JP4059567B2 - 試料研磨装置及び化学機械研磨方法 - Google Patents

試料研磨装置及び化学機械研磨方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板等の試料を化学機械研磨する試料研磨装置、及びこの試料研磨装置を用いて実施される化学機械研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン基板等の半導体基板の表面に、導電体層、半導体層又は絶縁体層を形成する積層工程と、該積層工程において得られた各層の表面において、例えば、フォトリソグラフィ法により不要部分を除去し、所望の回路パターンを残すパターン形成工程とを繰り返して行われる半導体装置の製造においては、各積層工程にて積層形成される導電体層、半導体層又は絶縁体層の表面が、先行するパターン形成工程において得られた回路パターンの影響により非平坦化し、該表面を対象として行われるパターン形成に支障を来すようになるという問題がある。
【0003】
そこで従来から、各積層工程において形成された導電体層、半導体層又は絶縁体層の表面を研磨して平坦化することが行われており、このための研磨方法として、化学反応を利用した化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing )が広く採用されている。
【0004】
図5は、化学機械研磨に従来から使用されている試料研磨装置の概略構成を示す模式図であり、この試料研磨装置は、半導体基板等、研磨対象となる試料Wを保持する試料保持装置1と、該試料保持装置1の下面にその上面を対向させて配された研磨定盤2とを備えて構成されている。試料保持装置1と研磨定盤2とは、互いに平行をなす各別の回転軸1a,2aの先端に夫々同軸的に取り付けられ、これらの回転軸1a,2a回りに回転駆動されるようになしてある。
【0005】
試料保持装置1は、その一面に試料Wを吸着保持する保持定盤10と、回転軸1aの下部に一体的に固設された回転基台11とを備えており、保持定盤10は、試料Wの保持面を下向きとして回転基台11に取り付けてある。また研磨定盤2の上面には、その全面に研磨パッド2bが被着されており、該研磨パッド2bの表面には、スラリ供給装置3から研磨スラリが供給される構成となっている。このような試料保持装置1及び研磨定盤2の少なくとも一方は、前記試料Wを研磨パッド2bに押し当てられるように昇降可能に構成されている。
【0006】
以上の如き試料研磨装置による研磨は、図示の如く、試料保持装置1の保持定盤10に保持させた試料Wを研磨定盤2の一側半部に押し付け、スラリ供給装置3から研磨パッド2b上に、適量の研磨スラリを供給しつつ試料抱持台1と研磨定盤2とを回転させて、前記試料Wの研磨面(下面)を研磨スラリを介して研磨パッド2bに摺接せしめて行われる。研磨スラリは、研磨対象となる試料Wに応じて選定された研磨粒子と反応剤とを含んでおり、研磨パッド2bに摺接する試料Wの研磨面は、前記研磨粒子の作用による機械的な研磨と、前記反応剤の作用による化学的な研磨とにより平坦化される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが以上の如く構成された試料研磨装置による化学機械研磨においては、反応剤の作用による化学的な研磨の研磨レートが温度の影響を受け易いことから、高い研磨レートを確保しつつ良好な平坦度を得るためには、研磨パッド2bとの摺接により上昇する試料Wの温度を、その分布を含めて適正化することが重要な課題となっている。
【0008】
このような基板Wの温度制御は、研磨パッド2b上に供給される研磨スラリの温度を調整することより一般的に行われているが、この方法は、研磨スラリを介して基板Wの温度を間接的に制御しようとする方法であり、所望の温度分布を得ることは難しいという問題があった。
【0009】
このような問題を解消すべく特開平9-29591号公報には、図6に示す如く、試料Wを保持する保持定盤10の内部に空洞を設け、この空洞を仕切り板8により上下に分割して冷却媒体が通流される媒体流路を形成し、保持定盤10に保持された試料Wの温度を、前記冷却媒体との間の直接的な熱交換により制御して、所望の温度分布を得るようにした試料研磨装置が開示されている。
【0010】
しかしながらこの試料研磨装置において前記冷却媒体は、図6中に矢符により示す如く、その中心部に接続された内筒8aを経て仕切り板8の下部に沿って周縁部に向けて放射状に流れる間に試料Wと熱交換した後、仕切り板8の上部を通って中心部に集められて外筒8bを経て排出される構成となっており、冷却媒体の温度は、試料Wとの熱交換により周縁部に向かうに従って高くなり、逆に、試料Wの単位面積当たりの冷却媒体との接触量は、周縁部に向かうに従って少なくなるため、前記試料Wは、中央部が低く、周縁部が高い温度分布を示すようになり、この状態で研磨が行われた場合、周縁部近傍の研磨レートが高くなるという問題がある。このような温度分布は、保持定盤10においても同様に発生し、該保持定盤10がわずかに変形し、この変形が研磨レートの均一性を阻害する虞れがある。
【0011】
また一方、化学機械研磨においては、研磨対象となる試料Wを研磨パッド2bの表面に対し、略全面に亘って均等な接触圧により摺接させることが重要である。ところが、試料Wの研磨面と研磨パッド2bの表面とを正しく平行をなして配設することは難しいことから、試料Wが傾きを有して研磨パッド2bに押し当てられている場合が多い。このような場合、試料Wの周縁部の接触圧が中央部の接触圧より大となり、周縁部と中央部の研磨レートに差が生じ、中央部が突出した凸形の研磨面を有する研磨不良品の発生が避けられないという問題があった。
【0012】
試料Wと研磨パッド2bの平行度の狂いは、試料Wの保持定盤10に対する傾き、研磨定盤2上での研磨パッド2bの貼付不良、保持定盤10の回転軸1aと研磨定盤2の回転軸2aとの平行度の狂い等の原因により発生する。また、複数の試料保持装置1に夫々保持された試料Wを、単一の研磨定盤2の周方向の異なる位置に押し付けて一括研磨する構成とした試料研磨装置も実用化されており、この種の装置においては、各試料Wの押し付け圧の相違により研磨パッド2bとの平行度の狂いが生じることもある。このように研磨不良を招来する試料Wと研磨パッド2bとの平行度の狂いは、種々の原因により発生することから、従来の試料研磨装置においては、これらの原因を取り除くために装置のメインテナンス作業に多大の時間が必要となり、このことが生産性の向上を阻害する一因となっている。
【0013】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、半導体基板等の試料の研磨面に可及的に均一な温度分布を実現し、また試料の研磨面を研磨パッドに両者間の平行度の狂いの如何に拘わらず均等な接触圧にて摺接させて、全面に亘って可及的に均一な研磨レートでの化学機械研磨を可能とする試料研磨装置及び化学機械研磨方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る試料研磨装置は、化学機械研磨される試料をその一面に保持し、この保持面と略直交する軸回りに回転する回転基台に取り付けられた保持定盤と、該保持定盤の回転軸と略平行をなす軸回りに回転する研磨定盤と、該研磨定盤の一面に支持され、前記保持定盤の保持面に保持させた試料に押し当てられる研磨パッドと、該研磨パッドと前記試料との間に研磨スラリを供給するスラリ供給手段とを具備し、前記試料を、保持定盤及び/又は研磨定盤の回転により研磨スラリを介して研磨パッドに摺接せしめて化学機械研磨する試料研磨装置において、前記保持定盤の内部に、その中心部から外縁部に向けて渦巻き状をなして形成され、中心側及び外縁側の端部の夫々に、冷却媒体の供給及び排出のための給排路が設けてある媒体流路と、該媒体流路に前記給排路を介して前記冷却媒体を給排する媒体給排手段と、前記媒体流路内での前記冷却媒体の流れ方向を、中心側の給排路から外縁側の給排路へ向かう方向と、外縁側の給排路から中心側の給排路へ向かう方向とに切り換える流路切換え手段と、研磨済み又は研磨途中の試料の研磨量を、その中央部及び周辺部を含めた複数か所にて測定する膜厚計と、該膜厚計により測定された試料の中央部の研磨量が周辺部の研磨量よりも大きい場合、前記冷却媒体の流れ方向を中心側の給排路から外縁側の給排路へ向かう方向に切換え、中央部での研磨量が周辺部での研磨量よりも小さい場合、前記冷却媒体の流れ方向を外縁側の給排路から中心側の給排路へ向かう方向に切り換えるように前記流路切換え手段に切換え動作を行わせる制御手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、試料を保持する保持定盤の内部に中心部から外縁部に向けて渦巻き状をなす媒体流路を形成し、該媒体流路に、中心側及び外縁側の端部の夫々に設けた給排路を介して冷却媒体を給排して、この冷却媒体との直接的な熱交換により試料の温度を制御できるように構成し、更に試料の中央部及び周縁部における研磨量を膜厚計により測定し、この結果に基づく制御手段の動作により流路切換え手段に切換え動作を行わせ、媒体流路内での冷却媒体の流れ方向を、測定された研磨量が小さい側が下流となるように変更し、試料中央部と周縁部との間での研磨レートの均一化を図る。
【0016】
更に加えて前記保持定盤は、その回転軸に対して所定角度内での傾倒自在に前記回転基台に取り付けてあることを特徴とする。
【0017】
この発明においては、試料を保持する保持定盤を回転基台に傾倒自在に取り付け、この傾倒により、試料の研磨面と研磨パッドの表面との間の平行度の狂いを吸収して、試料と研磨パッドとを均等な接触圧にて摺接させる。
【0018】
また、前記媒体流路に供給される冷却媒体の温度を制御する媒体温度制御手段を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明においては、媒体流路への供給前の冷却媒体の温度を制御し、高温下での高研磨レートでの研磨と、低温下での精密な研磨とを適宜に実現する。
【0026】
更に、前記膜厚計による研磨量の測定を、所定数の試料の研磨終了毎に、製品試料に対して行うこと、又は前記膜厚計による研磨量の測定を、所定数の試料の研磨終了毎に供給される測定用試料に対して行うことを夫々特徴とする。
【0027】
この発明においては、膜厚計による研磨量の測定を、所定数の試料の研磨終了毎に最終的に研磨された製品試料に対して実施し、この結果に基づく冷却媒体の流れ方向の切換えが頻繁に行われることを防止する。また膜厚計による研磨量の測定を、例えば、研磨面に凹凸がなく単純な形状を有する測定用試料に対して実施し、正確な研磨量の測定結果を得て、この結果に基づく冷却媒体の流れ方向の切換えを確実に行わせる。
また、本発明に係る化学機械研磨方法は、前述した構成の試料研磨装置の保持定盤で試料を保持する工程と、該保持定盤の回転軸と略平行をなす軸回りに回転可能な研磨定盤の一面に研磨パッドを支持する工程と、前記試料が均等な接触圧で摺接するように、前記研磨パッドを前記試料に押し当てる工程と、前記媒体流路に冷却媒体を流しながら前記保持定盤及び/又は研磨定盤を回転して前記試料を化学機械研磨する工程とを具備することを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る試料研磨装置の構成を示す側断面図である。
【0029】
本発明に係る試料研磨装置は、図5に示す従来の試料研磨装置と同様、研磨対象となる試料Wを保持する試料保持装置1と、該試料保持装置1の下面にその上面の一側半部を対向させた研磨定盤2とを、互いに平行をなす各別の回転軸1a,2aの先端に同軸的に取り付け、図示しない回転駆動源からの伝動により回転駆動する構成となっている。
【0030】
研磨定盤2は、円板形の部材であり、高精度の平面に仕上げられたその上面には、粗い表面を有する硬質樹脂製の研磨パッド2bが、軟質樹脂製の弾性層2cを介して、例えば、接着により被着されており、研磨定盤2と共に前記回転軸2a回りに回転するようになしてある。研磨定盤2の中央上部には、研磨パッド2bの上面に研磨スラリを供給するスラリ供給装置3が配してある。
【0031】
スラリ供給装置3から供給される研磨スラリは、研磨パッド2bの上面に沿って中央部から周縁に向けて放射状に流れ、研磨パッド2bと、これの上面に後述の如くに摺接する試料Wの研磨面との間に介在せしめられ、該研磨面は、前記研磨スラリに含まれる研磨粒子の作用による機械的な研磨と、同じく研磨スラリに含まれる反応剤の作用による化学的な研磨とにより平坦化される。なお、スラリ供給装置3は公知のものであり、図中には空白のブロックにより略示してある。
【0032】
本発明に係る試料研磨装置の主たる特徴は、図の左半部に示す如く、研磨定盤2の一側半部に上方から臨ませて配された試料保持装置1の構成にある。なおこの試料保持装置1は、研磨定盤2の周上の複数か所に配してあってもよく、夫々の試料保持装置1に保持させた試料Wを、研磨定盤2に被着された研磨パッド2bにより一括して研磨する構成とすることも可能である。
【0033】
試料保持装置1は、従来の試料保持装置1と同様に、回転軸1aの下端に固定された回転基台11と、この回転基台11の下部に取り付けられた円板形の保持定盤10とを備えてなる。
【0034】
回転基台11は、回転軸1aの下端に同軸的にフランジ固定されている。回転基台11の下部には、外向きに張り出す支持フランジ 11aが周設され、この支持フランジ 11aの周面には、半径方向に相対向する位置に、回転基台11の軸心と直交する向きに支持ピン15,15が打設されている。
【0035】
また保持定盤10の上面には、前記支持フランジ 11aよりも大なる内径を有する筒状の支持ブラケット 10aが、上方に突出する態様に周設されており、該支持ブラケット 10aの周壁には、半径方向に相対向する位置に、保持定盤10の軸心と直交する向きに支持孔16,16が形成されており、これらの支持孔16,16の夫々に前記支持ピン15,15が嵌合せしめてある。支持孔16,16は、支持ピン15,15の外径と略等しい周方向幅と、支持ピン15,15の外径よりも大きい軸方向長さとを有する長孔であり、支持孔16,16に嵌合された支持ピン15,15は、回転方向にに拘束された状態で、支持孔16,16の長さ範囲にて軸長方向に移動可能となっている。
【0036】
一方前記支持フランジ 11aの外縁部には、上向きに突設された頂部を円弧状の凸面に加工された支持突起 11bが周設されており、また前記支持ブラケット 10aの上縁部には、半径方向内向きに張り出す支持フランジ 10bが周設され、該支持フランジ 10bの下面は、保持定盤10の軸心線上に中心を有する球面に加工されており、前記支持突起 11bに上位置から当接させてある。更に、支持フランジ 11aの下面には、回転基台11の軸心線上に中心を有する球面に加工された加工面が設けてあり、この加工面は、保持定盤10の上面の該当する円周上に複数並設された支持ボール17に当接させてある。
【0037】
以上の如く保持定盤10は、支持フランジ 10bと支持ボール17とにより、回転基台11の下部の支持フランジ 11aを上下から挾持する態様に支持されており、支持ボール17が当接する支持フランジ 11aの下面と、支持フランジ 10bの下面とが、回転基台11,保持定盤10の軸心線上に中心を有する球面に加工されていることから、前記保持定盤10は、回転基台11が固設された回転軸1aに対して傾倒可能である。また、回転基台11と保持定盤10とは、前者に打設された支持ピン15,15を後者に形成された軸長方向に長い支持孔16,16に嵌合させて係合されていることから、前記傾倒は、支持孔16,16の長手方向への支持ピン15,15の移動範囲内において許容され、保持定盤10は、この傾倒状態を保ちつつ回転基台11と共に回転することができる。
【0038】
保持定盤10の内部には、その下面の近くに吸気通路25が形成され、この吸気通路25は、保持定盤10の下面に開口する多数の吸気口に連通されている。また吸気通路25には、回転軸1a、回転基台11の内部に延設された吸気管26が接続され、この吸気管26は、図示しない真空源に接続されている。保持定盤10の下面は、研磨対象となる試料Wの保持面となすべく高精度の平面に仕上げてあり、前記試料Wは、前記保持面に開口する吸気口を塞ぐ態様に当接させ、前記吸気管26に接続された真空源を動作させて前記吸気通路25の内部を真空排気することにより、図示の如く、研磨面を下向きとして保持定盤10に吸着保持される。
【0039】
而して、このように試料Wを保持した試料保持装置1を回転軸1a回りに回転させて、回転軸2a回りに回転する研磨定盤2に近付け、該研磨定盤2に被着された研磨パッド2bの表面に試料Wの研磨面を当接させると、該研磨面は、スラリ供給装置3から供給される研磨スラリを介して研磨パッド2bに摺接して化学機械研磨される。
【0040】
本発明に係る試料研磨装置においては、試料Wを保持する保持定盤10が試料保持装置1の回転軸1aに対して前記支持孔16,16に嵌合する支持ピン15,15の移動可能範囲に相当する所定の角度範囲において傾倒することができるから、種々の原因により試料Wの研磨面と研磨パッド2bの上面との間の平行度に狂いが生じている場合においても、これに追随して保持定盤10が傾倒することにより、試料Wの全面を均等に研磨パッド2bに押し付けることが可能であり、前記試料Wの化学機械研磨を安定して行わせることができる。
【0041】
以上の如く行われる化学機械研磨において、前記試料Wの研磨面は、研磨パッド2bとの摺接による摩擦熱により昇温することから、全面に亘って均等な研磨レートを実現するためには、研磨中の試料Wの温度を制御し、全面に亘って可及的均等な温度分布を実現することが必要である。
【0042】
図1に示す試料保持装置1の保持定盤10には、試料W吸着のために設けた吸気通路25のやや上位置に媒体流路4が形成されており、保持定盤10に吸着保持された試料Wは、前記媒体流路4に供給される冷却媒体との間の熱交換により保持定盤10の側から冷却され、所望の温度分布を得るべく温度制御されるようになしてある。
【0043】
図2は、図1のII−II線による保持定盤10の横断面図であり、媒体流路4の平面的な形成態様が示されている。本図に示す如く媒体流路4は、試料Wの保持面となる保持定盤10の下面と平行をなす面内において、その略全面に亘り、中心部から外縁部に向けて渦巻き状をなして形成されており、中心側の端部及び外縁側の端部には、冷却媒体の給排路40,41が夫々連設されている。
【0044】
前記給排路40,41は、図1に示す如く、媒体流路4の形成面のやや上位置において中心側に折り返されて保持定盤10の上面に連通させてあり、回転基台11及び回転軸1aの内部に延設された給排管42,43に接続されている。更にこれらの給排管42,43は、冷却媒体としての冷却水の給水ポンプPと前記冷却水の排水タンクTとに、流路切換え器44を介して接続されている。
【0045】
流路切換え器44としては、例えば、2位置切り換え式の電磁弁を用いることができ、給排管42,43は、流路切換え器44の切換え位置に応じて、前記給水ポンプPと排水タンクTとに選択的に接続されるようになしてある。該流路切換え器44は、通常時においては、図示の如く、給排管43を給水ポンプPに給排管42を排水タンクTに夫々接続する切換え位置にあり、このとき給水ポンプPから供給される冷却水は、前記給排管43及び給排路41を経て前記媒体流路4の外縁側端部に導入され、図2に示す如く形成された媒体流路4内を、外縁側から中心側に向けて流れ、この間に前記保持定盤10に保持された研磨中の試料Wとの間で熱交換し、中心側端部に連通する給排路40及び給排管42を経て排水タンクTに排出される。なお給水ポンプPの吐出側には、流路切換え器44の上流側に熱交換器45が配してあり、媒体流路4に送り込まれる冷却水は、前記熱交換器45との間の熱交換により略一定の温度に保たれている。
【0046】
本発明に係る試料研磨装置においては、前記媒体流路4が、図2に示す如く渦巻き状をなして形成されていることから、該媒体流路4内を流れる冷却水と試料Wとの間にて前述の如く行われる熱交換に際し、単位面積の試料Wとの間にて熱交換する冷却水の量は、該試料Wの全面に亘って略同量となり、全面に亘って略均等な条件下にて熱交換を行わせることができる。
【0047】
このように本発明に係る試料研磨装置においては、保持定盤10に渦巻き状をなして形成された媒体流路4を備えることから、研磨中の試料Wに、全面に亘って可及的に均一な温度分布を実現し、温度の影響を受け易い化学的な研磨の研磨レートを均一化して、平坦度の良好な安定した化学機械研磨を行わせることができる。また試料Wの研磨レートは、前記熱交換器45の制御により、媒体流路4への導入水の温度を調節することにより自在に加減することができる。
【0048】
更に、本発明に係る試料研磨装置においては、媒体流路4に至る冷却水への給水路の中途に配した流路切換え器44の動作により、冷媒流路4における冷却水の流れ方向の切換えが可能であり、この切換えを実際の研磨状態に応じて変更することにより、より良好な平坦度を得ることができる。
【0049】
図1に示す如く流路切換え器44には、温度制御部5の出力が与えられており、流路切換え器44の切換え動作が、温度制御部5から与えられる動作指令に応じて行われるようにしてある。温度制御部5の入力側には膜厚計6の出力が与えられている。この膜厚計6は、研磨済みの試料Wを保管すべく設けられた図示しない保管ステーションに設けてあり、前述した研磨を終えて前記保管ステーションに搬出された試料Wの研磨量を、その周縁部と中心部とを含む複数か所に設定された測定位置にて測定し、この測定結果を出力する測定器であり、その構成については公知であるので、図1中にはブロックとして略示してある。
【0050】
なお膜厚計6による研磨量の測定は、研磨済みの試料Wの全数に対して行ってもよいが、夫々の測定結果に基づく温度制御部5の動作が頻繁に行われることを防ぐべく、所定数の試料Wの研磨終了毎に、最終的に研磨された製品試料に対して行うようにするのがよい。また研磨される試料Wは、半導体基板上に導電体層、半導体層及び絶縁体層が複数層に亘って積層形成されており、膜厚計6による正確な研磨量の測定が難しいことが多いことから、所定数の試料Wの研磨終了毎に、例えば、半導体基板そのもの、又は半導体基板に単層の導電体膜、半導体膜又は絶縁体膜が形成され、表面の凹凸が少ない測定用試料(モニタウエハ)の研磨を実施し、このモニタウエハの研磨量を測定するようにしてもよい。この場合、モニタウエハ上の膜の厚さを十分に厚くしておき、複数回の研磨量測定に使用できるようにするのが好ましい。
【0051】
膜厚計6は、試料研磨装置の駆動、試料研磨装置への試料Wの供給及び搬出、同じく前記モニタウエハの供給及び搬出等を含めた研磨工程の全体を管理するプロセス制御部7からの動作指令に応じて測定動作を行い、温度制御部5は、前記測定動作毎に膜厚計6から与えられる測定結果に基づいて試料Wの中心部及び周縁部での研磨量を後述の如く求め、以下の如く流路の切換えを行う構成となっている。
【0052】
図3は、プロセス制御部7及び温度制御部5の動作内容を示すフローチャートであり、研磨プロセスの動作開始後、プロセス制御部7からの制御指令に応じて研磨対象となる試料Wが試料研磨装置に順次供給され、該試料Wに対する研磨(ステップ1)が、所定枚数に達する(ステップ2)まで連続して行われる。
【0053】
このとき流路切換え器44は、図1に示す切換え位置にあり、媒体流路4内部の冷却水は、保持定盤10の外縁部から中心部に向けて流れており、ステップ1での試料Wの研磨は、外縁部から中心部に向けて流れる冷却水との熱交換により温度制御されつつ行われ、この間に研磨された試料Wは、製品試料として搬出され、次工程にて使用されるまでの間、前記保管ステーションに保管される。
【0054】
製品試料の研磨枚数が所定数に達するとプロセス制御部7の動作により、研磨量の測定のために用意されたモニタウエハMWが試料研磨装置に供給され、該モニタウエハMWに対する研磨が実施され(ステップ3)、この研磨終了後、プロセス制御部7からの動作指令により膜厚計6が動作し、研磨済みのモニタウエハMWに対して研磨量の測定が行われる(ステップ4)。
【0055】
図4は、膜厚計6による研磨量の測定点の一例を示す説明図である。前記ステップ4での研磨量の測定は、図中に×印を付して示す如く、モニタウエハMWの中央部近傍において、その中心点▲1▼、及び中心点▲1▼の周囲の所定の円周上に等配をなして設定された4点(▲2▼〜▲5▼)に対して行われ、また周縁部近傍において、所定の円周上に等配をなして設定された4点(▲6▼〜▲9▼)に対して行われ、このような各測定点(▲1▼〜▲9▼)において得られた研磨量Xi (i=1〜9)の測定値、実際には、モニタウエハMW上の各測定点における研磨前の膜厚の値から研磨後の膜厚の値を減算した値が温度制御部5に出力される。なおこの測定は、中央部及び周縁部の少なくとも各1点において行えばよい。また、各測定点における研磨後の膜厚の値は、温度制御部5内のメモリに記憶され、次回の研磨量の測定に際し研磨前の膜厚の値として用いられる。
【0056】
温度制御部5は、膜厚計6から与えられる前記研磨量Xi を用い、モニタウエハMWの中央部の平均研磨量Xc 、及び周縁部の平均研磨量Xe を、夫々次式により算出する(ステップ5)。
【0057】
【数1】
Figure 0004059567
【0058】
次いで温度制御部5は、中心部の平均研磨量Xc と周縁部の平均研磨量Xe とを比較し(ステップ6)、Xc >Xe である場合には、流路切換え器44に動作指令を発し、図1と逆の切換え位置を得るべく流路切換え器44に動作指令を発し、媒体流路4における冷却水の流れ方向を中心部から外縁部に向かう方向とする(ステップ7)。これにより、以降の研磨において、大なる研磨量が得られている試料Wの中央部の温度が下がり、化学研磨が抑制され、前述した研磨量の不均衡が是正される。
【0059】
一方、ステップ6での比較の結果、Xc ≦Xe である場合、温度制御部5は、図1に示す切換え位置に復帰すべく流路切換え器44に動作指令を発し、媒体流路4における冷却水の流れ方向を外縁部から中心部に向かう方向とする(ステップ8)。これにより、以降の研磨において、大なる研磨量が得られている試料Wの周縁部の温度が下がり、化学研磨が抑制されて、前述した研磨量の不均衡が是正される。
【0060】
この後プロセス制御部7は、研磨すべき試料の全数の処理が完了したか否かを判定し(ステップ9)、未処理試料が有る場合には、ステップ1に戻って前述した動作を繰り返し、全数の処理が終了したとき一連の動作を完了する。なおステップ9での判定は、前記ステップ2において、研磨枚数が所定枚数の達していないと判定された場合にも行われる。
【0061】
以上のフローチャートは、所定数の試料Wの研磨終了毎に供給されるモニタウエハMWの研磨量を膜厚計6により測定し、この測定結果に基づいて冷却水の流れ方向を変更する場合の動作内容を示すものであるが、前述の如く、所定数の試料Wの研磨終了毎に、最終的に研磨された製品試料の研磨量を測定し、この測定結果に基づいて冷却水の流れ方向を変更する動作も可能であり、この場合、図4に示すフローチャートのステップ3を省略し、ステップ4において対象となる製品試料の研磨量測定を行わせるようにすればよい。
【0063】
また以上の実施の形態においては、研磨量の測定を研磨処理の終了後に行う構成としてあるが、例えば、一回の研磨処理において必要とされる研磨量が大きい場合、換言すれば、一回の研磨処理において研磨すべき膜厚が厚い場合等においては、研磨処理の途中で一旦処理を中断し、研磨途中の試料の研磨量を測定して、その結果に基づいて流路切換え器44の切換え動作を行わせ、その後研磨処理を再開する構成とすることも可能である。
【0064】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明に係る試料研磨装置においては、化学機械研磨される試料をその一面に保持する保持定盤の内部に中心部から外縁部に向けて渦巻き状をなす媒体流路を形成し、該媒体流路中心側及び外縁側の端部給排路と、媒体流路内での冷却媒体の流れ方向を、中心側の給排路から外縁側の給排路へ向かう方向と外縁側の給排路から中心側の給排路へ向かう方向とに切り換える流路切換え手段とを設けると共に、研磨済みの試料の中央部及び周縁部における研磨量を膜厚計により測定し、この測定結果に基づいて流路切換え手段に切換え動作を行わせる制御手段を備えたから、冷却媒体の流れ方向を実際の研磨状態に応じて変更することができ、試料中央部と周縁部との間での研磨レートを、実状に合わせて均一化することができる。
【0065】
また、化学機械研磨される試料を保持する保持定盤が回転基台に傾倒自在に取り付けてあるから、試料の研磨中に保持定盤が傾倒することにより、前記試料と研磨パッドの表面との間の平行度の狂いが吸収され、両者を均等な接触圧にて摺接させることができる。
【0066】
また、媒体流路に供給される冷却媒体の温度を制御する媒体温度制御手段を備えたから、前記冷却媒体と熱交換する試料の温度を適宜に変更することができ、高温下での高研磨レートでの研磨と、低温下での精密な研磨とを適宜に実現することが可能となる。
【0070】
また、膜厚計による研磨量の測定を、所定数の試料の研磨終了毎に、最終的に研磨された製品試料に対して実施するから、この測定結果に基づく冷却媒体の流れ方向の切換え頻度を低減でき、頻繁な制御動作による不安定な操業状態の発生を防止することができ、また前述した研磨量の測定を、製品試料に対してではなく、所定数の試料の研磨終了毎に供給される測定用試料に対して行うから、正確な研磨量の測定結果が得られ、この結果に基づく冷却媒体の流れ方向の切換えにより、実状に合わせた研磨レートの均一化を確実に達成することができる
更に本発明に係る化学機械研磨方法においては、前述した構成の試料研磨装置を用いるから、均等な温度分布を有する試料を均等な接触圧にて研磨パッドに摺接させることができ、全面に亘って均一な研磨レートでの化学機械研磨を実現することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る試料研磨装置の構成を示す側断面図である。
【図2】図1のII−II線による保持定盤の横断面図である。
【図3】プロセス制御部及び温度制御部の動作内容を示すフローチャートである。
【図4】膜厚計による研磨量の測定点の一例を示す説明図である。
【図5】従来の試料研磨装置の概略構成を示す模式図である。
【図6】媒体流路を備えた従来の試料研磨装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 試料保持装置
1a 回転軸
2 研磨定盤
2a 回転軸
2b 研磨パッド
3 スラリ供給装置
4 媒体流路
5 温度制御部
6 膜厚計
7 プロセス制御部
10 保持定盤
11 回転基台
44 流路切換え器
45 熱交換器

Claims (6)

  1. 化学機械研磨される試料をその一面に保持し、この保持面と略直交する軸回りに回転する回転基台に取り付けられた保持定盤と、
    該保持定盤の回転軸と略平行をなす軸回りに回転する研磨定盤と、
    該研磨定盤の一面に支持され、前記保持定盤の保持面に保持させた試料に押し当てられる研磨パッドと、
    該研磨パッドと前記試料との間に研磨スラリを供給するスラリ供給手段とを具備し、
    前記試料を、保持定盤及び/又は研磨定盤の回転により研磨スラリを介して研磨パッドに摺接せしめて化学機械研磨する試料研磨装置において、
    前記保持定盤の内部に、その中心部から外縁部に向けて渦巻き状をなして形成され、中心側及び外縁側の端部の夫々に、冷却媒体の供給及び排出のための給排路が設けてある媒体流路と、
    該媒体流路に前記給排路を介して前記冷却媒体を給排する媒体給排手段と、
    記媒体流路内での前記冷却媒体の流れ方向を、中心側の給排路から外縁側の給排路へ向かう方向と、外縁側の給排路から中心側の給排路へ向かう方向とに切り換える流路切換え手段と
    研磨済み又は研磨途中の試料の研磨量を、その中央部及び周辺部を含めた複数か所にて測定する膜厚計と、
    該膜厚計により測定された試料の中央部の研磨量が周辺部の研磨量よりも大きい場合、前記冷却媒体の流れ方向を中心側の給排路から外縁側の給排路へ向かう方向に切換え、中央部での研磨量が周辺部での研磨量よりも小さい場合、前記冷却媒体の流れ方向を外縁側の給排路から中心側の給排路へ向かう方向に切り換えるように前記流路切換え手段に切換え動作を行わせる制御手段と
    を具備することを特徴とする試料研磨装置。
  2. 前記保持定盤は、その回転軸に対して所定角度内での傾倒自在に前記回転基台に取り付けてある請求項1記載の試料研磨装置。
  3. 前記媒体流路に供給される冷却媒体の温度を制御する媒体温度制御手段を備える請求項1又は請求項2記載の試料研磨装置。
  4. 前記膜厚計による研磨量の測定を、所定数の試料の研磨終了毎に、製品試料に対して行う請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の試料研磨装置。
  5. 前記膜厚計による研磨量の測定を、所定数の試料の研磨終了毎に供給される測定用試料に対して行う請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の試料研磨装置。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の試料研磨装置の保持定盤で試料を保持する工程と、
    該保持定盤の回転軸と略平行をなす軸回りに回転可能な研磨定盤の一面に研磨パッドを支持する工程と、
    前記試料が均等な接触圧で摺接するように、前記研磨パッドを前記試料に押し当てる工程と、
    前記媒体流路に冷却媒体を流しながら前記保持定盤及び/又は研磨定盤を回転して前記試料を化学機械研磨する工程とを具備することを特徴とする化学機械研磨方法。
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