JP4056800B2 - レンズシートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロジェクションテレビ用透過型スクリーン;プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイ等の画像表示装置用シャドーマスクなどに用いられるレンズシートおよびその製造方法に関する。特に、液晶パネル等を用いたピクセル型プロジェクションテレビ用スクリーンに必要な0.3mm以下のファインピッチレンズシートにおける遮光パターンの簡便な形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロジェクションテレビに使用される透過型スクリーンは、一般にフレネルレンズシートとレンチキュラレンズシートとの組み合わせからなる。CRTをライトエンジンとするプロジェクションテレビ(以下、CRT方式プロジェクションテレビ)の場合、図7に示すようにレンチキュラレンズシート11には映像光の出射および入射の両面に凸シリンドリカルレンズ12,13が形成されており、CRTによるRGB3色の色ずれの補正をする機能およびフレネルレンズシートからレンチキュラレンズシートに入射される映像光の視野角を拡大する機能を有する。
【0003】
また、出射面の凸シリンドリカルレンズ13の各境界部には凸状部14が形成され、該凸状部14の上部に光吸収性を有する遮光パターン15が形成されている。該遮光パターン15は一般にブラックストライプと呼ばれ、観察者側からの外光の反射を防ぎ、レンチキュラレンズシート11から出射される映像光のコントラストを向上することができる。
【0004】
上記レンチキュラレンズシート11は、透明熱可塑性樹脂シートをプレス成形する方法、透明熱可塑性樹脂シートを押出しすると同時に金型を通すことによって表裏両面に凸シリンドリカルレンズ12,13および凸状部14を賦型する方法(以下、押出し賦型法)などによって成形されている。さらに、成形されたレンチキュラレンズシートには、スクリーン印刷、グラビア印刷などの各種印刷方法を用いて、凸状部14のみに選択的に光吸収性の着色塗料を印刷し遮光パターン15が形成されている。
【0005】
上記レンチキュラレンズシート11を成形する際には、入射面の凸シリンドリカルレンズ12と、出射面の凸シリンドリカルレンズ13および遮光パターン15の表裏両面での位置合わせが重要であり、表裏両レンズの軸が、入射側凸レンズへの入射光に対応した位置関係にない場合は、遮光パターン15が出射光を遮ることで出射光の明るさを低下させるなどのスクリーン特性の低下につながる。
【0006】
CRT方式プロジェクションテレビ用のレンチキュラレンズシートは上記のプレス成形法や押出し賦型法を用いることにより、表裏両面での位置合わせは比較的容易であり、充分なスクリーン特性を有する成形が可能である。また、用途によっては、マイクロレンズを配列したマイクロレンズアレイシートを使用することがある。該マイクロレンズアレイシートはプロジェクションテレビの水平方向だけでなく、垂直方向の視野角をも拡大する機能を有する。以下、断りが無ければ、本明細書においては凸シリンドリカルレンズとマイクロレンズをあわせて「レンズ」、レンチキュラレンズシートとマイクロレンズアレイシートをあわせて「レンズシート」と呼ぶことにする。
【0007】
映像の高画質化・高精細化を達成するためには、画素の大きいCRTをライトエンジンとするのではなく、より画素の小さい液晶投射装置、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)等をライトエンジンとするプロジェクションテレビ(以下、ピクセル方式プロジェクションテレビ)が必要である。しかし、従来のCRT方式プロジェクションテレビ用のレンズシートをピクセル方式プロジェクションテレビに転用すると、スクリーン上に投影される画素の大きさとレンズシートのレンズのピッチとが近いためにモアレ(干渉縞)が発生する問題がある。したがって、ピクセル方式プロジェクションテレビ用のレンズシートでは、スクリーン上に投影される画素とモアレが発生しないようにレンズのファインピッチ化が必要であり、0.3mm以下のファインピッチ化が要求されている。
【0008】
しかし、出射面の凹凸に対し、凹部または凸部に印刷することで遮光部を形成する従来の方法においては、レンズシートの両面を賦形する必要があるが、プレス成形法や押出し賦型法では、ファインピッチなレンズシートを表裏両面賦型で成形することは非常に困難である。この理由は、ファインピッチ化によるレンズの賦型率低下や表裏両面での軸ずれが発生しやすくなるためである。
【0009】
そこで、従来レンズ面側から光を照射して、反対面側に塗布した感光層を感光させ、光非照射部にのみ遮光パターンを設ける技術が種々検討されてきた。特開昭59−121033号公報および特開平9−120101号公報にはレンズ面の反対側に塗布したポジ型感光樹脂層にレンズ側から光を照射して硬化させた後、粉体顔料、黒色塗料等を塗布したり、黒色塗料を塗布した転写フィルムを貼り付けるなどして、粘着性の未露光部を黒色に着色する方法が開示されているが、これらの方法は、集光部上の顔料または塗料を除去する工程が必要な点、転写フィルムに用いた多量の基材フィルムが廃棄物となるため、環境負荷が大きくなる点、集光部上から顔料、塗料等を完全に除去することが困難な点などの課題を有している。また、特開2000−2802公報には光触媒を用いて表面の親水性をコントロールし、遮光パターンを付与する方法が開示されているが、この方法によると、レンズによる集光部が親水性になるため、まず集光部に水を付着させた後全面に印刷を行い、水が付着した部分のインクを除去する工程が必要となるなど、工程が煩雑になるという課題を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細・高画質を特徴とするピクセル方式プロジェクションテレビ用のスクリーンなどに適用される、表裏両面で軸ずれ無く遮光パターンが成形されたレンズシートおよびその簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、複数の凸レンズが配列されるレンズ部と、該レンズ部の反対の面における該凸レンズによる非集光部に遮光パターンを設けることが予定されたレンズシートにおいて、該遮光パターンが光硬化性組成物(A)の硬化物よりなる層上に設けられ、該光硬化性組成物(A)が、表面自由エネルギーが30mN/m以上である光硬化性樹脂組成物(a)100質量部および表面自由エネルギーが25mN/m以下である化合物(b)0.01〜10質量部からなる組成物であり、該光硬化性組成物(A)の硬化物よりなる層の該凸レンズによる集光部における表面自由エネルギーが25mN/m以下であることを特徴とするレンズシートである。
【0013】
また、本発明は、複数の凸レンズが配列されるレンズ部と、該レンズ部の反対の面における該凸レンズによる非集光部に設けられる遮光パターンとを備えるレンズシートの製造方法において、該レンズシートにおける該レンズ部の反対の面に、表面自由エネルギーが30mN/m以上である光硬化性樹脂組成物(a)100質量部および表面自由エネルギーが25mN/m以下である化合物(b)0.01〜10質量部からなる光硬化性組成物(A)を塗布して、該光硬化性組成物(A)よりなる層を形成させる工程;該光硬化性組成物(A)よりなる層が化合物(b)の表面自由エネルギーより低い表面自由エネルギーを有する媒質と接触した状態で、該レンズ部側から光を照射して該凸レンズによる集光部分における該光硬化性組成物(A)よりなる層を選択的に硬化させる工程;前記工程の後に該光硬化性組成物(A)よりなる層上に着色塗料を塗布して該凸レンズによる非集光部に遮光パターンを形成させる工程;を含むことを特徴とするレンズシートの製造方法である。
【0014】
さらに、本発明は、レンズ部側から光を照射して該凸レンズによる集光部分における該光硬化性組成物(A)よりなる層を選択的に硬化させる工程と遮光パターンを形成させる工程との間に、該光硬化性組成物(A)よりなる層が光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーより高い表面自由エネルギーを有する媒質と接触した状態で、レンズ部の反対側から光を照射して該光硬化性組成物(A)よりなる層の未硬化部分を硬化させる工程を有する上記のレンズシートの製造方法である。
【0015】
ここで、本発明における表面自由エネルギーの値は温度20℃、相対湿度50%における値であり、下記方法により測定される。
【0016】
液体の表面自由エネルギーの測定方法としては種々の方法があるが、本明細書ではウィルヘルミー法による温度20℃、相対湿度50%における測定値を表面自由エネルギーとして用いている。ウィルヘルミー法の測定原理は以下の通りである。図5に示すように、天秤51の一方に板52を吊るしてその一端が測定液体53に浸るようにし、他方に適当な荷重54をのせて天秤51をつりあわせる。この時板52は重力と浮力以外に下向きに測定液体53からの力を受け、平衡状態では下記式(1)が成り立つ。
【0017】
[荷重54]=[板52の重力]−[板52の浮力]+[液体表面から受ける力] (1)
【0018】
液体表面から受ける力は表面張力(=液体の表面自由エネルギー)に相当するため、液体表面から受ける力を測定することで、液体の表面自由エネルギーが得られる。なお、板52の材質として白金、ガラスなどが使用されるが、表面自由エネルギーは不変であるので、測定液体53に浸蝕されない材質であれば良く、本明細書の測定においては、板52として白金を用いている。
【0019】
固体の表面自由エネルギーは直接測定することができないが、表面自由エネルギーが既知である数種類の液体を用いて求めることができる。固体表面上の液滴は図6に示すような断面形状を有しており、図中接触角は、固体61表面上の液体62の表面と固体61表面との交点において、液体62に引いた接線と固体61表面との液体62を含む側のなす角であり、その値をθとする。このとき、交点における平衡条件により下記式(2)(Youngの式)が成り立っている。
【0020】
γS=γSL+γL・cosθ (2)
ここで、γSは固体の表面自由エネルギー、γLは液体の表面自由エネルギー、γSLは固体/液体の界面自由エネルギーを表す。
【0021】
表面自由エネルギーγは分散力成分γa、極性力成分γbおよび水素結合成分γcの和で表され、固体/液体の界面自由エネルギーγSLには下記式(3)の仮定が成り立つとされている。
【0022】
γSL=γS+γL−2(γS aγL a)1/2−2(γS bγL b)1/2−2(γS cγL c)1/2 (3)
【0023】
したがって、温度20℃、相対湿度50%の条件下において、異なる表面自由エネルギーを持つ3種類以上の液体の固体表面上での接触角の値θを求めれば、式(2)および式(3)よりなる3元の方程式を解くことによりγS a、γS bおよびγS cが算出でき、その和として固体の表面自由エネルギーγSが求められる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図3に本発明のレンズシート1の概略図を示す。本発明のレンズシート1は、凸レンズ2が配列されたレンズ部の反対面に光硬化性組成物(A)よりなる層3を有し、遮光パターン4を有することを予定しており、該遮光パターン4の開口部すなわち該凸レンズの集光部における光硬化性組成物(A)よりなる層3の表面自由エネルギーが25mN/m以下である。
【0025】
上記凸レンズ1が配列されたレンズ部は、1次元状に凸シリンドリカルレンズ群が配列されたものであってもよいし、2次元状に凸レンズ群が配列されたマイクロレンズアレイであってもよい。マイクロレンズアレイのレンズ配列は、表示装置の画素配列に対応した配列または最密配列(いわゆる「デルタ配列」)であるのが画像光の透過率の点で好ましい。本発明のレンズシートは、従来法の透明熱可塑性樹脂を用いたプレス成形法、押出し賦型法などおよび、電離放射線硬化性樹脂を用いた2P法などにより容易に成形可能である。
【0026】
本発明においては上記の光硬化性組成物(A)として、後述する光硬化性樹脂組成物(a)および後述する表面自由エネルギーが低い化合物(b)からなる組成物が用いられる。本願の課題を解決するために用いる光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーは30mN/m以上であり、好ましくは40mN/m以上である。また、化合物(b)の表面自由エネルギーは25mN/m以下であり、好ましくは20mN/m以下である。また、本願の課題を解決するためには、光硬化性樹脂組成物(a)100質量部に対し、化合物(b)0.01〜10質量部を混合するものであって、0.1質量部以上であり8質量部以下を混合することが好ましい。
【0027】
本発明者らは、上述した光硬化性樹脂組成物(a)および化合物(b)よりなる光硬化性組成物(A)を表面自由エネルギーが低い媒質中で光を照射して硬化することにより、表面自由エネルギーが低い表面を得ることができ、表面自由エネルギーが高い媒質中で光を照射して硬化することにより、表面自由エネルギーが高い表面を得ることができる現象を見出した。また、未硬化の状態においては、光硬化性組成物(A)の表面自由エネルギーは接触している媒質に依存することを見出した。ここで照射する光としては、可視光、紫外線等が挙げられるが、光硬化性組成物(A)の硬化に有利な高いエネルギーを持つ紫外線が好ましい。
【0028】
上記表面改質現象は、以下の機構により発現しているものと推測される。光硬化性樹脂組成物(a)および化合物(b)からなる組成物と媒質との界面がエネルギー的に安定となるのは両者の表面自由エネルギーの差が最小となる時であり、該光硬化性組成物(A)中の化合物(b)は光硬化性樹脂組成物(a)よりも表面自由エネルギーが低いため、表面自由エネルギーが低い媒質に接触した状態では化合物(b)が界面に存在することにより安定状態となる。それに対して、表面自由エネルギーが高い媒質に接触した状態では化合物(b)が界面に存在するよりも光硬化性樹脂組成物(a)が界面に存在した方がエネルギー的に安定であるため、化合物(b)は界面に存在しなくなる。つまり、光硬化性樹脂組成物(a)が未硬化状態であれば、媒質の違いにより相転移を起こすことになる。したがって、表面自由エネルギーの異なる媒質中で光硬化性組成物(A)に光を照射し、界面での状態を固定化することにより表面自由エネルギーの異なる表面を得ることができる。
【0029】
さらに、該光硬化性組成物(A)が未硬化状態では、上記の相転移は可逆であるため、該光硬化性組成物(A)を表面自由エネルギーの高い領域と低い領域とに表面改質する場合、選択的に表面自由エネルギーの高い領域に改質した後、残りを表面自由エネルギーの低い領域に改質することも可能であるし、逆に、選択的に表面自由エネルギーの低い領域に改質した後、残りを表面自由エネルギーの高い領域に改質することも可能である。
【0030】
表面自由エネルギーが高い媒質としては、水;グリセリン等の高級アルコール類などが挙げられる。また、表面自由エネルギーが低い媒質としては、大気;ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスなどが挙げられるが、それぞれこれらに限定されるものではない。特に本発明では、表面自由エネルギーが高い媒質として水を、表面自由エネルギーが低い媒質として大気を用いることが可能であるため、本発明は、コスト面や環境面から有意である。
【0031】
本発明において用いられる表面自由エネルギーが25mN/m以下である化合物(b)としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル、該シリコーンオイルの側鎖または末端がアミノ基、エポキシ基等で変性された変性シリコーンオイル、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等の含けい素(高分子)化合物;フルオロアルキルシラン類、フルオロアルキル基等を有する高分子化合物等の含フッ素(高分子)化合物;上記化合物を成分として含有するブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体などが挙げられるが、上記化合物に限定されるものではない。
【0032】
本発明に用いられる光硬化性樹脂組成物(a)は、重合性の単量体および所望に応じて光重合開始剤等の他の成分(ただし、上記の表面自由エネルギーが25mN/m以下である化合物(b)は除く)を含む。該重合性の単量体は光重合可能な化合物であり、表面自由エネルギーが30mN/m以上であり、かつ分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物を一般的に使用することができるが、必要に応じて、さらに、光カチオン重合可能なエポキシ系またはオキセタン系の化合物等を加えてもよい。
【0033】
本発明を実施するに際して用い得る光重合可能なエチレン系不飽和化合物としては(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニル系モノマー;および1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能性(メタ)アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルシアヌレート、トリ(メタ)アクリロイルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,3,5−トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ−s−ヒドラジン等の多官能性(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられ、これらの内の1種以上が用いられる。なお、上記化合物の名称中、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」の総称であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」と「メタクリロイル」の総称である。
【0034】
また、必要に応じて光重合開始剤を加えても良い。光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,4−ジエチルチオキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0035】
また、場合によっては、光硬化性組成物(A)の希釈剤として、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼンなどの有機溶剤を使用しても良い。
【0036】
本発明のレンズシートは、プロジェクションテレビ用透過型スクリーン;プラズマディスプレイパネル、液晶パネル等のピクセル型フラットパネルディスプレイ用シャドーマスクなどに適用される。レンズシート基材の形状としては、CRT方式プロジェクションテレビ用レンズシートのように出射面に凹凸面および曲面を有しても良いし、液晶投射装置等をライトエンジンとする場合、RGB3色の色ずれの補正が必要ないため、図8に示すように映像光の出射面にはレンズを設ける必要がなく、入射面のみにレンズ12を設け、出射面は平坦であっても良い。
【0037】
本発明のレンズシートは、後述する方法によって製造することができる。まず、図1に示すように、レンズシート1の出射面に上述した光硬化性組成物(A)を塗工し、凸レンズ2側から化合物(b)よりも表面自由エネルギーが低い媒質(例えば大気)に接触した状態で光を照射する。照射された光は該凸レンズ2により集光し、集光部の光硬化性組成物(A)のみが選択的に硬化する(図中の縦縞)。上記により、集光部の表面エネルギーが25mN/m以下であるレンズシートを得ることができる。このとき、レンズ部側から照射される光が略平行な進行方向を有していることが好ましい。略平行な進行方向を有する光は、点光源と見なせる光源から出射した光を、コリーメーターレンズによってコリメートすることによって得ることができ、ダブルスリットまたはダブルピンホールによって得られる光を走査することによっても擬似的に再現することができる。また、該レンズシートが、背面から画像を投射して表示する画像表示装置に用いられる透過型スクリーン用レンズシートの場合は、レンズ部側から照射される光が画像の投射光と略等価な進行方向を有していることが好ましい。画像の投射光と略等価な進行方向を有する光は、画像表示装置に用いられる投射系と等価な投射系によって得ることができる。
【0038】
次に、図2(a)に示すように、得られたレンズシート1を光硬化性樹脂組成物(a)よりも表面自由エネルギーが高い媒質(例えば水)に接触した状態で、レンズシート1の出射面側から光を照射することにより、未硬化の光硬化性組成物(A)のみが硬化する(図中の横縞)。
【0039】
上述の工程により、レンズシート1の出射面の集光部と非集光部をそれぞれ表面自由エネルギーの低い領域と表面自由エネルギーの高い領域に表面改質できたことになる。このとき非集光部の表面自由エネルギーを集光部の表面自由エネルギーよりも5mN/m以上高くすることが遮光パターン4の形成性の点で好ましい。
【0040】
表面自由エネルギーの異なる表面では各種液体の濡れ性も異なり、一般的に用いられる溶剤、塗料の場合は表面自由エネルギーの高い表面の方が表面自由エネルギーの低い表面よりも液体が濡れ易い。したがって、表面改質したレンズシート1は集光部よりも非集光部の方が各種液体に濡れ易いことになる。この性質を利用して、表面改質したレンズシート1に着色塗料を塗工することにより、非集光部のみに該着色塗料が付着した遮光パターン4を形成することが可能となる(図2(b)に示す)。
【0041】
また、図1に示すように、レンズシート1の出射面に上述した光硬化性組成物(A)を塗工し、凸レンズ2側から化合物(b)よりも表面自由エネルギーが低い媒質(例えば大気)に接触した状態で光を照射し、集光部の光硬化性組成物(A)のみを選択的に硬化させ(図中の縦縞)た後、図3に示すように着色塗料を塗工し遮光パターン4を形成しても良い。着色塗料の塗工後に該着色塗料を硬化させ、更に着色塗料側から光を照射して未硬化の光硬化性組成物(A)を硬化させても良い。
【0042】
上記の場合においては、集光部の表面自由エネルギーが低い(25mN/m以下である)光硬化性組成物(A)よりなる層3上に塗工された着色塗料がはじかれて、該光硬化性組成物(A)よりなる層3が略完全に露出した後に、該着色塗料を硬化させることで、遮光パターン4を形成することができる。ここで、光硬化性組成物(A)よりなる層3が略完全に露出した状態とは、得られるレンズシート1の目的が充分に達成される程度に、該光硬化性組成物(A)よりなる層3上から着色塗料が排除された状態のことである。
【0043】
また、高粘度の着色塗料を使用する場合、上記のように集光部の着色塗料がはじくことを利用しても良いが、高粘度の着色塗料は流動性が低いために完全にはじくには時間を要する。この場合、図4(a)に示すように、高粘度の着色塗料を前記光硬化性組成物(A)よりなる層3の硬化表面に塗工後、該着色塗料との密着性が良好な基材5を着色塗料に密着した後、該着色塗料を硬化し、図4(b)に示すように、集光部の着色塗料のみを除去することにより遮光パターン4を形成すればよい。また、気流、水流、ブラスト等の物理的な方法で集光部の着色塗料のみを除去してもよい。これら場合は、着色塗料を除去する工程を省略することにはならないが、集光部の着色塗料の付着強度が低いため、硬化後においても着色塗料を容易に除去することができ、作業性を改善することができる。
【0044】
本発明に用いる着色塗料としては、グラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、オフセットインキ、凸版インキなどが挙げられる。コントラスト向上の点から、着色塗料は黒色塗料であるのが好ましい。該着色塗料は、乾性油、不乾性油等の油脂成分;合成樹脂、天然樹脂等の樹脂成分;炭化水素、ケトン、アルコール等の溶剤成分などから選ばれる少なくとも1種、もしくは光重合可能な単量体と光重合開始剤の混合物、および着色剤よりなり、上記着色剤としては、アニリンブラック等の黒色染料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ミネラルブラック等の黒色顔料などが含まれる。
【0045】
また、本発明において光硬化性着色塗料を用いる場合、以下の処理によっても遮光パターンを形成することができる。まず、光硬化性着色塗料を所定の膜厚で剥離用シートに塗布し、レンズの集光部を表面自由エネルギーの低い領域に表面改質したレンズシートと貼り合せる。このときレンズの非集光部は表面自由エネルギーの高い領域に表面改質しておいても良いし、未処理のままでも良い。その後、再度レンズ部側から略平行な光を照射することにより、集光部の光硬化性着色塗料のみを硬化する。最後に剥離用シートとレンズシートとを剥離することにより遮光パターンの形成されたレンズシートを得ることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
ピッチ0.3mmの凸シリンドリカルレンズが並設されてなるレンチキュラレンズの逆形状が形成されたレンズ成形用ロールを用いて2P成形によりレンチキュラレンズシートを得た。この時、基材フィルムとして東洋紡績株式会社製の厚さ0.25mmポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300)、2P樹脂として東亞合成株式会社製アクリレート系紫外線硬化性樹脂(アロニックス)を用いた。
【0048】
日本化薬株式会社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA)60質量部、東亞合成株式会社製イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(アロニックスM-315)40質量部、日本化薬株式会社製2,4−ジエチルチオキサントン1質量部、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)3質量部の割合で混合して光硬化性樹脂組成物(a)を調製した。該光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーをウィルヘルミー法により測定したところ、42.6mN/mであった。該光硬化性樹脂組成物(a)に表面自由エネルギーの低い化合物(b)としてウィルヘルミー法による表面自由エネルギーの測定値が20.7mN/mである信越化学工業株式会社製アミノ変性シリコーンオイル(KF857)を0.5質量部添加し光硬化性組成物(A)とした。該光硬化性組成物(A)は粘度が高く、塗工性の面を考慮すると取り扱いにくいため、該光硬化性組成物(A)の濃度が5%となるようにトルエンで希釈した。
【0049】
希釈した該光硬化性組成物(A)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターで0.02mm塗工したのち、トルエンを揮発させることによって、PETフィルム上に均一に厚さ0.001mmの該光硬化性組成物(A)が塗工されたフィルムを得ることができた。得られたフィルムを二分割し、一方は大気中、他方は水中において高圧水銀ランプで紫外線照射した。得られたフィルムの表面について協和界面科学(株)製接触角計を用いて各種溶剤との接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から、大気中で硬化した場合と水中で硬化した場合の表面自由エネルギーを算出するとそれぞれ、21.5mN/mおよび40.2mN/mであり、水中で硬化させることにより、大気中で硬化させたときとは異なった表面自由エネルギーの表面が得られたことがわかる。
【0052】
該レンチキュラレンズシートの平坦面にトルエンで希釈した該光硬化性組成物(A)をマイクログラビアコーターで厚さ0.02mmとなるよう塗工し、120℃で5分間の乾燥でトルエンを揮発させ、光硬化性組成物(A)の塗工厚さを0.001mmとした。上記レンチキュラレンズシートを窒素雰囲気下で凸シリンドリカルレンズ側から高圧水銀ランプにより略平行な紫外光を照射した。さらに、該レンチキュラレンズシートを水中に浸漬したまま該レンチキュラレンズシートの平坦面側から高圧水銀ランプにより紫外光を照射した。
【0053】
得られたレンチキュラレンズシートの平坦面側に、東洋インキ製造株式会社製PS(pre-sensitive)版オフセット印刷用UV硬化性インキ(FDカルトン墨)を厚さ0.003mm塗工したポリエチレンテレフタレートフィルム基材を貼り合せた。ポリエチレンテレフタレートフィルム基材上から高圧水銀ランプにより紫外光を照射し、該PS版オフセット印刷用UV硬化性インキを乾燥した後、該ポリエチレンテレフタレートフィルム基材を剥離した結果、集光部の黒色塗料のみを除去することにより、表裏両面で軸ずれなく遮光パターンを形成することができた。遮光パターンの形成されたレンチキュラレンズシートを液晶方式プロジェクションテレビに設置したところ、良好な映像を観察することが可能であった。
【0054】
(実施例2)
ピッチ0.15mmのマイクロレンズが配列されてなるマイクロレンズの逆形状が形成されたレンズ成形用ロールを用いて2P成形によりマイクロレンズアレイシートを得た。この時、基材フィルムとして東洋紡績株式会社製の厚さ0.125mmポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300)、2P樹脂として東亞合成株式会社製アクリレート系紫外線硬化性樹脂(アロニックス)を用いた。
【0055】
東亞合成株式会社製ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM-305)100質量部、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)3質量部の割合で混合して光硬化性樹脂組成物(a)を調製した。該光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーをウィルヘルミー法により測定したところ、46.8mN/mであった。該光硬化性樹脂組成物(a)に表面自由エネルギーの低い化合物(b)としてウィルヘルミー法による表面自由エネルギーの測定値が18.6mN/mである日本油脂株式会社製フッ素系ブロックコポリマー(モディパーF200)を1質量部添加し光硬化性組成物(A)とした。該光硬化性組成物(A)は粘度が高く、塗工性の面を考慮すると取り扱いにくいため、該光硬化性組成物(A)の濃度が10%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。
【0056】
希釈した該光硬化性組成物(A)を厚さ125μmのPETフィルムにバーコーターで0.01mm塗工したのち、メチルエチルケトンを揮発させることによって、PETフィルム上に均一に厚さ0.001mmの光硬化性組成物(A)が塗工されたフィルムを得ることができた。これを実施例1と同様にして硬化させた後、表面自由エネルギーを算出すると、大気中硬化では20.3mN/m、水中硬化では52.3mN/mであった。
【0057】
該マイクロレンズアレイシートの平坦面にメチルエチルケトンで希釈した該光硬化性組成物(A)をマイクログラビアコーターで厚さ0.03mmとなるよう塗工し、80℃で5分間の乾燥でメチルエチルケトンを揮発させ、光硬化性組成物(A)の塗工厚さを0.003mmとした。上記マイクロレンズアレイシートを大気中でマイクロレンズ側から高圧水銀ランプにより略平行な紫外光を照射した。
【0058】
得られたマイクロレンズアレイシートの平坦面側に帝国インキ株式会社製スクリーン印刷用UV硬化性インキ(UVPAL911)を厚さ0.01mm塗工した。集光部上の該スクリーン印刷用UV硬化性インキがはじいて光硬化性組成物(A)よりなる層が露出し、集光部以外の部分にのみ該スクリーン印刷用UV硬化性インキが付着するのに十分な時間が経過した後、該スクリーン印刷用UV硬化性インキを高圧水銀ランプにより乾燥したところ、表裏両面で軸ずれなく遮光パターンを形成することができた。遮光パターンの形成されたマイクロレンズアレイシートを液晶方式プロジェクションテレビに設置したところ、観察者に対して水平方向だけでなく、垂直方向の視野角も拡大された良好な映像を観察することが可能であった。
【0059】
(実施例3)
ピッチ0.3mmの凸シリンドリカルレンズが並設されてなるレンチキュラレンズの逆形状が形成されたレンズ成形用ロールを用いて2P成形によりレンチキュラレンズシートを得た。この時、基材フィルムとして東洋紡績株式会社製の厚さ0.25mmポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300)、光硬化性樹脂として東亞合成株式会社製アクリレート系紫外線硬化性樹脂(アロニックス)を用いた。
【0060】
日本化薬株式会社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA)60質量部、東亞合成株式会社製イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(アロニックスM-315)40質量部、日本化薬株式会社製2,4−ジエチルチオキサントン1質量部、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)3質量部の割合で混合して光硬化性樹脂組成物(a)を調製した。該光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーをウィルヘルミー法により測定したところ、42.6mN/mであった。該光硬化性樹脂組成物(a)に表面自由エネルギーの低い化合物(b)としてウィルヘルミー法による表面自由エネルギーの測定値が20.7mN/mである信越化学工業株式会社製アミノ変性シリコーンオイル(KF857)を0.5質量部添加し光硬化性組成物(A)とした。該光硬化性組成物(A)は粘度が高く、塗工性の面を考慮すると取り扱いにくいため、該光硬化性組成物(A)の濃度が5%となるようにトルエンで希釈した。
【0061】
該レンチキュラレンズシートの平坦面にトルエンで希釈した該光硬化性組成物(A)をマイクログラビアコーターで厚さ0.02mmとなるよう塗工し、120℃で5分間の乾燥でトルエンを揮発させ、光硬化性組成物(A)の塗工厚さを0.001mmとした。
【0062】
上記レンチキュラレンズシートを窒素雰囲気下で凸シリンドリカルレンズ側から高圧水銀ランプにより略平行な紫外光を照射した。さらに、該レンチキュラレンズシートを水に浸漬したまま該レンチキュラレンズシートの平坦面側から高圧水銀ランプにより紫外光を照射した。
【0063】
得られたレンチキュラレンズシートの平坦面側に東洋インキ製造株式会社製PS版オフセット印刷用UV硬化性インキ(FDカルトン墨)を厚さ0.003mm塗工した。集光部上の該スクリーン印刷用UV硬化性インキがはじいて光硬化性組成物(A)よりなる層が露出し、集光部以外の部分にのみ該スクリーン印刷用UV硬化性インキが付着するのに十分な時間が経過した後、該スクリーン印刷用UV硬化性インキを高圧水銀ランプにより乾燥したところ、表裏両面で軸ずれなく遮光パターンを形成することができた。遮光パターンの形成されたレンチキュラレンズシートを液晶方式プロジェクションテレビに設置したところ、良好な映像を観察することが可能であった。
【0064】
(実施例4)
ピッチ0.15mmの凸シリンドリカルレンズが並設されてなるレンチキュラレンズの逆形状が形成されたレンズ成形用ロールを用いてメタクリル酸メチル‐スチレン共重合樹脂の押出成形によりレンチキュラレンズシートを得た。
【0065】
東亞合成株式会社製ペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM-305)70質量部、日本化薬株式会社製エポキシ変性ヘキサンジオールジアクリレート(KAYARAD R-167)20質量部、ビーエーエスエフ株式会社製アシルホスフィンオキサイド(LUCIRIN TPO)10質量部の割合で混合して光硬化性樹脂組成物(a)を調製した。該光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーをウィルヘルミー法により測定したところ、45.8mN/mであった。該光硬化性樹脂組成物(a)に表面自由エネルギーの低い化合物(b)としてウィルヘルミー法による表面自由エネルギーの測定値が18.6mN/mであるダイキン工業株式会社製撥水撥油剤(TG656)を8質量部添加し光硬化性組成物(A)とした。該光硬化性組成物(A)は粘度が高く、塗工性の面を考慮すると取り扱いにくいため、該光硬化性組成物(A)の濃度が20%となるようにイソプロピルアルコール/ヘキサンの混合溶剤で希釈した。
【0066】
該レンチキュラレンズシートの平坦面にイソプロピルアルコール/ヘキサン混合溶剤で希釈した該光硬化性組成物(A)をマイクログラビアコーターで厚さ0.02mmとなるよう塗工し、60℃で1分間の乾燥で混合溶剤を揮発させ、光硬化性組成物(A)の塗工厚さを0.004mmとした。
【0067】
上記レンチキュラレンズシートを大気中で凸シリンドリカルレンズ側から高圧水銀ランプにより略平行な紫外光を照射した。得られたレンチキュラレンズシートの平坦面側に、大日本インキ化学工業株式会社製スクリーン印刷用UV硬化性インキ(ダイキュアSSD)をコンマコーターで厚さ0.03mN/m塗工した剥離用ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せた。その後、レンチキュラレンズシートの凸シリンドリカルレンズ側から高圧水銀ランプにより平行な紫外光を照射した。得られたレンチキュラレンズシートと剥離用ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離したところ、表裏両面で軸ずれなく遮光パターンを形成することができた。遮光パターンの形成されたレンチキュラレンズシートを液晶方式プロジェクションテレビに設置したところ、良好な映像を観察することが可能であった。
【0068】
(比較例1)
ピッチ0.3mmの凸シリンドリカルレンズが並設されてなるレンチキュラレンズの逆形状が形成されたレンズ成形用ロールを用いて2P成形によりレンチキュラレンズシートを得た。この時、基材フィルムとして東洋紡績株式会社製の厚さ0.25mmポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300)、2P樹脂として東亞合成株式会社製アクリレート系紫外線硬化性樹脂(アロニックス)を用いた。
【0069】
日本化薬株式会社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA)60質量部、東亞合成株式会社製イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(アロニックスM-315)40質量部、日本化薬株式会社製2,4−ジエチルチオキサントン1質量部、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)3質量部の割合で混合して光硬化性樹脂組成物(a)を調製した。該光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーをウィルヘルミー法により測定したところ、42.6mN/mであった。該光硬化性樹脂組成物(a)は粘度が高く、塗工性の面を考慮すると取り扱いにくいため、該光硬化性樹脂組成物(a)の濃度が5%となるようにトルエンで希釈した。
【0070】
希釈した該光硬化性樹脂組成物(a)をPETフィルムにバーコーターで0.02mm塗工したのち、トルエンを揮発させることによって、PETフィルム上に均一に厚さ0.001mmの光硬化性樹脂組成物(a)が塗工されたフィルムを得ることができた。得られたフィルムを二分割し、一方は大気中、他方は水中において高圧水銀ランプで紫外線照射した。得られたフィルムの表面について協和界面科学(株)製接触角計を用いて各種溶剤との接触角を測定した。その結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の結果から、大気中で硬化した場合と水中で硬化した場合の表面自由エネルギーを算出するとそれぞれ、39.6mN/mおよび42.3mN/mであった。したがって、表面自由エネルギーが低い化合物(b)を添加していない光硬化性樹脂組成物(a)は、異なる雰囲気下で硬化しても、異なる表面自由エネルギーの表面が得られるという効果を示さないことがわかる。
【0073】
該レンチキュラレンズシートの平坦面にトルエンで希釈した該光硬化性樹脂組成物(a)をマイクログラビアコーターで厚さ0.02mmとなるよう塗工し、120℃で5分間の乾燥でトルエンを揮発させ、光硬化性樹脂組成物(a)の塗工厚さを0.001mmとした。上記レンチキュラレンズシートを窒素雰囲気下で凸シリンドリカルレンズ側から高圧水銀ランプにより略平行な紫外光を照射した。さらに、該レンチキュラレンズシートを水中に浸漬したまま該レンチキュラレンズシートの平坦面側から高圧水銀ランプにより紫外光を照射した。
【0074】
得られたレンチキュラレンズシートの平坦面側に、東洋インキ製造株式会社製PS版オフセット印刷用UV硬化性インキ(FDカルトン墨)を厚さ0.003mm塗工したポリエチレンテレフタレートフィルム基材を貼り合せた。ポリエチレンテレフタレートフィルム基材上から高圧水銀ランプにより紫外光を照射し、該PS版オフセット印刷用UV硬化性インキを乾燥した後、該ポリエチレンテレフタレートフィルム基材を剥離したが遮光パターンは形成されず、レンチキュラレンズシートおよびポリエチレンテレフタレートフィルム基材の両面に該PS版オフセット印刷用UV硬化性インキが付着してしまった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、高精細・高画質を特徴とするピクセル方式プロジェクションテレビ用のスクリーンなどに適用される、表裏両面で軸ずれ無く遮光パターンが成形されたレンズシートが得られ、また、その簡便な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面自由エネルギーが低い媒質中における光硬化性組成物(A)の硬化を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態の一つを示す図である。
【図3】本発明の実施形態の一つを示す図である。
【図4】本発明の実施形態の一つを示す図である。
【図5】ウィルヘルミー法について説明する図である。
【図6】固体の表面自由エネルギー測定法について説明する図である。
【図7】CRT方式プロジェクションテレビ用レンチキュラレンズシートを示す図である。
【図8】ピクセル方式プロジェクションテレビ用レンズシートを示す図である。
【符号の説明】
1.レンズシート
2.レンズ
3.光硬化性組成物(A)層
4.遮光パターン
Claims (12)
- 複数の凸レンズが配列されるレンズ部と、該レンズ部の反対の面における該凸レンズによる非集光部に遮光パターンを設けることが予定されたレンズシートにおいて、該遮光パターンが光硬化性組成物(A)の硬化物よりなる層上に設けられ、該光硬化性組成物(A)が、表面自由エネルギーが30mN/m以上である光硬化性樹脂組成物(a)100質量部および表面自由エネルギーが25mN/m以下である化合物(b)0.01〜10質量部からなる組成物であり、該光硬化性組成物(A)の硬化物よりなる層の該凸レンズによる集光部における表面自由エネルギーが25mN/m以下であることを特徴とするレンズシート。
- レンズ部が、1次元状に配列された凸シリンドリカルレンズ群よりなる請求項1に記載のレンズシート。
- レンズ部が、2次元状に配列された凸レンズ群よりなる凸マイクロレンズアレイである請求項1に記載のレンズシート。
- 複数の凸レンズが配列されるレンズ部と、該レンズ部の反対の面における該凸レンズによる非集光部に設けられる遮光パターンとを備えるレンズシートの製造方法において、該レンズシートにおける該レンズ部の反対の面に、表面自由エネルギーが30mN/m以上である光硬化性樹脂組成物(a)100質量部および表面自由エネルギーが25mN/m以下である化合物(b)0.01〜10質量部からなる光硬化性組成物(A)を塗布して、該光硬化性組成物(A)よりなる層を形成させる工程;該光硬化性組成物(A)よりなる層が化合物(b)の表面自由エネルギーより低い表面自由エネルギーを有する媒質と接触した状態で、該レンズ部側から光を照射して該凸レンズによる集光部分における該光硬化性組成物(A)よりなる層を選択的に硬化させる工程;前記工程の後に該光硬化性組成物(A)よりなる層上に着色塗料を塗布して該凸レンズによる非集光部に遮光パターンを形成させる工程;を含むことを特徴とするレンズシートの製造方法。
- 非集光部に遮光パターンを形成させる工程が、着色塗料を塗布する工程および集光部に塗布された該着色塗料がはじかれて集光部の光硬化性組成物(A)層が略完全に露出するだけの時間が経過した後に、該着色塗料を乾燥させる工程を含む請求項4に記載のレンズシートの製造方法。
- 非集光部に遮光パターンを形成させる工程が、着色塗料を塗布する工程、該着色塗料を乾燥させる工程および集光部上の着色塗料を除去する工程を含む請求項4に記載のレンズシートの製造方法。
- 非集光部に遮光パターンを形成させる工程が、剥離用シートに光硬化性着色塗料を塗布する工程、塗付された該光硬化性着色塗料と光硬化性組成物(A)よりなる層を貼り合せる工程、レンズ部側から光を照射して該凸レンズによる集光部分における該光硬化性着色塗料を選択的に硬化させる工程、該剥離用シートとレンズシートを剥離する工程を含む請求項4に記載のレンズシートの製造方法。
- レンズ部側から光を照射して該凸レンズによる集光部分における該光硬化性組成物(A)よりなる層を選択的に硬化させる工程と遮光パターンを形成させる工程との間に、該光硬化性組成物(A)よりなる層が光硬化性樹脂組成物(a)の表面自由エネルギーより高い表面自由エネルギーを有する媒質と接触した状態で、該レンズ部の反対側から光を照射して該光硬化性組成物(A)よりなる層の未硬化部分を硬化させる工程を有する請求項4に記載のレンズシートの製造方法。
- 化合物(b)よりも表面自由エネルギーが低い媒質が大気である請求項4〜7のいずれか1項に記載のレンズシートの製造方法。
- 光硬化性樹脂組成物(a)よりも表面自由エネルギーが高い媒質が水である請求項8に記載のレンズシートの製造方法。
- レンズ部側から照射される光の進行方向が、略平行である請求項4〜10のいずれか1項に記載のレンズシートの製造方法。
- レンズシートが、背面から画像を投射して表示する画像表示装置に用いられる透過型スクリーン用レンズシートであり、レンズ部側から照射される光の進行方向が、画像の投射光と略等価である請求項4〜10のいずれか1項に記載のレンズシートの製造方法。
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