JP4066556B2 - ポリウレタンおよびそれを用いた皮革様シート状物 - Google Patents

ポリウレタンおよびそれを用いた皮革様シート状物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性、風合い、ドレープ性等の感性面に優れ、かつ、また耐久性に優れたポリウレタンおよびそれを用いた皮革様シート状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維からなるシート状物に高分子弾性体を含浸および/または塗布して得られる皮革様シート状物は天然皮革にない均一性、染色堅牢性、風合いの柔軟性を有しており、衣料や家具、シート用途にその使用が広がってきた。その使用される用途が広がるにつれてより高い耐久性が要求されるようになっている。特に繊度0.3dtex以下の極細繊維とポリウレタンを含む皮革様シート状物は表面のタッチ、柔軟性は優れるものの、長期に使用した場合、毛足が部分的に長くなったり、もつれたり、あるいは毛玉が発生して外観が変化するとか、破れたりするといった問題点があった。この原因の1つはポリウレタンの劣化であり、そのため耐光性、耐加水分解性に優れた高耐久性ポリウレタンの検討が行われてきた。
【0003】
例えば耐加水分解性に関してはポリエーテル系ジオールを用いたポリウレタン(以下ポリエーテル系ポリウレタン)が優れているが耐光性が悪いという問題がある。また、ポリエステルジオールを用いたポリウレタン(以下ポリエステル系ポリウレタン)は耐光性に優れるが耐加水分解性が悪い。ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタン(以下ポリカーボネート系ポリウレタン)は耐光性、耐加水分解性ともに優れているが、硬いために得られる皮革様シート状物の風合いがプラスチックライクになるという問題がある。また、これらのポリウレタンを混合および/または共重合して得られたポリウレタンは個々のポリウレタン単独よりは耐光性、耐加水分解性のバランスのとれた特性を有するものの、総合的な耐久性としては未だに不充分である。
【0004】
従来、高耐久性ポリウレタンとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートを用いたポリウレタンが知られているが、該ポリウレタンを用いてなる皮革様シート状物は風合いがプラスチックライクな粗硬なものであり、適用範囲が極めて限定されているのが現状である。
【0005】
また、特開平4−68014号公報には、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと脂肪族ジカルボン酸からなるポリエステルジオールを含むポリウレタンが優れた耐久性を有し、それが合成皮革、人工皮革に適用できることが開示されている。これは炭素数の比較的大なるジオールからなるポリエステルジオールが耐加水分解性に優れること、さらに、側鎖を有することで分子間力が下がり、柔軟性が向上することを利用したものである。しかしながら、このポリウレタンも、耐久性は従来品よりは優れるものの、結局はポリエステル系であるため、長期に使用した場合には、該ポリウレタンの分解は進行し、外観変化や破れが発生する。つまり、上記ポリウレタンにより、従来ポリエステル系ポリウレタンの耐久性向上はある程度達成されるものの、耐久性および柔軟性では、まだ不充分であり、かかるポリエステル系ポリウレタンの限界を示すものともなっていた。
【0006】
さらに、特開平5−5280号公報、特開平5−43647号公報には、非晶性ポリカーボネートジオールを用いてなるポリウレタンが、耐久性、柔軟性を兼ね備えていることが記載されており、かかる非晶性ポリカーボネートジオールの例として、ポリペンタメチレンカーボネートとポリヘキサメチレンカーボネートとポリネオペンチルカーボネートのコポリカーボネートジオールを用いてなるポリウレタンが、耐久性と柔軟性に優れていることが記載されている。しかしながら、これらのポリウレタンは、炭素数の異なる直鎖脂肪族ジオールを用いてなるコポリカーボネートジオールを主たる成分としているため、結晶性が高く、本発明のネオペンチルグリコールを主体とするポリカーボネート系ポリウレタンと比較して柔軟性が不十分である。
【0007】
つまり、高いレベルの耐久性と柔軟性を両立したポリウレタンは、これまでいかなる手段によっても得られておらず、その実現が強く求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、繊維からなるシート状物に含浸および/または塗布した場合、柔軟性に優れかつ、また耐光性、耐加水分解性等の耐久性に優れた皮革様シート状物が得られるポリウレタンおよびそれを用いてなる皮革様シート状物を提供せんとするものであり、また、さらに優れた耐久性、柔軟性を併せ持つ衣料、家具、カーシート、鞄、手袋等を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリウレタンは、下記化学式1で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むポリウレタンであって化学式3、4、5で示されるエステル構造、化学式6で示されるカーボネート構造からなる群から選ばれた少なくとも1種類の構造を分子鎖中に含み、かつ、化学式1で示される構造の含有量が、化学式〜6で示される構造の含有量の合計の1〜9倍であることを特徴とするものである。
【0010】
【化6】
Figure 0004066556
【0011】
【化7】
Figure 0004066556
【0012】
【化8】
Figure 0004066556
【0013】
【化9】
Figure 0004066556
【0014】
【化10】
Figure 0004066556
【0015】
【0016】
また、本発明の皮革様シート状物は、繊度0.3dtex以下の極細繊維とポリウレタンを含む皮革様シート状物であって、該ポリウレタンとして、少なくとも請求項1および2のいずれかのポリウレタンを含み、かつ、JIS L1906で規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化が、JIS L1076に規定される判定基準で3号以上であることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり、繊維からなるシート状物に含浸および/または塗布した場合、柔軟性に優れ、かつ、耐光性、耐加水分解性等の耐久性に優れた皮革様シート状物が得られるポリウレタンについて、鋭意検討し、特定のカーボネート構造を分子鎖中に含ませたポリウレタンを採用してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0018】
まず、下記化学式1で示されるカーボネート構造について説明する。
【0019】
【化11】
Figure 0004066556
【0020】
かかるカーボネート構造は、ネオペンチルグリコールとジアルキルカーボネート等とを重縮合せしめて得られるポリカーボネートである。かかる特殊な構造を有するポリウレタンは、今までにない耐光性と耐加水分解性および柔軟性を兼ね備えた機能を発揮するものである。すなわち、ネオペンチルグリコールは、主鎖と同程度の大きさの側鎖を有しているため、分子間力が働きにくく、分子が動きやすいために、柔軟性が発現されるものと考えられる。また、本発明のポリウレタンは、耐光性、耐加水分解性に優れているのみならず、それを用いて皮革様シート状物を作成した場合、該ポリウレタンがある程度分解しても、破れや外観変化がほとんど起こらないという機能をも発揮する。かかる繊維とポリウレタンからなる皮革様シート状物の耐久性・柔軟性を左右する要因としては、ポリウレタン自身の安定性以外に、ポリウレタンと繊維の接着やポリウレタンの分布状態等があり、これらが影響しているものと考えられる。
【0021】
また、本発明のポリウレタンは、ポリマージオールに由来する構造として、化学式1で示される構造以外化学式3、化学式4、化学式5で示されるエステル構造、化学式6で示されるカーボネート構造からなる群から選ばれた少なくとも1種類の構造を分子鎖中に含み、かつ、化学式1で示される構造の含有量が、化学式〜6で示される構造の含有量の合計の1〜9倍であることを特徴とするものである。
【0022】
【化12】
Figure 0004066556
【0023】
【化13】
Figure 0004066556
【0024】
【化14】
Figure 0004066556
【0025】
【化15】
Figure 0004066556
【0026】
【0027】
すなわち、この範囲よりも化学式1の構造の含有量が多いと、柔軟性が不十分となり、また、この範囲よりも含有量が少ないと、耐久性が不十分となるものである。
【0028】
本発明のポリウレタンに、化学式〜6で示される構造を導入するには、ポリウレタンを合成するにあたり、ポリネオペンチルカーボネートジオールとポリカプロラクトンジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリ2,5−ジエチルペンチルアジペートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールを合わせて用いればよい。また、場合によっては、ポリネオペンチルカーボネートジオールからポリカーボネートジオールを形成するにあたり、それぞれ対応するモノマーを混合して得られた共重合ポリカーボネートジオールを用いてもかまわない。これらのポリマージオールの分子量は、500以下の場合は、風合いが硬くなり、3000以上になると耐久性が低下するため、500〜3000が好ましい。
【0029】
また、これらジオールと組み合わせるジイソシアネートとしては、特に制限はないが、一般的にポリウレタンの合成に用いられているものを適宜選択して用いることができる。例えば、耐熱性を重視する場合は、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートを使用することができるし、NOxや光による黄変を抑えたい場合は、イソホロンジイソシアネートや4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートを用いることができる。さらに目的に応じて、これらのジイソシアネートを複数混合して用いることもできる。
【0030】
また、鎖伸張剤も、特に制限はなく、通常のポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤、すなわち活性水素を2個以上有する低分子化合物を用いることができる。それらの例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、エチレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、メチレンビスアニリン等の芳香族ジアミンを単独あるいは混合して使用することができる。
【0031】
特にジイソシアネートとして、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、鎖伸長剤として、炭素数2〜8の脂肪族ジオール、特にエチレングリコールを用いた場合は、耐久性、柔軟性に際立って優れたポリウレタンを提供することができる。また、必要に応じて紫外線吸収剤や酸化防止剤等の安定剤を共重合することもできる。
【0032】
本発明のポリウレタンを製造する方法としては、特に制限はなく、常法のごとく、まず、ポリマージオールとジイソシアネートを反応せしめて、プレポリマーを形成した後、鎖伸長剤と反応させる方法を例示することができる。
【0033】
ポリマージオールとジイソシアネートの比率は、特に制限はなく、柔軟性を重視する場合は、ポリマージオールを多くし、耐久性を重視する場合は、ジイソシアネートを多くすればよいが、両者のモル比が好ましくは1:2〜1:5となるように混合するのがよい。
【0034】
複数のポリマージオール、ジイソシアネートを用いる場合は、それらを別々に反応させて、あらかじめ複数のプレポリマーを作成してから混合し、鎖伸長剤と反応させて、ブロック共重合体に近い構造としてもよいし、混合した状態でプレポリマーを作成し、鎖伸長剤と反応せしめてランダム共重合体に近い構造としてもかまわない。また、これらの反応の触媒として有機スズ化合物、有機チタン化合物、3級アミン等を加えることもできる。
【0035】
また、本発明の皮革様シート状物は、繊度0.3dtex以下の極細繊維と高分子弾性体を含むものであって、かかる高分子弾性体として、上記したポリウレタンの少なくとも1つを含み、かつ、JIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化がJIS L1076に規定される判定基準で3号以上であり、好ましくは、
(1)JIS B7753規定のサンシャインカーボンアーク灯式耐光性試験機で100時間光照射する。
(2)温度70℃、相対湿度90%の雰囲気に1週間放置する。
という(1)、(2)の処理を順に行った後の上記のマーチンデール摩耗試験前後の外観変化がJIS L1076に規定される判定基準で3号以上であることを特徴とするものである。
【0036】
皮革様シート状物の耐久性を調べる目的で(1)、(2)の処理を単独で行った後に物性を測定することはこれまで行われてきた。しかしながら、かかる評価手段と実際に使用された場合の耐久性の間には相関はみられず、それぞれの処理を単独に行った場合の物性の低下は小さくても、実際に使用した場合の耐久性としては不十分な場合が多々ある。本発明者らは鋭意検討した結果、これら(1)、(2)の処理を別々に行うのではなく、連続して行った後の物性が実際に使用した場合の耐久性とより対応がとれること、また、本発明のポリウレタンを用い、このような強制劣化後も外観変化の小さい皮革様シート状物であれば、実際の使用においても優れた耐久性を示すことを見出し、本発明に至ったものである。
【0037】
なお、皮革様シート状物の種類としては、大きく分けて、ピリングと毛羽立ちの2種類があり、皮革様シート状物の種類よって、それぞれの寄与する度合いが異なるため、該JIS規格に規定される判定基準のうち、ピリング、毛羽立ちのより等級の悪い方を採用することにしたものである。
【0038】
本発明の条件を満たす皮革様シート状物を得るためには、本発明のポリウレタンおよび極細繊維を用い、かつ、ポリウレタンの付着量を調節する必要があるが、その値は極細繊維の繊度やシート状物の密度によって調節する必要があるが、好ましくはポリウレタンと極細繊維の比率は1:5〜2:1の範囲にあるのがよい。1:4以下の場合は、物性、耐久性が不足し、2:1以上の場合は、風合いが硬くなってしまう。
【0039】
また、皮革様シート状物の密度は、特に制限はないが、0.2g/cm以下では、耐久性が低下する傾向があり、0.6g/cm3 以上では、柔軟性が低下する傾向にあるので、0.2〜0.6g/cmであるのが好ましい。
【0040】
本発明の皮革様シート状物は、繊度0.3dtex以下の極細繊維で構成されるが、その素材は、特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド等を使用することができる。また、かかる繊度は、柔軟性、品位の点から0.3dtex以下であることが必要であるが、発色性や繊維のさばけやすさの点から、ポリエステルの場合は0.3〜0.01dtexの範囲、ポリアミドの場合は0.1〜0.001dtexの範囲であるものが好ましい。
【0041】
また、これらの極細繊維を混合して用いることもできるし、本発明の目的を損なわない範囲で0.3dtexよりも太い繊維が混在してもかまわない。また、繊維の断面形状としては、通常の丸断面でもよいし、それ以外に三角や+字型のいわゆる異型断面のものを使用することもできる。
【0042】
このような極細繊維を得る方法としては、目的の極細繊維を直接得る方法と、一旦太い繊維を作成し、その後、極細繊維を発現せしめる方法があるが、細い繊維が得られやすい点や得られる皮革様シート状物の柔軟性の点で、一旦太い繊維を作成し、その後、極細繊維化する方法が好ましく採用される。
【0043】
そのような方法の例としては、溶解性の異なる複数のポリマーをあわせて紡糸して、極細繊維発現可能な繊維を得た後、少なくとも1種類のポリマーを除去して極細繊維を形成する方法を採用することができる。
【0044】
ポリマーを紡糸する際の複合形態としては、ポリマー同士が張り合わされたような状態のいわゆるサイドバイサイド型や、ポリマー中に別のポリマーが、比較的均一に島状に存在する海島型、ポリマーがアロイ状に混合されているブレンド型を採用することができる。また、除去されるポリマーの種類としては、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコール等を共重合してアルカリ溶解性を高めた共重合ポリエステル等を用いることができる。
【0045】
こうして得られた極細繊維発現可能な繊維をシート化し、ポリウレタン付与および極細繊維発現処理を施す。また、必要に応じて糊剤付与、プレス、バフィング、コーティング、染色等の処理を行うことにより皮革様シート状物を得ることができる。
【0046】
極細繊維発現可能な繊維のシート化の例としては、織物、編物、不織布およびそれらを複合したものを挙げることができる。かかる織物としては、通常の平織りや綾織りを、また編物としては、経て編みや筒編みを用いることができる。また、不織布としては、短繊維不織布、長繊維不織布いずれでもかまわないが、風合いや品位を重視する場合は、短繊維不織布が好ましく使用される。かかる短繊維不織布を得る方法としては、カードやクロスラッパー、ランダムウエバーを用いる方法や抄紙法を採用することができる。また、これらの方法で得られた不織布をニードルパンチやウォータージェットパンチで絡合せしめたり、他の織物、編物、不織布と一体化せしめることも可能である。また、必要に応じてポリビニルアルコール等の糊剤、ポリアクリルアミドやポリウレタン等のバインダー等を付与することもできる。
【0047】
極細繊維を発現せしめる方法は、除去する成分の種類によって異なるが、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を採用することができる。
【0048】
こうして得られたシート状物を、本発明のポリウレタン溶液に含浸しさらにポリウレタンを凝固せしめることが必要である。かかるポリウレタンの溶媒としては、DMF、DMSO等を用いることができる。また、ポリウレタンの溶解性を妨げない範囲で他の溶媒や水を添加することができる。また、ポリウレタンの凝固構造を調節する目的で高級アルコールや界面活性剤等の凝固調節剤を添加することができる。さらには必要に応じて顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、を添加することもできる。
【0049】
さらに付け加えると、本発明の皮革様シート状物の耐久性、柔軟性を左右する重要な要因の1つに皮革様シート状物内のポリウレタンの凝固構造がある。該凝固構造は大きく分けて分散・点在している構造(以下分散構造)と、連結・一体化した構造(以下連結構造)の2つに分類することができる。この2つを比較すると、分散構造は、柔軟性には有利であるが、耐久性には不利であり、逆に連結構造は、柔軟性には不利であるが、耐久性には有利である。本発明のポリウレタンは、内部に微多孔が多数存在する連結構造になりやすい特徴があり、それが優れた耐久性と柔軟性を有する皮革様シート状物を提供することができる原因の1つではないかと考えている。また、この凝固構造は、目標とする耐久性、柔軟性のレベルに応じて調節する必要がある。そのための1つの手段としては、凝固条件の調節によるポリウレタンの凝固速度の適正化が挙げられる。その場合の凝固条件とは、凝固浴の温度、凝固浴中に添加するDMF、DMSO等の有機溶媒の有無(およびその濃度)等が挙げられる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を具体的に実施例を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
なお、本実施例、比較例の中で用いる略号の意味は以下の通りである。
【0052】
EG :エチレングリコール
DMF :N,N’−ジメチルホルムアミド
MBA :メチレンビスアニリン
MDI :4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
NPG :ネオペンチルグリコール
PMPA :ポリ3−メチルペンチレンアジペートジオール
PNPC :ポリネオペンチルカーボネートジオール
PCL :ポリカプロラクトンジオール
PHC :ポリヘキサメチレンカーボネートジオール
PPHC :ヘキサメチレングリコールとペンタメチレングリコールからなる共重合ポ リカーボネートジオール
PTMG :ポリテトラメチレングリコール
また、本実施例、比較例の評価の方法は以下の通りである。
1.耐久性
評価すべき各皮革様シート状物でジャンバー様の着用サンプルを作成した。モニターとして、主として事務作業に従事する成人男性を選び、着用サンプルを常に着た状態で通常の業務を行わせた。モニター間の使用状況の差をなくすために1週間ごとに着用サンプルをモニター間で交換・ローテーションし、さらに5週間ごとに石油系溶剤によるクリーニングを行った。25週終了後、サンプルの外観変化、破れの有無等を総合的に評価し、10を最上、6以上を合格とする10段階で評価した。
2.柔軟性
3年以上繊維製品の開発の経験があるテスター5人に、10を最上、6以上を合格とする10段階で評価させ、その平均点で評価した。
3.マーチンデール摩耗試験
約1m×1mの大きさの皮革様シート状物からランダムに4箇所から測定用試料をサンプリングし、JIS L1906規定のマーチンデール摩耗試験の家具用条件で10000回摩擦した前後の外観変化をJIS L1076規定の判定基準で判定した。4つのサンプル間で判定に差が出た場合は、最も号数の悪いものを採用した。
4.強制劣化処理
下記の処理を(1)、(2)の順で施した。
【0053】
(1)JIS B7753規定のサンシャインカーボンアーク灯式耐光性試験機で1 00時間光照射
(2)温度70℃、相対湿度90%の雰囲気に1週間放置
実施例1
NPGとジエチレンカーボネートを縮合重合させることによって得られた数平均分子量2000のPNPCと数平均分子量2000のPCLを80:20の割合で混合し、MDIと50℃で5時間反応させた後、DMFで40%に希釈し、MBAを加えて30℃で6時間反応せしめて、ポリウレタン溶液を得た。このようにして得られたポリウレタン溶液を固形分が10重量%になるようにDMFで希釈し、ポリウレタン含浸液を調製した。別途、海島型複合糸用口金を用いて海島複合繊維を作成した。複合条件は以下の通りである。
海成分 :ポリスチレン
島成分 :ポリエチレンテレフタレート
海島比率:海50%、島50%
該海島複合繊維を3.0倍に延伸し、さらに捲縮を付与した後、カットし原綿を得た。 該原綿をクロスラッパーを用いてウェブとし、さらにニードルパンチを施し、不織布を得た。該不織布を5%ポリビニルアルコール液に含浸した後、搾液、乾燥した。その後、トリクロロエチレンにて海成分を抽出し、0.1dtexの極細繊維からなる、繊維シート状物を得た。
【0054】
該繊維シート状物を上述のポリウレタン含浸液に浸漬し、絞りロールにてポリウレタン含浸液の付き量を調節したのち、30%DMF水溶液中でポリウレタンを凝固せしめた。しかるのち、90℃の熱水でDMFとポリビニルアルコールを除去し、直ちにプレス、乾燥したのち、該シートに起毛処理した後、分散染料にて染色を施し皮革様シート状物を得た。
【0055】
このシート状物をJIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化は、JIS L1076に規定される判定基準で4号であった。また、強制劣化後、同様に摩耗試験したときの外観変化は4号であった。得られた皮革様シート状物は表1に示すとおり、耐久性、柔軟性に優れたものであった。
比較例1
PNPCの代わりに数平均分子量2000のPHCを用いる以外は実施例1と同様の方法でポリウレタン溶液およびそれを用いた皮革様シート状物を得た。
【0056】
このシート状物をJIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化は、JIS L1076に規定される判定基準で4号であった。また、強制劣化後、同様に摩耗試験したときの外観変化は4号であった。得られた皮革様シート状物は表1に示すとおり、耐久性には優れるものの、柔軟性の不十分なものであった。
比較例2
ペンタメチレングリコールとヘキサメチレングリコールの1:1混合物をジエチルカーボネートと反応させて、数平均分子量2000のPPHCを得た。
【0057】
上記PPHCをPNPCの代わりに用いる以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン溶液およびそれを用いた皮革様シート状物を得た。
【0058】
このシート状物をJIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化は、JIS L1076に規定される判定基準で4号であった。また、強制劣化後、同様に摩耗試験したときの外観変化は3号であった。得られた皮革様シート状物は表1に示すとおり、耐久性、柔軟性ともに不十分なものであった。
比較例3
PNPCの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸を縮合重合させることによって得られた数平均分子量2000のPMPAを用いる以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン溶液およびそれを用いた皮革様シート状物を得た。
【0059】
このシート状物をJIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化は、JIS L1076に規定される判定基準で3号であった。また、強制劣化後、同様に摩耗試験したときの外観変化は1号であった。得られた皮革様シート状物は表1に示すとおり、柔軟性には優れるものの、耐久性は不十分なものであった
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
実施例2
ペンタメチレングリコールとヘキサメチレングリコールの1:1の混合物をジエチルカーボネートと反応させて、数平均分子量2000のPPHCを得た。
【0065】
PNPCとPCLの混合物の代わりに、数平均分子量2000のPNPCと上記PPHCの70:30の混合物を用いる以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン溶液およびそれを用いた皮革様シート状物を得た。
【0066】
このシート状物をJIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化は、JIS L1076に規定される判定基準で4号であった。また、強制劣化後、同様に摩耗試験したときの外観変化は4号であった。得られた皮革様シート状物は表1に示すとおり、耐久性、柔軟性に優れたものであった。
比較例
PNPCとPPHCの混合比を40:60にする以外は実施例と同様の方法でポリウレタン溶液およびそれを用いた皮革様シート状物を得た。
【0067】
このシート状物をJIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化は、JIS L1076に規定される判定基準で4号であった。また、強制劣化後、同様に摩耗試験したときの外観変化は2号であった。得られた皮革様シート状物は表1に示すとおり、耐久性、柔軟性いずれも不十分なものであった。
【0068】
【表1】
Figure 0004066556
【0069】
表1から明らかなように、実施例1〜のものは、比較例1〜5のものに比して、いずれも耐久性あるいは柔軟性に優れており、本発明のポリウレタンおよび皮革様シート状物によりこれら2つの特性を満足するものであることがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、耐久性、柔軟性に優れたポリウレタン、およびそれからなる皮革様シート状物を提供することができ、かつ、また、優れた耐久性、柔軟性を併せ持つ衣料、家具、カーシート、鞄、手袋等を提供することができる。

Claims (4)

  1. 下記化学式1で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むポリウレタンであって化学式3、4、5で示されるエステル構造、化学式6で示されるカーボネート構造からなる群から選ばれた少なくとも1種類の構造を分子鎖中に含み、かつ、化学式1で示される構造の含有量が、化学式〜6で示される構造の含有量の合計の1〜9倍であることを特徴とするポリウレタン。
    Figure 0004066556
    Figure 0004066556
    Figure 0004066556
    Figure 0004066556
    Figure 0004066556
  2. 該ポリウレタンが、ジイソシアネート成分として、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、鎖伸長剤として、炭素数2〜8の脂肪族ジオールを用いて構成されているものである請求項1記載のポリウレタン。
  3. 繊度0.3dtex以下の極細繊維とポリウレタンを含む皮革様シート状物であって、該ポリウレタンとして、少なくとも請求項1および2のいずれかのポリウレタンを含み、かつ、JIS L1906で規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化が、JIS L1076に規定される判定基準で3号以上であることを特徴とする皮革様シート状物。
  4. 下記条件の強制劣化処理を行った後、JIS L1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後の外観変化が、JIS L1076に規定される判定基準で3号以上であることを特徴とする請求項3記載の皮革様シート状物。
    強制劣化処理:下記の処理を(1)、(2)の順で施す。
    (1)JIS B7753規定のサンシャインカーボンアーク灯式耐光性試験機で100時間光照射
    (2)温度70℃、相対湿度90%の雰囲気に1週間放置
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