JP4062087B2 - 感光性誘電体形成用組成物、転写フィルム、誘電体および電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は寸法精度の高いパターンを形成するために好適に使用することができる感光性誘電体形成用組成物、感光性誘電体形成用組成物を支持フィルムに塗布した転写フィルム、ならびにこれから形成される誘電体および電子部品に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、多層プリント配線基板等に高誘電率層を設け、この層をコンデンサ等に利用する技術が知られている。この高誘電率層は、たとえば、熱硬化性樹脂を溶解させた有機溶剤に高誘電率の無機粉末を添加したものを、熱硬化性樹脂の脆さを補うために、ガラス繊維等の繊維強化材に含浸させ、その後、溶剤を焼成などにより飛散させて硬化させる等の方法により調製されている。しかしながら、従来の方法では、通常、たとえば20以上などの高い誘電率であってかつ薄膜でも低いリーク電流を有する層を得ることは困難であった。
【0003】
また、各種の無機粉末を用いて高誘電率の誘電体層を得る試みもなされ、たとえば、ポリスチレンに無機粉末としてFe3O4、あるいはZnO+カーボンなどを添加すると、高い誘電率の誘電体層を得ることができることが知られている。しかしこのような系では、誘電率を高くすることができても、得られる誘電体層の誘電正接が大きくなるため、交流電場における誘電体層での発熱が大きくなり、誘電体のフィルムを設けた多層プリント配線基板等の劣化、熱応力による接合部の破断等の不良原因となり、半導体基板の信頼性、耐久性が低下し易いという問題点があった。
【0004】
一方、高い誘電率を得るためには、通常、高誘電率の無機粉末を高温で加熱焼成して誘電体層を形成する方法が知られている。しかしながらこの方法は、たとえば1000℃程度の高温で焼成する必要があるため、配線基板上に電子部品が装着されている状態で誘電体層を設ける場合には適用できず、種々の半導体基板の製造プロセスに汎用的に適用できないという問題点があった。
【0005】
さらに、誘電体層の形成方法としてスクリーン印刷法等が知られているが、基板の大型化および高精細化に伴い、パターンの位置精度の要求が非常に厳しくなり、通常の印刷では対応できないという問題があった。
このため、低温焼成により、高い誘電率で、熱損失の小さい誘電体層を提供するとともに、寸法精度の高いパターンを形成しうる感光性誘電体形成用組成物の出現が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明者らは、前記問題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の平均粒子径分布を持つ無機粒子を含有する感光性誘電体形成用組成物、またこれを塗布した感光性転写フィルムを用いることにより、500℃以下という低温での焼成が可能で、高誘電率かつ低誘電正接であり、薄膜でも低いリーク電流で、なおかつ寸法精度の高いパターンの誘電体を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、熱損失が小さく、低温焼成によって製造可能な高誘電率の誘電体層を寸法精度良く形成できるような感光性誘電体形成用組成物、感光性転写フィルムならびにこの組成物や転写フィルムから形成された誘電体および電子部品を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る感光性誘電体形成用組成物は、
(A−I)平均粒子径が0.05μm未満の無機超微粒子および(A−II)平均粒子径が0.05μm以上の無機微粒子からなる無機粒子と、
(B)アルカリ現像可能な樹脂と、
(C)感光性酸生成化合物とを含有することを特徴としている。
【0009】
本発明に係る感光性転写フィルムは、前記無機超微粒子(A−I)および無機微粒子(A−II)からなる無機粒子と、アルカリ現像可能な樹脂(B)と、感光性酸生成化合物(C)とを含有する感光性誘電体形成用組成物が膜厚1〜100μmで支持フィルム上に設けられていることを特徴としている。
本発明に係る感光性誘電体形成用組成物あるいは感光性転写フィルムによれば、500℃以下の加熱で、誘電率が20以上、好ましくは30以上、誘電正接が0.1以下の誘電体を形成することが可能である。
【0010】
前記アルカリ現像可能な樹脂(B)は、(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることが好ましい。
本発明に係る誘電体は、前記感光性誘電体形成用組成物あるいは感光性転写フィルムを500℃以下で加熱して硬化させることにより形成することができ、誘電率が20以上、誘電正接が0.1以下であることが好ましい。また、このような誘電体は導電性箔上に形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係る電子部品は、前記感光性誘電体形成用組成物あるいは感光性転写フィルムを用いて形成された誘電体を含むことを特徴としている。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明に係る感光性誘電体形成用組成物の詳細について説明する。
[感光性誘電体形成用組成物]
本発明に係る感光性誘電体形成用組成物は、(A−I)平均粒子径が0.05μm未満の無機超微粒子および(A−II)平均粒子径が0.05μm以上の無機微粒子からなる無機粒子と、(B)アルカリ現像可能な樹脂と、(C)感光性酸生成化合物と必要に応じて(D)溶剤、(E)各種添加剤を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの混練機を用いて混練することにより調製することができる。
【0013】
上記のようにして調製される感光性誘電体形成用組成物は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物であり、その粘度は、通常10〜100,000mPa・sとされ、好ましくは50〜10,000mPa・sとされることが望ましい。
以下、感光性誘電体形成用組成物を構成する各成分について説明する。
(A)無機粒子
本発明において使用する無機粒子は、無機超微粒子(A−I)および無機微粒子(A―II)とからなり、これらの無機粒子は、誘電率が30以上であり、好ましくは50以上、さらに好ましくは70以上である。誘電率は高い分には問題なく、上限値は特に限定されないが、たとえば、30000程度であってもよい。
【0014】
このような無機粒子としては、金属酸化物からなるものが好ましく用いられ、特にチタン系金属酸化物が好ましい。ここで、「チタン系金属酸化物」とはチタン元素と酸素元素とを必須元素として含む化合物をいう。このようなチタン系金属酸化物としては、結晶構造を構成する金属元素としてチタンを単一で含むチタン系単一金属酸化物と、金属元素としてチタンおよび他の金属元素を含むチタン系複酸化物とを好ましく用いることができる。
【0015】
前記チタン系単一金属酸化物としては、たとえば、二酸化チタン系金属酸化物が挙げられる。このような二酸化チタン系金属酸化物としては、アナターゼ構造またはルチル構造の二酸化チタン系金属酸化物が挙げられる。
前記チタン系複酸化物としては、たとえば、チタン酸バリウム系、チタン酸鉛系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸ネオジウム系、チタン酸カルシウム系等の金属酸化物が挙げられる。
【0016】
なお、前記「二酸化チタン系金属酸化物」とは、二酸化チタンのみを含む系、または二酸化チタンに他の少量の添加物を含む系を意味し、主成分である二酸化チタンの結晶構造が保持されているものであり、他の系の金属酸化物についても同様である。
また、前記「チタン系複酸化物」とは、チタン系単一金属酸化物と、少なくとも1種の他の金属元素からなる金属酸化物とが複合して生ずる酸化物であり、構造の単位としてオキソ酸のイオンが存在しないものをいう。
【0017】
本発明においては、このような無機粒子を構成するチタン系金属酸化物としては、チタン系単一金属酸化物のうちでは、ルチル構造の二酸化チタン系金属酸化物が好ましく、チタン系複酸化物のうちでは、チタン酸バリウム系金属酸化物を好ましく用いることができる。
これらのうちでは、チタン酸バリウム系金属酸化物を特に好ましく用いることができる。
【0018】
また、水性媒体への分散性を向上させるため、前記無機粒子の表面をシリカ、アルミナ等で変性した粒子も好適に用いることができる。
本発明において0.05μm未満の無機超微粒子(A−I)および0.05μm以上の無機微粒子(A−II)は、(A−I)および(A−II)の合計量を100質量部とした場合に、(A−I)の量は1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部であり、(A−II)の量は99〜70質量部、好ましくは95〜80質量部である。このような無機粒子を用いると、無機粒子のパッキングが良くなり高い誘電率を有する誘電体を得ることができる。
【0019】
このような無機超微粒子と無機微粒子を合わせた無機粒子全体の平均粒子径は、好ましくは0.005〜2.0μm、さらに好ましくは0.02〜1.0μm、より好ましくは0.02〜0.8μm、特に好ましくは0.02〜0.3μmであることが望ましい。また、このとき重量平均粒子径(Dw)と数平均粒子径(Dn)の比からなるDw/Dnは、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.25以上であることが望ましい。Dw/Dnが1.05以下では、膜厚を薄くした場合に誘電体粒子のパッキングが悪くリーク電流が大きくなり好ましくない。
【0020】
本発明の無機粒子の形状は、特に制限されるものではないが、球状、粒状、板状、麟片状、ウィスカー状、棒状、フィラメント状などの形状が挙げられる。これらの形状のうち、球状、粒状、片状、鱗片状であることが好ましい。これらの形状の無機粒子は、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明において使用する無機超微粒子(A−I)は、たとえば気相法やゾルゲル法、RFプラズマ法などにより合成することができる。気相法で合成した無機超微粒子を溶剤に分散するには、分散剤を併用して公知の分散方法、ビーズミル、混練法、高圧ホモジナイザーなどにより一次粒子にまで分散させることができる。
【0022】
感光性誘電体形成用組成物における無機粒子(A)の量((A−I)と(A−II)との合計量)は、(A)+(B)+(C)を100質量%としたとき20〜95質量%、好ましくは40〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%であることが望ましい。
(B)アルカリ現像可能な樹脂
感光性誘電体形成用組成物に使用されるアルカリ現像可能な樹脂としては、種々の樹脂を用いることができる。ここで、「アルカリ現像可能」とは、アルカリ性の現像液によって溶解する性質をいい、具体的には、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有していればよい。
【0023】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、たとえば(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などを挙げることができる。
このようなアルカリ可溶性樹脂のうち、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、特に好ましいものとしては、たとえば
カルボキシル基含有モノマー類(イ)(以下「モノマー(イ)」ともいう)とその他の共重合可能なモノマー類(ハ)(以下「モノマー(ハ)」ともいう)との共重合体、または
モノマー(イ)とエポキシ基含有モノマー類(ロ)(以下「モノマー(ロ)」ともいう)とモノマー(ハ)との共重合体などを挙げることができる。
【0024】
上記モノマー(イ)(カルボキシル基含有モノマー類)としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
上記モノマー(ロ)(エポキシ基含有モノマー類)としては、たとえば、
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]アクリルアミド、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニルプロピル]アクリルアミドなどが挙げられる。
【0026】
その他の共重合可能なモノマー類である上記モノマー(ハ)としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどのモノマー、モノマー(ロ)を含む場合は、モノマー(イ)および(ロ)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系モノマー類;
ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;
ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等のポリマー鎖の一方の末端に(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基を有するマクロモノマー類;などが挙げられる。
【0027】
上記モノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体や、モノマー(イ)とモノマー(ロ)とモノマー(ハ)との共重合体は、モノマー(イ)および/またはモノマー(ロ)のカルボキシル基またはフェノール性水酸基含有モノマーに由来する共重合成分の存在により、アルカリ可溶性を有するものとなる。なかでもモノマー(イ)とモノマー(ロ)とモノマー(ハ)との共重合体は、誘電体用複合粒子(A)の分散安定性や後述するアルカリ現像液への溶解性の観点から特に好ましい。この共重合体におけるモノマー(イ)に由来する共重合成分単位の含有率は、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%であり、モノマー(ロ)に由来する共重合成分単位の含有率は、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%であり、モノマー(ハ)に由来する共重合成分単位の含有率は、好ましくは1〜98質量%、特に好ましくは40〜90質量%である。
【0028】
感光性誘電体形成用組成物を構成するアルカリ可溶性樹脂(B)の分子量は、GPCによるポリスチレン換算の質量平均分子量(以下、単に「質量平均分子量(Mw)」ともいう)で、好ましくは5,000〜5,000,000、さらに好ましくは10,000〜300,000であることが望ましい。
感光性誘電体形成用組成物におけるアルカリ現像可能な樹脂(B)の含有量は、無機微粒子(A−II)100質量部に対して、通常1〜500質量部、好ましくは10〜500質量部、好ましくは10〜200質量部であることが望ましい。
【0029】
また感光性誘電体形成用組成物におけるアルカリ現像可能な樹脂(B)の量は、(A)+(B)+(C)を100質量%としたとき1〜60質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%であることが望ましい。
なお、感光性誘電体形成用組成物中に、たとえばビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂などのアルカリ現像可能な樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
(C)感光性酸生成化合物
感光性酸生成化合物(C)は放射線光の照射によって酸を生成する化合物である。たとえば1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド等を挙げることができる。具体的にはJ.Kosar著"Light−Sensitive Systems"339〜352(1965)、John Wiley & Sons社(New York)やW.S.De Forest著"Photoresist"50(1975)、McGraw−Hill、Inc.(New York)に記載されている1,2−キノンジアジド化合物を挙げることができる。
【0030】
これらの中で、放射線光を照射した後の400〜800nmの可視光線領域における透明性が良好な化合物、たとえば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、3′−メトキシ−2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,5,5′−テトラメチル−2′,4,4′−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′−[1−[4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル]エチリデン]ジフェノールおよび2,4,4−トリメチル−2′,4′,7−トリヒドロキシ−2−フェニルフラバン等の1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルまたは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルを好ましいものとして挙げることができる。
【0031】
感光性酸生成化合物(C)の含有量は、アルカリ現像可能な樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部であり、特に好ましくは10〜50質量部である。5質量部未満であると、放射線光を吸収して生成する酸の量が少なくなるので、放射線照射前後のアルカリ水溶液に対する溶解度に差をつけることができず、パターニングが困難となり、組成物から得られるパターンの耐熱性に不具合が生じる恐れがある。また、100質量部を超えると、短時間の放射線光の照射では添加した感光性酸生成化合物の大半が未だそのままの形で残存するため、アルカリ水溶液への不溶化効果が高過ぎて現像することが困難となる場合がある。
【0032】
また感光性誘電体形成用組成物における感光性酸生成化合物(C)の量は、(A)+(B)+(C)を100質量%としたとき、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%であることが望ましい。
(D)溶剤
感光性誘電体形成用組成物には、必要に応じて溶剤(D)が含有される。上記溶剤(D)としては、無機微粒子(A−II)や無機超微粒子(A−I)との親和性、ならびにアルカリ現像可能な樹脂(B)、感光性酸生成化合物(C)および必要に応じて含有される後述の各種添加剤(E)との溶解性が良好で、感光性誘電体形成用組成物に適度な粘性を付与することができ、乾燥させることによって容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。
【0033】
かかる溶剤の具体例としては、
ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;
酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;
乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;
メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類
などを例示することができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
感光性誘電体形成用組成物における溶剤(D)の含有量としては、良好な流動性が得られる範囲内において適宜選択することができるが、通常、無機微粒子(A−II)100質量部に対して、1〜10,000質量部であり、好ましくは10〜1,000質量部であることが望ましい。
(E)各種添加剤
感光性誘電体形成用組成物には、上記(A)〜(D)成分のほかに、可塑剤、接着助剤、分散剤、充填剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、現像促進剤などの各種添加剤が任意成分として含有されていてもよい。
▲1▼接着助剤
接着助剤としては、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、およびジルコネート系カップリング剤から選択された少なくとも1つのカップリング剤を使用することができる。これらのカップリング剤のうち、比較的少量で優れた密着性が得られる下記式(1)で表される化合物などのシランカップリング剤〔飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシラン〕が好適に用いられる。
【0035】
【化1】
【0036】
(式中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数である。)
上記式(1)において、飽和アルキル基の炭素数を示すpは3〜20の整数とされ、好ましくは4〜16の整数とされる。
上記式(1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、n−プロピルジメチルメトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−イコサンジメチルメトキシシランなどの飽和アルキルジメチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=1);
n−プロピルジエチルメトキシシラン、n−ブチルジエチルメトキシシラン、n−デシルジエチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルメトキシシラン、n−イコサンジエチルメトキシシランなどの飽和アルキルジエチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=2);
n−ブチルジプロピルメトキシシラン、n−デシルジプロピルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルメトキシシラン、n−イコサンジプロピルメトキシシランなどの飽和アルキルジプロピルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=3);
n−プロピルジメチルエトキシシラン、n−ブチルジメチルエトキシシラン、n−デシルジメチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルエトキシシラン、n−イコサンジメチルエトキシシランなどの飽和アルキルジメチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=1);
n−プロピルジエチルエトキシシラン、n−ブチルジエチルエトキシシラン、n−デシルジエチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルエトキシシラン、n−イコサンジエチルエトキシシランなどの飽和アルキルジエチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=2);
n−ブチルジプロピルエトキシシラン、n−デシルジプロピルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルエトキシシラン、n−イコサンジプロピルエトキシシランなどの飽和アルキルジプロピルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=3);
n−プロピルジメチルプロポキシシラン、n−ブチルジメチルプロポキシシラン、n−デシルジメチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルプロポキシシラン、n−イコサンジメチルプロポキシシランなどの飽和アルキルジメチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=1);
n−プロピルジエチルプロポキシシラン、n−ブチルジエチルプロポキシシラン、n−デシルジエチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルプロポキシシラン、n−イコサンジエチルプロポキシシランなどの飽和アルキルジエチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=2);
n−ブチルジプロピルプロポキシシラン、n−デシルジプロピルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルプロポキシシラン、n−イコサンジプロピルプロポキシシランなどの飽和アルキルジプロピルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=3);
n−プロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジメトキシシラン、n−イコサンメチルジメトキシシランなどの飽和アルキルメチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=1);
n−プロピルエチルジメトキシシラン、n−ブチルエチルジメトキシシラン、n−デシルエチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジメトキシシラン、n−イコサンエチルジメトキシシランなどの飽和アルキルエチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=2);
n−ブチルプロピルジメトキシシラン、n−デシルプロピルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジメトキシシラン、n−イコサンプロピルジメトキシシランなどの飽和アルキルプロピルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=3);
n−プロピルメチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、n−デシルメチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジエトキシシラン、n−イコサンメチルジエトキシシランなどの飽和アルキルメチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=1);
n−プロピルエチルジエトキシシラン、n−ブチルエチルジエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−イコサンエチルジエトキシシランなどの飽和アルキルエチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=2);
n−ブチルプロピルジエトキシシラン、n−デシルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジエトキシシラン、n−イコサンプロピルジエトキシシランなどの飽和アルキルプロピルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=3);
n−プロピルメチルジプロポキシシラン、n−ブチルメチルジプロポキシシラン、n−デシルメチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジプロポキシシラン、n−イコサンメチルジプロポキシシランなどの飽和アルキルメチルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=1);
n−プロピルエチルジプロポキシシラン、n−ブチルエチルジプロポキシシラン、n−デシルエチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジプロポキシシラン、n−イコサンエチルジプロポキシシランなどの飽和アルキルエチルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=2);
n−ブチルプロピルジプロポキシシラン、n−デシルプロピルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジプロポキシシラン、n−イコサンプロピルジプロポキシシランなどの飽和アルキルプロピルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=3);
n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−イコサントリメトキシシランなどの飽和アルキルトリメトキシシラン類(a=3,m=1);
n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−イコサントリエトキシシランなどの飽和アルキルトリエトキシシラン類(a=3,m=2);
n−プロピルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシラン、n−イコサントリプロポキシシランなどの飽和アルキルトリプロポキシシラン類(a=3,m=3)などを挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
これらのうち、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシランなどが特に好ましい。
【0038】
感光性誘電体形成用組成物における接着助剤の含有量としては、無機微粒子(A−II)100質量部に対して、0.001〜10質量部、さらに好ましくは0.001〜5質量部であることが望ましい。
▲2▼分散剤
無機微粒子粒子(A−II)の分散剤としては、脂肪酸が好ましく用いられ、特に、炭素数4〜30、好ましくは4〜20の脂肪酸が好ましい。上記脂肪酸の好ましい具体例としては、フマル酸、フタル酸、マロン酸、イタコン酸、シトラコン酸、オクタン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸;エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
感光性誘電体形成用組成物における分散剤の含有量としては、無機微粒子(A−II)100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部であることが望ましい。
▲3▼充填剤
本発明の感光性誘電体形成用組成物は、前記(A−I)〜(D)成分の他に、さらに、充填剤を含有することができる。このような充填剤として、誘電率を向上させる添加剤としては、カーボン微粉(例:アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、黒鉛微粉、高次フラーレンなどの導電性微粒子、炭化ケイ素微粉などの半導体性の微粒子などが挙げられる。これらの誘電率向上用の充填剤を添加する場合には、無機微粒子(A−II)100質量%に対し、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%の量で使用することが望ましい。
【0040】
[感光性転写フィルム]
本発明に係る感光性転写フィルムは、上記の感光性誘電体形成組成物を支持フィルム上に塗布して、支持フィルム上に感光性転写層を設けることで得ることができ、さらにこの感光性転写層の表面に保護フィルムが設けられていてもよい。
<支持フィルムおよび保護フィルム>
本発明の感光性転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可撓性を有する樹脂フィルムあるいは導電性箔であることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコータによってペースト状組成物を塗布することによって感光性転写層を形成することができ、感光性転写層をロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。支持フィルムが導電性箔である場合には、誘電体層を別の基板上にラミネートした後に導電性箔を別のドライフィルムフォトレジスト(DFR)を用いてパターニングした後に、これを露光マスクとして誘電体層を露光現像した後に誘電体層の上部電極としてこれを用いることができる。
【0041】
支持フィルムに用いる樹脂としては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、含フッ素樹脂(たとえば、ポリフルオロエチレンなど)、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。支持フィルムの厚さは、たとえば20〜100μm、強度等の観点から25〜50μmであることが好ましい。樹脂製の支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。離型処理がされていると、後述のパターンの形成工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができるからである。離型処理としては、たとえば、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、シリコン−フッ素系離型剤を塗布する処理が好適に用いられる。
【0042】
支持フィルムに用いる導電性箔は、たとえば銅、金、銀、白金、ニッケル、ステンレス、アルミニウム、鉄および各種合金からなる箔を挙げることができる。これらの箔のなかで耐酸化性、導電性と柔軟性の観点から銅、金、銀、白金、ニッケル、アルミニウムが特に好ましい。また、必要に応じて複数の導電性箔の積層体や、樹脂基板や不織布樹脂含浸基板の上に積層された基板であっても良い。このような導電性箔の厚さは特に制限されるものではないが、通常5〜75μm、好ましくは8〜50μm、特に好ましくは10〜25μmの範囲にあるものが望ましい。
【0043】
なお、保護フィルムについても、支持フィルムと同様のものを用いることができる。また、保護フィルムの表面には通常、離型処理が施され、保護フィルム/感光性転写層間の剥離強度が、支持フィルム/感光性転写層間の剥離強度よりも小さいことが必要である。
<感光性転写層>
本発明の感光性転写フィルムを構成する感光性転写層は、上記の感光性誘電体形成用組成物を支持フィルム上に塗布し、塗膜を乾燥して溶剤の一部または全部を除去することにより形成することができる。
【0044】
感光性誘電体形成用組成物を支持フィルム上に塗布し、感光性転写層を得る方法としては、膜厚の均一性に優れた膜厚の大きい(たとえば1μm以上)塗膜を効率よく形成することができるものであることが好ましく、具体的には、ロールコーターによる塗布方法、ブレードコーターによる塗布方法、スリットコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法などを好ましいものとして挙げることができる。
【0045】
塗膜の乾燥条件は、50〜150℃で、0.5〜30分間程度であり、乾燥後における溶剤の残存割合(感光性転写層中の含有率)は、通常、2質量%以下、好ましくは1質量%以下であることが望ましい。
上記のようにして支持フィルムの少なくとも片面に形成される感光性転写層の膜厚は、1〜100μm、好ましくは3〜70μm、さらに好ましくは5〜50μmであることが望ましい。
【0046】
また、感光性転写層中の無機微粒子(A−II)の含有量としては、転写フィルムにおける感光性転写層全体に対して、30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%であることが望ましい。このような感光性転写層を有することにより、基板への密着性に優れ、かつ寸法精度の高いパターンを形成することができる感光性転写フィルムを得ることができる。
【0047】
[誘電体]
本発明の感光性誘電体形成用組成物および感光性転写フィルムを用いることにより、500℃以下の温度で加熱することで、誘電率が20以上、好ましくは30以上、誘電正接が0.1以下の誘電体を形成することができる。以下、本発明の誘電体の形成方法および誘電体の物性について詳述する。
<誘電体層パターンの形成方法>
本発明の感光性誘電体形成用組成物を用いた誘電体層パターンの形成方法は、〔1−1〕感光性誘電体形成用組成物の塗布工程、あるいは〔1−2〕感光性転写層の転写工程、〔2〕誘電体層の露光工程、〔3〕誘電体層の現像工程、〔4〕誘電体層パターンの硬化工程の各工程を有する。
〔1−1〕感光性誘電体形成用組成物の塗布工程
塗布工程では、たとえば塗布機などを用いて、基板上に本発明の感光性誘電体形成用組成物を塗布し、誘電体層を形成する。ここで、好ましい塗布機としては、スピナー、スクリーン印刷機、グラビアコート機、ロールコート機、バーコーター、ダイコーター等が挙げられる。上記基板材料としては、特に限定されないが、たとえばプリント配線基板、銅張積層板(CCL)、SUS基板、銅箔付きポリイミド基板、セラミクス基板、シリコーンウエハー(W−CSPなど)、アルミナ基板などからなる板状部材が挙げられる。
【0048】
具体的には、たとえば、本発明の感光性誘電体形成用組成物を、スクリーン印刷機などによりプリント配線基板等上に印刷し、オーブン等を用いて当該感光性誘電体形成用組成物を乾燥させ、誘電体層を形成することができる。
〔1−2〕感光性転写層の転写工程
転写工程では、本発明の感光性転写フィルムを使用し、当該感光性転写フィルムを構成する感光性転写層を基板上に転写する。
【0049】
基板材料としては、たとえばプリント配線基板、銅張積層板(CCL)、SUS基板、銅箔付きポリイミド基板、セラミクス基板、シリコーンウエハー(W−CSPなど)、アルミナ基板などからなる板状部材が用いられる。この板状部材の表面に予め所望のパターンを形成したものを用いても差し支えない。基板表面に対しては、必要に応じて、シランカップリング剤などによる薬品処理;プラズマ処理;イオンプレーティング法、スパッタリング法、気相反応法、真空蒸着法などによる薄膜形成処理のような前処理を適宜施していてもよい。
【0050】
転写工程の一例を示せば以下のとおりである。必要に応じて使用される感光性転写フィルムの保護フィルムを剥離した後、基板上に、感光性転写層の表面が当接されるように感光性転写フィルムを重ね合わせ、この感光性転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着する。これにより、基板上に感光性転写層が転写されて密着した状態となる。ここで、転写条件としては、たとえば、加熱ローラの表面温度が20〜140℃、加熱ローラによるロール圧が1〜5kg/cm2 、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分であるような条件を示すことができる。また、基板は予熱されていてもよく、予熱温度としてはたとえば40〜100℃とすることができる。
〔2〕誘電体層の露光工程
露光工程においては、上記のようにして形成した誘電体層の表面に、露光用マスクを介して、放射線を選択的に照射(露光)して、誘電体層にパターンの潜像を形成する。
【0051】
また、上記の[1−1]でさらにドライフィルムレジスト付き導電性箔をラミネート、あるいは[1−2]で支持フィルムに導電性箔を使用して導電性箔付き誘電体層を形成した上に、これをパターン化した後にケミカルエッチングして、導電性箔を露光用マスクとすることも可能である。
露光工程において、選択的照射(露光)される放射線としては、たとえば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線あるいはX線等が挙げられ、好ましくは可視光線、紫外線および遠紫外線が、さらに好ましくは紫外線が用いられる。
【0052】
露光用マスクの露光パターンは目的によっても異なるが、たとえば、10〜1000μm角のドットパターンが用いられる。
放射線照射装置としては、たとえばフォトリソグラフィー法で使用されている紫外線照射装置、半導体および液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
〔3〕誘電体層の現像工程
現像工程においては、露光された誘電体層を現像処理することにより、誘電体層のパターン(潜像)を顕在化させる。
【0053】
誘電体層の現像工程で使用される現像液としては、アルカリ現像液を使用することができる。これにより、誘電体層に含有されるアルカリ可溶性樹脂(アルカリ現像可能な樹脂(B))を容易に溶解除去することができる。
なお、誘電体層に含有される無機微粒子(A−II)および/または無機超微粒子(A−I)は、アルカリ可溶性樹脂により均一に分散されているため、バインダーであるアルカリ可溶性樹脂を溶解させ、洗浄することにより、アルカリ可溶性樹脂が溶解した部分に存在する無機微粒子(A−II)および/または無機超微粒子(A−I)も同時に除去される。
【0054】
このようなアルカリ現像液の有効成分としては、たとえば
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどの無機アルカリ性化合物;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミンなどの有機アルカリ性化合物
などを挙げることができる。
【0055】
誘電体層の現像工程で使用されるアルカリ現像液は、前記アルカリ性化合物の1種または2種以上を水などの溶媒に溶解させることにより調製することができる。アルカリ性現像液におけるアルカリ性化合物の濃度は、通常0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%である。アルカリ現像液には、ノニオン系界面活性剤または有機溶剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0056】
なお、アルカリ現像液による現像処理がなされた後は、通常、水洗処理が施される。また、必要に応じて現像処理後に感光性転写層パターン側面および基板露出部に残存する不要分を擦り取る工程を含んでもよい。
現像処理条件としては、現像液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度、現像方法(たとえば浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、現像装置などを目的に応じて適宜選択することができる。
【0057】
この現像工程により、誘電体層残留部と、誘電体層除去部とから構成される誘電体層パターン(露光用マスクに対応するパターン)が形成される。
〔4〕誘電体層パターンの硬化工程
硬化工程においては、誘電体層パターンを熱硬化処理して、パターンを形成する。このような熱硬化処理は、500℃以下の温度で加熱することにより行うことができ、好ましくは100〜500℃、さらに好ましくは150〜300℃の温度で行うことが望ましい。加熱時間は、好ましくは1分〜24時間、さらに好ましくは10分〜12時間の範囲で行うことが望ましい。
【0058】
感光性誘電体形成用組成物を加熱して硬化させる場合の加熱方法としては、たとえば、オーブン、赤外線ランプ、ホットプレート等により加熱する方法が挙げられる。
<誘電体の物性>
本発明に係る感光性誘電体形成用組成物あるいは感光性転写フィルムから得られる誘電体は、誘電率が20以上、好ましくは23以上、さらに好ましくは25以上、特に好ましくは30以上であることが望ましい。誘電率の上限は特に限定されないが、たとえば200程度であってもよい。また、本発明に係る感光性誘電体形成用組成物あるいは感光性転写フィルムから得られる誘電体は、誘電正接が0.1以下、好ましくは0.08以下、さらに好ましくは0.06以下であることが望ましい。誘電正接の下限は特に限定されないが、たとえば0.001程度であってもよい。
【0059】
なお、本明細書において、誘電率、誘電正接は、JIS K6481(周波数1MHz)に記載の方法により測定した値である。
【0060】
なお、この誘電体の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが望ましい。フィルム厚さの下限は特に限定されないが、通常は1μm以上である。
[電子部品]
本発明の誘電体は、500℃以下という低い温度で加熱焼成して得ることができ、誘電率が20以上でありかつ誘電正接が0.1以下であり、薄膜で静電容量の大きなコンデンサ等を形成することができる。また、この誘電体を備えたプリント回路基板、半導体パッケージ、コンデンサ、高周波用アンテナ等の電子部品は、小型でかつ高密度のものとすることができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る感光性誘電体形成用組成物、感光性転写フィルムを用いると、前記のように500℃以下という低い加熱温度で、しかも0.1以下という低い誘電正接かつ20以上という高い誘電率の誘電体を形成することができる。
本発明に係る誘電体は、薄膜で高誘電率であるので、プリント回路基板、半導体パッケージ、コンデンサ、高周波用アンテナ等の電子部品等において好適に利用される。
【0062】
本発明に係る電子部品は、前記誘電体を備えることから、小型化、薄膜化することができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
また、質量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製ゲルパーミィエーションクロマトグラフィー(GPC)(商品名HLC−802A)により測定したポリスチレン換算の平均分子量である。
【0064】
【合成例1】
フラスコ内を窒素置換した後、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル9.0gを溶解したジエチレングリコールジメチルエーテル溶液459.0gを仕込んだ。引き続きスチレン22.5g、メタクリル酸45.0g、ジシクロペンタニルメタクリレート67.5gおよびメタクリル酸グリシジル90.0gを仕込んだ後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間保持した後、90℃で1時間加熱して重合を終結させた。
【0065】
その後、反応生成溶液を多量の水に滴下し反応物を凝固させた。この凝固物を水洗後、テトラヒドロフラン200gに再溶解し、多量の水で再度、凝固させた。この再溶解−凝固操作を計3回行った後、得られた凝固物を60℃で48時間真空乾燥し、目的とする共重合体[1]を得た。
【0066】
【合成例2】
フラスコ内を窒素置換した後、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル9.0gを溶解した3−メトキシプロピオン酸メチル溶液459.0gを仕込んだ。引き続き、メタクリル酸56.25g、メチルメタクリレート90.0gおよびメタクリル酸−3,4−エポキシブチル78.75gを仕込んだ後、ゆるやかに攪拌を始めた。80℃で重合を開始し、この温度を5時間保持した後、90℃で1時間加熱して重合を終結させた。その後、合成例1と同様にして共重合体[2]を得た。
【0067】
【合成例3】
テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物32.29g(90ミリモル)および1,3,3a,4,5,9A−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン3.00g(10ミリモル)、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン28.74g(70ミリモル)、オルガノシロキサンLP7100(商品名、信越化学(株)製)2.49g(10ミリモル)、3,5−ジアミノ安息香酸3.04g(20ミリモル)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)450gに溶解して、室温で12時間反応させた。その後、この反応溶液に、ピリジン32gおよび無水酢酸71gを添加し、100℃で3時間脱水閉環反応を行った。次いで、反応溶液を減圧留去して精製し、固形分濃度20%のポリイミドNMP溶液を得た。
【0068】
【実施例1】
(1)感光性誘電体形成用組成物の調製
(A−I)無機超微粒子としてチタニア・ナノ粒子(商品名「RTIPBC」、シーアイ化成、平均粒子径0.02μm、誘電率100)を15部、(A−II)無機微粒子としてチタン酸バリウム粒子(商品名「BT−01」、堺化学工業社製、平均粒子径0.1μm、誘電率500)85部、(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例1で得られた共重合体[1]30部、(D)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部および乳酸エチル50部、(C)感光性酸生成化合物として、4,4′−[1−[4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル]エチリデン]ジフェノールの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(平均エステル化率66.7モル%)2部を、ビーズミルで混練りした後、ステンレスメッシュ(500メッシュ)および孔径1μmのフィルターで濾過することにより、感光性誘電体形成用組成物を調製した。
(2)感光性誘電体形成用組成物の塗布工程
感光性誘電体形成用組成物をプリント配線基板上にスピナーを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を完全に除去し、厚さ7μmの感光性誘電体層を形成した。
(3)誘電体層の露光工程・現像工程
感光性誘電体層に対して、露光用マスク(500μm角のドットパターン)を介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を照射した。照射量は100mJ/cm2とした。
【0069】
露光工程の終了後、露光処理された感光性誘電体層に対して、0.12質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(25℃)を現像液とするシャワー法による現像処理を2分かけて行った。次いで超純水による水洗処理を行い、これにより、紫外線が照射されて可溶化された感光性誘電体層を除去し、パターンを形成した。
(4)誘電体層パターンの硬化工程
感光性誘電体層パターンが形成されたプリント配線基板をオーブン内で200℃の温度雰囲気下で60分間にわたり硬化処理を行った。これにより、プリント配線基板の表面に誘電体パターンが得られた。
【0070】
得られた誘電体パターンのパターニング特性および誘電体特性については、後述の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0071】
【実施例2】
(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例1の共重合体[1]に代えて、合成例2で得られた共重合体[2]25部を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ7μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
【実施例3】
(A−I)無機超微粒子としてチタン酸バリウム・ナノ粒子(日清エンジニアリング、平均粒子径0.03μm、誘電率400)を10部、(A−II)無機微粒子としてチタン酸バリウム粒子(商品名「BT−01」、堺化学工業社製、平均粒子径0.1μm、誘電率500)90部、を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
【実施例4】
(A−I)無機超微粒子としてチタン酸バリウム・ナノ粒子(日清エンジニアリング、平均粒子径0.03μm、誘電率400)を10部、(A−II)無機微粒子としてチタン酸バリウム粒子(東邦チタニウム製、平均粒子径0.1μm、誘電率400)90部、(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例1の共重合体[1]に代えて、合成例3のポリイミドNMP溶液(固形分濃度20%)150部、(D)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部および乳酸エチル50部を加えないこと以外は、実施例2と全く同様にして感光性誘電体形成用組成物を調製した。当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと、および硬化工程においてオーブン内温度を200℃から230℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ3μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像、硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
【実施例5】
(A−I)無機超微粒子としてチタニア・ナノ粒子(商品名「RTIPBC」、シーアイ化成、平均粒子径0.02μm、誘電率100)10部、(A−II)無機微粒子としてチタン酸バリウム粒子(東邦チタニウム製、平均粒子径0.1μm、誘電率400)90部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ3μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
【比較例1】
(A−I)の無機超微粒子を使用せず、(A−II)無機微粒子としてチタン酸バリウム粒子(商品名「BT−02」、堺化学工業社製、平均粒子径0.2μm、誘電率500)100部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ7μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【実施例6】
(1)感光性誘電体形成用組成物の調製
(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例1の共重合体[1]30部に代えて35部、(D)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部および乳酸エチル50部に代えて、プロピレングリコールモノメチルエーテル75部および乳酸エチル75部としたこと以外は、実施例1と全く同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。
(2)感光性転写フィルムの作製
上記で得られた感光性誘電体形成用組成物を銅箔からなる支持フィルム(幅300mm、長さ500mm、13μm厚)上にダイコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ10μmの感光性誘電体形成層を支持フィルム上に形成し、感光性転写フィルムを作製した。
(3)感光性転写層の転写工程
プリント配線基板の表面に、感光性転写層の表面が当接されるように感光性転写フィルムを重ね合わせ、この感光性転写フィルムを加熱ローラにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を120℃、ロール圧を4kg/cm2 、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。これにより、プリント配線基板の表面に銅箔付き感光性誘電体形成層が転写されて密着した状態となった基板を得た。この感光性誘電体形成層について膜厚を測定したところ、10μm±1μmの範囲にあった。
(4)誘電体層の露光工程・現像工程
上記のようにして得た基板の上に、ポジ用DFRをラミネートして、露光用マスク(500μm角のドットパターン)を介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を照射してパターニングした。これを定法により現像した後、開口部に対し塩化第二銅溶液を用いてケミカルエッチングして、パターニングされた銅箔付き感光性誘電体形成層が得られた。さらに、このパターニングされた銅箔を露光用マスクにして、超高圧水銀灯により露光した。照射量は400mJ/cm2とした。
【0077】
露光工程の終了後、露光処理された感光性誘電体形成層に対して、0.12質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(30℃)を現像液とするシャワー法による現像処理を2分かけて行った。次いで超純水による水洗処理を行い、これにより、紫外線が照射されて可溶化された感光性誘電体層を除去し、パターンを形成した。
(5)誘電体層パターンの硬化工程
銅箔付き感光性誘電体形成層パターンが形成されたプリント配線基板をオーブン内で200℃の温度雰囲気下で30分間にわたり硬化処理を行った。これにより、プリント配線基板の表面に銅箔付き誘電体パターンが得られた。
【0078】
得られた誘電体パターンのパターニング特性および誘電体特性については、後述の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0079】
【実施例7】
(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例1の共重合体[1]30部に代えて35部、(D)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部および乳酸エチル50部に代えて、プロピレングリコールモノメチルエーテル75部および乳酸エチル75部としたこと以外は、実施例3と全く同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。
【0080】
当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、厚さ10μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
【実施例8】
(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例3のポリイミドNMP溶液(固形分濃度20%)150部に代えて200部としたこと以外は、実施例4と全く同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製した。
当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと、硬化工程においてオーブン内温度を200℃から230℃に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、厚さ10μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
【比較例2】
(B)アルカリ現像可能な樹脂として、合成例1の共重合体[1]30部に代えて35部、(D)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部および乳酸エチル50部に代えて、プロピレングリコールモノメチルエーテル75部および乳酸エチル75部としたこと以外は、比較例1と全く同様にして、感光性誘電体形成用組成物を調製し、当該感光性誘電体形成用組成物を用いたこと以外は実施例6と同様にして、厚さ10μmの感光性誘電体層を形成後、露光・現像・硬化工程を行い、誘電体パターンを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
なお、誘電体パターンのパターニング特性および誘電体特性については以下のようにして評価した。
〔パターニング特性〕
実施例1〜8、および比較例1〜2:得られた誘電体パターンについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、当該誘電体パターンの幅および高さの測定を行い、幅の精度について、500μm±10μmの範囲にあるものを○、それ以外のものを×として評価した。また、パターンの欠落についての観察を行い、欠落のないものについて○、欠落のあるものについて×として評価した。
〔誘電率、誘電正接〕
実施例1〜5、および比較例1:得られた誘電体パターン上面にアルミ蒸着法により上面電極(厚み;0.5μm)を形成した。
【0084】
実施例6〜8、および比較例2:得られた銅箔付き誘電体パターンの上面の銅箔を上面電極として使用した。
プリント配線基板側と上面電極の間でLCRメーター(HP4284A、ヒューレットパッカード社製)により1MHzでの誘電率、誘電正接を10点測定してその平均値を求めた。
〔耐湿熱性(HAST試験)〕
硬化フィルムについて、121℃、湿度100%、2気圧の条件下で、72時間耐湿熱性試験を行って、試験の前後で赤外線分光測定を実施し、その変化の程度により、耐湿熱性を下記基準で評価した。
【0085】
○・・・変化がなく耐性が認められる
×・・・変化が大きく耐性が認められない
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
Claims (14)
- (A)平均粒子径が0.05μm未満であり、誘電率が30以上である金属酸化物からなる無機超微粒子(A−I)および平均粒子径が0.05μm以上であり、誘電率が30以上である金属酸化物からなる無機微粒子(A− II )からなる無機粒子と、
(B)アルカリ現像可能な樹脂と、
(C)感光性酸生成化合物と
を含有することを特徴とする感光性誘電体形成用組成物。 - (A−I)および(A−II)の合計量を100質量部としたとき、(A−I)の量が1〜30質量部であり、(A−II)が99〜70質量部である請求項1記載の感光性誘電体形成用組成物。
- (A−I)と(A−II)との合計量が20〜95質量%
(B)の量が1〜60質量%
(C)の量が0.1〜30質量%である請求項1記載の感光性誘電体形成用組成物。 - 500℃以下の加熱で、誘電率が20以上、誘電正接が0.1以下の誘電体を形成することが可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性誘電体形成用組成物。
- 前記無機超微粒子(A−I)および無機微粒子(A−II)を構成する金属酸化物がチタン系金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性誘電体形成用組成物。
- 前記アルカリ現像可能な樹脂(B)が、(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性誘電体形成用組成物。
- (A)平均粒子径が0.05μm未満であり、誘電率が30以上である金属酸化物からなる無機超微粒子(A−I)および平均粒子径が0.05μm以上であり、誘電率が30以上である金属酸化物からなる無機微粒子(A− II )からなる無機粒子と、
(B)アルカリ現像可能な樹脂と、
(C)感光性酸生成化合物と
を含有する感光性誘電体形成用組成物が、膜厚1〜100μmで支持フィルム上に設けられていることを特徴とする感光性転写フィルム。 - 500℃以下の加熱で、誘電率が20以上、誘電正接が0.1以下の誘電体を形成することが可能であることを特徴とする請求項7に記載の感光性転写フィルム。
- 前記無機超微粒子(A−I)および無機微粒子(A−II)を構成する金属酸化物がチタン系金属酸化物であることを特徴とする請求項7または8に記載の感光性転写フィルム。
- 前記アルカリ現像可能な樹脂(B)が、(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の感光性転写フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の感光性誘電体形成用組成物を用いて形成される誘電体。
- 請求項7〜10のいずれかに記載の感光性転写フィルムを用いて形成される誘電体。
- 請求項11または12に記載の誘電体が導電性箔上に形成されていることを特徴とする導電性箔付き誘電体。
- 請求項11〜13のいずれかに記載の誘電体を含むことを特徴とする電子部品。
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