JP4066561B2 - 高圧流体噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高圧流体噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高圧流体噴射装置はディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置等として適用されている。コモンレール式燃料噴射装置は、高圧サプライポンプにより燃料が高圧に蓄圧されたコモンレールから燃料噴射用のインジェクタに高圧燃料を供給するようにしたものである。
【0003】
インジェクタの構成は種々あるが、ノズル先端の噴孔を開閉するノズルニードルをその背圧の増減により昇降し噴射と遮断とを切り替える構成とし、かつ、ノズルニードルの背圧を発生する制御油圧室にコモンレールからの高圧を導くとともに制御油圧室の高圧をスピル弁により燃料タンク等の低圧源に逃がすように構成して、スピル弁の開閉により制御油圧室の油圧を増減するようにしたものがある(USP5,694,903号等)。
【0004】
コモンレール式燃料噴射装置全体の制御はECUにより行われ、ECUはスピル弁の開閉制御とともにコモンレールへの燃料の圧送量を調整してコモンレールの圧力を運転条件に応じた最適な噴射圧力が与えられるように制御する。しかし、運転条件が高圧の噴射圧力を要求する条件(高速高負荷)から比較的低圧の噴射圧力を要求する条件(低速低負荷)に急変した場合、コモンレールへの上記圧送量を減らすだけでは高すぎるコモンレール内圧力を下げることができないので、騒音が発生したり排気の悪化を招くおそれがある。したがってコモンレールへの上記圧送量を減らすだけではなく、コモンレール内からの高圧燃料の流出を促す必要がある。
【0005】
そこで、コモンレールと低圧源の間を接続する通路の途中に設定圧調整可能な圧力調整弁を設けることが考えられる。特許第2659718号の圧力調整弁は、環状弁座に着座するボール状弁体の閉弁方向の付勢力を、プッシュロッドを介してコイルスプリングの圧縮力とともに、電磁アクチュエータの電磁力により与える構成となし、電磁アクチュエータの励磁電流の大きさを変更することで開弁圧を調整可能としている。
【0006】
また、コモンレール内の圧力を下げる手段の一つとして、インジェクタのスピル弁に、制御油圧室を低圧源またはコモンレールのいずれかと選択的に導通せしめる電磁三方弁を用い、電磁三方弁を、低圧源側に切り換えた後、ノズルニードルがリフトを開始する前にコモンレール側に切り換え、さらに低圧源側に切り換えるように制御して、ノズルニードルが着座したままで、高圧燃料を低圧源へ逃がしてコモンレール圧を下げるようにしたものがある(特開平2−191865号公報、US5711274−A号等)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許第2659718号のような圧力調整弁を設けるのでは、配管が複雑化する上、大幅な設計変更を伴う。
【0008】
また、上記特開平2−191865号公報等の手段では、ノズルニードルのリフトが開始する前に制御油圧室と低圧源間を遮断して制御油圧室を高圧に戻しておかねばならないため、低圧源へ高圧燃料を逃がすことができるのは僅かな時間であり、1回で低圧源に逃がすことのできる燃料の量は少ない。したがって、コモンレール内圧力を所定値に低下せしめるまでに多くの回数の切り換えが必要になり、電磁三方弁の駆動回路は、電磁三方弁に多くの電気エネルギーを供給できるものが要求される。特にコンデンサが大容量化して駆動回路の大規模化が免れない。また、コモンレール圧を所定圧に低下せしめるのに必要な量の燃料を逃がすにも時間がかかることになり、結局、その間、エンジンの適正な性能を損なう。
【0009】
また、電磁三方弁が繰り返し高速で切り換え作動するので、騒音の増大を招いたり、電磁三方弁の作動回数が膨大になることで電磁三方弁の耐久寿命を短くする。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、別途圧力調整弁を設けたりスピル弁を高速で開閉することなく、コモンレール等の高圧源から高圧流体を逃がすことのできる高圧流体噴射装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、高圧源からの高圧流体をノズル内に供給し、ノズル内に挿置されたノズルニードルによりノズル先端に形成した噴孔を開閉する複数のインジェクタを具備する。各インジェクタは上記高圧源から供給される高圧流体によりノズルニードルに閉弁方向に作用する流体圧を発生せしめる制御圧力室と、制御圧力室の流体圧を低圧源に開放してノズルニードルをリフトせしめるスピル弁と、電荷の吸収と放出により伸縮しスピル弁の弁体を開閉駆動する電歪アクチュエータとを有する構成とする。各インジェクタの電歪アクチュエータへの電気エネルギーの供給量を制御して電歪アクチュエータのストロークを切り換えスピル弁の弁体の開度を切り換える制御手段を具備する。該制御手段は、充電により蓄電して電気エネルギーを保持し各インジェクタの電歪アクチュエータに共通に電荷を供給するコンデンサと、上記各電歪アクチュエータごとに設けられてコンデンサと電歪アクチュエータ間の導通と遮断とを切り換える複数のスイッチとを具備し、かつ、いずれかの1つのスイッチを選択的にオンしコンデンサの電荷を上記スイッチに対応する電歪アクチュエータにのみ供給した時の上記スピル弁の弁体の開度を、上記ノズルニードルの開弁方向の付勢力が閉弁方向の付勢力よりも優勢となるように制御圧力室に流体圧を与える第1の開度に設定し、複数のスイッチを同時にオンしコンデンサの電荷を各電歪アクチュエータに分配供給した時のスピル弁の弁体の開度を第1の開度よりも小さく上記ノズルニードルの閉弁方向の付勢力が開弁方向の付勢力よりも優勢となるように制御圧力室に流体圧を与える第2の開度に設定する。
【0012】
選択したインジェクタから高圧流体を噴射せしめるには、選択されたインジェクタの電歪アクチュエータに対応するスイッチのみをオンしその電歪アクチュエータにのみコンデンサの全電荷を供給しスピル弁の弁体を第1の開度に設定する。選択されたインジェクタのノズルニードルがリフトし噴射が行われる。
【0013】
一方、高圧源の圧力を減じるには、複数のスイッチを同時にオンし電荷を各電歪アクチュエータに分配供給し1つあたりの電歪アクチュエータへの電荷供給量を上記噴射時よりも少なくし、スピル弁の弁体の開度を噴射時よりも小さな第2の開度とする。これにより、制御圧力室から低圧源への高圧流体の流出量が噴射時よりも少なくなり制御圧力室の減圧幅も小さくなるから、ノズルニードルに閉弁方向に作用する流体圧が噴射時よりも強いものとなる。
【0014】
ここで、上記第2の開度は、上記ノズルニードルの閉弁方向の付勢力が開弁方向の付勢力よりも優勢となるように制御圧力室に流体圧を与えるものとしているから、スピル弁が開いた状態でノズルニードルの着座状態を保つことができる。しかして、高圧源の高圧流体が制御圧力室から低圧源へと逃がされ、高圧源の圧力を減じることができる。高圧流体を低圧源に逃がし高圧源の圧力を下げている間、スピル弁を「開」と「閉」とに交互に切り替えなくとも高圧流体の噴射を停止した状態を維持することができる。しかも圧力調整弁等を別途設ける必要もない。
【0015】
上記発明は、ディーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタを備え、インジェクタにはコモンレールから高圧燃料を供給する構成のコモンレール式燃料噴射装置に適用すると、高速高負荷から低速低負荷へ切り替わった時に、コモンレール内圧力を速やかに下げることができるので、良好に騒音や排気の悪化を防止することができる(請求項2)。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明をディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置に適用した実施形態について、図1、図2、図3により説明する。以下の説明においてディーゼルエンジンは4気筒として説明する。図2は、コモンレール式燃料噴射装置1の全体構成を示すもので、ディーゼルエンジンの各気筒のインジェクタ11と連通する共通のコモンレール12が設けられ、コモンレール12内は高圧サプライポンプ13から圧送された高圧燃料により蓄圧される。図例ではインジェクタ11は1つのみ図示しているが同じ構成のものが気筒数分設けられる。そしてECU18がインジェクタ11の開閉制御を行い必要な時期に必要な時間だけインジェクタ11から各気筒の燃焼室内に略コモンレール内圧力に等しい噴射圧力で燃料を噴射するようになっている。コモンレール内圧力は圧力センサ19によって検出され、その検出結果に基づいてECU18が吸入調量弁14を制御してコモンレール12への燃料の圧送量を調整し、コモンレール内圧力を、他のセンサ入力等により知られる運転条件に応じた良好な燃焼を与える最適な噴射圧となるように制御する。なお、インジェクタ11はドレーンライン17を有す。
【0017】
図1(A)はインジェクタ11の断面を示し、インジェクタ11は棒状のホルダ2がエンジンの図略の燃焼室壁を貫通し図中下端部が燃焼室内に突出するように取り付けられる。ホルダ2は図示しない複数の円形部材を上下方向に密着嵌合して構成され、その内部には縦穴20が軸心位置に形成されるともに略これに平行に高圧通路23およびドレーン通路25が形成してある。インジェクタ11は高圧燃料噴射用のノズル部11aと噴射制御用のスピル弁部11bおよびピエゾアクチュエータ部11cを備えている。
【0018】
ホルダ2の下端には高圧流体たる高圧燃料が噴射される噴孔21が開口しサック22を介して縦穴20下端部と連通している。ホルダ2の上端部には高圧ポート26が設けられ、高圧燃料を保持するコモンレール12(図2)に通じる高圧燃料ライン16(図2)と接続される。インジェクタ11には高圧ポート26から高圧燃料が噴射用および制御用として導入される。ホルダ2の上端部にはまた、出口ポート27が設けられ、低圧源である燃料タンク15(図2)に通じるドレーンライン17(図2)と接続される。
【0019】
ノズル部11aについて説明する。ホルダ2の上記縦穴20はサック22との接続端部201が上側ほど拡径するコーン状をなし、後述するノズルニードル3が着座する弁座201としてある。
【0020】
縦穴2の下側略1/3ほどの部分には棒状のノズルニードル3が上下動自在に貫通しており、上記部分の上側半部であるニードルシリンダ203がノズルニードル3を摺動自在に保持している。ノズルニードル3は、下端部に下側ほど縮径するコーン状の弁面31が形成してあり、弁座201に着座するようになっている。
【0021】
ニードルシリンダ203の下端部にはノズルニードル3外周に環状の油溜まり202が形成してある。油溜まり202は、上記高圧通路23と導通しており、高圧通路23の上流端に形成された高圧ポート26を介して高圧燃料が供給されている。油溜まり202に供給された高圧燃料はノズルニードル3のリフト時にノズルニードル3の弁面31と弁座201の間の間隙を通り、サック22を経て噴孔21から噴射されるようになっている。
【0022】
また、ノズルニードル3の下端面のうち、弁座201と密着しない環状部分には常時高圧燃料が作用してノズルニードル3を上方すなわち開弁方向に付勢している。
【0023】
ノズルニードル3の上端面には深穴状の窪みが形成され、窪み底面とスピル弁部11bの後述する弁棒5の間にスプリング4が圧縮状態で介設されており、ノズルニードル3を下方すなわち閉弁方向に付勢している。
【0024】
ノズルニードル3の上方にはニードルシリンダ203壁面とノズルニードル上端面とで空間が画成され、制御圧力室たる制御油圧室204としてある。制御油圧室204はインオリフィス24を介して高圧通路23と導通し、高圧通路23から高圧燃料が供給されるようになっており、ノズルニードル3を下方すなわち閉弁方向に付勢する背圧を発生する。
【0025】
スピル弁部11bについて説明する。上記スプリング4の上方には縦穴20を貫通して弁棒5が設けてある。弁棒5はロッド部52の下端部に傘部51を設けたもので、ロッド部52にて縦穴20の一部であるピストンシリンダ208に摺動自在に保持されている。縦穴20はピストンシリンダ208直下で拡径し、ロッド部52の外周に環状の通路207が形成されている。環状通路207はドレーン通路25と導通している。
【0026】
縦穴20の制御油圧室204と環状通路207の間に位置する出口孔205は、制御油圧室204側の開口周縁部が下側が拡径するコーン状に形成され、弁棒5の傘部51の、下側ほど拡径するコーン状面を弁面511として受ける弁座206としてある。すなわち図例のスピル弁部11bは外開弁であり、弁棒5が制御油圧室204側に変位すると弁面511が弁座206から離間して出口孔205が開き、制御油圧室204の高圧が出口孔205、環状通路207を介してドレーン通路25に逃がされるようになっている。
【0027】
弁棒5には、制御油圧室204の油圧および圧縮した上記スプリング4が閉弁方向に付勢している。
【0028】
スピル弁部11bの弁棒5を駆動するピエゾアクチュエータ部11cについて説明する。縦穴20のピストンシリンダ208よりも上側部分はピストンシリンダ208よりも大径のアクチュエータ室209としてあり、ピストンシリンダ208およびアクチュエータ室209を貫通して弁棒5の上方にピストン6が挿置してある。ピストン6は、大径で上端が開口した筒状の保持部62の下端面から細径の軸部61が延出したもので、軸部61が弁棒5とともにピストンシリンダ208に摺動自在に保持されており、その下端面は弁棒5の上端面と当接している。
【0029】
ピストン6の上側の保持部62はアクチュエータ室209に上下動自在に格納される。保持部62の下方にはアクチュエータ室209の底面との間に、ピストン6の軸部61に同軸に皿ばね7が圧縮状態で介設してあり、ピストン6を上方へ付勢している。
【0030】
アクチュエータ室209の天井壁とピストン6の保持部62の間には棒状のピエゾスタック8が配設してあり、その上端部は天井壁面に形成した窪みに嵌入し、下端部は筒状の保持部内に嵌入している。ピエゾスタック8は制御用のリード線81を介してECU18の後述する制御手段たる駆動回路9と接続してあり、ECU18からの通電制御により伸縮してピストン6を上下動せしめ、弁棒5の離座と着座、ならびに開度を切り替えるようになっている。
【0031】
図1(B)はピエゾスタック8の駆動系を示すもので、駆動回路9は、各インジェクタ11のピエゾスタック8に共通である。バッテリ電圧を所定の大きさのDC電圧に変換するDC−DCコンバータ91と、DC−DCコンバータ91からの充電により電気エネルギーを保持するコンデンサ92を備えている。DC−DCコンバータ91とコンデンサ92とは充電スイッチ94のオンにより接続され、DC−DCコンバータ91がコンデンサ92を充電する。
【0032】
上記コンデンサ92は、直列接続のメイン接続スイッチ95およびインダクタンスコイル93を介して各ピエゾスタック8の正極と接続してある。各ピエゾスタック8の負極にはそれぞれサブ接続スイッチ96a,96b,96c,96dが接続してあり、メイン接続スイッチ95およびサブ接続スイッチ96a〜96dをパルス状にオンすることにより、充電状態のコンデンサ92がピエゾスタック8を充電する。ピエゾスタック8の充電電圧は、インダクタンスコイル93の誘導作用により電荷供給元の電荷量に略比例する。
【0033】
上記インダクタンスコイル93の、メイン接続スイッチ95との接続点は放電スイッチ97を介して接地してあり、放電スイッチ97のオンによりピエゾスタック8の電荷がインダクタンスコイル93を介して放電するようになっている。なお、ピエゾスタック8の放電は、サブ接続スイッチ96a〜96dに並列に接続されて放電時に順バイアスとなるダイオード98を通り行われる。
【0034】
なお、上記各スイッチ94,95,96a〜96d,97はECU18を構成する演算部、例えばマイクロコンピュータにより入切制御可能としてある。
【0035】
本高圧流体噴射装置の作動を説明する。充電スイッチ94をパルス状にオンすると、コンデンサ92が、DC−DCコンバータ91により所定の印加電圧にて充電される。その後、メイン接続スイッチ95とともに、所定のサブ接続スイッチ96a〜96dをパルス状にオンする。サブ接続スイッチ96a〜96dのうち、いずれか1つを選択してオンすると、コンデンサ92の電荷がインダクタンスコイル93を介して上記ピエゾスタック8に充電されピエゾスタック8が伸長してピストン6を押し下げスピル弁部11bが「開」となる。
【0036】
また、メイン接続スイッチ95とともに全サブ接続スイッチ96a〜96dを一時にパルス状にオンするとコンデンサ92の電荷がインダクタンスコイル93を介して各ピエゾスタック8に分配供給されて充電されるので、各ピエゾスタック8電圧は、サブ接続スイッチ96a〜96dのうちいずれか1つをオンした場合の1/4であり、したがって、ピエゾスタック8の伸長量も1/4であり、弁棒5のリフト量も1/4となる。すなわち弁棒5のリフト量が、サブ接続スイッチ96a〜96dのうち1つのみのオンで最大値を与えられ、全サブ接続スイッチ96a〜96dの同時のオンで上記最大値の1/4が与えられる。このようにオンするサブ接続スイッチ96a〜96dのうち1つだけをオンするか、または全サブ接続スイッチ96a〜96dを同時にオンするかの選択でスピル弁部11bの弁棒5の開度を2段階に設定できる。
【0037】
図3は本高圧流体噴射装置の各部の作動状態を示すタイムチャートで、前半は通常の燃料噴射制御時を示し、後半は噴射休止期間におけるコモンレール内圧力低下制御時を示している。
【0038】
通常の燃料噴射制御の場合について説明する。まず駆動回路9のメイン接続スイッチ94とともに、サブ接続スイッチ96a〜96dのうち噴射を行うインジェクタ11のピエゾスタック8に対応するもの(図3の例では96a)を選択しパルス状にオンする(図3の(A))。これにより、コンデンサ92の電荷がサブ接続スイッチ96aに対応するピエゾスタック8に流入しピエゾスタック8はフル充電され、その電圧が設定された最高値まで上昇する(図3の(F))。この電圧に比例してピエゾスタック8が最大量まで伸長し、スピル弁部11bの弁棒5を最大量下降せしめる。これにより出口孔205が最大の開口面積で開く(第1の開度)。ここで、ピエゾスタック8の伸長量、ピストン6の変位、弁棒5のリフト、出口孔205の開口面積は、いずれもピエゾスタック8の電圧波形(図3の(F))と同様の台形状波形となる。
【0039】
出口孔205が上記のごとく最大開口面積で開く結果、制御油圧室204は急激かつ大きな減圧幅にて油圧が低下する(図3の(G))。これにより、ノズルニードル3の背圧が減ぜられ、ノズルニードル3への開弁方向付勢力(ノズルニードル3の下端面に上向きに作用する油圧力)の方が優勢となって、ノズルニードル3が急激に上昇する(図3の(H))。かくして噴孔21から燃料の噴射が開始される(図3の(I))。
【0040】
そして運転状態から演算される所定のタイミングで放電スイッチ97をオンする(図3の(E))と、ピエゾスタック8の電荷は放出され、その電圧は降下して充電前の状態に復する(図3の(F))。これによりピエゾスタック8は縮小して元の長さとなり、ピストン6、スピル弁部11bの弁棒5は、皿ばね7のばね力や制御油圧室204の油圧、スプリング4のばね力により押し上げられ、元の位置まで上昇し、出口孔205は閉じられる。この結果、制御油圧室204とドレーン通路25の導通は遮断され、制御油圧室204は、高圧通路23から流入する高圧燃料により油圧が回復し(図3の(G))、再びノズルニードル3への閉弁方向付勢力が優勢となってノズルニードル3は着座位置まで下降して(図3の(H))噴孔21を閉じ燃料噴射を停止する(図3の(I))。かくしてメイン接続スイッチ95およびサブ接続スイッチ96a〜96dのいずれかをオンするタイミングと放電スイッチ97をオンするタイミングとにより規定される所定の期間に燃料噴射を行うことができる。
【0041】
次にコモンレール内圧力低下制御について図3の後半を参照して説明する。これは燃料噴射を行わないタイミングにて実行される。燃料噴射と異なりエンジン回転に対して非同期にて行うことができる。
【0042】
コンデンサ92への充電完了後、メイン接続スイッチ95および全サブ接続スイッチ96a〜96dを同時にパルス状にオンする(図3の(A),(B),(C),(D))と、コンデンサ92の電荷が各ピエゾスタック8に分配供給される。この流入電荷量は各ピエゾスタック8をフル充電するには不足であって、ピエゾスタック8の電圧もサブ接続スイッチ96a〜96dのうち選択したもののみをオンする燃料噴射時の約1/4しか上昇せず(図3の(F))、スピル弁部11bの弁棒5の下降量が1/4になる。よって、出口孔205の開口面積が、通常の燃料噴射制御時の1/4位となる(第2の開度)。
【0043】
制御油圧室204の油圧は、高圧通路23から制御油圧室204へのインオリフィス24により絞られた高圧燃料の流入量と出口孔205からドレーン通路25への流出量とが等しくなる最低圧に収束する。出口孔205の開口面積が1/4位になることでドレーン通路25への流出量が燃料噴射制御時よりも抑えられるから、燃料噴射制御時に比して制御油圧室204の油圧の低下は緩やかに進み、かつ減圧幅は小さい(図3の(G))。
【0044】
このように、制御油圧室204の油圧は燃料噴射制御時に比して高めであり、したがってノズルニードル3に対する閉弁方向の付勢力も大きい。ここで、弁棒5のリフト量を規定する各ピエゾスタック8への電荷供給量は、上記閉弁方向の付勢力が開弁方向の付勢力に対して優勢となるように予め設定してあり、スピル弁部11bは「開」となってもノズルニードル3はリフトせず着座状態を保つ。かくしてコモンレール12内の高圧燃料が高圧通路23から制御油圧室204を経てドレーン通路23へと流出し、コモンレール内圧力を減じることができる。しかもスピル弁部11bやピエゾアクチュエータ部11cを切り換え作動させないので燃料を燃料タンク15へ逃がす実効時間が減じられず、コモンレール内圧力は速やかに低下する。
【0045】
コモンレール内圧力が所定値まで低下した時に放電スイッチ97をパルス状にオンすると(図3の(E))、各ピエゾスタック8の電荷は放出され、電圧は低下して(図3の(F))、スピル弁部11bの弁棒5が出口孔205を閉じるので、制御油圧室204の油圧も元の高圧に復する(図3の(G))。
【0046】
この後で、上記のごとく通常の燃料噴射制御を行えば、適正な噴射圧力にて燃料噴射を行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態ではコモンレール圧を低下せしめるときに4つのピエゾスタックに電荷の分配供給を行うようにして、弁棒5の開度を、ノズルニードル3をリフト可能な第1開度よりも小さくノズルニードル3の着座状態を保つ第2の開度に設定するように構成しているが、4つのインジェクタ11のうち、2つあるいは3つのインジェクタ11に分配供給を行うようにしてもピエゾスタック1つあたりの電荷量が少なくなり、ピエゾスタック1つのみに電荷供給を行うときのスピル弁の開度よりも小さな開度に設定することができる。このときの開度を、上記ノズルニードルの閉弁方向の付勢力が開弁方向の付勢力よりも優勢となるように制御油圧室に圧力を与える開度とすることで、ノズルニードルを着座させた状態のまま、制御油圧室から高圧燃料を燃料タンクに逃がすことができる。また、エンジンの気筒数は4気筒に限られず、2気筒以上であればよい。
【0048】
また、上記各実施形態はコモンレール式燃料噴射装置に適用したものを示したが、本発明は他の用途にも適用することができ、2以上のインジェクタを備える高圧流体噴射装置であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の高圧流体噴射装置のインジェクタの全体断面図であり、(B)は本発明の高圧流体噴射装置のピエゾスタック駆動系の回路図である。
【図2】本発明の高圧流体噴射装置を適用したディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の構成図である。
【図3】本発明の高圧流体噴射装置各部の作動を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 コモンレール式燃料噴射装置
11 インジェクタ
11a ノズル部
11b スピル弁部(スピル弁)
11c ピエゾアクチュエータ部(電歪アクチュエータ)
12 コモンレール(高圧源)
15 燃料タンク(低圧源)
2 ホルダ(ノズル)
21 噴孔
204 ノズルニードル制御油圧室(制御圧力室)
3 ノズルニードル
5 弁棒(弁体)
6 ピエゾアクチュエータ部(電歪アクチュエータ)
8 ピエゾスタック
9 駆動回路(制御手段)
92 コンデンサ
93 インダクタンスコイル
94 充電スイッチ
95 メイン接続スイッチ
96a,96b,96c,96d 接続スイッチ
97 放電スイッチ
Claims (2)
- 高圧源からの高圧流体をノズル内に供給し、ノズル内に挿置されたノズルニードルによりノズル先端に形成した噴孔を開閉する複数のインジェクタを具備し、各インジェクタは上記高圧源から供給される高圧流体によりノズルニードルに閉弁方向に作用する流体圧を発生せしめる制御圧力室と、制御圧力室の流体圧を低圧源に開放してノズルニードルをリフトせしめるスピル弁と、電荷の吸収と放出により伸縮しスピル弁の弁体を開閉駆動する電歪アクチュエータとを有し、各インジェクタの電歪アクチュエータへの電気エネルギーの供給量を制御して電歪アクチュエータのストロークを切り換えスピル弁の弁体の開度を切り換える制御手段を具備し、該制御手段は、充電により蓄電して電気エネルギーを保持し各インジェクタの電歪アクチュエータに共通に電荷を供給するコンデンサと、上記各電歪アクチュエータごとに設けられてコンデンサと電歪アクチュエータ間の導通と遮断とを切り換える複数のスイッチとを具備し、かつ、いずれかの1つのスイッチを選択的にオンしコンデンサの電荷を上記スイッチに対応する電歪アクチュエータにのみ供給した時の上記スピル弁の弁体の開度を、上記ノズルニードルの開弁方向の付勢力が閉弁方向の付勢力よりも優勢となるように制御圧力室に流体圧を与える第1の開度に設定し、複数のスイッチを同時にオンしコンデンサの電荷を各電歪アクチュエータに分配供給した時のスピル弁の弁体の開度を第1の開度よりも小さく上記ノズルニードルの閉弁方向の付勢力が開弁方向の付勢力よりも優勢となるように制御圧力室に流体圧を与える第2の開度に設定したことを特徴とする高圧流体噴射装置。
- 請求項1記載の高圧流体噴射装置において、上記インジェクタはディーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタであり、上記高圧源は高圧燃料により蓄圧されたコモンレールである高圧流体噴射装置。
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