調整は、例えば出力パワーが目標の70%に達するまで行い、レーザ出力をパワーメータで測定しながらパワーが上昇する方向にビーム光軸を動かして調整する。この時の粗調整は全反射鏡もしくは出力鏡の向きを所定の刻みで階段状に動かしてビーム光軸の位置と向きを調整するので、各ステップ毎に出力パワーを確認する工程(S4)を繰り返す必要がある。
【0030】
出力パワーが所定の水準を超えると次の微調整工程にはいる。なお、レーザ発振を終了するときには出力パワーが小さい場合でも操業停止工程に進む(S3、S6)。
ビーム軸ずれ検出装置により光軸のずれを検知する(S7)。座標軸(x軸、y軸)毎に1対のセンサを使用しているため、光軸ずれはそれぞれ座標軸に沿った方向に分離した値(Δx、Δy)として得ることができる。
光軸ずれの値(Δx、Δy)が予め決めた許容値より小さいときは、改めて調整を必要としない定常状態と考えることができるから、調整動作を行わずに測定を繰り返す(S8)。光軸ずれ(Δx、Δy)が許容値より大きいときには測定値に基づいてずれが減少する方向に共振器ミラーの光軸方向を調整する(S9)。
【0031】
なお、光軸ずれ量とミラー角度の変位量の間はほぼ比例するため、上記構成のビーム軸位置調整装置により正確にビーム軸調整ができ、安定したレーザ発振が可能になる。また、ミラーの調整軸を光軸ずれ検出器と同じ座標軸上に取ることにより、検出結果を直接的に使用してミラー光軸方向を調整することができるようになる。
図8は光軸ずれとミラー角度変位の関係を説明する図面である。
1対の共振器ミラーのうち図中左のミラーM0が正常な光軸に対して角θずれたとすると、左側ミラーM0の曲率中心QM0は図中QM0’に移動する。したがって共振器の光軸は右側のミラーM1の曲率中心QM1と左側ミラーM0のずれた曲率中心QM0’を結ぶ線上に移動する。
【0032】
左側ミラーM0の曲率半径をR0、右側ミラーM1の曲率半径をR1、ミラー間距離をdとし、左側ミラーM0の位置における光軸のずれ量をx0、右側ミラーM1の位置における光軸のずれ量をx1とすると、左側ミラーM0の曲率中心がQM0からQM0’に移動した量がR0θであることから、
x0=R0θ(R1−d)/(R0+R1−d)
x1=R0θ×R1/(R0+R1−d)
となり、通常R0、R1>>dであるから、結局
x0≒x1≒θR0R1/(R0+R1)
と簡単になる。
【0033】
したがって、例としてR0=∞、すなわち平面鏡、R1=10mの場合を考えるとx0=x1=10θmとなり、光軸ずれの許容値を1mmとすれば、10θ≦10-3であればよい。すなわち、θ≦10-4rad=0.1mrad=100μradであるから、100μrad以下に収まるようにミラー角度を制御すればよい。このためには角度分解能が10μrad程度あれば十分である。
このようにして、ビーム軸の変位を検出しこれをフィードバックして共振器ミラー光軸を調整して目標とするビーム軸安定性を確保することができる。
【0034】
【実施例2】
本実施例は、図7に示すように折り返し共振器に適用したビーム軸位置制御装置である。レーザ共振器は、レーザ発振部41とこれを挟んで配設される全反射凹面鏡42と全反射平面鏡44、さらにレーザ発振部41を挟んで全反射平面鏡44と対向する出力鏡43とからなり、短いレーザ共振器で共振レーザ45がレーザ発振部41を通過する行路をより長くして効率の良い発振を行わせている。レーザ発振部41と全反射凹面鏡42の間に第1のビーム軸ずれ検出装置46、レーザ発振部41と全反射平面鏡44の間に第2のビーム軸ずれ検出装置47、レーザ発振部41と出力鏡43の間に第3のビーム軸ずれ検出装置48を備え、出力ビームの一部をビームスプリッタ49で偏向させてパワーメータ50に入射している。
【0035】
ビーム軸ずれ検出装置はアパーチャを兼ね、ビームずれの検出は図2の温度検出方式でも図5の光検出方式でもよい。
全反射凹面鏡42と出力鏡43には光軸の方向を調整するためのアクチュエータが設けられている。
第1ビーム軸ずれ検出装置46、第2ビーム軸ずれ検出装置47および第3ビーム軸ずれ検出装置48の検出信号とパワーメータ50の測定信号は、データロガー51に伝送されてディジタル信号化され、コンピュータ52に送られて演算評価され、結果が表示装置に表示されると共にコントローラ53に伝えられて、全反射凹面鏡42と出力鏡43の光軸調整が行われる。
制御論理と手順は第1の実施例におけるものと本質的な差がない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のビーム軸ずれ検出装置により簡単な構造で容易に共振器内のビーム軸の変位を検出し、簡単な論理で正確な光軸調整を行ってレーザ共振器の効率を向上させかつ精度を確保しビーム質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来例のレーザ装置のビーム軸位置制御装置を表すブロック図である。
【図2】 従来例のビーム軸ずれ検出装置の立面図である。
【図3】 図2のビーム軸ずれ検出装置の断面図である。
【図4】 図3の一部拡大断面図である。
【図5】 本発明のビーム軸ずれ検出装置の第の実施例を示す側面断面図である。
【図6】 本発明のビーム軸位置制御装置における制御手順を示す流れ図である。
【図7】 本発明のビーム軸位置制御装置の第2の実施例を表すブロック図である。
【図8】 本発明のビーム軸ずれ検出装置の作動原理を説明する線図である。

Claims (5)

  1. レーザ共振器における共振器ミラーの間に設置されるアパーチャにおいて、少なくとも3片の光検出板を中心孔の周辺にほぼ等間隔に配設して該光検出板の先端でアパーチャの開孔形状を調整し、該光検出板のビーム入射方向に面した先端縁に所定の傾きを持った反射面が形成されおり、該反射面で反射する光を受ける光センサを該反射面のそれぞれに対応して配設していて、レーザビーム軸がアパーチャ中心からずれて前記光検出板の幾つかにレーザ光が照射すると前記光検出板間における反射光の強度偏差を検出し、該反射光強度偏差からビーム軸のずれを知ることを特徴とするレーザ共振器のビーム軸ずれ検出装置。
  2. 前記光検出板の数が4片であって互いに直交するように配設されていることを特徴とする請求項1記載のビーム軸ずれ検出装置。
  3. 前記光検出板の取付位置を調整する機構を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のビーム軸ずれ検出装置。
  4. 前記光検出板を取付けるアパーチャベースに冷却水を循環させて冷却するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のビーム軸ずれ検出装置。
  5. 1対の共振器ミラーを備え該共振器ミラーの間にアパーチャを備えたレーザ共振器において、前記共振器ミラーの間に設置されるアパーチャにおいて、少なくとも3片の光検出板を中心孔の周辺にほぼ等間隔に配設して該光検出板の先端でアパーチャの開孔形状を調整し、該光検出板のビーム入射方向に面した先端縁に所定の傾きを持った反射面が形成されおり、該反射面で反射する光を受ける光センサを該反射面のそれぞれに対応して配設していて、レーザビーム軸がアパーチャ中心からずれて前記光検出板の幾つかにレーザ光が照射すると前記光検出板間における反射光の強度偏差を検出し、該反射光強度偏差からビーム軸のずれを知ることを特徴とするレーザ共振器のビーム軸ずれ検出装置を備え、前記共振器ミラーの少なくとも一方にミラー姿勢調整機構を備えて、共振器ミラーの間を共振する共振ビームのビーム軸のアパーチャ中心からのずれを検知し、該ビーム軸のずれ方向に基づいてビーム軸がアパーチャの中心に寄るように共振器ミラーの姿勢を制御することを特徴とするビーム軸位置制御装置。
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