JP4060160B2 - メタクリル系人工大理石の製造方法 - Google Patents

メタクリル系人工大理石の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアクリル系人工大理石の製造方法に関し、特に無機粉末を充填したスラリーの注型重合により製造される外観欠点のないアクリル系人工大理石の製造方法およびそれにより得られる人工大理石に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル系人工大理石は、キッチン天板や各種カウンタートップ、洗面化粧台、シャワートレー、防水パン、床材、壁材、間仕切り板等に使用されている。これらのものは製法により、アクリル系熱可塑性樹脂を溶解させたアクリル系不飽和単量体からなるシラップを無機粉末に含浸させた流動性のないプリミックスをプレス成形すると同時に加熱して重合硬化させる成形品と、アクリル系不飽和単量体に無機粉末を充填したスラリーの注型重合成形品とに大別され、いずれの製法によるものも、意匠性、耐熱性、耐汚染性、強度等に優れていることから、破砕粒子を添加して花崗岩様などの石目模様等を現出させるなどして広い用途に用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
これらの製法のうち、アクリル系不飽和単量体に無機粉末や破砕粒子を充填したスラリーの注型重合による板状物の成形の場合、型にスラリーの注入を行う際、型内で速い流速でスラリーが注入された領域に破砕粒子が集中するいわゆるシグマ(Σ)効果によって、破砕粒子が人工大理石表面となる型との界面近傍に露出せずに板厚方向の中央に集中したり、注入口側と注入口の反対側とで無機粉末あるいは破砕粒子の存在密度が変わる濃淡斑と称する現象や、破砕粒子が部分的に存在しない領域が生じる現象(「粒抜け」と称することがある)が発生する問題を有していた。特に型面を水平に保持した型を用いて注型重合を行う方法では、注入後に硬化前のスラリー中で無機粉末が沈降し、得られた板の表層に無機粉末の少ないスキン層ができ、成形表面と切断面あるいは研磨面等で外観が異なり、キッチン天板用等でL字形に接合する際に不都合が生じる等の問題を有していた。これに対して、単にスラリーの粘度を高くして無機粉末の沈降を防止する方法が考えられる。しかし、この方法は水平に置いた盆のような型へスラリーを延伸し、重合硬化して下面のみが使用可能面となる製品を得る場合には問題ないが、両面が使用可能となるアクリル人工大理石の場合は、互いに向き合わせた2枚の型面間へスラリーを注入に長時間を要することになり、工業的には採用し難い。
【0004】
【特許文献1】
特表平4−504402号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無機粉末を含有したスラリーを注入して注型重合を行う際、濃淡斑、コントラスト不良等の欠点がなく、外観の均一であり、特に表裏両面とも使用可能なアクリル系人工大理石の得られる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(i)メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)20〜80質量%および
(ii)平均粒子径0.1〜100μmの無機粉末(II)80〜20質量%
からなる組成物100質量部に対し;
(iii)粒径0.1〜8mmの人工大理石破砕粒子(III)を0〜40質量部;
(iv)メタクリル酸メチル系重合体からなる最外層を有し、かつ内部に少なくとも1層のゴム質重合体層を有する平均粒子径0.05〜0.5μmの多層構造重合体粒子(A)を40質量%以上の割合で含む重合体粒子(IV)を0.5〜10質量部;並びに
(v)1次粒子径1〜10μmの雲母微細粒子(V)を0.01〜0.5質量部;
を含有する、粘度0.1〜20Pa・sのスラリーを注型重合することを特徴とするアクリル系人工大理石の製造方法に関する。
【0007】
また、本発明は、上記の製造方法により得られるアクリル系人工大理石に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル系人工大理石の製造方法に用いるスラリーには、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)を含有する。メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体とは、メタクリル酸メチルを50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上含有し、他の不飽和単量体を含有していてもよい不飽和単量体または不飽和単量体混合物をいう。不飽和単量体(I)中のメタクリル酸メチルの割合が50質量%以上であると、得られるアクリル系人工大理石が耐候性や高級感に優れたものとなる。
【0009】
メタクリル酸メチルと併用することのできる他の不飽和単量体は、メタクリル酸メチルと共重合し得るものであれば特に制限はない。そのようなものの具体例としては、1分子中の炭素原子数が1〜18の一価アルコールまたは一価フェノールとアクリル酸とのエステル、1分子中の炭素原子数が2〜18の一価アルコールまたは一価フェノールとメタクリル酸とのエステル、1分子中の炭素原子数が2〜4の二価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン、エチレン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ブタジエン、イソプレン、グリシジル(メタ)アクリレート等の一官能性不飽和単量体;(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、テトラメチロールメタン、ジメチロールエタン、トリメチロールエタン、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとの多価エステル、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性不飽和単量体;等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。なお、メタクリル酸メチルと併用する他の不飽和単量体は、2種類以上の混合物であることも可能である。
【0010】
中でも不飽和単量体(I)には、得られるアクリル系人工大理石の耐熱性、耐汚染性等を向上させるために多官能性不飽和単量体を併用することが望ましい。多官能性不飽和単量体の種類としては、上述のものを使用し得るが、とりわけエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が好ましい。多官能性不飽和単量体の含有量は、不飽和単量体(I)の0.05〜5質量%であるのが好ましく、0.1〜4質量%であるのがより好ましい。多官能性不飽和単量体の含有量が0.05質量%以上であると、得られるアクリル系人工大理石の耐熱性、耐汚染性等が向上され、一方5質量%以下であると、加工時の曲げ抵抗が適度になり曲げ加工性が向上する。
【0011】
不飽和単量体(I)には、スラリーの粘度の調節のため、得られるアクリル系人工大理石に外観上の問題を発生しない限りにおいて、メタクリル酸メチルを主体とする単量体から形成される重合体を混合してもよい。従って、本発明における不飽和単量体(I)には、その一部を重合体として溶解含有するシラップも包含される。混合させる重合体は、必ずしも1種類の重合体である必要はなく、アクリル系人工大理石の特性を損なわない範囲において、組成あるいは分子量分布を異にする複数の種類の重合体のブレンド物であってもよい。
【0012】
本発明で使用する無機粉末(II)は、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)に不溶で、その重合硬化を阻害しないものであれば特に制限はなく、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、タルク、クレー等の粉末を使用することができる。中でも得られるアクリル系人工大理石に高級感を与えるものであるために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シリカが好ましく用いられ、水酸化アルミニウムがより好ましく用いられる。これらの無機粉末(II)は2種類以上を併用することも可能である。
【0013】
無機粉末(II)の平均粒子径は0.1〜100μmであり、0.5〜50μmであるのが好ましく、1〜30μmであるのがより好ましい。平均粒子径が100μmを超えると、得られるアクリル系人工大理石に不明瞭で微細な斑点が現れて美観を損ねることがあり、また平均粒子径が0.1μm未満であると、コストや充填量の制約を受ける。
【0014】
無機粉末(II)の充填量は、アクリル系人工大理石に要求される性能等によって定まるものであるが、不飽和単量体(I)と無機粉末(II)との総量を基準にして80〜20質量%であり、好ましくは70〜40質量%である。無機粉末(II)の充填量が20質量%未満であると、得られるアクリル系人工大理石の耐熱性、硬度等が低下し、また大理石様の外観を呈さなくなる。一方、充填量が80質量%を超えると、スラリー化できずに充填が困難となり、得られる人工大理石の強度等も低下する。
【0015】
本発明に用いる人工大理石破砕粒子(III)は、得られる人工大理石に花崗岩様などの石目模様等を付与する作用を有する。人工大理石破砕粒子(III)の原料となる人工大理石は特に制限されないが、通常のアクリル系人工大理石と同じ成分からなり、色または透明度の異なるものであるのが好ましく、これにより、人工大理石破砕粒子(III)は、スラリー中でその周囲のマトリックス成分との比重差を小さくして沈降を防止することができ、かつ得られる人工大理石においてマトリックス相との接着性や成形品の力学的強度を優れたものとすることができる。
【0016】
上記の好ましい人工大理石破砕粒子(III)の製造は、例えば、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体またはその部分重合シラップ20〜80質量%および無機粉末80〜20質量%からなる組成物をラジカル重合開始剤などにより重合硬化させ、該重合硬化物を破砕することにより得ることができる。また部分重合シラップの代りに、あるいはそれと併用して本発明で用いる重合体粒子(IV)を使用することも可能である。人工大理石破砕粒子(III)用の重合硬化物の製造には、得られる人工大理石に現出させる模様の意匠性のために、着色剤を用いることができる。着色剤の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウム、硫化亜鉛、カーボンブラック、弁柄、カドミウム赤、コバルト青、コバルト紫、黄色鉛等の無機顔料;アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、フタロシアニン系等の有機顔料;またはこれらを含有する着色ペーストなどの1種または2種以上を用いることができ、配合量としては人工大理石破砕粒子(III)用の重合硬化物100質量部に対し5質量部以下であるのが好ましい。
【0017】
重合硬化物を破砕して人工大理石破砕粒子(III)を得る方法は、公知の方法、例えば、ボールミル、ロールミル、ハンマーミル、ジェットミル、ピンミル、ブレーキクラッシャー、ロールクラッシャー等の方法があり、これらの破砕方法と篩がけなどの公知の分級方法とを組み合わせて使うことも可能である。人工大理石破砕粒子(III)の粒径は、得られる人工大理石に天然石調の外観を付与するために0.1〜8mmであり、0.1〜6mmであるのが好ましく、0.1〜4mmであるのがより好ましい。
【0018】
人工大理石破砕粒子(III)の配合量は不飽和単量体(I)および無機粉末(II)からなる組成物100質量部に対し0〜40質量部であり、1〜36質量部であるのが好ましく、2〜32質量部であるのがより好ましい。配合量が40質量部を超えるとスラリーの粘度が高くなって操作性が悪化し、コストアップになるので好ましくない。
【0019】
本発明に用いるスラリーには、メタクリル酸メチル系重合体からなる最外層を有し、かつ内部に少なくとも1層のゴム質重合体層を有する多層構造重合体粒子(A)を含む重合体粒子(IV)を含有する。重合体粒子(IV)に含有される多層構造重合体粒子(A)は、スラリーに揺変性を発現させて、スラリーが型に注入される流動中にはスラリーの粘度を低下させ、かつ流動挙動をニュートン流動からピストン流動に近いものに変化させる。一方、注入作業が終了して型の中でのスラリーの流動が停止した後は、スラリーの粘度を上昇させる作用を有する。これにより、スラリーの流動中には、流速の低い領域がなくなってΣ効果により破砕粒子が型との界面近傍に露出しなくなる欠点が解消され、かつ注入作業の所要時間が短縮される。またスラリーの注入後には、無機粉末(II)や破砕粒子(III)の沈降が防止され、得られる人工大理石表面に破砕粒子により形成される模様がコントラストに優れた鮮やかなものとなる。重合体粒子(IV)に含まれる多層構造重合体粒子(A)の割合は40質量%以上であり、45質量%以上であるのがより好ましい。
【0020】
多層構造重合体粒子(A)は、メタクリル酸メチル系重合体からなる最外層を有し、かつ内部に少なくとも1層のゴム質重合体層を有するものであればいずれでもよく、その層数や各層を構成する重合体の組成等は特に制約されないが、例えば、メタクリル酸メチル系重合体最外層/ゴム質重合体内層からなる2層構造粒子またはメタクリル酸メチル系重合体最外層/ゴム質重合体中間層/メタクリル酸メチル系重合体中心層からなる3層構造粒子であるのが好ましい。
【0021】
多層構造重合体粒子(A)の最外層を構成するメタクリル酸メチル系重合体は、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)中での分散性や不飽和単量体(I)から形成される重合体との相溶性の観点から、メタクリル酸メチル80質量%以上およびそれと共重合可能な他の一官能性不飽和単量体20質量%以下から形成されるものであることが好ましい。
【0022】
また、多層構造重合体粒子(A)の最外層を構成する好ましいメタクリル酸メチル系重合体の形成に用い得る他の一官能性不飽和単量体の種類は特に制限されず、メタクリル酸メチルと共重合し得る不飽和単量体として不飽和単量体(I)で挙げたものと同様の一官能性不飽和単量体の1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
また、多層構造重合体粒子(A)の内部に存在する少なくとも1層のゴム質重合体層を構成するゴム質重合体としては、ガラス転移点が25℃以下でゴム弾性を有する架橋された重合体であればいずれでもよく特に制限されない。該ゴム質重合体層は、例えば、アクリルゴム;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系ゴムまたはそれらの水素添加物;エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、ポリイソブチレンゴム等のオレフィン系ゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等熱可塑性エラストマー等の1種または2種以上から構成されていることができる、そのうちでも、多層構造重合体粒子(A)の内部に存在するゴム質重合体層はアクリルゴム、共役ジエン系ゴムおよび共役ジエン系ゴムの水素添加物のうちの1種または2種以上からなっていることが好ましい。
【0024】
多層構造重合体粒子(A)においてメタクリル酸メチル系重合体からなる最外層の占める割合は特に制限されないが、一般に、多層構造重合体粒子(A)の質量に基づいて、10〜70質量%であるのが好ましく、15〜65質量%であるのがより好ましい。また、最外層を含む全てのメタクリル酸メチル系重合体層と、全てのゴム質重合体層との質量比は、10:90〜80:20であるのが好ましく、30:70〜75:25であるのがより好ましい。
【0025】
また、多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は、スラリーの揺変度の増加効果の点から、0.05〜0.5μmであり、0.05〜0.3μmであるのが好ましい。
【0026】
多層構造重合体粒子(A)の製造方法は特に制限されず、当該重合体粒子を製造し得る方法であれば、いずれの方法で製造したものであってもよい。そのうちでも、本発明で用いる多層構造重合体粒子(A)は、一般に乳化重合により円滑に製造することができる。その場合に、多層構造重合体粒子(A)の内側に存在させるゴム質重合体やその他の重合体を形成させるための乳化重合をまず行ってそれらの重合体粒子を含有するエマルジョンをつくり、それにより得られるエマルジョン中の重合体粒子の最表面に、メタクリル酸メチル系重合体を形成するための単量体成分をグラフト重合させて、メタクリル酸メチル系重合体からなる最外層を有する多層構造重合体粒子(A)を製造する方法が好ましく採用される。
【0027】
そのうちでも、本発明では、多層構造重合体粒子(A)として、
メタクリル酸メチル80〜99.5質量%、アルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル0〜19.95質量%および多官能性不飽和単量体0.05〜2質量%からなる単量体成分を用いる第1段階乳化重合工程;
アルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル80〜98質量%、芳香族ビニル化合物1〜19質量%および多官能性不飽和単量体1〜5質量%からなる単量体成分を用いる第2段階乳化重合工程;並びに
メタクリル酸メチル80〜100質量%およびアルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル0〜20質量%からなる単量体成分を用いる第3段階乳化重合工程;
を順次行って得られる多層構造重合体粒子がより好ましく用いられる。
【0028】
多層構造重合体粒子(A)を乳化重合によって製造する場合には、不飽和単量体を乳化重合する際に通常用いられている乳化剤を用いることができ、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ラウリルザルコシン酸ナトリウム等のカルボン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩等のノニオン・アニオン系乳化剤を挙げることができる。前記した乳化剤は1種類のみを用いてもまたは2種類以上を用いてもよい。
【0029】
また、多層構造重合体粒子(A)を乳化重合により製造する際の重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系開始剤、パースルホキシレート/有機過酸化物、過硫酸塩/亜硫酸塩等のレドックス系開始剤などが使用できる。さらに、各層を構成する重合体の分子量の調節のために、アルキルメルカプタンなどの連鎖移動剤を用いてもよい。
【0030】
重合体粒子(IV)には、不飽和単量体(I)中での多層構造重合体粒子(A)の分散性向上のため、平均粒子径0.02〜0.2μmのメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)を、重合体粒子(IV)の60質量%以下、好ましくは55質量%以下の割合で含有してもよい。メタクリル酸メチル系重合体粒子(B)としては、メタクリル酸メチル80質量%以上およびそれと共重合可能な他の一官能性不飽和単量体20質量%以下から形成されるメタクリル酸メチル系重合体粒子が好ましく用いられる。
【0031】
また、メタクリル酸メチル系重合体粒子(B)の形成に用い得る他の一官能性不飽和単量体の種類は特に制限されず、メタクリル酸メチルと共重合し得る不飽和単量体として不飽和単量体(I)で挙げたものと同様の一官能性不飽和単量体の1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
メタクリル酸メチル系重合体粒子(B)の平均粒子径は、製造時のエマルジョン粘度の上昇がなく、かつ多層構造重合体粒子(A)に対する分散性向上効果に優れることから0.05〜0.2μmであり、0.08〜0.15μmであることが好ましい。
【0033】
メタクリル酸メチル系重合体粒子(B)の製造方法は特に制限されず、平均粒子径が0.05〜0.2μmのメタクリル酸メチル系重合体粒子を製造し得る方法であれば、いずれの方法で製造したものであってもよいが、一般には、乳化重合を行うことにより前記した平均粒子径を有するメタクリル酸メチル系重合体粒子を円滑に製造することができる。
【0034】
メタクリル酸メチル系重合体粒子(B)を乳化重合によって製造する場合は、多層構造重合体粒子(A)を乳化重合する場合に用い得るとして上記で記載したのと同様の乳化剤および重合開始剤を用いて重合を行うことができる。
【0035】
重合体粒子(IV)において多層構造重合体粒子(A)とメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)の混合方法は特に制限されず、多層構造重合体粒子(A)が凝集せずにメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)中に均一に混合分散しているような混合方法であればいずれの方法を採用してもよい。そのうちでも、多層構造重合体粒子(A)およびメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)をエマルジョン状態で混合した後に、凝固、脱水、および乾燥する方法が好ましく採用される。多層構造重合体粒子(A)単独のエマルジョンまたは多層構造重合体粒子(A)およびメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)のエマルジョンの凝固法としては塩析凝固法または凍結凝固法が不純物の水洗除去が容易に行える点で好ましい。
【0036】
重合体粒子(IV)のスラリーへの配合量は、不飽和単量体(I)および無機粉末(II)からなる組成物100質量部に対して0.5〜10質量部であり、1〜8質量部であるのが好ましく、2〜6.5質量部であるのがより好ましい。配合量が10質量部を超えると、前記不飽和単量体混合物、無機粉末(II)、人工大理石破砕粒子(III)からなるスラリーの粘度が高くなって操作性が悪化し、またコストアップになるので好ましくない。一方0.5質量部未満であると、スラリーの揺変度が低く人工大理石破砕粒子(III)や無機粉末(II)が沈降するため好ましくない。また、重合体粒子(IV)に含まれる多層構造重合体粒子(A)の、上記組成物100質量部に対する割合は、0.2〜10質量部であり、1〜7質量部であるのが好ましく、1.5〜5.5質量部であるのがより好ましい。
【0037】
本発明に用いられる雲母微細粒子(V)は、その鱗片状の形状により、重合体粒子(IV)との相乗効果を発揮し、スラリーに揺変性を発現させてスラリーが型に注入される流動中にはスラリーの粘度を低下させ、一方、注入作業が終了して型の中でのスラリーの流動が停止した後はスラリーの粘度を上昇させる作用を有する。雲母微細粒子(V)の1次粒子径が1〜10μmであり、2〜8μmであるのが好ましい。また、2次粒子径は、3〜50μmであるのが好ましく、5〜30μmであるのがより好ましい。水分率は、0.3〜1質量%であるのが好ましく、0.3〜0.8質量%であるのがより好ましい。雲母微細粒子(V)のスラリーへの配合量は、不飽和単量体(I)および無機粉末(II)からなる組成物100質量部に対して0.01〜0.5質量部であり、0.05〜0.3質量部であるのが好ましい。使用量が0.5質量部を超えると、粘度の低下効果が一定となり、それ以上の配合はコストアップになるので好ましくない。一方0.01質量部未満では粘度の低下効果がなく、人工大理石破砕粒子(III)や無機粉末(II)の沈降分離を抑えることができない。雲母微細粒子(V)をスラリーに共存混合せしめる方法に関しても特に制限はなく、不飽和単量体(I)への添加、スラリーへの添加あるいは無機粉末(II)への添加、重合体粒子(IV)への添加など、いずれも可能である。なお、雲母微細粒子(V)は、合成雲母と天然雲母のいずれをも用いることができるが、分散性に優れ夾雑物が少ない点から合成雲母微細粒子を用いることが好ましい。
【0038】
本発明に用いるスラリーの調製方法は特に制限されず、例えば、不飽和単量体(I)に重合体粒子(IV)を混合してシラップ状とした後、無機粉末(II)および破砕粒子(III)を混合することにより容易に得ることができる。スラリーの粘度は、0.1〜20Pa・sであり、これよりも高粘度になると注型操作が困難となり、低粘度になると注入後に破砕粒子(III)や無機粉末(II)が沈降し外観不良が発生する。スラリーの粘度は、0.1〜10Pa・sであるのが好ましく、1〜8Pa・sであるのがより好ましい。本発明に用いるスラリーの揺変度は、2以上であるのが好ましく、2〜10であるのがより好ましく、3〜7であるのがさらに好ましい。揺変度が2以上であるとΣ効果の低減効果に優れ、外観欠点の改良効果に優れたものとなる。スラリーの粘度および揺変度は、含有する各成分の種類、組成、粒子径、配合割合などにより、適切に調節することができる。
なお、本発明でいうスラリーの粘度はブルックフィールド型粘度計を用い、25℃でローター回転数12rpmで測定した値であり、揺変度はJIS K6901の規定に準拠し、ブルックフィールド型粘度計で同一ローターを用い、25℃の温度にて6rpmで測定した粘度値を60rpmで測定した値で除した値で示されるものである。
【0039】
本発明において、スラリーを重合硬化する方法は特に制限はなく、例えばラジカル重合開始剤の存在下または不存在下に加熱する方法、ラジカル重合開始剤と促進剤よりなるいわゆるレドックス系による方法等をあげることができるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明で注型重合に使用される型の材質に関しても特に制限はなく、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等任意の材質を用いることができる。中でも、鏡面ガラスまたはマット面(摺り)ガラスなどの2枚のガラス板からなる型板を塩化ビニル製チューブなどのスペーサーを介して型面を互いに向き合わせて組立てた型を用い、型面を水平または垂直に保持して注型重合を行う方法が、本発明の効果をより適切に発揮できることから好ましい。
【0041】
本発明の製造方法により得られるアクリル系人工大理石には、必要に応じて、燐酸エステル系やシラン系などのカップリング剤、ステアリン酸などの離型剤、染顔料、補強材、改質剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃化剤、重合調節剤、抗菌剤等の各種の添加剤を含有させることも可能である。
【0042】
本発明の製造方法により得られるアクリル系人工大理石は、好適には平板状であり、均一で濃淡斑のない表面および切断面の外観を有するので、平板状のまま、または曲面状の曲げ加工、切断面が露出するようなL字形の接着加工等を施すなどして、キッチン天板や各種カウンタートップ、洗面化粧台、シャワートレー、防水パン、床材、壁材、間仕切り板等に好ましく使用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されるものではない。
また、製造例、実施例および比較例における各種の測定または評価は以下のようにして行った。
【0044】
1.重合体粒子(IV)の平均粒子径:
光散乱光度計(大塚電子株式会社製「DSL−600」)を用いて測定した。
【0045】
2.板の外観:
1)濃淡差:板の表面でスラリーの注入口に近い箇所(注入側)と注入口から遠い箇所(反注入側)とを比較して、破砕粒子が均一に分散している状態を以下のように判定した。
○:全体に均一である
△:破砕粒子の濃度差がわずかに認められる
×:破砕粒子の濃度差が明らかに認められる
2)コントラスト:色調の異なる破砕粒子が共に表面近傍に露出し、鮮明に柄の出ている状態をコントラストがはっきりしているとして、以下のように判定した。
○:コントラストがはっきりしている
△:コントラストが若干劣る
×:コントラストがなく全体にぼけている
3.樹脂層(スキン層)の有無:
板の表面を0.05mmから0.1mm削り取り、削った部分と削らない部分とで無機粉末の存在密度が減少しているかを、外観により以下のように判定した。
○:外観は同一である
△:外観は若干異なる
×:外観に違いが認められる
4.破砕粒子の粒抜け:
板の表面を観察し、約10cm以下の領域で全体に対して破砕粒子の量が少ない状態を有するかを以下のように判定した。
○:破砕粒子の存在密度差は見られない
×:破砕粒子の存在密度差が見られる
【0046】
《製造例1》[多層構造重合体粒子(A−1)を含むエマルジョンの製造]
(1)コンデンサー、温度計および攪拌機を備えたグラスライニングを施した反応器(100リットル)に、イオン交換水48kgを投入し、次いでステアリン酸ナトリウム416g、ラウリルザルコシン酸ナトリウム128gおよびメタクリル酸メチル(MMA)11.2kgおよびメタクリル酸アリル(ALMA)110gを投入し攪拌しながら70℃に昇温した後、2%過硫酸カリウム水溶液560gを添加して重合開始させた。重合ピーク終了後30分間にわたって70℃に保持してエマルジョンを得た。
(2)次いで、上記(1)で得られたエマルジョンに、2%過硫酸ナトリウム水溶液72gを更に添加した後、アクリル酸ブチル(BA)12.4kg、スチレン(St)1.76kgおよびメタクリル酸アリル280gからなる単量体混合物を60分かけて滴下し、その後60分間攪拌を続けてグラフト重合を行った。
(3)上記(2)で得られたグラフト重合後のエマルジョンに、2%過硫酸カリウム水溶液320gを添加し、さらにメタクリル酸メチル6.2kg、アクリル酸メチル(MA)0.2kgおよびn−オクチルメルカプタン200gからなる単量体混合物を30分間かけて添加し、その後60分間攪拌を続けて重合を完結させた後、冷却して重合体[以下「多層構造重合体粒子(A−1)」という]エマルジョンを得た。それにより得られた多層構造重合体粒子(A−1)(3層構造重合体粒子)の平均粒子径は0.23μmであった。
【0047】
《製造例2》[多層構造重合体粒子(A−2)を含むエマルジョンの製造]
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水200kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリム1kgおよび炭酸ナトリム0.05kgを仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01kgを投入し、5分間攪拌した後、メタクリル酸メチル9.48kg、アクリル酸n−ブチル0.5kgおよびメタクリル酸アリル0.02kgからなる単量体混合物を20分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.03kgを投入して5分間攪拌した後、 メタクリル酸メチル1.45kg、アクリル酸n−ブチル27.67kgおよびメタクリル酸アリル0.88kgからなる単量体混合物を40分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(3)次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.06kgを投入して5分間攪拌した後、 メタクリル酸メチル53.73kg、アクリル酸n−ブチル5.97kgおよびn−オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.3kgを含む単量体混合物を100分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間攪拌を続けて重合を完結させた後、冷却して重合体[以下「多層構造重合体粒子(A−2)」という]エマルジョンを得た。それにより得られた多層構造重合体粒子(A−2)(3層構造重合体粒子)の平均粒子径は0.09μmであった。
【0048】
《製造例3》[メタクリル酸メチル系重合体粒子(B−1)を含むエマルジョンの製造]
製造例1で用いたのと同様の反応器に、イオン交換水48kgを投入した後、界面活性剤(花王株式会社製「ペレックスSS−H」252gを投入して攪拌して溶解させた。70℃に昇温した後、2%過硫酸カリウム水溶液160gを添加し、次いでメタクリル酸メチル3.04kg、アクリル酸メチル0.16kgおよびn−オクチルメルカプタン13.8gからなる混合物を一括添加して重合させた。重合による発熱が終了した時点から30分間攪拌を続けた後、2%過硫酸カリウム水溶液160gを添加し、次いでメタクリル酸メチル27.4kg、アクリル酸メチル1.44kgおよびn−オクチルメルカプタン98gからなる混合物を2時間かけて連続的に滴下して重合を行った。滴下終了後、60分間放置した後冷却して平均粒子径0.12μmの重合体粒子[以下「メタクリル酸メチル系重合体粒子(B−1)」という]を含有する重合体エマルジョンを得た。
【0049】
以下の表1に、上記の製造例1〜3で得られた多層構造重合体粒子(A−1)および(A−2)並びにメタクリル酸メチル系重合体粒子(B−1)の製造に用いた単量体組成を示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004060160
【0051】
《製造例4》[多層構造重合体粒子(A−1)およびメタクリル酸メチル系重合体粒子(B−1)を含む粉末の製造]
(1)製造例1で得られた多層構造重合体粒子(A−1)のエマルジョンおよび製造例2で得られたメタクリル酸メチル系重合体粒子(B−1)のエマルジョンを多層構造重合体粒子(A−1):メタクリル酸メチル系重合体粒子(B−1)の質量比が1:1になるように混合して混合エマルジョンにし、それを−20℃で2時間かけて凍結した。凍結した混合エマルジョンをその2倍量の80℃の温水に投入して融解させてスラリー状にした後、80℃に20分間保持し、次いで脱水し、70℃で乾燥して、重合体粉末を得た。
【0052】
《製造例5》[多層構造重合体粒子(A−1)を含む粉末の製造]
(1)製造例1で得られた多層構造重合体粒子(A−1)のエマルジョンを−20℃で2時間かけて凍結した。凍結した混合エマルジョンをその2倍量の80℃の温水に投入して融解させてスラリー状にした後、80℃に20分間保持し、次いで脱水し、70℃で乾燥して、重合体粉末を得た。
【0053】
《製造例6》[多層構造重合体粒子(A−2)を含む粉末の製造]
(1)製造例2で得られた多層構造重合体粒子(A−2)のエマルジョンを−20℃で4時間かけて凍結させた。凍結したエマルジョンの2倍量の80℃温水に凍結エマルジョンを投入、融解してスラリーとした後、20分間80℃に保持した後、脱水し、70℃で乾燥して、重合体粉末を得た。
【0054】
以下の表2に、上記の製造例4〜6で得られた、各種の重合体粒子(IV)を含む粉末を構成する多層構造重合体粒子(A)およびメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)の内訳を示す。
【0055】
【表2】
Figure 0004060160
【0056】
《製造例7》[破砕粒子(III)の製造]
メタクリル樹脂(パラビーズHR−L、クラレ社製)6.45質量部、メタクリル酸メチル25.83質量部に水酸化アルミニウム粉末(ハイジライトH−310、昭和電工社製)62.1質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート4.9質量部にステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、黒ペースト0.7質量部を加え、脱泡した。このスラリーを2枚のガラス板の間にU字型に配した塩化ビニル樹脂製チューブを挟み込んで組み立てた型に注ぎ込み、60℃の水浴に4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して厚さ12mmの人工大理石平板を得た。得られた重合硬化物をロールミルで破砕し、この破砕物に篩をかけることにより、▲1▼粒径0.1〜0.5mmおよび▲2▼粒径2〜4mmの黒色破砕粒子を得た。
【0057】
《製造例8》[破砕粒子(III)の製造]
メタクリル樹脂(パラビーズHR−L、クラレ社製)6.18質量部、メタクリル酸メチル24.72質量部に水酸化アルミニウム粉末(ハイジライトH−310、昭和電工社製)62.1質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート4.9質量部にステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、白ペースト2質量部を加え、脱泡した。このスラリーを2枚のガラス板の間にU字型に配した塩化ビニル樹脂製チューブを挟み込んで組み立てた型に注ぎ込み、60℃の水浴に4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して厚さ12mmの人工大理石平板を得た。得られた重合硬化物をロールミルで破砕し、この破砕物に篩をかけることにより、粒径0.1〜0.5mmの白色破砕粒子を得た。
【0058】
《製造例9》[破砕粒子(III)の製造]
メタクリル樹脂(パラビーズHR−L、クラレ社製)6.18質量部、メタクリル酸メチル24.72質量部に水酸化アルミニウム粉末(ハイジライトH−310、昭和電工社製)62.1質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート4.9質量部にステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、茶ペースト2.1質量部を加え、脱泡した。このスラリーを2枚のガラス板の間にU字型に配した塩化ビニル樹脂製チューブを挟み込んで組み立てた型に注ぎ込み、60℃の水浴に4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して厚さ12mmの人工大理石平板を得た。得られた重合硬化物をロールミルで破砕し、この破砕物に篩をかけることにより、粒径0.1〜0.5mmの茶色破砕粒子を得た。
【0059】
以下の表3に、上記の製造例7〜9で得られた破砕粒子(III)の色および最小粒径〜最大粒径を示す。
【0060】
【表3】
Figure 0004060160
【0061】
<実施例1>
メタクリル酸メチル(MMA)、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(BG)、水酸化アルミニウム[Al(OH)]粉末(ハイジライトH−310、昭和電工社製、平均粒子径17μm)、製造例7および8で得られた人工大理石破砕粒子、製造例4および5で得られた重合体粒子、雲母微細粒子(合成雲母 ソマシフMTE、コープケミカル社製、1次粒子径5.65μm、2次粒子径12.11μm、水分率0.4質量%)を、表4に記載の割合で混合し、さらに、ステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、黒顔料0.002質量部を添加混合して、破砕粒子の分散した薄い灰色のスラリーを得た。このスラリーの粘度は、25℃で4.5Pa・s、揺変度は4.8であった。このスラリーを脱泡した後、1000×1500×12mmの互いに向き合わせた2枚のガラス板(1枚は鏡面、他の1枚はマット面)の間にU字型に配した塩化ビニル製チューブを挟み込んで組み立て、垂直に保持した型の端から注ぎ込み、60℃の水浴で4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して、厚さ12mmのアクリル系人工大理石を得た。
ガラス板からの離型は良好であり、注入側と反注入側の外観は同一であり、コントラストの良い板であった。また板の表面を0.05〜0.1mm削った部分と削らない部分の外観は同一であり、さらに表面を観察したところ破砕粒子の存在密度の低い領域は見られなかった。
【0062】
<実施例2>
表4に記載の各成分に、ステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部を添加混合して白色のスラリーを得た。このスラリーの粘度は、25℃で3.5Pa・s、揺変度は6.9であった。このスラリーを脱泡した後、1000×1500×12mmの互いに向き合わせた2枚のガラス板(1枚は鏡面、他の1枚はマット面)の間に「□」型に配した塩化ビニル製チューブを挟み込んで組み立てた型の端から注ぎ込み、型を水平に保持して、60℃の水浴で4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して、厚さ12mmのアクリル系人工大理石を得た。
ガラス板からの離型は良好であり、また注入側と反注入側とで板の表面を0.05mm削った部分と削らない部分とを観察し、さらに切断面を観察したところ、水酸化アルミニウム粉末の沈降による樹脂層(スキン層)の発生がなく、いずれの箇所でも外観は同一であった。
【0063】
<実施例3>
表4に記載の各成分に、ステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、黒顔料0.002質量部を添加混合して、破砕粒子の分散した薄い灰色のスラリーを得た。このスラリーの粘度は、25℃で5.0Pa・s、揺変度は4.6であった。このスラリーを脱泡した後、1000×1500×12mmの互いに向き合わせた2枚のガラス板(1枚は鏡面、他の1枚はマット面)の間にU字型に配した塩化ビニル製チューブを挟み込んで組み立て、垂直に保持した型の端から注ぎ込み、60℃の水浴で4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して、厚さ12mmのアクリル系人工大理石を得た。
ガラス板からの離型は良好であり、注入側と反注入側の外観は同一であり、コントラストの良い板であった。また板の表面を0.05〜0.1mm削った部分と削らない部分の外観は同一であり、さらに表面を観察したところ破砕粒子の存在密度の低い領域は見られなかった。
【0064】
<実施例4>
表4に記載の各成分に、ステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.06質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、黒顔料0.005質量部を添加混合して、破砕粒子の分散した薄い灰色のスラリーを得た。このスラリーの粘度は、25℃で5.5Pa・s、揺変度は4.9であった。このスラリーを脱泡した後、1000×1500×12mmの互いに向き合わせた2枚のガラス板(1枚は鏡面、他の1枚はマット面)の間にU字型に配した塩化ビニル製チューブを挟み込んで組み立て、垂直に保持した型の端から注ぎ込み、60℃の水浴で4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して、厚さ12mmのアクリル系人工大理石を得た。
ガラス板からの離型は良好であり、注入側と反注入側の外観は同一であり、コントラストの良い板であった。また板の表面を0.05〜0.1mm削った部分と削らない部分の外観は同一であり、さらに表面を観察したところ破砕粒子の存在密度の低い領域は見られなかった。
【0065】
<実施例5>
表4に記載の各成分に、ステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.06質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.5質量部、黒顔料0.002質量部を添加混合して、破砕粒子の分散した薄い灰色のスラリーを得た。このスラリーの粘度は、25℃で3.0Pa・s、揺変度は4.6であった。このスラリーを脱泡した後、3000×2000×12mmの互いに向き合わせた2枚のガラス板(1枚は鏡面、他の1枚はマット面)の間にU字型に配した塩化ビニル製チューブを挟み込んで組み立て、垂直に保持した型の端から注ぎ込み、60℃の水浴で4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して、厚さ12mmのアクリル系人工大理石を得た。
ガラス板からの離型は良好であり、注入側と反注入側の外観は同一であり、コントラストの良い板であった。また板の表面を0.05〜0.1mm削った部分と削らない部分の外観は同一であり、さらに表面を観察したところ破砕粒子の存在密度の低い領域は見られなかった。
【0066】
<比較例1>
表4に記載の各成分に、メタクリル樹脂(PMMA、パラビーズHR−L、クラレ社製)11.3質量部、ステアリン酸0.02質量部、酸性燐酸エステル(ニューフロンティアS−510、第一工業製薬社製)0.05質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン0.1質量部、黒顔料0.002質量部を添加混合して、破砕粒子の分散した薄い灰色のスラリーを得た。このスラリーの粘度は、25℃で2.5Pa・s、揺変度は1.3であった。このスラリーを脱泡した後、1000×1500×12mmの互いに向き合わせた2枚のガラス板(1枚は鏡面、他の1枚はマット面)の間にU字型に配した塩化ビニル製チューブを挟み込んで組み立て、垂直に保持した型に注ぎ込み、60℃の水浴で4時間、ついで120℃の空気浴に2時間保持して、厚さ12mmのアクリル系人工大理石を得た。
ガラス板からの離型は良好であり、注入側と反注入側の外観は若干異なり、コントラストの若干劣る板であった。また板の表面を0.05〜0.1mm削った部分と削らない部分の外観は若干異なり、さらに表面を観察したところ破砕粒子の存在密度の低い領域が見られた。
【0067】
以下の表4に、上記の実施例および比較例で得られたアクリル系人工大理石板の処方および評価結果を示す。
【0068】
【表4】
Figure 0004060160
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、注型成形を行う際、無機粉末を含有したスラリーを注入することにより、いわゆるΣ効果により発生していた品質上の欠点である、濃淡斑、粒抜け等の欠点がほとんどなく、外観の均一なアクリル系人工大理石が得られる。

Claims (4)

  1. (i)メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)20〜80質量%および
    (ii)平均粒子径0.1〜100μmの無機粉末(II)80〜20質量%からなる組成物100質量部に対し;
    (iii)粒径0.1〜8mmの人工大理石破砕粒子(III)を0〜40質量部;
    (iv)メタクリル酸メチル系重合体からなる最外層を有し、かつ内部に少なくとも1層のゴム質重合体層を有する平均粒子径0.05〜0.5μmの多層構造重合体粒子(A)を40質量%以上の割合で含む重合体粒子(IV)を0.5〜10質量部;並びに(v)1次粒子径1〜10μmの雲母微細粒子(V)を0.01〜0.5質量部;を含有する、粘度0.1〜20Pa・sのスラリーを注型重合することを特徴とするアクリル系人工大理石の製造方法。
  2. 重合体粒子(IV)が、平均粒子径0.02〜0.2μmのメタクリル酸メチル系重合体粒子(B)を、60質量%以下の割合で含む請求項1に記載のアクリル系人工大理石の製造方法。
  3. 型面が水平に保持された2枚のガラス板の型中で重合硬化する請求項1または2に記載のアクリル系人工大理石の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアクリル系人工大理石。
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