JP4057954B2 - 車両の自動操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪を転舵するアクチュエータを利用してドライバーによる駐車操作を支援するための車両の自動操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両の自動操舵装置は下記特許文献により公知である。この自動操舵装置は、アクチュエータが発生する操舵トルクでドライバーのステアリング操作をアシストする電動パワーステアリングモードと、アクチュエータが発生する操舵トルクで車輪を自動的に転舵して駐車操作をアシストする自動操舵モードとを切り換えることができ、自動操舵モード中にドライバーがステアリングハンドルに所定値以上の操舵トルクを加えると、自動操舵モードが中止されて電動パワーステアリングモードに移行するようになっている。
【0003】
【特許文献】
特開平4−55168号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記従来のものは、図12に基づいて後から詳述するように、自動操舵モード中にドライバーがステアリングハンドルを操作して電動パワーステアリングモードに移行した瞬間に、それまで操舵アシスト力を発生していなかったアクチュエータが突然操舵アシスト力を発生するため、ステアリングハンドルが急激に軽くなってドライバーが違和感を覚えることがあった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車輪を転舵するアクチュエータの制御状態が切り換わった瞬間にステアリングハンドルが急激に軽くなるのを防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両の車輪を転舵するアクチュエータと、アクチュエータを第1の制御状態および第2の制御状態に切り換えるアクチュエータ制御手段とを備え、前記第1の制御状態では、ドライバーによりステアリングハンドルに加えられる操舵トルクに基づいてアクチュエータの駆動が制御され、前記第2の制御状態では、予め記憶または演算された制御目標値に基づいてアクチュエータの駆動が制御される車両の自動操舵装置において、前記第1の制御状態では、ドライバーによりステアリングハンドルに加えられる操舵トルクが第1の閾値未満の領域が不感帯とされ、前記第1の閾値以上の領域でアクチュエータの駆動が制御され、前記第2の制御状態では、ドライバーによりステアリングハンドルに加えられる操舵トルクが前記第1の閾値より小さい第2の閾値以上になったときに、アクチュエータ制御手段は前記前記第2の制御状態を前記第1の制御状態に切り換えることを特徴とする車両の自動操舵装置が提案される。
【0007】
上記構成によれば、予め記憶または演算された制御目標値に基づいてアクチュエータの駆動が制御される第2の制御状態において、ドライバーがステアリングハンドルに加える操舵トルクが第2の閾値まで増加すると、アクチュエータ制御手段により前記第2の制御状態から第1の制御状態に切り換えられ、ドライバーによりステアリングハンドルに加えられる操舵トルクに基づいてアクチュエータの駆動が制御される。この切り換えが行われる第2の閾値は、第1の制御状態においてアクチュエータが駆動されて操舵アシストトルクを発生するようになる第1の閾値よりも低い不感帯の領域にあるため、第2の制御状態から第1の制御状態に切り換えられた瞬間にアクチュエータが操舵アシストトルクを発生することがない。これにより、第2の制御状態から第1の制御状態に切り換えられた瞬間にステアリングハンドルが急激に軽くなるのを回避し、ドライバーが違和感を覚えるのを防止することができる。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記制御目標値を、移動開始位置から目標車両位置までの車両の移動経路として予め記憶または演算することを特徴とする車両の自動操舵装置が提案される。
【0009】
上記構成によれば、第2の制御状態でアクチュエータの駆動を制御する制御目標値が、移動開始位置から目標車両位置までの車両の移動経路として予め記憶または演算されるので、ドライバーのステアリング操舵トルクをアシストするためのアクチュエータを利用して、車両を移動開始位置から目標車両位置に移動させるための操舵を自動で行わせることができる。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記制御目標値を、車両を目標車両位置に導くことができる一定の車輪転舵角として設定したことを特徴とする車両の自動操舵装置が提案される。
【0011】
上記構成によれば、第2の制御状態でアクチュエータの駆動を制御する制御目標値が、車両を目標車両位置に導くことができる一定の車輪転舵角であるため、制御目標値の設定およびアクチュエータの制御を簡素化することができる。
【0012】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記制御目標値を、目標車両位置までの車両の移動距離に応じて変化する車輪転舵角として設定したことを特徴とする車両の自動操舵装置が提案される。
【0013】
上記構成によれば、第2の制御状態でアクチュエータの駆動を制御する制御目標値が、目標車両位置までの車両の移動距離に応じて変化する車輪転舵角であるため、制御開始位置から目標車両位置までの車両の移動軌跡を自由に設定することができる。
【0014】
尚、実施例の電子制御ユニットUは本発明のアクチュエータ制御手段に対応し、実施例の前輪Wfは本発明の車輪に対応し、実施例の目標転舵角δは本発明の制御目標値に対応し、実施例の電動パワーステアリングモードは本発明の第1の制御状態に対応し、実施例の自動操舵モードは本発明の第2の制御状態に対応する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図13は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両の操舵装置の全体構成図、図2は車両を後進させて駐車スペースに移動させる場合の作用説明図、図3は車両を後進させる過程で切り返しを行う場合の作用説明図、図4は車両のヨー角θの説明図、図5は車両の移動距離Lの説明図、図6は車両のヨー角θと目標転舵角δとの関係を示す図、図7〜図9は左バック駐車の作用説明図、図10は操舵トルクとアシストトルクとの関係を示すグラフ、図11はアシストの有無による操舵トルクの変化を示すグラフ、図12は第1の閾値を第2の閾値よりも小さく設定した場合の作用を説明するグラフ、図13は第1の閾値を第2の閾値よりも大きく設定した場合の作用を説明するグラフである。
【0017】
図1に示すように、ドライバーにより操作されるステアリングハンドル11と一体に回転するステアリングシャフト12の下端にピニオン13が設けられており、このピニオン13に噛み合うラック14が一体に形成されたステアリングロッド15の両端が、それぞれタイロッド16,16を介して左右の前輪Wf,Wfに接続される。電気モータよりなるアクチュエータ17が、ウオームギヤ機構18を介してステアリングシャフト12の下部に接続される。
【0018】
電子制御ユニットUには、駐車支援の開始を指令するスタートスイッチ19と、ステアリングハンドル11に入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサSaと、ステアリングハンドル11の操舵角から前輪Wf,Wfの転舵角を検出する転舵角センサSbと、ブレーキペダル20の操作量を検出するブレーキセンサScと、アクセルペダル21の操作量を検出するアクセルセンサSdと、シフトレバー22で選択されたシフトポジションを検出するシフトポジションセンサSeと、前輪Wf,Wfの回転速度から車速を検出する車速センサSfと、前輪Wf,Wfの回転数の積算値から車両の移動距離を検出する移動距離センサSgと、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサShとが接続される。電子制御ユニットUの内部には、駐車支援を行う際の目標転舵角δを設定する目標転舵角設定手段23が設けられる。尚、車速センサSfで検出した車速を時間で積分すれば車両の移動距離を算出できるので、その場合には移動距離センサSgを省略することができる。
【0019】
スタートスイッチ19がオフしているときには通常の電動パワーステアリングモードとなり、ドライバーがステアリングハンドル11を操作することで発生する操舵トルクを操舵トルクセンサSaで検出し、その操舵トルクが減少する方向にアクチュエータ17を駆動してアシストトルクを発生させ、ドライバーによるステアリングハンドル11の操作をアシストすることができる。このとき、車速センサSfで検出した車速が高い場合にはアクチュエータ17が発生するアシストトルクを減少させて車両の直進安定性を高め、また車速センサSfで検出した車速が低い場合にはアクチュエータ17が発生するアシストトルクを増加させて据え切り時等のステアリングハンドル11の操作力を軽くすることができる。
【0020】
またスタートスイッチ19をオンすると、所定の条件が満たされている場合に、上記電動パワーステアリングモードから自動操舵モードに切り換わり、ドライバーがステアリングハンドル11を操作することなく、アクチュエータ17によってステアリングハンドル11が自動的に操作される。
【0021】
具体的には、図2(a)に示す位置に車両Vを停止させてスタートスイッチ19をオンすると、アクチュエータ17が作動して前輪Wf,Wfが左に転舵される。そして転舵角センサSbで検出した前輪Wf,Wfの転舵角が目標転舵角設定手段23で設定した目標転舵角δ(ここではフル転舵角)に達すると、アクチュエータ17が停止して自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに復帰する。このように、ドライバーの代わりにアクチュエータ17がステアリングハンドル11を操作するので、ドライバーの操作負担が軽減される。自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに復帰した後は、ドライバーがステアリングハンドル11の位置を微調整しながら車両Vを後進させて駐車スペースに導けば良い。
【0022】
尚、自動操舵モードが設定されるには、スタートスイッチ19がオンされることに加えて、車両Vが停止していること(車速が極低速の場合を含む)と、ドライバーがステアリングハンドル11を操作していないこととが必要である。前者の条件は、車速センサSfで検出した車速が所定値以下であること、ブレーキセンサScで検出したブレーキペダル20の操作量が所定値以上であること、アクセルセンサSdで検出したアクセルペダル21の操作量が所定値以下であることの全てが、あるいは一部が成立しているときに満たされるものとする。また後者の条件は、操舵トルクセンサSaで検出した操舵トルクが所定値以下であるときに満たされるものとする。車速が所定値以下(例えば、5km/h以下)のときに自動操舵モードに入るようにすれば、据え切りが行われなくなるのでアクチュエータ17の消費電力を削減することができる。
【0023】
ところで、ドライバーが車両Vを一旦停止させ、そこから後進で駐車する場合を考えると、図2(a)に示すように、通路に対する車両Vの傾きが小さく、後進で略90°方向を変えないと駐車スペースに駐車できない場合、通常はステアリングハンドル11をフル転舵する。しかしながら、図2(b)に示すように、通路に対して車両Vがある程度傾いている場合には、フル転舵すると切り込み過ぎてしまうので、フル転舵よりも小さい適当な転舵角にする必用がある。更に、一旦切り返してから後進する場合には、図2(c)に示すように、ほぼ駐車スペースの向きまで傾いているので、ステアリングハンドル11を僅かに切るだけで良い。
【0024】
また切り返して前進する場合を考えると、後進の場合と同様に、図3(a)に示すように、通路に対してあまり傾きが大きくない場合にはフル転舵までステアリングハンドル11を切って前進することで傾きを大きくする。図3(b)に示すように、既に傾きがついている場合には、フル転舵までステアリングハンドル11を切る必用はなく、適当な転舵角で前進すれば良い。図3(c)に示すように、ほぼ駐車スペースの向きまで傾いている場合には、ステアリングハンドル11を切らずに前進するだけで充分である。
【0025】
そこで本実施例では、車両Vのヨー角θを検出し、そのヨー角θに基づいて目標転舵角δを設定する。図4に示すように、電動パワーステアリングモードのときに、現在の車両位置をP1とし、その車両位置P1よりも移動距離Lだけ過去に通過した基準位置をP0としたとき、基準位置P0のヨー角θを基準(θ=0)とした現在の車両位置P1のヨー角θを算出する。このヨー角θは車両Vが所定距離(例えば、10cm)前進して車両位置P1が変化する毎に逐次更新される。前記移動距離Lの大きさは車両Vの最小旋回半径Rmとされる。図5から明らかなように、移動距離Lを車両Vの最小旋回半径Rmとすれば、現在の車両位置P1からフル転舵状態で後進させることで車両Vを駐車スペースに正しく移動させることができる。尚、車両Vの移動距離Lは移動距離センサSgにより検出され、ヨー角θはヨーレートセンサShで検出したヨーレートを積分することで検出される。
【0026】
次に、本システムの作用について説明する。ここでは、通路の左側にある駐車スペースに車両Vをバックで駐車する左バック駐車を例に説明する。
【0027】
先ず、図7のように、ドライバーは車両Vを通路に沿って直進させて駐車スペース正面を通過する。このとき、車両Vは駐車スペースの正面では通路に沿った方向を向いていることになる。即ち、図7のように、基準位置P0以前から車両Vを通路に沿って直進させていた場合では、基準位置P0における規準ヨー角の方向線は通路とほぼ平行であり、また直進しているので車両位置P1のヨー角θは0、つまり基準位置P0の規準ヨー角と同様に通路と平行である。また、これは駐車スペースに対しては直角、即ち90°であることを意味する。
【0028】
ドライバーは通路に沿って車両Vを前進させて駐車スペースを通過した後、図8のように、通路の左側に駐車するために、前輪Wf,Wfを右に転舵して車両Vを右に傾けながら、目測で駐車スペースをLだけ通過した位置に車両Vを停車させる。このとき、規準位置P0は図7での車両位置P1、即ち駐車スペースのほぼ正面に位置している。そして、前述したように、この位置では車両Vを通路に沿って通過させているので、規準位置P0における規準ヨー角(θ=0)の方向は通路とほぼ平行である。従って、停車した車両位置P1におけるヨー角θは通路の方向に対する傾きにほぼ一致し、駐車スペースに駐車するにためには、このヨー角θを直角、即ち90°に傾ければ良いことになる。図8において、車両位置P1からバックで駐車スペースに停車するために、シフトレバー22がRポジションに操作されたことがシフトポジションセンサSeにより検出された状態で、スタートスイッチ19がオンされると、電子制御ユニットUの目標転舵角設定手段23が目標転舵角δを算出する。尚、シフトレバー22がRポジションに操作されたことをシフトポジションセンサSeが検出したことをもってシステムの開始信号とすることで、スタートスイッチ19を省略しても良い。
【0029】
図6において、ヨー角θが0°から90°に向けて増加するに伴い、目標転舵角δはフル転舵角から0に向けて減少する。ヨー角θが右向きの場合には、駐車スペースが通路の左側にあると判断され、目標転舵角δの方向は左転舵になる。逆に、ヨー角θが左向きの場合には、駐車スペースが通路の右側にあると判断され、目標転舵角δの方向は右転舵になる。
【0030】
図8においてはθが右向きであるから、駐車スペースが左にあると判断され、目標転舵角δの方向は左転舵となる。またヨー角θ=θaは小さく、バックで駐車時のヨー角θ=90°まで更に大きく車両Vを傾けなければならないため、図6に示すように目標転舵角δとしてフル転舵が設定される。そして転舵角がフル転舵に一致するようにアクチュエータ17によってステアリングハンドル11が自動的に回転する。転舵角がフル転舵になった後、ドライバーはステアリングハンドル11の角度を必要に応じて微調整しながら車両Vをバックさせると、前述のようにLは車両Vの最小回転半径Rmとしているので、概ね駐車スペースに車両Vが誘導される。駐車スペースに停車してシフトレバー22をPポジションにすると、自動操舵モードが解除されて電動パワーステアリングモードに復帰する。
【0031】
尚、例えば図9のように、通路の幅が広く、車両Vのヨー角θを大きく傾けることができる場合(θ=θb)、前輪Wf,Wfをフル転舵すると切り込みすぎてしまうので、図6に示すように、目標転舵角δをフル転舵より小さい適切な値δbに設定することにより、切り込みすぎるのを防ぐことができる。
【0032】
以上のように、自動操舵モードでアクチュエータ17の駆動を制御する目標転舵角δを、車両Vを後進させるだけで駐車スペースに導くことができる一定値とすることで、目標転舵角δの設定およびアクチュエータ17の制御を簡素化することができる。
【0033】
図10は電動パワーステアリング装置のアシスト特性を示すグラフであって、ドライバーがステアリングハンドル11に入力する操舵トルクThが第1の閾値Td未満の不感帯ではアクチュエータ17によるアシストトルクTaが発生せず、前記操舵トルクThが第1の閾値Td以上になるとアシストトルクTaがリニアに増加するようになっている。従って、図11に示すように、ドライバーがステアリングハンドル11に入力する操舵トルクThが第1の閾値Td以上の領域では、アクチュエータ17が発生するアシストトルクTaの分だけドライバーの操舵トルクThが軽減され、軽快なステアリング操作が可能になる。
【0034】
ところで、自動操舵モードにおいて前輪Wf,Wfが転舵されている間に、ドライバーが駐車スペースに障害物を発見したり駐車を断念したりしてステアリングハンドル11を操作すると、自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わってアクチュエータ17がドライバーのハンドル操作を阻害しないようになっている。また自動操舵モードにおいて前輪Wf,Wfが転舵されている間に、誤ってドライバーがステアリングハンドル11に触れても、ドライバーの意志に反して自動操舵モードが中止されないようにする必要がある。そのために、ステアリングハンドル11に入力される操舵トルクが第2の閾値Ts未満であれば自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わらず、前記操舵トルクが第2の閾値Ts以上になると自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わるようになっている。
【0035】
図12に示すように、第2の閾値Tsを第1の閾値Tdよりも大きく設定したと仮定すると、自動操舵モードでドライバーがステアリングハンドル11に加える操舵トルクThを第1の閾値Tdを超えて増加させても、自動操舵モードではアクチュエータ17によるアシストトルクが発生しないために、操舵トルクThは第2の閾値Tsまで増加する(実線参照)。その結果、操舵トルクThが第2の閾値Ts以上になったa点において自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わると、操舵トルクThはアクチュエータ17がよるアシストトルクを発生する電動パワーステアリングモードの値(破線参照)まで急激に減少するため、ドライバーはステアリングハンドル11が急激に軽くなったように感じて違和感を覚えることになる。
【0036】
それに対して本実施例では、図13に示すように、第2の閾値Tsを第1の閾値Tdよりも小さく設定しているので、自動操舵モードでドライバーがステアリングハンドル11に加える操舵トルクThを増加させ、b点で第2の閾値Tsを超えて自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わっても、操舵トルクThは急変することなくリニアに増加する。そしてc点で操舵トルクThが第1の閾値Tdに達すると、電動パワーステアリングモードの不感帯を脱することでアクチュエータ17によるアシストが開始される。
【0037】
このように、自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わる第2の閾値Tsを、アクチュエータ17がアシストトルクTaを発生する操舵トルクThの第1の閾値Tdよりも小さく設定したので、自動操舵モードから電動パワーステアリングモードに切り換わる際の操舵トルクThの急激な減少を防止し、ステアリングハンドル11が急激に軽くなったように感じてドライバーが違和感を覚えるのを防止することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0039】
例えば、実施例では自動操舵モードにおける目標転舵角δを、一定の転舵角で車両Vを駐車スペースに導くことができる値に設定しているが、上記特許文献に記載されているように、自動操舵モードにおける目標転舵角δを、駐車開始位置から駐車スペースまでの車両Vの移動距離に応じて変化する値として設定することができる。これにより、駐車開始位置から駐車スペースまでの車両Vの移動軌跡を、円弧以外の任意の軌跡に設定することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、予め記憶または演算された制御目標値に基づいてアクチュエータの駆動が制御される第2の制御状態において、ドライバーがステアリングハンドルに加える操舵トルクが第2の閾値まで増加すると、アクチュエータ制御手段により前記第2の制御状態から第1の制御状態に切り換えられ、ドライバーによりステアリングハンドルに加えられる操舵トルクに基づいてアクチュエータの駆動が制御される。この切り換えが行われる第2の閾値は、第1の制御状態においてアクチュエータが駆動されて操舵アシストトルクを発生するようになる第1の閾値よりも低い不感帯の領域にあるため、第2の制御状態から第1の制御状態に切り換えられた瞬間にアクチュエータが操舵アシストトルクを発生することがない。これにより、第2の制御状態から第1の制御状態に切り換えられた瞬間にステアリングハンドルが急激に軽くなるのを回避し、ドライバーが違和感を覚えるのを防止することができる。
【0041】
また請求項2に記載された発明によれば、第2の制御状態でアクチュエータの駆動を制御する制御目標値が、移動開始位置から目標車両位置までの車両の移動経路として予め記憶または演算されるので、ドライバーのステアリング操舵トルクをアシストするためのアクチュエータを利用して、車両を移動開始位置から目標車両位置に移動させるための操舵を自動で行わせることができる。
【0042】
また請求項3に記載された発明によれば、第2の制御状態でアクチュエータの駆動を制御する制御目標値が、車両を目標車両位置に導くことができる一定の車輪転舵角であるため、制御目標値の設定およびアクチュエータの制御を簡素化することができる。
【0043】
また請求項4に記載された発明によれば、第2の制御状態でアクチュエータの駆動を制御する制御目標値が、目標車両位置までの車両の移動距離に応じて変化する車輪転舵角であるため、制御開始位置から目標車両位置までの車両の移動軌跡を自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る車両の操舵装置の全体構成図
【図2】車両を後進させて駐車スペースに移動させる場合の作用説明図
【図3】車両を後進させる過程で切り返しを行う場合の作用説明図
【図4】車両のヨー角θの説明図
【図5】車両の移動距離Lの説明図
【図6】車両のヨー角θと目標転舵角δとの関係を示す図
【図7】左バック駐車の作用説明図
【図8】左バック駐車の作用説明図
【図9】左バック駐車の作用説明図
【図10】操舵トルクとアシストトルクとの関係を示すグラフ
【図11】アシストの有無による操舵トルクの変化を示すグラフ
【図12】第1の閾値を第2の閾値よりも小さく設定した場合の作用を説明するグラフ
【図13】第1の閾値を第2の閾値よりも大きく設定した場合の作用を説明するグラフ
【符号の説明】
Th 操舵トルク
Td 第1の閾値
Ts 第2の閾値
U 電子制御ユニット(アクチュエータ制御手段)
V 車両
Wf 前輪(車輪)
11 ステアリングハンドル
17 アクチュエータ
δ 目標転舵角(制御目標値)
Claims (4)
- 車両(V)の車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(17)と、アクチュエータ(17)を第1の制御状態および第2の制御状態に切り換えるアクチュエータ制御手段(U)とを備え、
前記第1の制御状態では、ドライバーによりステアリングハンドル(11)に加えられる操舵トルク(Th)に基づいてアクチュエータ(17)の駆動が制御され、
前記第2の制御状態では、予め記憶または演算された制御目標値(δ)に基づいてアクチュエータ(17)の駆動が制御される車両の自動操舵装置において、前記第1の制御状態では、ドライバーによりステアリングハンドル(11)に加えられる操舵トルク(Th)が第1の閾値(Td)未満の領域が不感帯とされ、前記第1の閾値(Td)以上の領域がアクチュエータ(17)の駆動が制御され、
前記第2の制御状態では、ドライバーによりステアリングハンドル(11)に加えられる操舵トルク(Th)が前記第1の閾値(Td)より小さい第2の閾値(Ts)以上になったときに、アクチュエータ制御手段(U)は前記前記第2の制御状態を前記第1の制御状態に切り換えることを特徴とする車両の自動操舵装置。 - 前記制御目標値(δ)を、移動開始位置から目標車両位置までの車両(V)の移動経路として予め記憶または演算することを特徴とする、請求項1に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記制御目標値(δ)を、車両(V)を目標車両位置に導くことができる一定の車輪転舵角として設定したことを特徴とする、請求項2に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記制御目標値(δ)を、目標車両位置までの車両(V)の移動距離に応じて変化する車輪転舵角として設定したことを特徴とする、請求項2に記載の車両の自動操舵装置。
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