JP4061815B2 - 熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の詳細は、例えば、米国特許第3,152,904号、同第3,457,075号明細書、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Material)」やD.モーガンとB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」「イメイジング・プロセッシズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)」Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年等に開示されている。
【0003】
このような熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、還元可能な銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、銀の色調を制御する色調剤及び還元剤を通常有機バインダー中に分散した状態で含有している。熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機酸銀の反応によって生成した銀は白黒画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像が形成される。近年医療、印刷分野において処理の簡素化、迅速化、地球へのやさしさをキーワードに技術が進歩している。
【0004】
この方向には赤外線レーザー(特に750nm以上の波長を持つ電磁波)により露光し、熱現像するシステムがある。このようなシステムにおいて鮮鋭性の高い画像を得るためには、ハレーション及びイラジエーションを防止するために露光に用いる赤外線レーザーに適した吸収を有する赤外染料が必要である。感光性層に赤外線露光して画像形成に与らなかった赤外線の一部が、吸収されずに支持体にまで達して反射し、また支持体中を通って、画像領域の外に戻って来て、画像の鮮鋭性を低下させるので、可能な限り画像に寄与しない赤外線を吸収、カットすることが重要な課題である。
【0005】
通常ハレーション防止には熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の構成層の下引層を除く何れかの構成層、特にバック層にハレーション防止層を設けて防止することが行われていた。しかしこの方法では、ハレーションを完全に防ぐことは出来ていない。
【0006】
米国特許第4,581,323号及び同第4,312,941号明細書に開示されているこの種の被膜は、感光性成分の内側面間の散乱光の複合反射を防止するという方法である。また、カーボンブラックを用いた剥離可能なハレーション防止被覆層が、米国特許第4,477,562号及び同第4,409,316号明細書に開示されているが、この方法では剥離可能な層は、被覆、加工及び包装工程で接着が困難であり、着色した屑材料のシートも生じる。これらの理由で、それらはこの問題の望ましい解決方法ではない。
【0007】
一方、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は画像露光及び熱現像した後に、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料が干渉ムラが発現することがあるが、この干渉ムラは画像形成前、つまり製造時に既に発現し、露光の際にその影響が現れていると考えられており、その解決方法が望まれていた。
【0008】
米国特許第4,581,325号及び欧州特許出願第0377961号明細書には、それぞれポリメチン及び等極染料を含有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料用赤外線ハレーション防止系が開示されている。これら染料は、良好な赤外吸光度を有するが、後の露光においても大きな可視吸光度を有している。
【0009】
特開平7−191432号公報には、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料系の親水性層に水溶性ポリメチン染料を含有させることが開示されている。
【0010】
可視領域ではほとんど吸収のないスクエアリリウム染料が、米国特許第5,496,695号明細書、特表平9−509503号公報、特開平9−230531号及び同10−104779号公報等に、またポリメチン赤外線吸収染料が特開平7−191432号及び同9−230531号公報に開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に赤外線露光によって画像を形成する際、画像の鮮鋭性の劣化と干渉ムラによる濃度ムラの課題に対して下記のような対応がなされた。
【0012】
すなわち、特表平9−509503号、特開平9−230531号及び同10−104779号、同10−104785号公報に開示されているスクエアリリウム染料及び特開平9−230531号または同7−191432号公報記載のポリメチン染料を用いることにより、ある程度のハレーション防止効果があることが認められるが、ハレーション防止層や感光層等に含有させるこの方法では細部の画像が太り鮮鋭性が低下し易く、画像再現にはまだ不満が残る。
【0013】
また、干渉ムラについては、特公平6−10735号、特開平8−211521号公報に記載の方法が提案されているが、これらの方法では満足する結果を得ることが出来るに至っていない。また、ハレーション防止として赤外線染料系の赤外線吸収化合物をバック層に使用した場合に干渉縞が比較的強く観察される場合が多い。
【0014】
本発明の目的は、ハレーション防止効果を有し、鮮鋭性に優れ、且つ干渉縞による濃度ムラが発現しない熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、画像の鮮鋭性の劣化と干渉縞による濃度ムラの発現を同時に解消する方法を、鋭意検討した結果、ある種の赤外線吸収化合物とハレーション防止層の位置によって解決する方法を見出した。即ち、ハレーション防止層が支持体から離れた位置にあることが問題であることがわかったのである。
【0016】
ハレーション防止の効果的な方法として、支持体に赤外吸収化合物を含有させることが考えられる。しかし、ポリエステル支持体はポリエステル樹脂を300℃もの温度で熱溶融製膜するため、赤外吸収化合物が分解し易く、安定して含有させることが出来ない。
【0017】
本発明は、支持体と感光層や他の機能層を接着させるための下引層にこれらの赤外吸収染料を含有させることによって、鮮鋭性が向上すること及び干渉ムラを無くすことが出来る。
【0018】
本発明は下記の構成よりなる。
(1)有機酸銀及びハロゲン化銀を含有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、支持体の上に、最大吸収波長(λmax)が700〜900nmの赤外線吸収化合物及び無機微粒子を含有し下記の重合体から選ばれてなる下引層を有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
重合体:スチレン/グリシジルメタクリレート/n−ブチルアクリレート、スチレン/グリシジルメタクリレート、スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート、ブタジエン/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート / N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド / n−ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート / 2−ヒドロキシエチルアクリレート / N−(3−アセトアセトアミドプロピル)メタクリルアミド、ブチルアクリレート / グリシジルメタクリレート / スチレン、
変性親水性ポリエステル共重合体
【0019】
(2)前記1記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、下記一般式(I)で表されるポリメチン系染料であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0020】
【化3】
Figure 0004061815
【0021】
式中、Z1及びZ2はそれぞれ環を巻いて5または6員の含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表し、R1及びR2はそれぞれアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、Lは5、7または9個のメチン基が共役二重結合によって連結させて生じる連結基を表し、a、b及びcはそれぞれ0または1を表し、Xはアニオンを表す。
【0022】
(3)前記1記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、下記一般式(II)のスクエアリリウム赤外線吸収化合物であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0023】
【化4】
Figure 0004061815
【0024】
式中、R1、R4、R5及びR8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基またはアラルキル基を表し、並びにR2、R3、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基、アラルキル基、または−CH2OR〔ただし、Rは、アルキルアシル基、−C(=O)R′(式中、R′は、炭素原子数1〜20のアルキル基である)、−SiR″R′″R″″(式中、R″、R′″及びR″″は、独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、及び−SO2R″″′(式中、R″″′は炭素原子数1〜20のアルキル基である)からなる群より選ばれる〕を表すか、あるいはR1及びR2、及び/またはR3及びR4、及び/またはR5及びR6、及び/またはR7及びR8、あるいはR2及びR3、及び/またはR6及びR7は、互いに合わせて結合して、5、6または7員環を形成していてもよい。R9及びR10は1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R2、R3、R6またはR7がヘテロ環基である場合には、R9及びR10は水素原子でもよい。
【0025】
(4)前記1記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、銅含有リン酸化合物であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0026】
(5)前記1記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、最大吸収波長(λmax)が600nm以上の金属酸化物微粒子であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0027】
(6)(1)乃至(5)の何れか1項に記載の下引層を有し、且つ感光層と反対側の支持体上に導電性微粒子を含有する帯電防止層を有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0028】
以下、本発明を詳述する。
本発明の構成(1)の本発明に有用な700〜900nmの赤外線吸収化合物としては、この範囲の吸収波長を有する赤外線吸収化合物であれば如何なるものも使用出来る。例えば、特開昭59−6481号、同59−182436号公報、米国特許第4,271,263号、同第4,594,312号、欧州特許公開第533,008号、同第652,473号明細書、特開平2−216140号、同4−348339号同7−191432号、同7−301890号、同9−230531号、同10−104779号、同10−104785号、特表平9−509503号公報等に記載されているポリメチン系染料、スクエアリリウム系染料等を挙げることが出来る。
【0029】
本発明の赤外線吸収化合物は水溶性赤外線吸収化合物、銅含有リン酸化合物、金属酸化物であることが好ましい。本発明の水溶性赤外線吸収化合物は、水に溶解性を示す特性を持っていれば、本発明の目的を達成するのに差し支えないが、好ましくは、20℃の水100gに少なくとも0.01g、特には0.10g以上溶解する染料が好ましい。水溶性赤外線吸収化合物としては、好ましくは水溶性の一般式(I)で表される化合物である。
【0030】
本発明の構成(2)の下記一般式(I)について詳記する。
【0031】
【化5】
Figure 0004061815
【0032】
式中、Z1及びZ2はそれぞれ環を巻いて5または6員の含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表し、R1及びR2はそれぞれアルキル基アルケニル基またはアラルキル基を表し、Lは5、7または9個のメチン基が共役二重結合によって連結させて生じる連結基を表し、a、b及びcはそれぞれ0または1を表し、Xはアニオンを表す。
【0033】
本発明に使用するポリメチン系染料は、Z1、Z2で表される縮環してもよい5または6員の含窒素複素環は、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、イミダゾキノキサリン環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール環等を挙げることが出来る。好ましくは、ベンゼン環あるいはナフタレン環が縮環した5員の含窒素複素環であり、最も好ましくは、インドレニン環である。これらの環は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例えば、無置換のフェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(塩素、臭素、フッ素)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基等を挙げることが出来る。更に好ましくは、塩素原子、メトキシ基またはメチル基で置換されたまたは無置換のインドレニン環である。
【0034】
1及びR2で表されるアルキル基は、炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜8のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル)である。また、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)またはヒドロキシ基等で置換されていてもよい。R1及びR2で表されるアラルキル基は、7〜12の炭素原子数を有するアラルキル基が好ましく(例えば、ベンジル、フェネチル)、置換基(例えば、メチル、アルコキシ、塩素原子)を有していてもよい。R1及びR2で表されるアルケニル基は、2〜6の炭素原子数を有しているアルケニル基が好ましく、例えば、2−ペンテニル基、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、1−プロペニル基を挙げることが出来る。
【0035】
一般式(I)において、Lは5、7または9個のメチン基が二重結合で共役するように結合している連結基である。メチン基の数は、7個(ヘプタメチン化合物)であることが好ましい。メチン基は置換基を有していてもよい。ただし、置換基を有するメチン基は、中央の(メソ位の)置換されたメチン基であることが好ましい。Lで表されるメチン基のうち好ましいものは、下記式L5(ペンタンメチン)、L7(ヘプタンメチン)及びL9(ナノメチン)で表されるものである。
【0036】
【化6】
Figure 0004061815
【0037】
式中、R20は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、NR2223、SR24またはOR24(R22、R23及びR24はそれぞれアルキル基またはアリール基を表す)。R22とR23が連結して、ヘテロ環(例えば、ピペリジン、モルホリン)を形成してもよい。R19及びR21は、水素原子または互いに結合して5員または6員を形成するに必要な原子群を表し、R29及びR30は、それぞれ水素原子またはアルキル基である。R19とR21が互いに結合して5員または6員環を形成することが好ましい。形成する環の例としては、シクロペンテン環及びシクロヘキセン環を挙げることが出来る。それらの環は、置換基(例えば、アルキル基及びアリール基)を有していてもよい。上記アルキル基は、R1及びR2のアルキル基と同義である。上記ハロゲン原子はフッ素、塩素及び臭素である。上記アリール基は6〜12の炭素原子数のものが好ましく、フェニル基またはナフチル基が挙げられる。アリール基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素原子数が10以下、好ましくは6以下のアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル)、炭素原子数が10以下、好ましくは、6以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、炭素原子数が20以下、好ましくは12以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(塩素、臭素、フッ素)、炭素原子数が10以下、好ましくは6以下のアルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基及びカルボニル基が含まれる。一般式(I)において、水溶性を高めるために、酸部分、例えばカルボン酸、スルホン酸、スルホニル酸及びそれらの塩、ならびにそれらに類するものまたはスルホンアミドなどの基をもたしてもよい。
【0038】
一般式(I)において、a、b及びcは、それぞれ0または1である。a及びbは、0である方が好ましい。cは一般に1である。ただし、カルボキシル基やスルホン酸基のようなアニオン性置換基がN+と分子内塩を形成する場合は、cは0になる。Xで表されるアニオンとしては、ハロゲンイオン(塩素、臭素、ヨウ素)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF6 -、BF4 -、ClO4 -及び下記一般式(Ia)で表されるアニオン等を挙げることが出来る。
【0039】
【化7】
Figure 0004061815
【0040】
式中、R40、R41、R42及びR43はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基またはR40とR41もしくはR42とR43が互いに連結して芳香環を形成するに必要な非金属原子を表し、Y1及びY2はそれぞれO、SまたはNHを表し、Mは、Ni、Co、Cu、Pt、Pd、Fe、MnまたはZnの金属原子を表し、Aは4級アンモニウム塩または4級ホスホニウム塩を表し、m2は0、−1または−2を表し、m3は0、1または2を表す。m2が0の場合にはm3は0、m2が−1の場合にはm3は1、m2が−2の場合には2になる。R40、R41、R42及びR43はそれぞれ水素原子、アルキル基及びアリール基を表し、これらはR1及びR2で述べたアルキル基とR20で述べたアリール基とそれぞれ同義である。R40とR41及びR42とR43が互いに連結して形成される芳香環としては、それぞれフェニル基及びナフチル基が挙げられる。メチル、t−ブチル、メトキシ、塩素原子等で置換されていてもよい。Aで表されるアンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、オクチルトリエチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、フェニルトリエチルアンモニウム、トリフェニルブチルアンモニウム、トリフェニルベンジルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム等を挙げることが出来る。Aで表されるホスホニウム塩としては、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、オクチルトリエチルホスホニウム、フェニルトリメチルホスホニウム、フェニルトリエチルホスホニウム、トリフェニルブチルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等を挙げることが出来る。
【0041】
本発明において好ましいポリメチン染料は下記一般式(I−1)で表される化合物で、ヘプタメチン染料である。
【0042】
【化8】
Figure 0004061815
【0043】
式中、Z3及びZ4は各々ベンゾまたはナフト縮合環を形成するに必要な原子を表し、R13及びR14は各々アルキル基、アラルキル基またはアルケニル基を表し、R19及びR21は各々水素原子または互いに連結して5または6員環を形成するに必要な原子群を表し、R20は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、NR2223、SR24またはOR24を表し、R22、R23及びR24はそれぞれアルキル基またはアリール基をあらわし、R22とR23が互いに連結して5または6員環を形成してもよい。R15とR16及びR17とR18は各々アルキル基を表し、R15とR16及びR17とR18が連結して環を形成してもよい。Xはアニオンを表し、cは0または1を表す。
【0044】
一般式(I−1)において、Z3及びZ4で形成されるベンゾまたはナフト縮合環は、Z1等で述べた置換基で置換されていてもよい。R13、R14、R15、R16、R17、R18、R20、R21、R22、R23及びR24で表されるアルキル基は、一般式(I)のR1等におけるアルキル基と同義である。R15とR16及びR17とR18がお互いに連結して環(例えばシクロヘキサン等)を形成してもよい。R13及びR14で表されるアルケニル基及びアラルキル基は、R1及びR2のアルケニル基及びアラルキル基と同義である。R20、R22、R23及びR24で表されるアリール基は、化6のL5のR20で述べたアリール基と同義である。R20のハロゲン原子は、化6のL5のR20のハロゲン原子と同義である。R19とR21による環形成は、化6のL7のR19とR21による環形成と同義である。R22とR23による環形成は化6のL5のR22とR23による環形成と同義である。Xは一般式(I)のXと同義である。cは一般式(I)のcと同義である。
【0045】
本発明においてより好ましいポリメチン染料は下記一般式(I−2)のヘプタメチン染料である。
【0046】
【化9】
Figure 0004061815
【0047】
式中、Z3及びZ4は各々ベンゾまたはナフト縮合環を形成するに必要な原子を表し、R13及びR14は各々アルキル基、アラルキル基またはアルケニル基を表し、R22及びR23は各々アルキル基またはアリール基を表し、R15、R16、R17及びR18はアルキル基を表し、R15とR16及びR17とR18が連結して環を形成してもよい。Xはアニオンを表し、cは0または1を表す。
【0048】
一般式(I−2)において、Z3及びZ4で形成されるベンゾまたはナフト縮合環は、Z1等で述べた置換基で置換されていてもよい。R13、R14、R15、R16、R17、R18、R22及び23で表されるアルキル基は、一般式(I)で述べたR1等におけるアルキル基と同義である。R15とR16及びR17とR18が互いに連結して環(例えばシクロヘキサン等)を形成してもよい。R13及びR14で表されるアルケニル基及びアラルキル基は、一般式(I)のR1及びR2のアルケニル基及びアラルキル基と同義である。R22及びR23で表されるアリール基は、化6のL5のR20で述べたアリール基と同義である。Xは一般式(I)のXと同義である。cは一般式(I)のcと同義である。
【0049】
本発明の構成(2)に有用な赤外線吸収化合物を下記に例示する。
【0050】
【化10】
Figure 0004061815
【0051】
【化11】
Figure 0004061815
【0052】
本発明のポリメチン染料は、米国特許第3,671,643号、同第2,095,854号明細書、また特開平6−43583号公報などにより、通常のポリメチン染料を合成する方法で得ることが出来る。
【0053】
《PM−8の合成》
1,2,3,5−テトラメチル−5−クロロインドレニウム・p−トルエンスルホネート11.4g、N−(2,5−ジアニリノメチレンシクロペンチリデン)−ジフェニルアミニウム・テトラフルオロボーレート7.2g、エチルアルコール100ml、無水酢酸6ml、トリエチルアミン12mlを外温100℃で1時間攪拌し、析出した結晶を濾別した。メチルアルコール100mlで再結晶を行い7.3gの化合物PM−8を得た。融点250℃以上、λmax:800.8nm、ε:2.14×105(クロロホルム)。
【0054】
本発明の一般式(I)で表されるポリメチン染料を添加する層は、下引層であれば特に制限ないが、乳剤層側に塗設された下引層に添加することが好ましい。下引層が複数のそうで構成されている場合には、乳剤層に最も近い層に添加することが望ましい。本発明の一般式(I)で表されるポリメチン系染料の添加量は所望の目的により異なるが、0.1〜1000mg/m2、好ましくは1〜200mg/m2添加するとよい。本発明の一般式(I)で表されるポリメチン系染料を下引層に添加した場合、画像の鮮鋭性と干渉縞による濃度ムラが改良されると同時に、現像処理後のスクラッチ耐性の向上にも効果がある。
【0055】
本発明の構成(3)の一般式(II)のスクエアリリウム赤外線吸収化合物について詳記する。
【0056】
【化12】
Figure 0004061815
【0057】
式中、R1、R4、R5及びR8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基またはアラルキル基を表し、並びにR2、R3、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基、アラルキル基、または−CH2OR〔ただし、Rは、アルキルアシル基、−C(=O)R′(式中、R′は、炭素原子数1〜20のアルキル基である)、−SiR″R′″R″″(式中、R″、R′″及びR″″は、独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、及び−SO2R″″′(式中、R″″′は炭素原子数1〜20のアルキル基である)からなる群より選ばれる〕を表すか、あるいはR1及びR2、及び/またはR3及びR4、及び/またはR5及びR6、及び/またはR7及びR8、あるいはR2及びR3及び/またはR6及びR7は、互いに結合して、5、6または7員環を形成していてもよい。R9及びR10は1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R2、R3、R6またはR7がヘテロ環基である場合には、R9及びR10は水素原子でもよい。
【0058】
一般式(II)は好ましくは下記一般式(III)、(IV)及び(V)のように表すことが出来る。
【0059】
一般式(III)を下記に示す。
【0060】
【化13】
Figure 0004061815
【0061】
式中、R11、R14、R15及びR18は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までの、アリール基またはアラルキル基を表し、並びにR12、R13、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基またはアラルキル基、または−CH2OR〔ただし、Rは、アルキルアシル基、−C(=O)R′(式中、R′は、炭素原子数1〜20のアルキル基である)、−SiR″R′″R″″(式中、R″、R′″及びR″″は、独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、及び−SO2R″″′(式中、R″″′は炭素原子数1〜20のアルキル基である)からなる群より選ばれる〕を表すか、あるいはR11及びR12、及び/またはR13及びR14、及び/またはR15及びR16、及び/またはR17及びR18、あるいはR12及びR13、及び/またはR16及びR17は、互いに結合して、5、6または7員環を形成していてもよい。R19及びR20は1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R12、R13、R16またはR17がヘテロ環基である場合には、R19及びR20は水素原子でもよい。
【0062】
一般式(III)において、R11〜R18で表されるアルキル基は炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12のアルキル基(例えば、メチルエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ウンデシル)、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヒドロキシ、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、フェノキシ、イソブトキシ)またはアシルオキシ(例えば、アセチルオキシ、ブチリルオキシヘキシルオキシ、ベンゾイルオキシ)等で置換されていてもよい。R11〜R18で表されるシクロアルキル基は、シクロペンチル、シクロヘキシルを挙げることが出来る。R11〜R18で表されるアリール基またはナフチル基が挙げられる。アリール基は、置換していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜8のアルキル基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基及びカルボキシル基が含まれる。好ましくはR11、R14、R15及びR18は水素原子である。R19及びR20はそれぞれ水素原子または1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R12、R13、R16またはR17がヘテロ環基である場合には、R19及びR20は水素原子でもよい。
【0063】
一般式(III)の化合物を下記に例示する。
【0064】
【化14】
Figure 0004061815
【0065】
一般式(IV)を下記に示す。
【0066】
【化15】
Figure 0004061815
【0067】
式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、R21とR22そして、またはR23とR24そして、またはR25とR26そして、またはR27とR28またはR22とR23そして、またはR26とR27で5または6員環を形成してもよい。
【0068】
一般式(IV)において、R21〜R28で表されるアルキル基は炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ウンデシル)である。また、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、フェノキシ、イソブトキシ)またはアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、ブチリルオキシヘキシルオキシ、ベンゾイルオキシ)等で置換されていてもよい。R21〜R28で表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシルを挙げることが出来る。R21〜R28で表されるアリール基またはナフチル基が挙げられる。アリール基は、置換していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜8のアルキル基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基及びカルボキシル基が含まれる。好ましくはR21、R24、R25及びR28は水素原子である。R29及びR30はそれぞれ水素原子または1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R22、R23、R26またはR27がヘテロ環基である場合には、R29及びR30は水素原子でもよい。
【0069】
一般式(IV)の化合物の例を下記に示す。
【0070】
【化16】
Figure 0004061815
【0071】
一般式(V)を下記に示す。
【0072】
【化17】
Figure 0004061815
【0073】
式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、R31とR32そして、またはR33とR34そして、またはR35とR36そして、またはR37とR38またはR32とR33そして、またはR36とR37で5または6員環を形成してもよい。
【0074】
一般式(V)において、R31〜R38で表されるアルキル基は炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ウンデシル)である。また、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、フェノキシ、イソブトキシ)またはアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、ブチリルオキシヘキシルオキシ、ベンゾイルオキシ)等で置換されていてもよい。R31〜R38で表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシルを挙げることが出来る。R31〜R38で表されるアリール基またはナフチル基が挙げられる。アリール基は、置換していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜8のアルキル基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基及びクルボキシル基が含まれる。好ましくはR31、R34、R35及びR38は水素原子である。R39及びR40はそれぞれ水素原子または1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R32、R33、R36またはR37がヘテロ環基である場合には、R39及びR40は水素原子でもよい。
【0075】
一般式(V)の化合物を下記に例示する。
【0076】
【化18】
Figure 0004061815
【0077】
本発明に使用するスクエアリリウム染料は特表平9−509503号、及び特開平9−230531号公報に記載されている方法で合成することが出来る。
【0078】
《SS−1の合成》
1,8−ジアミノナフタレン26.05g、2−トリデカノン32.66g、p−トルエンスルホン酸1水和物55mg、及びトルエン250mlを攪拌し、その混合物を、窒素雰囲気下、加熱して還流させ、ディーン・スターク(Dean−Stark)トラップを用いて、5時間、反応して、反応物から水を除去した。その後、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、無水炭酸カリウムを用いて乾燥し、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。生成物を蒸溜して、ジヒドロペリミジン中間体46.50gを得た。(沸点:192〜213℃/0.3〜0.4Torr)。
【0079】
上記で調製したジヒドロペリミジン中間体8.00g、スクエア酸1.48g、n−ブタノール64ml及びトルエン64mlを攪拌し、その混合物を窒素雰囲気下、加熱して還流させ、ディーン・スタークトラップを用いて、3時間反応から放出された水を除去した。混合物を、濾過し、石油エーテル(沸点:35〜60℃)600ml中に流し入れ、5℃で18時間保存した。生成物を濾別し、石油エーテルで洗浄し、自然乾燥させて、スクエアリリウム染料SS−1を6.00g得た。この染料を更にテトラヒドロフラン/石油エーテル混合物から再結晶させることにより精製した。酢酸エチル中での最大吸収波長(λmax)は、802nm、(ε=1.8×105)であった。
【0080】
本発明の一般式(II)で表されるスクエアリリウム赤外線吸収化合物を添加する層は、下引層であれば特に制限ないが、乳剤層側に塗設された下引層に添加することが好ましい。下引層が複数の層で構成されている場合には、乳剤層に最も近い層に添加することが望ましい。本発明の一般式(II)で表されるスクエアリリウム赤外線吸収化合物の添加量は所望の目的により異なるが、0.1〜1000mg/m2、好ましくは1〜200mg/m2添加するとよい。本発明の一般式(II)で表されるスクエアリリウム赤外線吸収化合物を下引層に添加した場合、画像の鮮鋭性と干渉縞による濃度ムラが改良されると同時に、下引層表面への乳剤層塗布液あるいはバック層塗布液の塗布性を向上させる効果がある。
【0081】
本発明の構成(4)の銅含有リン酸化合物について詳記する。
本発明の銅含有リン酸化合物は一酸化銅(CuO)と5酸化リン(P25)との混合物を微粉末化したもので、その作り方は特開平6−206714号公報に記載されている方法によることが出来る。例えば、本発明に使用する銅含有リン酸化合物は、銅をCuO、リン酸をP25に換算してCuO/P25のモル比が0.05〜4である銅含有リン酸化合物を、水の存在下で湿式粉砕し、粉末化するか、または銅をCuO、リン酸をP25に換算してCuO/P25のモル比が0.05〜4である銅含有リン酸化合物をアルミナを使用しない粉砕機で乾式粉砕し、微粉末化して製造される。該銅含有リン酸化合物は近赤外領域に吸収がある。CuO/P25のモル比が0.05未満の場合は近赤外線の吸収能力が充分でなく、また銅の濃度が高いほど近赤外線の吸収能力が高くなく好ましいが、モル比が4を超えると銅含有リン酸化合物が不安定になる。
【0082】
銅含有リン酸化合物としては、特に制限はないが、近赤外線吸収能力の高い材料としては、リン酸銅としてメタリン酸銅、ピロリン酸銅、オルトリン酸銅、銅アパタイト等を挙げることが出来る。これら銅含有リン酸塩は、結晶水を含むものが知られており、一般に結晶水を含む化合物は化学的耐久性の面でやや好ましくはないが、用途により使用出来る。また、銅含有リン酸化合物としては、結晶性化合物に制限されずガラス等非晶質状態のものでも使用出来る。
【0083】
湿式で製造される銅含有リン酸化合物は、水の存在下で粉砕されるが、有機溶媒、例えばエタノールを用いて粉砕すると、水の場合よりも粉末が緑味が強くなる。水を用いて微粉末に粉砕する場合、特に10μm以下の平均粒径に微粉末化する場合、粉砕機の材質には特に制限なく、アルミナ製ボールミル、ジルコニア製ボールミル、樹脂製ボールミル、めのう製ボールミル、各種アクアマイザーなどを、目標とする微粉末の粒径に応じて適宜使用することが出来る。
【0084】
乾式で製造される銅含有リン酸化合物は、アルミナを使用しない粉砕機で微粉末化し、アルミナ混入によるコンタミネーションを防ぐ必要がある。アルミナ製ボールミルを用いて粉砕した場合、微粉末化後に緑色になってしまう。アルミナを使用しない粉砕機としては、ジルコニア製ボールミル、めのう製ボールミル、流動層式カウンタージェットミルなどが例示される。
【0085】
銅含有リン酸化合物の製造例を下記に示す。
《CP−1の製造》
CuO粉末とオルトリン酸とを、CuO/P25のモル比が2:1になるように調合し、200℃以上の温度で熱処理し、銅含有リン酸化合物を準備した。この銅含有リン酸化合物300gとイオン交換水300mlとを2l容量のアルミナ製ボールミルに入れ、これを40時間、100rpmで回転し、湿式粉砕し、スラリーを得た。得られたスラリーをポリテトラフルオロエチレン製バットに入れ、乾燥機で150℃で12時間乾燥して微粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は2.8μm、色は白色であった。水分散物としてλmax=805nmであった。
【0086】
本発明においては、可能な限り無色の微粉末が好ましいが、若干着色があるものでも、出来上がりの写真フィルムを使用する際、影響がない程度の着色ならば使用し得る。
【0087】
本発明の銅含有リン酸化合物を添加する層は、下引層であれば特に制限はないが、乳剤層側に塗設された下引層に添加することが好ましい。下引層が複数の層で構成されている場合には、乳剤層に最も近い層に添加することが望ましい。本発明の銅含有リン酸化合物の添加量は所望の目的により異なるが、0.1〜1000mg/m2、好ましくは1〜200mg/m2添加するとよい。本発明の銅含有リン酸化合物を下引層に添加した場合、画像の鮮鋭性と干渉縞による濃度ムラが改良されると同時に、乳剤層の膜付き向上にも効果がある。
【0088】
本発明の構成(5)の最大吸収波長が600nm以上を有する金属酸化物微粒子について詳記する。金属酸化物微粒子は、最大吸収波長が600nm以上を有し、本発明の赤外線吸収化合物として用いられる。
【0089】
本発明に使用する金属酸化物微粒子は、例えば酸素不足酸化物、金属過剰酸化物、金属不足酸化物、酸素過剰酸化物等の不安定比化合物を形成し易い金属酸化物粒子等が挙げられる。この中で本発明に最も好ましい化合物は製造方法などが多様な方式をとることが可能な金属酸化物微粒子である。金属酸化物微粒子としては、結晶性金属酸化物粒子が一般的であり、例えばZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、B2O、MoO3及びこれらの複合酸化物(ドーピング化合物)を挙げることが出来るが、これらの中でも特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましく、複合酸化物としては、ZnOに対しては、Al、In等、TiO2に対しては、Nb、Ta等、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の異種元素を0.01〜30モル%含むものが好ましく、特に0.1〜10モル%含むものが好ましい。結晶内に酸素欠陥を有するもの、及び前記金属酸化物に対していわゆるドナーとなる異種原子を少量含む場合には導電性が向上するので好ましい。このような金属酸化物微粒子の製造方法についての詳細は、例えば特開昭56−143430号公報に記載されている。しかし、このような結晶性微粒子は導電性が高くなるが、光散乱に対して粒子径と粒子/バインダーの比などを考慮する必要があり、ヘイズの劣化があること、分散するのが難しいこと等より水中でコロイド状で存在する無機コロイドを使用するのが更に好ましい。ここでいう無機コロイドとは、共立出版社化学大辞典に定義されているものであり、粒子1個中に105〜109個の原子を含むものである。元素により金属コロイド、あるいは酸化物コロイド、水酸化コロイドとして得られる。金属コロイドとしては、金、パラジウム、白金、銀、イオウ等が好ましく使用され、金属酸化物コロイド、金属水酸化物コロイド、炭酸塩コロイド、硫酸塩コロイド等としては、Zn、Mg、Si、Ca、Al、Sr、Ba、Zr、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Sn、In、Mo、V等の金属酸化物コロイド、金属水酸化物コロイド、炭酸塩コロイド及び硫酸塩コロイドを挙げることが出来、本発明においてこれらを好ましく用いることが出来る。特にZnO、TiO2、及びSnO2が好ましく、更にSnO2が特に好ましい。異原子ドーピングの化合物が好ましく、前記異原子が好ましい。無機コロイド粒子の平均粒径は好ましくは、0.001〜1μmが分散安定上好ましい。
【0090】
本発明に用いられる金属酸化物コロイド、特に酸化第2錫からなるコロイド状SnO2ゾルの製造方法に関しては、SnO2超微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、または溶媒に可溶な錫化合物の溶媒中における分散反応から製造する方法など何れの方法でもよい。
【0091】
SnO2の超微粒子の製造方法に関しては、特に温度条件が重要で、高温度の熱処理を伴う方法は、一次粒子の成長や結晶性が高くなる現象を生じるので好ましくなく、やむを得ず熱処理を行う必要があるときは、300℃以下、好ましく200℃以下、更に好ましくは150℃で行うべきである。しかし、25℃〜150℃までの加温は、バインダー中への分散を考えたときには、好適に選ばれる手段である。
【0092】
また、最近粉体製造技術の進歩により、超微粒子を製造するにあたり、湿式法により製造された化合物を電気炉中に噴霧する方法や、有機金属化合物の高温度熱分解法などが開発されているが、かかる方法により製造された超微粒子を溶媒中に再分散するには、かなりの困難を伴い経済的に好ましくなく、また凝集粒子の発生など熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に適用する場合に重大な欠陥を引き起こす可能性がある。ただし、バインダーとSnO2ゾルの溶媒との相溶性が悪いときには、溶媒置換の必要が生じるが、そのような時には、SnO2ゾルの溶媒との相溶性または分散安定性の良好な他の化合物を適量添加し、SnO2ゾルからSnO2超微粒子と適量添加された化合物とを300℃以下、好ましくは200℃、さらに好ましくは150℃以下の加温により乾燥分離後、他の溶媒中へ再分散する。
【0093】
溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法に関しては、以下に述べる。溶媒に可溶な錫化合物とは、K2SnO3・3H2Oのようなオキソ陰イオンを含む化合物、SnCl4のような水溶性ハロゲン化物、R′2SnR2、R3SnX、R2SnX2、の構造を有する化合物で(ここでR及びR′はアルキル基を、またXは酸基を表す)、例えば(CH33SnCl・(ピリジン)、(C492Sn(O2CC252等を挙げることが出来る。また有機金属化合物、Sn(SO42・2H2Oなどのオキソ塩も挙げることが出来る。これらの溶媒に可溶なSn化合物を用いてSnO2ゾルを製造する方法としては、溶媒に溶解後、加熱、加圧などの物理的方法、酸化、還元、加水分解などの化学的方法、または中間体を経由後、SnO2ゾルを製造する方法などがある。例として特公昭35−6616号公報に記載されたSnO2ゾルの製造方法を述べると、SnCl4を100倍容量の蒸留水に溶解して、中間体として水酸化第二錫の沈澱を作る。この水酸化第二錫にアンモニア水を加え微アルカリ性となし溶解する。ついでアンモニア臭の無くなるまで加温するとコロイド状SnO2ゾルが得られる。なお、この例では、溶媒として水を用いたが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族有機溶媒、ベンゼン、ピリジンなどの芳香族有機溶媒などSn化合物に応じて様々な溶媒を用いることが可能であり、本発明は、溶媒に関して特に制限はない。好ましくは、水、アルコール類の溶媒が選ばれる。溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法においてはプロセスの途中で溶媒に可溶なSn以外の元素を含む化合物の添加も可能である。例えば溶媒に可溶な弗素含有化合物の添加や、溶媒に可溶な3価または5価の配位数をとり得る金属の化合物の添加である。溶媒に可溶なフッ素含有化合物とは、イオン性フッ化物または共有性フッ化物の何れでも良い。例えば、HF、KHF2、SbF3、MoF6等のフッ化物、NH4MnF3、NH4BiF4等のフルオロ錯陰イオンを生成する化合物、BrF3、SF4、SF6などの無機分子性フッ化物、CF3I、CF3COOH、P(CF33などの有機フッ素化合物を挙げることが出来るが、溶媒が水の場合には、CaF2と硫酸との組み合わせのように、フッ素含有化合物と不揮発性酸との組み合わせも用いることが出来る。溶媒に可溶な3価もしくは5価の配位数をとり得る金属の化合物とは、Al、Ga、In、Tl等のIII族元素もしくはP、As、Sb、BiなどのV族元素、3価もしくは5価の配位数をとり得るNb、V、Ti、Cr、Mo、Fe、Co、Niなどの遷移金属を含む化合物群である。
【0094】
金属酸化物微粒子の製造例を下記に示す。
《SN−1の製造》
塩化第二スズ水和物65gと三塩化アンチモン1.5gをエタノール1000gに溶解し均一溶液を得た。この溶液に1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を前記溶液のpHが3になるまで滴下してコロイド状酸化第二スズと酸化アンチモンの共沈殿を得た。得られた共沈殿を50℃に24時間放置し赤褐色のコロイド状沈殿を得た。この赤褐色のコロイド状沈殿を遠心分離により分離した。過剰なイオンを除くために沈殿に水を加え遠心分離によって水洗した。この操作を3回繰り返し過剰イオンを除去した。過剰イオンを除去したコロイド状沈殿100gを平均粒径0.3μmの硫酸バリウム50g及び水1000gに混合し、900℃に加熱された焼成炉中に噴霧し青みがかった平均粒径0.1μmの酸化第二スズと硫酸バリウムからなる粉末混合化合物を得た。この粉末混合化合物に蒸留水1250mlを添加し、更に30%アンモニア水40mlを加え水浴中で加温し、分散液のSN−1(固形分8質量%)を得た。水分散状態でのλmaxは795nmであった。
【0095】
本発明の最大吸収波長が600nm以上の金属酸化物粒子を添加する層は、下引層であれば特に制限ないが、乳剤層側に塗設された下引層に添加することが好ましい。下引層が複数の層で構成されている場合には、乳剤層に最も近い層に添加することが望ましい。本発明の最大吸収波長が600nm以上の金属酸化物の添加量は所望の目的により、異なるが、0.1〜1000mg/m2、好ましくは1〜200mg/m2添加するとよい。本発明の最大吸収波長が600nm以上の金属酸化物粒子は導電性を有し、下引層に添加した場合、画像の鮮鋭性と干渉縞による濃度ムラが改良されると同時に、帯電防止性の向上にも効果がある。
【0096】
本発明は、赤外線吸収物質を熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の支持体の下引層中に含有させて、ハレーション防止効果を発揮させるものである。
【0097】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に使用する支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以降、略してPETとすることもある)、ポリエチレンナフタレート(以降、略してPENとすることもある)、ポリカーボネート(以降、略してPCとすることもある)、ポリエーテルスルフォン(以降、略してPESとすることもある)、ポリアリレート(以降、略してPArとすることもある)、ポリエーテルエーテルケトン(以降、略してPEEKとすることもある)、ポリサルフォン(以降、略してPSOとすることもある)、ポリイミド(以降、略してPIとすることもある)、ポリエーテルイミド(以降、略してPEIとすることもある)、ポリアミド(以降、略してPAmとすることもある)、ポリスチレン(以降、略してPSとすることもある)、シンジオタクチックポリスチレン(以降、略してSPSとすることもある)等を好ましく挙げることが出来る。
【0098】
上記支持体のポリマーを構成する成分を主成分とする共重合体またはポリマーブレンド物であっても良い。ここで言う主成分であるというのは構成成分の1種が共重合比率として、またはブレンド比率として50質量%以上のものをいう。上記のような、本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の性質を支えるポリマーであれば支持体として制限なく使用出来るが、上記ポリマーのうちガラス転移点(以降、Tgと略す)が100℃以上のものが好ましく、PEN、PC、PES、PAr、PEEK、PSO、PI、PEI、ポリアミドPAmがこれに相当し、これらのポリマーが単独重合体あるいはこのポリマーの主成分とする共重合体、もしくはこのポリマー(単独重合体の)と他のポリマー(単独重合体または共重合体)のブレンドとして用いられる。この中で、PET、PEN、PC、PES等を単独重合体、またはこれを主成分とする共重合体あるいはブレンドとしたものが特に好ましい。更に好ましくはPET、PENである。
【0099】
本発明に使用する支持体のTgが100℃以上のポリマー、例えばPENのエステルを構成する一員としてPENはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールから構成されたポリマーの総称であるが、このカルボン酸としては、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸を挙げることが出来、これらのうち特にナフタレン−2,6−ジカルボン酸が好ましい。上記ナフタレンジカルボン酸をポリマーの構成成分として2種以上混合して使用しても良く、第3成分としては、上記ナフタレンジカルボン酸以外のものも混合してもよい。例えば、第3成分のジカルボン酸として次のようなものが挙げられる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることが出来る。
【0100】
また、グリコールとしてはエチレングリコールであるが、他のグリコール成分を混合してもよい。グリコールの例としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることが出来る。
【0101】
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸及び/または2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。ポリエステルに対してエチレンテレフタレートユニットまたはエチレン−2,6−ナフタレートユニットが70質量%以上含有していると、透明性、機械的強度、寸法安定性などに高度に優れたフィルムが得られる。ポリエチレンテレフタレートを主構成成分とするフィルムに比べポリエチレン−2,6−ナフタレートを主構成成分とするフィルムの方が機械的強度や耐熱性に優れていることは良く知られている。本発明に有用なPENの合成方法は、特に限定的なものがあるわけではなく、従来公知のPETやPENの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直竣工ステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることが出来る。この際、必要に応じてエステル交換触媒あるいは重合反応触媒を用い、あるいは耐熱安定剤を添加することが出来る。また、合成時の各過程で着色防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、帯電防止剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
【0102】
Tgは示差走査熱量計で測定するところのベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値として求められる。
【0103】
本発明に用いられる支持体は、酸化防止剤を含有していても良い。含有する酸化防止剤はその種類につき特に限定はなく、各種の酸化防止剤を使用することができるが、例えばヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などの酸化防止剤を挙げることが出来る。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の含有量は、通常、0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。酸化防止剤の含有量をこの範囲とすることで、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の未露光部分の濃度が高くなるいわゆるカブリ現象を防止出来、且つ、フィルムのヘーズを低く抑えられるので、透明性に優れた支持体を得ることが出来る。なお、これらの酸化防止剤は二種以上を組合せて使用しても良い。
【0104】
本発明に使用する支持体には、必要に応じて易滑性を付与する物質を加えることも出来る。易滑性付与手段としては、特に限定はないが、不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリマー重合時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、あるいは界面活性剤などをフィルム表面に塗布する方法などが一般的である。これらの中でも、析出する粒子を比較的小さくコントロールできる内部粒子析出方法が、フィルムの透明性を損なうことなく易滑性を付与できるので好ましい。支持体のヘーズは3%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。ヘーズが3%より大きいとフィルムを支持体として用いた場合、画像が不鮮明になる。上記ヘーズは、ASTM−D1003−52に従って測定したものである。
【0105】
本発明に使用する支持体の厚みは特に限定がある訳ではないが、その使用目的に応じて必要な強度を有する様に設定すればよい。特に医用や印刷用熱現像用のハロゲン化銀写真感光材料場合には、50〜250μm、特に70〜200μmであることが好ましい。
【0106】
本発明の赤外線吸収化合物を含有する下引層について、下引層の素材、構成、作製方法及び処理等について述べる。
【0107】
上記支持体上に熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の感光層あるいはバック層を設けるためには、接着層として下引層を設ける必要がある。また本発明の下引層を支持体上に容易に接着するために、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、ガス中放電プラズマ処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理を下引前後に支持体に施しても良い。本発明においては、これらの中で特にコロナ放電処理、グロー放電処理、ガス中放電プラズマ処理が好ましい。
【0108】
これら好ましい表面処理のうち、コロナ放電処理は、例えば、特公昭48−5043号、同47−51905号、特開昭47−28067号、同49−83767号、同51−41770号、同51−131576号公報等に開示された方法により処理することができる。放電周波数は50〜5000kHz、好ましくは5〜数100kHzが適当である。被処理物の処理強度に関しては、濡れ性改良の為に、0.001〜5kV・A・分/m2、好ましくは0.01〜1kV・A・分/m2が適当である。電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは0.5〜2.5mm、好ましくは1.0〜2.0mmが適当である。
【0109】
別の好ましい表面処理であるグロー放電処理は、例えば米国特許第3,057,792号、同第3,057,795号、同第3,179,482号、同第3,288,638号、同第3,309,299号、同第3,424,735号、同第3,462,335号、同第3,475,307号、同第3,761,299号、英国特許第997,093号明細書等を用いることができる。グロー放電処理条件は、一般に圧力は0.005〜20Torr、好ましくは0.02〜2Torrが適当である。
【0110】
放電は、真空タンク中で1対以上の空間を置いて配置された金属板或いは金属棒間に高電圧を印加することにより生じる。この電圧は、雰囲気気体の組成、圧力により色々な値をとり得るものであるが、通常上記圧力範囲内では、500〜5000Vの間で安定な定常グロー放電が起こる。接着性を向上せしめるのに特に好適な電圧範囲は、2000〜4000Vである。又、放電周波数として、従来技術に見られるように、直流から数1000MHz、好ましくは50〜20MHzが適当である。放電処理強度に関しては、所望の接着性能が得られることから0.01〜5kV・A・分/m2、好ましくは0.15〜1kV・A・分/m2が適当である。グロー放電処理する際の放電雰囲気ガス組成は、好ましくは水蒸気分圧が、10〜100%が好ましく、更に好ましくは40〜90%である。水蒸気以外のガスは酸素、窒素等からなる空気である。このようなグロー放電の処理雰囲気中に水蒸気を定量的に導入する方法は、グロー放電処理装置に取り付けたサンプリングチューブからガスを4極子型質量分析器(日本真空製MSQ−6150)に導き、組成を定量しながら行うことで達成できる。表面処理すべき支持体を予め加熱した状態でグロー放電処理を行うと、短時間の処理で接着性が向上し、また支持体の黄色化を大幅に減少させることが出来る。予熱温度は50℃以上ガラス転移温度(もしくはガラス転移点Tg)以下が好ましく、70℃以上Tg以下がより好ましく、90℃以上Tg以下が更に好ましい。真空中で重合体表面温度を上げる具体的方法としては、赤外線ヒータによる加熱、熱ロールに接触させることによる加熱等がある。グロー放電処理は、冷媒流路となる中間部を持つ電極をフィルムの幅方向に複数対向させて設置し、支持体を搬送しながら処理するのが好ましい。グロー放電処理を施した支持体は、直ちに特開平3−39106号記載の方法で冷却ロールを用いて温度を下げることが好ましい。
【0111】
ガス中放電プラズマ処理は特願平10−245151号に記載の装置を用いた方法が好ましい。
【0112】
本発明における下引層に使用される樹脂(重合体、あるいは共重合体)は、当業界で使用されている下引層用の樹脂なら制限なく用いることが出来る。例えば、アクリル酸またはアクリル酸エステル(メタクリル酸またはメタクリル酸エステル類も含む)、ビニルエステル類、ビニルケトン類、スチレン類、ジオレフィン類、アクリルアミド類(メタクリルアミド類も含む)、塩化ビニル類(塩化ビニリデン類も含む)、活性メチレンを有する単量体類(例えば米国特許第4,215,195号明細書に記載の一般式〔I〕で表される化合物)、2官能単量体等のいわゆるビニル単量体から共重合した親水性あるいは疎水性共重合体を用いることが出来る。
【0113】
本発明に使用することが出来る下引層用共重合体の単量体としては、具体的に、アクリル酸またはアクリル酸エステル(メタクリル酸またはメタクリル酸エステル類も含む)として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等を挙げることが出来る。アクリルアミド類またはメタクリルアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等を挙げることが出来る。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンチルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチルエステル、ジビニルベンゼン等を挙げることが出来る。ジオレフィン類としては、共役ジエンとしてブタジエン、イソプレン、クロプレン、非共役ジエンとして、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、3−ビニル−1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,2−ジビニルシクロブタン、1,6−ヘプタジエン、3,5−ジエチル−1,5−ヘプタジエン、4−シクロヘキシル−1,6−ヘプタジエン、3−(4−ペンテニル)−1−シクロペンテン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,9−オクタデカジエン、1−シス−9−シス−1,2−オクタデカトリエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカンジエン、1,14−ペンタデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,21−ドコサジエン等を挙げることが出来る。活性メチレンを有する単量体類としては、アセトアセトオキシエチルアクリレート、アセトアセトオキシエチルメタクリレート、N−アセトアセトオキシエチルアクリルアミド、N−アセトアセトオキシエチルメタクリルアミド、N−アセトアセトアミノエチルアクリルアミド、N−アセトアセトアミノエチルメタクリルアミド、N−アセトアセトアミノプロピルアクリルアミド、N−アセトアセトアミノプロピルメタクリルアミド、アセトアセトオキシプロピルアクリレート、アセトアセトオキシプロピルメタクリレート等を挙げることが出来る。酢酸ビニル類としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることが出来る。その他、塩化ビニル類、塩化ビニリデン、ビニルエチルケトン、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル等も挙げることが出来る。カルボン酸あるいはその塩の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、メタクリル酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、不飽和ジカルボン酸類としては、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、不飽和ジカルボン酸のエステル類としては、イタコン酸メチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチル、フマール酸メチル、フマール酸ジメチルとそれらの塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩を、また、スルホン酸基またはその塩を含有する単量体としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物単量体等を挙げることが出来る。更に2官能以上の単量体としては、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルカルビノール、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンとりアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート等を挙げることが出来る。
【0114】
下引層樹脂として代表的なものを例として、(スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート)共重合体、(スチレン/グリシジルメタクリレート)共重合体、(スチレン/グリシジルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート)共重合体、(スチレン/ブタジエン)共重合体、(スチレン/イソプレン)共重合体、(スチレン/クロロプレン)共重合体、(メチルメタクリレート/ブタジエン)共重合体、(アクリロニトリル/ブタジエン)共重合体、(ブタジエン/酢酸ビニル/グリシジルメタクレイレート)共重合体、(グリシジルメタクリレート/ブタジエン)共重合体、(グリシジルメタクリレート/ブタジエン/イソプレン)共重合体、(グリシジルメタクリレート/ブタジエン/アクリルアミド)共重合体、(グリシジルメタクリレート/ブタジエン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート)共重合体、(塩化ビニリデン/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/グリシジルアクリレー)共重合体、(スチレン/t−ブチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート)共重合体、(スチレン/グリシジルメタクリレート/グリシジルアクリレート/スチレンスルホン酸ナトリウム塩/無水マレイン酸)共重合体、(エチルアクリレート/アセトアセトオキシエチルアクリルアミド、n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アセトアセトアミノプロピルメタクリルアミド)共重合体、(エチルアクリレート/ナトリウムスルホエチルアクリルアミド/アセトアセトアミノエチルアクリルアミド)共重合体、(エチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アセトアセトアミノエチルアクリレート)共重合体等を挙げることが出来る。
【0115】
上記共重合体は単独あるいは混合して下引層に用いることが出来る。混合する場合Tgの異なる共重合体を混合するのが好ましく、疎水性共重合体と親水性の共重合体を混合してもよい。
【0116】
本発明において、2種以上使用する共重合体の少なくとも2種のうちの1種が最も低いTg(以降TgLと略すことがある)の重合体とし、他の1種が最も高いTg(以降TgHと略すことがある)の重合体として、2種の重合体のTgの差が10〜80℃である下引層が好ましい。
【0117】
なお、ここでいうTgは、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年,ワイリー アンド サン社版)に記載の方法で求めたもので、共重合体のTgは下記の式でも求められる。
【0118】
Tg(共重合体)(°K)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1,Tg2・・・Tgnは共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(°K)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
【0119】
上記共重合体は特殊な場合を除いて、常法で重合出来る。
下引層に使用される樹脂(重合体あるいは共重合体)は公知の合成方法で得ることが出来る。
【0120】
溶液重合では、溶媒中で適当な濃度の単量体の混合物(通常、溶剤に対して40質量%以下、好ましくは10〜25質量%の混合物)を開始剤の存在下で約10〜200℃、好ましくは30〜120℃の温度で、約0.5〜48時間、好ましくは2〜20時間重合を行うことで得られる。
【0121】
溶媒としては、単量体の混合物を溶解するものであればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、もしくはこれらの2種以上の混合溶媒等を挙げることができる。
【0122】
開始剤としては、重合溶媒に可溶なものならばよく、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ジ(t)ブチル等の有機溶媒系開始剤、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、2,2′−アゾビス−(2−アミノプロパン)−ハイドロクロライド等の水溶性開始剤、またこれらとFe2+塩や亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等を挙げることが出来る。
【0123】
水分散系で乳化重合する方法は、後処理を必要とする有機溶媒中での溶液重合より好ましい。
【0124】
乳化重合に際しては、重合開始剤として、有機または無機パーオキサイド、過酢酸アセチルパーオキサイド、過酸化水素、過炭酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩等の過酸塩等を用いることが出来る。開始剤の性能を補助するために、通常使用される有機または無機還元剤を併用してもよい。重合中または重合後のラテックスの分散安定性を高めるために各種の分散補助剤を使用出来る。分散補助剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース等の高分子保護コロイド、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ラウリン酸ソーダ、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のアニオン性またはノニオン性の活性剤を使用することが出来る。必要に応じて分子量調整剤であるメルカプタン類等を添加してもよい。重合条件は、各成分の重合系への添加方法、添加濃度、重合反応中の温度、圧力、攪拌条件に応じて変化させることが好ましい。単量体は計算量を加えてもよいし、また過剰量を加えて反応終了後回収してもよい。必要に応じて、安定剤、反応促進剤、架橋剤等を合成前ないし合成中に添加してもよい。合成終了後のラテックスには更に停滞安定性を付与するための通常の方法であるpH調整及び活性剤、分散安定剤、湿潤剤を添加してもよい。疎水性重合体の平均粒径は、0.01〜0.8μmが特に好ましく、0.005〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することが出来る。
【0125】
乳化重合法では、水を分散媒とし、水に対して10〜80質量%の単量体と単量体に対して0.05〜5質量%の重合開始剤、0.1〜20質量%の分散剤を用い、約30〜100℃、好ましくは60〜90℃で3〜8時間撹拌下重合させることによって得られる。単量体の濃度、開始剤量、反応温度、時間等は幅広くかつ容易に変更出来る。
【0126】
分散剤としては、水溶性高分子、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることが出来る。
【0127】
本発明の下引用樹脂は、上記ビニル単量体からの樹脂ばかりでなく、ポリエステル樹脂も好ましく用いられる。
【0128】
本発明に有用な下引層として、グリコール類とジカルボン酸類の縮合重合したポリエステル、あるいはオキシ酸の自己縮合してなるポリエステル共重合体も好ましく用いることが出来、特に親水性ポリエステルが好ましい。本発明でいう親水性ポリエステル共重合体とは、水に溶解又は分散しているポリエステル共重合体をいう。
【0129】
親水性ポリエステル共重合体として、例えば米国特許第4,252,885号、同第4,241,169号、同第4,394,442号、欧州特許第29,620号、同第78,559号明細書、特開昭54−43017号公報、リサーチ・ディスクロージャー18928等に記載の親水性ポリエステルを挙げることが出来る。親水性ポリエステルとしては、例えば、多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とポリオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応して得られる実質的に線状の重合体が挙げられる。
【0130】
上記ポリエステル共重合体の基本となる骨格としては、多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸を用いることが出来、これら成分と共にマレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和多塩基酸やp−ヒドロキシ安息香酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を少割合で用いることが出来る。上記の中でも多塩基酸成分としては、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を有するものが好ましく、更に、用いるテレフタル酸とイソフタル酸との割合は、モル比で30/70〜70/30であることがポリエステル支持体への塗布性及び水に対する溶解性の点で特に好ましい。また、これらテレフタル酸成分及びイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し50〜80モル%含むことが好ましい。
【0131】
ポリエステルに水溶性を付与するためには、親水性基を有する成分、例えば、スルホン酸塩を有する成分、ジエチレングリコール成分、ポリアルキレンエーテルグリコール成分、ポリエーテルジカルボン酸成分等をポリエステル中に共重合成分として導入するのが有効な手段である。特に、親水性基を有する成分としてスルホン酸塩を有するジカルボン酸を用いるのが好ましい。
【0132】
上記スルホン酸塩を有するジカルボン酸としては、スルホン酸アルカリ金属塩の基を有するものが特に好ましく、例えば、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などのアルカリ金属塩を挙げることができるが、その中でも5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩が特に好ましい。これらのスルホン酸塩を有するジカルボン酸は、水溶性及び耐水性の点から全ジカルボン酸成分に対し5〜15モル%の範囲内、特に6〜10モル%の範囲内で用いることが好ましい。
【0133】
また、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた水溶性ポリエステルには、共重合成分として脂環族ジカルボン酸を用いるのが好ましい。これら脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、4,4′−ビシクロヘキシルジカルボン酸を挙げることができる。
【0134】
更に、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた親水性ポリエステル共重合体には、上記以外のジカルボン酸を共重合成分として用いることができる。これらジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖状脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の30モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。これら芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸を挙げることが出来る。また、直鎖状脂肪族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の15モル%以下の範囲内で用いることが出来る。これら直鎖状脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸を挙げることが出来る。
【0135】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを用いることができる。
【0136】
また、親水性ポリエステル共重合体のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコールが好ましい。
【0137】
親水性ポリエステル共重合体が、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いる場合には、水溶性ポリエステルのグリコール成分としてエチレングリコールを全グリコール成分の50モル%以上有するものを使用することが、機械的性質及びポリエステル支持体との接着性の点から好ましい。
【0138】
親水性ポリエステル共重合体は、出発原料としてジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体及びグリコール又はそのエステル形成性誘導体を用いて合成することができる。合成には種々の方法を用いることができ、例えば、エステル交換法あるいは直接エステル化法でジカルボン酸とグリコールとの初期縮合物を形成し、これを溶融重合するという公知のポリエステルの製造法によって得ることが出来る。更に具体的に述べれば、例えば、ジカルボン酸のエステル、例えばジカルボン酸のジメチルエステルとグリコールとでエステル交換反応を行い、メタノールを留出せしめた後、徐々に減圧し、高真空下、重縮合を行う方法、ジカルボン酸とグリコールのエステル化反応を行い、生成した水を留出せしめた後、徐々に減圧し、高真空下、重縮合を行う方法、ジカルボン酸のエステルとグリコールとでエステル交換反応を行い、更に、ジカルボン酸を加えてエステル化反応を行った後、高真空下、重縮合を行う方法が挙げられる。
【0139】
エステル交換触媒及び重縮合触媒としては公知のものを使用することができ、エステル交換触媒としては、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等を、重縮合触媒としては三酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、ジブチル錫オキシド、チタンテトラブトキシド等を用いることができる。しかし、重合方法、触媒等の種々条件は上述の例に限定されるものではない。
【0140】
また、本発明の親水性ポリエステル共重合体として市販されているものに、イーストマンケミカル社製のFPY6762,MPS7762,WD3652,WTL6342,WNT9519,WMS5113,WD SIZE,WNT,WHS(何れも商品名)等があり、何れも本発明に使用し得る。
【0141】
更に、本発明の親水性ポリエステル共重合体をビニル系単量体で変性したものも好ましく用いることが出来る。
【0142】
ここで、変性とは、親水性ポリエステル共重合体の水溶液中でビニル系単量体を分散重合させたものであり、分散液は、例えば、親水性ポリエステル共重合体を熱水中に溶解し、得られた親水性ポリエステル共重合体の水溶液にビニル系単量体を分散させ、乳化重合あるいは懸濁重合させることにより得ることができる。重合は乳化重合法によることが好ましい。
【0143】
変性親水性ポリエステル共重合体に使用するビニル単量体としては、前記の下引用共重合体の単量体と同様なものを使用することが出来る。ビニル系単量体の変性には重合開始剤や界面活性剤が用いられるが、上記重合体ラテックスと同様なものを用いることが出来る。ビニル単量体の使用量は、(親水性ポリエステル共重合体)/(ビニル系単量体)が質量比で99/1〜5/95の範囲にあるのが好ましく、97/3〜50/50の範囲にあるのが更に好ましく、95/5〜80/20の範囲にあるのが特に好ましい。
【0144】
下引層には、架橋剤(硬膜剤)、界面活性剤、支持体膨潤剤、マット剤、帯電防止剤、水溶性樹脂等を添加してもよい。
【0145】
架橋剤は、下引層とハロゲン化銀写真感光材料の構成層との接着性を向上させるために使用することが好ましい。架橋剤としては例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、米国特許第3,291,624号、同第3,232,764号、仏国特許第1,543,694号、英国特許第1,270,578号明細書に記載のようなアルデヒド系化合物;2−ヒドキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン(またはそのナトリウム塩)、米国特許第3,325,287号、同第3,288,775号、同第3,549,377号、ベルギー特許第6,602,226号明細書等に記載のようなトリアジン系化合物;米国特許第3,091,537号明細書、特公昭49−26580号公報等に記載のようなエポキシ系化合物;ビス(2−クロロエチル)尿素、ジビニルスルホン、5−アセチル−1,3−ジアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,642,486号、同第3,232,763号、同第3,635,718号、英国特許第994,809号明細書等に記載のような反応性オレフィン系化合物、米国特許第3,392,024号、同第3,549,378号、同第2,983,611号、同第3,107,280号明細書に記載のようなアジリジン系化合物;米国特許2,732,303号、同3,288,775号、英国特許974,723号、同1,167,207号明細書等に記載のような反応性ハロゲン系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオンの如きケトン化合物;米国特許第3,539,644号、同第3,642,486号明細書、特公昭49−13568号、同53−47271号、同56−48860号、特開昭53−57257号、同61−128240号、同62−4275号、同63−53541号、同63−264572号公報等に記載のビニルスルホン系化合物;N−ヒドロキシメチルフタルイミド、米国特許第2,732,316号、同第2,586,168号明細書等に記載のようなN−メチロール系化合物;米国特許第3,103,437号明細書等に記載のイソシアネート化合物;米国特許第2,725,294号、同第2,725,295号明細書等に記載のような酸誘導体類;米国特許第3,100,704号明細書等に記載のようなカルボジイミド系化合物;米国特許第3,321,313号、同第3,543,292号明細書等に記載のようなイソオキサゾール系化合物;ムコクロル酸のようなハロゲノカルボキシアルデヒド系化合物;ジヒドロキシジオキサン、ジクロロジオキサン等のジオキサン系化合物;クロムミョウバン、硫酸ジルコニウム、三塩化クロム等の無機硬膜剤;特開昭50−38540号公報に記載のジヒドロキノリン骨格を有する化合物;特開昭51−59625号、同62−262854号、同62−264044号、同63−184741号公報に記載のようなN−カルバモイルピリジニウム塩系化合物;特公昭55−38655号公報に記載のようなアシルイミダゾール系化合物;特公昭53−22089号公報に記載のようなN−アシルオキシイミダゾール系化合物;特公昭53−22089号公報に記載のようなN−アシルオキシイミノ系化合物;特開昭52−93470号公報に記載のようなN−スルホニルオキシイミド系化合物;特開昭58−113929号公報に記載のようなリン−ハロゲン結合を有する化合物;特開昭60−225148号、同61−240236号、同63−41580号公報に記載のクロロホルムアミジニウム系化合物等を挙げることが出来る。
【0146】
本発明の下引層の中には、塗布性を向上させるために、水溶性重合体を含有させてもよい。
【0147】
水溶性重合体としては、ヒドロキエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水性を有するよう変性したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(CATHEC)、ヒドロキシプロピルグアー(HPグアー)、グアー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、及びカーボポール(Carbopol;登録商標)アクリルアミド増粘用組成物等を挙げることが出来る。
【0148】
本発明において、ポリエステル支持体の膨潤もしくは溶解させる溶剤を下引層用の親水性樹脂共に使用する下引層も有用である。この下引層は、ハロゲン化銀乳剤層等の構成層の接着性を高めることが出来る。樹脂としては、側鎖に親水基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基もしくは酸無水物、あるいはアミノ基、環状アミド基を単独又は複数含む天然もしくは合成高分子がよく、エピクロルヒドリンとアミンとの反応物が好ましい。ポリエステルを膨潤または溶解させる溶剤としては、レゾルシン、クロルレゾルシン、メチルレゾルシン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、フェノール、o−クロルフェノール、p−クロルフェノール、ジクロルフェノール、トリクロルフェノール、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフロロ酢酸、抱水クロラール等を挙げることが出来るが、特にレゾルシン及びp−クロルフェノールが好ましい。その他、カルボキシル基またはその酸無水物含有芳香族化合物としては、サリチル酸、安息香酸等のカルボン酸やその酸無水物を挙げることが出来る。これら溶剤の含有量は、フィルムの平面性と接着性を両方満足させるために、下引加工液の1〜20質量部であることが好ましい。
【0149】
本発明において、熱現像用画像形成層及びバック層には、ゼラチン層、ポリアクリルアミド誘導体層、あるいはこれらの混合物等の親水性樹脂層、または、セルロースジアセテート層、セルローストリアセテート層、セルロースアセテートブチレート層、セルロースアセテートプロピオネート層、ポリビニルフォルマール層、ポリビニルアセタール層、ポリビニルブチラール層、ポリウレタン層等の疎水性樹脂層等が好ましく用いられるので、下引層は塗設後これらの層を良好に接着させ得る下引層が好ましく用いられる。前記下引層樹脂は何れも本発明には有用であり、乳化重合で形成された下引層、また有機溶媒可溶性の下引層何れでも良好な接着性が得られる。
【0150】
また親水性樹脂層を下引層の上層に設けてもよい。例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、等の水溶性ポリマー類、ポリスチレンスルホン酸ソーダ共重合体と疎水性ラテックスの組み合わせなどが挙げられる。
【0151】
下引層上層には上記のような硬膜剤を添加することにより、膜強度を高めることと接着性の強化をはかることが出来る。
【0152】
この下引層上層には、二酸化珪素、二酸化チタン等の無機微粒子やポリメタクリル酸メチル等の有機系マット剤(1〜10μm)を含有することが好ましい。これ以外にも必要に応じて、各種の添加剤例えば、帯電防止剤、着色用染料、顔料、塗布助剤を含有することが出来る。
【0153】
下引層の塗設は、支持体の製膜中の延伸前下引でも、縦延伸後下引でも、また2軸延伸後下引を行ってもよい。
【0154】
以下に、下引層用共重合体の重合例を示す。
《P−1の重合》
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に、脱気蒸留水300質量部を入れ、窒素導入管を通して窒素ガスを導入し、反応容器を窒素ガス雰囲気下にするとともに、水中の溶存酸素を排除した。80℃に温度を上げた後、滴下ロートからドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量部を含む水溶液50質量部を、また、別のロートからスチレン34.6質量部、グリシジルメタクリレート68.8質量部及びn−ブチルアクリレート68.8質量部の混合単量体液を、更に、別のロートから過硫酸アンモニウム3質量部を含む水溶液50質量部を滴下し、窒素ガス還流下、80℃で8時間重合反応を行い、スチレン/グリシジルメタクリレート/n−ブチルアクリレート(20/40/40)水分散性重合体ラテックス(P−1)を得た。
【0155】
《P−2の重合》
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に、脱気蒸留水300質量部を入れ、窒素導入管を通して窒素ガスを導入し、反応容器を窒素ガス雰囲気下にするとともに、水中の溶存酸素を排除した。80℃に温度を上げた後、滴下ロートからドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量部を含む水溶液50質量部を、また、別のロートからスチレン102.6質量部及びグリシジルメタクリレート68.4質量部の混合単量体液を、更に、別のロートから過硫酸アンモニウム3質量部を含む水溶液50質量部を滴下し、窒素ガス還流下、80℃で8時間重合反応を行い、スチレン/グリシジルメタクリレート(60/40)共重合体水分散性重合体ラテックス(P−2)を得た。
【0156】
《P−3の重合》
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に、脱気蒸留水300質量部を入れ、窒素導入管を通して窒素ガスを導入し、反応容器を窒素ガス雰囲気下にするとともに、水中の溶存酸素を排除した。80℃に温度を上げた後、滴下ロートからドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量部を含む水溶液50質量部を、また、別のロートからスチレン42.8質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート51.3質量部及びn−ブチルアクリレート77.0質量部の混合単量体液を、更に、別のロートから過硫酸アンモニウム3質量部を含む水溶液50質量部を滴下し、窒素ガス還流下、80℃で8時間重合反応を行い、スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート(25/30/45)共重合体水分散性重合体ラテックス(P−3)を得た。
【0157】
《P−4の重合》
オートクレーブ中に760mlの純水を入れ常圧で30分間攪拌しながら乾燥窒素を送り込み脱気した。次にオートクレーブ全体を−20℃まで冷却し、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの5質量%水溶液40ml及び亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム各0.5gを添加した。更に別に秤量しておいたブタジエン40g、酢酸ビニル20g、及びグリシジルメタクリレート40gを添加し密封した。次いで、攪拌しながら昇温し、60℃に達したら、そのまま60℃で持続させた。圧力が0になってから更に1時間反応を継続させた後に冷却した。反応所要時間は5時間であった。このようにして合成した共重合体は親水性分散媒中に微粒子状に分散されたブタジエン/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート(40/20/40)水性分散液ラテックス(P−4)を得た。
【0158】
《P−5の重合》
1lの4つ口フラスコに、攪拌器、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を取り付け、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、1.0gをフラスコに加えて、純水350mlを加えて加熱し、内温を80℃まで加熱する。この間窒素ガスを導入し、内温が80℃に達した後、更に30分間窒素ガスを通す。その後、重合開始剤として、過硫酸アンモニウム0.45gを水10mlに溶かした溶液を加え、続けて、重合性不飽和化合物をしてエチルアクリレート40g、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド30g及びn−ブチルメタクリレート30gの混合物を滴下ロートで約1時間かけて滴下する。重合開始剤添加後5時間後に、反応溶液を冷却し、アンモニウム水でpH6に調整後、これを濾過して、ゴミや粗大粒子を除き、活性メチレンを含有する共重合体ラテックス(P−5)を得た。
【0159】
《P−6の重合》
500mlの4つ口フラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却器を取り付け、ジオキサン200mlを加え、窒素ガスを導入して、内温を70℃まで加熱し、更に30分窒素ガスを通す。窒素ガスの供給を止め、ブチルアクリレート40g、2−ヒドロキシエチルアクリレート15g及びN−(3−アセトアセトアミドプロピル)メタクリルアミド45gをそれぞれ加え、更にジオキサン10mlにアゾビスイソブチロニトリル0.3gを溶かした液を加え、70℃で12時間重合を行った。得られた重合物を2lの水メタノール(50/50)の混合液に注いで沈殿させ、濾過後、乾燥して白色の粉末共重合物(P−6)100gを得た。
【0160】
《P−7の重合》
500mlの4つ口フラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却器を取り付け、ジオキサン200mlを加え、窒素ガスを導入して、内温を70℃まで加熱し、更に30分窒素ガスを通す。窒素ガスの供給を止め、ブチルアクリレート40g、グリシジルメタクリレート40g及びスチレン20gをそれぞれ加え、更にジオキサン10mlにアゾビスイソブチロニトリル0.3gを溶かした液を加え、70℃で6時間重合を行った。得られたポリマーを冷エタノール2lに沈殿させ、濾過し、乾燥して、共重合物(P−7)95gを得た。
【0161】
《変性親水性ポリエステル共重合体(B)の合成》
〈親水性ポリエステル共重合体(A)の合成〉
テレフタル酸ジメチル34.02質量部、イソフタル酸ジメチル25.52質量部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩12.97質量部、エチレングリコール47.85質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール18.95質量部、酢酸カルシウム−水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を窒素気流下において170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸15.08質量部を加え、220〜235℃の反応温度でほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、1mmHg以下で約1時間重縮合を行い、親水性ポリエステル共重合体(A)を合成、得られた共重合体を95℃の純水で17時間かけて分散し、親水性ポリエステル共重合体分散液(A)(固形分12%)を得た。
【0162】
〈変性親水性ポリエステル共重合体(B)の合成〉
前記親水性ポリエステル共重合体分散液(A)3300gに、スチレン20g、ブチルメタクリレート40g、グリシジルメタクリレート40g及び過硫酸アンモニウム1.0gを投入して80℃で5時間反応し、室温に冷却し、固形分15%の変性親水性ポリエステル共重合体(B)を合成した。
【0163】
本発明の赤外線吸収化合物は下引層の下層及び上層から選ばれる少なくとも1層に含有する。
【0164】
本発明に使用する赤外線吸収化合物、特に染料類を下引層に添加する際の溶媒としては、赤外線吸収化合物の性質に応じて水あるいは有機溶媒に溶かせばよい。有機溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、酢酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等)、含ハロゲン溶媒、(メチレンクロライド、クロロホルム等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エーテル類(ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等に溶かすか、分散物として添加することが好ましい。
【0165】
次ぎに、本発明の構成(6)の帯電防止層について述べる。本発明の構成(5)の金属酸化物微粒子は導電性微粒子として帯電防止剤としても使用し得る。導電性微粒子の組成、製造方法については前記構成(5)の通りであり、省略する。本発明の構成(6)の帯電防止層は本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層側と支持体に対して反対側に設けるものである。本発明の構成(6)の特徴は、熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の裏面にある帯電防止層が、上記同様に赤外線吸収能を有し、裏面からの、あるいは裏面にまで通過した赤外線を吸収することにより鮮鋭性を向上させることである。本発明の導電性微粒子は、熱に強く、熱現像後もその性能を維持することが出来、使用中如何なる時でも帯電防止効果を発揮することが出来る。
【0166】
本発明における帯電防止層の表面比抵抗値は、帯電防止層中の導電性粒子の体積含有率及び/または帯電防止層の厚みを調節することにより101〜1010Ωのオーダーに容易に調整することが出来る。導電性微粒子の体積含有率が大きい程、導電性がよくなるが、それに伴い膜強度が低下し易いから、導電性微粒子のバインダーに対する体積含有割合は20〜80%、より好ましくは25〜60%であり、その塗設量は0.05〜5.0g/m2、好ましくは0.1〜2.0g/m2である。
【0167】
本発明の帯電防止層のバインダーとしては、ゼラチン、誘導体ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼイン等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん誘導体等の糖誘導体、合成親水性コロイド、例えばポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド又はこれらの誘導体、及び部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル等のビニル重合体及びその共重合体、ロジン、シェラック等の天然物及びその誘導体、その他多くの合成樹脂類が用いられる。又、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン、オレフィン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンも使用することが出来る。その他、カーボネート系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリピロールの如き有機半導体を使用することも出来る。これらのバインダーは、2種以上を混合して使用することも出来る。
【0168】
帯電防止層とポリエステルフィルムの間の接着性を良好にするために、帯電防止層にポリエステルフィルムを膨潤させる化合物を含有せしめることが好ましく、ポリエステルフィルムを膨潤させる化合物としては、前記下引層のところで挙げたものを使用することが出来る。ポリエステルフィルムを膨潤せしめる化合物の使用量は0.01〜5.0g/m2が適当であり、好ましくは0.05〜1.0g/m2である。
【0169】
帯電防止層の塗布に際しては、溶剤を適宜選択して、サポニン、ドデシルベンゼンスルホン酸等の、公知の塗布助剤や硬膜剤、着色剤、紫外線吸収剤、熱線カット剤等を適宜必要に応じて塗布液に加えることが出来る。また、ポリエステルフィルムと帯電防止層との間の接着性を上げるために、両者の間に下引層を設けてもよい。
【0170】
次に、本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料について説明する。本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、80〜150℃で熱現像することで画像を形成させ、定着を行わないことが特徴である。そのため、未露光部に残ったハロゲン化銀や有機銀塩は除去されずにそのまま熱現像画像形成層中に残るが、熱が加わらない限りカブリ濃度が増加することはない。
【0171】
本発明に係わる熱現像処理した後熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の光透過性は、400nmにおける光学透過濃度が0.2以下であることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.2である。
【0172】
本発明の熱現像画像形成層のハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能する。ハロゲン化銀粒子は平均粒子サイズは、画像形成後の画像形成層の白濁を低く抑え、良好な画質を得るために小さい方がよく、平均粒子サイズとして0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmであることが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。単分散度は、好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である粒子である。
【0173】
単分散度(%)=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明に用いられるハロゲン化銀の粒子が平均粒径0.1μm以下でかつ単分散粒子であることがより好ましく、こうすることによって画像の粒状性も向上することが出来る。ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani:J.Imaging Sci.、29巻、165頁(1985)により求めることが出来る。またもう一つの好ましいハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして垂直方向の厚みをhμmとした場合の下記アスペクト比(AR)が3以上のものをいう。
【0174】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
その中でも好ましくはアスペクト比が3〜50である。また粒径は0.1μm以下であることが好ましく、0.01〜0.08μmがより好ましい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号明細書等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることが出来る。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、さらに画像の鮮鋭性も向上する。
【0175】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、P.Glafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 、Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著、Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することが出来る。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等の何れでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させるハロゲン化銀形成方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等の何れを用いてもよい。熱現像画像形成層にこのハロゲン化銀を混合する際、ハロゲン化銀が還元可能な銀源に近接するように配置させることが重要である。またハロゲン化銀は、有機酸銀とハロゲンイオンとの反応によって有機酸銀の銀の一部または全部をハロゲン化銀に変換することによって調製してもよいし、ハロゲン化銀を予め調製しておき、これを有機銀塩を調製するための溶液に添加してもよく、またはこれらの方法の組み合わせも可能であるが、後者が好ましい。熱現像画像形成層はハロゲン化銀を有機銀塩に対して0.75〜30質量%含有することが好ましい。
【0176】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、周期表の6族から11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0177】
これらの金属イオンは金属錯体または金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入出来る。これらの金属錯体または金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0178】
一般式 〔ML6m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0179】
Mとして特に好ましい具体例は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)である。
【0180】
以下に遷移金属錯体イオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0181】
1:〔RhCl63-
2:〔RuCl63-
3:〔ReCl63-
4:〔RuBr63-
5:〔OsCl63-
6:〔IrCl64-
7:〔Ru(NO)Cl52-
8:〔RuBr4(H2O)〕2-
9:〔Ru(NO)(H2O)Cl4-
10:〔RhCl5(H2O)〕2-
11:〔Re(NO)Cl52-
12:〔Re(NO)(CN)52-
13:〔Re(NO)Cl(CN)42-
14:〔Rh(NO)2Cl4-
15:〔Rh(NO)(H2O)Cl4-
16:〔Ru(NO)(CN)52-
17:〔Fe(CN)63-
18:〔Rh(NS)Cl52-
19:〔Os(NO)Cl52-
20:〔Cr(NO)Cl52-
21:〔Re(NO)Cl5-
22:〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-
23:〔Ru(NS)Cl52-
24:〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-
25:〔Os(NS)Cl(SCN)42-
26:〔Ir(NO)Cl52-
27:〔Ir(NS)Cl52-
これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。
【0182】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。
【0183】
添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることも出来るし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号公報等に記載されている様に粒子内部に分布を持たせて含有させることも出来る。好ましくは粒子内部に分布を持たせて含有させたものである。
【0184】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することが出来るが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0185】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0186】
一般に形成されたハロゲン化銀粒子は不必要な塩類をヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩しているが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0187】
本発明に用いられる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に使用するハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法等があり、何れも用いることが出来る。また本発明においては、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法も用いることが出来る。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法の化合物としては公知の化合物を本発明においても好ましく用いることが出来るが、特開平7−128768号公報に記載の化合物も使用することが出来る。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることが出来る。貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号明細書等に記載されている化合物を好ましく用いることが出来る。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが出来る。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することが出来る。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することが出来る。
【0188】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に使用される有機酸銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸、ヘテロ有機酸及び酸ポリマーの銀塩などが用いられる。また、配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類);チオエン類の銀塩又は錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオエン及び3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオエン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。
【0189】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に使用される有機酸銀は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機酸銀塩の結晶を作製成する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0190】
本発明において、有機酸銀は平均粒径が1μm以下でありかつ単分散であることが好ましい。有機酸銀の平均粒径とは、有機酸銀の粒子が例えば球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、有機酸銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。平均粒径は好ましくは0.01〜0.8μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。また単分散とは、ハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30である。本発明においては、有機酸銀が平均粒径1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。更に有機酸銀は平板状粒子が全有機酸銀の60%以上有することが好ましい。本発明においてはアスペクト比が3以上のものがよい。
【0191】
有機酸銀をこれらの形状にするためには、前記有機酸銀結晶をバインダーや界面活性剤などをボールミルなどで分散粉砕することで得られる。
【0192】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の画像形成層の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機酸銀の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%の間である。
【0193】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料には、還元剤を内蔵させることが好ましい。好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号明細書、及びResearch Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものが挙げられる。
【0194】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒド又はケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトン及び/又はヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール))、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。ヒンダードフェノール類としては、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0195】
【化19】
Figure 0004061815
【0196】
式中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、−C49、2,4,4−トリメチルペンチル)を表し、R′及びR″は炭素原子数1〜5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、t−ブチル)を表す。
【0197】
一般式(A)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は、以下の化合物に限定されるものではない。
【0198】
【化20】
Figure 0004061815
【0199】
【化21】
Figure 0004061815
【0200】
前記一般式(A)で表される化合物を始めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当り1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
【0201】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に好適なバインダーは透明または半透明で一般に無色の天然高分子化合物や合成高分子化合物ならば使用出来る。例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド類、セルロースエステル類がある。親水性でも非親水性何れでもよい。また熱現像写真感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、熱現像画像形成層の外側に非感光性層を設けてもよい。これらの非感光性層に用いられるバインダーは感光性層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。
【0202】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の熱現像の速度を速める一つの手段として熱現像画像形成層のバインダー量を1.5〜10g/m2とすることが好ましく、1.7〜8g/m2がより好ましい。これはバインダー中の画像形成物質の量を適度に有することにより画像濃度を維持することが出来る。
【0203】
また、本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の熱現像画像形成層側にマット剤を有する層があることが好ましく、熱現像処理後の画像が傷つくのを防止するためもので、熱現像画像形成層の最外層にマット剤を有することが好ましく、熱現像画像形成層の全バインダーに対し、質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。マット剤の材質は、有機物及び無機物の何れのマット剤でもよい。例えば、無機物マット剤としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等をマット剤として用いることが出来る。有機物のマット剤としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体粒子、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール粒子、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート粒子、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル粒子、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネート粒子等を挙げることが出来、マット剤として用いることが出来る。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。マット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。マット剤は平均粒径が0.5〜10μmのものが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。
【0204】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(有機酸銀)、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び必要に応じて銀の色調を抑制する色調剤等が、バインダー中に分散した状態で存在することが好ましい。本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は常温で安定であるが、露光後、例えば、80〜150℃で加熱することによって現像される。熱により有機酸銀(酸化剤として機能する)と還元剤との間で酸化還元反応が起こり銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に発生した潜像が触媒となって促進される。露光領域中の有機酸銀が反応して生成した銀は、黒色画像となる。この反応過程は、外部から水等の処理液の供給を一切受けずに進行する。
【0205】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料は、写真用支持体上に少なくとも1層の熱現像画像形成層を有しており、熱現像画像形成層だけでもよいが、この層の上に少なくとも1層の非感光性層があることが好ましい。熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料には、熱現像画像形成層側にフィルター染料層を、また反対側にはアンチハレーション染料層やバック層を有していてもよく、また熱現像画像形成層に染料または顔料を含ませてもよい。染料としては所望の波長範囲の光を吸収するものであればいかなる化合物でも使用し得る。例えば特開昭59−6481号、同59−182436号公報、米国特許第4,271,263号、同第4,594,312号明細書、欧州特許公開第533,008号、同第652,473号明細書、特開平2−216140号、同4−348339号、同7−191432号、同7−301890号公報などの記載の化合物が好ましく用いられる。
【0206】
またこれらの非感光性層には前記のバインダーやマット剤を含有することが好ましく、さらにポリシロキサン化合物やワックスや流動パラフィンのようなスベリ剤を含有してもよい。
【0207】
熱現像画像形成層は複数層としてもよく、また画像の階調を調節のために高感層と低感層を設け、何れかの層を上にすればよい。
【0208】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
【0209】
イミド類(例えば、フタルイミド)、環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類及びキナゾリノン類(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン)、ナフタルイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド)、コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサアンミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール)、N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド)、ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ)、メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン)、フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノン及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン)、フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノンとベンゼンスルフィン酸ナトリウム、又は8−メチルフタラジノンとp−トリルスルフィン酸ナトリウム)、フタラジノンとフタル酸の組み合わせ、フタラジン(フタラジンとマレイン酸無水物の付加物を含む)とフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ、キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン又はナフトオキサジン誘導体、ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン)、ピリミジン類及び不斉トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、テトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラザペンタレン)。
【0210】
また、本発明に係わる熱現像画像形成層には、熱現像を抑制あるいは促進させ現像速度を制御し、分光増感効率を向上せしめ、更に現像前後の画像の保存性を向上せしめる等のために、メルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させてもよい。メルカプト化合物の場合、Ar−SM1、Ar−S−S−Arで表される化合物が好ましい。式中、M1は水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば1〜4個の炭素原子の)及びアルコキシ(例えば、1〜4個の炭素原子の)から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾチアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0211】
本発明に係わる熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料中にはカブリ防止剤を含んでいてもよい。例えば米国特許第4,546,075号及び同第4,452,885号明細書及び特開昭59−57234号公報に開示されている様なカブリ防止剤が好ましい。特に好ましいカブリ防止剤は、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号明細書に開示されているような化合物、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲンでX3は水素またはハロゲン)で表される1以上の置換基を備えたヘテロ環状化合物である。好適なカブリ防止剤の例としては、特開平9−288328号公報段落番号〔0030〕〜〔0036〕に記載されている化合物等が好ましく用いられる。また特開平9−90550号公報段落番号〔0062〕〜〔0063〕に記載されている化合物である。更にカブリ防止剤は米国特許第5,028,523号及び英国特許出願第92221383.4号、同第9300147.7号、同第9311790.1号明細書に開示されているものがよい。
【0212】
各種の添加剤は感光性層、非感光性層、又はその他の形成層のいずれに添加しても良い。例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はResearch Disclosure Item17029(1978年6月9〜15頁)に記載されている化合物を好ましく用いることが出来る。
【0213】
本発明の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号等公報、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号等明細書に記載された増感色素が使用出来る。本発明に使用される有用な増感色素は例えばResearch Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することが出来る。例えばアルゴンイオンレーザー光源に対しは、特開昭60−162247号、特開平2−48635号公報、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号明細書、特願平3−189532号等に記載のシンプルメロシアニン類、ヘリウムネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号公報に示された三核シアニン色素類、特願平6−103272号に記載されたメロシアニン類、LED光源及び赤外半導体レーザー光源に対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号公報に記載されたチアカルボシアニン類等を挙げることが出来る。また、本発明の赤外線感光熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料に有用な赤外線増感色素として、赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、同60−80841号公報に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号公報の一般式(IIIa)、(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類等が有利に選択される。更に赤外レーザー光源の波長が750nm以上更に好ましくは800nm以上である場合このような波長域のレーザーに対応する為には、特開平4−182639号、同5−341432号、特公平6−52387号、同3−10931号、同5−72661号、同5−88292号、特開平7−13295号、同8−194282号、同9−166844号、同9−281631号、同9−292672号、同9−292673号、同10−73900号公報、米国特許第5,441,866号明細書、特願平11−52559号等に記載されている増感色素が好ましく用いられる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、増感色素の組み合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素或いは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでいてもよい。本発明の熱現像感光材料の露光は、アルゴンイオンレーザー(488nm)、He−Neレーザー(633nm)、赤色半導体レーザー(670nm)、赤外半導体レーザー(790nm、820nm)等が好ましく用いられるが、レーザーパワーがハイパワーであることや、感光材料を透明に出来る等の点から、赤外半導体レーザーがより好ましく用いられる。
【0214】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0215】
【実施例】
〔評価方法〕
(鮮鋭性)
試料に2856Kの白色光に830nmの干渉フィルターを用いて分光した光で露光した後、ヒートドラムを有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料用現像機に通して120℃、5秒熱現像処理を行った。鮮鋭性は光学濃度1.0で15本/mm2でのMTF値を用いて評価した。
【0216】
(干渉縞)
810nmの半導体レーザーを搭載するレーザーイメージャーでB4サイズの熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層側からレーザー走査露光を与え、120℃で5秒ヒートドラムで熱現像を行い、下記の如く干渉縞を評価した。
【0217】
A:干渉縞が全く見えない
B:干渉縞が見えるか見えないくらいの程度(見る角度によって)
C:干渉縞がやや見える
D:干渉縞がややはっきり見える
E:干渉縞がはっきり見える
(スクラッチ耐性)
熱現像処理し、23℃、55%RHの条件下で24時間調湿した試料に対して、先端の曲率半径が0.15mmのサファイア針を直角にあてがい、60cm/分で試料を移動させながら、サファイア針にかかる加重を0gから200gまで徐々に増加させた。傷がポリエステル支持体まで到達する時の荷重をスクラッチ耐性の指標とした。
【0218】
(乳剤塗布性)
スライドホッパーを用いて下引済み支持体上に、乳剤塗布液を塗布銀量が2.1g/m2になるように、30m/分の速度で塗布した。下引表面に対する乳剤塗布性を塗布幅1m、塗布長1m当たり発生した塗布スジの本数を評価した。
【0219】
(ゴミ付着性)
23℃、20%RHの条件で、熱現像済み試料の乳剤側面をゴムローラーで数回こすり、タバコの灰を近づけて、試料にくっつくかどうかを下記の評価に従って調べた。
【0220】
A:1cmまで近づけても全く付着しない
B:1〜4cm近づけてると付着する
C:4.5〜10cm近づけると付着する
D:10.5cm以上離れても付着する
(表面比抵抗値)
川口電機社製テラオームメーターVE−30を用い、印加電圧100V、23℃、20%RHの条件で、バック層側の下引層について測定した。
【0221】
(乳剤層の膜付き)
熱現像処理前及び処理後の試料の乳剤層側にセロファン粘着テープを圧着し、急激に引き剥がす。この時のテープ接着面積に対する乳剤層の剥離面積を求め、下記に示す評価基準に従って評価した。
【0222】
A:テープを引き剥がすのに非常に強い力を要し、剥離面積が5%未満
B:テープを引き剥がすのに強い力を要し、剥離面積が5%以上、20%未満
C:剥離面積が20%以上、50%未満
D:剥離面積が50%以上、100%未満
E:テープを引き剥がすのに力を要せず、100%以上剥離
実施例1
[下引層の作製]
ポリエチレンテレフタレート支持体の両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、感熱感光層を塗布する面に下記下引塗布液a−1〜a−6を乾燥膜厚0.4μmになるように塗設し、140℃で乾燥させてそれぞれ下引層A−1〜A−6とした。またそれぞれの反対側の面(バック層側)に下記下引塗布液(帯電防止塗布液)b−1を0.06μmになるように塗設して、また下記下引塗布液b−2を乾燥膜厚0.4μmになるように塗設し、140℃で乾燥させてそれぞれ下引層B−1及びB−2とした。これらを140℃で2分間、熱処理を行い、下引層済み支持体を作製した。
【0223】
Figure 0004061815
【0224】
【化22】
Figure 0004061815
【0225】
Figure 0004061815
【0226】
Figure 0004061815
【0227】
《下引塗布液a−4》
P−6(アセトン/ジオキサン=3/1、20質量%) 180g
A−13 0.6g
赤外線吸収化合物(表2に記載)(アセトン溶液、1質量%) 3g
シリカ微粒子(平均粒径2μm) 0.3g
アセトン/ジオキサン=3/1の混合液で1lに仕上げる。
【0228】
《下引塗布液a−5》
P−7(アセトン/ジオキサン=3/1溶液、20質量%) 180g
A−13 0.6g
赤外線吸収化合物(表2に記載)(アセトン溶液、1質量%) 3g
シリカ微粒子(平均粒径2μm) 0.3g
アセトン/ジオキサン=3/1の混合液で1lに仕上げる。
【0229】
Figure 0004061815
【0230】
《下引塗布液b−1、試料17〜20のみ》
P−1(固形分30質量%) 13g
P−3(固形分30質量%) 3g
A−13 0.4g
シリカ微粒子(平均粒径2μm) 0.3g
SN−1(固形分8質量%) 110g
蒸留水で1lに仕上げる。
【0231】
《下引塗布液b−2》
P−1(固形分30質量%) 26g
P−2(固形分30質量%) 98g
A−13 0.6g
シリカ微粒子(平均粒径2μm) 0.3g
蒸留水で1lに仕上げる。
上記下引層B−1及びB−2の上に下記バック層塗布液c−1を、乾燥膜厚0.3μmになるように塗布し、140℃で乾燥しバック層保護層C−1及びC−2とした。
【0232】
Figure 0004061815
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液及び〔Ir(NO)Cl5〕塩を銀1モル当たり1×10-6モル及び塩化ロジウム塩を銀1モル当たり1×10-4モルを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整して、ハロゲン化銀乳剤Aを得た。さらに塩化金酸及び無機硫黄で化学増感を行った。
【0233】
《ベヘン酸Na溶液の調製》
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させてベヘン酸Na溶液を得た。
【0234】
《ベヘン酸銀とハロゲン化銀Aのプレフォーム乳剤の調製》
上記のベヘン酸Na溶液に前記ハロゲン化銀乳剤Aを15.1g添加し水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に1Mの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、さらに20分攪拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。出来たベヘン酸銀は平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。分散物のフロックを形成後、水を取り除き、更に6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させた。これをプレフォーム乳剤とする。
【0235】
《熱現像用ハロゲン化銀乳剤層乳剤の調製》
出来あがったプレフォーム乳剤を1/2に分割し、ポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)544gとトルエン107gを徐々に添加して混合した後に、280kgf/cm2で分散させた。
【0236】
前記支持体下引層(A−1〜A−6)上に以下の各層を順次形成し、試料を作製した。なお、乾燥は各々60℃、15分間で行った。
【0237】
《熱現像用ハロゲン化銀乳剤層塗布液》
以下の乳剤層塗布液を塗布銀量が2.1g/m2になるように塗布した。
【0238】
Figure 0004061815
【0239】
【化23】
Figure 0004061815
【0240】
Figure 0004061815
《露光及び熱現像処理》
試料を半切サイズ(430mm(長手方向)×345mm(幅手方向))に切り出し、810nmの半導体レーザーを有するイメージャーで露光した。その後ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、110℃で15秒熱現像処理(鮮鋭性試験以外)した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0241】
上記試料を上記試験を行い、評価結果を表1〜4に示した。
【0242】
【表1】
Figure 0004061815
【0243】
【表2】
Figure 0004061815
【0244】
【表3】
Figure 0004061815
【0245】
【表4】
Figure 0004061815
【0246】
(結果)
赤外線吸収化合物を下引層に含有させた本発明は、いずれも鮮鋭性が優れ、干渉縞もほとんど観察されず、優れた赤外線感光性の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を得ることが出来た。更に、これらの効果に加えて、ポリメチン系染料は熱現像処理後のスクラッチ耐性向上に、スクエアリリウム赤外線吸収化合物はバック層塗布性向上に、また銅含有リン酸化合物は乳剤層の、膜付き向上に効果があることがわかった。これに対して比較例としてバック層に本発明と同じ赤外線吸収化合物を含有させたものは、鮮鋭性が劣り、求める熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料の性能が得られなかった。またバック層に導電性微粒子としての金属酸化物を含有させたものは、導電性を有し、且つ赤外線吸収化合物としても役立ち相乗効果で鮮鋭性も更に向上した。
【0247】
【発明の効果】
鮮鋭性に優れ、干渉縞による濃度ムラも発現しない赤外線感光性の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を提供することが出来、赤外線レーザーで容易に書き込める熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料を提供出来る。

Claims (6)

  1. 有機酸銀及びハロゲン化銀を含有する熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、支持体の上に、最大吸収波長(λmax)が700〜900nmの赤外線吸収化合物及び無機微粒子を含有し下記の重合体から選ばれてなる下引層を有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
    重合体:スチレン/グリシジルメタクリレート/n−ブチルアクリレート、スチレン/グリシジルメタクリレート、スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート/n−ブチルアクリレート、ブタジエン/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート / N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド / n−ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート / 2−ヒドロキシエチルアクリレート / N−(3−アセトアセトアミドプロピル)メタクリルアミド、ブチルアクリレート / グリシジルメタクリレート / スチレン、
    変性親水性ポリエステル共重合体
  2. 請求項1に記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、下記一般式(I)で表されるポリメチン系染料であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
    Figure 0004061815
    式中、Z1及びZ2はそれぞれ環を巻いて5または6員の含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表し、R1及びR2はそれぞれアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、Lは5、7または9個のメチン基が共役二重結合によって連結させて生じる連結基を表し、a、b及びcはそれぞれ0または1を表し、Xはアニオンを表す。
  3. 請求項1に記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、下記一般式(II)のスクエアリリウム赤外線吸収化合物であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
    Figure 0004061815
    式中、R1、R4、R5及びR8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基またはアラルキル基を表し、並びにR2、R3、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数14までのアリール基、アラルキル基、または−CH2OR〔ただし、Rは、アルキルアシル基、−C(=O)R′(式中、R′は、炭素原子数1〜20のアルキル基である)、−SiR″R′″R″″(式中、R″、R′″及びR″″は、独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基を表す)、及び−SO2R″″′(式中、R″″′は炭素原子数1〜20のアルキル基である)からなる群より選ばれる〕を表すか、あるいはR1及びR2、及び/またはR3及びR4、及び/またはR5及びR6、及び/またはR7及びR8、あるいはR2及びR3及び/またはR6及びR7は、互いに結合して、5、6または7員環を形成していてもよい。R9及びR10は1価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。但し、R2、R3、R6またはR7がヘテロ環基である場合には、R9及びR10は水素原子でもよい。
  4. 請求項1に記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、銅含有リン酸化合物であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
  5. 請求項1に記載の熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料において、前記赤外線吸収剤が、最大吸収波長(λmax)が600nm以上の金属酸化物微粒子であることを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の下引層を有し、且つ感光層と反対側の支持体上に導電性微粒子を含有する帯電防止層を有することを特徴とする熱現像用ハロゲン化銀写真感光材料。
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