JP4057354B2 - 吸収冷凍機の診断方法及び診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は吸収冷凍機に関し、特に吸収冷凍機の健全度診断に好適な診断方法及び診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水−臭化リチウム系に代表される吸収冷凍機においては、経年劣化や過酷な条件での連続的使用等による溶液温度、濃度の過度の上昇により、高温再生器の腐食や晶析等の故障・トラブルのおそれがある。これを防止するために、機器各部の温度、圧力等を常時監視し、これらの値が予め定めた閾値を超えた場合に警報を発する等の手段が講じられている例が多い。しかし、閾値は、通常、機器の運転条件が最も厳しい定格運転(100%出力)条件を基準にして設定される。このため、運転条件が緩やかな中間期には異常が顕在化せず、運転条件が厳しくなる高負荷時に集中して異常が顕在化するという問題がある。
【0003】
このような問題に対応するため、例えば特開平6−159852は、部分負荷運転時のデータにもとづいて機器の異常を検出できる技術を開示している。この技術は、基本的に定常状態で収集したデータに基づく機器診断技術である。しかしながら、実使用条件では、台数制御等による急激な負荷変動、冷却塔のファン発停による冷却水温度の変動などにより、定常状態で運転が継続されるケースはむしろまれである。従って、この技術によれば過渡的な運転状態において収集したデータを定常状態のデータと判断して、異常の発生と誤診する恐れがある。
【0004】
さらに、この技術では,熱源機の運転状態を決定する冷水温度、冷却水入口温度、冷水流量、冷却水流量など、種々のパラメータについて特性曲線を用意する必要があり、膨大な試験データが必要になるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、定格運転条件における所定の部位の物理量閾値を予め知ることにより、実機の運転データに基づいて機器の健全度を判定できる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下の内容を要旨とするものである。
【0007】
本発明は、吸収冷凍機の所定の部位における物理量を所定の期間計測したデータを、所定の運転条件に係る要素に関してセグメント化し、それぞれのセグメントに属する単位データに含まれる前記物理量データに基づいて各セグメントの代表値を求め、各セグメントの代表値に基づいて定格運転条件における物理量の推定値を求め、この値を予め定めた閾値と比較して、推定値が閾値を超えたときは異常状態と判断し、さらに、複数期間にわたる前記推定値にもとづいて、前記閾値を超える時期を予測することを特徴とする吸収冷凍機の診断方法である。
【0008】
すなわち、部分負荷運転時における対象データに適当な統計処理を施すことにより定格運転条件における物理量値を外挿により求め、この値を予め危険域として定めてある閾値と比較して、機器の健全状態を判定し、さらに、複数期間にわたる物理量推定値にもとづいて、閾値を超える時期を予測するものである。
【0009】
ここに「閾値」としては、実験等により求めた定格運転条件時の当該物理量値に適当な安全係数を乗じた値を採用することができる。
【0010】
本発明において、「セグメント化」とは、種々の運転条件を決定する要素の中から適切な要素を選択して、これらの計測値を段階的に分類したものをいう。図4は、冷房負荷率と冷却水入口温度についてセグメント化した例であり、冷房負荷率について10%刻み、冷却水入口温度について1℃刻みでセグメント化されている。
【0011】
統計処理を行うことにより、実機運転時に収集するデータのうち非定常状態(過渡状態)のデータが排除され、定常状態とみなしうる運転データを抽出することができるという効果がある。
【0012】
統計処理としては、対象となるセグメントに属する単位データの物理量平均値のうち、所定の信頼性を満たす一以上の単位データの物理量平均値を当該セグメントの代表値とし、このような代表値にもとづいて定格運転条件における物理量値を推定する処理を行うことができる。
【0013】
本明細書において「単位データ」とは、対象セグメントに属する物理量を、所定期間単位(例えば1日)にまとめたデータ単位をいう。
【0014】
「所定の統計処理」としては、さらに、対象となるセグメントに属する単位データの物理量平均値のうち、最も信頼性の高い一の単位データの物理量平均値を当該セグメントの代表値とし、このような代表値にもとづいて定格運転条件における物理量値を推定する処理を行うことができる。
「複数期間」とは、例えば複数年にわたることを意味する。毎年物理量推定値を求めることにより、物理量の変化傾向を把握することができる。これにより将来の物理量を推定することが可能になり、さらに閾値を超える時期を予測することができる。こうした予測にもとづいて設備の更新時期、オーバーホール必要時期等の判断が可能となる。
【0015】
上記各発明において、「所定の部位」としては、高温再生器を好適に用いることができ、この場合、「物理量」として溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方を用いることができる。
【0016】
経年劣化等により機器の能力が低下すると、同一能力を確保するために吸収サイクルが高濃度側にシフトし、このため正常状態と比較して高温再生器における溶液温度は上昇傾向となる。これにより高温再生器の腐食や配管内での晶析等のトラブルの危険性が増大することになる。従って、高温再生器温度を異常診断の指標として用いることは、トラブル回避の手段として非常に有効である。また、運転時の高温再生器温度と圧力は比例関係にあるから、圧力を指標として用いることも同様に有効である。
【0017】
「所定の部位」としては、凝縮器をも好適に用いることができる。この場合、「物理量」として冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方を用いることができる。
【0018】
凝縮器熱交換器や冷却塔の内部にスケールが付着する等により熱交換能力が低下すると、正常状態と比較して凝縮温度、圧力が上昇傾向となる。従って、凝縮温度、圧力を監視することにより、機器劣化診断を行うことが可能となる。
【0019】
上記発明において、「所定の運転条件」に係る要素として、冷房負荷率、冷水取出温度、冷水流量、冷却水入口温度、冷却水流量のいずれか一又は二以上の組合わせを採用することができる。
【0020】
これらの要素は機器の負荷状態を知るために必要なパラメータであり、これらを単独又は組合わせて用いることにより、機器の定格運転条件を推定することができる。
【0023】
本発明は、吸収冷凍機運転時の所定の物理量計測値を格納するデータ格納手段と、格納された物理量計測値データを、所定の運転条件に係る要素に関してセグメント化するセグメント化手段と、セグメント化された物理量計測値データに所定の統計処理を施す統計処理手段と、統計処理手段により処理されたデータにもとづいて定格運転条件における物理量を推定する推定値算出定手段と、推定値を予め定めた閾値と比較する比較手段と、推定値が閾値を超えたときに異常状態と判断する異常判断手段と、複数期間にわたる前記推定値にもとづいて、前記閾値を超える時期を予測する閾値超時期予測手段と、を備えたことを特徴とする吸収冷凍機の診断装置を提供する。さらに、本発明は、このような診断装置を備えた吸収冷凍機を提供する。
【0024】
このような診断装置を備えた吸収冷凍機について、上記診断方法を採用することにより、上記各作用をもたらすことができる。
さらに、本発明は、吸収冷凍機の高温再生器における溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方を所定の期間計測したデータを、冷房負荷率、冷水取出温度、冷水流量、冷却水入口温度、冷却水流量のいずれか一又は二以上の組合わせに関してセグメント化し、それぞれのセグメントに属する単位データに含まれる溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方のデータに基づいて各セグメントの代表値を求め、前記各セグメントの代表値に基づいて定格運転条件における溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方の推定値を外挿により求め、前記推定値を予め定めた閾値と比較して、前記推定値が前記閾値を超えたときは、異常状態と判断する、ことを特徴とする吸収冷凍機の診断方法を提供する。
さらに、吸収冷凍機の凝縮器における冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方を所定の期間計測したデータを、冷房負荷率、冷水取出温度、冷水流量、冷却水入口温度、冷却水流量のいずれか一又は二以上の組合わせに関してセグメント化し、それぞれのセグメントに属する単位データに含まれる冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方のデータに基づいて各セグメントの代表値を求め、前記各セグメントの代表値に基づいて定格運転条件における冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方の推定値を外挿により求め、前記推定値を予め定めた閾値と比較して、前記推定値が前記閾値を超えたときは、異常状態と判断する、ことを特徴とする吸収冷凍機の診断方法を提供する。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図6を用いて本発明の一実施形態について説明する。
【0026】
(全体構成)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る吸収冷凍機の主要構成及び冷媒、溶液、冷却水及び冷水のフローを示す図である。図1において、本発明に係る吸収冷凍機1は水−臭化リチウム系吸収冷凍機であり、高温再生器HG、低温再生器LG、凝縮器CD、吸収器AB、蒸発器EV、高温溶液熱交換器HEX、低温溶液熱交換器LEXを主要構成としている。これらは全て広義の熱交換器であり、各熱交換器間は冷媒配管R1乃至R3又は溶液配管L1乃至L7で結ばれており、冷媒又は溶液が配管内部を流れるように構成されている。なお、同図では冷媒系統を鎖線、溶液系統を実線でそれぞれ示してある。
【0027】
また、吸収冷凍機1は、吸収器AB及び凝縮器CDで発生した熱を回収して大気に放熱するための冷却水回路W1及びW2、蒸発器EVで発生した冷熱を取り出して冷房負荷率に供給するための冷水回路CWを備えている。なお、同図には示されていないが冷却水回路W1と冷却水回路W2は配管で接続されており、冷却水回路W1を出た冷却水が冷却水回路W2に導かれるように構成されている。
【0028】
さらに吸収冷凍機1は、機器診断処理を行う制御部13を備えている。図2は制御部13の詳細を示すものであり、制御部13は制御全体を司るCPU18(中央演算処理装置)、CPU3の指示により各部から取り込まれる情報を格納するためのRAM14、診断制御プログラム等を格納したROM15、CPU3の時間制御を司るクロック16を備えている。なお、吸収冷凍機1の所定の部位には、温度センサS1乃至S5及び流量センサS6が設けられており、CPU3の指示により所定のインターバルで温度及び流量情報を制御部13に送信するように構成されている。なお、S1は高温再生器、S2は冷却水入口、S3は冷却水出口、S4は冷水入口、S5は冷水出口における温度センサである。
【0029】
(溶液フロー)
次に吸収冷凍機1の溶液フローについて説明する。高温再生器HGの燃焼部3には都市ガス等の燃料が供給されており、高温再生器HG内の溶液は燃料の燃焼により加熱濃縮され、冷媒蒸気を分離する。分離により濃縮された臭化リチウム溶液(以下、中間液という)は、溶液配管L1、高温溶液熱交換器E1を経由して低温再生器LGに導入される。なお、溶液熱交換器E1では、後述する吸収器ABから低温溶液熱交換器E2を経由して高温再生器HGに還流する低温の希溶液に熱を与える。また、溶液配管L1の経路中には図示はしないがキャピラリなどの減圧装置が設けられており、溶液の圧力は低温再生器LGの圧力に降下するように構成されている。
【0030】
低温再生器LGには、後述するように高温再生器HGで分離された高温の冷媒が冷媒配管R1を介して供給されているため、低温再生器LG内に導入された溶液はさらに加熱濃縮され、飽和蒸気圧の冷媒蒸気を分離する。濃縮された濃溶液5は、溶液配管L3、低温溶液熱交換器E2を経由して吸収器ABに導かれる。なお、低温溶液熱交換器E2では、後述する吸収器ABから高温再生器HGに還流する低温の希溶液に熱を与える。
【0031】
低圧吸収器LA内に導入された濃溶液は、溶液滴下装置10により滴下され、後述する蒸発器EVから導かれる冷媒蒸気を吸収して希釈される。その際、吸収に伴い発生する吸収熱は、冷却水回路W1内の冷却水に回収され、図示しない冷却塔を介して大気中に捨てられる。
【0032】
冷却水により冷却され器内下部に滞留する希溶液8は、溶液ポンプ(図示せず)の作用により溶液配管L5乃至L7を経由して高温再生器HGに還流する。なお、還流の途中で、希溶液は上述のように経路中に設けられた二つの溶液熱交換器において受熱して、高温再生器HGに戻される。
【0033】
(冷媒フロー)
次に吸収冷凍機1の冷媒フローについて説明する。高温再生器HG上部のエリミネータ2において分離された冷媒蒸気は、冷媒配管R1を経由して低温再生器LGに導かれる。ここで、上述のように中間液に熱を与えて自らは凝縮して冷媒液となり、さらに冷媒配管R2を経由して凝縮器CDに導かれる。一方、冷媒蒸気からの受熱により中間液から分離した飽和蒸気圧の冷媒蒸気も、エリミネータ12を経て凝縮器CDに導かれる。凝縮器CD内の冷媒液は、さらに冷媒配管R3を経由して真空下の蒸発器EVに導かれ、冷媒滴下装置9により蒸発器EV内部に滴下される。
【0034】
滴下された冷媒液は、真空下で冷水回路CWを流れる冷水から熱を奪い、自らは蒸発して冷媒蒸気となる。なお、図1では省略したが、蒸発しなかった冷媒液は、蒸発器VA下部に貯留して冷媒ポンプ(図示せず)により再度、冷媒滴下装置9により滴下される。また、冷水回路CW内の冷水は機器外部に取り出され、冷房に利用される。
【0035】
発生した冷媒蒸気は、連絡部11を経由して吸収器ABに導かれ、上述のように溶液滴下装置10から滴下される濃溶液に連続的に吸収される。この吸収作用により、蒸発器EVの真空が継続的に維持されることになる。
【0036】
(冷却水フロー)
冷却塔(図示せず)において大気と熱交換して冷却された冷却水は、冷却水回路W1を経由して吸収器ABに導かれる。ここで冷却水は、吸収に伴い発生する吸収熱を回収し、さらに冷却水回路W2を介して凝縮器CDに導かれる。ここで凝縮器CD内部の冷媒蒸気を凝縮させる。冷却水は冷却塔に戻され、回収した熱はここで大気中に捨てられる。
【0037】
(運転データ格納)
センサS1乃至S6により計測される各部の温度、流量データは制御部13に送られ、順次RAM14の所定の記憶領域に格納される。図3は、RAM14内に設けられたデータテーブル及びデータ格納状態を概念的に示したものである。冷房負荷率は、RAM14内のデータに基づいて演算され、さらに所定の記憶領域に格納される。ここに冷房負荷RLは、RL=Fc×(Tw2−Tw1) なる式で表され(Fc:冷水流量、Tw1:冷水入口温度、Tw2:冷水出口温度)、さらに冷房負荷率は(RL/RLf)×100%
(RLf:定格冷房能力)で表される。
【0038】
(セグメント化)
次に、取得データのセグメント化について説明する。本実施形態では、冷房負荷率と冷却水入口温度の2要素によりセグメント化している。図4は、セグメントテーブルを示したものであり、冷房負荷率について10%刻み、冷却水入口温度について1℃刻みのマトリックスとしてセグメント化されている。同図において、Dijが一セグメントを表している。
図5は、セグメントDijに属する単位データのデータ格納状態を概念的に示したものである。単位データは、所定の期間(本実施形態では日)、所定の物理量(同、高温再生器温度)、データ数、物理量平均値、標準偏差により構成されている。平均値、標準偏差は高温再生器温度にもとづいて演算され、所定の記憶領域に格納される。
例えば、ある冷房負荷率、冷却水入口温度範囲により定まるセグメントDijにおいては、構成されるある日d1所定のインターバルでセンサS1乃至S6から各部の温度、流量データがCPU18に送られ、これらは順次RAM14の所定の記憶領域に格納される(ステップ101)。
【0039】
次に、収集された単位データのデータに基づいて、冷房負荷率と冷却水入口温度の2要素によりセグメント化が行われる(ステップ102)。
【0040】
(代表値の選定)
次に、RAM14に格納された運転データ、セグメント情報及びROM14に搭載された制御、演算プログラム等に基づきCPU18が行う代表値の選定処理について、図6(a)のフローを参照して説明する。
【0041】
CPU18からの代表値選定の指示(ステップ100)により対象セグメントの抽出が行われる(ステップ101)。抽出は図4のD11から順次全てのセグメントについて行われる。まず、当該セグメントに属する単位データの物理量(本実施形態では高温再生器温度)について統計量(本実施形態ではデータ数、平均値、標準偏差値)が演算される(ステップ102)。
【0042】
次いで、単位データ中の高温再生器温度データの数が基準値以上であるか否かが判定される(ステップ103)。これは、データ数が少ないものについては信頼性が低く、当該セグメントの代表値として適当ではないと判断されるからである。「基準値」は、過去の実機運転実績等から予め定めておくことができる。条件を満たさないセグメントの単位データは採用されないことになる(ステップ105)。
【0043】
データ数が基準値以上の場合、次に単位データの高温再生器温度の統計的信頼性が基準値以内であるかが判定される(ステップ104)。本実施形態では標準偏差により判定される。これは、データのばらつきが大きな単位データの情報を排除して、後述の定格運転条件の推定誤差を小さくするためである。標準偏差の基準値については、過去の実機運転実績及び統計的手法により決定することができる。条件を満たさないセグメントの単位データは採用されない(ステップ105)。上記条件を満たすセグメントのデータは代表値として採用され、以下の高温再生器温度推定処理に利用されることになる(ステップ106)。
【0044】
上記処理が全てのセグメントについて行われる(ステップ108)。なお、該当する単位データが存在しないセグメントについては無視される。
【0045】
処理が完了した場合は、図6(b)に示す定格運転条件時の高温再生器温度推定フローに移行する(ステップ110)。
【0046】
(定格運転条件における高温再生器温度の推定)
処理が開始されると(ステップ120)、各冷却水温度について、冷房負荷率−高温再生器温度の回帰直線が求められる(ステップ121)。図7は、この処理の実質的内容を概念的に示すものであり、横軸に冷房負荷率、縦軸に高温再生器温度代表値をとったグラフが用いられる。まず、冷却水入口温度をパラメータとして、図6のフローで示す前段の処理において各セグメントの代表値として採用された高温再生器温度が、冷房負荷率に対してプロットされる。次に、プロットにもとづいて最小2乗法により回帰直線式が求められる。例えば、図7では冷却水入口温度=25℃における代表値はd1、d3、d4であり、これに基づいて回帰直線式Q1が求まる。この処理が各冷却水入口温度について行われる。
【0047】
次に各冷却水入口温度の回帰直線(図ではQ1乃至Q3)を冷房負荷率100%に外挿し、各冷却水入口温度に対して冷房負荷率100%における高温再生器温度が推定される(ステップ122)。図8におけるT1乃至T3が外挿値である。
【0048】
各冷却水入口温度に対する冷房負荷率100%の高温再生器温度が推定できたら、次に冷房負荷率100%における冷却水入口温度と高温再生器温度の回帰直線式が求められ(ステップ123)、さらに定格運転条件における高温再生器温度が外挿により求められるる(ステップ124)。図8はこれらの処理を示すものであり、同図ではTw=25、30、31℃に対して高温再生器Th=T1、T2、T3がプロットされ、回帰直線を定格運転条件における冷却水入口温度(例えば32℃)に外挿して、定格運転条件における高温再生器温度Tcが求められる。
【0049】
(異常判定)
このようにして定格条件における高温再生器温度Tcが求まると、次いでこの値と予め定めた閾値Tthとが比較される(ステップ125)。Tc≦Tthであれば機器は正常状態であると判断され、診断は終了する(ステップ127)。
【0050】
Tc>Tthであると機器は異常状態であると判断され、警告が発せられる(ステップ126)。警告により使用者はメンテナンス依頼等、必要な措置をとることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、ステップ105において、一セグメントについて複数の代表値を採用したが、例えば一セグメントについて最も標準偏差値の小さな単位データの値を当該セグメントの代表値として採用してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、高温再生器温度にもとづいて健全度を診断したが、温度に限らず高温再生器圧力、さらに温度・圧力の組合わせにもとづいて診断することも可能である。さらに、高温再生器に限らず、他の部位、例えば凝縮器の冷媒温度、冷媒圧力のいずれか、又はこれら双方を用いて診断することも可能である。
【0053】
また、本実施形態では、高温再生器温度のプロットにもとづき直線近似式を用いたが、これに限らず最適の近似式を採用することができる。
【0054】
次に図9、10を参照して本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は請求項7に対応し、高温再生器温度を指標とした経年劣化予測方法に関するものである。まず、数年間にわたる計測データにもとづいて、各年ごとに冷房負荷率100%時における冷却水入口温度と高温再生器温度の関係を求める。その具体的方法は、上述の実施形態と同様であるので省略する。図9は、このようにして求めた結果を示しており、Y1乃至Y4は各年次のカーブを示している。同図から明らかなように、Y1年においては勾配が緩やかであり、冷却水入口温度の上昇に対して高温再生器温度がそれほど上昇していない。これに対して年次が進むにつれ勾配が急になっており、高温再生器温度の上昇が大きくなることが分かる。各年次の定格条件(冷却水入口温度32℃)における高温再生器温度は、それぞれT1乃至T4で示している。
【0055】
図10は、年次−高温再生器温度のグラフにおいて、図9のT1乃至T4をプロットしたものである。T1乃至T4を曲線で結ぶことにより、経年に伴う高温再生器温度の上昇傾向を把握することができる。さらに、この曲線を外挿することにより、閾値温度Tthとクロスする時期を予測することができる。図10では、Y4年とY5年の間で閾値温度を超えていることがわかる。このようにして設備更新又はオーバーホール時期を予測することができる。
【0056】
上記各実施形態では二重効用シリーズフローの吸収冷凍機を示したが、パラレルフロー等、他の方式のものであってもよい。さらに、二重効用に限らず、単効用、三重効用等であってもよい。
【0057】
また、各実施形態では作動媒体として水−臭化リチウム系を示したが、これに限らずアンモニア−水系等他の作動媒体を用いるものであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、部分負荷運転や冷却水温度が低い状態での運転等、定格条件と異なる状態での運転データから定格運転条件における機器の運転状態を予測することができる。これにより、夏期等の高負荷期に発生する事象を予測し、事前にメンテナンス等の対策を行うための判断材料を提供することができる。
【0059】
また、データを蓄積して経時的に分析することにより、経年的劣化を把握することができるため、設備更新時期決定の参考材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吸収冷凍機の一実施形態を示す図である。
【図2】制御部の詳細を示す図である。
【図3】RAM内のデータテーブル及びデータ格納状態を概念的に示す図である。
【図4】セグメント化を概念的に示す図である。
【図5】セグメントに含まれる単位データを示す図である。
【図6】異常判定フローを示す図である。
【図7】各冷却水入口温度について、冷房負荷率100%における高温再生器温度を求めるための図である。
【図8】定格運転条件における高温再生器温度を求めるための図である。
【図9】各年における冷房負荷率100%における高温再生器温度変化を示す図である。
【図10】定格運転条件における高温再生器温度の年ごとの変化を示す図である。
【符号の説明】
1……吸収冷凍機、2・12……エリミネータ、13……制御部、17……警報装置、AB……吸収器、CD……凝縮器、CW……冷水回路、D1……溶液滴下装置、D2……冷媒滴下装置、E1……高温溶液熱交換器、E2……低温溶液熱交換器、HG……高温再生器、L1〜L6……溶液配管、R1〜R3……冷媒配管、S1〜S6……センサ、VA……蒸発器、W1、W2……冷却水回路、
Claims (10)
- 吸収冷凍機の所定の部位における物理量を所定の期間計測したデータを、所定の運転条件に係る要素に関してセグメント化し、
それぞれのセグメントに属する単位データに含まれる前記物理量データに基づいて各セグメントの代表値を求め、
前記各セグメントの代表値に基づいて定格運転条件における前記物理量の推定値を求め、
前記推定値を予め定めた閾値と比較して、前記推定値が前記閾値を超えたときは、異常状態と判断し、
さらに、複数期間にわたる前記推定値にもとづいて、前記閾値を超える時期を予測する、ことを特徴とする吸収冷凍機の診断方法。 - 前記代表値が、対象となるセグメントに属する単位データの前記物理量平均値のうち、所定の信頼性を満たす一以上の単位データの前記物理量平均値であることを特徴とする請求項1に記載の吸収冷凍機の診断方法。
- 前記代表値が、対象となるセグメントに属する単位データの前記物理量平均値のうち、最も信頼性の高い一の単位データの前記物理量平均値であることを特徴とする請求項1に記載の吸収冷凍機の診断方法。
- 前記所定の部位が高温再生器であり、かつ、前記物理量が溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の吸収冷凍機の診断方法。
- 前記所定の部位が凝縮器であり、かつ、前記物理量が冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の吸収冷凍機の診断方法。
- 前記所定の運転条件に係る要素が、冷房負荷率、冷水取出温度、冷水流量、冷却水入口温度、冷却水流量のいずれか一又は二以上の組合わせであることを特徴とする請求項1乃至5吸収冷凍機の診断方法。
- 吸収冷凍機運転時の所定の物理量計測値を格納するデータ格納手段と、
格納された前記物理量計測値データを、所定の運転条件に係る要素に関してセグメント化するセグメント化手段と、
前記セグメント化された前記物理量計測値データに所定の統計処理を施す統計処理手段と、
前記統計処理手段により処理されたデータにもとづいて、定格運転条件における物理量を推定する推定値算出定手段と、
前記推定値を予め定めた閾値と比較する比較手段と、
前記推定値が前記閾値を超えたときは、異常状態と判断する異常判断手段と、
さらに、複数期間にわたる前記推定値にもとづいて、前記閾値を超える時期を予測する閾値超時期予測手段と、
を備えたことを特徴とする吸収冷凍機の診断装置。 - 請求項7に記載の診断装置を備えた吸収冷凍機。
- 吸収冷凍機の高温再生器における溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方を所定の期間計測したデータを、冷房負荷率、冷水取出温度、冷水流量、冷却水入口温度、冷却水流量のいずれか一又は二以上の組合わせに関してセグメント化し、
それぞれのセグメントに属する単位データに含まれる溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方のデータに基づいて各セグメントの代表値を求め、
前記各セグメントの代表値に基づいて定格運転条件における溶液温度若しくは溶液圧力、又は溶液温度と溶液圧力の双方の推定値を外挿により求め、
前記推定値を予め定めた閾値と比較して、前記推定値が前記閾値を超えたときは、異常状態と判断する、
ことを特徴とする吸収冷凍機の診断方法。 - 吸収冷凍機の凝縮器における冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方を所定の期間計測したデータを、冷房負荷率、冷水取出温度、冷水流量、冷却水入口温度、冷却水流量のいずれか一又は二以上の組合わせに関してセグメント化し、
それぞれのセグメントに属する単位データに含まれる冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方のデータに基づいて各セグメントの代表値を求め、
前記各セグメントの代表値に基づいて定格運転条件における冷媒の凝縮温度若しくは圧力、又は凝縮温度と圧力の双方の推定値を外挿により求め、
前記推定値を予め定めた閾値と比較して、前記推定値が前記閾値を超えたときは、異常状態と判断する、
ことを特徴とする吸収冷凍機の診断方法。
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