JP4059133B2 - 無電解ニッケル−金めっき方法 - Google Patents
無電解ニッケル−金めっき方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4059133B2 JP4059133B2 JP2003128287A JP2003128287A JP4059133B2 JP 4059133 B2 JP4059133 B2 JP 4059133B2 JP 2003128287 A JP2003128287 A JP 2003128287A JP 2003128287 A JP2003128287 A JP 2003128287A JP 4059133 B2 JP4059133 B2 JP 4059133B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gold plating
- electroless
- gold
- electroless nickel
- nickel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Chemically Coating (AREA)
- Manufacturing Of Printed Wiring (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無電解ニッケル−金めっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント配線板上に形成された例えば銀又は銅等からなる導体パターン上にのみ選択的にニッケル−金めっき皮膜を形成する方法として、電解めっき法と無電解めっき法が広く知られている。これらのうち、電解めっき法が、処理コスト及び浴安定性の観点で有利であることから、主として採用されている。
【0003】
一方、近年においては、半導体デバイス等の配線基板への電子回路の実装を、より高集積化及び/又は極微細化する必要性が生じてきている。しかし、上記電解めっき法は、電源リードに対する設計上の制約があり、また、孤立パターン上へのめっき皮膜の形成が比較的困難であるため、上記要求に対応できない場合が生じている。従って、今後はこのような点で有利である無電解めっき法に対する必要性が高まるものと予想される。
【0004】
この無電解めっき法によるニッケル−金めっきは、従来、概して以下のような工程で行われていた。まず、金属導体部を形成したプリント配線板を、脱脂液に浸漬し、続いて酸洗浄した後、無電解めっきの核となる例えばパラジウム系の触媒を吸着させる。その後、該配線板を無電解ニッケルめっき液、置換金めっき液、及び無電解金めっき液に順次浸漬して、所望のニッケル−金めっき皮膜で金属導体部を被覆したプリント配線板を得る。そして、各工程の合間には数分間の流水洗浄処理が行われるので、先の工程で用いた液が後の工程で用いる液に混入することはない。
【0005】
一方、上述のような工程により無電解ニッケル−金めっき皮膜が形成されるより前に金属導体パターンが基板上に形成されるが、その形成方法は、主としてエッチング法或いは印刷法によるものである。このような方法を用いた場合、所望の導体パターン領域からはみ出した位置に、微量の金属導体部が形成される場合がある。しかし、従来の無電解めっき法では、このはみ出した金属導体部のみを選択的に除去することができないだけではなく、はみ出した該金属導体部上にめっきが析出してしまうこともあった(以下、この析出を「異常析出」という。)。
【0006】
上記異常析出は、特に無電解金めっき工程の段階で起こり、最終的に得られる無電解ニッケル−金めっき製品の歩留まりを低下させる要因となっていた。このめっきの析出は、詳細なメカニズムについてはまだ解明されていないが、概ね以下のことが原因と考えられている。すなわち、導体パターン領域からはみ出した位置に形成された微量の金属導体部が、後の工程で浸漬される無電解ニッケルめっき液中の下記の金イオン由来の化学種の析出反応に対して活性な状態となる。そして、その後の無電解金めっき工程において、無電解金めっき液に長時間浸漬されることにより、該めっき液中の金イオン由来の化学種が活性な状態にある金属導体部の表面に金となって徐々に析出するものと考えられる。
【0007】
このような所望の導体パターン領域以外の位置に析出した金めっきを除去する方法として、例えば特許文献1では、置換金めっき液に配線板を浸漬した後であって、無電解金めっき液に該配線板を浸漬する前に、シアン化合物を含有する溶液で処理することにより、所望の導体パターン領域以外の位置に析出した置換金めっきを選択的に除去する方法が提案されている。
【0008】
更に、特許文献2には、無電解金めっき液自体に非イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性ポリマーを添加することにより、導体パターン領域以外の位置への異常析出の防止を意図した無電解金めっき液自体の特性の改善方法について提案されている。
【0009】
また、特許文献3では、シアン含有無電解金めっき液自体にニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム及び/又はp−ニトロ安息香酸を添加することにより、導体パターン領域以外の位置への異常析出の防止を意図した無電解金めっき液自体の特性の改善方法について提案されている。
【0010】
そして、特許文献4には、シアン含有無電解金めっき液自体にジメチルアミンを添加することにより、導体パターン領域以外の位置への異常析出の防止を意図した無電解金めっき液自体の特性の改善方法について提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平09−235678号公報
【特許文献2】
特開平06−280039号公報
【特許文献3】
特開平08−060377号公報
【特許文献4】
特開平08−060378号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献1〜4に記載の従来の無電解ニッケル−金めっき方法について詳細に検討を行ったところ、いずれの方法も導体パターン領域からはみ出して形成された微量の金属導体部上に析出した金めっきを十分に除去できていないことを見出した。
【0013】
すなわち、特許文献1にかかる方法は、所望の導体パターン領域に形成された金属導体部から、いわゆる「めっき広がり(金広がり)」により該領域以外の位置にはみ出して形成された金めっきを選択的に除去する方法であって、所望の導体パターンからはみ出した位置に形成された微量の金属導体部上に析出した金めっきを十分に除去できていないことを本発明者らは見出した。また、シアン化合物を用いる特許文献1に記載の方法は、シアン化合物を1〜100g/L含有する処理液を使用するため、かかる高濃度のシアン化合物溶液を用いると所望パターン上に析出された置換金めっき皮膜をも溶解してしまう点、及びシアン化合物の毒性が強い点でも問題があることを本発明者らは見出した。
【0014】
更に、特許文献2〜4に記載の方法は、いずれも金属導体部上にのみ置換金めっき皮膜を形成するため、「めっき広がり」を抑制するという点では優れているものの、所望パターン領域からはみ出した位置に形成された金属導体部上への金めっき皮膜の形成までも抑制できるものではないことを、本発明者らは見出した。
【0015】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、めっきを施されるべき導体パターン領域からはみ出した位置に微量の導体部が形成されていても、該微量の導体部上にはめっき皮膜を形成せず、前記導体パターン領域内に形成された導体部上にのみ選択的にめっき皮膜を形成する無電解ニッケル−金めっき方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、無機硫黄化合物が金属導体部の縁端部上への金めっきの析出のみを選択的に抑制する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の無電解ニッケル−金めっき方法は、基体に形成された導体部上に無電解ニッケルめっき皮膜を形成する無電解ニッケルめっき工程と、該無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、更に前記置換金めっき皮膜上に無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程と、を含む無電解ニッケル−金めっき方法であって、前記無電解ニッケルめっき工程と前記置換金めっき工程との間に、無機硫黄化合物を含有する水溶液を用いて、前記無電解ニッケルめっき工程により得られた被めっき物を処理する硫黄処理工程を含むことを特徴とする。
【0018】
上記硫黄処理工程を設けることにより本発明の目的が達成される理由については、明確には解明されていないが、本発明者らは以下のように考えている。
【0019】
すなわち、本発明の無電解ニッケル−金めっき方法は、微量の金属導体部上にいわゆる触媒毒として作用する無機硫化物由来の硫黄を金めっきより先の段階で吸着させることにより、該微量の金属導体部上への金めっきの形成を阻害する。一方、所望導体パターン領域内の金属導体部上には相対的に少量の硫黄しか吸着させないため、該所望導体パターン領域の金属導体部上への金めっき皮膜の形成にほとんど影響を与えないものと考えられる。
【0020】
また、上記導体部の材料は、電気の良導体である金属導体であることが好ましく、その中でも特に導電率の高い銀又は銅であることが更に好ましい。
【0021】
そして、基体は、絶縁性の高いセラミックス基体であることが好ましい。
【0022】
また、上記無機硫黄化合物は、硫化カリウム、硫化ナトリウム九水和物及び硫化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これらの無機硫黄化合物は、比較的迅速且つ容易に金属導体部を硫黄で被毒させる傾向にあるので、工程の短縮化等に繋がる。この中でも、比較的有害性又は腐食性の強くない硫化カリウムが、取り扱いの観点から特に好ましい。
【0023】
更に、前記水溶液中の前記無機硫黄化合物の濃度が硫化物イオン(S2-)濃度として0.1〜50mg/Lであると好ましい。
【0024】
また、置換金めっき工程又は無電解金めっき工程において、シアン化合物を含有しない金めっき液を用いることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明の無電解ニッケル−金めっき方法は、基体に形成された導体部上に無電解ニッケルめっき皮膜を形成する無電解ニッケルめっき工程と、該無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、更に前記置換金めっき皮膜上に無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程と、を含む無電解ニッケル−金めっき方法であって、前記無電解ニッケルめっき工程と前記置換金めっき工程との間に、無機硫黄化合物を含有する水溶液を用いて、前記無電解ニッケルめっき工程により得られた被めっき物を処理する硫黄処理工程を含むことを特徴する。
【0027】
(前処理)
本発明の無電解ニッケル−金めっき方法では、従来のめっき方法と同様に、前処理として脱脂、酸洗浄及び触媒付与を行うことができる。従って、概して以下のような前処理を行った後に各めっき工程を行ってもよい。すなわち、セラミックス製又は樹脂製等の基板上に銀又は銅等の材料を用いた導体パターンを印刷法又はエッチング法等により形成して得られた配線板を、まず脱脂液浸漬して、表面の油脂汚れ等を除去する。続いて該配線板を水洗後、導体パターンの表面を均一化するために、通常は、硫酸過酸化水素水溶液等のエッチング液で該表面をマイルドエッチングする。更に水洗後、希硫酸水溶液等を用いて該配線板の表面を洗浄する。次に水洗後、例えば置換タイプのパラジウム触媒液等で該配線板の導体パターン上にのみ触媒を形成させる。
【0028】
(無電解ニッケルめっき工程)
無電解ニッケルめっき工程は、上述の前処理終了後に水洗された配線板を無電解ニッケルめっき液に浸漬することにより行われる。
【0029】
無電解ニッケルめっき液は、従来用いられていたものであれば特に限定されない。従って、例えば、該無電解ニッケルめっき液は、塩化ニッケル若しくは硫酸ニッケル等のニッケルイオン源及び次亜りん酸塩若しくはアミンホウ素化合物等の還元剤に加えて、クエン酸、マロン酸若しくは酒石酸等の有機酸或いはその塩等の錯化剤、又はその他のpH調整剤等の通常用いる各種添加剤を適量含むことができる。
【0030】
配線板浸漬時の無電解ニッケルめっき液の温度及び該めっき液への配線板の浸漬時間は、所望の膜厚のニッケルめっき皮膜を得ることができるように、適宜設定することができる。すなわち、ニッケルめっき皮膜を比較的厚くしたい場合は、該めっき液の温度を高めに設定し、及び/又は、配線板の浸漬時間を長くすればよい。逆に、ニッケルめっき皮膜を比較的薄くしたい場合は、該めっき液の温度を低めに設定し、及び/又は、配線板の浸漬時間を短くすればよい。但し、ニッケルめっき皮膜の膜厚はその下側にある導体部が露出しない程度の膜厚である必要がある。
【0031】
この工程において、配線板の導体パターン上にある触媒及び還元剤の作用により、該触媒上でニッケルイオンが還元されてニッケルめっき皮膜が形成される。
【0032】
上記無電解ニッケルめっき工程が終了したら、配線板は水洗される。
【0033】
(硫黄処理工程)
本発明の無電解ニッケル−金めっき方法は、上記水洗後に、本発明の大きな特徴である硫黄処理工程を行う。
【0034】
本明細書において硫黄処理工程とは、無機硫黄化合物を含有する水溶液(以下、「無機硫黄化合物水溶液」という。)を用いて配線板を処理する工程をいう。具体的な処理工程としては、例えば、配線板を無機硫黄化合物水溶液に浸漬して処理する工程、或いは無機硫黄化合物水溶液を配線板に吹き付けて処理する工程などを挙げることができる。
【0035】
無機硫黄化合物としては、水溶液中で硫化物イオン(以下、「S2-」という。)を生成するものが好ましい。従って、例えば、硫化カリウム、硫化ナトリウム九水和物若しくは硫化アンモニウム等の硫化物塩などを用いることができ、これらのうち二以上を混合して用いることもできる。これらの中で、比較的有害性及び腐食性の低い硫化カリウムを用いることが更に好ましい。
【0036】
また、無機硫黄化合物水溶液中の無機硫黄化合物の濃度は、S2-濃度に換算して0.1〜50mg/Lの範囲であることが好ましい。S2-濃度が0.1mg/L未満では、導体パターン領域外に無電解金めっきが異常析出することを抑制する効果がほとんど得られない傾向にある。また、S2-濃度が50mg/Lを越えると、水溶液中でのS2-の安定性が悪いため、短時間で液の濁りや成分の沈降が起こり使用に適さない傾向にある。
【0037】
硫黄処理工程における無機硫黄化合物水溶液の温度は特に制限されないが、取り扱いの容易さ等の観点から5〜35℃であることが好ましい。
【0038】
また、硫黄処理工程の所要時間は1〜10分であることが好ましい。硫黄処理時間が1分未満であると、硫黄処理により得られるべき効果を十分に得ることができない傾向にある。また、硫黄処理時間が10分を超えると、得られるべき効果の大きさに変化が現れない傾向にあるので、それ以上の処理は単なる時間の浪費になってしまい、作業効率が低下する。
【0039】
本発明の無電解ニッケル−金めっき方法は、置換金めっき工程の前にこの硫黄処理工程を行うことにより、それ以降に行われる置換金めっき工程及び無電解金めっき工程において、配線板上の導体パターン領域からはみ出した位置に形成された微量の導体部上への金めっき皮膜の形成を阻害することができる。この要因の一つとしては、導体パターン領域からはみ出した位置に形成された微量の導体部上に、無機硫黄化合物由来の硫黄又は硫黄化合物が吸着し、該硫黄又は硫黄化合物が、金の該微量の導体部上への吸着を阻害する触媒毒として作用することが考えられる。
【0040】
一方、該硫黄又は硫黄化合物は、所望の導体パターン領域内にある金属導体部上には相対的に少量しか吸着しないため、該所望の導体パターン領域の金属導体部上への金めっき皮膜の形成をほとんど阻害しないものと考えられる。
【0041】
なお、上記硫黄又は硫黄化合物の吸着量に差異が生ずる要因の一つとしては、銅体表面へのそれら物質の吸着がいわゆる構造敏感性を有することが考えられる。すなわち導体パターンの縁端部は、導体パターンのその他の部分と比較して、不規則な表面構造(例えば、ステップ、原子欠陥等)を有する傾向にあり、かかる不規則な表面構造上に硫黄又は硫黄化合物が優先的に吸着すると推測される。
【0042】
(置換金めっき工程)
置換金めっき工程は、上述の硫黄処理を施された配線板を水洗した後、置換金めっき液に浸漬することにより行われる。
【0043】
置換金めっき液は、ニッケルと該液中の金イオンとの置換反応により、ニッケルめっき皮膜上に金めっき皮膜を形成するために従来用いられていたものであれば特に限定されない。従って、例えば、該置換金めっき液は、シアン化金ナトリウム若しくはシアン化金カリウム等のシアン系金イオン源(シアン化金塩)或いは亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩若しくは塩化金塩等の非シアン系金イオン源、亜硫酸塩若しくはカルボン酸塩等の錯化剤、又はその他の置換金めっき液に通常用いる各種添加剤を適量含むことができる。
【0044】
この置換金めっき液中には、シアン化合物を含有しないことが好ましい。シアン化合物は概して毒性が強いため、その取り扱いが困難である傾向にあり、また、シアン化合物の濃度が高すぎる場合には、それらの金めっき液を浸漬した際に、下地の導体部或いは無電解ニッケル皮膜が溶解する傾向にある。
【0045】
配線板浸漬時の置換金めっき液の温度は、所望の膜厚の置換金めっき皮膜を得ることができるように適宜設定することができるが、80〜90℃程度であることが好ましい。置換金めっき液の温度が80℃より低いと、金の析出速度が遅くなりすぎる傾向にあり、90℃より高いと、置換金めっき液が速やかに揮発してしまう、又は該めっき液中の成分が熱分解してしまうため、該液中の金イオンの安定性が著しく低下する傾向にある。
【0046】
また、置換金めっき液のpHは、該めっき液の液安定性又は置換金めっき皮膜の膜厚確保の観点から、シアン系金イオン源を含有する場合は5〜7、非シアン系金イオン源を含有する場合は6〜9であることが好ましい。
【0047】
そして該めっき液への配線板の浸漬時間は、所望の膜厚の置換金めっき皮膜を得ることができるように、適宜設定することができる。すなわち、置換金めっき皮膜を比較的厚くしたい場合は、配線板の該めっき液への浸漬時間を長くすればよい。逆に、置換金めっき皮膜を比較的薄くしたい場合は、配線板の該めっき液への浸漬時間を短くすればよい。但し、置換金めっき工程を行う際は、ある程度の膜厚(30〜100nm程度)の金めっき皮膜が形成された後は、それ以上の時間浸漬しても該皮膜の膜厚はほとんど変化しない傾向にあるため、これを考慮して製造コスト削減の観点から浸漬時間を設定することが好ましい。
【0048】
この工程により、配線板は、導体パターン領域上にのみ比較的薄い置換金めっき皮膜を形成され、導体パターン領域からはみ出した位置に形成された導体部上には置換金めっきが析出しない。
【0049】
更に、導体パターン領域上に形成された置換金めっき皮膜が導体パターン領域外にまではみ出る「めっき広がり」もほとんど認められない。これは、上述の硫黄処理により導体パターン上のニッケルめっき皮膜の縁端部に比較的多くの硫黄が吸着し、その部分上には金めっき皮膜が形成されないので、本来ならその部分に形成された金めっき皮膜から生ずる「めっき広がり」が抑制されるためと考えられる。
【0050】
(無電解金めっき工程)
無電解金めっき工程は、上述の置換金めっき皮膜を施された配線板を水洗した後、無電解金めっき液に浸漬することにより行われる。
【0051】
ここで、本明細書における無電解金めっきとは、還元剤の作用により金イオンを金に還元して配線板上にめっき皮膜を析出させることであり、上述した置換金めっきを除外する概念である。
【0052】
無電解金めっき液は、従来用いられていたものであれば特に限定されない。従って、例えば、該無電解金めっき液は、シアン化金カリウム、亜硫酸金ナトリウム、塩化金酸ナトリウム等の水溶性金イオン源、シアン化物イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、「塩化物イオン」(Cl-)等の水溶性イオン源を供給する錯化剤、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、チオ尿素、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤、又はその他のpH調整剤等の通常用いる各種添加剤を適量含むことができる。
【0053】
この無電解金めっき液には、上述した置換金めっき液と同様の理由により、シアン化合物を含有しないことが好ましい。
【0054】
配線板浸漬時の無電解金めっき液の温度は、所望の膜厚の無電解金めっき皮膜を得ることができるように適宜設定することができるが、60〜80℃程度であることが好ましい。無電解金めっき液の温度が60℃より低いと、金の析出速度が遅くなりすぎる傾向にあり、80℃より高いと、該めっき液の液安定性が著しく低下する傾向にある。
【0055】
また、無電解金めっき液のpHは、該めっき液の液安定性等の観点から、シアン系金イオン源を含有する場合は13以上、非シアン系金イオン源を含有する場合は6〜9であることが好ましい。
【0056】
本発明においては、無電解金めっき工程が厚膜の金めっきを形成するために、従来の無電解金めっき工程と同様に比較的長時間に亘る処理が必要となるにも関わらず、配線板の導体パターン領域上にのみ無電解金めっき皮膜が形成され、該導体パターン領域からはみ出した位置に形成された金属導体部上へは無電解金めっき皮膜は形成されない。また、置換金めっき工程と同様に、導体パターン領域上に形成された無電解金めっき皮膜が導体パターン領域外にまではみ出る「めっき広がり」もほとんど認められない。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
本実施例のめっき試験用配線板として、10cm×10cm×1mmのセラミックス基板上に印刷法により銀ペーストで配線を形成したものを使用した。
【0059】
最初に、基板の表面の油脂や汚れ等を除去するために、酸性脱脂液CLC−5000(日立化成工業株式会社製、製品名)を50℃に調整して、その液中に4分間該配線板を浸漬した。更に余分な界面活性剤を除去するために、50℃の純水で1分間湯洗した後、水洗処理を2分間行った。次に表面の形状を均一化するために、硝酸水溶液(100mL/L)に配線板を浸漬し、室温で30秒間浸漬処理するソフトエッチング処理を行った後、水洗処理を1分間行った。続いて、表面の酸化膜を除去するために硫酸(100mL/L)に浸漬し、室温で1分間浸漬処理を行い、その後、水洗処理を1分間行った。次に置換パラジウム触媒液SA−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、室温で5分間浸漬処理を行った後、水洗処理を5分間行い、めっき処理前の配線板を得た。
【0060】
次に、該配線板を85℃の無電解Ni−Pめっき液NIP−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬した状態で25分間維持し、ニッケル−リンの合金めっき皮膜を5μm程度形成した。
【0061】
そして、水洗処理を1分間行った後、該配線板を、硫化カリウム濃度が1.7mg/L(S2-濃度として0.5mg/L)である硫化カリウム水溶液に浸漬し、10℃で2分間硫黄処理を行い、更に水洗処理を1分間行った。
【0062】
次に該配線板を置換金めっき液HGS−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、85℃で10分間浸漬処理して、0.05〜0.1μm程度の膜厚の金めっき膜を形成した。
【0063】
更に該配線板の水洗処理を1分間行った後、最後に無電解金めっきHGS−5400(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、65℃で40分間浸漬処理して、0.4〜0.6μm程度の膜厚の金めっき膜を形成して、所望の配線板を得た。
【0064】
(実施例2〜10)
実施例2〜10においては、上記実施例1の無電解ニッケル−金めっき方法のうち、硫化カリウム濃度(S2-濃度)、硫黄処理温度及び硫黄処理時間を種々変化させて、実施例1と同様の方法により無電解ニッケル−金めっきを行い、該めっきを施した配線板を得た。実施例1〜10のそれらの条件についての具体的な数値は表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例11〜20)
実施例11〜20においては、無機硫黄化合物として実施例1の硫化カリウムに代えて硫化ナトリウム九水和物を用いた。そして、その水溶液中の濃度、硫黄処理温度及び硫黄処理時間を種々変化させて、実施例1と同様の工程により無電解ニッケル−金めっきを行い、該めっきを施した配線板を得た。実施例11〜20のそれらの条件についての具体的な数値は表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例21〜28)
実施例21〜28においては、無機硫黄化合物として硫化カリウムを用い、その水溶液中の濃度、硫黄処理温度及び硫黄処理時間を種々変化させて、実施例1と同様の方法により無電解ニッケル−金めっきを行い、該めっきを施した配線板を得た。実施例21〜28のそれらの条件についての具体的な数値は表3に示す。なお、これらの実施例のうち実施例21〜23は、硫化カリウムの水溶液中の濃度を好ましい範囲から外れた数値に調整したものであり、実施例24〜28は、硫黄処理時間を好ましい範囲から外れた数値に調整したものである。
【0069】
【表3】
【0070】
(比較例1)
比較例1においては、無電解ニッケルめっき工程の後、硫黄処理工程を行わずに置換金めっき工程及び無電解金めっき工程を行うことにより、無電解ニッケル−金めっきを施した配線板を得た。
【0071】
[金めっき異常析出評価]
上記実施例1〜28並びに比較例1の方法で得られた無電解ニッケル−金めっきされた配線板について、導体パターン領域外に金めっき皮膜が形成されているか否かを、実体顕微鏡(100倍)での視認により調べた。その結果を表1〜3の最下欄に示す。なお、各表中にある評価記号の意味(判定基準)は表4に示すとおりである。
【0072】
【表4】
【0073】
これらの表から明らかなとおり、無機硫黄化合物水溶液を用いた硫黄処理工程を介して無電解ニッケル−金めっきされた配線板は、いずれも導体部間のショートが認められなかったのに対し、該硫黄処理工程を行わずに無電解ニッケル−金めっきされた配線板は、部分的に金めっきを経由した導体部間のショートが認められた。そして、硫黄処理工程を行って無電解ニッケル−金めっきされた配線板のうち、無機硫黄化合物の水溶液中濃度が硫黄濃度として0.1〜50mg/Lの範囲内にあって、且つ硫黄処理時間が1〜10分間の範囲内にあるものは、導体部間のショートが認められないことはもちろんのこと、所望の導体パターン領域外への金の異常析出も一切認められなかった。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の無電解ニッケル−金めっきの製造方法によれば、めっきすべき導体パターン領域からはみ出した位置に微量の導体部が形成されていても、該微量の導体部上にはめっき皮膜を形成せず、前記導体パターン領域内に形成された導体部上にのみ選択的にめっき皮膜を形成することができる。
Claims (7)
- 基体に形成された導体部上に無電解ニッケルめっき皮膜を形成する無電解ニッケルめっき工程と、前記無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、前記置換金めっき皮膜上に更に無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程と、を含む無電解ニッケル−金めっき方法であって、
前記無電解ニッケルめっき工程と前記置換金めっき工程との間に、無機硫黄化合物を含有する水溶液を用いて、前記無電解ニッケルめっき工程により得られた被めっき物を処理する硫黄処理工程を含むことを特徴とする無電解ニッケル−金めっき方法。 - 前記導体部の材料が銀又は銅であることを特徴とする請求項1記載の無電解ニッケル−金めっき方法。
- 前記基体がセラミックス基体であることを特徴とする請求項1又は2記載の無電解ニッケル−金めっき方法。
- 前記無機硫黄化合物が、硫化カリウム、硫化ナトリウム九水和物及び硫化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電解ニッケル−金めっき方法。
- 前記水溶液中の前記無機硫黄化合物の濃度が硫化物イオン(S2-)濃度として0.1〜50mg/Lであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無電解ニッケル−金めっき方法。
- 前記置換金めっき工程において、シアン化合物を含有しない置換金めっき液を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の無電解ニッケル−金めっき方法。
- 前記無電解金めっき工程において、シアン化合物を含有しない無電解金めっき液を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の無電解ニッケル−金めっき方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003128287A JP4059133B2 (ja) | 2003-05-06 | 2003-05-06 | 無電解ニッケル−金めっき方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003128287A JP4059133B2 (ja) | 2003-05-06 | 2003-05-06 | 無電解ニッケル−金めっき方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004332035A JP2004332035A (ja) | 2004-11-25 |
JP4059133B2 true JP4059133B2 (ja) | 2008-03-12 |
Family
ID=33504501
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003128287A Expired - Lifetime JP4059133B2 (ja) | 2003-05-06 | 2003-05-06 | 無電解ニッケル−金めっき方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4059133B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8609256B2 (en) * | 2008-10-02 | 2013-12-17 | E I Du Pont De Nemours And Company | Nickel-gold plateable thick film silver paste |
CN106325629B (zh) * | 2015-07-06 | 2024-01-02 | 湖州胜僖电子科技有限公司 | 一种优化化学镀金析出的ito走线设计方法 |
-
2003
- 2003-05-06 JP JP2003128287A patent/JP4059133B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004332035A (ja) | 2004-11-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1322798B1 (en) | Bath and method of electroless plating of silver on metal surfaces | |
JP3892730B2 (ja) | 無電解金めっき液 | |
CN110724943A (zh) | 铜表面化学镀镍前无钯活化液及制备方法和镀镍方法 | |
JP3337802B2 (ja) | 酸化銅(i)コロイドの金属化によるダイレクトプレーティング方法 | |
EP3060696B1 (en) | Method of selectively treating copper in the presence of further metal | |
KR20030095688A (ko) | 인쇄회로기판 및 이의 도금방법 | |
JP2004510886A (ja) | 表面の半田付け性を増強させる方法 | |
JP5843249B2 (ja) | 無電解パラジウムめっき又は無電解パラジウム合金めっきの前処理用活性化液 | |
JP4059133B2 (ja) | 無電解ニッケル−金めっき方法 | |
JP5371465B2 (ja) | 非シアン無電解金めっき液及び導体パターンのめっき方法 | |
KR101873626B1 (ko) | 무전해 도금하기 위한 구리 표면을 활성화하는 방법 | |
KR100619345B1 (ko) | 반도체 패키지용 인쇄회로기판의 도금층 형성방법 및이로부터 제조된 인쇄회로기판 | |
JP4230813B2 (ja) | 金めっき液 | |
JP2000256866A (ja) | 無電解ニッケルめっき浴 | |
JP4842620B2 (ja) | 高密度銅パターンを有したプリント配線板の製造方法 | |
JP2004332037A (ja) | 無電解金めっき方法 | |
KR100535977B1 (ko) | 전기 도금용 첨가제를 이용한 무전해 도금 방법 | |
JP2004332036A (ja) | 無電解めっき方法 | |
JPH08291389A (ja) | 非シアン置換金めっき液及びこの液を用いた金めっき方法 | |
JP5990789B2 (ja) | 無電解パラジウムめっき又は無電解パラジウム合金めっきの前処理用活性化液 | |
JP4577156B2 (ja) | 無電解ニッケルめっき浴およびそれを用いた無電解めっき方法 | |
JP2000178753A (ja) | 無電解めっき方法 | |
JP2023176435A (ja) | 無電解銀めっき用無電解ニッケル-リンめっき浴、及び、硫黄化合物を含まないニッケルめっき上への無電解銀めっきを施す方法 | |
KR100522824B1 (ko) | 무전해 도금을 이용한 패턴 내 금속배선 형성방법 | |
JP2021175816A (ja) | 無電解金めっき浴および無電解金めっき方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051208 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071119 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20071127 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20071210 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101228 Year of fee payment: 3 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 4059133 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101228 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111228 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111228 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121228 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121228 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131228 Year of fee payment: 6 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131228 Year of fee payment: 6 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |