JP4057250B2 - 有機el素子および有機elディスプレイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)に関し、さらに詳述すると、高発光効率、高輝度、長寿命化を図った青色有機EL素子およびそれを用いた有機ELディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、自発光型の平面型表示素子として、その用途が有望視されている。有機EL素子は、無機EL素子とは異なり、交流で駆動し、かつ、高電圧の印加が必要といった制約がなく、また、有機化合物の多様性により、多色化が容易であると考えられる。このため、カラーディスプレーなどへの応用が期待され、盛んに研究が行われている。
【0003】
有機EL素子をカラーディスプレーに適用する場合、光3原色である赤色、緑色、青色の3色の発光を得る必要がある。このうち緑色発光は多くの例が報告されており、例えば緑色素子としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを用いた素子(Applied Physics Letters 51、 P913(1987))、ジアリールアミン誘導体を用いた素子(特開平8−53397号公報)などが知られている。
【0004】
赤色発光の得られる有機EL素子については、例えば特許第2795932号公報では青色発光を蛍光色素層において波長変換するようにした有機EL素子が得られており、また特開平7−272854号公報、特開平7−288184号公報、特開平8−286033号公報等では緑色や青色の発光が得られる発光層に赤色蛍光色素をドーピングした赤色発光の有機EL素子の発明が記載されている。
【0005】
青色発光素子についても、スチルベン系化合物を用いた素子(特開平5−295359号)、トリアリールアミン誘導体を用いた素子(特開平7−53955号)、テトラアリールジアミン誘導体を用いた素子(特開平8−48656号)、スチリル化ビフェニル化合物を用いた素子(特開平6−132080号)など、数多くの報告例が知られている。
【0006】
有機EL素子は、電界励起型発光の無機EL素子と異なり、陽極から正孔キャリアを、陰極から電子キャリアを注入し、これらキャリアが再結合することにより発光するキャリア注入型素子である。このような有機EL素子の高性能化には、発光層のみからなる単層型素子よりも発光層と電荷輸送層を組み合わせた積層型素子の方が望ましいとされている。これは、積層型素子においては発光材料と電荷輸送材料の適当な組み合わせにより、陽極からの正孔注入あるいは陰極からの電子注入の際のエネルギー障壁が低減され、電荷の注入が容易になるとともに、電荷輸送層が発光層から正孔または電子が通り抜けることを抑えるブロッキング層として働く。これによって、発光層中の正孔と電子の数的バランスが良くなり、その結果、再結合が有効に行われてEL発光効率が向上すると考えられる。したがって、高効率の有機EL素子を作製するには、発光層と電荷輸送層界面の正孔や電子のブロッキング性の向上が課題となる。
【0007】
従来、正孔輸送性を兼備する赤色または緑色発光層の場合、発光材料のエネルギーギャップが比較的小さいため、発光材料よりイオン化ポテンシャルの大きい電子輸送材料は多く存在している。しかしながら青色発光材料は、赤、緑発光材料と異なり発光材料自体のエネルギーギャップ(HOMO−LUMO準位間のエネルギー差)が大きく、通常、有機EL素子に用いられるトリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム等の8−ヒドロキシキノリン金属錯体、オキサジアゾール誘導体等の電子輸送層より、イオン化ポテンシャルが大きくなっている。図5に示すように、例えば電子輸送材料または緑色発光材料として一般的に広く用いられているトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)は、イオン化ポテンシャルが5.67であり、キャリア輸送性、成膜性はよいが、正孔輸送性青色発光材料の一例である4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)のイオン化ポテンシャル5.9と比して小さい値であるので、正孔輸送性青色発光材料に対しては正孔ブロッキング性が小さい。このため、正孔が通り抜けてしまい、正孔−電子再結合効率の低下に基づくEL発光効率の低下、最高輝度の減少化、また発光サイトが変化する等の欠点を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記青色有機EL素子の問題を改善することを目的とし、さらに詳しくは、C.I.E色度図(1931)で、X,Y座標が(0.25,0.25)以下のBLUE、GREENISH BLUE、PURPLISH BLUE領域の青色素子の高輝度化、高効率化、長寿命化を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、下記[1]〜[8]に示す有機EL素子および有機ELディスプレイを提供する。
【0010】
[1]異極電極間に、有機化合物薄膜よりなる発光層と電子輸送層とを有し、発光層が青色に発光する有機EL素子であって、電子輸送層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機EL素子。
【化9】
(一般式(1)中のMは金属原子を表す。R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のシクロアルキル基またはシアノ基を表し、R1〜R6のうちの少なくとも1つは置換もしくは未置換のアリール基であり、R1〜R6は同一でも異なっていてもよい。Lはハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基または置換もしくは未置換のシクロアルキル基を有する配位子を表す。nは1または2を表し、nが2のとき、R1〜R6の同一記号で表される基は、同一でも異なっていてもよい。)
【0011】
[2]一般式(1)で表される化合物においてR4がアリール基であることを特徴とする[1]の有機EL素子。
【0012】
[3]一般式(1)で表される化合物が下記式(1a)の化合物であることを特徴とする[2]の有機EL素子。
【化10】
【0013】
[4]一般式(1)で表される化合物が下記式(1b)の化合物であることを特徴とする[2]の有機EL素子。
【化11】
【0014】
[5]電子輸送層が、一般式(1)で表される化合物を複数種含むことを特徴とする[1]〜[4]の有機EL素子。
【0015】
[6]電子輸送層が、前記式(1a)の化合物および前記式(1b)の化合物を含むことを特徴とする[5]の有機EL素子。
【0016】
[7]発光層が、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを含有することを特徴とする[1]〜[6]の有機EL素子。
【化12】
(式中R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、シアノ基を表し、nが複数のとき、異なる環のR1〜R4で表される同一記号の基は、同一でも異なっていてもよく、R5およびR6はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表し、nは3〜6の整数を表す。)
【化13】
(式中Mは金属原子を表し、R11〜R19はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基から選択される1種を表し、同一でも異なっていてもよく、また、R11〜R14、R15〜R19は互いに結合して飽和あるいは不飽和の環を形成してもよく、RaはR11〜R19と同様の置換基を有していてもよい基であり、Rbはヘテロ原子であり、RaおよびRbは独立に、または互いに結合してヘテロ環を形成してもよく、nは2または3を表し、Rは2価の基を表す。)
【化14】
(式中R21〜R24はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコシキ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、脂環、複素環を表し、nが複数のとき、異なる環のR21〜R24で表される同一記号の基は、同一でも異なっていてもよく、R25およびR26はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基を表し、nは正の整数を表す。)
【0017】
[8]前記[1]〜[7]の有機EL素子を搭載したことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明で電子輸送層に用いる一般式(1)の化合物、例えば中心金属にガリウム、リガンドに8−ヒドロキシキノリン誘導体を用いた金属錯体は、図4に示すように、青色発光層より大きいイオン化ポテンシャルを有するため正孔ブロック性が大きく、発光層内のキャリアの封じ込め効果、再結合確率が大きくなる。このため高効率、高輝度の青色素子ができる。また、駆動条件が緩和されるため長寿命化が図れる。さらにこの材料は、成膜性が非常によく、熱安定性に優れ、素子の耐熱温度が改善される。
【0019】
本発明に係る有機EL素子に使用される材料および有機EL素子構造とすることにより、陽極から注入された正孔が、電子輸送層において確実にブロックされ、かつ陰極より注入された電子が、発光層でブロックされることにより、キャリアの再結合効率が向上する。このため、本発明に係る有機EL素子は青色発光素子においても発光効率の低下が無く、本発明に係る有機EL素子の最高輝度も、従来のAlq3を用いた有機EL素子の場合と比較して、大きくすることができる。
【0020】
また、本発明に係る有機EL素子においては、正孔の通り抜けがなく、電力効率も従来のものと比較して格段に良いため、低消費電力を可能とし、さらに本発明に係る有機EL素子では低負荷条件で駆動できるため、素子の寿命も長くなる。さらに、イオン化ポテンシャルの大きい電子輸送層を使用することにより、青色発光層もイオン化ポテンシャルの大きいものを使用することができるので、その分青色発光層のエネルギーギャップを大きくすることが可能となった。したがって、本発明に係る有機EL素子においては、発光波長の短波長化が可能となる。これにより、従来の材料では困難であった青色色度の良い有機EL素子の作製、およびこのような有機EL素子と、他の従来の有機EL素子とを組合わせて用いることにより、各種色度を生成することが可能となる。
【0021】
本発明に係る有機EL素子は、陰極と陽極の間に、異極電極間に、有機化合物薄膜よりなる発光層と電子輸送層とを有し、その例として、以下の3つの組合わせが挙げられる。
(1)陽極、発光層、電子輸送層、陰極(図1参照)
(2)陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極(図2参照)
(3)陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極(図3参照)
正孔輸送層と正孔注入層とは、いずれも陽極から発光層への正孔の移動を円滑にするために陽極と発光層との間に設けられる有機薄膜よりなる中間層であり、これを二層構成とした場合に、イオン化ポテンシャルの大きい方を正孔輸送層、小さい方を正孔注入層と称する。
【0022】
本発明に係る有機EL素子に使用される陽極は、正孔を正孔輸送層(正孔注入層を有する場合は正孔注入層、正孔輸送層を有さない場合は発光層)に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上のイオン化ポテンシャル、仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が挙げられる。
【0023】
本発明に係る有機EL素子の正孔注入層を形成する正孔注入材料は特に限定されず、例えば下記(5)の構造式で表される金属のフタロシアニンまたは無金属のフタロシアニンを挙げることができる。
【0024】
【化15】
(上記式において、Xは水素、MはCu,VO,TiO,Mg,H2より選択される少なくとも1種である。)
【0025】
さらに、下記(6)〜(9)の構造式で示されるアリールアミン系化合物、
【0026】
【化16】
【0027】
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(α−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPDと略記)等を挙げることができる。
【0028】
また、本発明の有機EL素子に使用される正孔輸送層を形成するための正孔輸送材料は特に限定されない。このような材料としては、通常正孔輸送材料として使用される化合物であれば、いかなる化合物でも使用可能である。このような正孔輸送材料としては、例えば下記構造式(10)で表されるジアミン化合物、
【0029】
【化17】
【0030】
ビス(ジ(p−トリル)アミノフェニル)−1,1−シクロヘキサン、また、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4、4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(α−ナフチル)−(1,1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン等が挙げられ、さらに、トリアミン系化合物、テトラアミン類化合物およびスターバースト型分子が挙げられる。
【0031】
また、本発明に係る有機EL素子の陰極としては、電子輸送層に電子を効果的に注入するために、仕事関数が陽極よりも小さい材料を好ましく選択することができる。このような陰極材料としては特に限定されないが、具体的には、インジウム、アルミニウム、マグネシウムなどの元素、マグネシウム−インジウム、マグネシウム−アルミニウム、アルミニウム−リチウム、マグネシウム−銀等の合金あるいは前記元素と前記合金との混合金属または合金等が使用できる。
【0032】
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料
本発明に係る有機EL素子の電子輸送層または電子注入層は、前記一般式(1)で表される化合物を少なくとも一種以上含有する。電子輸送層と電子注入層とは、両者に明確な相違はなく、いずれも発光層への電子の移動を円滑にするために陰極と発光層との間に設けられた中間層であり、これを二層構成とした場合に、イオン化ポテンシャルの大きい方を電子注入層、小さい方を電子輸送層と称して区別することがあるもので、通常両者をまとめて電子輸送層、あるいは電子注入・輸送層としている。
【0033】
一般式(1)で表される化合物としては、R1〜R6の少なくとも一つが置換もしくは未置換のアリール基であるもの、特にR4がアリール基であるものが好ましい。R1〜R6の少なくとも一つに置換もしくは未置換のアリール基を有することで、電子輸送材料の耐熱性が向上する、すなわち、Tgが高くなることにより、高温環境下での結晶化が起こり難くなり、かつ、成膜性が良好である。
【0034】
上記のような一般式(1)で表される化合物の例として、具体的には、前記式(1a)の化合物ビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムや、前記式(1b)の化合物ビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)クロロガリウムが挙げられる。また、電子輸送層は一般式(1)で表される化合物を複数種含むこと、特に式(1a)の化合物および式(1b)の化合物を含むことが好ましい。具体的な耐熱性、成膜性データとして、式(1a)の化合物は、Tg:118℃、室温時単層膜の表面粗さRZ:2.56nm、同単層膜を85℃、10分間処理後の表面粗さRZ:3.31nm、(1a)式の化合物と(1b)式の化合物を9:1とした室温時単層膜の表面粗さRZ:1.97nm、同単層膜を85℃、10分間処理後の表面粗さRZ:2.05nmである。これに対し、(1a)式の化合物の5位(R4に相当)のフェニル基を有しないビス−(2−メチル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムは、Tg:89℃、室温時単層膜の表面粗さRZ:3.96nm、同単層膜を85℃、10分間処理後の表面粗さRZ:18.97nmである。これらから、式(1)の化合物において置換基としてアリール基を導入するとTgが向上し、高温雰囲気で表面の結晶化に伴う凹凸化が抑制され、特に複数の化合物を使用すると結晶化の抑制が顕著であることが示唆される。なお、アリール基を導入するとイオン化ポテンシャルは小さくなる傾向があるが、R4にアリール基を有する場合には、耐熱性が向上し、イオン化ポテンシャルの増加が小さく、特性バランスがよい。(1a)式の化合物のイオン化ポテンシャルは6.00、(1b)式の化合物のイオン化ポテンシャルは5.93である。
【0035】
上述したような材料を単独で、または2種以上組み合わせて用いて、単層、混合層または多層により、本発明に係る有機EL素子の前記電子輸送層または電子注入層が形成される。なお、本発明に係る有機EL素子の電子輸送層は、二層構成とする場合、通常イオン化ポテンシャルの大きい方を電子注入層(小さい方を電子輸送層)と称して区別されるものをも含む。また、本発明においては、前記した電子輸送層に用いられる材料の中でも、DSC(示差走査型熱量分析器)により測定したTgが、80℃を超えたものを選択することが好ましく、さらに好ましくは、Tgが85℃以上のものを用いることが好ましい。
【0036】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層に一般式(1)で示される有機金属錯体を複数種含有させると、輝度を高く保持することができる。すなわち、電子注入層あるいは電子輸送層において上記有機金属錯体を1種類だけ使用した場合は、高温下で長時間使用すると薄膜の凝集や結晶化が進行し、電子注入特性あるいは電子輸送特性が低下する傾向がある。これに対し、上記有機金属錯体を2種類以上含有させると非晶質性(アモルファス性)が高くなるため、長時間使用しても凝集、結晶化が生じにくく、そのため電子注入特性あるいは電子輸送特性の低下を抑制することができる。電子輸送材料を複数種含有させた場合、電子輸送特性の低下は単独の場合に比べて小さくすることができるものの初期特性が低下するため、実際の配合比として主成分が全体の80%〜99%であることが好ましく、99%より大きいと電子輸送特性の低下を抑制する効果が小さく好ましくなく、80%より小さいと初期特性が低下して好ましくない。
【0037】
発光層に用いられる材料
本発明の有機EL素子の発光層に用いる材料は、イオン化ポテンシャルが電子輸送層より小さいこと以外は特に限定されず、通常青色発光材料として使用される化合物であれば使用可能であるが、前記一般式(2)〜(3)から選択される一種以上の化合物を含有していることが望ましい。但し、正孔輸送層を併用する場合は、正孔輸送層よりイオン化ポテンシャルが大きいものを使用する。
【0038】
式(2)の化合物として、より具体的には、例えば下記表1の化合物を挙げることができる。
【0039】
【表1】
【0040】
式(3)の化合物として、より具体的には、例えば下記式(3−1)〜(3−3)の化合物を挙げることができる。
【0041】
【化18】
【0042】
式(3−1)〜(3−3)中、M、R11〜R19およびnは、式(3)と同様の意味である。このような式(3−1)に示されるベンゾオキサゾ−ル系化合物、式(3−2)で表されるオキサジアゾ−ル系化合物および式(3−3)に示されるイミダゾール系化合物としては、例えば以下の表2に示すような化合物が挙げられる。この表2で表す化合物は、特に断らない限り式(3−1)〜(3−3)で表される化合物を全て含んでいる。すなわち、表2中の例えば化合物No.301の化合物において、式(3−1)に相当する化合物は後述する式(17)の化合物となり、式(3−2)に相当する化合物はZn(IMZ)2となり、式(3−3)に相当する化合物は後述する式(18)の化合物となる。
【0043】
【表2】
【0044】
また、前記化合物をホスト、下記式(11)〜(13)で示されるアミノ置換ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体等をゲストとして、ドーピングしてもよい。
【0045】
【化19】
【0046】
一般式(2)、(3)で示される化合物の例としては、特公平7−119407号公報、特開平3−231970号公報、特開平8−199162号公報、特開平8−333569号公報、特開平8−333283号公報に開示されている化合物等が挙げられる。このような化合物として例えば、
【0047】
【化20】
【0048】
【化21】
【0049】
さらに、トリス〔(2−フェニル−5−m−フェノキシ)−1,3,4−オキサジアゾール〕アルミニウム(Al(OXD)3)(式(3−2)で表される表.2の化合物No.305の1つ)等が挙げられる。
【0050】
本発明では、前記一般式(2)または(3)で表される化合物をホスト、前記一般式(4)で表される化合物をゲストとして、ドーピングしてもよい。これにより、発光性能がさらに向上するとともに、ドーピングにより凝集が起こり難くなり、耐熱性と発光寿命が向上する。特に、一般式(2)で表される化合物をホスト、一般式(4)で表される化合物をゲストとする場合が好ましい。この場合、一般式(4)で表される化合物において、R21〜R24は水素原子、R25およびR26はフェニル基、nは1〜6、特に3であることがより好適である。上記効果が得られるのは、ホスト材料とゲスト材料の化学構造が類似しているためと推測される。
【0051】
次に、本発明に係る有機EL素子の形成方法について、説明する。本発明に係る有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。本発明の有機EL素子に用いる有機薄膜層は、公知の方法で形成することができるが、このような方法としては、例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法あるいは塗布法が挙げられる。前記塗布方法としては、例えば、溶液あるいは分散液を用いてディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法等によって形成することができる。このような前記方法により、各層を前記構成で示すようにして形成することにより、本発明に係る有機EL素子を形成することができる。
【0052】
このような本発明に係る有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に、厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなる。このため、各有機層の膜厚を、例えば数nm〜1μmの範囲に形成することが好ましい。
【0053】
本発明の一般式(1)で表される電子輸送材料は、例えばガリウム化合物と、下記式(19)に示す式(1)の配位子残基を有する化合物とを原料として、公知の方法を用いて合成することができる。また、その他式(1)のMとして、アルミニウムよりイオン化エネルギーの大きい3価の金属が適用できる。
【0054】
【化22】
【0055】
前記ガリウム化合物としては、アルキルガリウム、ガリウムアルコキシド、ハロゲン化ガリウム、窒化ガリウム、酸化ガリウム等のイオン性ガリウム化合物が挙げられるが、これに限定されない。また前記一般式(19)の配位子として8−ヒドロキシキノリン、2−メチル−8−ヒドロキシキノリン等のキノリン残基を2配位有することができ、またLの配位子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などのハロゲン、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基を含有する残基等が挙げられ、これらを1配位有することができる。このような、本発明に使用される一般式(1)の錯体、前記一般式(19)の配位子および前記Lの配位子等は、極性有機溶媒、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤等のイオン性溶媒、あるいは非極性溶媒、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族性溶媒、テトラヒドロフラン等の脂環式溶媒などの非極性溶媒下に反応させて得られる。
【0056】
また、本発明に使用される一般式(2)で表される発光材料は、公知の方法で合成することができる。前記同様の溶媒存在下、フェニル基を有するホスホン酸エステルに、塩基を作用させて脱プロトンし、次いでベンゾフェノン等のカルボニル化合物を加えてアルケン化(例えばWittig反応)する方法、またはホスホン酸エステルに塩基を作用させて脱プロトンし、次いでフェニル基を有するジアルデヒド化合物と反応させてアルケン化(前記同様の反応、例えばWittig反応)する方法等を挙げることができる。前記した塩基には、アルキルリチウムなどのアルキルアルカリ金属塩、水素化アルミニウムリチウム、水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属化合物、ナトリウムアミド、苛性ソーダ等を用いて行うことができる。
【0057】
また、本発明で使用される前記一般式(3)で表される発光材料は、公知の方法で合成することができる。例えば、安息香酸クロライドと安息香酸ヒドラジドをジオキサン存在下に反応させてジアシルヒドラジドとし、脱水還化してオキサジアゾール骨格を形成後、保護基を脱離する。次いで保護基を脱離して得られたオキサジアゾール残基を有する化合物と、亜鉛化合物例えば酢酸亜鉛とを、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール等の極性溶媒の存在下に、またはn−ヘキサン等の非極性溶媒の存在下で反応させて、オキサジアゾール亜鉛錯体を得る。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳説するが、本発明は以下の実施例に限定されて解釈されるものではない。
【0059】
イオン化ポテンシャル
材料のイオン化ポテンシャルは、ガラス基板上に求めようとする各材料を成膜し、理研計器(株)製AC−1を用いて大気圧下、24℃相対湿度40%下で測定した。なお成膜は、後述する成膜と同様の方法を用いた。
【0060】
Tg(ガラス転移温度)
電子輸送層に用いられる材料を、(株)島津製作所製のDSC−50を用いて測定した。
【0061】
実施例1
実施例1に係る有機EL素子の断面構造を図3に示す。本実施例に係る有機EL素子は、ガラス基板1と、ガラス基板1上に形成された陽極2および陰極3と、陽極2と陰極3との間に挟み込まれた正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7とからなる。
【0062】
以下、実施例1に係る有機EL素子の作製手順について説明する。まず、ガラス基板上にITO(インジウム錫オキサイド)をスパッタリングによって1300Å(130nm)の膜厚になるように成膜し、陽極2とした。このときのシート抵抗は12Ω/□であった。作製されたITOガラス基板を純水とイソプロピルアルコ−ルとにより、それぞれ超音波洗浄を行った後に、沸騰させたイソプロピルアルコ−ル上で乾燥させた。さらにUVオゾン洗浄装置によりこの基板を洗浄した後に、真空蒸着装置の基板ホルダ−に取り付けた。
【0063】
次に、モリブデン製のボートに、正孔注入層として4−フェニル−4’,4’’−ビス〔ジ(3−メチルフェニル)アミノ〕トリフェニルアミンを100mg、正孔輸送層としてα−NPDを100mg、発光層として9,10−ビス〔4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル〕アントラセンを100mg、電子輸送層としてビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムを100mg入れ、それぞれ別の通電用端子に取り付けた。ビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムのイオン化ポテンシャルは6.00eV、Tgは118℃である。
【0064】
真空層内を1×10-4Paまで排気した後、4−フェニル−4’,4’’−ビス〔ジ(3−メチルフェニル)アミノ〕トリフェニルアミンが入ったボートに通電し、0.3nm/Secの蒸着速度で膜厚35nmになるまで成膜した。次に、α−NPDが入ったボートに通電し、0.3nm/Secの蒸着速度で膜厚15nmになるまで成膜した。次に、9,10−ビス〔4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル〕アントラセンが入ったボートに通電し、0.3nm/Secの蒸着速度で膜厚45nmになるまで成膜した。次に、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムが入ったボートに通電し、蒸着速度0.3nmで膜厚35nmになるまで成膜した。
【0065】
こうして作製された素子の上部にステンレス製シャド−マスクを取り付けた。ここで、BN製ボ−トにアルミニウムを3g入れ、通電用端子に取り付けた。同様に、タングステン製のフィラメントにLiを500mg入れ、別の通電用端子に取り付けた。真空層を1×10-4Paまで排気した後、アルミニウムの蒸着速度が0.4nm/Secとなるように通電し、同時にリチウムの蒸着速度が0.02〜0.03nm/Secとなるよう別の蒸着電源を用いて通電した。両材料の蒸着速度が安定してきたところでシャッタ−を開放し、混合膜の膜厚が30nmとなったところでリチウムの蒸着電源を止め、さらにアルミニウム膜が170nmの膜厚になるまで成膜して陰極3を形成し、有機EL素子を作製した。
【0066】
得られた有機EL素子の陽極と陰極の間に直流電圧を17V印加したところ、38500cd/m2、CIE色度座標(0.15,0.14)@1000cd/m2、4.8lm/W@200cd/m2の青色発光が得られた。上記値は輝度1000cd/m2でのCIE色度座標(X、Y)および輝度200cd/m2での発光効率Z(lm/W)を意味する。この素子の駆動試験を窒素中において初期輝度100cd/m2で行った結果、輝度半減時間は20000時間以上であった。また、この素子を窒素中で20000時間保存した後、ダ−クスポットと呼ばれる非発光部を観測した結果、成膜直後に5μmであったものは保存後も5〜7μmと大きな変化はなく、成長は認められなかった。さらに、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は510時間であった。
【0067】
比較例1
発光層として1,4−ビス〔4−(2,2−ジフェニルビニル)ナフチル〕ベンゼンを45nm、電子輸送層として2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールを真空蒸着法により35nm形成した以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。
【0068】
この有機EL素子の陽極と陰極の間に直流電圧を17V印加したところ、13700cd/m2の青色発光が得られた。実施例1と比較すると、CIE色度座標は大きい差がみられなかったが、最高輝度、効率、寿命の点で差がみられた。さらに、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は80時間であった。
【0069】
比較例2
電子輸送層としてビス(2−メチル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムを用いること以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子は、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は180時間であった。
【0070】
実施例2
実施例2に係る有機EL素子の断面構造を図3に示す。本実施例に係る有機EL素子は、ガラス基板1と、ガラス基板1上に形成された陽極2および陰極3と、陽極2と陰極3との間に挟み込まれた正孔注入層4と、正孔輸送層5と、ホストおよびドーパントからなる発光層6と、電子輸送層7とからなる。
【0071】
実施例1と同様にして用意したITOガラス基板を蒸着機に装着し、高純度グラファイト製の5個のるつぼを用意し、それぞれ別々に、正孔注入層として4−フェニル−4’,4’’−ビス〔ジ(3−メチルフェニル)アミノ〕トリフェニルアミンを1g、正孔輸送層としてN,N’−ジフェニル−N、N’−ビス(α−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)1g、発光ホスト材料として9,10−ビス〔4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル〕アントラセンを1g、発光ゲスト材料として4,4’−ビス〔2−{4−(N,N−ジ(4−メチルフェニル)アミノ)フェニル}ビニル〕ビフェニルを0.5g、電子輸送材料としてビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムとビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)クロロガリウムとの混合物(重量比9:1)を1g入れ、それぞれ別の通電用端子に取り付けた。
【0072】
真空層内を8×10-5Paまで排気した後、実施例1と同様に正孔注入層、正孔輸送層を実施例1と同じ膜厚で成膜した。次に、ホストの9,10−ビス〔4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル〕アントラセン、およびゲストの4,4’−ビス〔2−{4−(N,N−ジ(4−メチルフェニル)アミノ)フェニル}ビニル〕ビフェニルが入ったるつぼにそれぞれ通電し、ホストが0.3nm/Sec、ゲストが0.02〜0.03nm/Secになるように電流を制御し、両者が安定となったところで同時に蒸着を開始し、膜厚が45nmになるまで成膜した。次に、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムとビス(2−メチル−5−フェニル−8−キノリノール)クロロガリウムとの混合物が入ったるつぼに通電し、蒸着速度0.3nmで膜厚35nmになるまで成膜した。こうして作製された素子にさらに実施例1と同様な方法により陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0073】
得られた有機EL素子の陽極と陰極の間に直流電圧を17V印加したところ、41500cd/m2、CIE色度座標(0.16,0.17)@1000cd/m2、5.6lm/W@200cd/m2の青色発光が得られた。上記値は輝度1000cd/m2でのCIE色度座標(X、Y)および輝度200cd/m2での発光効率Z(lm/W)を意味する。この素子の駆動試験を窒素中において初期輝度100cd/m2で行った結果、輝度半減時間は20000時間以上であった。また、この素子を窒素中で20000時間保存した後、ダ−クスポットと呼ばれる非発光部を観測した結果、成膜直後に4〜5μmであったものは保存後も5〜7μmと大きな変化はなく、成長は認められなかった。さらに、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は850時間であった。
【0074】
実施例3
実施例2において、発光ゲスト材料である4,4’−ビス〔2−{4−(N,N−ジ(4−メチルフェニル)アミノ)フェニル}ビニル〕ビフェニルを使用しないこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。
【0075】
得られた有機EL素子の陽極と陰極の間に直流電圧を17V印加したところ、39500cd/m2、CIE色度座標(0.14,0.14)@1000cd/m2、4.91m/W@200cd/m2の青色発光が得られた。上記値は輝度1000cd/m2でのCIE色度座標(X、Y)および輝度200cd/m2での発光効率Z(lm/W)を意味する。この素子の駆動試験を窒素中において初期輝度100cd/m2で行った結果、輝度半減時間は20000時間以上であった。また、この素子を窒素中で20000時間保存した後、ダ−クスポットと呼ばれる非発光部を観測した結果、成膜直後に4〜5μmであったものは保存後も5〜7μmと大きな変化はなく、成長は認められなかった。さらに、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は640時間であった。
【0076】
比較例3
発光層ホストとして、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルを45nm、電子輸送層5として、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを真空蒸着法により35nm形成した以外は、実施例2と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。
【0077】
この有機EL素子の陽極と陰極の間に直流電圧を17V印加したところ、17000cd/m2の青色発光が得られた。実施例2と比較すると、CIE色度座標は大きい差がみられなかったが、最高輝度、効率、寿命の点で差がみられた。さらに、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は210時間であった。
【0078】
比較例4
電子輸送層としてビス(2−メチル−8−キノリノール)(1−フェノラート)ガリウムを単独で用いること以外は、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子は、窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で駆動試験を行った結果、輝度半減時間は270時間であった。
【0079】
以上の実施例1〜3、比較例1〜4の有機EL素子について、▲1▼陽極と陰極の間に直流電圧を17V印加したときの輝度(17V印加による輝度)、▲2▼素子の駆動試験を窒素中において初期輝度100cd/m2で行ったときの輝度半減時間(初期輝度100cd/m2での輝度半減時間:室温)、▲3▼素子の駆動試験を窒素中85℃環境下において初期輝度200cd/m2で行ったときの輝度半減時間(初期輝度200cd/m2での輝度半減時間:85℃)のデータを表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
▲1▼17V印加による輝度は30000cd/m2以上、▲2▼初期輝度100cd/m2での輝度半減時間:室温は20000時間以上、▲3▼初期輝度200cd/m2での輝度半減時間:85℃は500時間以上を特性良好の判断基準とすることができる。なお、比較例3は、電子輸送層の相違を実施例2と比較するものであるが、発光層ホスト材料も異なる。発光層ホスト材料の相違は、特性への影響は小さく、実施例2と同じホスト材料を使用してもほぼ同等であり、電子輸送層の相違が特性に大きく影響することがわかる。
【0082】
【発明の効果】
本発明に係る有機EL素子は、電界励起型発光の無機EL素子と異なり、陽極から正孔キャリアを、陰極から電子キャリアを注入し、これらキャリアが再結合することにより発光するキャリア注入型素子であり、発光層と電荷輸送層を組み合わせた積層型素子型構造となっているため、発光材料と電荷輸送材料の適切な組み合わせとすることにより、陽極からの正孔注入あるいは陰極からの電子注入の際のエネルギー障壁が低減し、電荷の注入が容易になるとともに、電荷輸送層が発光層から正孔または電子が通り抜けることを抑えるブロッキング層として働く。これにより発光層中の正孔と電子の数的バランスが良くなる。その結果、正孔と電子との再結合が有効に行われるようになりEL発光効率が向上することができた。
【0083】
前記したような本発明に係る有機EL素子に使用される特定の材料、素子構造とすることにより、陽極から注入された正孔が電子輸送層において確実にブロックされ、かつ陰極より注入された電子が発光層でブロックされることにより、キャリアの再結合効率が向上する。このため、青色発光素子においてもEL発光効率の低下が無く、最高輝度も従来のAlq3を用いる場合より大きくすることが可能となった。また、正孔の通り抜けがなく、電力効率も良いため、低消費電力化が図れ、また低負荷条件(低印加電圧)で駆動できるため、素子の寿命も長くすることができた。さらに、電子輸送層のイオン化ポテンシャルを大きくすることにより、青色発光層のエネルギーギャップを大きくすることができ、したがって発光波長の短波長化が可能となった。これにより、従来の材料では困難であった色純度、色度(0.25,0.25)以下の青色発光が可能となった。
【0084】
また、本発明で用いられる電子輸送材料は、ガラス転移温度が高く、成膜性、膜質安定性が非常に良く耐熱性が高いため、従来有機EL素子が苦手とされた85℃の高温駆動、高温保存等、素子の高耐熱化が図れた。
【0085】
また、このような上記有機EL素子を用いて有機ELディスプレイを製造できるため得られたディスプレイは高輝度化、色度改善が図れ、320×240ピクセル単純マトリックス駆動(Duty1/120)のカラー1/4VGAパネルが作製可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機EL素子の第1の構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る有機EL素子の第2の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る有機EL素子の第3の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係る有機EL素子に使用される材料のエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。
【図5】従来の有機EL素子に使用される材料のエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 陽極
3 陰極
4 正孔注入層
5 正孔輸送層
6 発光層
7 電子注入層
Claims (8)
- 異極電極間に、有機化合物薄膜よりなる発光層と電子輸送層とを有し、発光層が青色に発光する有機EL素子であって、電子輸送層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機EL素子。
- 一般式(1)で表される化合物においてR4がアリール基であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
- 一般式(1)で表される化合物が下記式(1a)の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の有機EL素子。
- 一般式(1)で表される化合物が下記式(1b)の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の有機EL素子。
- 電子輸送層が、一般式(1)で表される化合物を複数種含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL素子。
- 電子輸送層が、下記式(1a)の化合物および下記式(1b)の化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子。
- 発光層が、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機EL素子。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機EL素子を搭載したことを特徴とする有機ELディスプレイ。
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