JP4063468B2 - 寒天被覆処理顔料およびメイクアップ化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然由来の親水性高分子である寒天を被覆することで、水分保持能、密着性に優れた寒天被覆処理顔料および同処理顔料を配合したメイクアップ化粧料に関する。
さらに詳しくは、寒天処理時に低級アルコールを使用することで、水分除去に伴う乾燥効率を向上させ、かつ凝集性を低減することでより柔らかい感触持つことを特徴とする寒天被覆処理顔料と、柔らかい感触と塗布感に優れ、かつ化粧持ちに優れることを特徴とするメイクアップ化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平5−178723号公報、特開平7−17828号公報、特開平6−56625号公報等に見られるように、製剤中に寒天を配合すること、そして無機顔料と寒天を併用して製品に配合することは公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
寒天処理顔料を作製しようとした場合、例えば寒天の水溶液と顔料からなるスラリーをスプレードライする方法が考えられる。スプレードライ法では、凝集の弱い、感触に優れた製品を得ることができるが、一方で製造コストが大変高くなること、製造装置が大きくなるため、原料の切り替えが行いにくいことが問題であった。また、スラリーを加熱乾燥する場合や凍結乾燥する場合では、寒天が水分を保持してしまうために水分が飛びにくく乾燥が容易でない問題があった。また、寒天が架橋する結果、顔料間の結合力が強くなる傾向があり、顔料ごとに水分量や加熱条件をうまく設定できないと硬い風合いになってしまう場合があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明人らは、これらの問題に鑑み、より安価に製造ができかつ顔料の硬さを和らげる方法について検討を行った結果、寒天が低級アルコールに溶解せずに析出し、かつ低級アルコールの効果により顔料間の凝集力も低下する現象を利用し、寒天と顔料のスラリーに低級アルコールを添加することで寒天を顔料表面に析出させ、ここにろ過工程を導入することで乾燥しなければならない水分量を大幅に減少させた。この工程の導入により乾燥時間も早まり製造が容易になった他、風合いの柔らかい顔料を得ることに成功した。
【0005】
すなわち、本発明は、寒天を60℃以上の精製水に溶解したものと、顔料を混合し、ここに低級アルコールを顔料質量比で10〜300%の量で加え、ろ過、乾燥した後、場合によって粉砕して得られることを特徴とする寒天被覆処理顔料の製造方法にある。
【0006】
第2の本発明は、低級アルコールがイソプロピルアルコール、エチルアルコールから選ばれることを特徴とする上記の寒天被覆処理顔料の製造方法にある。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる寒天はテングサ、オゴノリ等の海藻(紅藻類)から得ることができる。寒天は、原料の海藻を洗浄した後、(熱水)抽出、ろ過、凝固、脱水、乾燥、粉砕、均質化といった工程を経て製造される。本発明で用いる寒天のゼリー強度(日寒水式、寒天濃度1.5質量%)としては、250〜400g/cm2の自然寒天や、同250g/cm2未満の低強度寒天、また、同400g/cm2以上の粉末寒天やフレーク寒天を用いることができる。さらに、これらの寒天の2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0009】
本発明の寒天被覆処理顔料の製造方法は、寒天を60℃以上の精製水に溶解したものと、顔料を混合し、ここに低級アルコールを顔料質量比で10〜300%の量で加え、ろ過、乾燥した後、場合によって粉砕して得られる方法を用いる。
【0010】
本発明で用いる寒天の顔料に対する被覆量としては、顔料100質量部に対して寒天が1〜15質量部が好ましく、さらに好ましくは2〜10質量部である。
【0011】
本発明で用いる顔料の例としては、赤色104号アルミニウムレーキ、赤色102号アルミニウムレーキ、赤色226号、赤色201号、赤色202号、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキ等の色素およびレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ポリウレタンパウダー、テフロン(商標)パウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の高分子、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、球状シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状など)に特に制限はない。粉体の大きさとしては、5nm〜100μmの範囲に入るものが好ましく、さらに好ましくは10nm〜25μmの範囲に入るものが好ましい。
【0012】
本発明で用いる低級アルコールとしては、例えばイソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコールから選ばれることが好ましく、さらに好ましくはイソプロピルアルコール、エチルアルコールである。低級アルコールは2種以上を混合して用いることも可能である。低級アルコールの添加量は顔料質量比で10〜300%の範囲であるが、この量は顔料の種類と寒天の種類・量によって異なる。基本的には、ろ過後の溶液に寒天が大量に溶解するような条件は被覆量が減ってしまうため避けるべきである。ろ液中に寒天の析出が多い場合では、低級アルコールの量を増やすことで析出を減らすことが可能である。また、低級アルコールの添加前後でスラリー溶液の液温を低下させるとより効率的にろ過が可能となるメリットがある。
【0013】
乾燥方法としては、送風気流型の乾燥機を用いる方法が好ましく、乾燥温度としては40〜120℃が好ましく、より好ましくは60〜100℃である。この範囲であれば、寒天の品質を傷めずに乾燥が可能である。
【0014】
本発明のメイクアップ化粧料では、上記の寒天被覆処理顔料をメイクアップ化粧料の総量に対して、1〜95質量%配合することが好ましい。この範囲であれば、寒天の効果による化粧持ちの持続効果が得られる。
【0015】
本発明のメイクアップ化粧料には、上記の各成分以外に、通常化粧料に用いられる油剤、寒天を被覆処理していない粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線防御剤(有機系紫外線吸収剤、寒天を被覆していない無機系紫外線散乱剤を含む。UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の成分を使用することができる。
【0016】
油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性および不揮発性の油剤および溶剤および樹脂が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体であっても構わない。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ラフィノース等の多価アルコール、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー等が挙げられる。また、ジメチルポリシロキサン、揮発性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油と組み合わせると上記変性シリコーン類との相性が良くなることことから好ましい。また、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤を使用することも好ましい。
【0017】
粉体類としては、前記の顔料やその表面処理粉体が挙げられる。特に球状粉末やエラストマー性のあるシリコーンエラストマーは感触の調整能力が高いため好ましい。また吸水性、吸油性のある粉体や撥水性のある粉体を用いるとより化粧持ちを改善することができる。撥水性のある粉体としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩やシリコーン化合物で表面処理されたものを用いることが好ましい。
【0018】
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白成分、抗炎症剤、老化防止剤、紫外線防御剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等が挙げられる。その中でも、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分が特に好ましい。本発明では、これらの生理活性成分を1種または2種以上配合することが好ましい。
【0019】
これらの天然系成分の例としては、例えばアシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0020】
本発明のメイクアップ化粧料としては、例えば、ファンデーション、アイシャドウ、白粉、チーク、コンシーラー等のメイクアップ化粧料が挙げられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を詳細に説明する。
また、実施例および比較例で作製したメイクアップ化粧料の各種特性に対する評価方法を以下に示す。
【0022】
[皮膚有用性評価]
専門パネラーを各評価品目ごとに10名ずつ用意し(但し、品目によりパネラーが重複する場合もある)、下記に示す評価基準に従って評価を行い、全パネラーの平均点数を以て評価結果とした。従って、点数が高いほど評価項目に対する有用性が高いことを示す。
【0023】
【0024】
実施例1(寒天被覆処理顔料の製造)
ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、セリサイト、ポリメチルメタクリレートパウダー(球状粉末)のそれぞれについて下記の方法で複合化処理を行った。寒天4質量部を90℃の精製水120質量部に溶解した溶液の中に顔料96質量部を投入し、加温下に混練した後、35℃まで冷却し、ついでイソプロピルアルコールを130質量部加えよく混合してスラリーを得た。スラリーをろ過した後、遊星ミルを用いて70℃に加温しながら攪拌下に減圧してイソプロピルアルコールを除去し、ついで送風乾燥機にて90℃で加熱乾燥を行い水分を除去した。ハンマーミルを用いて粉砕を行い、目的とする寒天処理顔料を得た。
【0025】
比較例1(寒天被覆処理顔料の製造)
実施例1で用いたのと同じグレードのベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、セリサイト、ポリアクリル酸アルキル(球状粉末)を用いて下記の処理を行った。寒天4質量部を90℃の精製水120質量部に溶解した溶液の中に顔料96質量部を投入し、加温下に混練した後、送風乾燥機にて90℃で加熱乾燥を行い水分を除去した。ハンマーミルを用いて粉砕を行い、目的とする寒天処理顔料を得た。
【0026】
実施例2、比較例2(パウダーファンデーション)
表1の処方と下記製造方法に従い、パウダーファンデーションを作製した。但し、寒天処理顔料としては前記実施例および比較例で製造したものを下記の配合比率にて混合したものを用いた。
【0027】
【0028】
【表1】
【0029】
(製造方法)
油性成分を加熱混合し、事前に混合した粉体成分の上からゆっくりと加え、さらに攪拌した後、60メッシュを通し、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0030】
表1の結果から、本発明の実施例は比較例と比べて、化粧持ちを犠牲とせずに、より柔らかい感触に優れ、塗布感にも優れていることが判る。これに対して低級アルコールを用いなかった比較例は化粧持ちの持続性には優れていたが、塗布感、感触にはやや劣っていることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上のことから、本発明は、寒天処理時に低級アルコールを使用することで、水分除去に伴う乾燥効率を向上させ、かつ凝集性を低減することでより柔らかい感触持つことを特徴とする寒天被覆処理顔料と、柔らかい感触と塗布感に優れ、かつ化粧持ちに優れることを特徴とするメイクアップ化粧料が得られることは明らかである。
Claims (2)
- 寒天を60℃以上の精製水に溶解したものと、顔料を混合し、ここに低級アルコールを顔料質量比で10〜300%の量で加え、ろ過、乾燥した後、場合によって粉砕して得られることを特徴とする寒天被覆処理顔料の製造方法。
- 低級アルコールがイソプロピルアルコール、エチルアルコールから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の寒天被覆処理顔料の製造方法。
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