JP4061810B2 - カラーフィルター用中間品の作製方法、カラーフィルターの作製方法 - Google Patents

カラーフィルター用中間品の作製方法、カラーフィルターの作製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルター用中間品の作製方法、カラーフィルターの作製方法に関し、詳しくはカラー液晶ディスプレイ、カラービデオカメラ、イメージスキャナー、パーソナルコンピューター等に使用されている画像表示装置あるいはCCDデバイス等に使用されている画像入力装置(撮像装置を含む)に用いるカラーフィルター用中間品の作製方法、カラーフィルターの作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯用パーソナルコンピューターの急速な発展に伴い、液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にあり同時に装置のコストダウンも要求され、特にコストの高いカラーフィルターのコストダウン要求が高まっている。即ち製造工程が短く歩留まりが良く、優れた品質のカラーフィルター及びその製造方法が望まれているが、未だに満足できるものは実現できていない。
【0003】
例えば、LCD用のカラーフィルターは、ブルー(B)、グリーン(G)、レッド(R)の3色フィルターを適当に配列して作製する。各色のフィルターが各画素を形成し、一つの画素が形成するセルの大きさは(60μm〜100μm)×(180μm〜300μm)程度であり、各画素セルは表面反射を防ぐ為高さ1〜2μmの黒い隔壁、即ち、ブラックマトリックス(以下、BMとも言う)で囲まれている。
【0004】
カラーフィルターは単純な構造であるが製造工程が複雑で長い為、収率が低くコストが高くなり低コストで高品位なカラーフィルターが望まれている。
【0005】
以下、従来の製造法に就いて説明する。
最も多く使われている例えばLCD用カラーフィルターの第1の製造法は、染色法である。この方法は、支持基板上に可染性の感光性高分子膜を形成し、フォトリソグラフィーによりフィルター形状に合わせてパターニングし出来上がったパターンを染色する。この操作を3回繰り返し保護層を設けてB、G、R3色を有するフィルターを形成する。
【0006】
第2の方法が顔料分散法である。この方法は支持基板上に顔料を分散した感光性樹脂膜を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。この操作を3回繰り返し、更に、保護層を設けてB、G、R3色を有するフィルターを形成する。
【0007】
第3の方法が電着法である。この方法は支持基板上に電極でフィルターのパターンを形成する。次に、顔料、樹脂及び溶剤を含有する電着塗装液に浸漬し、電極に通電して第一色を電着する。この操作を3回繰り返し、保護層を設けてB、G、R3色を有するフィルターを形成する。
【0008】
第4の方法が印刷法である。この方法は、熱硬化性樹脂に顔料を分散してガラス基板上に印刷する。この操作を3回繰り返し、保護層を設けて、B、G、R3色を有するフィルターを形成する。
【0009】
従来の方法に共通している問題点はB、G、R3色を着色するため、感光性樹脂のスピンコート、露光、現像や、電着、印刷等の工程を3回繰り返す必要が有り、材料の無駄が多く工程が長い為、汚染の機会が増え、歩留まりが低下し、コストが高くなる、欠点を有していることである。更に、電着法では電極上に色素を析出させるので、電極パターンを電気的につなげる必要があり、フィルターのパターン形状が限定されるため、現状ではTFT用には、適用が困難である。又、印刷法、例えば、オフセット印刷はインクを2回転写するので、転写パターンの解像度が悪く、ファインピッチパターンの形成が難しい。又、フィルター表面に凹凸を生じるので、表面を平坦化処理する必要がある。
【0010】
これらの欠点を解決するため、インクジェット方式を用いたカラーフィルターが提案されている。これは従来法と異なり、B、G、Rの各色を基板上にノズルから噴射して着色層を形成する方法である。この方法によれば、必要な場所に必要な量のインクを必要な時に付着させることが出来るのでインクが無駄にならない。又、B、G、Rの着色層を同時に形成するので、製造プロセスが短縮され大幅なコストダウンが可能になる。
【0011】
しかし、インクジェット方式で支持基板に形成した画素形成部(以下、凹部と呼ぶことがある)にインクを吐出して着色層を形成する時、支持基板は布や紙と異なりインクを吸収しないので一つの画素(凹部)からインクが溢れ出し、隣りの画素(凹部)のインクと混色し易い。又、使用するインクの物性値、例えば表面張力や粘度等が支持基板の物性値、例えば表面自由エネルギーと適合しないと着色層が弾かれて、フィルター層の膜厚に偏りが生じ色濃度が不均一になったり白抜けが発生し易い。更に、着色層の表面が荒れ易いので液晶層と均一に接触出来なくなる等の問題が有る。
【0012】
インクジェット法は、従来法に比べて遙かに能率が高く材料の無駄が少ないので低コストでカラーフィルターを製造出来るが、上述の様に凹部間でインクが混合しやすく、又凹部内でインク濃度が不均一になったり、特に大きな問題は凹部の一部や凸部と凹部の境界でインクが欠けたり、白抜けが発生し易い欠点を持っている。この為、凹部と凹部の間でインクが混合しない様に一つの凹部に吐出したインクがブラックマトリックス部(以下、凸部と呼ぶことがある)表面を乗り越えて隣りの凹部に侵入しない様にすることが望ましい。更に、凹部ではインクが均一に広がる様になることが好ましい。
【0013】
そこで、支持基板の表面を処理して凸部には撥インク性を凹部には親インク性を持たせる処理が行われる。しかし、親インク性の凹部を撥インク性の凸部で取り囲むことになるので、凹部内でインクが均一に広がっても凸部と接触する部分ではインクが弾かれて、凹部の周辺で色濃度が低下したり、白抜けを発生し易いので、表示される色画像のコントラストが低下する問題が有る。
【0014】
この様に、インクジェット法によりカラーフィルターを製造するには、支持基板(ガラス基板)を撥インク領域と親インク領域に正確に細かく分割して処理することが好ましく行われている。
【0015】
特開平10−142418号公報に記載の方法は、凸部パターン間隙である凹部の基板表面の表面自由エネルギーを増加させて、インクの濡れ性を向上させるために、洗浄処理、UVオゾン処理、コロナ放電処理やエッチング処理を行う方法である。しかし、この方法は、凸部と凹部の撥水性の差を高める方法であり、凸部と凹部の撥水性の差による画素周辺部のインク濃度の低下や白抜けの問題があり、この処理だけでは満足なカラーフィルターを得るには至っていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題を解決するべくなされたもので、表面状態の均一性が向上し、画素周辺の白抜けが無く、混色の発生が防止された高品質のカラーフィルターを提供することを課題とする。
【0017】
更に、本発明の他の課題は、カラー液晶ディスプレイ、カラービデオカメラ、イメージスキャナー、パーソナルコンピューター等に使用されている画像表示装置、あるいはCCDデバイス等に使用されている画像入力装置(撮像装置を含む)において極めて優れた画像を得ることができ、また、カラーフィルターに起因する画像欠陥が無く、総合的画像として優れ、また装置としても優れたものを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は以下の構成により解決される。
【0019】
1.ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、ブラックマトリックス部とインクメニスカスとの間の接触角に影響を与え時間と共に該接触角を変化させる表面処理を行うカラーフィルター用中間品の作製方法であって、
前記表面処理は、表面処理に用いる界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用し、カラーフィルター用支持基板の全面を表面処理することを特徴とするカラーフィルター用中間品の作製方法。
2.前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が1000:1〜1:1の範囲になるように処理することを特徴とする前記1に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
3.前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が500:1〜5:1の範囲になるように処理することを特徴とする前記1に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
4.前記ブラックマトリックス部が樹脂であり、前記画素形成部がガラスであることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
5.ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、該カラーフィルター用支持基板のブラックマトリックス部に対するインクの接触角が、インク滴の付着直後(付着、30秒後)前進接触角が90°以下、後退接触角が40°以下であり、インク滴付着後、経時(常温、常圧、2分後)で、前進接触角が30°以下、後退接触角が15°以下に低下するように処理する表面処理工程を経るカラーフィルター用中間品の作製方法であって、
前記表面処理工程は、表面処理に用いる界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用し、カラーフィルター用支持基板の全面を表面処理することを特徴とするカラーフィルター用中間品の作製方法。
6.ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、該カラーフィルター用支持基板の該ブラックマトリックス部に対するインクの前進接触角が、インク付着直後はインクの付着すべき画素形成部の該支持基板表面に対する前進接触角よりも大であって、時間経過と共に低下し、インク付着後2分以内に該画素部の支持基板に対するインクの前進接触角より10°大きい値以下の値まで低下するように処理する表面処理工程を経るカラーフィルター用中間品の作製方法であって、
前記表面処理工程は、表面処理に用いる界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用し、カラーフィルター用支持基板の全面を表面処理することを特徴とするカラーフィルター用中間品の作製方法。
7.前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が1000:1〜1:1の範囲になるように処理することを特徴とする前記5又は6に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
8.前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が500:1〜5:1の範囲になるように処理することを特徴とする前記5又は6に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
9.前記ブラックマトリックス部が樹脂であり、前記画素形成部がガラスであることを特徴とする前記5乃至8の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
10.前記前処理工程が、(a)洗浄処理を行う工程又は(b)洗浄処理及び超音波処理を行う工程であることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
11.前記前処理工程が、(a)UVオゾン処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびUVオゾン処理を行う工程であることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
12.前記前処理工程が、(a)コロナ放電処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびコロナ放電処理を行う工程であることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
13.前記前処理工程がエッチング処理を含む工程であることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
14.前記前処理工程が、(a)レーザー処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびレーザー処理を行う工程であることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
15.前記前処理工程が、(a)プラズマ処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびプラズマ処理を行う工程であることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
16.前記1〜15の何れかに記載のカラーフィルター用中間品の画素形成部にインクを着色する工程を有することを特徴とするカラーフィルターの作製方法。
17.前記1〜15の何れかに記載のカラーフィルター用中間品の画素形成部にインクジェット方式によりインクを着色する工程を有することを特徴とするカラーフィルターの作製方法。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0040】
本発明では、ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を本発明の処理を経て得られたものをカラーフィルター用中間品と称し、かかる中間品にインクを染着して得られたものをカラーフィルターと称している。
【0041】
本発明に係るカラーフィルター用中間品の作製方法は、ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、ブラックマトリックス部とインクメニスカスとの間の接触角に影響を与え時間と共に該接触角を変化させる表面処理を行うことを特徴とする。
【0042】
即ち、従来、前処理工程のみでは画素周辺の白抜け、表面状態の不均一性、混色の発生という大きな課題があったが、これに対し、本発明は、前処理工程を経て表面処理工程を行うことにより、画素周辺の白抜けが無く、表面状態の均一性が更に向上し、混色の発生を更に防止することができる技術を提案するものである。
【0043】
はじめに、本発明の前処理工程について詳述する。
【0044】
前処理工程としては、洗浄処理を行う工程、超音波処理を行う工程、UVオゾン処理を行う工程、コロナ放電処理を行う工程、エッチング処理を含む工程、レーザー処理を行う工程、プラズマ処理を行う工程等が挙げられる。これらの前処理は単独で行ってもよいし、組み合わせて行ってもよく、順序は任意である。また洗浄処理を行う工程と各前処理工程を組み合わせることも好ましい。
【0045】
洗浄処理とは、通常の純水による洗浄や洗浄剤による洗浄を含む。好ましくは、例えばパーカーコーポレーション社製「洗浄剤PK−LCG23」、「洗浄剤PK−LCG26C」、「洗浄剤CA−05」やライオン社製「サンウォッシュTL−30」やネオス社製「CM−10L」等のアルカリ性洗浄剤等を用いる洗浄を挙げることができる。
【0046】
超音波処理は上記洗浄処理と組み合わせて行うことが好ましい。超音波は物理的な振動波であり、洗浄液及び支持基板を高周波振動させて洗浄効果を高めるものである。市販の超音波発生装置や超音波洗浄機が特に制限なく使用できる。
【0047】
UVオゾン処理とは、UV(紫外線)によってオゾンを発生する装置を用いることにより基板表面の有機物を分解除去する処理である。
【0048】
UV(紫外線)によってオゾンを発生する装置としては例えば、紫外線ランプが挙げられる。かかる紫外線ランプとしては、オゾンを効率良く発生する200nm付近の短波長紫外線を放射できる低圧水銀ランプが好ましい。
【0049】
コロナ放電処理とは、コロナ発生装置を用いて基板表面の撥水剤成分や有機物成分を除去するものである。かかるコロナ発生装置としては、春日電機社製のコロナ放電装置HFSS103などを用いることが出来る。
【0050】
エッチング処理とは、硝子の表面に付着している撥水成分や有機物成分を、硝子の表面を数分子層程度剥離しながら除去するものである。エッチングの方法としてはフッ化水素酸などの酸や強アルカリを用いたウェットエッチングや、反応性イオンエッチングや逆スパッタ等のドライエッチングが好ましく用いられ、その除去の深さは0.05〜0.15μm程度であることが好ましい。
【0051】
レーザー処理とは、アルゴン、YAG等の高エネルギーレーザー光を照射して、基板表面の撥水成分や汚染物を除去する処理であり、コヒレント・ジャパン社、スペクトラ・フィジックス社等から市販されているレーザー光発生装置を用いることが出来る。レーザーを用いると、基板全面を照射処理することもできるが、レーザービームを変調、スキャンしてブラックマトリックスの間隙部のみを表面処理することも可能である。
【0052】
プラズマ処理とは、酸素、アルゴン、四フッ化メタン等を用いたプラズマ発生装置を備えた表面処理装置により、基板表面に付着した汚染物を分解除去する処理であり、ヤマト科学社、盟和商事社、サムコインターナショナル研究所社等から市販されている装置を用いることが出来る。好ましくは、サムコインターナショナル研究所社製の平行平板プラズマ処理装置「PLASMA DRY CLEANER PXシリーズ」を用いる。
【0053】
なお、本発明で、洗浄処理と他の前処理を組み合わせる場合は、洗浄処理後、乾燥させてから他の前処理を行うことが好ましい。この洗浄後の乾燥には、温風を用いても良いが、赤外線乾燥が、乾燥ムラを生じにくく、時間短縮もできて好結果を与える。
【0054】
次に、本発明の表面処理工程について詳述する。
本発明における表面処理とは、化学物質等を溶かして塗布することを含み、他に蒸着、スパッター、グロー放電処理等によって表面に物質を存在させる場合も含まれる。
【0055】
本発明で表面処理に用いられる化学物質は界面活性剤の機能に代表される能力を有する化学物質が好ましく、例えば樹脂の可塑剤として用いられるフタル酸エステル系化合物やリン酸エステル系化合物、界面活性剤等が挙げられる。好ましくは界面活性剤である。
【0056】
本発明で用いる界面活性剤はフッ素系界面活性剤類、アニオン系、カチオン系及びノニオン系活性剤類、ベタイン系活性剤類及びアルキルエーテル類のいずれのタイプでもよく、又低分子のものでも高分子のものでも、異なる種類のものを併用しても良い。
【0057】
好ましい界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤である。以下にその具体例の一部を示す。
【0058】
パーフルオロアルキルカルボン酸及び塩
パーフルオロアルキル燐酸エステル
パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩
パーフルオロアルキルベタイン
パーフルオロアルキルアミンオキシド
パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物
パーフルオロアルキル含有オリゴマー
【0059】
本発明で特に好ましいのは、界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用することである。
【0060】
本発明で活性剤が実質的に溶解しないとは、インク中の不揮発成分を除く全溶媒に対する、活性剤の溶解度が0.1%未満のものをいう。実質的に溶解するとは、インク中の不揮発成分を除く全溶媒に対する、活性剤の溶解度が0.1%以上のものをいう。
【0061】
好ましい組合せの具体例としては、例えばパーフルオロアルキル燐酸エステル型活性剤(インク中の有機溶剤、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに対する溶解度が0.1%未満)とパーフルオロアルキル含有オリゴマー型活性剤(インク中の有機溶剤、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに対する溶解度が0.1%以上)の組み合わせである。
【0062】
本発明において、インクに溶解する活性剤と溶解しない活性剤を併用する場合の使用割合の好ましい範囲は、(溶解する活性剤)/(溶解しない活性剤)=1000/1〜1/1である。より好ましくは、500/1〜5/1であり、この比率が1000を越えると、例えばインク滴の付着直後に、接触角が急低下して、凹部間でインクの混合が起り易く好ましくない。この比率が1未満であると、例えば着滴後、時間が経過しても接触角が低下しにくく、凹部の周辺で色濃度の低下や白抜けが起こり易く好ましくない。
【0063】
本発明の表面処理は、凸部と凹部が形成された支持基板に、前処理を行った後に、従来とは全く考えを逆にしてインクに対する溶解性がある、好ましくはパーフルオロアルキル基を持つ少なくとも1つの界面活性剤などの化学物質を単にガラス基板に例えば塗布するだけで良く、フォトリソグラフィー技術を使用して凸部と凹部を塗り分ける必要が無いという大きな特長を有している。
【0064】
本発明では、凸部と凹部が形成された支持基板に、前処理を行った後に、界面活性剤を、好ましくはインクに対する溶解性が異なる、例えばパーフルオロアルキル基を持つ2種類以上の界面活性剤を単にガラス基板に塗布するだけで良く、フォトリソグラフィー技術を使用して凸部と凹部を塗り分ける必要が無いので、感光性樹脂を塗布したりマスク露光や現像と言った面倒な操作が一切不要となる。
【0065】
即ち、例えばパーフルオロアルキル基と長鎖の親油基を結合した構造を持つ、インク中の有機溶剤に溶解し易い活性剤と、パーフルオロアルキル基と親水基を結合した構造を持つインク中の有機溶剤に溶解し難い活性剤を混合するか、それぞれ個別に支持基板上に塗布するだけで良い。
【0066】
塗布液は、水、アルコール等の溶媒、あるいは必要に応じて種々の溶媒が用いられる。塗布はディップ塗布をはじめとして、回転塗布機等のスピンコート等も好ましく用いられる。
【0067】
ブラックマトリックス部とインクメニスカスとの間の接触角の変化のメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。インク中の有機溶剤に溶解し易い界面活性剤は親油性が強いので、凹部の親水性の強いガラス面より凸部の親油性の強い樹脂面に吸着され易い。一方、インク中の有機溶剤に溶解しにくい界面活性剤は、親水性が強いので凸部より凹部のガラス面に吸着され易い。
【0068】
結果的には活性剤と基板の特性差が発現された形となって、凸部と凹部で特性の異なる活性剤がそれぞれ選択的に吸着される割合が異なり、自発的に表面特性をコントロール出来るのである。これによって従来の面倒なパターニングを行わなくとも凸部は撥インク性が高く、凹部は撥インク性が低くなると考えられる。
【0069】
また、凸部と凹部の境界では、従来法とは異なり、濡れ性が極端に変化しない特徴もある。
【0070】
凹部に吐出したインクが凹部から溢れて凸部に乗り上げても凸部にはインク中の有機溶剤に溶解し易い、疎水性の強い活性剤がパーフルオロアルキル基を表面に配向して吸着しているので、インクの前進接触角が90°近くになりインクを弾くことが出来ると考えられる。
【0071】
しかし、本発明の方法では、ホトリソ法と異なり、凸部の前進接触角が好ましくは90°以上にならないので、インクが凸部を乗り越えることを完全に防ぐことができない様に思われる。
【0072】
しかるに後述する様に、インク滴の移動は後退接触角が大きく関係するので、この時、例えば好ましくは後退接触角が40°以下であれば、前進接触角が 90°未満でも、凸部を越えてインク滴が移動することを防止出来る。
【0073】
考察すると、凸部と凹部の境目では、インクが凸部の側壁で弾かれて濃度低下や白抜けが起こり易いが、経時によりインク中の有機溶剤に溶解し易い活性剤が、凸部側壁からインク中に溶け出して凸部の側壁とインク間の界面張力を低下させるので、凸部と凹部の境で形成されるインクメニスカスの形が、強い凸形から平坦形になり、この部分で色素濃度が低下したり白抜けが出来ることは無いと考えられる。
【0074】
ここで言う経時とは、インク着滴後数分以内に基板に塗布した活性剤がインク中に溶解してインクが濡れ広がれる様5分以内が好ましく、より好ましくは2分以内である。活性剤の溶解に時間がかかると、溶剤が揮発してインク粘度が上昇し、インクが広がりにくくなる傾向がある。
【0075】
ここで言う凸部の前進接触角とは、液滴が外力によって移動する方向に有る凸部側壁とインクメニスカスの間で形成される角度である。一方、凸部の後退接触角とは、液滴が移動する方向の反対側に有る凸部側壁とインクメニスカスの間で形成される角度である。
【0076】
インク付着後数分経過すると凸部の前進接触角が30°以下に下がるので液滴の移動方向の凸部側壁とインクメニスカスの間で形成される角度が強い凸形から平坦形になり、この部分で膜厚が薄くなって色素濃度が低下したり白抜けが出来る事は無いと思われる。
【0077】
凸部の前進接触角が30°以下に低下すると、撥インク性が悪くなり、凸部を乗り越えやすくなるが、この時インク中の溶剤が一部揮発してインク粘度が高くなっているので、インクが凸部を乗り越えることは無いと思われる。
【0078】
又、この時、後退接触角も15°以下に低下しているので、反対側の凸部の側壁とインクメニスカスの間で形成される角度も平坦になり、この部分でも膜厚低下、色濃度低下や白抜けが起こらないと思われる。
【0079】
ブラックマトリックス、即ち、凸部はその高さが約1μm、幅が約10〜20μmと高さが極めて低く幅も狭い。本発明の撥インク処理法はフォトリソ法に比べて極めて簡便な方法のため、凸部にフォトリソ法の様な十分高い撥インク性を与えることが出来ない。本発明では凸部に対するインクの接触角が90°を越えないので、インクの凸部乗り越えや凹部間の移動を十分に防止することが難しい様に見える。しかし、液滴の移動機構を考える必要がある。
【0080】
一般に、外力が働かない時、液滴に働く力は重力と表面張力である。液滴が小さくなると重量の割に表面積が非常に大きくなるので表面張力の影響が圧倒的に大きくなる。
【0081】
従って、例えばインクジェットヘッドから凹部に吐出される超微小液滴の移動に影響する力は、インクの表面張力(σ)だけになる。静止している液滴が、固体表面と成す角度を平衡接触角又は単に接触角θと呼ぶが、液滴が移動を開始すると平衡接触角θが消滅して前進接触角θaと後退接触角θrが現れる。液滴に働く表面張力の大きさは液滴を進める方向にσcosθa、液滴の移動を妨げる方向にσcosθrとなる。前進接触角θaは、まだ液で濡れていない表面に対する接触角であり、後退接触角θrは、既に液体で濡れた表面に対する接触角であるので、常にθa>θrが成立する。
【0082】
液滴に外力が作用して移動を開始し、θaとθrが現れると、その時、液滴には、液滴の移動を妨げる方向にσcosθr−σcosθaの力が働き、これが、液滴の移動を妨げる力となる。前進接触角θaと平衡接触角θは、共にまだ液体で濡れていない表面に対する接触角の為、多くの系でθa≒θが成立する。
【0083】
前進接触角θaと後退接触角θrが共に大きい液滴は、弾かれた液滴が球状になって、固体表面との接触面積が減り、コロコロと転って移動し易く成る。従って、液滴の移動を防ぐには、前進接触角θaが大きく、後退接触角θrが小さい、液滴を形成する系が好ましい。
【0084】
本発明の処理法では、凸部のインクに対する前進接触角を90°以上に出来ないと思われるが、後退接触角を低くすることにより、液滴の移動を妨げることが出来る。前進接触角が90°未満でも、後退接触角が40°以下であれば、着滴直後のインク滴が、凸部乗り越えることを防止出来る。
【0085】
更に、前進、後退接触角は、凸部側壁とインクメニスカスが成す角度に影響を与える。
【0086】
前進及び後退接触角が低いとこの角度が小さくなるので、インクメニスカスの形が平坦になり、色素層の膜厚が均一になる。
【0087】
前進接触角が30°以下、後退接触角が15°以下まで低下すると、メニスカスの形が十分フラットになり凸部と凹部の境界部で色素層の膜厚低下による、色濃度低下や白抜け発生を防止出来る。
【0088】
本発明は、従来得られなかった高品質のカラーフィルターを得ることが出来るものであり、凸部と凹部の関係から本発明の思想の範囲で材料を適宜選択すればよい。選択によっては溶媒が有機溶媒であったり、水系溶媒であったり、インクジェットインクが水系であったり油系であったりすることができ、それによって接触角に影響を与える物質、界面活性剤を選択すればよい。これは言うまでもなく、支持基板を有機高分子材料や、PETやTACのフィルムに変えても当然のことである。何れにしろ、本発明の技術思想はインクジェットによるカラーフィルター作製において、画素を形成すべきインクが着滴後から時間の経過により、凸部への濡れ性を制御してインクが広がるよう工夫したところにあり、しかも前処理との組合せで白ヌケ等の問題を解決する。
【0089】
本発明において、凸部に対する接触角に関する請求項に記載の発明を実現する上では、界面活性剤による処理に限定されず、他の方法を採りうる。
【0090】
更に、本発明はインクのブラックマトリックス(凸部)に対する接触角がインク付着後の経過時間と共に低下するような表面処理において、効果を発揮することも判っている。即ちブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、該カラーフィルター用支持基板の該ブラックマトリックス部に対するインクの前進接触角が、インク付着直後はインクの付着すべき画素形成部の該支持基板表面に対する前進接触角よりも大であって、時間経過と共に低下し、インク付着後2分以内に該画素部の支持基板に対するインクの前進接触角より10°大きい値以下の値まで低下するように処理する表面処理工程を経ることにより良好な結果が得られる。さらに驚くべきことには、その低下した値がインクの凹部に対する接触角を下回る方がより好ましい結果をもたらすことが多いのである。このようなより好ましい結果は、前処理単独では得られない効果である。
【0091】
すなわち、従来技術では凸部を撥インク処理してインク液の接触角を凹部に比べて極めて大きくすることによりインクが付着しにくくすることが推奨されており、インク付着後もその状態を保っているため、凹部周辺(凸部の際)にインクが不足しがちで均一に充填されないことが多かった。
【0092】
本発明ではこの点が大幅に改良され、インク付着後の時間と共にインクが凸部の特に側壁にぬれ易くなってなじむために、インクの平坦化が進み、白抜けのない均一なインク層が得られる。
【0093】
このときインクの凸部に対する接触角は、凹部に対する接触角より10°大きい値より小さくなれば良く、インクや使用する界面活性剤の種類によっては凹部に対する接触角よりも小さくなるような条件をあえて選択することによって更に好結果を与える場合もあることも確認された。このような接触角の逆転が有効であるという事実は予想外の発見であり、従来技術では全く考えられていなかっ た。
【0094】
本発明において活性剤による表面処理を施した後、加熱処理により活性剤を安定化することが好ましい。
【0095】
加熱処理では、オーブン、ホットプレート、クリーンオーブン、ブロックヒーター、電気温風器等の他、通常の恒温器、恒温槽等の手段を採用できるが、特に限定されない。
【0096】
加熱温度は100℃以上300℃以下の範囲であり、100℃未満では、加熱の効果が現れず、300℃を越えるとブラックマトリックス素材の変質等の悪影響を与えることがあり、好ましくない。
【0097】
加熱時間は、2分間以上60分間以下の範囲が好ましく、より好ましくは2分間以上20分間以下である。
【0098】
更に、カラーフィルターには、必要に応じて保護層を設けることが出来る。かかる保護層としては、光や熱などのエネルギー線硬化タイプの樹脂材料、蒸着やスパッタなどによって形成された無機膜などを用いることができ、カラーフィルタとして影響を与えないような透明性を有し、その後のITO形成プロセスや配向膜形成プロセスなどに耐えうるものであれば使用可能である。
【0099】
かかる保護層を塗布する場合、従来の方法では、凸部の接触角が90°を越えるのでこれを取り除かないと弾いて塗布できない。本発明では、接触角が90°以下なので取り除かなくとも塗布直後に弾くことは無い。更に、経時により接触角が低下して保護膜表面がレベリングするので表面が更に平滑となる。
【0100】
本発明に使用する支持基板には、ブラックマトリックスが樹脂である場合、無アルカリ硝子等のガラス基板が好ましいが、これに限定されず、ブラックマトリックスの材質によってはTAC(トリアセテートセルロースフィルム)、PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)、アクリル等の樹脂基板も使用することが出来る。フレキシブルな基板を用いる場合は、軽量で曲面である表示装置に適して好ましく用いられ、ガラス基板は寸度安定性が優れ好ましい。
【0101】
本発明において、ブラックマトリックスは、例えばカーボンブラックを含有する樹脂で形成されることが好ましく、樹脂としては、ネガ型もしくはポジ型の公知の感光性樹脂が好ましい。例えば、光架橋系感光性樹脂組成物、光重合系感光性樹脂組成物、ジアゾ化合物を含む感光性組成物、O−キノンジアジド化合物を含む感光性組成物等が挙げられる。バインダー樹脂は環化ゴム、ポリ(メタ)アクリレート、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリビニル樹脂等の各種ビニル系共重合樹脂、アクリル系共重合樹脂、等が挙げられる。
【0102】
本発明のカラーフィルターの作製方法は、上記の方法によって作製されたカラフィルター中間品にインクを染着させる方法であり、かかる方法に適用されるインクの染着方法としては、例えばインクジェット方式が挙げられる。
【0103】
本発明のインクに使用する溶媒は有機溶媒が好ましく、中でもイミダゾリジノン誘導体、多価アルコール誘導体、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のジエチレングリコール誘導体又はエチレングリコール誘導体等の有機溶剤が好ましい。
【0104】
得られたカラーフィルターの用途は任意である。例えば、カラー液晶ディスプレイ、カラービデオカメラ、イメージスキャナー、パーソナルコンピューター等に使用されている画像表示装置、あるいはCCDデバイス等に使用された画像入力装置(撮像装置を含む)に適用した場合に、極めて優れた画像を得ることができ、また、カラーフィルターに起因する画像欠陥が無く、総合的画像として優れ、また装置としても優れている。
【0105】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0106】
実施例1
厚さ1mmの無アルカリ硝子板に、ネガ型の感光性樹脂((株)東京応化、OMR83)にカーボンブラックを混合して、厚さ1μmになるようにスピンコートする。所定のマスクでパターン露光後現像してブラックマトリックスを形成する。次いで100℃で30分間加熱硬化させ、凸部と凹部とを有する支持基板を作る。
【0107】
この基板を、パーカーコーポレーション社製「CA−05洗浄剤」の3%水溶液で超音波洗浄併用で5分間洗浄、純水でリンスをした上で乾燥する。
【0108】
次いで、使用するインク(主溶剤はジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)に実質的に溶解する界面活性剤1および実質的に溶解しない活性剤2をそれぞれ0.3%と0.002%になるようにエタノールに溶解した混合溶液を凸部、凹部の区別無く全面にスピンコートする。活性剤1は旭硝子社製「サーフロンS−381」、活性剤2は同社製「サーフロンS−112」である。この基板はコーター上で同時に乾燥を終了している。200℃で10分間加熱処理を施し室温まで冷却して塗布した活性剤を安定化させる。以上のようにしてカラーフィルター中間品を得た。
【0109】
次いで、上記の中間品に、ピエゾットを有するインクジェットプリンタを使用して、80×240μmの各画素にRed、Blue、Greenの溶剤系顔料インク(9cp,31dyne/cm)を各画素当たり、20滴(9ピコリットル/滴)の割合で所定位置にそれぞれ吐出染着し、加熱乾燥後紫外線硬化させて3色フィルタを形成する。
【0110】
実施例2
実施例1で用いた感光性樹脂の代わりにカーボンブラック含有のレジスト材(新日鐵化学社製「V−259 BK739P」)を1.2μmの膜厚でスピンコートし、90℃で3分間加熱処理して仮硬化させる。所定のマスクでパターン露光および現像を行いブラックマトリックスを形成、200℃で45分間加熱処理して本硬化させる。
【0111】
これをパーカーコーポレーション社製「PK−LCG23洗浄剤」の5%水溶液で10分間洗浄し、さらに純水でリンスして乾燥する。活性剤1として旭硝子社製「SC−101」を0.05%、活性剤2として旭硝子社製「S−111」を0.002%の濃度で酢酸エチルに溶解した混合液をスピンコートし、同時に乾燥させる。220℃で5分間加熱処理して塗布した活性剤を安定化させる。以上のようにしてカラーフィルター用中間品を得た。
【0112】
このカラーフィルター用中間品を用いて、実施例1と同様にインクジェットで3色インクを吐出染着し、カラーフィルターを得る。
【0113】
実施例3
パーカーコーポレーション社製「CA−05洗浄剤」による洗浄に代えて、紫外線オゾン(UVオゾン)洗浄を実施する他は実施例1と全く同じ手順でカラーフィルタ用中間品を得る。
【0114】
このときのUVオゾン洗浄は、1200Wの低圧水銀灯を用いて照度20mW/cm2、露光量1200mJ/cm2の条件で実施した。
【0115】
実施例4
「PK−LCG23洗浄剤」による洗浄に代えて、UVオゾン洗浄を実施する他は実施例2と全く同一の手順でカラーフィルター用中間品及びカラーフィルターを得る。UVオゾン洗浄条件は実施例3と同様の条件で実施した。
【0116】
比較例1
実施例1と同様にブラックマトリックス付き支持基板を作製し、同様に「CA−05洗浄剤」による洗浄を施す。
【0117】
この基板には本発明の活性剤による表面処理は施さず、そのまま実施例1と同様にインクジェットによる吐出染着を実施してカラーフィルターを得る。
【0118】
比較例2
実施例2と同様に、ブラックマトリックス付き支持基板を作製し、実施例3の条件によりUVオゾン処理を施す。
【0119】
この基板には本発明の活性剤による表面処理は施さず、そのまま実施例1と同様にインクジェットによる吐出染着を実施してカラーフィルターを得る。
【0120】
評価
以上の各実施例、比較例で得られたカラーフィルターの品質を以下の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0121】
(画素内の均一性の測定)
各カラーフィルターを画素内の均一性について高輝度の光源とレンズ系を組み合わせた拡大投影評価装置を用いて以下の基準で評価した。
【0122】
評価基準
◎:極めてなめらか
○:なめらか
△:一部に弱いインクハジキと濃度ムラ目立つ
×: 一部にインクハジキと強い濃度ムラあり
【0123】
(画素周辺の白抜けの程度の測定)
各カラーフィルターを画素周辺の白抜けについて高輝度の光源とレンズ系を組み合わせた拡大投影評価装置を用いて以下の評価基準で評価した。
【0124】
評価基準
◎:白抜け無し
○:白抜けがほとんど無し
△:白抜けあり
×:強い白抜け
【0125】
(画素欠陥の密度の測定)
前記の拡大投影評価装置及び50倍ルーペによる目視評価により、一定面積内における、画素間の混色数、部分的なハジキによる欠陥数、強度の白抜け個数、その他塵埃による欠陥も含めて総欠陥数をカウントし、計測した面積で除すことにより密度を求めた。
【0126】
【表1】
Figure 0004061810
【0127】
表1の結果から、アルカリ洗浄剤による洗浄やUV洗浄だけでは品質の高いカラーフィルターは得られない。特に、撥インク性の強いブラックマトリックスの際にはインクの充填されにくい部分が残り、インクが薄くなるいわゆる白抜けが強く発生することは防ぎ得ない。
【0128】
時間と共にインクのブラックマトリックスに対する接触角が低下する表面処理と前処理を組み合わせた本発明によれば、非常に品質の高いカラーフィルターが作製出来る。
【0129】
実施例5
実施例2において、前処理である洗浄処理を以下の前処理▲1▼〜▲7▼のように代えた以外は同様にしてカラーフィルター中間品、及びカラーフィルターを作製し、同様に評価したところ、実施例2と同様の効果が得られた。
前処理▲1▼:レーザー処理:コヒレント・ジャパン社製のレーザー発生機を使用した。
前処理▲2▼:実施例2の洗浄処理と上記前処理▲1▼のレーザー処理を併用した。
前処理▲3▼:コロナ放電処理:春日電機社製「コロナ放電装置HFSS103」を使用した。
前処理▲4▼:実施例2の洗浄処理と前処理▲3▼のコロナ放電処理を併用した。
前処理▲5▼:10規定の水酸化ナトリウム溶液により5分間のエッチング処理を施した。
前処理▲6▼:プラズマ処理:サムコインターナショナル研究所社製「平行平板型プラズマ処理装置 PLASMA DRY CLEANER PX−1000」を使用した。
前処理▲7▼:実施例2の洗浄処理と前処理▲6▼のプラズマ処理を併用した。
【0130】
【発明の効果】
本発明によれば、時間と共にインクのブラックマトリックスに対する接触角が低下する表面処理と前処理を組み合わせることにより、画素周辺の白抜けが無く、表面状態の均一性が更に向上し、混色の発生を更に防止され、高品質のカラーフィルターが得られ、例えば、カラー液晶ディスプレイ、カラービデオカメラ、イメージスキャナー、パーソナルコンピューター等に使用されている画像表示装置、あるいはCCDデバイス等に使用された画像入力装置(撮像装置を含む)に適用した場合に、極めて優れた画像を得ることができ、また、カラーフィルターに起因する画像欠陥が無く、総合的画像として優れ、また装置としても優れている。

Claims (17)

  1. ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、ブラックマトリックス部とインクメニスカスとの間の接触角に影響を与え時間と共に該接触角を変化させる表面処理を行うカラーフィルター用中間品の作製方法であって、
    前記表面処理は、表面処理に用いる界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用し、カラーフィルター用支持基板の全面を表面処理することを特徴とするカラーフィルター用中間品の作製方法。
  2. 前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が1000:1〜1:1の範囲になるように処理することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  3. 前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が500:1〜5:1の範囲になるように処理することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  4. 前記ブラックマトリックス部が樹脂であり、前記画素形成部がガラスであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  5. ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、該カラーフィルター用支持基板のブラックマトリックス部に対するインクの接触角が、インク滴の付着直後(付着、30秒後)前進接触角が90°以下、後退接触角が40°以下であり、インク滴付着後、経時(常温、常圧、2分後)で、前進接触角が30°以下、後退接触角が15°以下に低下するように処理する表面処理工程を経るカラーフィルター用中間品の作製方法であって、
    前記表面処理工程は、表面処理に用いる界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用し、カラーフィルター用支持基板の全面を表面処理することを特徴とするカラーフィルター用中間品の作製方法。
  6. ブラックマトリックス部と画素形成部を持つカラーフィルター用支持基板を前処理する前処理工程を経た後、該カラーフィルター用支持基板の該ブラックマトリックス部に対するインクの前進接触角が、インク付着直後はインクの付着すべき画素形成部の該支持基板表面に対する前進接触角よりも大であって、時間経過と共に低下し、インク付着後2分以内に該画素部の支持基板に対するインクの前進接触角より10°大きい値以下の値まで低下するように処理する表面処理工程を経るカラーフィルター用中間品の作製方法であって、
    前記表面処理工程は、表面処理に用いる界面活性剤としてインクに実質的に溶解する界面活性剤及び実質的に溶解しない界面活性剤を併用し、カラーフィルター用支持基板の全面を表面処理することを特徴とするカラーフィルター用中間品の作製方法。
  7. 前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が1000:1〜1:1の範囲になるように処理することを特徴とする請求項5又は6に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  8. 前記実質的に溶解する界面活性剤と前記実質的に溶解しない界面活性剤の使用割合が500:1〜5:1の範囲になるように処理することを特徴とする請求項5又は6に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  9. 前記ブラックマトリックス部が樹脂であり、前記画素形成部がガラスであることを特徴とする請求項5乃至8の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  10. 前記前処理工程が、(a)洗浄処理を行う工程又は(b)洗浄処理及び超音波処理を行う工程であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  11. 前記前処理工程が、(a)UVオゾン処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびUVオゾン処理を行う工程であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  12. 前記前処理工程が、(a)コロナ放電処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびコロナ放電処理を行う工程であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  13. 前記前処理工程がエッチング処理を含む工程であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  14. 前記前処理工程が、(a)レーザー処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびレーザー処理を行う工程であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  15. 前記前処理工程が、(a)プラズマ処理を行う工程又は(b)洗浄処理およびプラズマ処理を行う工程であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のカラーフィルター用中間品の作製方法。
  16. 請求項1〜15の何れかに記載のカラーフィルター用中間品の画素形成部にインクを着色する工程を有することを特徴とするカラーフィルターの作製方法。
  17. 請求項1〜15の何れかに記載のカラーフィルター用中間品の画素形成部にインクジェット方式によりインクを着色する工程を有することを特徴とするカラーフィルターの作製方法。
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