JP2005098866A - 振動子を使用した測定方法及びバイオセンサー装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 結晶板の両面に第1、第2の電極を有する振動子の片面に試料溶液を接触させ、前記第1、第2の電極間に交流信号を印加して、前記交流信号の周波数と前記振動子の電気特性の関係から前記振動子の周波数変化を測定する方法であって、前記振動子をN倍波(N=3,5,7...)で振動させて前記周波数変化を測定するようにしたことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
しかしながら、上記測定の際に、ほぼ一定周期で数百Hz程度範囲において周波数変動が生じることがあった。
その理由は、水晶振動子の変位により生じた圧力波が液面で反射され、水晶振動子に負荷が加わっている状態で、液面の振動による液面形状の変化、或いは、溶液の蒸発による液面の低下が生じた場合に、前記負荷が変動することによるものと考えられている(Martin,B,A;Hager,H,E,J.Appl.Phys.1989 "Flow profile above a quartz crystal vibrating in liquid")。
このため、振動子について基本波を使用する従来の測定方法では、前記セル内で攪拌棒を上下及び/又は回転させて液面を乱したり、また、前記セルに加工を施して液面を凹状にしたりして、圧力波を低減する必要があった。更に、また、試料溶液の量が、微量である場合には、攪拌することは不可能であり、しかも、液面は、表面張力により凸状となるため上記周波数変動の影響を回避することは不可能であった。
水晶振動子等の圧電素子の等価回路は、大気中では、図14(a)に示されるものとなるが、その片面を液面に浸すと、等価回路パラメータは、同図(b)に示される通りとなる。
この時、文献(Thomas W.Schneider and Stephen j.Martin; Anal. Chem. 1995,67,3324-3335)よりmotional resistance(振動による抵抗):R2は、下記数1の通りとなる。
上記数1のR2により、水晶振動子の共振周波数Fsは大きく変化する。
このR2の成分は、share wave(数3)とcompression wave(数4)という下記2つの成分に分けることができる。
従って、このshare waveは、液面に達することがないので、R2shareは常に一定の値を示すことになる。
このため、液面の高さが変化すると、この値は0〜R2comp maxの値で変化することになる。このR2compは、液面の高さがh=nλ/2(N=1,2,3...)の時に最大となり、h=(n+1)λ/2(N=1,2,3...)の時に0となる。
例えば、直径8.9mmの9MHzの水晶振動子の片面を純水に浸すと、Fsにおいて、48Hz程度の周期的なうねりが生じる。この時、R1=100Ω、R2share=353Ω、R2comp=13Ωであり、また、9MHzの水晶振動子が、大気中での状態から片面を純水に浸された状態になる場合の粘性負荷による周波数変化は、1330Hzである。
従って、このうねりFsとR2compとの関係は、下記数6の通りとなり、Fsの周期的な変位とR2compによる周波数変化が一致する。
よって、N倍波においてのR2compの影響による周波数変位は、基本波の1/Nの5/2乗倍程度となる。
即ち、本発明の測定方法は、請求項1に記載の通り、結晶板の両面に第1、第2の電極を有する振動子の片面に試料溶液を接触させ、前記第1、第2の電極間に交流信号を印加して、前記交流信号の周波数と前記振動子の電気特性の関係から前記振動子の周波数変化を測定する方法であって、前記振動子をN倍波(N=3,5,7...)で振動させて前記周波数変化を測定するようにしたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の測定方法は、請求項1に記載の測定方法において、前記試料溶液を前記電極表面にのみ接触させることを特徴とする。
また、本発明のバイオセンサー装置は、請求項3に記載の通り、結晶板の両面に第1、第2の電極を有する振動子の片面に試料溶液を接触させ、前記第1、第2の電極間に交流信号を印加して、前記交流信号の周波数と前記振動子の電気特性の関係から前記振動子の周波数変化を測定するようにしたバイオセンサー装置であって、前記振動子をN倍波(N=3,5,7...)で振動させて前記周波数変化を測定するものであることを特徴とする。
また、請求項4に記載のバイオセンサー装置は、前記試料溶液を前記電極表面にのみ接触させるようにしたことを特徴とする。
また、請求項5に記載のバイオセンサー装置は、請求項3又は4に記載のバイオセンサー装置において、前記バイオセンサー装置は、前記試料溶液を保持して前記振動子に接触させるセルを備え、前記セルの前記試料溶液保持量は100μl未満であることを特徴とする。
また、請求項6に記載のバイオセンサー装置は、請求項4に記載のバイオセンサー装置において、前記振動子の発振周波数を9MHzとした場合に、前記電極表面に接触させる試料溶液の量を、前記電極の直径(mm)に対して、係数12.5μl/mmを掛けた量以下としたことを特徴とする。
また、請求項7に記載のバイオセンサー装置は、請求項4に記載のバイオセンサー装置において、前記振動子の発振周波数を27MHzとした場合に、前記電極表面に載置する試料溶液の量を、前記電極の直径(mm)に対して、係数12.0μl/mmを掛けた量以下としたことを特徴とする。
また、請求項8に記載のバイオセンサー装置は、請求項3乃至7のいずれかに記載のバイオセンサー装置において、前記電極周囲の前記結晶板の表面を撥水性としたことを特徴とする。
また、本発明のバイオセンサー装置によれば、圧力波の影響を抑えることができるので、精度の高い測定が可能となる。また、試料溶液の保持量が100μl未満であっても、試料溶液を攪拌等する必要がない。また、試料溶液の量を電極の直径に対して所定量以下とすることにより、周波数における一定方向への周波数変化(ドリフト)の発生を抑制することができ、微量の試料溶液を測定する場合には、更に、精度の高い測定が可能となり、しかも、貴重な試料溶液の量を少なくすることができる。更に、また、前記電極周囲の前記結晶板の表面を撥水性とすることにより、電極上のみに微量の試料溶液を載せやすくすることができる。
本発明では、前記基本波による共振周波数ではなく、N倍波(N=3,5,7...。N=2n+1;nは、1以上の整数。以下、「N倍波」とする。)による共振周波数を使用するものである。具体的には、前記基本波による共振周波数が27MHzである場合には、3倍波の共振周波数は81MHzとなる。尚、N倍波による共振周波数には、N倍波の共振周波数以外にも、N倍波の共振周波数の近傍の周波数も含まれ、例えば、±500kHz程度の範囲をスキャンすることまで含まれる。
図1の符号1は、本発明の一実施の形態であるバイオセンサー装置を示すものである。
信号供給回路13は、周波数を変化させながら交流の入力信号を出力することができるように構成されている。
測定回路14は、水晶振動子7の出力信号や、信号供給回路13から出力される入力信号に基づいて、水晶振動子7の共振周波数や位相等の電気的特性を測定して、コンピュータ4に出力することができるように構成されている。
このようにして、測定回路14は、水晶振動子7の共振周波数を測定し、求められた水晶振動子7の共振周波数は、ケーブル6を介してコンピュータ4に出力される。そして、所定時間が経過後に、コンピュータ4は、信号の供給を停止する。
この測定により、ネットワークアナライザ3から随時入力される水晶振動子7のN倍の共振周波数の変化が測定され、コンピュータ4を使用して、反応材12の表面に吸着する成分の反応状態を、例えば、所定時間範囲内における水晶振動子7のN倍波の共振周波数から、反応材12の表面に吸着する成分の質量の時間変化を算出し、この質量の時間変化により反応材12と、それに吸着する成分の反応速度を求める等して測定することができる。
また、上記以外にも、本出願人が先に提案した周波数(特願2003-120335又は特願2003-120370)を用いてもよい。粘性の影響がある場合は、この方がより正確な測定が可能となる。
尚、微量とは、前記振動子の発振周波数を9MHzとした場合に、前記電極表面に載置する試料溶液の量を、前記電極の直径(mm)に対して、係数12.5μl/mmを掛けた量以下、或いは、前記振動子の発振周波数を27MHzとした場合に、前記電極表面に載置する試料溶液の量を、前記電極の直径(mm)に対して、係数12.0μl/mmを掛けた量以下をいうものとする。
(実験例1)
基本発振周波数27MHz、直径8.9mmの水晶振動子を、図17に示されるような略円筒形状のセルの底面に設け、このセル内に500μlの純水を注入し、基本波による共振周波数を使用した測定例を比較例1とし、基本波による共振周波数の3倍の周波数を使用した測定例を実施例1として、その結果を図5に示す。
図5より、比較例1では、約5分の周期で周波数の変動(約70Hz)が生じた。これに対して、実施例1では、周波数の変動(約5Hz)は、比較例1の6%程度であった。
尚、測定時の5分間の蒸発による液面低下は25μmであった。この値は、27MHzの圧力波の波長54μm(液温25℃における音速が約1.45×103m/sとした場合)の約半分程度となり、これが圧力波の周期と一致する結果となった。この結果から、比較例1では蒸発により液面が低下して周波数にうねりを生じたことがわかった。
基本発振周波数9MHz、直径8.9mmの水晶振動子を、略円筒形状のセルの底面に設け、このセル内に500μlの純水を注入し、基本波による共振周波数を使用した測定例を比較例2とし、基本波による共振周波数の3倍及び5倍の周波数を使用した測定例を実施例2−1、2−2として、その結果を図6に示す。
図6より、比較例2では、約15分の周期で周波数の変動(約48Hz)が生じた。これに対して、実施例2では、周波数の変動(実施例2−1:約3Hz実施例2−2:約1Hz)は、従来例1の6%(実施例2−1)、2%(実施例2−2)程度であった。
尚、測定時の15分間の蒸発による液面の低下は75μmであった。この値は、9MHzの発振時に生じる圧力波の波長である159μm(液温25℃における音速が約1.45×103m/sとした場合)の約半分程度となる。この結果から、比較例2では蒸発により液面が低下して周波数にうねりを生じたことがわかった。
次に、蒸発による液面の低下の影響を排除するために、電極周囲を加湿雰囲気(気温を25℃、湿度90%以上)として、基本発振周波数27MHz、直径8.9mmの水晶振動子の電極上に5μlの純水の液滴を接触させて発振させる実験を行った。
基本波による共振周波数を使用した例を比較例3とし、基本波による共振周波数の3倍の周波数を使用して測定した例を実施例3とし、それぞれの結果を図7に示す。
図7から、比較例3では、測定期間中に常に周波数が大きく変動したのに対して、実施例3では周波数変動がほとんどなかった。
この結果から、実施例3は、蒸発による液面低下以外の原因から生じる周波数変動も抑えることができることがわかった。
基本発振周波数27MHz、直径8.9mmの水晶振動子の電極上に5μlの純水の液滴を載せて15分後に1μlのブロックエースを加える実験を行った。
基本波による共振周波数を使用した例を比較例4とし、基本波による共振周波数の3倍の周波数を使用して測定した例を実施例4とし、それぞれの結果を図8及び図9に示す。
比較例4では、測定期間中、常に、周波数が大きく変動したのに対して、実施例4では、周波数変動がほとんどなかった。
尚、実施例4では、基本発振周波数の3倍の周波数を使用しているために、感度が3倍となる。このため、比較例4と周波数変動のスケールを合わせるために、実施例3の周波数変動の結果を1/3倍した。
次に、同じN倍波を使用し、水晶振動子の電極以外にも試料溶液を接触させるようにする実施例5−1及び5−2と、水晶振動子の電極上にのみ試料溶液を接触させるようにする実施例5−3とを比較する実験を行った。
まず、基本発振周波数27MHz、直径8.9mmの水晶振動子(電極の直径2.5mm)を、図17に示されるような略円筒形状のセルの底面に設け、このセル内に500μlの純水を注入し、3倍波による共振周波数を使用した測定例を実施例5−1とし、同形状のセルに100μlの純水を注入し、3倍波による共振周波数を使用した測定例を実施例5−2とし、それぞれの結果を図10及び図11に示す。
このセル21の第一の電極17上のみに10μlの純水を滴下し、3倍波による共振周波数を使用した測定例を実施例5−3として、その結果を図12に示す。
これに対して、実施例5−3では、一定方向への周波数変化(ドリフト)は、ほぼ0Hzであった。
2 発振装置
3 ネットワークアナライザ
4 コンピュータ
5 ケーブル
6 ケーブル
7 水晶振動子
8 円形状の結晶板
9 第一の金電極(表面)
10 第二の金電極(裏面)
11 樹脂カバー
12 反応材
13 信号供給回路
14 測定回路
15 セル
16 水晶振動子
17 第一の電極
18 第二の電極
19 アクリル樹脂板
20 試料溶液保持部
21 セル
Claims (8)
- 結晶板の両面に第1、第2の電極を有する振動子の片面に試料溶液を接触させ、前記第1、第2の電極間に交流信号を印加して、前記交流信号の周波数と前記振動子の電気特性の関係から前記振動子の周波数変化を測定する方法であって、前記振動子をN倍波(N=3,5,7...)で振動させて前記周波数変化を測定するようにしたことを特徴とする測定方法。
- 前記試料溶液を前記電極表面にのみ接触させることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
- 結晶板の両面に第1、第2の電極を有する振動子の片面に試料溶液を接触させ、前記第1、第2の電極間に交流信号を印加して、前記交流信号の周波数と前記振動子の電気特性の関係から前記振動子の周波数変化を測定するようにしたバイオセンサー装置であって、前記振動子をN倍波(N=3,5,7...)で振動させて前記周波数変化を測定するものであることを特徴とするバイオセンサー装置。
- 前記試料溶液を前記電極表面にのみ接触させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のバイオセンサー装置。
- 前記バイオセンサー装置は、前記試料溶液を保持して前記振動子に接触させるセルを備え、前記セルの前記試料溶液保持量は100μl未満であることを特徴とする請求項3又は4に記載のバイオセンサー装置。
- 前記振動子の発振周波数を9MHzとした場合に、前記電極表面に接触させる試料溶液の量を、前記電極の直径(mm)に対して、係数12.5μl/mmを掛けた量以下としたことを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサー装置。
- 前記振動子の発振周波数を27MHzとした場合に、前記電極表面に載置する試料溶液の量を、前記電極の直径(mm)に対して、係数12.0μl/mmを掛けた量以下としたことを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサー装置。
- 前記電極周囲の前記結晶板の表面を撥水性としたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載のバイオセンサー装置。
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