JP4063390B2 - 錠剤の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、キシリトールを含有する錠剤の製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0004】
錠剤の製造方法としては、近年、造粒操作を必要としない直接圧縮法が工程の簡略化が可能で経済的に有利であるとして好んで採用される傾向にある。
【0005】
一方、キシリトールは口内細菌により資化されないことから虫歯の原因とならず、体内ではインシュリンと無関係に代謝されるので血糖値を上昇させず、また、強い冷涼感をもった化学的に安定な糖アルコールであることから、数多くの食品や医薬品に甘味料や希釈剤等として使用されている。
【0006】
しかし、キシリトールは直接圧縮法による錠剤の成形が極めて困難か、仮に成形できたとしても満足な錠剤硬度が得られないという問題があった。
【0007】
この問題を解決する方法として、特開昭52−102467号公報には、約10〜80重量%のキシリトールに約10〜80重量%のソルビトール等の多価アルコールを含有させた混合物を直接圧縮する方法が記載されている。
【0008】
この方法は、ソルビトール等の多価アルコールにキシリトールを乾燥状態で混和して得られる混合粉末を直接圧縮する方法であるが、充分な錠剤硬度を得るためにはキシリトールと同重量若しくはキシリトールより多い重量の多価アルコールを混和する必要があり、その結果、キシリトールの持つ冷涼感及びスッキリとした味質を錠剤に付与することができない。
【0009】
また、キシリトール粉末はそれ自体は吸湿性がほとんどないにもかかわらず、ソルビトール粉末等の多価アルコールと混和した混合粉末を成形した錠剤は保存中に容易に吸湿し、潮解してしまう。
【0010】
この他に、キシリトール粉末にソルビトール液を噴霧して造粒したキシリトール粉末を直接圧縮する方法(特開平2−15035号公報)、キシリトールを主成分とする粉末を部分的に溶融して押出し処理することにより得られる粉末を直接圧縮する方法(特開平4−287650号公報)、更に、顆粒化装置を使用してキシリトール粉末にポリデキストロースや水素化デンプン加水分解物等のバインダーを噴霧乾燥して得られる顆粒を直接圧縮する方法(特表平6−503080号公報)が報告されている。
【0011】
しかし、何れの方法も、噴霧造粒機、エクストルーダーのような加熱押出し装置または顆粒化装置を使用して処理した粉体を原料として直接圧縮成形するもので、その処理操作は繁雑であり、しかも噴霧した水溶液中の水分の蒸発や粉体の溶融に多くのエネルギーが必要であることから、必ずしも満足のいく方法ではなかった。
【0012】
本発明は、これらの問題を解決し、充分な硬度を有して保存中にも安定なキシリトール錠剤を容易に直接圧縮成形する方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、室温で固体の脂質で被覆したキシリトール粉末を直接圧縮することで、充分な硬度を有する錠剤を得ることができ、しかも得られた錠剤は長期間の保存にも安定であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の課題を解決するための手段は、下記の通りである。
第1に、室温で固体の脂質で被覆したキシリトール粉末を直接圧縮する錠剤の製造方法である。
第2に、前記脂質で被覆したキシリトール粉末中の脂質が0.1〜6.0重量%である第1に記載の錠剤の製造方法である。
第3に、前記脂質で被覆したキシリトール粉末に、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、エリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択された糖アルコール粉末を混合した後に直接圧縮する第1または第2に記載の錠剤の製造方法である。
第4に、前記糖アルコール粉末が室温で固体の脂質で被覆された粉末である第3に記載の錠剤の製造方法である。
第5に、キシリトール粉末にソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、エリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択された糖アルコール粉末を添加して得られた混合粉末を、室温で固体の脂質で被覆した後に直接圧縮する錠剤の製造方法である。
第6に、前記室温で固体の脂質で被覆した混合粉末中の脂質が0.1〜6.0重量%である第5に記載の錠剤の製造方法である。
【0016】
本発明で被覆に使用できる脂質としては、室温で固体の脂質、好ましくは融点が40℃以上の脂質、更に好ましくは融点が50℃以上の脂質であればよく、例えば、牛脂硬化油、菜種硬化油、パーム硬化油、大豆硬化油、カルナバワックス、ミツロウ等のワックス、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、コレステロール、フコステロール等のステロール、グリセリンの脂肪酸エステル等が使用でき、適宜選択される。
【0017】
また、融点が40℃以下の油脂についても、上記記載の脂質と適宜混合し、その混合した脂質の融点が40℃以上であれば使用することができる。但し、融点が40℃以下の脂質を使用した場合には、流動性のある直接打錠に適した粉体が得られず、また、得られた粉体を用いて錠剤を成形した場合には錠剤の表面がべとつくなどして好ましくない。
【0018】
キシリトール粉末または糖アルコール粉末に脂質を被覆する方法としては、キシリトール粉末または糖アルコール粉末と固体の脂質粉体を公知のミキサー、ボールミル、電気乳鉢、高能率粉体混合装置等を使用して粉体同士を互いに接触・衝突させて被覆する方法を用いることができる。この時、予めキシリトール粉末や糖アルコール粉末と脂質を粉体混合することにより、より均一な被覆を達成することができる。また、上記装置や流動層造粒機等で撹拌しながら溶融状態の油脂を噴霧して被覆することもできる。
【0019】
本発明において、脂質で被覆したキシリトール粉末中の脂質量は好ましくは0.1〜6.0重量%、更に好ましくは1.0〜4.0重量%に調製される。脂質量が6.0重量%を越える場合は、錠剤を製造する際に杵付きが生じ、また、調製した錠剤の表面に脂質が遊離してべとつくばかりでなく、キシリトールが本来持つ冷涼感や優れた味質が損なわれるため好ましくない。また、脂質量が0.1重量%未満の場合には、キシリトール粉末の表面を脂質で均一に被覆するのが困難であり、期待する効果が得られない。
【0020】
本発明でキシリトール粉末と混合される糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、エリスリトールおよびこれら混合物の何れかが選択されるが、中でもソルビトールまたはマルチトールを使用した場合に充分な硬度の錠剤を得ることができる。
【0021】
キシリトールとキシリトール以外の糖アルコールの混合比率は、キシリトールの持つ優れた味質や非う蝕性等の特性を維持できる比率で自由に選択することができる。
【0022】
本発明において混合されるキシリトール粉末とキシリトール以外の糖アルコール粉末はそれぞれ予め室温で固体の脂質で被覆した後に混合して直接打錠することができるが、キシリトール粉末とキシリトール以外の糖アルコール粉末を混合した後に室温で固体の脂質で被覆して得られる混合粉末を直接圧縮することもできる。更に、室温で固体の脂質で被覆したキシリトール粉末に脂質で被覆していないキシリトール以外の糖アルコール粉末を混合して直接圧縮することもできる。
【0023】
キシリトール粉末にソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、エリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択された糖アルコール粉末を添加して得られた混合粉末を室温で固体の脂質で被覆する場合、キシリトールの冷涼感を維持して杵付きを防止する為に、被覆した後の混合粉末中の脂質が好ましくは0.1〜6.0重量%、更に好ましくは1.0〜4.0重量%となるように調製する。
【0024】
本発明の錠剤の製造においては、その目的に応じて甘味剤、香料、滑沢剤、結合剤、増量剤、着色料、医薬、保存剤等を自由に添加することができる。更に、錠剤の原料となる粉末の流動性を良好にし、粉末の飛散や固結を防止する目的で、骨粉、第3リン酸カルシウム、けいそう土等を、脂質で被覆する工程で添加することができる。
【0025】
【実施例】
【0026】
本発明を比較例及び実施例によりさらに詳細に説明する。
【0027】
但し、以下の比較例及び実施例において、%は特に断らない限り重量%を表わすものとする。
【0028】
錠剤は、菊水製作所(株)製の回転式打錠機8F3型を使用して、10mmφ、14Rの杵、上杵位置3.0mm、錠剤重量0.5g/錠にて成形した。
調製した錠剤は、木屋製作所(株)製の木屋式錠剤硬度計または富山産業(株)製の錠剤硬度計TH−203CPを使用して、その硬度を測定し、各錠剤につき5錠の測定結果の平均値をその錠剤の硬度とした。
【0029】
錠剤の吸湿性は、各錠剤の1錠を秤量瓶に精密に秤量した後、恒温恒湿機(エタック(株)製、FX210P)を使用して、温度30℃、相対湿度80%における水分の吸湿量を経時的に測定して、次式により吸湿量を算出し、各錠剤6錠の平均値をその錠剤の吸湿量とした。
【0030】
・吸湿量(%)=[{(測定時の重量)−(試験前の重量)}/(試験前の重量)]x100
【0031】
比較例及び実施例では表1に記載の糖アルコール粉末を使用した。
【0032】
【表1】
【0033】
【比較例1】
【0034】
キシリトール粉末97gに滑沢剤としてDKD F−20W(第一工業製薬(株)製)3gを混合し、得られた混合粉末を原料として錠剤を成形した。
混合粉末の流動性は悪く、打錠には適さなかった。
また、成形した錠剤の硬度は僅か3.4kgと小さく、容易に崩壊した。
【0035】
【比較例2】
【0036】
キシリトール粉末48.5gとマルチトール粉末48.5gに滑沢剤としてDKD F−20W(第一工業製薬(株)製)3gを混合し、得られた混合粉末を原料として錠剤を成形した。
打錠は可能であったが、混合粉末の流動性は悪く、打錠には適さなかった。
【0037】
【実施例1】
【0038】
キシリトール粉末150gに大豆硬化油微粉末(日本油脂(株)製、平均粒径8.6μm、融点63.6℃)4.6gを加えて奈良ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)を使用して5分間処理することで、キシリトール粉末を大豆硬化油で被覆した。得られた大豆硬化油で被覆したキシリトール粉末を原料として錠剤を成形した。
大豆硬化油で被覆したキシリトール粉末の流動性は良好で打錠操作も容易であった。
成形した錠剤の硬度は6.8kgであり、比較例1と比べ充分に改善されていた。
また、成形した錠剤を30℃/相対湿度80%の条件で7日間保存しても4.93%しか吸湿せず、潮解することもなかった。
【0039】
【実施例2】
【0040】
大豆硬化油微粉末の重量が7.9gである以外は実施例1と同じ条件で錠剤を成形した。
実施例1で調製した大豆硬化油被覆キシリトール粉末と同様に、粉末の流動性は良好で打錠操作も容易であった。
成形した錠剤の硬度は11.4kgであり、30℃/相対湿度80%の条件で7日間保存した時の吸湿量は3.84%と改善され、潮解することもなかった。
【0041】
【実施例3】
【0042】
実施例2と同様にして調製した大豆硬化油で被覆したキシリトール粉末50gと、脂質で被覆していないマルチトール粉末47.5gを混合し、得られた混合粉末を原料として錠剤を成形した。
得られた混合粉末の流動性は良好で打錠操作も容易であった。
成形した錠剤の硬度は14.5kgであった。
【0043】
【実施例4】
【0044】
実施例2と同様にして調製した大豆硬化油で被覆したキシリトール粉末50gと、予めマルチトール粉末150gに大豆硬化油微粉末(日本油脂(株)製、平均粒径8.6μm、融点63.6℃)7.9gを加えて奈良ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)を使用して5分間処理することで脂質被覆したマルチトール粉末50gを混合し、得られた混合粉末を原料として錠剤を成形した。
得られた混合粉末の流動性は非常に良好であった。
また、成形した錠剤の硬度は20.9kgであった。
【0045】
【実施例5】
【0046】
キシリトール粉末150gにカルナウバワックス(野田ワックス(株)製、融点83.7℃の製品を平均粒径15.4μmに粉砕し調製したもの)7.9gを加えてパーチカルグラニュレーター((株)パウレック製)を使用して10分間処理することで、キシリトール粉末をカルナウバワックスで被覆した。得られたカルナウバワックスで被覆したキシリトール粉末50gと、脂質で被覆していないソルビトール粉末47.5gを混合し、得られた混合粉末を原料として錠剤を成形した。
得られた混合粉末の流動性は良好であった。
また、成形した錠剤の硬度は22.4kgであった。
【0047】
【実施例6】
【0048】
実施例1と同様にして調製した大豆硬化油で被覆したキシリトール粉末50gと、予めソルビトール粉末150gに大豆硬化油微粉末(日本油脂(株)製、平均粒径8.6μm、融点63.6℃)4.6gを加えて奈良ハイブリダイゼーションシステムを使用して5分間処理することで脂質被覆したソルビトール粉末50gを混合し、得られた混合粉末を原料として錠剤を成形した。
得られた混合粉末の流動性は非常に良好であった。
また、成形した錠剤の硬度は26.1kgであった。
【0049】
【実施例7】
【0050】
キシリトール粉末100gとマルチトール粉末100gを均一に混合して得られた混合粉末200gに大豆硬化油微粉末10.5gを加えてハイスピードミキサー(深江工業(株)製)を使用して10分間処理することで、脂質被覆したキシリトール・マルチトール混合粉末を調製した。次に脂質被覆したキシリトール・マルチトール混合粉末を原料として錠剤を成形した。
得られた混合粉末の流動性は非常に良好であった。
また、成形した錠剤の硬度は19.5kgであった。
【0051】
【発明の効果】
【0052】
本発明により、味質や硬度の改善されたキシリトール錠剤が直接圧縮法で成形できる。
また、本発明において、特に被覆に使用する脂質量が多い場合には滑沢剤の添加を必要としない。
本発明は、直接圧縮する粉体の調製段階でエネルギー消費が少なく、錠剤加工費の低減が可能となる。
更に、錠剤成形の原料となる粉末の流動性が改善でき、粉末の飛散が防止でき打錠操作が容易となる。
Claims (4)
- 室温で固体の脂質で被覆したキシリトール粉末を直接圧縮する錠剤の製造方法であって、前記脂質で被覆したキシリトール粉末中の脂質が0.1〜6.0重量%である錠剤の製造方法。
- 前記脂質で被覆したキシリトール粉末に、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、エリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択された糖アルコール粉末を混合した後に直接圧縮する請求項1に記載の錠剤の製造方法。
- 前記糖アルコール粉末が室温で固体の脂質で被覆された粉末である請求項2に記載の錠剤の製造方法。
- キシリトール粉末にソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニット、エリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択された糖アルコール粉末を添加して得られた混合粉末を、室温で固体の脂質で被覆した後に直接圧縮する錠剤の製造方法であって、前記室温で固体の脂質で被覆した混合粉末中の脂質が0.1〜6.0重量%である錠剤の製造方法。
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