JP4064623B2 - 振動吸収管装置 - Google Patents
振動吸収管装置Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は振動吸収管装置に関する。さらに詳しくは、同軸状に配列された2本のパイプのあいだに配列される伸縮手段のベローズの端面と当該パイプの端面と、または伸縮手段の直管部に設けられたベースリングの端面とがロウ付けされた振動吸収管装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
エアコンの冷媒回路や空圧路におけるコンプレッサから発生する振動の伝播を抑制する装置は、たとえば特開平10−318479号公報に開示されている(従来技術1)。この装置は、それぞれ独立して円周状に形成された複数の山からなる蛇腹部3の左右両側に直管部1、2が設けられている(図3参照)。当該蛇腹部3は、ケブラー(商品名)などのノボロイド繊維や、炭素繊維などの素材から管状に編組された非伸長性チューブ5で覆われている。従来技術1の装置のばあい、非伸長性チューブ5に引張力を加えると、当該チューブの編組構造が一定量だけ僅かに引張変形するが、該一定量以上は伸長しないとの特性を用いている。すなわち、当該非伸長性チューブ5を上記一定量だけ伸長させたのち、チューブ5を非伸長状態で、非伸長性の両端を直管部1、2上にカシメ金具によってかしめて固定する。
【0003】
また、特開平8‐145259号公報には、エアコンのコンプレッサに起因する振動伝播を抑制するためにパイプの表面形状を波型にして、パイプに可撓性をもたせると、耐圧性が低下することに鑑みてなされたもので、銅、ステンレスまたはアルミニウム製のパイプの内面にコルゲート加工によって螺旋状の突条12が形成され、当該螺旋状の突条12の外周には、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、綿、ナイロン繊維、またはポリアミド繊維からなる柔軟性を有する補強部13が設けられ、締付部材15によって補強部材13の端部が直管14の外面に固定される装置11が開示されている(図4参照、以下、「従来技術2」という)。
【0004】
しかしながら、叙上の従来技術1および従来技術2の装置のばあい、図6、7に示されるように、ベローズの外径と直管部とのあいだに段差(すなわち、ベローズの山の高さ(L))がある。一方、当該装置が取り付けられるパイプは固定されている。
【0005】
したがって、矢印Xで示されように、ベローズ3に繰り返し圧力が加わると(図7参照)、ベローズ3の伸縮によりベローズ3の端部P(図6参照)に応力集中が発生するという問題がある。なお、応力は圧力に比例し、ベローズ3の軸方向の伸びの量が大きいほど大きくなり、また、ベローズ3の山の高さが高いほど大きくなる。
【0006】
さらに、ベローズ部を覆うステンレス鋼の線材(SUS線)からなる補強層を該ベローズ部の両端で押させリングにより係止し、該押えリングをロウ付けによりベローズの端面に固着する方法も従来より知られている(従来技術3)。
【0007】
従来技術3の方法によれば、ベローズ端面にロウ付けの際に熱が加わるので、該ベローズ端面の組織が変化して強度が弱くなるという問題がある。そのうえ、従来技術3の方法はSUS線しか使用できず、振動が激しいところではSUS線とベローズとの摩擦により、ベローズに穴があくという問題もある。
【0008】
特開平8−206249号公報には、図5に示されるような、一端が給水管に接続され、他端がスプリンクラーヘッド取付管27に接続されるスプリンクラー用可撓管が開示されている(従来技術3)。
【0009】
このものは、叙上の従来技術1および2とは異なり、スプリンクラー設置の施工効率の低下を防止することができるスプリンクラー用可撓管を提供することを技術的課題としており、図5に示されるように、可撓管本体21の平滑部22に設けられたベースリング31により保護層29の端部が固着される。
【0010】
従来技術3のばあいは、従来技術1および2に開示された装置のように、ベースリングをもたないものと比較して、保護層の伸びは少なくなるという利点を有するものの、可撓管の谷部にはモーメントにより高い応力が発生するという問題がある。
【0011】
すなわち、冷媒回路および空圧路におけるコンプレッサから発生する振動の伝播を抑制するための振動吸収管の振動吸収性を向上させるには、柔軟構造にすればよく、その手段としては薄肉金属管で、縦断面形状がΩ字状のベローズにすればよいのであるが、高い圧力ではベローズの両端面に応力集中により、比較的短い繰り返し回数(約10万回)で破壊するとの問題がある。
【0012】
本発明は、叙上の従来技術の問題点を解消し、振動吸収性に優れ、高い圧力の繰り返しにも耐え得る振動吸収管装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様は、同軸状に配列された2本のパイプのあいだに配設される振動吸収管装置であって、
複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されたベローズと、該ベローズの両端に一体的に形成された直管部とが設けられた薄肉金属製の伸縮手段、および
該伸縮手段の直管部の外周上に設けられたベースリングからなり、
前記ベースリングの端面と、前記ベローズの端面および直管部の外周面とがロウ付けされ、
前記ロウ付けされたベローズおよびベースリング上に補強層が設けられ、
該補強層の両端がベースリング上で挟持されてなる
ことを特徴としている。
【0014】
本発明の他の態様は、同軸状に配列された2本のパイプのあいだに配設される振動吸収管装置であって、
複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されたベローズと、該ベローズの両端に一体的に形成された直管部とが設けられた薄肉金属製の伸縮手段とからなり、
前記伸縮手段の直管部が2本のパイプのそれぞれに挿入され、
前記2本のパイプのそれぞれの端面と、前記ベローズの端面および直管部の外周面とがロウ付けされ、
前記ロウ付けされたベローズおよびパイプ上に補強層が設けられ、
該補強層の両端がパイプ上で挟持されてなる
ことを特徴としている。
【0015】
また、前記ベローズの端面が、ベローズの軸心に対して実質的に垂直であり、前記ベースリングの厚さがベローズの山の高さの0.5〜1.0倍であることが好ましい。
【0016】
また、前記ベローズの端面が、ベローズの軸心に対して実質的に垂直であり、前記接続用パイプの厚さがベローズの山の高さの0.5〜1.0倍であることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態にかかわる振動吸収管装置(以下、単に「装置」という)を添付図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0018】
実施の形態1
本実施の形態にかかわる装置は、同軸状に配列された銅またはステンレス鋼製の2本のパイプ1および2のあいだに配設される。当該装置は、ベローズ3と、ベローズ3の両端に一体的に形成された直管部4と、直管部4の外周上に設けられたベースリング6と、ベローズ3およびベースリング6上に設けられた補強層5と、当該補強層5の端部をベースリング6との間に挟持するために設けられた補強リング7とから構成される(図1の(a)および(b)参照)。
【0019】
前記ベローズ3には、複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されている。なお本明細書において、複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されているとは、前述の従来技術2に開示されたベローズのような螺旋状に形成されたものを除外していることを意味する。また、山部の縦断面は、ほぼΩ字状である。
【0020】
また、本実施の形態では、ベローズ3と、該ベローズ3の両端に一体的に形成された直管部4とが伸縮手段として機能している。
【0021】
図1の(b)において、参照符号Bによって示されるように、ベースリング6の端面と、ベローズ3の端面および直管部4の外周面とがロウ付けされている。
【0022】
補強層5は、たとえばアラミド繊維からなる補強糸を編組して得られたものが、引張強度および耐熱性の観点から好ましい。しかしながら、補強層5の素材としてはアラミド繊維に限られない。温度250℃の熱処理を5分間行っても劣化しない繊維であれば、どのようなものでもよい。
【0023】
ベローズ3、ベースリング6および補強リング7の素材としては、たとえば銅またはステンレス鋼が好適に採用される。
【0024】
つぎに、本実施の形態にかかわる装置の製法について説明する。
【0025】
(工程1)外径が6.35〜15.5mm、厚さ0.15〜0.2mmの薄肉のステンレス鋼管内に15〜30Mpaの水圧を負荷して、当該ステンレス鋼管に、等ピッチの山部(バルジ)を形成する。
【0026】
(工程2)前記工程で得られた山部が形成されたステンレス鋼管にリフォーム処理を施すことにより、軸方向に圧縮力を与え、山部の縦断面形状をΩ字状にする。この際、直管部にベローズの各山の外径に等しい筒を通し、各山部に当ててリフォーム処理をすれば、ベローズの両端面は半径方向に直立する。この工程において、ベローズの外径は薄肉ステンレス鋼管の外径の約1.4倍である。
【0027】
(工程3)直管部にベースリングを通し、ベローズの両端面に当接させたのち、2本のパイプ1および2を直管内に挿入する。なお、ベースリング6の厚さ(T)はベローズの山の高さ(L)の1/2〜1.0倍である(図1の(b)参照)。
【0028】
(工程4)前記工程3で得られた、2本のパイプ1および2が直管内に挿入されたものを、たとえば、水素還元式連続炉内に入れ、1040〜1050℃の温度下で図1の(b)において、参照符号Bで示された箇所をロウ付けする
(工程5)ベローズおよびベースリング上にアラミド繊維からなる補強糸を編組することによって筒状の補強層を設ける。
【0029】
(工程6)前記補強層の両端をベースリング上で補強リングをかしめることによって挟持する。
【0030】
実施の形態2
本実施の形態にかかわる装置は、2本のパイプ1および2のあいだに設けられたベローズ3と、ベローズ3の両端に一体的に形成された直管部4と、該直管部4が2本のパイプ1および2に挿入されたのち、該ベローズ3および2本のパイプ1および2の端部上に設けられた筒状の補強層5と、該補強層5の両端を2本のパイプ1および2上で挟持する補強リング7とから構成される(図2の(a)および(b)参照)。
【0031】
ベローズ3には、前記実施の形態1と同様、複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されている。本実施の形態も、ベローズ3および直管部4が伸縮手段として機能する。
【0032】
図2の(b)において、参照符号Bによって示されるように、2本のパイプ1および2のそれぞれの端面と、前記ベローズ3の端面および直管部の外周面とがロウ付けされている。
【0033】
本実施の形態の装置は、ベースリングを有しないことを除いて前述の実施の形態1の装置と構成は同じである。
【0034】
つぎに、本実施の形態の装置の製法について説明する。
【0035】
工程1および工程2については、前述の実施の形態1の装置の製法と同様である。
【0036】
(工程3)縦断面形状がΩ字状のベローズの左右両側に一体的に形成された直管部にパイプ1および2を装着する。
【0037】
(工程4)水素還元式連続炉内で、1040〜1050℃の温度下で、2本のパイプ1および2とベローズとをロウ付けする。
【0038】
(工程5)ベローズと2本のパイプ1および2との上に、アラミド繊維からなる補強糸を編組して、筒状の補強層を設ける。
【0039】
(工程6)筒状の補強層の両端を、2本のパイプ1および2上で補強リングをかしめることによって挟持する。
【0040】
【実施例】
つぎに、本発明の装置を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
管の外径12.7mm、厚さ0.15mmの薄肉のステンレス鋼からなる、長さ(ベローズ長)50mm、山の数20山、外径(ベローズ外径)17.8mm、直管部の長さ13mmのベローズと、長さ13mm、厚さ1.6mmの銅製のベースリングをベローズの左右両端面にロウ付けし、アラミド繊維製の筒状の補強層を当該ベローズに被着し、ベースリング上でカシメリングをかしめることによって補強層を固定し、さらに、外径12.7mm、厚さ0.8mm、長さ50mmのパイプを前記ベローズの左右の直管部に接続して実施例1の装置を得た。
【0042】
比較例1
管の外径12.7mm、厚さ0.15mmの薄肉のステンレス鋼からなる、長さ(ベローズ長)50mm、山の数20山、外径(ベローズ外径)17.8mm、直管部の長さ13mmのベローズにアラミド繊維製の筒状の補強層を当該ベローズに被着し、直管部上でかしめることによって補強層を固定し、さらに、外径12.7mm、厚さ0.8mm、長さ50mmのパイプを前記ベローズの左右の直管部に接続して参考例1の装置(前述の従来技術1に相当)を得た。
【0043】
つぎに、前述の実施例1および比較例1の装置それぞれ3つを試料として用意し、加圧繰り返し試験を行った。
【0044】
なお、試験条件はつぎのとおりであった。
圧 力:0〜4.15MPa
繰り返し速度:60CPM
作動流体:鉱物油
温 度:常温
【0045】
加圧繰り返し試験の結果を表1に示す(表中の「回」とは破壊に至った回数を意味する)。
【0046】
【表1】
【0047】
また、加圧時(4.15MPa)の補強層の伸びは、実施例1の装置では0.5mmであったのに対して、比較例1の装置は1.5mmであった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の装置によれば、ベローズの両端面にベースリングまたは当該装置を取りつけるための2本のパイプをロウ付けことにより、編組の弛みが少なくなるので、加圧時の補強層の伸びが少なくなり、さらにベローズの両端に発生する曲げ応力も少なくなるため、高い圧力においても耐久性が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわる装置の一例を示す一部断面説明図および要部拡大図である。
【図2】本発明の他の実施の形態にかかわる装置の一例を示す一部断面説明図および要部拡大図である。
【図3】従来の振動吸収管装置の一例を示す一部破断説明図である。
【図4】従来の振動吸収管装置の他の例を示す一部破断説明図である。
【図5】従来の可撓管の構造を示す説明である。
【図6】図3の装置の機能を示す断面説明図である。
【図7】図3の装置の機能を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1、2 パイプ
3 ベローズ
4 直管部
5 補強層
6 ベースリング
7 補強リング
B ロウ
Claims (4)
- 同軸状に配列された2本のパイプのあいだに配設される振動吸収管装置であって、
複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されたベローズと、該ベローズの両端に一体的に形成された直管部とが設けられた薄肉金属製の伸縮手段、および
該伸縮手段の直管部の外周上に設けられたベースリングからなり、
前記ベースリングの端面と、前記ベローズの端面および直管部の外周面とがロウ付けされ、
前記ロウ付けされたベローズおよびベースリング上に補強層が設けられ、
該補強層の両端がベースリング上で補強リングにより挟持されてなる
ことを特徴とする振動吸収管装置。 - 同軸状に配列された2本のパイプのあいだに配設される振動吸収管装置であって、
複数の山がそれぞれ円周状に互いに独立して形成されたベローズと、該ベローズの両端に一体的に形成された直管部とが設けられた薄肉金属製の伸縮手段とからなり、
前記伸縮手段の直管部が2本のパイプのそれぞれに挿入され、
前記2本のパイプのそれぞれの端面と、前記ベローズの端面および直管部の外周面とがロウ付けされ、
前記ロウ付けされたベローズおよびパイプ上に補強層が設けられ、
該補強層の両端がパイプ上で補強リングにより挟持されてなる
ことを特徴とする振動吸収管装置。 - 前記ベローズの端面が、ベローズの軸心に対して実質的に垂直であり、前記ベースリングの厚さがベローズの山の高さの0.5〜1.0倍である請求項1記載の振動吸収管装置。
- 前記ベローズの端面が、ベローズの軸心に対して実質的に垂直であり、前記接続用パイプの厚さがベローズの山の高さの0.5〜1.0倍である請求項2記載の振動吸収管装置。
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