JP4104252B2 - 車両の自動操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバーのステアリング操作によらずに車両を自動的に駐車するための車両の自動操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両の自動操舵装置は特開平4−55168号公報、特開平11−78936号公報により既に知られている。これらの車両の自動操舵装置は、従来周知の電動パワーステアリング装置のステアリングアクチュエータを利用し、予め記憶した車両の移動距離と転舵角との関係に基づいて前記ステアリングアクチュエータを制御することにより、バック駐車や縦列駐車を自動で行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば車両の積載重量が変化するとサスペンションのジオメトリが変化するため、ステアリングホイールの転舵角に対する車輪の切れ角の関係も変化してしまう。従って、予め記憶された転舵角が再現されるようにステアリングアクチュエータを制御しても、その転舵角に対応する車輪の切れ角がサスペンションのジオメトリによって変化してしまい、正しい移動軌跡に沿って車両を移動させることができなくなる。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、サスペンションのジオメトリが変化しても車両の移動軌跡がずれないようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、目標位置までの車両の移動軌跡を記憶または算出する移動軌跡設定手段と、車輪を転舵するステアリングアクチュエータと、車両が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段により設定された移動軌跡に基づいてステアリングアクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ制御手段とを備えた車両の自動操舵装置において、前記アクチュエータ制御手段は、第1の車輪の回転角から車両の第1移動距離を算出する第1移動距離算出手段と、第2の車輪の回転角から車両の第2移動距離を算出する第2移動距離算出手段と、第1移動距離算出手段が算出した第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と、第2移動距離算出手段が算出した第2移動距離の実際値との差が閾値以上のときに、第1移動距離および第2移動距離が所定の関係にないと判定する判定手段と、判定手段により前記所定の関係にないと判定されたときに、該所定の関係となるように前記移動軌跡を修正するか、あるいはステアリングアクチュエータの制御を中止する修正・中止手段とを備えたことを特徴とする車両の自動操舵装置が提案される。
【0006】
上記構成によれば、例えば積載重量の差によってサスペンションのジオメトリが変化したために、第1の車輪の回転角から算出した車両の第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と、第2の車輪の回転角から算出した車両の第2移動距離の実際値との差が閾値以上になると、第1移動距離および第2移動距離が所定の関係にないと判断し、予め設定された車両の移動軌跡を修正するか、あるいはステアリングアクチュエータの制御を中止するので、サスペンションのジオメトリの変化によって車両が正しい移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記差が第1閾値以上のときに、前記修正・中止手段は前記移動軌跡を修正することを特徴とする車両の自動操舵装置が提案される。
【0008】
上記構成によれば、第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と実際値との差が第1閾値以上のときに移動軌跡を修正するので、サスペンションのジオメトリが変化しても車両を正しく目標位置に導くことができる。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上のときに、前記修正・中止手段はステアリングアクチュエータの制御を中止することを特徴とする自動操舵装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と実際値との差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上のときにステアリングアクチュエータの制御を中止するので、サスペンションのジオメトリが大きく変化して移動軌跡の修正による対処が困難になっても、車両が誤った目標位置に導びかれるのを防止することができる。
【0011】
尚、実施例の制御部22は本発明のアクチュエータ制御手段に対応し、実施例の記憶部23は本発明の移動軌跡設定手段に対応し、実施例の前輪Wrおよび後輪Wrは本発明の車輪に対応する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。 図1〜図9は本発明の第1実施例を示すもので、図1は操舵制御装置を備えた車両の全体構成図、図2はバック駐車/左モードの作用説明図、図3はモード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図、図4はステアリングホイールの転舵角と前輪の切れ角との関係を示す図、図5は移動軌跡修正手段のブロック図、図6は積載重量が小さい車両が後進するときの作用説明図、図7は第1前輪移動距離および第2前輪移動距離の関係を示す図、図8は積載重量が大きい車両が後進するときの作用説明図、図9は移動軌跡を修正する基準の説明図である。
【0013】
図1に示すように、車両Vは一対の前輪Wf,Wfおよび一対の後輪Wr,Wrを備える。ステアリングホイール1と操舵輪である前輪Wf,Wfとが、ステアリングホイール1と一体に回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の下端に設けたピニオン3と、ピニオン3に噛み合うラック4と、ラック4の両端に設けた左右のタイロッド5,5と、タイロッド5,5に連結された左右のナックル6,6とによって接続される。ドライバーによるステアリングホイール1の操作をアシストすべく、あるいは後述する車庫入れのための自動操舵を行うべく、電気モータよりなるステアリングアクチュエータ7がウオームギヤ機構8を介してステアリングシャフト2に接続される。
【0014】
操舵制御装置21は制御部22と記憶部23とから構成されており、制御部22には、ステアリングホイール1の回転角である転舵角θを検出する転舵角検出手段S1 と、ステアリングホイール1の操舵トルクTを検出する操舵トルク検出手段S2 と、左右の前輪Wf,Wfの回転角および左右の後輪Wr,Wrの回転角を検出する車輪回転角検出手段S3 …と、ブレーキペダル9の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段S4 と、セレクトレバー10により選択されたシフトレンジ(「D」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「P」レンジ等)を検出するシフトレンジ検出手段S5 とからの信号が入力される。
【0015】
図3を併せて参照すると明らかなように、ドライバーにより操作されるモード選択スイッチS6 および自動駐車スタートスイッチS7 が制御部22に接続される。モード選択スイッチS6 は、後述する4種類の駐車モード、即ちバック駐車/右モード、バック駐車/左モード、縦列駐車/右モードおよび縦列駐車/左モードの何れかを選択する際に操作される4個のボタンを備える。自動駐車スタートスイッチS7 は、モード選択スイッチS6 で選択した何れかのモードによる自動駐車を開始する際に操作される。
【0016】
記憶部23には、前記4種類の駐車モードのデータ、即ち車両Vの移動距離Xに対する規範転舵角θrefの関係が、予めテーブルとして記憶されている。車両Vの移動距離Xは、既知である車輪Wf,Wrの周長に車輪回転角検出手段S3 …で検出した車輪Wf,Wrの回転角を乗算することにより求められる。尚、前記移動距離Xの算出には、車輪回転角検出手段S3 …の出力のハイセレクト値、ローセレクト値、あるいは平均値が使用される。
【0017】
制御部22は、前記各検出手段S1 〜S5 およびスイッチS6 ,S7 からの信号と、記憶部23に記憶された駐車モードのデータとに基づいて、前記ステアリングアクチュエータ7の作動と、液晶モニター、スピーカ、ランプ、チャイム、ブザー等を含む操作段階教示装置11の作動とを制御する。
【0018】
ところで、車両Vの積載重量が変化すると懸架ばねの圧縮量が増減してサスペンションのジオメトリが変化するため、同じ転舵角θに対する前輪Wf,Wfの切れ角δが変化する。即ち、図4に示すように、ステアリングホイール1を転舵角θで操作したとすると、積載重量が小さいとき(例えば、ドライバーのみ乗車の場合)には切れ角がδ1 であるのに対し、積載重量が大きいとき(例えば、4人乗車の場合)には切れ角が前記δ1 よりも小さいδ2 になるため、車両Vの移動軌跡に誤差が発生する
図5には、前記車両Vの移動軌跡の誤差を補償すべく制御部22に設けられた移動軌跡修正手段が示される。制御部22に設けられた移動軌跡修正手段は、第1の車輪(例えば、左前輪Wf)の回転角から車両Vの移動距離(第1移動距離LL )を算出する第1移動距離算出手段M1と、第2の車輪(例えば、右前輪Wf)の回転角から車両Vの移動距離(第2移動距離LR )を算出する第2移動距離算出手段M2と、第1移動距離LL および第2移動距離LR が後述する所定の関係にあるか否かを判定する判定手段M3と、判定手段M3により両移動距離LL ,LR が前記所定の関係にないと判定されたときに、該所定の関係となるように記憶部23に記憶された移動軌跡を修正するか、あるいはステアリングアクチュエータ7の制御を中止する修正・中止手段M4とから構成される。
【0019】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0020】
自動駐車を行わない通常時(前記モード選択スイッチS6 が操作されていないとき)には、操舵制御装置21は一般的なパワーステアリング制御装置として機能する。具体的には、ドライバーが車両Vを旋回させるべくステアリングホイール1を操作すると、操舵トルク検出手段S2 がステアリングホイール1に入力された操舵トルクTを検出し、制御部22は前記操舵トルクTに基づいてステアリングアクチュエータ7の駆動を制御する。その結果、ステアリングアクチュエータ7の駆動力によって左右の前輪Wf,Wfが転舵され、ドライバーのステアリング操作がアシストされる。
【0021】
次に、バック駐車/左モード(車両Vの左側にある駐車位置にバックしながら駐車するモード)を例にとって、自動操舵制御の内容を説明する。
【0022】
先ず、図2(A)に示すように、ドライバー自身のステアリング操作により車両Vを駐車しようとする車庫の近傍に移動させ、車体の左側面を車庫入口線にできるだけ近づけた状態で、予め決められた基準(例えば、ドアの内側に設けられたマークやサイドミラー)が車庫の中心線に一致する位置(スタート位置(1) )に車両Vを停止させる。そして、モード選択スイッチS6 を操作してバック駐車/左モードを選択するとともに自動駐車スタートスイッチS7 をONすると、自動操舵制御が開始される。自動操舵制御が行われている間、操作段階教示装置11には自車の現在位置、周囲の障害物、駐車位置、スタート位置から目標位置までの自車の予想移動軌跡、前進から後進に切り換える折り返し位置等が表示され、併せてスピーカからの音声でドライバーに前記折り返し位置におけるセレクトレバー10の操作等の各種の指示や警報が行われる。
【0023】
自動操舵制御により、ドライバーがブレーキペダル9を緩めて車両Vをクリープ走行させるだけでステアリングホイール1を操作しなくても、モード選択スイッチS6 により選択されたバック駐車/左モードのデータに基づいて前輪Wf,Wfが自動操舵される。即ち、スタート位置(1) から折り返し位置(2) まで車両Vが前進する間は前輪Wf,Wfは右に自動操舵され、折り返し位置(2) から目標位置(3) まで車両Vが後進する間は前輪Wf,Wfは左に自動操舵される。
【0024】
図2(B)から明らかなように、自動操舵が行われている間、制御部22は記憶部23から読み出したバック駐車/左モードの規範転舵角θrefと、転舵角検出手段S1 から入力された転舵角θとに基づいて偏差E(=θref−θ)を算出し、その偏差Eが0になるようにステアリングアクチュエータ7の作動を制御する。このとき、規範転舵角θrefのデータは車両Vの移動距離Xに対応して設定されているため、クリープ走行の車速に多少の変動があっても車両Vは常に前記移動軌跡上を移動することになる。
【0025】
上記自動操舵制御はドライバーがブレーキペダル9を踏んで車両がクリープ走行する間に実行されるため、ドライバーが障害物を発見したときに速やかにブレーキペダル9を踏み込んで車両Vを停止させることができる。
【0026】
上述した自動操舵制御は、ドライバーがモード選択スイッチS6 をOFFした場合に中止されるが、それ以外にもドライバーがブレーキペダル9から足を離した場合、ドライバーがステアリングホイール1を操作した場合に中止され、通常のパワーステアリング制御に復帰する。
【0027】
図6は、基準となる積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進する状態を示している。このとき、第1移動距離検出手段M1で検出される第1の車輪としての左前輪Wfの移動距離LL (第1移動距離LL )と、第2移動距離検出手段M2で検出される第2の車輪としての右前輪Wfの移動距離LR (第2移動距離LR )とは、左前輪Wfの旋回半径をRL とし、右前輪Wfの旋回半径をRR とすると、
LR =(RR /RL )×LL
の関係が成立する(図7の破線参照)。
【0028】
それに対して、図8の実線は、前記基準となる積載重量よりも大きい積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進する状態を示している。図6および図8を比較すると明らかなように、積載重量が増加すると前輪Wf,Wfの切れ角δが減少するために、第1の車輪としての左前輪Wfの旋回半径はRL からRL ′に増加し、第2の車輪としての右前輪Wfの旋回半径はRR からRR ′に増加する。その結果、左前輪Wfが第1移動距離LL だけ移動したとき、右前輪Wfの第2移動距離は前記LR からLR ′に変化し、第1移動距離LL および第2移動距離LR ′の間に、
LR ′=(RR ′/RL ′)×LL
が成立する(図7の実線参照)。この状態では車両Vの旋回中心がOからO′に移動し、車両Vは旋回量の不足により目標位置(3) に正しく到達できなくなる。
【0029】
そこで、図9に示すように、基準となる第2移動距離の目標値LR と第2移動距離の実際値LR ′との偏差の絶対値が第1閾値ε1 未満であれば、判定手段M3が移動軌跡に大きなずれが発生しないと判断し、修正・中止手段M4は規範転舵角θrefの修正を行うことなくステアリングアクチュエータ7の制御をそのまま継続する。また前記偏差の絶対値が第1閾値ε1 以上になると、判定手段M3がそのままでは移動軌跡に無視できないずれが発生すると判断し、修正・中止手段M4は修正した規範転舵角θrefに基づいて制御を継続する。具体的には、積載重量の増加により旋回量が不足する場合には規範転舵角θrefを増加方向に修正し、積載重量の減少により旋回量が過剰になる場合には規範転舵角θrefを減少方向に修正することにより、車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができる。
【0030】
更に、前記偏差の絶対値が第2閾値ε2 以上になると、判定手段M3が規範転舵角θrefを修正するだけでは車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができないと判断し、修正・中止手段M4によりステアリングアクチュエータ7の制御を中止するとともに、スピーカからの音声でドライバーに警報を発する。これにより、ドライバーは自発的なステアリング操作を行って車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができる。
【0031】
次に、図10および図11に基づいて本発明の第2実施例を説明する。第2実施例では、左前輪Wfが本発明の第1の車輪に対応し、左後輪Wrが本発明の第2の車輪に対応する。
【0032】
基準となる積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進するとき、第1移動距離検出手段M1で検出される第1の車輪としての左前輪Wfの移動距離LL (第1移動距離LL )と、第2移動距離検出手段M2で検出される第2の車輪としての左後輪Wrの移動距離LLR(第2移動距離LLR)とは、左前輪Wfの旋回半径をRL とし、左後輪Wrの旋回半径をRLRとすると、
LLR=(RLR/RL )×LL
の関係が成立する(図11の破線参照)。
【0033】
一方、前記基準となる積載重量よりも大きい積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進するとき、積載重量の増加により前輪Wf,Wfの切れ角δが減少するために、第1の車輪としての左前輪Wfの旋回半径はRL からRL ′に増加し、第2の車輪としての左後輪Wrの旋回半径はRLRからRLR′に増加する。その結果、左前輪Wfが第1移動距離LL だけ移動したとき、左後輪Wrの第2移動距離は前記LLRからLLR′に変化して第1移動距離LL および第2移動距離LLR′の間に、
LLR′=(RLR′/RL ′)×LL
が成立し(図11の実線参照)、旋回中心がOからO′に移動して車両Vは旋回量の不足により目標位置(3) に正しく到達できなくなる(図10参照)。
【0034】
そこで、図11に示すように、基準となる第2移動距離の目標値LLRと第2移動距離の実際値LLR′との偏差の絶対値が第1閾値ε1 未満であれば、移動軌跡に大きなずれが発生しないと判断し、ステアリングアクチュエータ7の制御をそのまま継続する。また前記偏差の絶対値が第1閾値ε1 以上になると、そのままでは移動軌跡に無視できないずれが発生すると判断し、修正した規範転舵角θrefに基づいて制御を継続する。即ち、重量の増加により旋回量が不足する場合には規範転舵角θrefを増加方向に修正し、積載重量の減少により旋回量が過剰になる場合には規範転舵角θrefを減少方向に修正する。更に、前記偏差の絶対値が第2閾値ε2 以上になると、規範転舵角θrefを修正するだけでは車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができないと判断し、ステアリングアクチュエータ7の制御を中止してドライバーに警報を発する。
【0035】
次に、図12および図13に基づいて本発明の第3実施例を説明する。第3実施例では、左前輪Wfが本発明の第1の車輪に対応し、右後輪Wrが本発明の第2の車輪に対応する。
【0036】
基準となる積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進するとき、第1移動距離検出手段M1で検出される第1の車輪としての左前輪Wfの移動距離LL (第1移動距離LL )と、第2移動距離検出手段M2で検出される第2の車輪としての右後輪Wrの移動距離LRR(第2移動距離LRR)とは、左前輪Wfの旋回半径をRL とし、右後輪Wrの旋回半径をRRRとすると、
LRR=(RRR/RL )×LL
の関係が成立する(図13の破線参照)。
【0037】
一方、前記基準となる積載重量よりも大きい積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進するとき、積載重量の増加により前輪Wf,Wfの切れ角δが減少するために、第1の車輪としての左前輪Wfの旋回半径はRL からRL ′に増加し、第2の車輪としての右後輪Wrの旋回半径はRRRからRRR′に増加する。その結果、左前輪Wfが第1移動距離LL だけ移動したとき、右後輪Wrの第2移動距離は前記LRRからLRR′に変化して第1移動距離LL および第2移動距離LRR′の間に、
LRR′=(RRR′/RL ′)×LL
が成立し(図13の実線参照)、旋回中心がOからO′に移動して車両Vは旋回量の不足により目標位置(3) に正しく到達できなくなる(図12参照)。
【0038】
そこで、図13に示すように、基準となる第2移動距離の目標値LRRと第2移動距離の実際値LRR′との偏差の絶対値が第1閾値ε1 未満であれば、移動軌跡に大きなずれが発生しないと判断し、ステアリングアクチュエータ7の制御をそのまま継続する。また前記偏差の絶対値が第1閾値ε1 以上になると、そのままでは移動軌跡に無視できないずれが発生すると判断し、修正した規範転舵角θrefに基づいて制御を継続する。即ち、重量の増加により旋回量が不足する場合には規範転舵角θrefを増加方向に修正し、積載重量の減少により旋回量が過剰になる場合には規範転舵角θrefを減少方向に修正する。更に、前記偏差の絶対値が第2閾値ε2 以上になると、規範転舵角θrefを修正するだけでは車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができないと判断し、ステアリングアクチュエータ7の制御を中止してドライバーに警報を発する。
【0039】
次に、図14および図15に基づいて本発明の第4実施例を説明する。第4実施例では、左後輪Wrが本発明の第1の車輪に対応し、右後輪Wrが本発明の第2の車輪に対応する。
【0040】
基準となる積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進するとき、第1移動距離検出手段M1で検出される第1の車輪としての左後輪Wrの移動距離LLR(第1移動距離LLR)と、第2移動距離検出手段M2で検出される第2の車輪としての右後輪Wrの移動距離LRR(第2移動距離LRR)とは、左後輪Wrの旋回半径をRLRとし、右後輪Wrの旋回半径をRRRとすると、
LRR=(RRR/RLR)×LLR
の関係が成立する(図15の破線参照)。
【0041】
一方、前記基準となる積載重量よりも大きい積載重量で車両Vがステアリングホイール1を左に操舵して折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進するとき、積載重量の増加により前輪Wf,Wfの切れ角δが減少するために、第1の車輪としての左後輪Wrの旋回半径はRLRからRLR′に増加し、第2の車輪としての右後輪Wrの旋回半径はRRRからRRR′に増加する。その結果、左後輪Wrが第1移動距離LLRだけ移動したとき、右後輪Wrの第2移動距離は前記LRRからLRR′に変化して第1移動距離LLRおよび第2移動距離LRR′の間に、
LRR′=(RRR′/RLR′)×LLR
が成立し(図15の実線参照)、旋回中心がOからO′に移動して車両Vは旋回量の不足により目標位置(3) に正しく到達できなくなる(図14参照)。
【0042】
そこで、図15に示すように、基準となる第2移動距離の目標値LRRと第2移動距離の実際値LRR′との偏差の絶対値が第1閾値ε1 未満であれば、移動軌跡に大きなずれが発生しないと判断し、ステアリングアクチュエータ7の制御をそのまま継続する。また前記偏差の絶対値が第1閾値ε1 以上になると、そのままでは移動軌跡に無視できないずれが発生すると判断し、修正した規範転舵角θrefに基づいて制御を継続する。即ち、重量の増加により旋回量が不足する場合には規範転舵角θrefを増加方向に修正し、積載重量の減少により旋回量が過剰になる場合には規範転舵角θrefを減少方向に修正する。更に、前記偏差の絶対値が第2閾値ε2 以上になると、規範転舵角θrefを修正するだけでは車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができないと判断し、ステアリングアクチュエータ7の制御を中止してドライバーに警報を発する。
【0043】
而して、上記第2実施例〜第4実施例によっても、上記第1実施例と同様の作用効果を達成することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0045】
例えば、実施例では目標位置までの車両Vの移動軌跡が予め記憶部23に記憶されているが、車両Vの現在位置および目標位置から前記移動軌跡を算出することも可能である。また実施例では車両Vが折り返し位置(2) から目標位置(3) まで後進する間に本発明を適用しているが、車両Vがスタート位置(1) から折り返し位置(2) まで前進する間に本発明を適用することも可能である。また第1の車輪および第2の車輪の選択は第1実施例〜第4実施例のものに限定されず、4個の車輪のうちの任意の2個を第1の車輪および第2の車輪として選択することが可能である。また第1閾値ε1 および第2閾値ε1 の大きさは、各実施例毎に任意に設定されるものである。
【0046】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、例えば積載重量の差によってサスペンションのジオメトリが変化したために、第1の車輪の回転角から算出した車両の第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と、第2の車輪の回転角から算出した車両の第2移動距離の実際値との差が閾値以上になると、第1移動距離および第2移動距離が所定の関係にないと判断し、予め設定された車両の移動軌跡を修正するか、あるいはステアリングアクチュエータの制御を中止するので、サスペンションのジオメトリの変化によって車両が正しい移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0047】
また請求項2に記載された発明によれば、第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と実際値との差が閾値以上のときに移動軌跡の修正、あるいはステアリングアクチュエータの制御中止を実行するので、サスペンションのジオメトリの変化に伴う移動軌跡のずれを的確に検出して対応することができる。
【0048】
また請求項2に記載された発明によれば、第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と実際値との差が第1閾値以上のときに移動軌跡を修正するので、サスペンションのジオメトリが変化しても車両を正しく目標位置に導くことができる。
【0049】
また請求項3に記載された発明によれば、第1移動距離に応じて決まる第2移動距離の目標値と実際値との差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上のときにステアリングアクチュエータの制御を中止するので、サスペンションのジオメトリが大きく変化して移動軌跡の修正による対処が困難になっても、車両が誤った目標位置に導びかれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 操舵制御装置を備えた車両の全体構成図
【図2】 バック駐車/左モードの作用説明図
【図3】 モード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図
【図4】 ステアリングホイールの転舵角と前輪の切れ角との関係を示す図
【図5】 移動軌跡修正手段のブロック図
【図6】 積載重量が小さい車両が後進するときの作用説明図
【図7】 第1前輪移動距離および第2前輪移動距離の関係を示す図
【図8】 積載重量が大きい車両が後進するときの作用説明図
【図9】 移動軌跡を修正する基準の説明図
【図10】 第2実施例に係る積載重量が大きい車両が後進するときの作用説明図
【図11】 第2実施例に係る移動軌跡を修正する基準の説明図
【図12】 第3実施例に係る積載重量が大きい車両が後進するときの作用説明図
【図13】 第3実施例に係る移動軌跡を修正する基準の説明図
【図14】 第4実施例に係る積載重量が大きい車両が後進するときの作用説明図
【図15】 第4実施例に係る移動軌跡を修正する基準の説明図
【符号の説明】
7 ステアリングアクチュエータ
22 制御部(アクチュエータ制御手段)
23 記憶部(移動軌跡設定手段)
LL 第1移動距離
LLR 第1移動距離、第2移動距離、第2移動距離の目標値
LLR′ 第2移動距離、第2移動距離の実際値
LR 第2移動距離、第2移動距離の目標値
LR ′ 第2移動距離、第2移動距離の実際値
LRR 第2移動距離、第2移動距離の目標値
LRR′ 第2移動距離、第2移動距離の実際値
M1 第1移動距離算出手段
M2 第2移動距離算出手段
M3 判定手段
M4 修正・中止手段
V 車両
Wf 前輪(車輪)
Wr 後輪(車輪)
ε1 第1閾値(閾値)
ε2 第2閾値(閾値)
Claims (3)
- 目標位置までの車両(V)の移動軌跡を記憶または算出する移動軌跡設定手段(23)と、
車輪(Wf)を転舵するステアリングアクチュエータ(7)と、
車両(V)が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段(23)により設定された移動軌跡に基づいてステアリングアクチュエータ(7)の駆動を制御するアクチュエータ制御手段(22)と、
を備えた車両の自動操舵装置において、
前記アクチュエータ制御手段(22)は、
第1の車輪(Wf,Wr)の回転角から車両(V)の第1移動距離(LL ,LLR)を算出する第1移動距離算出手段(M1)と、
第2の車輪(Wf,Wr)の回転角から車両(V)の第2移動距離(LR ,LLR,LRR ;L R ′,L LR ′,L RR ′)を算出する第2移動距離算出手段(M2)と、
第1移動距離算出手段(M1)が算出した第1移動距離(L L ,L LR )に応じて決まる第2移動距離の目標値(L R ,L LR ,L RR )と、第2移動距離算出手段(M2)が算出した第2移動距離の実際値(L R ′,L LR ′,L RR ′)との差が閾値(ε 1 ,ε 2 )以上のときに、第1移動距離(LL ,LLR)および第2移動距離(LR ,LLR,LRR ;L R ′,L LR ′,L RR ′)が所定の関係にないと判定する判定手段(M3)と、
判定手段(M3)により前記所定の関係にないと判定されたときに、該所定の関係となるように前記移動軌跡を修正するか、あるいはステアリングアクチュエータ(7)の制御を中止する修正・中止手段(M4)と、
を備えたことを特徴とする車両の自動操舵装置。 - 前記差が第1閾値(ε1 )以上のときに、前記修正・中止手段(M4)は前記移動軌跡を修正することを特徴とする、請求項1に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記差が前記第1閾値(ε1 )よりも大きい第2閾値(ε2 )以上のときに、前記修正・中止手段(M4)はステアリングアクチュエータ(7)の制御を中止することを特徴とする、請求項2に記載の車両の自動操舵装置。
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