JP4066077B2 - 振動変位測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物質を含む媒体中に超音波を照射し、その物質によって反射させた超音波を遅延電気信号として検出することにより、媒体中の物質の振動変位を感知する振動変位測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
振動変位を検出する従来のセンサは、接触型と非接触型に大別される。微小変位測定用の電気マイクロメータや、回転軸測定用のロータリエンコーダ、長変位測定用のリニアスケールなどは接触型センサに属する。これらの接触型センサは測定精度、応答時間などに問題を有する。一方、レーザ型センサや電気音響型センサなどは非接触型センサに属する。これらの非接触型センサは測定精度、測定方法の複雑さ、測定範囲の狭さ、装置の小規模化が困難であることなどに加え、耐環境性などにも問題を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、小型軽量で、デバイス構成が簡単で、低消費電力駆動が可能で、耐環境性にも優れる振動変位測定装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の振動変位測定装置は、圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る振動変位測定装置であって、前記組み合わせ電極は、前記圧電基板の上端面に設けられており、前記対向電極は前記圧電基板の下端面に設けられていて、前記対向電極の下端面には媒体が接触しており、前記媒体中には物質が含まれており、前記物質は時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動し、前記物質と前記対向電極との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、前記時間Tiに対応し、前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に入力電気信号が入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記媒体中に照射され、前記縦波は前記物質によって反射され、前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が前記距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号からの結合信号も検出され、前記信号分析器では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号との干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)における各振幅と、前記時間Tiとの関係から振幅の変動が検出され、前記物質の振動変位は前記振幅の変動から感知される。
【0005】
請求項2に記載の振動変位測定装置は、前記圧電基板の厚さに対する前記組み合わせ電極の電極周期長の割合が、前記圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する前記物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下である。
【0006】
請求項3に記載の振動変位測定装置は、第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る振動変位測定装置であって、前記第1組み合わせ電極は、前記第1圧電基板の下端面に設けられており、前記第1組み合わせ電極の下端面には媒体が接触しており、前記媒体中には物質が含まれており、前記第2組み合わせ電極は、前記第2圧電基板の上端面に設けられており、前記対向電極は前記第1および第2圧電基板の間に設けられていて、前記物質は時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動し、前記物質と前記対向電極との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、前記時間Tiに対応し、第1組み合わせ電極の前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に入力電気信号が入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記媒体中に照射され、前記縦波は前記物質によって反射され、前記第2組み合わせ電極の前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が前記距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号からの結合信号も検出され、前記信号分析器では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号との干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)における各振幅と、前記時間Tiとの関係から振幅の変動が検出され、前記物質の振動変位は前記振幅の変動から感知される。
【0007】
請求項4に記載の振動変位測定装置は、前記第1組み合わせ電極の代わりに第1櫛型電極が設けられ、前記第2組み合わせ電極の代わりに第2櫛型電極が設けられた振動変位測定装置であって、前記第1櫛型電極と前記対向電極との間に入力電気信号が入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記媒体中に照射され、前記縦波は前記物質によって反射され、前記第2櫛型電極と前記対向電極との間では、反射された縦波が前記距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号からの結合信号も検出される。
【0008】
請求項5に記載の振動変位測定装置は、前記媒体が液体または細胞質で成る。
【0009】
請求項6に記載の振動変位測定装置は、前記媒体と接触する部位に、新たに高分子膜が設けられている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の振動変位測定装置は、2つのタイプに大別される。第1のタイプの振動変位測定装置は圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る簡単な構造を有する。組み合わせ電極は、圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は圧電基板の下端面に設けられている。対向電極の下端面には媒体が接触しており、その媒体中には物質が含まれている。
【0011】
第1のタイプの振動変位測定装置において、櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号が入力されると、圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が媒体中に照射される。この縦波は媒体中の物質によって反射される。もしも、物質が時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動している場合、物質と対向電極との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、時間Tiに対応する。従って、反射された縦波は、櫛型電極Bと対向電極との間で、距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出される。一方、櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このようにして、遅延電気信号Diと結合信号との干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が生じる。干渉信号Riにおける各振幅と時間Tiとの関係から、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0012】
第1のタイプの振動変位測定装置では、圧電基板の厚さに対する組み合わせ電極の電極周期長の割合が、圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく媒体中に照射することが可能となる。
【0013】
第2のタイプの振動変位測定装置は第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る。第1組み合わせ電極は、第1圧電基板の下端面に設けられている。第1組み合わせ電極の下端面には媒体が接触しており、その媒体中には物質が含まれている。第2組み合わせ電極は、第2圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は第1および第2圧電基板の間に設けられている。
【0014】
第2のタイプの振動変位測定装置において、第1組み合わせ電極の櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号が入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が媒体中に照射される。このとき、第1圧電基板の厚さに対する第1組み合わせ電極の電極周期長の割合が、第1圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、第1圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく媒体中に照射することが可能となる。縦波は媒体中の物質によって反射される。もしも、物質が時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動している場合、物質と対向電極との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、時間Tiに対応する。従って、反射された縦波は、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間で、距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出される。一方、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このようにして、遅延電気信号Diと結合信号との干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が生じる。干渉信号Riにおける各振幅と時間Tiとの関係から、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0015】
第2のタイプの振動変位測定装置では、第1組み合わせ電極の代わりに第1櫛型電極が設けられ、第2組み合わせ電極の代わりに第2櫛型電極が設けられた構造が可能である。もしも、第1櫛型電極と対向電極との間に入力電気信号が入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が媒体中に照射される。この縦波は媒体中の物質によって反射される。もしも、物質が時間Tiに対応して振動している場合、物質と対向電極との距離Ziは、時間Tiに対応することから、反射された縦波は、第2櫛型電極と対向電極との間で、距離Ziに応じた遅延電気信号Diとして検出される。一方、第2櫛型電極と対向電極との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このようにして、遅延電気信号Diと結合信号との干渉信号Riが生じる。干渉信号Riにおける各振幅と時間Tiとの関係から、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0016】
第1および第2のタイプの振動変位測定装置では、媒体が液体や細胞質で成る構造が可能である。つまり、本発明の振動変位測定装置によれば、液体中の物質の振動変位や、細胞質中の血管の振動変位を求めること等が可能となる。
【0017】
第1および第2のタイプの振動変位測定装置では、媒体と接触する部位にシリコンゴム等の高分子膜が設けられた構造が可能である。つまり、第1のタイプでは対向電極の下端面に、第2のタイプでは第1組み合わせ電極の下端面や、第1櫛型電極の下端面に高分子膜が塗布された構造が可能である。このような構造では、高分子膜を塗布しない構造に比べて、縦波をさらに効率よく媒体中に照射することが可能となる。
【0018】
【実施例】
図1は本発明の振動変位測定装置の第1の実施例を示す断面図である。本実施例は圧電基板1、組み合わせ電極2、対向電極3、信号発生器4および信号分析器5から成る。圧電基板1は厚さ500μmの圧電セラミック薄板で成り、その分極軸の方向が厚さ方向と平行である構造が採用されている。組み合わせ電極2および対向電極3は、ともにアルミニウム薄膜で成り、圧電基板1の上端面および下端面にそれぞれ設けられている。対向電極3の下端面は媒体と接触している。媒体中には、物質が含まれており、その物質の音響インピーダンスは媒体とは異なる。このようにして、図1の振動変位測定装置は、小型軽量でしかも構造が簡単である。
【0019】
図2は組み合わせ電極2の平面図である。組み合わせ電極2は15個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、75μmの電極指幅(W)と、300μmの電極周期長(P)を有する。組み合わせ電極2は櫛型電極2Aおよび2Bから成る。
【0020】
図1の振動変位測定装置において、入力電気信号が信号発生器4から櫛型電極2Aと対向電極3の間に順次に印加されると、媒体中に縦波が照射される。この縦波は圧電基板1の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその媒体が水の場合には、水中の縦波速度(VW)はほぼ1,500 m/sである。従って、圧電基板1中の縦波速度(V)は4,500 m/sであることから、V値に対するVW値の割合、つまりVW/Vはほぼ0.333となる。一方、圧電基板1の厚さ(T)に対する組み合わせ電極2の電極周期長(P)の割合、つまりP/Tは300/500、つまり0.6となり、この値は0.333の4倍よりも小さい。このような関係、すなわちP/T < 4Vw/Vという条件のもとでは、圧電基板1の下端面に対し垂直な方向の縦波が効率よく水中に照射される。このような縦波は、たとえば細胞質中にも効率よく照射される。
【0021】
媒体中に照射された縦波は、図1に示されるように、物質によって反射される。もしも物質が時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動している場合、物質と対向電極3との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、時間Tiに対応する。従って、反射された縦波は、櫛型電極2Bと対向電極3との間で距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出される。一方、櫛型電極2Bと対向電極3との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号が干渉し、その結果、干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が生じる。もしも干渉信号Riのそれぞれの振幅と、時間Tiとの関係を図で表せば、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0022】
図1の振動変位測定装置を用いて人の脈拍を測定する場合、すなわち、細胞質中にある血管の振動変位を測定する場合には、人の手首の内側に対向電極3を接触させるとともに、組み合わせ電極2の電極指の方向が血管の軸に対してほぼ直交するような向きに振動変位測定装置を配置する。このようにして、血管の振動変位の測定が容易になる。
【0023】
図3は、図1の振動変位測定装置に印加された入力電気信号の周波数と挿入損失との関係を示す特性図である。図3によれば、周波数がほぼ13 MHzのときに挿入損失が最小となることは明らかである。
【0024】
図4は、図1の振動変位測定装置から得られた干渉信号Riの観測波形である。但し入力電気信号の周波数が13 MHzの場合で、その上、媒体として水が、物質として700 Hzで振動するシリコンチューブが採用されている場合を示す。図4によれば、時間Tiとともに振幅の周期的な変動が見られる。つまり、観測波形の包絡線が、シリコンチューブの700 Hzの振動に対応する。
【0025】
図5は図1の振動変位測定装置から水中へ照射された縦波の照射角度と、相対振幅との関係を示す特性図である。図5では、縦波の非垂直成分がかなり抑圧されていることがわかる。このことは、組み合わせ電極2を用いれば、ほぼ垂直成分から成る縦波を効率よく水中へ照射できることを示す。このようにして、ほぼ垂直成分から成る縦波をたとえば皮膚を通して細胞質中に効率よく照射することが可能になる。
【0026】
図6は本発明の振動変位測定装置の第2の実施例を示す断面図である。本実施例は第1圧電基板6、第1組み合わせ電極7、第2圧電基板8、第2組み合わせ電極9、シリコンゴム10、対向電極3、信号発生器4および信号分析器5から成る。第2組み合わせ電極9は第2圧電基板8の上端面に、第1組み合わせ電極7は第1圧電基板6の下端面にそれぞれ設けられ、対向電極3は第1圧電基板6と第2圧電基板8の間に設けられている。第1組み合わせ電極7の下端面はシリコンゴム10で覆われており、シリコンゴム10の下端面は媒体と接触している。
【0027】
図7は第1組み合わせ電極7および第2組み合わせ電極9の構成図である。第1組み合わせ電極7の電極指の方向は、第2組み合わせ電極9の電極指の方向と直交している。第1組み合わせ電極7は、アルミニウム薄膜で成り、20個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、57μmの電極指幅(W)と、225μmの電極周期長(P)を有する。第2組み合わせ電極9は第1組み合わせ電極7と同様な構造を有する。第1組み合わせ電極7は櫛型電極7Aおよび7Bから成り、第2組み合わせ電極9は櫛型電極9Aおよび9Bから成る。図7では、櫛型電極7Aは信号発生器4に接続され、櫛型電極9Bは信号分析器5に接続されている。
【0028】
図6の振動変位測定装置において、入力電気信号が信号発生器4から櫛型電極7Aと対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム10を介して媒体中に縦波が照射される。この縦波は第1圧電基板6の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその媒体が水の場合には、第1圧電基板6の縦波速度(V)に対する水中の縦波速度(VW)の割合、つまりVW/Vは、上述の通りほぼ0.333となる。一方、第1圧電基板6の厚さ(T)に対する第1組み合わせ電極7の電極周期長(P)の割合、つまりP/Tは225/500、つまり0.45となり、この値は0.333の4倍よりも小さい。このような関係、すなわちP/T < 4Vw/Vという条件のもとでは、第1圧電基板6の下端面に対し垂直な方向の縦波が、シリコンゴム10を介して効率よく水中に照射される。さらに、この縦波の指向性は、図1における縦波の指向性よりも鋭い。つまり、P/Tが4Vw/Vよりも小さければ小さいほど、指向性が鋭くなる。
【0029】
媒体中に照射された縦波は、図6に示されるように、物質によって反射される。もしも物質が時間Tiに対応して振動している場合、反射された縦波は、櫛型電極9Bと対向電極3との間で距離Ziに応じた遅延電気信号Diとして検出される。このとき、反射された縦波の指向性は、先に照射された縦波の指向性よりも鋭い。これは、第1組み合わせ電極7の電極指の方向が、第2組み合わせ電極9の電極指の方向と直交していることに因る。一方、櫛型電極9Bと対向電極3との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号が干渉し、その結果、干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Riのそれぞれの振幅と、時間Tiとの関係を図で表せば、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0030】
図8は組み合わせ電極2の電極指交叉領域を示す平面図である。
【0031】
図9は第1組み合わせ電極7の電極指交叉領域を示す平面図である。第1組み合わせ電極7の電極指交叉領域の大きさは、組み合わせ電極2の電極指交叉領域の大きさと同じである。また、櫛型電極7Aの電極指の総面積は、櫛型電極2Aの電極指の総面積と等しい。
【0032】
図8と図9を比較すると、第1組み合わせ電極7と組み合わせ電極2が次のような点で異なることがわかる。第1に電極対の数、第2に電極指幅(W)、そして第3に電極周期長(P)である。第1組み合わせ電極7の電極対の数は組み合わせ電極2の4/3であり、第1組み合わせ電極7の電極周期長(P)は組み合わせ電極2の3/4であり、第1組み合わせ電極7の電極指幅(W)は組み合わせ電極2の3/4である。実際に、組み合わせ電極2を採用した場合に比べて、第1組み合わせ電極7を採用した場合の方が、垂直成分の指向性に優れた縦波を照射できることが確認されている。このことは、入力用電極の電極指の総面積が不変であるならば、その入力用電極の電極対の数が多いほど、物質中に照射される縦波の非垂直成分が抑圧されることを意味する。すなわち、入力用電極の電極指の総面積が不変であるならば、その入力用電極の電極対の数が縦波の指向性に影響を及ぼす。
【0033】
図10は本発明の振動変位測定装置の第3の実施例を示す断面図である。本実施例は、第1組み合わせ電極7および第2組み合わせ電極9の代わりに第1組み合わせ電極11および第2組み合わせ電極12がそれぞれ用いられていることを除いて、図6と同様な構造を有する。
【0034】
図11は第1組み合わせ電極11および第2組み合わせ電極12の構成図である。第1組み合わせ電極11の電極指の方向は、第2組み合わせ電極12の電極指の方向と直交している。第1組み合わせ電極11は、アルミニウム薄膜で成り、20個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、225μmの電極周期長(P)を有する。第1組み合わせ電極11は櫛型電極11Aおよび11Bから成り、この櫛型電極11A は45μmの電極指幅(WA)を有し、櫛型電極11Bは12μmの電極指幅(WB)を有する。第2組み合わせ電極12は第1組み合わせ電極11と同様な構造を有する。但し、組み合わせ電極12の櫛型電極12Aは12μmの電極指幅(WA)を有し、櫛型電極12Bは45μmの電極指幅(WB)を有する。図10では、櫛型電極11Aは信号発生器4に接続され、櫛型電極12Bは信号分析器5に接続されている。
【0035】
図10の振動変位測定装置において、入力電気信号が信号発生器4から櫛型電極11Aと対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム10を介して媒体中に縦波が照射される。この縦波は第1圧電基板6の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその媒体が水の場合には、P/T < 4Vw/Vという条件が満たされることから、第1圧電基板6の下端面に対し垂直な方向の縦波が、シリコンゴム10を介して効率よく水中に照射される。さらに、この縦波の指向性は、図6における縦波の指向性よりも鋭い。つまり、第1組み合わせ電極11におけるWA / WBという条件により、縦波の指向性がさらに鋭くなる。
【0036】
媒体中に照射された縦波は、図10に示されるように、物質によって反射される。もしも物質が時間Tiに対応して振動している場合、反射された縦波は、櫛型電極12Bと対向電極3との間で距離Ziに応じた遅延電気信号Diとして検出される。このとき、反射された縦波の指向性は、先に照射された縦波の指向性よりも鋭い。これは、第1組み合わせ電極11の電極指の方向が、第2組み合わせ電極12の電極指の方向と直交していることに因る。一方、櫛型電極12Bと対向電極3との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号が干渉し、その結果、干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Riのそれぞれの振幅と、時間Tiとの関係を図で表せば、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0037】
図12は本発明の振動変位測定装置の第4の実施例を示す断面図である。本実施例は、第1組み合わせ電極7および第2組み合わせ電極9の代わりに第1櫛型電極13および第2櫛型電極14がそれぞれ用いられていることと、第1櫛型電極13および第2櫛型電極14の電極指の方向が互いに平行であることを除いて、図6と同様な構造を有する。
【0038】
図13は第1櫛型電極13および第2櫛型電極14の構成図である。第1櫛型電極13および第2櫛型電極14の電極指の方向は互いに平行である。第1櫛型電極13は40個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、175μmの電極指幅(W)と、225μmの電極周期長(P)を有する。第2櫛型電極14は第1櫛型電極13と同様な構造を有する。
【0039】
図12の振動変位測定装置において、入力電気信号が信号発生器4から第1櫛型電極13と対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム10を介して媒体中に縦波が照射される。この縦波は第1圧電基板6の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその媒体が水の場合には、P/T < 4Vw/Vという条件が満たされることから、第1圧電基板6の下端面に対し垂直な方向の縦波が、シリコンゴム10を介して効率よく水中に照射される。
【0040】
媒体中に照射された縦波は、図12に示されるように、物質によって反射される。もしも物質が時間Tiに対応して振動している場合、反射された縦波は、第2櫛型電極14と対向電極3との間で距離Ziに応じた遅延電気信号Diとして検出される。一方、第2櫛型電極14と対向電極3との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号が干渉し、その結果、干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Riのそれぞれの振幅と、時間Tiとの関係を図で表せば、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。
【0041】
図12の振動変位測定装置を用いて人の脈拍を測定する場合、すなわち、細胞質中にある血管の振動変位を測定する場合には、第1櫛型電極13および第2櫛型電極14の電極指の方向が血管の軸に対してほぼ直交するような向きに振動変位測定装置を配置する。このような配置を採用することにより、細胞質中に照射された縦波が血管によって反射されやすくなるばかりでなく、遅延電気信号Diとして検出されやすくなる。このようにして、血管の振動変位の測定が容易になる。すなわち、図12の振動変位測定装置は、棒状の物質の振動変位の測定に有効である。
【0042】
【発明の効果】
本発明の第1のタイプの振動変位測定装置は圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る。組み合わせ電極は、圧電基板の上端面に、対向電極は圧電基板の下端面に設けられている。対向電極の下端面には媒体が接触しており、その媒体中には物質が含まれている。櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号が入力されると、圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が媒体中に照射される。このとき、圧電基板の厚さに対する組み合わせ電極の電極周期長の割合が、圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下である構造を採用することにより、圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく媒体中に照射することが可能となる。縦波は媒体中の物質によって反射されるが、この物質が時間Tiに対応して振動している場合、物質と対向電極との距離Ziは、時間Tiに対応する。従って、反射された縦波は、櫛型電極Bと対向電極との間で、距離Ziに応じた遅延電気信号Diとして検出される。一方、櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このようにして、遅延電気信号Diと結合信号との干渉信号Riが生じる。信号分析器では、干渉信号Riにおける各振幅と時間Tiとの関係から、時間の変化に伴う振幅の変動が検出され、振幅の変動から物質の振動変位が感知される。
【0043】
本発明の第2のタイプの振動変位測定装置は第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る。第1組み合わせ電極は、第1圧電基板の下端面に設けられている。第1組み合わせ電極の下端面には媒体が接触しており、その媒体中には物質が含まれている。第2組み合わせ電極は、第2圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は第1および第2圧電基板の間に設けられている。第1組み合わせ電極の櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号が入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が媒体中に照射される。このとき、第1圧電基板の厚さに対する第1組み合わせ電極の電極周期長の割合が、第1圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、第1圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく媒体中に照射することが可能となる。縦波は媒体中の物質によって反射されるが、物質が時間Tiに対応して振動している場合、物質と対向電極との距離Ziは、時間Tiに対応する。従って、反射された縦波は、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間で、距離Ziに応じた遅延電気信号Diとして検出される。一方、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号からの結合信号も検出される。このようにして、遅延電気信号Diと結合信号との干渉信号Riが生じる。信号分析器では、干渉信号Riにおける各振幅と時間Tiとの関係から、時間の変化に伴う振幅の変動が検出される。このようにして、物質の振動変位は振幅の変動から感知される。また、第2のタイプの振動変位測定装置では、第1組み合わせ電極の代わりに第1櫛型電極が設けられ、第2組み合わせ電極の代わりに第2櫛型電極が設けられた構造が可能である。
【0044】
第1および第2のタイプの振動変位測定装置では、媒体が液体や細胞質で成る構造が可能である。このようにして、液体中の物質の振動変位や、細胞質中の血管の振動変位を求めること等が可能となる。また、媒体と接触する部位にシリコンゴム等の高分子膜が設けられた構造、すなわち、第1のタイプでは対向電極の下端面に、第2のタイプでは第1組み合わせ電極の下端面や、第1櫛型電極の下端面に高分子膜が塗布された構造を採用することにより、縦波をさらに効率よく媒体中に照射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の振動変位測定装置の第1の実施例を示す断面図。
【図2】組み合わせ電極2の平面図。
【図3】図1の振動変位測定装置に印加された入力電気信号の周波数と挿入損失との関係を示す特性図。
【図4】図1の振動変位測定装置から得られた干渉信号Riの観測波形。
【図5】図1の振動変位測定装置から水中へ照射された縦波の照射角度と、相対振幅との関係を示す特性図。
【図6】本発明の振動変位測定装置の第2の実施例を示す断面図。
【図7】第1組み合わせ電極7および第2組み合わせ電極9の構成図。
【図8】組み合わせ電極2の電極指交叉領域を示す平面図。
【図9】第1組み合わせ電極7の電極指交叉領域を示す平面図。
【図10】本発明の振動変位測定装置の第3の実施例を示す断面図。
【図11】第1組み合わせ電極11および第2組み合わせ電極12の構成図。
【図12】本発明の振動変位測定装置の第4の実施例を示す断面図。
【図13】第1櫛型電極13および第2櫛型電極14の構成図。
【符号の説明】
1 圧電基板
2 組み合わせ電極
3 対向電極
4 信号発生器
5 信号分析器
6 第1圧電基板
7 第1組み合わせ電極
8 第2圧電基板
9 第2組み合わせ電極
10 シリコンゴム
11 第1組み合わせ電極
12 第2組み合わせ電極
13 第1櫛型電極
14 第2櫛型電極
2A,2B 櫛型電極
7A,7B 櫛型電極
9A,9B 櫛型電極
11A,11B 櫛型電極
12A,12B 櫛型電極

Claims (6)

  1. 圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る振動変位測定装置であって、前記組み合わせ電極は、前記圧電基板の上端面に設けられており、前記対向電極は前記圧電基板の下端面に設けられていて、前記対向電極の下端面には媒体が接触しており、前記媒体中には物質が含まれており、前記物質は時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動し、前記物質と前記対向電極との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、前記時間Tiに対応し、前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に入力電気信号が入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記媒体中に照射され、前記媒体中に照射される縦波の非垂直成分は、前記組み合わせ電極の電極指の総面積を変えずに電極対の数を多くすることによって抑圧され、前記縦波は前記物質によって反射され、前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が前記距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号からの結合信号も検出され、前記信号分析器では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号との干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)における各振幅と、前記時間Tiとの関係から振幅の変動が検出され、前記物質の振動変位は前記振幅の変動から感知される振動変位測定装置。
  2. 前記圧電基板の厚さに対する前記組み合わせ電極の電極周期長の割合は、前記圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する前記物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下である請求項1に記載の振動変位測定装置。
  3. 第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、信号分析器から成る振動変位測定装置であって、前記第1組み合わせ電極は、前記第1圧電基板の下端面に設けられており、前記第1組み合わせ電極の下端面には媒体が接触しており、前記媒体中には物質が含まれており、前記第2組み合わせ電極は、前記第2圧電基板の上端面に設けられており、前記第1組み合わせ電極の電極指の方向は、前記第2組み合わせ電極の電極指の方向と直交しており、前記対向電極は前記第1および第2圧電基板の間に設けられていて、前記物質は時間Ti (i=1, 2,…, n)に対応して振動し、前記物質と前記対向電極との距離Zi (i=1, 2,…, n)は、前記時間Tiに対応し、第1組み合わせ電極の前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に入力電気信号が入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記媒体中に照射され、前記媒体中に照射される縦波の非垂直成分は、前記第1組み合わせ電極の電極指の総面積を変えずに電極対の数を多くすることによって抑圧され、前記縦波は前記物質によって反射され、前記第2組み合わせ電極の前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が前記距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号からの結合信号も検出され、前記信号分析器では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号との干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)における各振幅と、前記時間Tiとの関係から振幅の変動が検出され、前記物質の振動変位は前記振幅の変動から感知される振動変位測定装置。
  4. 前記第1組み合わせ電極の代わりに第1櫛型電極が設けられ、前記第2組み合わせ電極の代わりに第2櫛型電極が設けられた振動変位測定装置であって、 前記第1櫛型電極および前記第2櫛型電極の電極指の方向は互いに平行であり、前記第1櫛型電極と前記対向電極との間に入力電気信号が入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記媒体中に照射され、前記媒体中に照射される縦波の非垂直成分は、前記第1櫛型電極の電極指の総面積を変えずに電極対の数を多くすることによって抑圧され、前記縦波は前記物質によって反射され、前記第2櫛型電極と前記対向電極との間では、反射された縦波が前記距離Ziに応じた遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号からの結合信号も検出される請求項3に記載の振動変位測定装置。
  5. 前記媒体が液体または細胞質で成る請求項1,2,3または4に記載の振動変位測定装置。
  6. 前記媒体と接触する部位に、新たに高分子膜が設けられた請求項1,2,3,4または5に記載の振動変位測定装置。
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