JP4058816B2 - 感放射線性組成物用アルカリ性現像液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感放射線性組成物用アルカリ性現像液に関し、より詳しくは、カラー液晶ディスプレイの構成部材であるカラーフィルタなどの製造に使用される感放射線性組成物に適用されるアルカリ性現像液に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラー液晶ディスプレイ(LCD)の製造方法としては、最近では、ガラス等の透明基板上に、赤色、緑色および青色の画素とブラックマトリックスを形成したカラーフィルタ上に、インジウム錫オキサイド(ITO)のような透明導電膜をスパッタリング法により形成して透明電極とし、さらにこの上に配向膜を形成して、液晶を配置する方法が一般的になりつつある。
カラー液晶ディスプレイに使用されるカラーフィルタの製造には種々の方法が知られているが、現在では、有機顔料および/または無機顔料を分散させた感放射線性組成物を用い、透明基板上に塗膜を形成して、放射線照射および現像処理を行う顔料分散法が主流となっている。また、顔料分散法により製造されるカラーフィルタの着色層としては、赤色、緑色および青色の画素のみであったが、近年、ブラックマトリックスとなる遮光層も、カーボンブラック等の顔料を分散させた感放射線性組成物から形成することが行われ始めている。
このようなカラーフィルタは、スペーサーなどにより局所的な荷重を受けるため、それに耐えうる充分な硬度が必要である。そして、カラーフィルタの硬度を向上させるためには、放射線の照射により酸を発生する成分を含有し、その酸の作用により熱硬化する熱硬化性樹脂組成物を用いることが考えられるが、このような組成物では、放射線の照射後に加熱処理(PEB)等を必要とし、工程数が多くなって生産性の面で不利である。
そこで、PEB等を必要とせず、高い硬度を有するカラーフィルタを簡便なプロセスで形成しうる感放射線性組成物として、放射線の照射により直接硬化しうる樹脂成分を含有する感放射線性組成物が提案されており、このような組成物からカラーフィルタを製造する際の現像処理には、一般にアルカリ性現像液が使用されている。
ところで、このアルカリ性現像液には、現像工程において、感放射線性組成物に含まれる着色あるいは遮光のための有機顔料および/または無機顔料と、放射線硬化性樹脂成分の両者を、速やかに分散あるいは溶解させうることが必要とされている。また、アルカリ性現像液には、現像の繰り返しや空気中の炭酸ガスの吸収による経時的な現像性能の変化を生じないことも望まれている。
従来、アルカリ性現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が広く用いられているが、この現像液では、不要な塗膜を充分に除去させることができず、得られる画素にスカム、地汚れ、膜残り等が生じて、シャープなパターンエッジを有する画素を形成することが困難となる場合があった。
このような問題を改善しうるアルカリ性現像液として、アルカリ性化合物および非イオン性界面活性剤を含有する水溶液からなり、pHが9〜13で、該非イオン性界面活性剤の含有量が0.01〜1.0重量%である現像液(特開平7−120935号公報参照)や、非イオン性界面活性剤、強塩基性物質および弱塩基性物質を組み合わせた緩衝性水溶液からなる現像液(特開平9−171261号公報参照)等が提案されている。
しかし、これらのアルカリ性現像液の場合も、現像性能の経時的な安定性の点では必ずしも充分でなく、また特に特開平9−171261号公報の現像液では、カラーフィルタの製造に用いられる感放射線性組成物は有機顔料および/または無機顔料を含有し、照射される放射線、例えば紫外線、に対する透過率が低いため、現像工程において着色層または遮光層の底部にアンダーカットを生じ易く、画素の欠落や膜剥がれが起こるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、現像性能が経時的に劣化し難く、かつ現像工程において、膜残り、画素の欠落や膜剥がれ等の問題を生じることがなく、しかも基板との密着性に優れた画素を形成しうる感放射線性組成物用アルカリ性現像液を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有機顔料および/または無機顔料を分散させた感放射線性組成物に適用されるアルカリ性現像液について鋭意検討を重ねた結果、(A)炭酸ナトリウムからなるアルカリ性化合物および(B)非イオン性界面活性剤を含有する水溶液からなり、(B)非イオン性界面活性剤の含量が、(A)アルカリ性化合物との重量比(非イオン性界面活性剤/アルカリ性化合物)として、0.11〜0.5の範囲にあり、(イ)pHが9〜13の範囲にあり、かつ(ロ)該水溶液を水で10重量倍に希釈した場合のpH変化が0.7以下であることを特徴とするアルカリ性現像液が、感放射線性組成物に対して、経時的な現像性能の変化を生じ難く、しかも現像工程における画素の欠落や膜剥がれのような問題点を解決できることを見い出して本発明を完成するに至った。
【0005】
以下、本発明について詳細に説明する。
(A)アルカリ性化合物
本発明における(A)成分をなすアルカリ性化合物は、炭酸ナトリウムからなるものである。
【0008】
(B)非イオン性界面活性剤
本発明における(B)成分である非イオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル化ポリオキシエチレン類、エーテル化ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類等を挙げることができる。
前記非イオン性界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0009】
本発明における非イオン性界面活性剤としては、エーテル化ポリオキシエチレン類およびエーテル化ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体類(以下、これらをまとめて「エーテル化ポリオキシエチレン系界面活性剤」という。)の群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
エーテル化ポリオキシエチレン系界面活性剤は、一般に、下記式(1)または式(2)で表される。
【0010】
【化1】
【0011】
〔式(1)および式(2)において、Rはアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、nおよびmは繰返し単位数である。〕
式(1)および式(2)において、Rのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、Rのアリール基の炭素数は好ましくは6〜20であり、Rのアラルキル基の炭素数は好ましくは7〜20である。
また、mは好ましくは10〜250であり、nは好ましくは0〜200である。
【0012】
本発明において、さらに好ましい非イオン性界面活性剤は、HLBが12〜18の範囲にあるエーテル化ポリオキシエチレン系界面活性剤である。
エーテル化ポリオキシエチレン系界面活性剤のうち、HLBが12〜18の範囲にあるエーテル化ポリオキシエチレン類の市販品には、エマルゲンA−60、エマルゲンA−90、エマルゲンA−500、エマルゲンB−66、エマルゲンL−40(以上、花王(株)製)等がある。
また、HLBが12〜18の範囲にあるエーテル化ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体類の市販品には、ペポールA1758、ペポールA1558、ソルポールT420、ソルポールT416(以上、東邦化学工業(株)製)等がある。
【0013】
アルカリ性現像液
本発明におけるアルカリ性現像液は、(A)アルカリ性化合物および(B)非イオン性界面活性剤を含有する水溶液からなり、(イ)pHが9〜13、好ましくは10〜12の範囲にあり、かつ(ロ)該水溶液を水で10重量倍に希釈した場合のpH変化(以下、「ΔpH」という。)が0.7以下、好ましくは0.6以下である水溶液からなる。
この場合、アルカリ性現像液のpHが9未満であると、現像残りが発生する場合があり、一方13を超えると、画素に欠落や膜剥がれなどが発生する場合がある。
また、ΔpHが0.7を超えると、経時的な現像性能の変化が起こりやすくなり、具体的には、現像速度の変化や現像残りが発現する。
【0014】
また、本発明におけるアルカリ性現像液中の(B)非イオン性界面活性剤の含量は、(A)アルカリ性化合物との重量比(非イオン性界面活性剤/アルカリ性化合物)として、0.11〜0.5の範囲、特に好ましくは0.11〜0.25の範囲である。
【0015】
本発明におけるアルカリ性現像液は、有機顔料および/または無機顔料等の微粒子が分散された感放射線性組成物から形成された塗膜を現像する際に好適に使用することができほか、これらの微粒子が分散されていない感放射線性組成物から形成された塗膜の現像にも好適に使用することができ、現像性能が経時的に劣化し難いのみならず、特に、照射された放射線に対する透過率が低い感放射線性組成物を用いてカラーフィルタを形成する場合においても、現像工程において、不要な微粒子および樹脂成分を充分に分散・溶解させることができ、現像残りを生じることがなく、かつ画素の欠落や膜剥がれの問題を生じることがなく、しかも基板との密着性に優れた画素を形成することができる。
本発明におけるアルカリ性現像液は、特に、下記するような組成を有するカラーフィルタ感放射線性組成物からカラーフィルタを形成する際に極めて好適に使用することができるほか、レジストパターン形成用感放射線性組成物からレジストパターンを形成する際にも好ましく使用することができる。
本発明におけるアルカリ性現像液が適用される現像法としては、特に限定されるものではなく、例えば、浸漬現像、揺動現像、シャワー・スプレー現像、パドル現像等を適宜選定して実施することができる。
【0016】
前記カラーフィルタ用感放射線性組成物は、通常、有機顔料および/または無機顔料、アルカリ可溶性樹脂並びに感放射線性成分が、有機溶剤に分散または溶解されたものである。
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー(ポリスチレン鎖の片末端に(メタ)アクリレート基を有するモノマー。以下同様。)共重合体、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー(ポリメチル(メタ)アクリレート鎖の片末端に(メタ)アクリレート基を有するモノマー。以下同様。)共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体、(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー共重合体、(メタ)アクリル酸/スチレン/ベンジル(メタ)アクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体、(メタ)アクリル酸/こはく酸モノ{2−(メタ)アクリロイロキシエチル}/スチレン/ベンジル(メタ)アクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体、(メタ)アクリル酸/こはく酸モノ{2−(メタ)アクリロイロキシエチル}/スチレン/アリル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート/N−フェニルマレイミド/スチレン/グリセロールモノ(メタ)アクリレート共重合体等を挙げることができる。
前記アルカリ可溶性樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
前記アルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;溶出溶媒テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」という。)は、好ましくは3,000〜300,000、特に好ましくは5,000〜30,000である。
【0017】
また、前記感放射線性成分は、放射線の照射(以下、「露光」という。)により、カルベン、ナイトレン等のラジカル(活性分子片)を生じ、アルカリ可溶性樹脂に三次元架橋構造を形成させる成分であり、具体的には、光重合開始剤、多官能性単量体またはそれと単官能性単量体との混合物等を含有する成分からなる。
なお、ここで言う「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を含むものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。以下において、部は、特記しない限り重量基準である。
【実施例】
実施例2、3および5
表1に示す(A)アルカリ性化合物および(B)非イオン性界面活性剤を水に溶解して、アルカリ性現像液を調製した。
その後、各アルカリ性現像液のpHおよび各アルカリ性現像液を水で10重量倍に希釈した水溶液のpHを、カスタニーACTpHメータD−21((株)堀場製作所製)により測定して、ΔpHを算出した。その結果を、表2に示す。
別に、顔料としてカーボンブラックを100部、アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/こはく酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)/スチレン/ベンジルメタクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体(共重合重量比=15/15/10/40/20、重量平均分子量=15,000)60部、多官能性単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40部、光重合開始剤として2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール10部と4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン10部と2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン50部、および溶媒として3−エトキシプロピオン酸エチル1000部を混合して、感放射線性組成物を調製した。
その後、前記感放射線性組成物を、表面にナトリウムイオンの溶出を防止する二酸化けい素(SiO2 )膜が形成されたソーダガラス基板の上に、スピンコーターを用いて塗布したのち、80℃で10分間プレベークを行って、膜厚1.5μmの塗膜を形成した。
その後、この基板を室温に冷却したのち、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、塗膜に365nm、405nmおよび436nmの各波長を含む紫外線を、400mJ/cm2 の露光量で露光した。
露光後の基板を各アルカリ性現像液200gに浸漬して緩やかに揺動させながら現像(揺動現像)したのち、純水で洗浄して、画素を形成させた。
得られた画素を顕微鏡で観察し、画素の欠落や膜剥がれの有無および画素が形成されていない表面の膜残りの有無の評価を行った。その結果を、表2(1枚目の基板の現像後)に示す。
さらに、この現像後のアルカリ性現像液を用い、前記と同様にして露光後の基板に対して、同様の現像操作を繰り返し、一枚目の基板を含めて合計20枚目の基板に対して現像処理を行って得られた画素を顕微鏡で観察し、画素の欠落や膜剥がれの有無および画素が形成されていない表面の膜残りの有無の評価を行った。その結果を、表2(20枚目の基板の現像後)に示す。
【0019】
比較例1〜4
表3に示す(A)アルカリ性化合物および(B)非イオン性界面活性剤を水に溶解して、アルカリ性現像液を調製した。
その後、各アルカリ性現像液のpHおよび各アルカリ性現像液を水で10重量倍に希釈した水溶液のpHを、実施例2、3および5と同様にして測定して、ΔpHを算出した。その結果を、表4に示す。
また、実施例2、3および5で用いた感放射線性組成物を用い、実施例2、3および5と同様にして、画素を形成させて、実施例2、3および5と同様にして評価を行った。その結果を、表4に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【発明の効果】
本発明の感放射線性組成物用アルカリ性現像液は、経時的に現像性能が劣化し難いのみならず、特に、照射された放射線に対する透過率が低い感放射線性組成物を用いてカラーフィルタを形成する場合においても、カラーフィルタ用感放射線性組成物から形成された塗膜を現像する際に、不要な微粒子および樹脂成分を充分に分散・溶解させることができ、膜残りを生じることがなく、かつ画素の欠落や膜剥がれの問題を生じることがなく、しかも基板との密着性に優れた画素を形成することができる。
Claims (2)
- (A)炭酸ナトリウムからなるアルカリ性化合物および(B)非イオン性界面活性剤を含有する水溶液からなり、(B)非イオン性界面活性剤の含量が、(A)アルカリ性化合物との重量比(非イオン性界面活性剤/アルカリ性化合物)として、0.11〜0.5の範囲にあり、(イ)pHが9〜13の範囲にあり、かつ(ロ)該水溶液を水で10重量倍に希釈した場合のpH変化が0.7以下であることを特徴とする感放射線性組成物用アルカリ性現像液。
- (B)非イオン性界面活性剤が、エーテル化ポリオキシエチレン類およびエーテル化ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体類の群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の感放射線性組成物用アルカリ性現像液。
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