JP4060950B2 - 化粧材の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は表面にコーティング層を有する化粧材の製造法に関するものであり、さらに詳しくは、化粧材の表面に液状の樹脂組成物を用いてコーティング層を設けるに際し、樹脂組成物の基材への含浸を防止しつつコーティングを行ない、樹脂組成物を表面に充分残存させ、表面に有効なコーティングを施す事により、表面性状の優れた化粧材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙、不織布、木材等の繊維質の素材やその他、多孔性の素材からなる化粧材基材上に、樹脂組成物を用いてコーティング層を設ける際には、その樹脂組成物が化粧材基材に浸透して行くために、表面に残存する樹脂組成物の量が少なくなる結果、表面の物理的性能、及び化学的な性能が充分発揮されない事が多かった。
【0003】
この点を解消する目的で、幾つかの試みがなされているが、つぎに挙げるような理由により、未だ不充分である。まず、(1)化粧材基材に樹脂を予め含浸した、例えば含浸紙や、樹脂分を含んで作られる紙間強化紙を用いれば、樹脂組成物を用いてコーティング層を設ける際の樹脂組成物の浸透は抑制されるものの、コーティング層形成用の樹脂組成物以外にも化粧材基材内に別途の樹脂を必要とし、工程も増える。(2)化粧材基材の表面に、樹脂組成物を用いてコーティング層を設けるのに先立ち、シーラー層と称する上塗り用樹脂組成物の浸透を防止する層を設ける方法もあるが、やはり、工程的にも、材料的にも増えることになり、また、シーラー層形成用の樹脂組成物には、価格の高い硬化型の樹脂を使う事が多く、コストの上昇を招く。(3)適用する樹脂組成物のコーティング量を化粧材基材への浸透を見込んで増やすことも考えられるが、材料を多く使用せざるを得ず、また化粧材基材の密度のムラにより、コーティングのムラを生じやすく、外観上のムラを生じやすい。(4)化粧材基材への適用を1回ではなく何回かに分けて行ない、浸透を少なくすることも考えられるが、前記の(3)と同様に材料を多く使用し、かつムラを生じやすい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、化粧材基材に液状の樹脂組成物を適用するに際し、適用する樹脂組成物の量を増やさず、工程的にも従前の工程を改善することにより、容易に実施でき、基材への浸透が抑制できて、表面性状のすぐれた化粧材を提供することの可能な方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、含浸性を有する繊維質の化粧材基材に液状の樹脂組成物を用いて表面保護層を設ける際に、巻取状の化粧材基材を巻き出して化粧材基材の含浸性を一時的に抑制する量の水を含浸させ、次に、前記樹脂組成物を適用し、その後、前記化粧材基材に含浸させた水を乾燥させた後、巻き取ることにより、上記の課題を解決した。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、液状樹脂組成物の適用可能な化粧材基材は、次のような含浸性を有するものである。大別すれば、各種の紙類、不織布、若しくは織布には勿論適用できるが、プラスチックのフィルム、又はプラスチックのシートであっても、多孔質であるか、充填材を多く含むものは含浸性を有するので、適用可能である。繊維強化プラチスチックの板等も液状樹脂組成物の含浸性を有するので、適用可能である。木質系基材は、含浸性を有するので、やはり適用可能であり、木材の板、合板、パーチクルボード、又はMDFと呼ばれる中密度繊維板等が挙げられる。このほか、紙同士等の同じグループ同士の複合体にも適用できる。また、金属を繊維状に加工したスチールウールのようなものにも適用できる。
【0007】
各種の紙類としては、以下のものが代表的なものとして例示される。即ち、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙等である。予め紙間の強化の目的で樹脂を含侵してある樹脂含浸紙も含浸性を有するので使用できる。これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙にも適用できる。紙の表面に充填材を多く含む塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い一群の原反も適用可能なものとして挙げられる。更には、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられる次の紙類にも適用可能である。即ち、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等である。又、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ、次のような各種繊維の織布や不織布も化粧材基材として利用できる。各種繊維とは即ち、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成繊維である。
【0008】
多孔質であるか、充填材を多く含むプラスチックのフィルム、又はプラスチックシートを構成するプラスチックとしては、次に例示するような各種のものが挙げられる。即ち、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等である。
【0009】
これらの他、石膏ボード、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、焼成タイル等も表面塗装や釉薬がかかっていなければ、適用可能な素材である
【0010】
化粧材基材には、グラビア印刷等の印刷による適宜な模様の付与、エンボス等の任意の加工を施してあってもよい。
【0011】
水を化粧材基材に含浸させるには、スプレイコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、カーテンフローコーティング法等、通常、塗料等をコーティングする方法が利用でき、適宜な手段でドクタリングすることにより、過剰な水を取り除き、適正な量の水を与えることができる。水を含浸させる量は、液状の樹脂組成物を用いて表面保護層を設ける際に支障が無いよう、化粧材基材の空隙率にもよるが、化粧材基材の表面の1m×1mあたりで0.5〜20g程度とすることが好ましい。水を含浸させる際に、後の液状の樹脂組成物を適用する側と同じ側から行なうか否かであるが、含浸させるべき水の量や化粧材基材の性質にもよっても異なるが、液状の樹脂組成物を適用する側の表面近傍を、水が含浸されていないか含浸度合いの少ない状態にしたいときは、液状の樹脂組成物を適用する側とは反対の側から含浸するとよい。
【0012】
化粧材基材に水を含浸した場合には、水自身の粘度が低く、化粧材基材中に安定に保持できないため、速やかに、望ましくは含浸直後に、次の工程である、液状の樹脂組成物の適用を行なう。図1、図2はいずれも、本発明の方法及び装置の概略を示す図である。
【0013】
図1において示す方法では、給紙スタンド1より巻き出された基材2に、まずスプレイ装置31により水の噴霧を行なう。噴霧後、直ちにロールコーター4により液状の樹脂組成物を塗布し、続く乾燥ゾーン5において熱乾燥した後、排紙スタンド6で巻き取る。この例では、化粧材基材の裏面から水を適用し、表面から液状の樹脂組成物をコーティングしている。水の噴霧以降の工程では、水が含浸されたまま化粧材基材が走行するので、水により腐食しないステンレス等の素材で装置を構成する必要がある。熱乾燥により水を除去するため、100℃以上であることが好ましい。
【0014】
図2において示す方法では、スプレイ装置31に替えて、ロールコーター32による水の塗布を行ない、コーティング直後にスムージングロール33を用いて、過剰な水分の規制をおこなっている。また、乾燥ゾーン5により加熱した温風で乾燥を施し、その後、電子線照射装置7により照射を行なう。
【0015】
液状の樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、あるいは電離放射線硬化性樹脂組成物等が用いられ、いずれでもよいが、表面の物理的、若しくは化学的な性状を向上させるためには、熱硬化性樹脂組成物か又は、電離放射線硬化性樹脂組成物が適している。熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物を用いる場合は、塗布後、乾燥させ、熱硬化性樹脂組成物を用いた場合には、望ましくは加温して養生させる。電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた場合には、紫外線又は電子線を照射して架橋もしくは重合させ、硬化させる。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
平方m当りの坪量50gの一般紙(天間特殊製紙(株)製、テンマOPA、)に対し、グラビア用インキ(ザ・インクテック(株)製、HAT、ニトロセルース樹脂およびアクリル樹脂がバインダー)を使用してベタ印刷及び模様印刷を行った。続いて、図1に示したような噴霧装置で水を平方メートル辺り、15g含浸させた噴霧装置で水を平方メートル当たり15g含浸させた。次にグラビアロールを用い、OPインキ(ザ・インクテック(株)製、KR90、ポリウレタン樹脂系)を1平方m当たり5gの割合でコーティングし、100〜110℃に設定された乾燥ゾーンで乾燥し、巻き取った。
(比較例1)
噴霧の工程を省いた以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例2)
噴霧の工程を省き、予め樹脂を含浸して販売されている「含浸紙」(興人製、GF601、1平方メートルあたりの樹脂及び紙の樹脂量合計)を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0017】
(実施例2)
図2に示したような方式で、水をロールコーティングし、コーティング直後に電子線硬化性樹脂を含有する塗料(ザ・インクテック(株)、EB40、エポキシアクリレート系)を用いてロールコーティングする以外は実施例1と同様に行なった。
(比較例3)
水をロールコーティングする工程を省き、その他については実施例2と同様に行なった。
(比較例4)
予め樹脂を含浸して販売されている「含浸紙」(興人製、GF601、1平方m当りの樹脂及び紙の樹脂量合計で60g)を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0018】
(評価)
実施例、比較例で得られた化粧シートの評価法を説明する。
耐摩耗試験について
JAS特殊合板 耐摩C試験に準じる。摩耗終点による判断
耐汚染性
JAS特殊合板 汚染A試験に準じる。青インキのみの判定
引っ張り試験
実施例、比較例で得られた化粧シートをポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン型接着剤で基材のパーティクルボードに貼って評価。
JAS特殊合板 平面引っ張り試験に準じる。
【0019】
【表1】
Figure 0004060950
【0020】
(評価結果)
実施例1、実施例2のものは表面の外観、耐摩耗性、耐汚染性、平面引っ張り試験の結果も良好であった。比較例1、比較例3のものは基材への浸透が多いため、表面の外観が良くなく、耐汚染性も不充分であった。比較例2、比較例4のものは基材への浸透は少ないため、表面の外観は良好であるが、パーチクルボードと貼る際に接着剤が浸透しにくいため、接着強度が不充分であった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、化粧材基材に液状の樹脂組成物を適用するに際し、不必要な浸透を防止することができて、液状の樹脂組成物の使用量を最低限にすることができ、しかも表面性状を充分に確保することができる。また、本発明の方法は、通常のラインに水の適用のための装置を追加するのみで、たやすく行なえる利点がある。
【0022】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を概略的に示す図である。
【図2】本発明の方法を概略的に示す図である。
【符号の説明】
1 給紙スタンド
2 基材
31 スプレイ装置
32 ロールコーター
33 スムージングロール
4 ロールコーター
5 乾燥ゾーン
6 排紙スタンド
7 電子線照射装置

Claims (2)

  1. 含浸性を有する繊維質の化粧材基材に液状の樹脂組成物を用いて表面保護層を設ける際に、巻取状の化粧材基材を巻き出して化粧材基材の含浸性を一時的に抑制する量の水を含浸させ、次に、前記樹脂組成物を適用し、その後、前記化粧材基材に含浸させた水を乾燥させた後、巻き取ることを特徴とする化粧材の製造法。
  2. 前記樹脂組成物に電離放射線硬化性樹脂組成物を適用し、前記化粧材基材に含浸させた水を乾燥させた後に、紫外線又は電子線を照射して架橋もしくは重合させ、硬化させることを特徴とする請求項1に記載の化粧材の製造方法。
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