JP4056940B2 - 金属コロイド及び該金属コロイドの製造方法並びに該金属コロイドにより製造される薄膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒製造等で使用される金属コロイドに関する。特に、有機溶媒を溶媒とする金属コロイドに関する。
【0002】
【従来の技術】
コロイドとは、溶媒に不溶な1〜100nmの金属、セラミクス等の微小粒子(クラスター粒子)が溶媒中に分散、懸濁した状態をいい、溶媒として液体を用いたコロイド溶液が一般に知られている。コロイドは、近年、触媒、光学・電気・磁気材料といった種々の分野の材料製造への応用が検討されている。
【0003】
本件発明者等はこれまで、上記した各種の材料に適用可能な金属コロイドについて検討を行なっており、種々の金属からなるクラスター粒子と、保護剤としてポリビニルピロリドン(以下、PVPと称する)等のポリマーや4級アンモニウム塩を適用する金属コロイドにつき検討を行なっている(特許文献1〜3参照)。ここで、保護剤とは、金属コロイド中でナノ粒子の周辺に化学的又は物理的に結合、吸着する化合物であって、ナノ粒子同志の凝集を抑制し粒径分布を適性範囲に制御し安定化させるものをいう。即ち、保護剤を添加することで、細かな粒径のナノ粒子が懸濁した状態を保持し、触媒製造においては触媒粒子の粒径を小さくして触媒の有効表面積を可能な限り大きくすることができるようになる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−151436号公報
【特許文献2】
特開2000−279818号公報
【特許文献3】
特開2002−001095号公報
【0005】
ところで、コロイドを利用して各種材料を製造する際の手法としては、コロイド溶液を被吸着物質に含浸させて吸着させる方法がこれまで良く知られており、特に、触媒の分野ではこの手法が一般的である。上記した従来技術による金属コロイドはこの手法に良く適合するものであり、クラスター粒子を構成する金属微粒子を直接的に被吸着対象物に高度に分散させることができ、触媒の分野でも特異的な触媒機能を発揮することが確認されている。
【0006】
金属コロイドの利用方法は、上記した含浸・吸着によるものに限定されることはなく、他の方法も検討されている。この方法のうち有効な方法として、検討されているのが、スピンコーター法により基板上に金属コロイドを滴下・吸着させ、薄膜として利用する方法である。スピンコーター法とは、基板を回転させつつ基板上に液体状態の原料物質を滴下して、原料中の金属成分を堆積させた後に乾燥・固化させて薄膜を得る方法である。この方法は、特に複数の金属からなる金属コロイドを適用することで、複数金属が高度に分散した薄膜を得ることができ、触媒のみならず各種の機能材料の分野で高機能の材料が製造できると期待される。
【0007】
しかし、本発明者等によると、上記従来の金属コロイドを適用してスピンコーター法により薄膜を製造する場合、均一な薄膜が得られないことが確認されている。そして、その理由として上記従来の金属コロイドは水を溶媒とする水溶液系のものであり、水溶液では蒸発潜熱が大きいため、乾燥工程に手間を要するためと考えられる。
【0008】
このようなことから、スピンコーター法による薄膜製造に適した金属コロイドとしては、蒸発潜熱の小さい有機溶媒を適用したものが好ましいと考えられる。しかし、上記した従来の金属コロイドで適用される保護剤は、水溶性であり殆どの有機溶媒には不溶である。
【0009】
そこで、有機溶媒に可溶な保護剤を適用した金属コロイドの開発が望まれるが、これまで知られているこの種の金属コロイドとして下記文献記載のものがある。
【0010】
【非特許文献1】
Shouheng Sunら,MonodispersFePt Nanoparticles and Ferromagnetic FePt Nanocrystal Superlattices,「SCIENCE」,2000年3月17日,第287巻,1989〜1992頁
【特許文献4】
特開平11−80647号公報
【0011】
これらの従来技術において、非特許文献1記載の金属コロイドは、アセチルアセトナト白金とカルボニル鉄(Fe(CO)5)とを有機溶媒中に分散させることで得られる白金/鉄二元系コロイドである。また、特許文献4には、保護剤(文献中では高分子量顔料分散剤)として、(1)顔料親和性基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子(2)主鎖中に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子(3)主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子からなるポリマーを用いることで、有機溶媒に可溶な金コロイド、銀コロイドが記載されている。
【0012】
しかしながら、これらの金属コロイドにも問題がある。即ち、前者の非特許文献1記載のコロイドは、原料として高価なアセチルアセトナト白金を用いることから、製造コスト面で問題がある。
【0013】
また、後者の特許文献4記載の金属コロイドについては、一元系の金属コロイドについての可能性が開示されているだけであり、複数の金属からなる多元系金属コロイドへの適用可能性が示唆されていない。更に、この文献ではコロイド化が可能な金属として金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の各種の金属が挙げられているが、具体的に記載されているのは金コロイド、銀コロイドのみであり、他の白金族系金属への適用可能性は不明である。即ち、金属コロイドはこれまで水溶液系のものが一般的であったが、新たに有機溶媒系コロイドを製造するとなると、どのような金属のコロイドが製造可能であるか、多元系の金属コロイドが製造可能であるか等について、新規に具体的且つ詳細な検討が必要である。これまでの先行技術は、この点を明示するものではない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような背景のもとになされたものであり、有機溶媒に可溶でありながら、複数の金属からなるクラスター粒子の分散性を確保できる保護剤を含み、かつ、製造コストも低廉な金属コロイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するための手法として、コロイドを構成する保護剤の適正化を図ることとした。保護剤の適正化とは、有機溶媒中における保護能力(クラスター粒子の凝集を抑制する能力)が、これまで知られている水溶液系金属コロイドの保護剤の保護能力と同等な化合物を見出すことをいう。そして、本発明者等は、保護剤としてポリ(アクリル酸エステル)という高分子材料を適用したものが好ましいことを見出し本発明に想到した。
【0016】
即ち、本発明は、有機溶媒又は水及び有機溶媒の混合溶媒よりなる溶媒と、1種又は2種以上の金属からなるクラスター粒子と、前記クラスター粒子を保護する保護剤と、からなる金属コロイドにおいて、前記保護剤は、次式で示されるポリ(アクリル酸エステル)であることを特徴とする金属コロイドである。
【0017】
【化3】
【0018】
ポリアクリル酸は、保護能力が水溶液系金属コロイドの保護剤として知られているPVPと同等である。このため、ポリアクリル酸をエステル化することにより得られるポリ(アクリル酸エステル)有機溶媒に可溶な上に、有機溶媒中における保護能力も適正な範囲にある。本発明に係る金属コロイドはこの着想の下になされたものであり、溶媒として有機溶媒を適用しつつもクラスター粒子が高度に分散するものである。また、保護剤の保護能力を適正化したことにより、多元系金属コロイドとすることも可能である。更に、後述のように本発明に係る金属コロイドは、高価なアセチルアセトナト金属を使用することなく製造可能であり、低コストでの製造が可能である。
【0019】
ここで、化3に示したポリ(アクリル酸エステル)の置換基R1については、直鎖又は分鎖のアルキル基、芳香族炭化水素が好ましい。有機溶媒に対する溶解性を考慮するものである。そして、これらの中でもアルキル基が置換されたものが好ましく、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基が好ましい。エチル基以下の炭素数の置換基を有するポリ(アクリル酸エステル)では、有機溶媒に対する溶解性が低いためであり、ヘキシル基以上の炭素数の置換基を有するポリ(アクリル酸エステル)では、後述する製造工程においてエステル化後のアルコール除去が困難となるからである。
【0020】
そして、本発明に係る金属コロイドは、有機溶媒を適用することにより、スピンコーター法のように乾燥工程を経る薄膜製造方法に対しても効率的な薄膜製造が可能である。そして、コロイド中のクラスター粒子を均一に堆積させ薄膜とすることができる。この溶媒である有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類が好ましい。
【0021】
尚、クラスター粒子を構成する金属としては、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムが好ましい。クラスター粒子は、これら金属の1種のみからなるものでもよいが複数種の金属からなるものでもよい。
【0022】
次に、本発明に係る金属コロイドの製造方法につき説明する。通常の水を溶媒とする金属コロイドの製造方法は、クラスター粒子を構成する金属の塩と、保護剤を溶媒に溶解し、金属イオンが分散した溶液を製造した後、適宜に金属イオンを還元してクラスター粒子とすることで金属コロイド溶液としている。複数の金属からなるクラスター粒子を分散させるためには、複数の金属塩を溶媒に溶解させることで可能となる。
【0023】
これに対し本発明は、有機溶媒を溶媒とするが、上記一般的な製造方法を本発明に適用する場合、有機溶媒中で金属塩の溶解、金属イオンの還元を行うこととなる。しかし、有機溶媒系で金属イオンの還元を行うためには、そのための試薬が高価である場合がある。また、そもそも、有機溶媒系における金属イオンの還元についての研究例が少なく新たな還元プロセスの開発は困難である。
【0024】
そこで、本発明者等は、本発明に係る金属コロイドの製造方法として、まず、水溶液系で金属イオンの還元を行ってポリアクリル酸を保護剤とした金属コロイドを製造し、この金属コロイドからポリアクリル酸保護−金属コロイドを抽出し、これをエステル化した後に所望の有機溶媒又は混合溶媒に分散させる方法を見出した。このように金属イオンの還元を水溶液系で行なうことにより、従来と同様の安価な還元剤を適用できるため、金属コロイドの製造コストを抑制することができる。
【0025】
即ち、本発明に係る金属コロイドの製造方法は、水又は水及び有機溶媒の混合溶媒よりなる第1の溶媒に、1種又は2種以上の金属塩とポリアクリル酸とを溶解して溶液とする工程と、前記溶液中の1種又は2種以上の金属イオンを還元することにより、1種又は2種以上の金属からなるクラスター粒子と、前記クラスター粒子を保護するポリアクリル酸とからなる第1の金属コロイドを製造する工程と、前記第1の金属コロイドからクラスター粒子及び保護剤を抽出する第1の抽出工程と、抽出したクラスター粒子及び保護剤とアルコールとを混合して加熱することにより保護剤であるポリアクリル酸をエステル化する工程と、エステル反応後のアルコールからクラスター粒子及び保護剤を再度抽出する第2の抽出工程と、前記第2の抽出工程で抽出したクラスター粒子及び保護剤有機溶媒又は水及び有機溶媒の混合溶媒よりなる第2の溶媒に溶解する工程と、を含む金属コロイドの製造方法である。
【0026】
この製造方法において、第1の金属コロイドを製造する工程は、一般的な金属コロイドの製法に準じる。第1の溶媒としては、水及び水と有機溶媒との混合溶媒が適用できるが水が好ましい。また、原料となる金属塩としては、白金コロイドを製造する場合の金属塩としては、ヘキサクロロ白金酸、ジニトロジアンミン白金、ジニトロジアンミン白金硝酸塩、塩化第1白金、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸塩等を適用できる。パラジウムコロイドを製造する場合の金属塩としては、塩化パラジウム、硝酸バラジウム、ジニトロジアミンパラジウム等を適用できる。金コロイドを製造する場合の金属塩としては、塩化金酸、塩課金酸塩シアン化第2金カリウム、シアン化金カリウム等を適用できる。銀コロイドを製造する場合の金属塩としては、塩素酸銀、硝酸銀、酢酸銀、乳酸銀等を適用できる。ルテニウムコロイドを製造する場合の金属塩としては、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、を適用できる。ロジウムコロイドを製造する場合の金属塩としては、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム等を適用できる。イリジウムコロイドを製造する場合の金属塩としては、ヘキサクロロイリジウム酸、三塩化イリジウム等を適用できる。オスミウムコロイドを製造する場合の金属塩としては、酸化オスミウム等を適用できる。以上の金属塩は、いずれもアセチルアセトナト金属よりも安価であり、これにより本発明に係る金属コストの製造コストを低廉なものとすることができる。尚、複数の金属からなる多元系の金属コロイドを製造する場合には上記の金属塩を溶媒に溶解する。
【0027】
また、保護剤は、ポリアクリル酸を混合するが、この際のポリアクリル酸は粉末状のものでも、溶液状のものでも良い。金属塩とポリアクリル酸との混合比(金属塩/ポリアクリル酸)は、重量比で1/1〜1/10とするのが好ましい。
【0028】
第1の溶媒に金属塩、ポリアクリル酸を溶解させた後には、溶液中の金属イオンを還元することとなるが、この際の還元の方法としては還元剤の添加によるものが好ましい。還元剤としては、エタノール等のアルコール、ギ酸、水素、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランが好ましい。
【0029】
この際の金属イオンの還元によりポリアクリル酸保護の金属コロイドを得ることができる。そして次に、製造した金属コロイドからポリアクリル酸で保護されたクラスター粒子を抽出する(第1の抽出工程)。金属コロイドからの保護剤及びクラスター粒子の抽出の方法としては、蒸発乾固によるのが好ましい。
【0030】
抽出したポリアクリル酸で保護されたクラスター粒子については、化4で示すアルコールを混合し、加熱することで保護剤であるポリアクリル酸をエステル化する。この際添加するアルコールの置換基部分であるR2は、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基であるアルコールが好ましい。
【0031】
【化4】
【0032】
アルコール添加後のエステル化は、溶液を加熱することによりなされるが、このとき酸触媒を添加して反応させてもよく、無触媒で反応させてもよい。酸触媒としては、硝酸、硫酸、塩酸が適用できる。
【0033】
そして、エステル化によりポリ(アクリル酸エステル)により保護されたクラスター粒子は反応系より再度抽出する(第2の抽出工程)。この抽出方法は、溶媒抽出によるのが好ましい。
【0034】
最後に、本発明に係る金属コロイドとすべく、有溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒である第2の溶媒にポリ(アクリル酸エステル)により保護されたクラスター粒子を分散させることとなる。この第2の溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類が好ましい。
【0035】
以上の工程により、本発明に係る有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒を溶媒とした金属コロイドを製造することができる。この方法によれば、エステル化後に再度の抽出操作を行なうことから、製造される金属コロイドの純度を確保することができる。つまり、一般的な水溶液系の製造工程では反応系に存在する塩類等の不純物はそのままコロイド中に残留することがあるが、本発明に係る方法では再度の抽出操作により不純物を除去できることから、高純度の金属コロイドを得ることができるようになる。
【0036】
本発明によれば、基板上にスピンコーター法により堆積させて薄膜とする際にも効率的な作業が可能となる。そして、このようにして製造した薄膜は、膜厚が均一であり、また特に、多元系金属コロイドを適用した場合には、複数金属が高度に分散した薄膜となる。また、本発明に係る金属コロイドの利用方法としては、スピンコーター法による薄膜製造の他、本発明に係る金属コロイドをペースト化し、これを基板上に塗布することにより薄膜としても良い。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本実施形態では、クラスター粒子となる金属として白金及びロジウムの2種の貴金属からなるクラスター粒子が分散したポリ(アクリル酸エステル)保護−Pt/Rh二元系金属コロイドを製造した。
【0038】
第1実施形態:本実施形態では、保護剤であるポリ(アクリル酸エステル)の置換基R1部分が1−ブチル基であるポリアクリル酸1−ブチル保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子を製造した。2Lの水に白金量2g相当のジニトロジアンミン白金と、ロジウム量0.2g相当の塩化ロジウムと、ポリアクリル酸4gとを溶解させ、更にエタノール500mLを加え、これを6時間加熱還流した。ポリアクリル酸保護−Pt/Rh二元系金属コロイドが得られた。この金属コロイドの溶液は黒色であった。
【0039】
次に、この黒色溶液を蒸発乾固した後、1−ブタノール500mL、硝酸5mLを加えて4時間還流することで、保護剤であるポリアクリル酸がエステル化され、ポリ(アクリル酸ブチルエステル)保護−Pt/Rh二元系金属コロイドの1−ブタノール溶液が得られた。そして、この金属コロイドに酢酸エチル500mL、水500mLを加えて抽出操作を行ない、更に有機相を取り出した後蒸発乾固した。以上の操作により、ポリ(アクリル酸ブチルエステル)保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子を得た。
【0040】
第2〜第4実施形態:これらの実施形態では、保護剤であるポリ(アクリル酸エステル)の置換基R1部分が、1−プロピル基、2−ブチル基、1−ヘキシル基であるポリ(アクリル酸エステル)保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子を製造した。これらのポリ(アクリル酸エステル)保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子の製造においては、第1実施形態において、エステル化の際に添加するアルコールを1−プロパノール、2−ブタノール、1−ヘキサノールとした。但し、加熱温度は140℃とした。
【0041】
比較例:本実施形態に対する比較例として、従来のPVPを保護剤とするクラスター粒子を製造した。2Lの水に白金量2g相当のジニトロジアンミン白と、ロジウム量0.2g相当の塩化ロジウムと、PVP4.0gとを溶解させ、更にエタノール500mLを加え、これを6時間加熱還流した。このようにして製造した、コロイド溶液について有機相を取り出した後蒸発乾固してPVP保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子を得た。
【0042】
以上の操作により得られた、4種のポリ(アクリル酸エステル)保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子及びPVP保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子を各種の溶媒に混合し、その可溶性を検討した。溶媒としては、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトンについて検討した。表1はその結果を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
以上の結果より、本実施形態で製造したポリ(アクリル酸エステル)保護−Pt/Rh二元系クラスター粒子は、いずれの有機溶媒にも可溶であった。これらの有機溶媒に溶解させた後の溶液は金属コロイド溶液として有用である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る金属コロイドは、溶媒を有機溶媒としつつも、分散性に優れ、特に、多元系の金属クラスター粒子も分散させることができる。また、本発明に係る金属コロイドは、その製造についても高価な原料は不溶であり製造コストを抑制することができる。
【0046】
また、本発明に係る金属コロイドの製造方法では、エステル化後に再度の抽出操作を行なうことで反応系に存在する塩類等の不純物を除去できることから、高純度の金属コロイドを得ることができる。本発明に係る金属コロイドは、特に、スピンコーター法による薄膜製造に適し、触媒、電子材料等の各種材料の製造に好適である。
Claims (8)
- 有機溶媒は、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類である請求項1記載の金属コロイド。
- クラスター粒子は、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムの少なくとも1種の金属からなる請求項1又は請求項2記載の金属コロイド。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属コロイドの製造方法であって、
水又は水及び有機溶媒の混合溶媒よりなる第1の溶媒に、1種又は2種以上の金属塩とポリアクリル酸とを溶解して溶液とする工程と、
前記溶液中の1種又は2種以上の金属イオンを還元することにより、1種又は2種以上の金属からなるクラスター粒子と、前記クラスター粒子を保護するポリアクリル酸とからなる第1の金属コロイドを製造する工程と、
前記第1の金属コロイドからクラスター粒子及び保護剤を抽出する第1の抽出工程と、
抽出したクラスター粒子及び保護剤と、次式で示され、置換基R2がプロピル基又はブチル基であるアルコールとを、混合して加熱することにより保護剤であるポリアクリル酸をエステル化する工程と、
エステル反応後の前記アルコールからクラスター粒子及び保護剤を再度抽出する第2の抽出工程と、
前記第2の抽出工程で抽出したクラスター粒子及び保護剤を有機溶媒である第2の溶媒に溶解する工程と、
を含む金属コロイドの製造方法。
- 第1の抽出工程は、第1の金属コロイドを蒸発乾固するものである請求項4記載の金属コロイドの製造方法。
- 第2の抽出工程は、エステル反応後の前記アルコールを溶媒抽出するものである請求項4又は請求項5記載の金属コロイドの製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属コロイドを基板上にスピンコーター法により堆積させてなる薄膜。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属コロイドをペースト化し、該ペーストを基板上に塗布させてなる薄膜。
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