JP4035707B2 - 超音波速度測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物質の一方の界面を介してその物質中に超音波を照射し、物質のもう一方の界面によって反射させた超音波を遅延電気信号として検出することにより、物質中の音速Vを算出する超音波速度測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液中の音速を測定するための超音波技術は、生物物理学、医科学、音響学、工業、物理化学等の様々な分野において、近年、広く応用されている。液中に超音波を照射するには、厚み振動モードの矩形状圧電トランスデューサが従来広く用いられている。液体中の超音波を検出するには、このような従来型のトランスデューサは、入力用だけでなく出力用電極としても用いられていたことから、入力電気信号と出力電気信号を区別するためにサーキュレータ等を必要とした。従って、このような従来型のトランスデューサは、複雑な回路構成を必要とし、応答性にも問題があった。一方、圧電基板に設けられたすだれ状トランスデューサは、圧電基板の厚さが波長に比べて十分に厚い場合には、圧電基板が液体と接触するときに液体と固体との界面において漏洩波トランスデューサとして機能する。このとき、圧電基板を伝搬する漏洩弾性表面波は速度分散のない唯一のモードしか存在しない。このようにして、従来の漏洩波トランスデューサは、超音波の照射方向を圧電基板に対し直交させることが難しいという問題を有しており、従って、測定精度に問題があるばかりでなく、安定な駆動も困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、小型軽量で、デバイス構成が簡単で、低消費電力駆動が可能で、耐環境性にも優れる超音波速度測定装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の超音波速度測定装置は、圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る超音波速度測定装置であって、前記組み合わせ電極は、前記圧電基板の上端面に設けられており、前記対向電極は前記圧電基板の下端面に設けられていて、前記対向電極の下端面には、物質の一方の界面が接触しており、前記周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させ、前記入力電気信号Eiは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有し、前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に前記入力電気信号Eiが順次に入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記物質中に照射され、前記縦波は、前記物質の前記一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出され、前記周波数分析手段では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号Ciとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出され、前記干渉信号Riにおける各振幅と、前記周波数fiとの関係から周波数周期Δfが検出され、前記物質中の音速Vは、前記物質の前記もう一方の界面と前記圧電基板との距離Zの2倍と、前記周波数周期Δfとの積から算出される。
【0005】
請求項2に記載の超音波速度測定装置は、前記圧電基板の厚さに対する前記組み合わせ電極の電極周期長の割合が、前記圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する前記物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下である。
【0006】
請求項3に記載の超音波速度測定装置は、前記入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴い、前記交流バイアス信号Siは前記周波数fiをそれぞれ有し、前記信号分析器では、前記遅延電気信号Diと前記交流バイアス信号Siとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出される。
【0007】
請求項4に記載の超音波速度測定装置は、第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る超音波速度測定装置であって、前記第1組み合わせ電極は、前記第1圧電基板の下端面に設けられており、前記第1組み合わせ電極の下端面には、物質の一方の界面が接触しており、前記第2組み合わせ電極は、前記第2圧電基板の上端面に設けられており、前記対向電極は前記第1および第2圧電基板の間に設けられていて、前記周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させ、前記入力電気信号Eiは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有し、前記第1組み合わせ電極の前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に前記入力電気信号Eiが順次に入力されることにより、前記第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記物質中に照射され、前記縦波は、前記物質の前記一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、前記第2組み合わせ電極の前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出され、前記周波数分析手段では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号Ciとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出され、前記干渉信号Riにおける各振幅と、前記周波数fiとの関係から周波数周期Δfが検出され、前記物質中の音速Vは、前記周波数周期Δfから算出される。
【0008】
請求項5に記載の超音波速度測定装置は、前記第1組み合わせ電極の代わりに第1櫛型電極が設けられ、前記第2組み合わせ電極の代わりに第2櫛型電極が設けられた超音波速度測定装置であって、前記第1櫛型電極と前記対向電極との間に前記入力電気信号Eiが順次に入力されることにより、前記第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記物質中に照射され、前記縦波は、前記物質の前記一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、前記第2櫛型電極と前記対向電極との間では、反射された縦波が遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出される。
【0009】
請求項6に記載の超音波速度測定装置は、前記物質が液体または細胞質で成る。
【0010】
請求項7に記載の超音波速度測定装置は、前記物質の前記一方の界面と接触する部位に、新たに高分子膜が設けられている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の超音波速度測定装置は、2つのタイプに大別される。第1のタイプの超音波速度測定装置は、圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る簡単な構造を有する。組み合わせ電極は、圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は圧電基板の下端面に設けられている。対向電極の下端面には、物質の一方の界面が接触している。周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させる。入力電気信号Eiは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有する。
【0012】
もしも、櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号Eiが順次に入力されると、圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が物質中に照射される。この縦波は、物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射される。反射された縦波は、櫛型電極Bと対向電極との間で、遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出される。一方、櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出される。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと結合信号Ciとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が生じる。干渉信号Riにおける各振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。物質中の音速Vは、物質のもう一方の界面と圧電基板との距離Zの2倍と、周波数周期Δfとの積から算出される。つまり、物質中の音速Vは、V=2ZΔfで表される。
【0013】
第1のタイプの超音波速度測定装置では、圧電基板の厚さに対する組み合わせ電極の電極周期長の割合が、圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく物質中に照射することが可能となる。
【0014】
第1のタイプの超音波速度測定装置では、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fiをそれぞれ有する。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出される。干渉信号Riにおける各振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。物質中の音速Vは、物質のもう一方の界面と圧電基板との距離Zの2倍と、周波数周期Δfとの積から算出される。つまり、物質中の音速Vは、V=2ZΔfで表される。
【0015】
第2のタイプの超音波速度測定装置は、第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る。第1組み合わせ電極は、第1圧電基板の下端面に設けられている。第1組み合わせ電極の下端面には、物質の一方の界面が接触している。第2組み合わせ電極は、第2圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は第1および第2圧電基板の間に設けられている。周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させる。このとき、入力電気信号Eiは、周波数fiをそれぞれ有する。
【0016】
もしも、第1組み合わせ電極の櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号Eiが順次に入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が物質中に照射される。このとき、第1圧電基板の厚さに対する第1組み合わせ電極の電極周期長の割合が、第1圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、第1圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく物質中に照射することが可能となる。縦波は、物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射される。このとき、第1組み合わせ電極の電極指の方向と、第2組み合わせ電極の電極指の方向とが直交するような構造を採用することにより、反射された縦波の指向性を、先に照射された縦波の指向性よりも鋭くすることができる。反射された縦波は、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間で、遅延電気信号Diとして検出される。一方、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと結合信号Ciとの干渉信号Riが検出される。干渉信号Riおける各振幅と、周波数fiとの関係から周波数周期Δfが得られ、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。
【0017】
第2のタイプの超音波速度測定装置では、第1および第2組み合わせ電極の代わりに第1および第2櫛型電極がそれぞれ設けられた構造が可能である。もしも、第1櫛型電極と対向電極との間に入力電気信号Eiが順次に入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が物質中に照射される。この縦波は、物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、反射された縦波は、第2櫛型電極と対向電極との間で遅延電気信号Diとして検出される。また、第2櫛型電極と対向電極との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと結合信号Ciとの干渉信号Riが検出される。また、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fiをそれぞれ有する。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出される。
【0018】
第1および第2のタイプの超音波速度測定装置では、物質が液体や細胞質で成る構造が可能である。つまり、本発明の超音波速度測定装置によれば、固体だけでなく、液体や細胞質中の音速を求めることが可能である。
【0019】
第1および第2のタイプの超音波速度測定装置では、物質の一方の界面と接触する部位に、シリコンゴム等の高分子膜が塗布された構造が可能である。つまり、第1のタイプでは対向電極の下端面に、第2のタイプでは第1組み合わせ電極の下端面や、第1櫛型電極の下端面に高分子膜が塗布された構造が可能である。このような構造では、高分子膜を塗布しない構造に比べて、縦波をさらに効率よく物質中に照射することが可能となる。
【0020】
【実施例】
図1は本発明の超音波速度測定装置の第1の実施例を示す断面図である。本実施例は圧電基板1、組み合わせ電極2、対向電極3、周波数掃引手段4、周波数分析手段5および反射板6から成る。圧電基板1は厚さ500μmの圧電セラミック薄板で成り、その分極軸の方向が厚さ方向と平行である構造が採用されている。組み合わせ電極2および対向電極3は、ともにアルミニウム薄膜で成り、圧電基板1の上端面および下端面にそれぞれ設けられている。対向電極3の下端面は物質の一方の界面と接触している。反射板6は、物質のもう一方の界面と接触しており、圧電基板1の下端面と平行になるように設置されている。このようにして、図1の超音波速度測定装置は、小型軽量でしかも構造が簡単である。
【0021】
図2は組み合わせ電極2の平面図である。組み合わせ電極2は15個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、75μmの電極指幅(W)と、300μmの電極周期長(P)を有する。組み合わせ電極2は櫛型電極2Aおよび2Bから成る。
【0022】
図1の超音波速度測定装置において、周波数掃引手段4からの入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)が櫛型電極2Aと対向電極3の間に順次に印加されると、物質の一方の界面を介して、その物質中に縦波が照射される。この縦波は圧電基板1の下端面に対し垂直な成分から成る。また、入力電気信号Eiは周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有する。もしもその物質が水の場合には、水中の縦波速度(VW)はほぼ1,500 m/sである。従って、圧電基板1中の縦波速度(V)は4,500 m/sであることから、V値に対するVW値の割合、つまりVW/Vはほぼ0.333となる。一方、圧電基板1の厚さ(T)に対する組み合わせ電極2の電極周期長(P)の割合、つまりP/Tは300/500、つまり0.6となり、この値は0.333の4倍よりも小さい。このような関係、すなわちP/T < 4Vw/Vという条件のもとでは、圧電基板1の下端面に対し垂直な方向の縦波が効率よく水中に照射される。このような縦波は、たとえば細胞質中にも効率よく照射される。
【0023】
物質の一方の界面を介して照射された縦波が、図1に示されるように、反射板6によって反射されるか、または物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射されると、反射された縦波が櫛型電極2Bと対向電極3との間で遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出される。一方、櫛型電極2Bと対向電極3との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号Ciがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは、反射板6と圧電基板1との距離をZとすると、2ZとΔfとの積から算出される。つまり、物質中の音速Vは、V=2ZΔfで表される。
【0024】
図1の超音波速度測定装置においては、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有する。もしも、このような交流バイアス信号Si を伴った入力電気信号Eiが櫛型電極2Aと対向電極3の間に順次に印加されると、物質の一方の界面を介して、その物質中に縦波が照射される。この縦波は圧電基板1の下端面に対し垂直な成分から成る。また、縦波が反射板6によって反射されると、反射された縦波が、櫛型電極2Bと対向電極3との間で遅延電気信号Diとして検出される。このとき、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは、V=2ZΔfで表される。
【0025】
図3は本発明の超音波速度測定装置の第2の実施例を示す断面図である。本実施例は第1圧電基板7、第1組み合わせ電極8、第2圧電基板9、第2組み合わせ電極10、対向電極3、周波数掃引手段4、周波数分析手段5、反射板6およびシリコンゴム11から成る。反射板6は第1圧電基板7の下端面と平行な位置に備えられている。第2組み合わせ電極10は第2圧電基板9の上端面に、第1組み合わせ電極8は第1圧電基板7の下端面にそれぞれ設けられ、対向電極3は第1圧電基板7と第2圧電基板9の間に設けられている。
【0026】
図4は第1組み合わせ電極8および第2組み合わせ電極10の構成図である。第1組み合わせ電極8の電極指の方向は、第2組み合わせ電極10の電極指の方向と直交している。第1組み合わせ電極8は、アルミニウム薄膜で成り、20個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、57μmの電極指幅(W)と、225μmの電極周期長(P)を有する。第2組み合わせ電極10は第1組み合わせ電極8と同様な構造を有する。第1組み合わせ電極8は櫛型電極8Aおよび8Bから成り、第2組み合わせ電極10は櫛型電極10Aおよび10Bから成る。図3では、櫛型電極8Aは周波数掃引手段4に接続され、櫛型電極10Bは周波数分析手段5に接続されている。
【0027】
図3の超音波速度測定装置において、周波数掃引手段4からの入力電気信号Eiが櫛型電極8Aと対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム11を介して、その物質中に縦波が照射される。この縦波は第1圧電基板7の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその物質が水の場合には、第1圧電基板7の縦波速度(V)に対する水中の縦波速度(VW)の割合、つまりVW/Vは、上述の通りほぼ0.333となる。一方、第1圧電基板7の厚さ(T)に対する第1組み合わせ電極8の電極周期長(P)の割合、つまりP/Tは225/500、つまり0.45となり、この値は0.333の4倍よりも小さい。このような関係、すなわちP/T < 4Vw/Vという条件のもとでは、第1圧電基板7の下端面に対し垂直な方向の縦波が、シリコンゴム11を介して効率よく水中に照射される。さらに、この縦波の指向性は、図1における縦波の指向性よりも鋭い。つまり、P/Tが4Vw/Vよりも小さければ小さいほど、指向性が鋭くなる。
【0028】
シリコンゴム11を介して照射された縦波が、図3に示されるように、反射板6によって反射されると、反射された縦波が櫛型電極10Bと対向電極3との間で遅延電気信号Diとして検出される。このとき、反射された縦波の指向性は、先に照射された縦波の指向性よりも鋭い。これは、第1組み合わせ電極8の電極指の方向が、第2組み合わせ電極10の電極指の方向と直交していることに因る。一方、櫛型電極10Bと対向電極3との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号Ciがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。さらに、図3の超音波速度測定装置を用いれば、図1の場合よりもさらに精密に物質中の音速Vを求めることが可能となる。
【0029】
図5は、図3の超音波速度測定装置から水中へ照射された縦波の照射角度と、相対振幅との関係を示す特性図である。図5では、縦波の非垂直成分がかなり抑圧されていることがわかる。このことは、第1組み合わせ電極8を用いれば、ほぼ垂直成分から成る縦波を効率よく水中へ照射することができることを示す。このようにして、ほぼ垂直成分から成る縦波をたとえば皮膚を通して細胞質中に効率よく照射することが可能になる。
【0030】
図6は組み合わせ電極2の電極指交叉領域を示す平面図である。
【0031】
図7は第1組み合わせ電極8の電極指交叉領域を示す平面図である。第1組み合わせ電極8の電極指交叉領域の大きさは、組み合わせ電極2の電極指交叉領域の大きさと同じである。また、櫛型電極8Aの電極指の総面積は、櫛型電極2Aの電極指の総面積と等しい。
【0032】
図6と図7を比較すると、第1組み合わせ電極8と組み合わせ電極2が次のような点で異なることがわかる。第1に電極対の数、第2に電極指幅(W)、そして第3に電極周期長(P)である。第1組み合わせ電極8の電極対の数は組み合わせ電極2の4/3であり、第1組み合わせ電極8の電極周期長(P)は組み合わせ電極2の3/4であり、第1組み合わせ電極8の電極指幅(W)は組み合わせ電極2の3/4である。実際に、組み合わせ電極2を採用した場合に比べて、第1組み合わせ電極8を採用した場合の方が、垂直成分の指向性に優れた縦波を照射できることが確認されている。このことは、入力用電極の電極指の総面積が不変であるならば、その入力用電極の電極対の数が多いほど、物質中に照射される縦波の非垂直成分が抑圧されることを意味する。すなわち、入力用電極の電極指の総面積が不変であるならば、その入力用電極の電極対の数が縦波の指向性に影響を及ぼす。
【0033】
図8は、図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形である。但し図8は、入力電気信号Eiが櫛型電極8Aと対向電極3の間に印加される時間が短い場合を示す。従って、図8では干渉信号Riのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が見られない。このようにして、まず結合信号Ciのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が図中の左側に現れ、次に遅延電気信号Diのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が図中の右側に現れる。
【0034】
図9は、図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形である。但し図9は、干渉信号Riのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が生じる場合を示す。つまり、結合信号Ciのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)と遅延電気信号Diのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が互いに干渉し、その結果、重複信号、すなわち干渉信号Riのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が生じる。このとき、この干渉信号Riのうちの1つは最大振幅を有する。たとえば、結合信号C3と遅延電気信号D3が互いに干渉して、周波数f3を有する干渉信号R3が生じる。このようにして、図9の左側、右側および中央に現れる信号は、たとえば、結合信号C3、遅延電気信号D3および干渉信号R3を示す。
【0035】
図10は、図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形である。但し図10は、干渉信号Riのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が生じる場合を示す。図9と同様に、結合信号Ciのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)と遅延電気信号Diのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が互いに干渉し、その結果、干渉信号Riのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が生じる。このとき、この干渉信号Riのうちの1つは、図9の場合とは異なり、最小振幅を有する。このようにして、図10の左側、右側および中央に現れる信号は、たとえば、結合信号C7、遅延電気信号D7および周波数f7を有する干渉信号R7を示す。
【0036】
図11は干渉信号Riの電圧の振幅と、周波数fiとの関係を示す特性図である。つまり図11は、図9および10そしてその他の関連するデータから得られる各振幅の、周波数fiに対する相関性を表したものである。図11における2つの最大振幅間、または2つの最小振幅間の周波数差が周波数周期Δfに相当する。
【0037】
図12は豚肉の4種類の部分と、それらを伝搬する音速Vとの関係を示す特性図である。フィレ肉とバラ肉における音速Vは、V=2ZΔfの式から算出されたものである。筋肉とラードにおける音速Vは、参照データから引用したものである。
このようにして、フィレ肉、バラ肉、筋肉およびラードにおける音速Vは、それぞれ1592.6、1551.4、1580.0および 1443.0 m/sとなる。フィレ肉の音速Vがバラ肉よりも速いことは、筋肉の音速Vがラードよりも速いことと相関している。
【0038】
図3の超音波速度測定装置においては、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有する。もしも、このような交流バイアス信号Si を伴った入力電気信号Eiが櫛型電極8Aと対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム11を介して、その物質中に縦波が照射される。縦波が反射板6によって反射されると、反射された縦波が、櫛型電極10Bと対向電極3との間で遅延電気信号Diとして検出される。このとき、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。なお、交流バイアス信号Siを伴った入力電気信号Eiを用いることにより、より安定な駆動を実現できることが確認されている。
【0039】
図13は、図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形である。但し図13は、交流バイアス信号Siを伴った入力電気信号Eiが櫛型電極8Aと対向電極3の間に印加された場合の観測波形を示す。図13では常に交流バイアス信号Siのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が観測されているが、その交流バイアス信号Siのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)に重複する形で図中の左側と右側に現れる信号は、それぞれ図8の左側と右側に現れる信号に対応する。つまり図13では、交流バイアス信号Siのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)と遅延電気信号Diのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が互いに干渉し、その結果、干渉信号Riのうちの1つ(周波数fiのうちの1つに対応するもの)が生じる。このとき、この干渉信号Riのうちの1つは最大振幅を有する。たとえば、交流バイアス信号S4と遅延電気信号D4が互いに干渉し、その結果、周波数f4を有する干渉信号R4が生じる。
【0040】
図14は、図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形である。但し図14は、交流バイアス信号Siを伴った入力電気信号Eiが櫛型電極8Aと対向電極3の間に印加された場合の観測波形を示す。図13と同様に図14においても、たとえば、交流バイアス信号S8と遅延電気信号D8が互いに干渉し、その結果、周波数f8を有する干渉信号R8が生じる。このとき、この干渉信号R8は、図13の場合とは異なり、最小振幅を有する。このようにして、図14では、最小振幅帯(図13の右側に現れる信号に対応)が存在する。
【0041】
もしも、図13および14そしてその他の関連するデータから得られる各振幅の、周波数fiに対する相関性を表せば、図11と同様にして、2つの最大振幅間、または2つの最小振幅間の周波数差から周波数周期Δfが得られる。
【0042】
図15は本発明の超音波速度測定装置の第3の実施例を示す断面図である。本実施例は、第1組み合わせ電極8および第2組み合わせ電極10の代わりに第1組み合わせ電極12および第2組み合わせ電極13がそれぞれ用いられていることを除いて、図3と同様な構造を有する。
【0043】
図16は第1組み合わせ電極12および第2組み合わせ電極13の構成図である。第1組み合わせ電極12の電極指の方向は、第2組み合わせ電極13の電極指の方向と直交している。第1組み合わせ電極12は、アルミニウム薄膜で成り、20個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、225μmの電極周期長(P)を有する。第1組み合わせ電極12は櫛型電極12Aおよび12Bから成り、この櫛型電極12A は45μmの電極指幅(WA)を有し、櫛型電極12Bは12μmの電極指幅(WB)を有する。第2組み合わせ電極13は第1組み合わせ電極12と同様な構造を有する。但し、組み合わせ電極13の櫛型電極13Aは12μmの電極指幅(WA)を有し、櫛型電極13Bは45μmの電極指幅(WB)を有する。図15では、櫛型電極12Aは周波数掃引手段4に接続され、櫛型電極13Bは周波数分析手段5に接続されている。
【0044】
図15の超音波速度測定装置において、周波数掃引手段4からの入力電気信号Eiが櫛型電極12Aと対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム11を介して、その物質中に縦波が照射される。この縦波は第1圧電基板7の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその物質が水の場合には、P/T < 4Vw/Vという条件が満たされることから、第1圧電基板7の下端面に対し垂直な方向の縦波が、シリコンゴム11を介して効率よく水中に照射される。さらに、この縦波の指向性は、図3における縦波の指向性よりも鋭い。つまり、第1組み合わせ電極12におけるWA / WBという条件により、縦波の指向性がさらに鋭くなる。
【0045】
シリコンゴム11を介して照射された縦波が、図15に示されるように、反射板6によって反射されると、反射された縦波が櫛型電極13Bと対向電極3との間で遅延電気信号Diとして検出される。このとき、反射された縦波の指向性は、先に照射された縦波の指向性よりも鋭い。これは、第1組み合わせ電極12の電極指の方向が、第2組み合わせ電極13の電極指の方向と直交していることに因る。一方、櫛型電極13Bと対向電極3との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号Ciがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。さらに、図15の超音波速度測定装置を用いれば、図3の場合よりもさらに精密に物質中の音速Vを求めることが可能となる。
【0046】
図17は本発明の超音波速度測定装置の第4の実施例を示す断面図である。本実施例は、第1組み合わせ電極8および第2組み合わせ電極10の代わりに第1櫛型電極14および第2櫛型電極15がそれぞれ用いられていることを除いて、図3と同様な構造を有する。
【0047】
図18は第1櫛型電極14および第2櫛型電極15の構成図である。第1櫛型電極14の電極指の方向は、第2櫛型電極15の電極指の方向と直交している。第1櫛型電極14は40個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(L)と、175μmの電極指幅(W)と、225μmの電極周期長(P)を有する。第2櫛型電極15は第1櫛型電極14と同様な構造を有する。
【0048】
図17の超音波速度測定装置において、周波数掃引手段4からの入力電気信号Eiが第1櫛型電極14と対向電極3の間に順次に印加されると、シリコンゴム11を介して、その物質中に縦波が照射される。この縦波は第1圧電基板7の下端面に対し垂直な成分から成る。もしもその物質が水の場合には、P/T < 4Vw/Vという条件が満たされることから、第1圧電基板7の下端面に対し垂直な方向の縦波が、シリコンゴム11を介して効率よく水中に照射される。
【0049】
シリコンゴム11を介して照射された縦波が、図17に示されるように、反射板6によって反射されると、反射された縦波が第2櫛型電極15と対向電極3との間で遅延電気信号Diとして検出される。一方、第2櫛型電極15と対向電極3との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このとき、遅延電気信号Diと結合信号Ciがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。
【0050】
図15または17の超音波速度測定装置においては、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有する。もしも、このような交流バイアス信号Si を伴った入力電気信号Eiが周波数掃引手段4から印加されると、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siがそれぞれ干渉し、その結果、各々の干渉信号Riが生じる。もしも干渉信号Ri のそれぞれの振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。このようにして、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。交流バイアス信号Siを伴った入力電気信号Eiを用いることにより、より安定な駆動を実現できることが確認されている。
【0051】
【発明の効果】
本発明の第1のタイプの超音波速度測定装置は、圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る。組み合わせ電極は、圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は圧電基板の下端面に設けられている。対向電極の下端面には、物質の一方の界面が接触している。周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させる。入力電気信号Eiは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有する。櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号Eiが順次に入力されると、圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が物質中に照射される。このとき、圧電基板の厚さに対する組み合わせ電極の電極周期長の割合が、圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく物質中に照射することが可能となる。縦波は、物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射される。反射された縦波は、櫛型電極Bと対向電極との間で、遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出される。一方、櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出される。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと結合信号Ciとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が生じる。干渉信号Riにおける各振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。物質中の音速Vは、物質のもう一方の界面と圧電基板との距離Zの2倍と、周波数周期Δfとの積から算出される。つまり、物質中の音速Vは、V=2ZΔfで表される。
【0052】
第1のタイプの超音波速度測定装置では、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fiをそれぞれ有する。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出される。干渉信号Riにおける各振幅と、周波数fiとの関係を図で表せば、周波数周期Δfが得られる。物質中の音速Vは、物質のもう一方の界面と圧電基板との距離Zの2倍と、周波数周期Δfとの積から算出される。つまり、物質中の音速Vは、V=2ZΔfで表される。
【0053】
本発明の第2のタイプの超音波速度測定装置は第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る。第1組み合わせ電極は、第1圧電基板の下端面に設けられている。第1組み合わせ電極の下端面には、物質の一方の界面が接触している。第2組み合わせ電極は、第2圧電基板の上端面に設けられており、対向電極は第1および第2圧電基板の間に設けられている。周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させる。このとき、入力電気信号Eiは、周波数fiをそれぞれ有する。第1組み合わせ電極の櫛型電極Aと対向電極との間に入力電気信号Eiが順次に入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が物質中に照射される。このとき、第1圧電基板の厚さに対する第1組み合わせ電極の電極周期長の割合が、第1圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下であるような構造を採用することにより、第1圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波を効率よく物質中に照射することが可能となる。縦波は、物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射される。このとき、第1組み合わせ電極の電極指の方向と、第2組み合わせ電極の電極指の方向とが直交するような構造を採用することにより、反射された縦波の指向性を、先に照射された縦波の指向性よりも鋭くすることができる。反射された縦波は、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間で、遅延電気信号Diとして検出される。一方、第2組み合わせ電極の櫛型電極Bと対向電極との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと結合信号Ciとの干渉信号Riが検出される。干渉信号Riおける各振幅と、周波数fiとの関係から周波数周期Δfが得られ、物質中の音速Vは周波数周期Δfから算出される。
【0054】
第2のタイプの超音波速度測定装置では、第1および第2組み合わせ電極の代わりに第1および第2櫛型電極がそれぞれ設けられた構造が可能である。もしも、第1櫛型電極と対向電極との間に入力電気信号Eiが順次に入力されると、第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が物質中に照射される。この縦波は、物質の一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、反射された縦波は、第2櫛型電極と対向電極との間で遅延電気信号Diとして検出される。また、第2櫛型電極と対向電極との間では、入力電気信号Eiからの結合信号Ciも検出される。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと結合信号Ciとの干渉信号Riが検出される。また、入力電気信号Eiが交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴う構造が可能である。このとき、交流バイアス信号Siは、周波数fiをそれぞれ有する。このようにして信号分析器では、遅延電気信号Diと交流バイアス信号Siとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出される。
【0055】
第1および第2のタイプの超音波速度測定装置では、物質が液体や細胞質で成る構造が可能であり、固体だけでなく、液体や細胞質中の音速を求めることが可能である。また、物質の一方の界面と接触する部位に、シリコンゴム等の高分子膜が塗布された構造が可能である。つまり、第1のタイプでは対向電極の下端面に、第2のタイプでは第1組み合わせ電極の下端面や、第1櫛型電極の下端面に高分子膜が塗布された構造が可能である。このような構造では、高分子膜を塗布しない構造に比べて、縦波をさらに効率よく物質中に照射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波速度測定装置の第1の実施例を示す断面図。
【図2】組み合わせ電極2の平面図。
【図3】本発明の超音波速度測定装置の第2の実施例を示す断面図。
【図4】第1組み合わせ電極8および第2組み合わせ電極10の構成図。
【図5】図3の超音波速度測定装置から水中へ照射された縦波の照射角度と、相対振幅との関係を示す特性図。
【図6】組み合わせ電極2の電極指交叉領域を示す平面図。
【図7】第1組み合わせ電極8の電極指交叉領域を示す平面図。
【図8】図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形。
【図9】図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形。
【図10】図3の超音波速度測定装置における周波数fiのうちの1つについての観測波形。
【図11】干渉信号Riの電圧の振幅と、周波数fiとの関係を示す特性図。
【図12】豚肉の4種類の部分と、それらを伝搬する音速Vとの関係を示す特性図。
【図13】図3の超音波速度測定装置における周波数f'iのうちの1つについての観測波形。
【図14】図3の超音波速度測定装置における周波数f'iのうちの1つについての観測波形。
【図15】本発明の超音波速度測定装置の第3の実施例を示す断面図。
【図16】第1組み合わせ電極12および第2組み合わせ電極13の構成図。
【図17】本発明の超音波速度測定装置の第4の実施例を示す断面図。
【図18】第1櫛型電極14および第2櫛型電極15の構成図。
【符号の説明】
1 圧電基板
2 組み合わせ電極
3 対向電極
4 周波数掃引手段
5 周波数分析手段
6 反射板
7 第1圧電基板
8 第1組み合わせ電極
9 第2圧電基板
10 第2組み合わせ電極
11 シリコンゴム
12 第1組み合わせ電極
13 第2組み合わせ電極
14 第1櫛型電極
15 第2櫛型電極
8A,8B 櫛型電極
10A,10B 櫛型電極
12A,12B 櫛型電極
13A,13B 櫛型電極
Claims (7)
- 圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る超音波速度測定装置であって、前記組み合わせ電極は、前記圧電基板の上端面に設けられており、前記対向電極は前記圧電基板の下端面に設けられていて、前記対向電極の下端面には、物質の一方の界面が接触しており、前記周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させ、前記入力電気信号Eiは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有し、前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に前記入力電気信号Eiが順次に入力されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記物質中に照射され、前記物質中に照射される縦波の非垂直成分は、前記組み合わせ電極の電極指の総面積を変えずに電極対の数を多くすることによって抑圧され、前記縦波は、前記物質の前記一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出され、前記周波数分析手段では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号Ciとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出され、前記干渉信号Riにおける各振幅と、前記周波数fiとの関係から周波数周期Δfが検出され、前記周波数周期Δ f は、前記各振幅のうちの2つの最大振幅間または2つの最小振幅間の周波数差に相当し、前記物質中の音速Vは、前記物質の前記もう一方の界面と前記圧電基板との距離Zの2倍と、前記周波数周期Δfとの積から算出される超音波速度測定装置。
- 前記圧電基板の厚さに対する前記組み合わせ電極の電極周期長の割合は、前記圧電基板中を伝搬する縦波速度に対する前記物質中を伝搬する縦波速度の割合の4倍以下である請求項1に記載の超音波速度測定装置。
- 前記入力電気信号Eiは、交流バイアス信号Si (i=1, 2,…, n)を伴い、前記交流バイアス信号Siは、前記周波数fiをそれぞれ有し、 前記信号分析器では、前記遅延電気信号Diと前記交流バイアス信号Siとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出される請求項1または2に記載の超音波速度測定装置。
- 第1圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第1組み合わせ電極と、第2圧電基板と、櫛型電極AおよびBで成る第2組み合わせ電極と、対向電極と、周波数掃引手段と、周波数分析手段から成る超音波速度測定装置であって、前記第1組み合わせ電極は、前記第1圧電基板の下端面に設けられており、前記第1組み合わせ電極の下端面には、物質の一方の界面が接触しており、前記第2組み合わせ電極は、前記第2圧電基板の上端面に設けられており、前記第1組み合わせ電極の電極指の方向は、前記第2組み合わせ電極の電極指の方向と直交しており、前記対向電極は前記第1および第2圧電基板の間に設けられていて、前記周波数掃引手段は入力電気信号Ei (i=1, 2,…, n)を順次に発生させ、前記入力電気信号Eiは、周波数fi (i=1, 2,…, n)をそれぞれ有し、前記第1組み合わせ電極の前記櫛型電極Aと前記対向電極との間に前記入力電気信号Eiが順次に入力されることにより、前記第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記物質中に照射され、前記物質中に照射される縦波の非垂直成分は、前記第1組み合わせ電極の電極指の総面積を変えずに電極対の数を多くすることによって抑圧され、前記縦波は、前記物質の前記一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、前記第2組み合わせ電極の前記櫛型電極Bと前記対向電極との間では、反射された縦波が遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出され、前記周波数分析手段では、前記遅延電気信号Diと前記結合信号Ciとの干渉信号Ri (i=1, 2,…, n)が検出され、前記干渉信号Riにおける各振幅と、前記周波数fiとの関係から周波数周期Δfが検出され、前記周波数周期Δ f は、前記各振幅のうちの2つの最大振幅間または2つの最小振幅間の周波数差に相当し、前記物質中の音速Vは、前記周波数周期Δfから算出される超音波速度測定装置。
- 前記第1組み合わせ電極の代わりに第1櫛型電極が設けられ、前記第2組み合わせ電極の代わりに第2櫛型電極が設けられた超音波速度測定装置であって、前記第1櫛型電極の電極指の方向は、前記第2櫛型電極の電極指の方向と直交しており、前記第1櫛型電極と前記対向電極との間に前記入力電気信号Eiが順次に入力されることにより、前記第1圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波が前記物質中に照射され、前記物質中に照射される縦波の非垂直成分は、前記第1櫛型電極の電極指の総面積を変えずに電極対の数を多くすることによって抑圧され、前記縦波は、前記物質の前記一方の界面と対面するもう一方の界面によって反射され、前記第2櫛型電極と前記対向電極との間では、反射された縦波が遅延電気信号Di (i=1, 2,…, n)として検出されるとともに、前記入力電気信号Eiからの結合信号Ci (i=1, 2,…, n)も検出される請求項4に記載の超音波速度測定装置。
- 前記物質が液体または細胞質で成る請求項1,2,3,4または5に記載の超音波速度測定装置。
- 前記物質の前記一方の界面と接触する部位に、新たに高分子膜が設けられた請求項1,2,3,4,5または6に記載の超音波速度測定装置。
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